ピカードが見つめる前で、バランはコントロール装置に手を触れた。
だが首の神経サーボで苦しみ始めたのは、バラン自身だった。絶命する。
タパール:「どうなってるの?」
ピカード:「…シグナルを逆にしておいた。こいつは俺を毛嫌いしていたからな、やっぱり正解だった。」
遺物を手にするタパール。「バランは必要ないわ。…仕事を片づけなきゃ。それにはリーダーがいるわ?」
ピカードは銃を使い、床に転がったコントロール装置を蒸発させた。「神経インプラントは使わない。全員自分のやるべきことをやるんだ、そうすれば金は手に入る。」
タパール:「片づけて。」
ヴェコール:「ナリク?」
ピカード:「コースとスピードは、今のまま維持だ。俺は早速、ブツの届け先を調べるとしよう。」
「了解、艦長。」
ピカードは微笑んだ。
通常航行中のエンタープライズ。
作戦室に通信が入る。『ウォーフよりライカー副長。ヴァルカン保安省の、サトク大臣から機密チャンネルで通信が入っています。』
ライカー:「つないでくれ。」
コンソールに映るヴァルカン人。『やあ、ライカー君。どういった用件かな?』
ライカー:「サトク大臣※21。トーガン星系※22の星々で略奪行為を行っていた傭兵船が、現在ヴァルカンへ向かっていると思われます。」
サトク:『何の話かな?』
「すいません、途中を端折りすぎましたね。…あなた方の秘密工作員が乗り込んでいる、傭兵船のことです。プシー粒子共鳴器の調査をしてらっしゃるのは、存じ上げてます。手違いで撃墜しないよう、事前にお知らせしておこうと思いまして。」
『ライカー君、これは緊急事態だ。…我々は工作員など、送り込んではいない。』
ため息をつくライカー。
コンピューター※23に文章が表示されている。
ピカード:「バランの日誌によれば、ゴルの石の引き渡し場所はヴァルカン星のタカラス神殿※24となってる。」
タパールと名乗っていたタレラ。「そこなら知ってるわ? 最後の内戦の時にある派閥が地下の要塞として使ってたの。何百年も放置されたままよ。」
ピカード:「ガレンよりブリッジへ。ヴァルカン星へ向かえ。」
ヴェコール:『了解。』
「…タパール、君の知恵を貸してもらえんかな。ここに書かれている文字のほとんどは解読することができたんだ。簡単に言えば…この共鳴器と対峙する者への死と破滅の警告だ。だが…どうしてもよくわからない部分がある。実は、ここの…先の部分なんだがね? 例えばだ、こっちの絵文字はヴァルカンの戦争の神でこっちは死の神※25だ。しかし、気をつけてみるとここに 3つめの絵文字があったことがわかる。これは明らかに盗まれた破片に、描かれているんだろう。…だがそこで奇妙なのが、死と戦争の神というのは通常いつもこの対でセットになっていて、ほかに何か加わるということはないんだよ。」
タレラ:「不思議ね※26。だけど考古学には造詣がないの。」
「ぜひ最後のパーツを見てみたいもんだな。ヴァルカン神話の謎を解く重要な鍵になるかもしれん。」
「ヴァルカン星に着いたら、これをまず安全な場所に保管しておいて、それから神殿へ向かうわ? 私一人で十分よ。その方が過激派の連中に警戒されずに済むし。」 共鳴器を手にするタレラ。
「だが、ヴァルカンの軌道に入るのは何の問題もない。エンタープライズからヴァルカン当局に連絡しておくようライカーに命じておいた。我々が行くことは知らせてある。」
「…なぜ、そんなことを?」
「何、念には念というだけのことだよ。誰かが、本当の略奪者だと思わないとも限らんからな。」
「ないとは言えないわね、賢明だわ。」
「…エンタープライズに連絡すべきかもしれんな。彼らもヴァルカンへ呼んでおこう。過激派が逃亡を図ったときの用心のためだ。」
「申し出はとてもありがたいけど、我々の部隊だけで処理できるわ。」
「ああ、そうだな。だが…どういうものかな。独りで行くというのは。…彼らはバランが現れるものと思ってることだし、私も一緒に行った方がもっともらしい口実をつけやすいかも…」
「艦長。結末を見届けたいという人間的な好奇心はとてもよくわかるわ? でもこれはヴァルカンの問題なの。」
ピカードは微笑んだ。「…そうだな。」
タレラ:「それじゃ。」 バランの部屋を出て行く。
傭兵船は赤い惑星に近づく。
ヴェコール:「ヴァルカンの軌道に突入。」
ピカード:「…タレラ、計画を変更することにした。石は一つだけ持って、片方は置いていけ。…もらうものをもらってから残りを渡すことにする。」
タレラ:「向こうは納得しないわ?」
「それは百も承知だ。…だがその方が何かと安心だからな。」
「両方持っていかないと彼らも報酬は出さないわ?」
「喉から手が出るほど欲しがってる、出し渋りはしない。一つはここへ置いて、さっさと行ってこい。」
「何か怪しいと思ってたのよ。ナビゲーションコンピューターを調べて? ファイル名は 137 スラッシュ・オメガよ? エンタープライズに密かにメッセージが送られてるはずだわ? こっち側のフライトプランも含めてね?」
ヴェコール:「ほんとだ。」
「それを送ったのはガレンよ。彼は宇宙艦隊の士官なの。」
ピカード:「ああその通りだ。だが知ってるか? タレラが持っていくその発掘品は、恐ろしく強力な兵器の一部だ。…そしてお前たちに金など入りはしない。…タレラがそれを持って地表へ降り、帰りを待つ間に艦隊に捕まるだけだ。」
ヴェコール:「あんたの狙いなんか知ったことじゃないよ。そいつを自分のものにしようとどこかの誰かに売りつけようとどっちだって構やしないさ。私は金が欲しいんだ。そこで折衷案といこう。…ナリクと私がついてって金がもらえるかどうか確認させてもらうよ?」
ナリク:「その後は、好きなところへ失せな。」
タレラ:「いいわ? 彼も連れてきましょ。艦隊が来たとき人質にできるわ。…来なけりゃ、殺せばいいことよ。」
地下に転送された 4人。
タレラ:「あれよ、約束の報酬。」
箱を調べるヴェコール。タレラは置いてあったもう一つの遺物を手に取っている。
ナリク:「全額あるか。」
ヴェコール:「これじゃ約束の半分にもならない。…残りはどこにある?」
タレラ:「そこにあるだけしかないわ。それだけ持って帰るのね。」 ゴルの石を組み立てる。
ナリク:「遥々来てこのまま引き下がれるか。いま全額よこせ。」
タレラ:「ああ…愚かね。黙って帰ればいいものを。」 ゴルの石を向ける。
ナリクの前にエネルギーフィールドが現れた。それは身体に当たり、何メートルも吹き飛ばされた。
次はヴェコールに向けられる。息をつくヴェコール。
ヴェコールも死んだ。
そしてピカードにゴルの石を向けるタレラ。ピカードはヴェコールが落とした銃※27を見る。
タレラ:「どうぞ、艦長。…フェイザーを拾いなさい? どうなるか見物よ?」
ピカード:「逃げられはしないぞ。連邦創設に貢献したこの星が引き裂かれるのを艦隊が見過ごすと思うか。」
「あなたって人はゴルの石のことがまるでわかってない。今までの敵はあなたと同じだったわ。…船に乗っていて、シールドを張り、エネルギー兵器をもちワープで飛ぶの。でもこれは、今までのどの兵器とも全く違うわ。思念がパワーになるのよ。そこのフェイザーを拾いなさい。」
そこへ、ライカーやウォーフたちエンタープライズのクルーが転送されてきた。
ゴルの石を向けるタレラ。
ピカード:「みんな言うとおりにしろ。…武器を捨てるんだ、早く!」
少し戸惑ったが、言われたとおりにフェイザーを投げ捨てる一同。
ピカード:「よく聞け、敵対心を捨てるんだ。…共鳴器は、暴力的な思考や感情を増幅させる。だからフェイザーを拾わせようとしたんだ。…そしてナリクとヴェコールは死んだ。だが私にはわかる。3番目のパーツの意味がな? それはヴァルカンの平和のシンボルだ※28。死と戦争の絵文字の間に割って入っている。それが教えだ。安らかな心が、ゴルの石を打ち負かす。」
タレラ:「バカな妄想だったと後悔することになるわ。」 ゴルの石を向ける。
「怒りや敵意を全て捨てろ。」
ライカーの前にエネルギーが発生する。震えるタレラ。
フィールドはライカーを通過し、そのまま消え去った。
タレラ:「バカな!」 息をつく。
ピカード:「2,000年前君たちの祖先たちは、絶え間ない戦火に疲れ果てていた。人々は平和を欲し、共鳴器はもう用をなさなくなった。だからこそ壊されたんだ。」
今度はウォーフに対してゴルの石を使うタレラ。ひざまづく。
フィールドはまたも何の効果もなく消え去った。
拳を握るタレラ。
ピカード:「君の言うとおりだった。共鳴器に対抗できるのはフェイザーやシールドじゃない。…平和を求める心だけだ。」※29
それでもタレラはゴルの石をピカードに向けるが、やはり意味はなかった。
石を手にするピカード。
エンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 47169.2。保安省のサトク大臣にタレラを引き渡した。ほかの過激派メンバーの捜査も始まったようだ。』
ヴァルカンを離れる。
ライカー:「艦長が船にはいらっしゃらないのを感知したので、例の神経インプラントの信号をスキャンしてあの洞窟の中だとわかったんですよ。」
データ:「共鳴器はどうなるんです?」
ポケットに手を突っ込んだまま歩くピカード。「サトクは今度こそ完全に、破壊すると言っていたよ。」
データ:「研究できないのは残念ですね。あの共鳴器は銀河の歴史上非常に重要です。」
「普通なら私もそう言うところだなあ? だが、歴史に埋もれた方がいいものもある。」
ライカー:「傭兵たちの処分は。」
「当面はヴァルカン当局に拘留されるはずだ。だが彼らはあちこちから訴えられていてね。」 あくびするピカード。「クリンゴンにカーデシア、フェレンギ、そのほか 7つの星からだ。しばらくは自由になれまい。ウィル、第227宇宙基地へ向かってくれ。あとでブリッジへ行く。」
「記録では、艦長は亡くなってます。命令はできませんよ。」
データ:「…記録のことをおっしゃるなら宇宙艦隊の規則に正確に従った場合、副長は反逆者となります。加えて、12 の法規違反で軍法会議にかけなければなりません。…あなたも命令はできません。」
ピカード:「当然だな。私は死んでいるということだから、部屋で一眠りしよう。データ少佐、ライカー副長は営倉にお連れすべきだな?」
「了解。」
自室に入るピカード。
ライカーは笑い、廊下を歩いていこうとした。
だがデータが腕をつかんだ。「こちらです。」
ライカー:「…さっきのはジョークさ。…おいわかってるんだろ? データ!」
ワープ航行を続けるエンタープライズ。
|
※21: サトク保安大臣 Secutiry Minister Satok (マーティン・ゴスリンズ Martin Goslins) 声はラフォージ役の星野さんが兼任。LD ではほかに星野さんの担当として「スバーン」なるキャラクターが掲載されており、格闘家のダン・スバーンから (勝手に) 名づけたものと思われますが、どのセリフを指しているのかは不明
※22: Taugan system エンサイクロペディアでは「トーガン星域 (Taugan sector)」になっています
※23: TNG第136・137話 "Chain of Command" 「戦闘種族カーデシア星人」で使われた、ガル・マドレッドのカーデシア・コンピューターの再利用
※24: T'Karath Sanctuary
※25: 当初は髪がない姿でしたが、ピカードが連想されるのを避けるために変更されました
※26: "Fascinating."
※27: TNG "The Most Toys" で使われた、ヴァロン・T ディスラプターの使い回し
※28: 映像でははっきり出ていませんが、設定上はヴァルカンの IDIC シンボルだそうです。TOS第62話 "Is There in Truth No Beauty?" 「美と真実」より
※29: ここでタレラが腕につけているエンブレムは、TNG第59話 "The Hunted" 「恐怖の人間兵器」で使われた、アンゴジア人のエンブレムの使い回し
|