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ヴォイジャー エピソードガイド
第72話「ヴォリ防衛隊第4分隊」
Nemesis

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・イントロダクション
※1夜のジャングル。数人の人間がゆっくりと動いている。銃を構えたままだ。先頭の男が後続に合図を送りながら、進んでいく。小走りになった。艦隊の制服を着た人物。その背中に、銃についているライトが当てられる。「止まれ、動くな!」 振り返ったその男は、チャコティだった。 ※1: 日本ではこのエピソードの次に "Day of Honor" 「名誉の日」という放送順ですが、本国放送順では逆です (ちなみに製作番号順では日本放送順と同じ)。当サイト内では TNG 以降は本国放送順で統一しているため、このエピソードを第72話としています

・本編
男たちに、チャコティは他の者が集まっているキャンプへ連れてこられた。しゃべれぬよう、マスクを付けられている。リーダー風の男が、チャコティを連れて来た男に話しかけた。「こいつは?」 「ジャングル※2で発見しました、黄色い森から 100歩※3の地点で。」 「武器は?」 「持っていません。」 「どこの者※4だ。」 「聞いていません。」 「クレイディーのけだもの※5ではないな。」 「違います。でもヴォリ※6の服でもありませんよね。」 「それにクレイディー人※7にしては目※8が優しすぎる。」 「そこまでは見抜け※9ませんでした。」 「では今はどう思う。こいつは敵方※10か?」 部下はチャコティをチラッと見ていう。「はっきりとはわかりません。」 「敵を見抜く訓練はしたか。」 「しました。」 「憎むべきは敵だけだろ。」 「そうです、敵だけです。」 「じゃあ放してやれ。」 動こうとしない部下に、再び言う。「聞こえなかったのか。」 部下は銃を別の男に預け、チャコティの手と口を解放した。どうもというチャコティ。食事をしてこいと部下に命じるリーダー。その場を離れて行く男たち。部下が謝ったが、リーダーは行け、とだけ言った。 「あんたがここが大将か」と尋ねるチャコティ。 「ヴォリ防衛隊、第4分隊のブローン※11だ。」 「宇宙艦ヴォイジャーのチャコティ副長だ。」 手を差し出すチャコティ。ブローンもゆっくりと手を出し、握手した。
ブローンが指した方向へ、一緒に歩き出すチャコティ。「隊員※12が失礼したな。まだ新人※13だから敵を見抜くのに不慣れでね」というブローン。 「敵? 戦争か。」 「ここは戦闘地帯だ。」 「それで俺のシャトルも攻撃されたのか。」 「黄色い森に落ちていくシャトルを見た隊員がいる。君のシャトルか。なぜこの惑星※14に近づいた。」 「調査任務の最中に、オミクロン※15放射線の形跡を捉えたから確認しようと思っただけだ。速度を落とした途端、攻撃を受けた。機体のコントロールが効かなくなり、地表へ緊急転送した。」 「撃ったのはクレイディー人だろう。」 「クレイディー人?」 「敵方だ。」 「そうか…。敵意がないことを示したつもりだったんだが、執拗に撃ってきた。」 「奴らは制空権を握りたいから、味方以外には必ず攻撃を仕掛ける。」 「ヴォイジャーに連絡を取ろうとしたが、通信機が壊れてた。」 「戦闘地帯からの通信は妨害されてる。」 「シャトルを探しに行きたい。もちろん、使えないだろうが。」 「まず無理だろう。あと 2回夜明け※16が来たら、第7分隊と合流する。特殊な通信機を持ってるはずだ。俺たちと行動すればいい。」 「ありがたい申し出だが、2日も待てない。すぐ探しに出かける。」 「黄色い森に戻るのは危険だ。敵がそこら中にいるぞ。」 「敵を避けて進まなくちゃならんな。」 「決心は固いようだな。」 「変わらない。」 「せめて夜明けまで待て。」 「アドバイスに従おう。」 ブローンは歩いて行った。チャコティは焚き火の周りに集まっている隊員たちのところへ行く。
チャコティを疑わしげに見る隊員たち。チャコティは端にいる一人の隊員の隣に座った。隊員は皿を差し出し、食ってみるか、あんまりうまくないけど、という。受け取り、礼を言うチャコティ。「僕はレイフィン※17。」 「チャコティだ、よろしくな。」 「森の中で、何か見た?」 「何かって?」 「クレイディーのけだもの。」 「見てない。」 チャコティを連れて来た隊員が話に割り込む。「レイフィンもまだ敵を見たことがないんだ。そうだよな。」 「ない。戦闘地帯を歩くのは初めてなんだ。」 「近い将来奴らを見るだろう。一目見れば心をもたないけだものだってことがわかると思うね」といい、立ち上がり空に向けて銃を構える隊員。「レイフィン、黄泉の国※18に何人けだものを送る気だ?」 「え、いや、わからないよ。」 「俺は殺された兄弟や親戚の数だけ敵を仕留める※19。そして更にもう一人殺る。それこそ正義だよな。」 他の隊員が口を合わせて「正義だ!」という。隊員は再び聞いた。「レイフィン、もう一度聞く。何人仕留めるつもりだ。」 「とにかくできる限りさ。」 「震えてる※20じゃないか。恐怖心と闘ってそれを怒り※21に変えないと、けだものに仕留められるぞ。」 歩いていく隊員。
チャコティはレイフィンに尋ねる。「君たちは敵のことを、けだものと呼ぶのか?」 「奴らは恐ろしい顔をしてるって噂だ。皮膚は朽ちた木の幹みたいにデコボコしてるらしい。目は炎のように赤く燃え、近づくと息がひどく臭いそうだ。」
"You know, sometimes people say terrible things about their enemies to make them seem worse than they really are. There might be some young Kradin soldier out there who's more afraid of you than you are of him."

「敵に対する憎悪を募らせようと思って、大袈裟に言う人もいるだろう。クレイディー人の方だって、君のことをものすごく怖いと思っているかもしれない。」
「奴らは僕の村を焼き討ちにして、いとこや兄弟の寝込みを襲って殺したんだ! おばあちゃんまで手にかけた。人の悪口も一切言わず、虫も殺したことがないような人だったのに。」 「ひどいな。」 「しかもクレイディーのけだものはヴォリ人を仕留めると遺体を仰向け※22にする。ぞれじゃ黄泉の国には絶対に行かれない!」 「仰向けじゃ行けないのか。」 レイフィンが答える前に、ブローンの声が響いた。夜明けが来たらチャコティと一緒にシャトルを探しに行けという。心配には及ばない、独りで大丈夫だというチャコティに、武器を持たずにジャングルを歩くのは危険だ、隊員を連れていった方がいいという。誰が行く、レイフィンかというブローン。「あの、僕は…」とレイフィンがためらっていると、先ほどの隊員が名乗りをあげた。私が一緒に行きましょう、けだものが来たら必ず仕留めてみせますよという。頼むぞ、ネイモンというブローン。そろそろ就寝時間だという。ネイモンに近寄り、レイフィンに聞こえるように、おふくろさんの夢でも見ろと言った。
ネイモン※23と共にジャングルを歩くチャコティ。「誰かを仕留めたことはあるのか?」と聞くネイモン。
"Killing's the worst thing I've ever had to do."

「ああ、あれは最悪な経験だった。」
「そんなことを言えるぐらいなら、あんたの敵はけだものじゃなかったんだ。」 「かもしれん。」 「クレイディー人は俺たちを人だと思っていない。家を焼き払い、森を奪って、姉や妹を慰み物にする。」 「もしあんたがヴォリ人なら奴らをこの惑星から排除したいと思うはずだ。」 「そうかな。家族にひどいことをされたら許せないが、俺が生まれた惑星では、意見の違いを別の方法で解決している。話し合いをして、平和的にね。」 「あんたはクレイディー人を知らない。」 「ああ、確かにそうだ。」 「クレイディー人が敵方じゃないことを、あんたの神に感謝しろ。」
「もうすぐ夜が明ける、仲間のところに戻った方がいい」というネイモン。「待ってくれ、この辺りだと思う。」 「言う通りにしないと後悔するぞ。」 「先に戻っていい。俺はもう少し探す。」 「待ってくれよ。志願したんだから一緒に行くよ。何かあるぞ。」 ネイモンは指差した。その破片を拾うチャコティ。「どうやらシャトルはバラバラらしいな。」 「やっぱり第7分隊と合流した方がいい。」 物音がした。と同時に、2人の異星人が発砲してきた。撃たれながらも、銃を撃って一人を殺すネイモン。チャコティはもう一人の敵に突進してタックルし、武器を奪い取った。抵抗したら撃つぞ、というチャコティ。だが異星人は倒れた。ヴォリ人の援護だ。ブローンを先頭に隊員たちは散らばり、周りを確認する。ネイモンのそばにレイフィンがおり、脈を確認している。どうだ、と聞くチャコティ。レイフィンはやられたと言った。

※2: 「森」とも吹き替え。trunks
ヴォリ人は多少変わった言葉を使用します。もちろん本当はヴォリ固有の言葉を使っていて、ユニバーサル・トランスレイターが英語にしているわけですが。以下の脚注では「ヴォリ語」と付けています

※3: ヴォリ語。footfall
約1メートル

※4: ヴォリ語。colors

※5: ヴォリ語。Krady beast

※6: Vori

※7: クレイディン Kradin
「クレイディーのけだもの」というのは差別的な言葉とされているので、どちらかといえば種族名としては「クレイディン」または「クレイディン人」と訳した方が良いような気もしますが、吹き替えに従い全て「クレイディー人」としています (ただし「クレイディーのけだもの」以外の表現には、必ず「人」を付けています)

※8: ヴォリ語。glimpse

※9: ヴォリ語。fathom

※10: ヴォリ語。nemesis
原題

※11: Brone
(Michael Mahonen) 声:松本保典

※12: ヴォリ語。防御者 defender

※13: ヴォリ語。novice

※14: ヴォリ語。sphere

※15: オミクロン (粒子) omicron particles
ある種の物質・反物質反応によって生成される、稀少な亜原子粒子。DS9第36話 "Shadowplay" 「幻影の村」など

※16: ヴォリ語。new light

※17: Rafin
(Matt E. Levin) 声:桜井敏治

※18: ヴォリ語。Wayafter

※19: ヴォリ語。nullify

※20: ヴォリ語。trembles

※21: ヴォリ語。rages

※22: ヴォリ語。upturned

※23: Namon
(ネイサン・アンダーソン Nathan Anderson ENT第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」などのケンパー軍曹 (Sergeant Kemper) 役) 声:成田剣


青い布をかけられたネイモンの遺体の周りに、ひざまずいたヴォリ人が集まっている。ブローンが言う。「我らをヴォリとして造られし神よ、今ここに我らが兄弟、ネイモンを、黄泉の国に旅立たせます。」 その様子を離れて見ているチャコティ。隊員たちの手により、遺体はうつ伏せにされた。ネイモンの周りには石が置かれていく。ブローンはチャコティに服を差し出した。「これは?」と聞くチャコティ。「ネイモンの戦闘服だ。」 「だったら遺族に渡すべきじゃないのか。」 「合流地点はまだ遠い。迷彩服を着てくれ。目立った服でいるとまた標的になる。」 服を受け取るチャコティ。 「ネイモンのことは済まなかった。」 「敵は過去にも我々の同士を仕留めた。それはこれからも続く。だが近い将来、奴らをこの惑星から排除してみせる。そして家族の元へ戻る。これを。」 銃を渡そうとするブローン。チャコティは「俺の戦争じゃないから。武器を使うつもりはない」という。「ジャングルで敵に遭遇したら武器が必要になる。行動を共にするなら言う通りにしてくれ。いいな!」 「…わかった。」 チャコティは武器を受け取った。レイフィンを呼ぶブローン。ヴォリの武器の撃ち方を教えてやれと命じる。
木の上に取り付けられた的が割れる。レイフィンが撃ったものだ。次はチャコティが狙うが、外してしまう。狙いが低すぎる、この武器は標的より上を狙って撃つんだ、とアドバイスするレイフィン。レイフィンは再び的を撃った。「うまいもんだ」というチャコティ。「馬鹿にするな。」 「ただ誉めただけだろう。」 「動かない標的を撃つのは簡単だが、敵を仕留めるのはたやすいことじゃない。ネイモンの言葉だよ。黄泉の国に行く前に、僕にそう話してくれた。」 「人を殺すのは簡単なことじゃない。」 「敵を排除するため、自らを危険にさらすのだから、命を落とすことを恐れてはならない。」 「それは誰が言った?」 「戦場に行った兄弟たちだ。ブローン隊長に……、ネイモンも、そう言ってた。彼は僕のせいで死んだ。」 「ネイモンの死は君のせいじゃない。」 「震えていなければ、僕があなたと一緒にシャトルを探しに行ってた。そうしていれば彼は黄泉の国へ行かなくて済んだはずだ。」 「だが君が撃ったわけじゃないし、戦いを恐れるのは恥ずかしいことじゃない。震えるのは自然なことだ。」 「どうしてわかる。」 「俺にも経験があるからね。カーデシア人という敵と自由のために戦った。」 「そのカーデシア人も、けだものだった?」 「友好的とはとても言えないがな。とにかく、俺は信念をもって闘ったが、戦闘の前はいつも怖かった。」 「でもその恐れを怒りに変えた。そうだろ?」 「そうだったと思う。だからと言って…」 「あなたに教えてやるつもりが、逆に教えられたよ。恐怖心を克服できる気がする。」 銃を撃つレイフィン。的は 3連続で撃ち落とされた。チャコティはその銃を受け取った。
夜のジャングルを進むチャコティたち。チャコティは何かを発見し、ブローンに伝えた。ヴォリ人の遺体だ。首と手を地面に固定されている。「仰向けにされてる、その上日にさらしてある」というブローン。「仲間なのか?」 「この服は第7分隊のものだ。偵察隊だろう。」 「クレイディー人の仕業か。」 レイフィンは、彼はもう黄泉の国に行かれないという。合流地点は 300歩先だ、合図を送れというブローン。部下が光の明滅する小型機械を使用する。もう一回、というブローン。応答がないぞというレイフィン。何かあって場所を移動したんじゃないのかと聞くチャコティに、ありえないとブローンは言う。部下の 2人に合流地点へ行って様子を見てこいと命じる。だがレイフィンが私が行きますと言った。よく志願した、見つからないように行ってこいというブローン。レイフィンはもう一人の隊員と共に、走って行った。
帰りを待つチャコティ。レイフィンたちが戻って来た。ブローンに報告する。「隊長。」 「どんな様子だ。」 「第7分隊は…、全滅です。」 「何? 全滅?」 「20名やられていました。とても悲惨な光景です。全員が…全員が…」 「言ってみろ。どうなってた!」 「彼と同じ、仰向けで、ひもで縛られていました。」 「まさにけだもののやることだ。」 チャコティに向き直るブローン。「血も涙もない奴らだってことがわかっただろう。」 「ああ、よくわかった。」 「クレイディー人はけだもの以外の何ものでもない。」 「確かにひどい。」 ブローンは鼻で笑い、「ひどいなどという言葉では済まない。違うかみんな!」 そうだ、と隊員たちから声が上がる。「敵は我々の森を狙ってる。その上敵は、姉や妹も、狙っているのだ。俺たちのことも仕留めるだけじゃない。死の儀式をせずに、辱めて、黄泉の国に行けないようにしている。こんなことを許しておけるか。この怒りの炎を消すことは誰にもできない。今こそ反撃の時がきた。クレイディー人め、絶対に許さんぞ!」 隊員たちの叫びは、銃声によってかき消された。敵襲だ。姿勢を低くして反撃しろと命じるブローン。チャコティも応戦する。撃たれていくヴォリ人。隣にいた隊員が撃たれ、「この野郎!」と逆上するレイフィン。「レイフィン、かがめ!」というチャコティ。レイフィンには聞こえていない。みんな仕留めてやる、と叫ぶ。すぐに撃たれてしまった。チャコティは安全なところへ連れて行こうとするが、自分も肩に銃を受ける。レイフィンは口から血を流しながら言う。「頼む、僕の体をうつ伏せに。」 そして目を閉じた。最期を見届けたチャコティは、レイフィンの体をうつ伏せにした。敵の攻撃は激しく、チャコティはその場を逃げ去った。
朝になった。チャコティは息も絶え絶えに、森の中を歩く。ふいに開けた場所に出た。たくさんの人々がいる。作業をしていた老人が気づいた。「防衛隊か? みんな集まれ、防衛隊員だ。」 ヴォリ人が集まってくる。一人の少女が、「ラハナ村※24へようこそ、隊員さん。歓迎します※25」といい、花輪をチャコティの首にかける。チャコティは、何も言わずその場に倒れた。

※24: ラハナ入植地 Larhana settlement

※25: ヴォリ語。brightly greeted

惑星軌道上のヴォイジャー。「艦長日誌、宇宙暦 51082.4。2日以上捜索した結果、ついにチャコティ副長が乗っていたシャトルの残骸を発見した。シャトルは粉々だったが、副長は無事でいることを祈るしかない。」
会議室。大使の話によると、チャコティ副長のシャトルは敵に攻撃されて、最南端の大陸に不時着したそうですと報告するトゥヴォック。惑星の図がモニターに映し出されている。戦闘地帯の真ん中ねというジェインウェイに、そのようですという。ロックオンできると聞くジェインウェイ。大気中の放射線が多すぎて無理です、スキャンもできませんとキムは言う。生きているかもわからないわけですというトゥヴォックに、ジェインウェイは生きているに決まっているでしょという。一緒に行けば良かった、というパリス。あなたのミスじゃない、これは事故なんだから、それより救出方法を考えましょうといい、トレスに地上を確認できるようにスキャナを改良するように言うジェインウェイ。やってみますというトレス。ニーリックスにどういう戦争なのか状況を尋ねるジェインウェイ。ひどい話ですよ、トリーン大使の部族は 10年以上もすごく残虐な侵略者と戦ってるらしいですという※26。大使は捜索に協力してくれるかしらというジェインウェイ。そう言ってたけど、物理的に無理かなというニーリックス。トゥヴォックはあの惑星の物資は限られているし、地上の秩序は混乱していますという。チャコティを見つけたら、怪我の治療をしてちゃんと保護してくれるというニーリックス。残忍な敵に先に見つからないといいけど、とトレスはいう。パリスは救助チームを作って探すように提案するが、はやる気持ちはわかるけど、できることから始めましょうというジェインウェイ。トゥヴォックにトリーン大使に連絡を取り、必要なものを揃えてもらうように命じる。地図と敵に関する情報がいる。救助チームを送り込む前に、どういう状況か把握しないとね、と言った。
その戦闘服だとどうやら新人だな、当たってるだろとチャコティに尋ねる老人。待ってくれ、みんな誤解してる、俺は隊員じゃないというチャコティ。乗ってたシャトルが攻撃を受けて戦闘地帯に不時着した、そこで分隊に会って戦闘服を貸してもらったと説明する。どの分隊だねと尋ねられ、第4分隊と答える。第4、とても強い分隊ねという女性。どうだね、あんたたち第4分隊は敵をジャングルから排除したのかと老人は尋ねる。勇敢に闘ったというチャコティに、それじゃやっぱりあなたは名誉ある隊員なんじゃないのという女性。老人は、今マルナ※27が言った通りだ、防衛隊員として歓迎すると言った。礼を言うチャコティ。飲み物や暖かい服とか、何か必要なものがあるとマルナに聞かれ、チャコティは通信できる設備はないかな、仲間に連絡したいという。残念だが通信手段はないという老人。クレイディー人の兵士が、家も森も機械類も全部奪ったのだ。通信装置を使っているようなところはないか尋ねるチャコティ。補給基地なら、という老人に、場所を尋ねるチャコティ。かなり遠い、ジャングルの奥地を抜けて 1万歩行ったところだという。すぐに出発しようといい、銃を持って立ち上がるチャコティ。じきに夜明けよ、夜明けまで休んだ方がいいというヴォリ人たち。チャコティも休むことに決めた。みんな行くぞ、チャコティ隊員を一人にしてあげようといい、立ち去る老人たち。チャコティはため息をつき、食事の続きを食べ始めた。
そこへ少女がやってきた。「おかわりはどうかなと思って」という。「もう十分だ。」 「そう……。」 「とてもおいしかった。」 「その花※28は? 気に入った? 私が育てたの。」 「とても綺麗だね。」 「仕留めたヴォリの隊員をクレイディー人は仰向けにしておくって、本当の話? お願い教えて。ペノおじいちゃんは子供が聞く話じゃないって、教えてくれない。」 「儀式をないがしろにしてるのは本当だ。」 「クレイディー人はひどいわ。どうして私たちのお家を燃やしたり、私たちの命を狙うの。」 「どうしてかな。」 「ヴォリ人はあの人たちの、森を焼いたりしないのに、どうして私たちを憎むの。」 「おじさんにもわからない。人を憎む気持ちは理解できないんだ。」 「お兄ちゃんも隊員なの。」 「そうか。」 「2年前から戦闘に参加してるわ。私はもっと小さかった。お兄ちゃんはたくましくて、戦闘服がすごく似合ってたの。あなたみたいに。お兄ちゃんに会ってるかな。ダレヨって名前よ。」 「隊員は大勢いるからね。会ってないと思う。」 「お兄ちゃんは第7分隊の隊長なの。」 「第7…? 第7っていうのは確かか。」 「すごく勇敢な分隊よ。聞いたことない?」 「おじさんがいた分隊と合流する予定だった。」 「合流してれば、お兄ちゃんと会えたのにね。」 「敵に待ち伏せされたからな。」 「もしまた戦闘地帯に戻ったら、きっとお兄ちゃんに会えるね。手紙を渡してもらえる?」 「おじさんはもう戦闘には戻らない。補給基地に行って宇宙艦に連絡しないと。」 「じゃあそこまででいいから持ってって。そこにいる隊員の人から渡してもらうから。ねえいいでしょ…お願い。」 笑顔でうなずくチャコティ。少女はキスをし、夜が明けるまでに手紙書くね、といって走り去った。
朝になった。どうぞお元気で、とペノ※29に話すチャコティ。長旅でしょ、食料よといいマルナがバッグを渡す。気を付けなされ、チャコティ隊員というペノ。気を付けますよ、お世話になりましたと村人に言うチャコティ。手紙を書いたの、お兄ちゃんに届くかなと言い少女が手渡した。やってみるよというチャコティに、ありがとうチャコティさん、この花は敵を近づけないお守りよ、と黄色い花も渡す。チャコティは、じゃあ一つ持ってなさいといい、花を返した。ヴォリ人たちに見送られ、チャコティはジャングルの中へ戻った。
チャコティが銃を構えて歩いていると、低い地鳴りのような音が聞こえてきた。空に異常はない。だがしばらくした後、2隻の飛行機が上空を飛んで行った。爆撃音がする。チャコティは来た道を急いで引き返す。
村では死人があちこちで倒れ、生き残った者はクレイディー人によって集められていた。怒号や泣き声が聞こえる。建物は燃えている。戻って来たチャコティは言葉を失った。銃を構え、下にいるクレイディー人を狙う。しかし背中に武器を突き付けられた。複数のクレイディー人がおり、武器を捨てろ、抵抗したら殺すぞという。連れて行かれるチャコティ。

※26: これはもちろん、ニーリックスがこの惑星のことを知っていたのではなく、トリーン大使との会話の中で仕入れた知識です

※27: Marna
(Marilyn Fox) 声:宮寺智子、DS9 女性可変種、叛乱 アニージュなど

※28: ヴォリ語。blossom

※29: Penno
(Booth Colman 1974年のテレビシリーズ「猿の惑星」でザイアス博士を演じました) 訳出されていません

ヴォイジャー作戦室。シャトルの残骸に細胞の痕跡はなかった、チャコティは生きてる可能性が高いと話すジェインウェイ。残骸は敵のテリトリーで見つかったんですよねというパリスに、悪魔※30に捕まった可能性もあるし、殺されてることもありうるというトゥヴォック。悪い方向ばかり考えるなとパリスは言う。悪魔って呼ぶのとジェインウェイに聞かれ、トリーン大使たちは敵のことを悪魔と呼んでいますと説明するトゥヴォック。最悪な連中です、警告なしに撃つし、細菌兵器は使うし、一般市民も殺すそうですというパリス。チャコティも歓迎されているとは思えませんという。やはり救助チームを送った方が良さそうねというジェインウェイに、そういうのを待ってました、トゥヴォック行こうというパリス。考えた方がいいですよ、私の分析によると成功する望みは薄い、戦闘地帯ということを考えると途中から参戦した方に大きな犠牲が出る確率が高いのです、というトゥヴォック。それじゃチャコティを見捨てろって言うのかというパリスに、とんでもないという。何か戦術を思いついたみたいねと聞くジェインウェイ。リスクを最小限に留めるために、潜入するヴォイジャーのクルーは一人だけでいいと思いますとトゥヴォックは言う。ただしトリーン大使にお願いして奇襲部隊と一緒に出る。僕が行こう、すぐに出ますというパリス。トゥヴォックが考えてる戦術とは違うみたいよというジェインウェイ。トゥヴォックは、当然私がこの任務を遂行するのが論理的ですといった。当然、だねというパリス。
チャコティはクレイディー人に連れられ、他のヴォリ人と一緒にまとめられた。少女が「チャコティさん!」と駆け寄る。「爆音が聞こえたから、助けに戻ったんだ。」 「あいつらに何かされたの?」 「尋問された。おじいちゃんはどこだ。」 「わかんないの。もう年だし心臓も丈夫じゃないから、私がいないとだめなのに。」 チャコティは見張りのクレイディー人に話しかけた。お前の上官と話がしたい、お前に話してるんだという。銃を向けるクレイディー人。巻き添えを恐れたヴォリ人はその場を離れる。チャコティは言う、この子のおじいちゃんに何をしたんだ、心臓の弱い…だがクレイディー人に蹴られ、地面に転がった。少女は、おじいちゃんは夜明けは必ず来るっていつも言ってたと話す。賢い人だなというチャコティ。隣で少女も横になった。そうだな、少し寝た方がいいとチャコティは言う。私も守ってくれる、これからどんな怖いことがあっても、と聞かれ、チャコティは、目をつぶってお兄ちゃんの夢でも見るといいと言った。眠りにつく 2人。
そのまま朝を迎えた。銃の音で目を覚ます。早く立て、というクレイディー人の声。急いでチャコティたちが向かうと、村の中で老人たちがクレイディー人に指示されていた。どこに連れてかれるの、という少女。わからないというチャコティに、収容所に送られて、処刑されてしまうのよというマルナ。クレイディー人は、お年寄り※31のことを労働力にならないとみなしているのだ。生かしておいても無駄だと。おじいちゃん、と叫ぶ少女。ペノが服をクレイディー人につかまれ、連れて行かれようとしている。収容所に送られるのと聞く少女に、いいかカルヤ※32、気を確かにもてという。私がついてないと、というカルヤに、きっとまた会おうな、黄泉の国でと言った。さっさと歩けというクレイディー人。カルヤはたまらずペノに駆け寄ろうとする。だが途中で別のクレイディー人に捕まった。おじいちゃんを放してというカルヤに、だめだという。その子を放せというチャコティにも、銃が向けられる。クレイディー人の司令官※33が、何を騒いでるという。私のおじいちゃんを連れてかないでというカルヤ。その男か、といい連行されるペノを見る司令官。お願い放してというカルヤのあごをつかみ、爺さんが苦しむところを見たくないってことだろ、心配ない、苦しまないように息の根を止めてやると言った。やめて、おじいちゃんと叫ぶカルヤ。司令官は部下に、この子も一緒に収容所に連れて行けと命じた。放して、チャコティさん助けてというカルヤ。チャコティは銃を向けていたクレイディー人を殴り倒し、司令官に飛び掛かった。馬乗りになり、「このけだもの!」といいながら顔を殴る。だが後ろから武器で殴られ、その場に倒れた。
転送室に入り、トリーン大使の一行を転送する準備は、と尋ねるジェインウェイ。できましたというキム。転送されて来たのは、3人のクレイディー人だ。ようこそトリーン※34大使、クルーの捜索のために来てくださって感謝していますというジェインウェイ。礼には及びません、残忍な悪魔、ヴォリに捕まった者なら誰でも、我々クレイディー人の仲間というわけですからとトリーンは言った。握手するジェインウェイ。

※30: nemesis
この言葉は重要な意味をもつため、訳は統一すべきだと思うのですが……

※31: ヴォリ語。gray

※32: Karya
(Meghan Murphy) 声:岡村明美

※33: (ピーター・ヴォグト Peter Vogt TNG第68話 "Tin Man" 「孤独な放浪者」のロミュラン人司令官 (Romulan Commander)、DS9第4話 "A Man Alone" 「宇宙ステーション殺人事件」のベイジョー人男性その1 (Bajoran man #1) 役) クレイディー人の俳優には、他に兵士役で (Pancho Demmings) もいます

※34: Treen
(テレンス・エヴァンス Terrence Evans DS9第15話 "Progress" 「第五の月“ジェラドー”」のバルトリム (Baltrim)、第25話 "Cardassians" 「戦慄のカーデシア星人」のプロカ・ミダール (Proka Migdal) 役) 声:立木文彦、DS9 コール、VOY カラなど

チャコティは仰向けにされ、ひもで地面につながれていた。そこへブローンがやって来た。「チャコティ、安心しろ。今助けてやるからな。」 首と手のひもが外される。「すぐ来られなくて済まない。敵がウロウロしてて近づけなかったんだ。」 水を飲ませるブローン。「ラハナ村のみんなはどうなった」と尋ねるチャコティ。「収容所に連れて行かれた。」 「あんたの部下は?」 「全員やられた。」 「自分だって危険なのに、助けに来てくれたのか。」 「あんたもそうだろ。この惑星とは無関係なのに、クレイディー人と闘ってる。敵からレイフィンを助けようとしてくれたのも知ってるよ。」 「あいつらは、確かにけだものだ。これからどうする。一人で闘うのか。」 「第5分隊と合流して、村の人を救出する。危険が伴う任務だがね。」 「俺も行く。」 「よせ。司令部に連れて行くから、宇宙艦に信号を送れ。」 「それは後でも構わない。とにかく今は敵を仕留める仲間が必要だろう。」 立ち上がる 2人。
第5分隊と加わり、クレイディー人と戦闘を行うチャコティたち。下がれ※35、敵が近づいているというブローン。
ジャングルの中を進んでいると、突然強烈な光と音が発生した。倒れるチャコティ。這いながらブローンに近づく。クレイディー人の声が聞こえる。「ヴォリの隊員よ。お前たちは包囲されている。武器を捨てて降伏しろ!」 チャコティは独り立ち上がり、声の方へ向かって銃を連射する。「発砲するな!」というクレイディー人に、「先に俺を仕留めてみろ!」という。だがクレイディー人は「武器を捨てろ、チャコティ副長」と言った。両手を挙げ、近づいてくるクレイディー人。「撃たないでくれ、副長。」 「なぜ俺の名前を」と聞くチャコティに、「私はトゥヴォックだ」と言った。「トゥヴォック? こっちに来るな。」 「私と一緒に、ヴォイジャーに帰ろう。」 倒れたまま、これは策略だと叫ぶブローン。「これは策略などではない。私はトゥヴォックだ。わからないのか?」 ブローンはクレイディー人に連れて行かれながら、そいつは敵だという。「貴様はけだものだ。村を破壊し、老人ばかりか、カルヤまで連れ去った。まだ子供なんだぞ!」というチャコティ。「あなたは洗脳されているのだ。わからないか。」 一瞬、クレイディー人の姿が揺らめき、トゥヴォックの顔が見えた。「思い出すんだ。シャトルを撃ち落としたのは、ヴォリの方だぞ。そしてあなたを捕まえた。」 「嘘だ、助けてくれたんだ。」 「そう思い込んでいるだけだ。クレイディー人を残忍だと吹き込み、兵士に仕立て上げたのだ。」 「一歩でも近づいたら撃つぞ!」 「あなたは宇宙艦ヴォイジャーのチャコティ副長だ。科学者であり、探検家だ。あなたに私は、撃てない。」 その声も、段々とトゥヴォックのものになっていく。そして顔もトゥヴォックになった。「トゥヴォック…。」 「わかりましたか。」 「なぜそんな姿をしている。クレイディー人はけだものだぞ。残忍なんだ。」 「それは違う。あなたを探すのを手伝ってくれた。ヴォリの訓練キャンプにいることがわかり、そこに潜入したら、あなたは訓練を終えており、既に戦闘に送り込まれた後だった。今までの戦闘は全てシミュレーションだったのです。ヴォリはいつもこういう方法で兵士を訓練している。」 「信じられるか!」といい、銃を向けるチャコティ。「じゃあ証明しましょう。ただし、その武器は下ろして下さい。」 チャコティは、武器を下ろした。
トゥヴォックに先導され、ジャングルを歩くチャコティ。声が聞こえる。この場所に見覚えは、と聞くトゥヴォックに、チャコティはラハナ村だと言った。チャコティが近づくと、ペノが気づき、みんなを呼び、そして駆け寄ってきたカルヤが花輪をかけた。あの時と全く同じだった。チャコティは笑みを浮かべた。
「艦長日誌、宇宙暦 51096.5。チャコティ副長は、トゥヴォック大尉のおかげで、無事ヴォイジャーに帰還することができた。だが心の傷が完全に癒えるまでには、若干の時間が必要だろう。」
医療室。ヴォリ人はいくつかの洗脳テクニックを組み合わせたようだな、恐らく目の錯覚※36を利用し感情を高ぶらせ、高度な技術で精神を操ったと話すドクター。視床下部の状態を見ると、何を言われても鵜呑みにするような精神状態だったことがわかる。俺が経験したことは本当にシミュレーションですかと尋ねるチャコティ。トゥヴォックが潜入した戦い以外は、どうやらシミュレーションの司令官を攻撃すれば、基礎訓練コースを卒業できたみたいというジェインウェイ。一緒に闘った仲間も全員偽物ですか、ネイモンやレイフィンも死んでないんですかというチャコティに、シミュレーションの一部だったことが判明しているという。恐らく仲間意識を高めることが訓練の目的で、仲間の死は怒りを煽る。なぜ私がというチャコティ。ジェインウェイは、偶然よ、たまたまヴォリの上空を飛行していて有望株だと思われた、聞いた話ではヴォリには訓練施設が何十とあり、そこで徴兵しているらしいという。一言で言えば、悪どいプロパガンダでだまされてたってことだな、というドクター。じゃあクレイディー人が一般市民を殺したり、ヴォリの儀式を侮辱してない、というチャコティに、わからないわ、でもクレイディー人はヴォリの方が残忍だといっているのよというジェインウェイ。俺はヴォリの側に立ち、クレイディー人を憎み、全員殺したいと思った、とチャコティは言う。そこへニーリックスがクレイディー人を連れて入って来た。トリーン大使が副長と話したいそうですよ、という。あなたがヴォイジャーに戻ったと聞いてクレイディー人も喜ぶでしょう、あなたをすぐに悪魔から救出できず、申し訳なかったですなというトリーン。チャコティはトリーンの顔を見つめたまま、何も言わない。何か気に触ったかなというトリーンに、違うと思うけど、というニーリックス。チャコティはすみません、失礼しますといい、医療室を出ていった。
追いかけるジェインウェイ。どうかしたの、と尋ねる。チャコティは言った。
"I wish it were as easy to stop hating... as it was to start...."

「一度憎しみを抱くと、簡単には、消えないものですね。」


※35: ヴォリ語。backwalk

※36: 測光投影 photometric projection

・感想
途中までは何というかありがちで、どうせチャコティは仲間として加わるんだろう、というのは明らかにわかるのですが……。そのこと全てが視聴者までを含めた「洗脳」だったわけですね。ヴォイジャーにクレイディー人が乗船したシーンには驚かせられました。またこの「クレイディーのけだもの」のメイクの醜いことといったら…。人は見掛けに依らぬもの、という普遍のテーマでした。結局最後でも、本当はどっちが悪いのかわからないというのも奥が深いです。


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