※ストーリーのネタバレに触れています。
データ
シーズン2 第7話 (通算17話)
“Monsters” 「モンスター」
配信日: 2022年4月14日 (米国) 4月15日 (日本)
配信:Amazon Prime Video (吹き替え版) (字幕版)
監督:Joe Menendez
脚本:Jane Maggs
俳優クレジット
俳優 | 役名 | 声優 |
---|---|---|
Starring | ||
パトリック・スチュワート | ジャン・リュック・ピカード | 麦人 |
アリソン・ピル | アグネス・ジュラティ | (セリフなし) |
ジェリ・ライアン | セブン・オブ・ナイン (アニカ・ハンセン) | 沢海 陽子 |
ミシェル・ハード | ラファエラ・「ラフィ」・ムジカー | 高乃 麗 |
オーラ・ブラディ | タリン | 麻生 侑里 |
and サンティアゴ・カブレラ | クリストバル・リオス | 花輪 英司 |
Guest Starring | ||
ジェイムズ・キャリス | モーリス・ピカード/精神分析医 | 咲野 俊介 |
Madeline Wise | イヴェット・ピカード/女王 | 藤 貴子 |
ソル・ロドリゲス | テレサ・ラミレス | 森 なな子 |
イト・アゲイレ | ガイナン | 行成 とあ |
ジェイ・カーンズ | ウェルズ | 木下 浩之 |
イーヴォ・ナンディ | ||
Co-Starring | ||
Steve Gutierrez | リカルド | |
Dylan Von Halle | 幼いピカード/王子 | |
マーティ・マトゥーリス | 囚人 | |
オスカー・トーレ | バーテンダー | |
Travis Walck | 道化師 | |
Cyrus Zoghi | 赤髭の男 | |
その他の声優:れいみ、佐伯 美由紀、竜門 睦月、越後屋 コースケ |
レビュー
ピカードの頭の中に入る、ディスカバリーなど他シリーズも含めた近年のエピソードの中でも屈指の異色回でした。
冒頭からピカードの脳内、と推測せざるを得ない状況から始まります。いろんな手段で最初から引き込んでくれるエピソードが多いですね。この辺はやはり動画配信時代を意識している気もします。恒星の近くにいるどこかの宇宙船で、初登場の精神分析医の面談を受けているピカード。衣装はガードマンではないスーツになっており、相手の士官もやや古い、視聴者には懐かしい制服を着ています。
さらにピカードは女王と王子の物語を語り始め、こちらも映像で描かれる仕掛け。俳優や場所など明らかにこれまで垣間見えたピカードの過去をなぞっていると思われますが、あくまで童話風です。精神分析シーンとの二重構造になっているものの、女王が話し、描く物語のモンスターが現実化するという流れになっているため、ある意味では三重構造とも言えます。さらに後で描かれる本当の記憶も入れると4つ…。ややこしい。
地球人に変装していただけと判明したロミュランの (やっぱり!) タリンは、精神世界の中では奥に当たる物語の方に出現。女王がモンスターにさらわれ、ここでは何もかもモンスターの味方だと王子は話します。片方は顔の見えない悪魔 (道化師) のような姿のモンスターに襲われますが、現実世界でピカードを安定させると敵の姿はなく、タリンは王子に「わざとやっていたの? 出たくなかったのね」と話して足かせを外します。この辺りは意図的に展開を飛ばしていると思われ、わかりづらさに拍車を掛けています。ぜひ見直すことをおすすめしますが、そもそも夢を分析するようなもので全体的にそういうこと、と思った方がいいかも。
脳内世界では壁が崩れて登場人物が一堂に会し、精神分析医、そして王子いわくモンスターがピカードの父モーリスと判明します。実際の過去が描かれ、「お母さんは落胆と興奮の繰り返しに苦しんでいた」。イヴェットを救えなかったと話すモーリスに、ピカードは父を理解していなかったと悟ります。ここでピカードたちは目覚めますが、精神分析医に「あの物語がどう終わるか知りもしないくせに」と言っていたように話は終わっておらず、先ほどの飛ばされた展開も今後明かされる中に答えがあるのかもしれません。恒星に似た赤いオブジェクトや、ノートにあった脳のようなイラストは何でしょうかね。
現実世界では、テレサ親子に入れ込むリオスがラ・シレーナに御招待しちゃいます。どう落とし前を付けるのか…。実質ボーグ・クイーンとして動いているジュラティはナノプローブを増やすため、エンドルフィンを出す行動。何とセリフ一切なしの怪演でした。
目覚めたピカードは「敵こそが最高の師匠となる」という女王=イヴェットの言葉を思いだし、Qの真意を突き止め反撃に出ることを決意。Qを呼び出すためガイナンと再会し、過去を閉じ込めているというボトルを使った謎の儀式を行いますが失敗します。これはQが力を失っているせいなんでしょうか。前回ガイナンが登場した際はQの話は触れていなかったのでスルーかなとも思ってましたが、やはりエル・オーリア人とQとの因縁は避けては通れませんよね (新スタートレック シーズン2「無限の大宇宙」ほか)。あの構え、懐かしい。結局、ふらりと現れたFBIに二人とも捕まってしまって終了です。
残り話数も少なくなってきましたが、まだまだストーリーも見せ方も膨らませてくれますね。こういう精神世界ものって先にも触れたとおり夢のようなものでいまいち記憶に残りづらい場合もありますが、スタートレックって何でもありでそれでいい、という一面を改めて認識しました。
トリビア
◆精神分析医=モーリス・ピカードを演じたのは、ロナルド・ムーア製作総指揮「バトルスター・ギャラクティカ」でガイアス・バルター博士を演じたジェイムズ・キャリスです。Terry Matalas の「12モンキーズ」にも複数回出演。モーリスはこれまで、新スタートレック シーズン6「運命の分かれ道」のみ登場。故人ですが、Qが創り出した幻影として出てきました。
◆初監督の Joe Menendez も、「12モンキーズ」などを演出。
◆精神分析医のセリフ、「中には傷を壁で覆い隠して、ベタゾイドにさえ読ませない者も」。
◆タリンがダイブした際に聞こえた過去のピカードの声は、新スタートレックの音声が使われています。シーズン3「浮遊機械都市ボーグ(前編)」「恐怖の人間兵器」 シーズン6「運命の分かれ道」など。吹き替え版は新たに収録されており、本来の意味とは主語など異なっている箇所があります。また、最後の方は聴き取れませんがシーズン6「戦闘種族カーデシア星人(後編)」の “There… are… four lights!” 「ライトは4つだ! 4つしかない!」もあります。タリンの吹き替えでの「これがあなたの心?」は字幕のように原語では「これがあなたのが素面の時の心?」と言っており、次の「お酒を5杯も飲めば大惨事ね」のお酒は原語では「(シャトー・) ピカード」と言っています。
◆テレサのクリニックで、リオスはコミュニケーターを使っていました。無事取り返していたようです。チリ出身ということが判明。「出身は…チリだけど、職場が宇宙なだけ」。映画ST4「故郷への長い道」でも、カークがアイオワ出身であることに触れてほぼ同じセリフ (吹き替えでは「地球人だ、宇宙で働いてるだけだ」) をテイラー博士に言っていました。
◆タリンと合流したピカードが「待機室にいた」と言っていますが、ready room は宇宙艦ブリッジ隣の作戦室のこと。原語では「私の」とも言っているので、エンタープライズでしょうか。あまりそれらしくはありませんでした。
◆セブンがジュラティの状態を指して「ジュラティのボーグ・クイーン添えか、その逆」。
◆ジュラティが訪れたバーで歌っていた歌手役は、パトリック・スチュワートの妻である Sunny Ozell です。曲は “Take You Down”。
◆目が覚めたピカードがタリンに、「どうやら私達はまるで量子飛躍 (quantum leap) のように、個人の境界線を越えたようだ」。スタートレック:エンタープライズのアーチャー役スコット・バクラ主演、”Quantum Leap” 「タイムマシーンにお願い」を意識していたりして。同ドラマではバクラ演じるサム・ベケットが、過去の人物に入りました。
◆エル・オーリア人はQ連続体と長年の冷戦後、停戦したそうです。Qと対等に渡り合えるとは…。レビューでも触れたガイナンの両手の構えは、Qと対峙した際に見せていました。
◆最後に現れたFBIの男性の名前はウェルズ。演じるジェイ・カーンズは、ヴォイジャー シーズン6「過去に仕掛けられた罪」でブラクストン艦長の部下デュケインを演じました。「12モンキーズ」にもFBI役で出演。
◆シーズン2 #5「Qの陰謀」でフランス人警官のルクレールを演じたイーヴォ・ナンディが今回もクレジットされていますが、どこに出演しているか不明です。
出典
TrekMovie.com
TrekCore.com
Memory Alpha
“Quantum Leap, Darwin Memorial Sculpture, 4 July 2014, L30” by Lynn Rainard is marked with CC BY-SA 2.0.