USS Kyushuトップに戻る

TOS エピソードガイド
第14話「ゴリラの惑星」
The Galileo Seven

dot

・イントロダクション
※1静止しているエンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 2821.5※2。エンタープライズ※3は医薬品を積んでマーカス3番星※4に向かっている。コース前方に横たわっているのは、もやか星雲のようなムラサキ現象※5だ。私達はこのチャンスを逃さず調査することにした。船には医薬品の運搬を監督するためにフェリス銀河コミッショナー※6が同乗している。』
スクリーンに映る緑色の星間現象。
ブリッジに制服を着た男性が入った。
カーク:「船長より宇宙艇ガリレオ※7へ。ミスター・スポック待機。」
男性:「…予定に組み込まれていない調査には反対だ。宇宙植民地ニューパリ※8へ転送が行われる前に、マーカス3番星からの宇宙艇に※9緊急医薬品を届けるのが君の任務だぞ。」
「その点は御心配いりません。コミッショナーも御存知でしょうが、場合を問わずクエイザー※10現象に遭遇した場合は優先的に調査するよう命令を受けています。マーカスまで…わずか 3日です。…しかもランデブーが行われるのは 5日後です。」
フェリス※11:「危険は冒したくない。もし医薬品の到着が遅れたら、ニューパリは伝染病で滅びる。」
「ご心配なく。…船長からガリレオ、異常なし。予定通り出発。」

ハンガーデッキ※12内のシャトルが、台の上を回転する。
操作するスポック。「出力アップ、全計器作動。作動状態正常。異常なし。」

カーク:「宇宙艇、出発。」

ドアが開き、ガリレオが進み出した。
宇宙空間に飛び立つ。

航行中の※13シャトル。
秘書のミアス※14。「計器、異常なし。加速、異常なし。離脱第一段階、異常なし。」 中にはスコットやマッコイたちがいる。
スポック:「位置。」
操舵士官のラティマー大尉※15。「3.7 です。」 計器の針が乱れている。「あの…」
スポック:「私を信頼したまえ、ラティマー。」
「計器がイカれてますよ。」
科学士官のボーマ大尉※16。「予測していたことです。クエイザーの影響は強い。問題はその程度です。」
スポック:「かなり強いはずだ。」
ミアス:「放射能が、急激に増加。」
揺れるガリレオ。
スポック:「前進運動を中止しろ。」
ラティマー:「…駄目です、反応ありません。」
「ガリレオからエンタープライズ。エンタープライズ、応答願います。」
ボーマ:「イオン干渉波です。」
マッコイ:「どんどん引きつけられるぞ。」

スポック:「ガリレオからエンタープライズ、ガリレオからエンタープライズ。…現在ガリレオはコントロールを失い、ムラサキ現象の中心部へ一直線に引き寄せられていきます。…艇の、外部に強烈な放射能を観測中。…コース、3.25!」

エンタープライズのカーク。「連絡は。」
ウフーラ:「ほとんど聞き取れません。コースを外れたとか言ってるようですが。」
「ガリレオの位置を確認したまえ。」
スールー※17:「走査機が動きません。計器類も全て異常な反応を示して、予測不可能です。」
スコープを覗くカーク。
コンピューター※18:『マイナスイオン濃度 1.64×10 の 9乗メートル。放射線波長 370オングストローム。ベクトル分析によれば高調波増加中。』
フェリス:「どうしたんだね。」
カーク:「お聞きのとおり、付近が完全にイオン化されました。計器が役に立ちません。付近に少なくとも太陽系が 4つもあるこの宇宙の彼方でコースを外れ、わずか 8メートルにも満たない※19小さな宇宙艇があてもなくさまよっています。発見するのは大草原で針を探すようなものです。」


※1: ハヤカワ文庫のノヴェライズ版は、「宇宙大作戦 最後の栄光」収録「〈ガリレオ〉号の七人」になります

※2: 吹き替えでは「0401.6295」

※3: 吹き替えでは「エンタープライズ

※4: マーカス3号星 Makus III

※5: 正確には「ムラサキ312 (Murasaki 312)」。Murasaki Effect と呼んでいる個所もあります

※6: 吹き替えでは「銀河連盟のフェリス・コミッショナー」。「銀河連盟」というのは連邦の訳語ではありません。脚注※11 参照

※7: シャトル・ガリレオ Shuttlecraft Galileo
7号機、初登場。数学者・天文学者のガリレオ・ガリレイ (1564〜1642) にちなんで。シャトル (今回の吹き替えでは宇宙艇) が登場するのは初めて。TOS第5話 "The Enemy Within" 「二人のカーク」を含め、シャトルがストーリー上存在してないように見えたのはそのためです。映画「ブレードランナー」(1982) などに関わった、Gene Winfield デザイン

※8: New Paris colonies

※9: 原語では「マーカス3号星に」としか言っていません

※10: クエーサー quasar
一般的には、クエーサーは十億光年単位にも及ぶ遠距離にあるとされます

※11: フェリス銀河高等コミッショナー Galactic High Commissioner Ferris
(ジョン・クロフォード John Crawford) このエピソードの時点ではまだ設定されていないようですが、「連邦」の高官と見なして構わないものと思われます。声:大木民夫、旧ST4 スポック、VOY ブースビー、新旧ST2 カーン、旧ST5 サイボック、叛乱 ドアティなど (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※12: hanger deck
初登場

※13: TOS の国内オンエア分では、カット部分が存在しています。完全版ビデオ (第1シーズンの一部) および DVD には吹き替えつきで完全収録されており、このエピソードガイドでは色を変えている個所にあたります (スーパーチャンネル版との比較)。LD では基本的に、その部分だけ字幕収録です

※14: ミアス秘書 (下士官) Yeoman Mears
(フィリス・ダグラス Phyllis Douglas TOS第75話 "The Way to Eden" 「自由の惑星エデンを求めて」の少女その2 (Girl #2) 役) 階級は訳出されていません。当初はジャニス・ランドの予定でした

※15: Lieutenant Latimer
(リース・ヴォーン Reese Vaughn) 声:森功至 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※16: Lieutenant Boma
(ドン・マーシャル Don Marshall ドラマ「巨人の惑星」(1968〜70) に出演) 声:中田浩二 (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※17: 声は通常の富山敬さんではなく、納谷六朗さん (VOY スールー、TNG レミック、DS9 初代ウェイユンなど) が代役で担当しています (DVD・完全版ビデオ補完も継続)

※18: コンピューター音声 Computer voice
(メイジェル・バレット Majel Barrett)

※19: 原語では「24フィートの」。約7.3m

・本編
『航星日誌、宇宙暦 2821.7※20。ムラサキ現象として知られる電磁現象は、宇宙の怒れる光のごとく輝いている。行方不明になった宇宙艇ガリレオからは依然として何の連絡もなく、エンタープライズ※3の走査装置も一切役に立たない。これでは、視力を失ったのと同じだ。』
ブリッジ。
フェリス:「だから最初にわしが反対したじゃないか。マーカス3番星に医薬品を運ぶのが我々に与えられた任…」 女性クルーが運んできたカップを手にする。
カーク:「それは知ってますが、私には常に科学的任務を遂行する義務がある。ムラサキ現象の調査はその一つです。」
「そのために部下を失ってもいいのか。」
「…2日あれば探せます。」
「2日?! 大宇宙の中の、ゴミのようなものをたった 2日…」
「じゃどうすればいいんです。見殺しにするんですか。」
「だから派遣しなければよかったんだ。」
ウフーラ:「船長。この太陽系の中に人間が生存できる惑星が一つあります。Mタイプで、酸素窒素を所有して未調査。…登録名はトーラス第2惑星※21です。計器が狂っているので確証はありませんが、計算ではムラサキ現象の中央に位置していると思われます。」
カーク:「…ありがとう。ミスター・スールー。」
スールー:「はい。」
「トーラス第2惑星にコースをセット。」
「わかりました。」

ガリレオ※22は地表にいた。辺りは岩だらけだ。
頭を押さえるラティマー。機械が煙を出している。
倒れたミアス。スポック以外は皆苦しんでいる。
首を振り、隣のガエタノ大尉※23に話すマッコイ。「大丈夫か?」
ガエタノ:「はい。」
「スコッティ。ボーマは。」
ボーマ:「…分解するんじゃないかと思いましたよ…。」 鼻血を出している。
「ミアスは?」
ミアス:「頭に、コブができただけです。」 微笑む。
「うん。大丈夫か。」
「ええ、すいません。」
ラティマー:「どうしたんだ。」
ボーマ:「よくわからんが、まあ多分その…ムラサキ…現象の重力が…」 マッコイから布を受け取る。「ありがとう。作用して、宇宙艇のスピードが幾何学的に倍加されて、ムラサキ現象の中央目がけて猛スピードで突っ込んだんでしょう。ピストルの弾みたいに。」
スポック:「ミスター・ボーマ、君の評価は当を得ている。」
機器を見るスコット。「メチャメチャだなあ。」
スポック:「結果に驚いていては壊れた回線を修理することはできん。そういうところが無駄だと言うんだ。」
「はいはい。」
「ガリレオからエンタープライズ、ガリレオからエンタープライズ、応答願います。」
「まさか通じると思ってるんじゃないでしょうねえ。」
「期待は、していなくっても全ての方法を試みるのが当然だろ? ドクター、外気の分析をどうぞ。」
トリコーダーを使うマッコイ。「酸素の部分圧力は 70水銀ミリメートル。窒素は 140 だ。マラソンでもやらない限り息はできそうだな。」
スポック:「科学的な事実だけを言って下さい。」
「アルゴン、ネオン、クリプトンは全て許容量の範囲内だ。でも避暑地としてはあまり推薦できんね?」
「ご意見ありがとう、考慮に入れましょう。全て、記録してるかね?」
ミアス:「もちろんしてます。」
「よーし。スコットは破損の程度を詳しく、調査してくれ。」
スコット:「了解。」
「では諸君、我々がいるとスコットの仕事に差し支えるんで外へ出よう。ミスター・ラティマー、ミスター・ガエタノ、2人は武装して宇宙艇に目が届く範囲内で周囲を偵察したまえ。」
ガエタノは納められていたフェイザーを手にする。
ラティマー※24:「わかりました。」
ベルトも手にし、外に出るラティマーとガエタノ。
マッコイ:「エンタープライズと連絡できる可能性はあるのかね。」
スポック:「現状ではほとんど期待できませんね。」
「見つけてくれるかもしれんな?」
「もしこのイオン化が予想通り広範囲に渡るものなら、エンタープライズの計器類も全て役に立たないでしょう。頼れるのは、肉眼だけでしょうね。となると、この惑星は非常に大きいので。」
「我々を見つけるのは無理か。」
「ここにいる限りはね。長期戦の心構えが必要ですね。」

惑星軌道上のエンタープライズ。
ウフーラ:「反応ありません。」
カーク:「ミスター・スールー。」
スールー:「はい。」
「走査機はどうした。」
「役に立ちません。止まってしまって。」
「補助エネルギーに切り替えてみたのか。」
「はい、駄目でした。」
「…転送ルーム、こちら船長だ。転送装置の異常はどうした。」
転送部長:『まだ完全には直りません。機械で試してみましたら、分解されて戻ってきましたので。とても人間には使用できません。』
「わかった。…こちらカーク船長。飛行デッキ。コロンブス※25出発用意。惑星の調査を命ずる。位置はスールーに確認せよ。以上。その後どうだ。」
ウフーラ:「全周波とも、イオン化現象の影響を強く受けていて。送信も受信も不可能な状態です。」
フェリス:「どうする気だ。」
目を押さえるカーク。「…とにかく 2823.8時までは※26、捜索を続けます。その間に、何とか進展します。」

フェリス:「発見できると本気で思っとるのかね。」
「行方不明になったのは全員私の友人と部下です。従って最後の瞬間まで、望みを捨てず捜査を続けます※27。」
「よしわかった。その代わり延長は一秒も認めん。それを忘れるな? 疑問があるなら第19巻 433節第12項を読み返せば…」
「法規やコミッショナーの権限は人に言われるまでもなく、よく理解しているつもりですよ。宇宙艇コロンブス、出発。」

宇宙空間を飛行するシャトル・コロンブス※28

ガリレオのエンジンを調べるスポック。たくさんの道具が置いてある。
マッコイ:「これじゃああんまりめでたくはないが君にとってはチャンス到来ってわけだな。」
スポック:「私にとっては? 何のチャンスです。」
「実行だよ。…口に出して言ったことはないが、最高責任者は全て理論※29を基本に指揮を執るべきだと君は信じてるはずだ。違うか?」
「理論は好みませんか。」
「理論だけで救われると思うか。」
「しかしまず理論的にことを運ぶよりないでしょう。…たとえこのような状況下でも指揮を執るのは魅力的な行為のようですが、私にとっては別に嬉しくもなければ…怖くもありませんね。現実問題として、理論的に必要なことを実行するだけです。失礼。」
中に戻るスポック。

修理中のスコット。「大変なことになりました。」
スポック:「何がだね。」
「燃料が残り少なくて、これではまず引力脱出速度が得られませんねえ。周回軌道に乗るにしても、250キロほど※30重量を減らさないと無理でしょう。」
「ふーん。人間にして 3人分か。」
「ええ、まあそんなとこですね。」
マッコイ:「道具類を捨てればいいじゃないか。」
スポック:「わずかな例外を除いて、当宇宙艇の装備をフルに使用しなければ正確な軌道には乗れません。…従って減量できるのは、人間以外にはないでしょう。」
ボーマ:「じゃあ誰か 3人残れって言うんですか?」
「事態に変化はない限り、そうだなあ。」
「誰が決めるんです。」
片眉を上げるスポック。「…最高責任者として、それは私の仕事だ。」
ボーマ:「みんなにクジでも引かせるつもりですか。」
「非常に面白いアイデアだが無差別にクジを引いて選ぶより、私の判断で決めた方が遥かに正当な答えが出る。」
「じゃあ決めてもらおう。誰だ。」
「…理論的な手段を通じて、理論的に決めるだけだ。」
マッコイ:「ミスター・スポック、生死は理論じゃ説明できんぞ。」
「ある目的を達成するためには理論が一番だ。では諸君もう一度艇の外傷を調べたいので、協力してもらいたい。先ほど見逃した個所が、あるかもしれない。」 出ていくスポック。
ボーマ:「何でも理論理論って、ミスター・スポックは頭に傷があるんじゃないですかね。」
マッコイ:「いや、頭にはないね。…彼の傷は…心だよ。」

岩場を進むラティマーとガエタノ。霧が漂っている。
動物のようなうなり声が聞こえてきた。
ラティマー:「何だあれは。」
ガエタノ:「何だろう。上から聞こえるぞ。」
「…いやあっちからだ。」
「…大変だ、囲まれたようだ。」
「早く抜け出そう。」
岩を登るラティマー。相手の姿は見えない。
石槍。盾も持った毛むくじゃらの人物※31が、槍を投げた。
叫ぶラティマー。背中に槍が突き刺さったまま、落下する。

声に気づくスポック。「ボーマ、来い!」

下に降り、フェイザーを発射するガエタノ。あちこちに向けて撃つ。
トーラス人の声が響く。大きな槍が地面に突き刺さっている※32


※20: 吹き替えでは「0401.6297」

※21: トーラス2号星 Taurus II
おうし座にちなんで。マーカス3号星が「3番星」と訳されているのに、こちらは「第2惑星」ですね

※22: エンタープライズのモデルキットを手がけたメーカー、AMT による実物大模型。Stephen Whitfield (ジーン・ロッデンベリーと共に書籍 "The Making of Star Trek" を執筆、後の Stephen Poe) によって、模型を造る代わりにシャトルのキット発売権を獲得するという契約が結ばれました

※23: Lieutenant Gaetano
(ピーター・マルコ Peter Marko) 声:仁内達之、旧ST5 スポック、旧ST6 マッコイなど

※24: 吹き替えではガエタノが話しているようですが、口は動いていません (原語では判別できず)

※25: Columbus
シャトル・コロンブス (Shuttlecraft Columbus)、2号機。探検家クリストファー・コロンブス (1451〜1506) にちなんで

※26: 吹き替えでは「2日間は」

※27: この部分は、DVD・完全版ビデオでは前のカットとまとめて吹き替えし直されているため、「望みを捨てず捜査を続けます」「よく理解しているつもりです」と微妙に違いがあります

※28: コロンブスは 2号機という設定ですが、ガリレオの使い回しであるため "NCC-1701/7" と見えます

※29: 論理を理論と訳している個所が、多数見受けられます。「妥当」という訳も

※30: 原語では「500ポンド」、約227kg

※31: 怪物 Creature
(バック・マフェイ Buck Maffei) 吹き替えなし

※32: この場面でカメラが下に移動する際に、槍の先端部分を隠すように不自然な青い模様が挿入されています。ラティマーの足だけは辛うじて見えますが、突き刺さっているシーンが残酷ということで後から処理されたんでしょうか?

駆けつけるスポック。「相手は。」
呆然と槍の前に座っていたガエタノ。「ものすごくでっかい、怪物です。フェイザーが当たったはずなんですが。」
歩いていくスポック。
ボーマ:「…姿を見たのか。」
ガエタノ:「…でっかいゴリラみたいな奴だった。」
「可哀想に。」
「どうすることもできなかった。」
「来なきゃよかったと。」
戻ってきたスポック。「何にもいないぞ。」
ガエタノ:「だって、見たんですよ。」
「それはわかってる。」
「フェイザーが当たったんだ、必ずいるはずです。」
スポックは槍を引き抜いた。「フォルサム石器※33だ。」
ボーマ:「何です?」
「これは 1925年に北アメリカ、ニューメキシコで発見された石器時代の矢じりに非常によく似ている。向こうはもう少し荒削りだったが、野蛮な武器だなあ。」
「野蛮な武器? …それしか言うことはないのか!」
「私に落ち度があったか?」
「先生に落ち度? あるわけないさ。」
「じゃあ何が不満なんだ。」
「ここで人間が一人死んでるんだぞ! …なのに矢じりのことなんか気にして。ラティマーはどうなる!」
スポックは槍を放り投げた。「…ここで私が何を言っても死人は生き返らん。」
ガエタノ:「ミスター・スポック。死人にはもう用はないので、ここへ置いていけとは言わないでしょうね。」
「…持ち帰っても宇宙艇の修理に支障は来さないだろう。必要なら手伝っても?」
「2人でやります。…おい、ちょっと手を貸してくれ。」
戻っていくスポック。ガエタノとボーマはラティマーの遺体を運ぶ。

エンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 2822.3※34。捜索活動を続けるが、依然として手がかりは得られないままだ。時間は刻々と進み、やるせない焦燥感ばかりが募っていく。』
ウフーラ:「船長。コロンブスが、エリア 779-X・534-M の調査を終えました。成果なしです。」
カーク:「次のエリアに移れ、走査機の方はどうなってる。」
「依然として、使用不可能だそうです。」
「転送装置はどうだ。」
「まだ安全ではないと。」
「わかった、ありがとう。」
フェリス:「船長。」
「何でしょうか?」
「私とてクルーを置き去りにするのは本意ではないが、しかしこのままでは…」
「わかっています。」
「時間が迫ってるぞ。」
「忘れてはいませんよ。転送ルーム、パワーを最大に上げてみろ。何としても動かすんだ。」
転送部長:『了解。』
「ウフーラ、コロンブスに伝えろ。調査範囲を角度 2度ずつ広げるように。」
スールー:「しかし、船長。角度を広げた分精度が下がり、見逃す部分も多くなるのでは。」
「だが惑星表面の広い範囲をカバーできる利点もある。君は操縦に専念しろ。」
「了解。」
ブリッジを出ていくフェリス。「あと 24時間だぞ。」


ガリレオ。
スポック:「基本吸入バルブを通して、第2予備タンクにつないでみたらどうだろう。」
床下の装置を見ているスコット。「難しいですねえ、圧力に耐えきれないんじゃないですか?」
マッコイが荷物を持って後部から出てきた。「こいつで少なくとも 25キロは軽くなる。」
スポック:「結構ですね。」
ミアス:「こちらも後 50キロ軽くなります。」
「しかし依然として後 70キロ※35はオーバーする計算になる。」
マッコイ:「君は本気で誰かをここに置いていくつもりか? ここには得体の知れない怪物がいるっていうのに…」
「犠牲は 6人より一人で済ませる方が、合理的じゃないですか?」
「この際そんなことは問題じゃない!」
「理性を失わないように。」
ドアが開き、ボーマが報告する。「どうぞ、用意できました。」
スポック:「何のだ。」
「ラティマーの葬儀です。」
「…一秒が運命を決するときだ。」
「仲間が死ねば弔ってやるのが当然でしょう! …艇長として出席してください。」
「ドクター、こういう場合はあなたの方が適任でしょう。」
マッコイ:「ミスター・スポック。これは君の義務だ。」
「ドクター、お願いです。代役を務めてください。」
「みんなここで死ぬかもしれないんだぞ、死ぬときぐらい人間並みに扱ってやったらどうなんだ!」
「救われるチャンスを少しでも多くしたいために、意味のないことはしたくないだけです。…どうだ、具合は。」
スコット:「ちょっとここを手伝ってもらえますか。」
出ていくボーマ※36

計器の針を見るスコット。「圧力が落ちてきた。見込みなしですね。」
スポック:「どうした。」
「回路が切れました。手前でつなごうとしたとき無理したことと、外からの圧力が加わって。さ、これで終わりだ。燃料なしですよ。」
「そうか、これで誰を残すか決めなくてもよくなりそうだ。…ほかの手段を考えて試そう。」
「燃料がなきゃ何もできませんよ。」
「待ちたまえ、ほかにも方法は必ずある。」
マッコイ:「ミスター・スポック! どうも外の様子がおかしいんだ。」 後部から出てくる。

岩陰に隠れているボーマとガエタノ。トーラス人の声が聞こえる。
出てくるスポックたち。
マッコイ:「君の超能力を備えた耳で何かわかるかね。」
スポック:「木だ。何かの皮で木をこすってる。」
ガエタノ:「襲ってくるぞ。必ず来る。」
ボーマ:「とは限らんさ。何か儀式をやってるんじゃないのか。めでたいことでもあって。」
スポック:「儀式とは思えんな。あんな石器を使用してるようでは、そこまでまだ文化は発達していないはずだ。」
ミアス:「どうしたらいいんですか。」
ボーマ:「一つしかないな。奴らはきっと、固まって住んでるんだ。それを利用すりゃいい。」
スポック:「何をしてだね。」
「反撃するんですよ。我々に手を出したら、ひどい目に遭わされると思い込ませりゃいい。」
ガエタノ:「賛成ですね。何もしないでこのまま待ってちゃ、どうぞ殺しに来てくださいって言うようなもんですよ。」
スポック:「ふーん、君たち地球人※37は何かというとすぐに殺しだねえ。」
「自分の命が惜しいからです。…先手をとってこちらから攻撃しましょう。」
「ミスター・ボーマは。」
ボーマ:「賛成だな。」
「ドクター・マッコイは。」
マッコイ:「妥当な意見だね。」
「なるほど? 私も妥当だと思う。しかし無闇に生命を奪うのは。」
ガエタノ:「多数決です。」
「ミスター・ガエタノ、私は単なる多数意見には興味はない。…問題はその内容だ。…我々は当然ほかの生命も、尊重しなくてはならない。たとえ敵でもだ。……ほかの手段を取ろう。」
「皆殺しにされますよ。」
「心配ない。ドクター・マッコイ、ドクターはミアスと共に艇に戻って修理を手伝ってください。私達もすぐに戻ります。」
マッコイ:「よし。」
「諸君、今後私の命令に従って欲しい。…撃つ目標は私が選んで、チャンスが来たら指示を与える。」
ガエタノ:「そうこなきゃな。」
「断っておくが撃つのは殺すためではなく、脅かすためだ。」
ガエタノはスポックに近づいた。「何ですって。ラティマーを殺した奴らですよ!」
スポック:「最高責任者は私だぞ! 与えた命令には私が責任をもつ。…来たまえ。」
ボーマはガエタノの肩に触れ、スポックについていく。ガエタノも従った。

岩場を進む 3人。トーラス人の声は大きくなっている。
槍を構えるトーラス人。
3人が歩いているすぐ目の前に、槍が降ってきた。フェイザーを撃つスポック。
それはトーラス人の盾に当たる。巨大な盾だけが落ちてきた。
先へ進む一行。
ガエタノ:「ひどいもやだな。」
ボーマ:「何も見えません。」
スポック:「音を聞け。我々の正面にいる。5、6匹だろう。フェイザーで 2時方向を狙いたまえ。君は 10時方向だ。」
ガエタノ:「真っ直ぐぶちかませばいいでしょ。」
「命令は私が出していることを忘れるな! 位置について、私が合図したら撃ちたまえ!」 岩場を登るスポック。「…撃て!」
フェイザーを発射するボーマとガエタノ。
スポック:「撃ち方やめ。」
トーラス人の声は聞こえなくなった。
スポック:「これで簡単には襲ってこない。」
ガエタノ:「ぶち殺してやればよかったのに。」
「殺す必要はない! 恐怖感を与えればことは足りる。ミスター・ボーマ、私とガリレオへ戻りたまえ。ミスター・ガエタノはここに残り監視を続けるように。」 歩いていくスポック。
ボーマもガエタノに触り、後に続いた。またトーラス人の声が聞こえてくる。
しゃがむガエタノ。

ガリレオに戻るスポック。
ミアス:「やっぱりいました?」
スポック:「いたが、もう二度と襲ってこないはずだ。」
マッコイ:「だといいがな? …アイデアがあるそうだぞ。」
スコット:「…危険ですが、望みはあります。」
スポック:「よし、話したまえ。」
「…メイン原子炉に手を加えて、代用燃料で動かすのはどうでしょうか。」
「結構だが肝心の代用燃料がないだろ。」
「それがあるんですよ、フェイザーです。フェイザーのエネルギーを利用しましょう。時間をかければできますね。」
マッコイ:「しかし、武器を捨てることになるな?」
スポック:「残された方法はそれだけかね?」
スコット:「そうです。」
「……ミアス、フェイザーを。」
ミアス:「怪物に襲われたらどうします?」
「あと数時間は襲ってこない、それまでに脱出できるかどうかだ。」
スコット:「全部集めれば何とか周回軌道には乗れるはずです。長時間は無理でしょうが。」
「長時間周回軌道に乗る必要はない。…24時間以内にエンタープライズ※3は捜査を打ち切って、マーカス3番星に向かうだろう。…それ以後はいくら周回軌道に乗っても、何の意味もない。やがて軌道から落ちて燃えるか、再びここに戻って死ぬか、そのいずれかだ。ドクター。フェイザーを。」
マッコイは少しためらったが、渡した。
スポック:「作業を続けろ。」
スコット:「わかりました。」 床下を開ける。

エンタープライズ。
転送台に様々な機械類が転送されてきた。転送室に入るカーク。
転送部長※38:「無事戻ってきました。これなら人間を転送しても心配ないでしょう。」
カーク:「よし。こちら船長。第1、第2、第3上陸班は直ちに転送ルームへ集合。惑星の表面へ転送する。1-A 武装を行え。」
「船長。大きい惑星なので、運に恵まれないと発見できないでしょう。」
「その運に懸けているんだ。今となっては運に頼る以外にない!」 出ていくカーク。

トーラス人の声に怯えるガエタノ。フェイザーを構えるが、その手に向かって岩が落ちてきた。
フェイザーを落としてしまう。さらに槍も降ってくる。
岩場をよじ登ろうとするガエタノ。だが無理だ。
ガエタノは動きを止める。すぐそばにトーラス人が来ていた。
両手を挙げ、近づいてくる。ガエタノは無言で座り込んだ。
トーラス人は手を振り下ろした。叫ぶガエタノ。


※33: Folsom Point

※34: 吹き替えでは「0461.6298」。「0401.6298」にならないと明らかに変ですね

※35: 原語では順に「50ポンド」「100ポンド」「150ポンド」。50ポンド=約22.7kg

※36: 自動ドアが閉まる瞬間、下部を手動で戻しているボーマらしき人物の手が見えます

※37: 通常の human ではなく、あえて Earthmen という言葉を使っています

※38: Transporter Chief
(デイヴィッド・ロス David Ross TOS第12話 "Miri" 「400才の少女」などのギャロウェイ大尉 (Lt. Galloway)、第66話 "Day of the Dove" 「宇宙の怪! 怒りを喰う!?」のジョンソン大尉 (Lt. Johnson) 役) 声:DVD・完全版ビデオ補完では星野充昭、TNG ラフォージなど (通信のみ)

スポック、マッコイ、ボーマは巨大な足跡を見ている。
フェイザーを拾うスポック。「ドクター、このフェイザーをスコットに渡していただけませんか。」
ボーマ:「ガエタノが奴らにやられたかもしれんのに。よく平気な顔をしてそんなことが言えるもんだな。」
「万一私が、戻らなかったら後は御願いします。」 スポックは自分のフェイザーも渡した。
マッコイ:「どこへ行くつもりなんだ?」
「科学主任として、ミスター・ガエタノに何があったか興味がありましてね。早く艇に戻ってください。」 スポックは歩いていった。
「…わからんな、命懸けでガエタノを探しに行くぞ。見つけたら例の調子で一言戻れと言うだけなのに。…変な男だ。」
ボーマ:「ガリレオほんとに飛べるんですか。」
「このフェイザーがないとちょっと無理だな。」

岩場を独り歩くスポック。
ガエタノの遺体が転がっていた。見つけたスポックは少し考えた後、遺体を抱える。
戻っていくスポック。その途中、また槍が襲ってきた。
何本も落ちてくるが、幸い当たらない。


シャトルのところまで戻ったスポック。まだ槍の攻撃はあちこちから続く。
ガエタノの遺体を運ぶマッコイたち。スポックも中に入った。
座ったまま無言のスポック。ボーマも何も言わない。
マッコイ:「君の理論はどうなった。数時間は襲ってこないはずじゃなかったのか?」
スポック:「理論に反した反応ですね。優れた武器を示せば逃げて当然なのに。」
「我々に敬意を表してかね。」
「もちろんです。」
「ミスター・スポック、敬意は理性から生まれるものだぞ。彼らが感情的に行動するとは思わなかったのかね! 怒ってだ!」
「彼らの行動には私は何の責任もありません。」
「こうなることは予測できたはずだ。感情をもつ者には。我々を危険に陥れたのは、君の得意とする下らん理論だぞ?」
スポックは眉を上げた。
ミアス:「なぜ襲ってこないのかしら。」
スポック:「観察する気だろ? 当分は。」
ボーマ:「また御得意の理論か。」
「理論ではなくて意見だ。」
トーレス人の声が響き、シャトルが揺れた。
船体に巨大な岩を打ち付けている。
スポック:「窓を閉めろ!」
マッコイ:「当分は観察か? また予想が外れたな。」
ボーマ:「どうすればいいんだ、そのいい頭で考えてみろ!」
スポック:「挑戦的な言い方はやめたまえ。」
「あんたと付き合ったら誰だってこうなるんだ、ミスター・スポック!」
「不思議だ、彼らの行動は。」
「いい加減にしろ、もう理論は聞き飽きた!」
ミアス:「あなたにはインスピレーションがないの?」
スポック:「おかしい。一歩ずつ慎重に理論的に判断を下したのに、2人も殺された。」
岩を打ち続けるトーレス人※39
マッコイ:「理論が嫌いな君の友達が飛び乗ったぞ。」
スポック:「彼らに関する打算を間違えたために、諸君の反論を許す結果を招いてしまった。しかしこれはあくまでも例外のはずだ。」
「まだ理論にこだわってるのか、それより何か行動をとったらどうだ、行動を!」
「後どのくらいかかる。」
スコット:「2時間もあれば大丈夫です。」
マッコイ:「もっと早くできんのか。」
「ドクター、フェイザーはそう簡単には移せません。」
攻撃をやめないトーレス人。
ボーマ:「このままだと宇宙艇をぶち壊されるぞ! 何とかしなきゃ駄目だ!」
スコット:「祈るよりないな。」

エンタープライズ。
『航星日誌、宇宙暦 2823.1※40。上陸班はトーラス第2惑星に転送され捜査を続けている。この頃になってイオン嵐が少し収まり、計器類がわずかずつ正常に戻ってきた。船にいる我々はただ待つのみである。』
カウンターの秒数が増えていく。
ブリッジに入るフェリス。
カーク:「物質探知部から何か。」
ウフーラ:「先ほど少し使えるようになった…」
「先ほどは関係ない、現状を報告しろ。」
「はい。」
フェリス:「残り時間は後 2時間43分※41だ。」
カーク:「残り時間は誰よりも私がよく知っています。」
「念のために今後も言わせてもらうつもりだよ。」
「どうぞ。」
ウフーラ:「探知部の報告です。空電妨害のために探知が正確さを欠き現在 80%は信頼できません。」
「無線通信はどうなんだ。」
「良くなりましたが、まだ送信および受信は不可能です。」
フェリス:「どうするつもりだね。」
カーク:「どうする。…必要ならロウソクの火を使ってでも全力を尽くして捜査を続行し、最後まで望みは捨てません。捜査に支障を来しますので、お部屋に戻っていただけませんか。」
「君の努力を知ったら当局も満足するだろうが、コミッショナーに対する発言は大きな問題になるぞ?」
「この船の最高責任者は私です。」
「好きにしたまえ。残り時間は 2時間42分だ。」 フェリスはターボリフトに入った。

揺れ続けるガリレオ。
スポック:「スコット、バッテリーにはどのくらいのエネルギーが残ってる。」
スコット:「かなりありますけど、バッテリーじゃあとても離陸できませんよ。」
「それで、艇の外部に電流を流せるか。」
「…それだ。それでいきましょう…」
「よーし、全員艇の中央に集まり金属に手を触れるな。絶縁状態を保て?」
奥に入り、手袋をつけるスコット。
スポック:「待機! スコット、準備を。」
スコット:「はい、できました。」
「よし、入れろ!」
スコットの手元で火花が散る。
外でも光が走り、トーレス人の声が大きく響いた。
スポック:「もう一度!」
爆発が起こる。
スポック:「もう一度!」
静かになった。
スコット:「これでもう限界ですね。イグニションに取っておかないと。」
スポック:「これ以上は使用しない方がいい、君は早く作業を続けたまえ。」
「はい。」
マッコイ:「効いたらしいな。」
スポック:「当分はです。」
ボーマ:「当分は?」
「怪我は致命傷でないとわかれば、また襲ってくる。少しでも艇を軽くしたいので、余分な物がないかどうか後部を慎重に調べたまえ。」
「ミスター・ガエタノの死体が入っています。」
「もちろん、あれは置いていく。」
「その前に埋めないと。」
「やめた方がいいな、彼らは近くにいるぞ。」
「友達をそのまま置いていけるか。」
「君の行為は生存者を危険にさらす恐れがある。」
「やってみなきゃわからん。言っといてやるがな、もし転がってるのがあんたの死体でも俺は何とかして埋めてやるぜ。」
マッコイ:「ミスター・ボーマ。」
「こんな機械みたいのはたくさんだ!」
スコット:「調子に乗るな!」
スポック:「諸君。よろしい、ミスター・ボーマは埋めたまえ。しかし襲われても責任はもたんぞ?」

エンタープライズ。
ウフーラ:「船長、第2上陸班が転送されて帰還しましたが死傷者が出たようです。死亡 1名、負傷 2名。」
カーク:「ケロイッツ大尉※42をスクリーンに。」
モニターに汚れたクルーが映る。『船長、ケロイッツです。』
カーク:「報告しろ。」
『下で襲撃されました、毛深い巨大な怪物です。…宇宙人類学でチェックしましたところ 480 (オー) -G の類人猿に属し、ハンセン惑星※43で発見された生物と似ていますが遥かに巨大です。 (せい) は、3メートル以上※44あります。』
「死傷者は。」
『怪物がいると気づく前にオニール少尉※45が槍で刺され、イマムラ大尉※46が肩の関節を脱臼し足に裂傷を負いましたが…イマムラ大尉は助かりそうです。…船長、怪物はあらゆる場所にいます。もしガリレオが、あの惑星に降りたなら…』
「ご苦労だった。ただちに診療室へ行きたまえ。」
『わかりました。』 ケロイッツの映像は消えた。
フェリスが戻る。「カーク船長。クロノメーターを見たかね、2823.8※47時になったぞ? 時間切れだ。」
カーク:「まだ救助していません。」
「ニューパリの植民地の伝染病患者もだ。君には申し訳ないが第15銀河緊急処置法に明記されている権限を使わせてもらうぞ? 捜査活動の中止を命令する。」
「まだコロンブスが戻っていませんし、捜査班も惑星上にいます。」
「その手はもう通用せん。命令を聞いたろ。…速やかに捜査班を帰還させマーカス3番星に向かって出発したまえ!」
「…大尉※48。」
ウフーラ:「はい。」
「転送ルームに命令し、捜査チーム 2班を惑星上から収容させろ。同時にコロンブスと連絡。」
「今コロンブスから連絡が入っています。」
「では直ちに帰還させろ。ミスター・スールー。…捜査活動中止準備。コースをマーカス3番星にセット。」
ナビゲーターのハドレイと顔を見合わせるスールー。


※39: トーレス人の顔は基本的に大きく映らないものの、この辺のシーンが一番わかりやすく見えています。古い資料によっては顔写真を載せている書籍もあります

※40: 吹き替えでは「0401.6299」

※41: 吹き替えでは「2時間42分」と、最初から減っています

※42: Lieutenant Kelowitz
(グラント・ウッズ Grant Woods) 初登場。階級が少佐になっている資料がありますが、大尉と呼んでいます。吹き替えでは「ケロイッツ尉」。声:飯塚昭三?

※43: Hansen's Planet

※44: 原語では「10…12フィート」、3〜3.7m

※45: Ensign O'Neill
吹き替えでは「テイラー少尉」

※46: Lieutenant Immamura
せっかくの日本人風の名前ですが、吹き替えでは「スミス少尉」

※47: 吹き替えでは「6300」

※48: 吹き替えでは全て「尉」。シリーズ中一貫して、ウフーラの階級は大尉です

『航星日誌、補足。捜査班は収容され、コロンブスは帰還の途についた。もはや捜査を続行することは許されない。』
ブリッジ。
ウフーラ:「船長、物質探知線が使えるようになりました。」
カーク:「ほかの装置はどうだね。」
「まだ異常が続いています。」
スールー:「船長、コースをセットしました。」
カーク:「…ミスター・スールー、待機。コロンブスは後何分で帰還する?」
ウフーラ:「23分です。」
「…23分の運命か。」
ウフーラはカークを見た。

ガリレオ。
コミュニケーターを使うミアス。「エンタープライズ、こちらガリレオ。応答願います。エンタープライズ。…まだイオン妨害が続いてて駄目です。」
スコット:「できたぞ。」
スポック:「重量はどうだ。」
「余分な物を全部捨てれば、何とか軌道に乗れそうです。」
「維持できる時間は。」
「まず、2、3時間でしょう。正確に計算し、大気再突入をコントロールできる燃料を残せば安心ですね。」
「ここへ戻るのか。あまり魅力のある土地ではないな。」
「しかし、ここに戻る以外ありませんよ。」
スポックはドアを開けた。「ドクター・マッコイ、ミスター・ボーマ。それで、離陸はいつできる。」
スコット:「重量オーバーでなければ、8分です。」
「諸君。宇宙艇は正確に後 10分後に、離陸する。現在のところ付近に危険は認められないので、それまでにミスター・ガエタノを埋葬したまえ。私も手伝う。急いで。」
後部に戻るマッコイとボーマ。

ハンガーデッキに帰還するコロンブス。ドアが閉まる。

ウフーラ:「コロンブスが帰還し飛行ハッチを閉じました。転送ルームからの報告では上陸班も全員無事収容されました。全装置のワープ航法に切り替え準備完了。」
カーク:「ミスター・スールー、マーカス3番星に向かって出発。宇宙巡航※49速度。」
スールー:「…宇宙巡航速度?」
「そうだ。ウフーラ大尉、全ての探知セクションに探知光線を後方に放つよう指示を与えろ。追って命令があるまで全力を挙げて探知行動を続行。」
ウフーラ:「はい。」

シャトルの外に 2つ目の盛り土ができている。それを取り囲むスポックたちの元に、槍が投げ込まれた。
スポック:「早く乗れ、ただちに離陸する!」 槍を投げ返す。
ボーマが転んでしまった。スポックの足下に岩が投げられる。
スポック:「来るな、乗れ! 離陸しろ!」
スポックの下に駆け寄るマッコイとボーマ。
スポック:「来るな、ゆけー!」
2人は岩をどかす。
スポック:「早く、早く乗れ。私に構うな、行け、出発しろー!」
岩はどかされ、3人ともガリレオに乗り込んだ。
スポック:「…離陸しろと、言ったでしょ。」
マッコイ:「バカなことを言うんじゃない、君をここに置き去りにできるか。」
「スコット、離陸しろ。」
スコット:「点火したのに動きません。」
「…動かないはずだ。彼らが押さえているんだ。…装置および計器類には異常はない!」 スポックはスイッチを入れた。
「何をするんです!」
「ブースターに点火する。」
「そんなことしたら軌道に乗れません。」
「じゃあここにいたいのか。」
「いたいわけがないでしょう。」
響くトーラス人の声。
椅子から落ちるミアス。「動き出したわ!」 窓から見える景色が変わっていく。
マッコイ:「手を離したな、やったぞ!」
スポック:「喜ぶのは早いぞ? まず、軌道に乗ること。そしてたとえ軌道に乗っても、エンタープライズが発見してくれないと後一時間で逆戻りだ。」

トーラス2号星の大気圏を抜けるガリレオ。
スポック:「あの時、私を助けに戻ったために諸君は危うく脱出のチャンスを潰すところだった。私を置き去りにするのが合理的な処置だったのに。」
マッコイ:「君のその合理的とか理論はもう聞き飽きたね。やめてくれ。」
「非論理的な態度ですね? …あと一分で軌道に乗る。燃料は。」
スコット:「1.05キロ毎平方センチ※50です。軌道を一回回れば終わりですね。」
マッコイ:「その後は。」
「ブースターを使ったので、軟着陸できる望みはなくなりました。」
ボーマ:「じゃあ燃え尽きるのか。」
スポック:「軌道から落ちれば当然そうなるね。」
ミアス:「こんなとこで死ぬのは嫌!」
「惑星に戻って怪物たちに殺されるよりは遥かに好ましいと思うがねえ。」
ボーマ:「理論が好きな人はおっしゃることが違うよな。」
スコット:「ミスター・スポック。必ずほかにも方法はあると言ったのは、あなたですよ。」
スポック:「私が? …間違って言ったんだろう。」
マッコイ:「ついに君も間違いを認めたか。本当に方法はないのか。」
「エンタープライズはもう、マーカス3番星にコースを変えたでしょう。私は天使を信じませんね。」
「残念だったな? 君の艇長ぶりもこれで終わりか。」
「そうです。…短期間でした。」
スコット:「周回軌道に乗りました。現在の燃料では、あと 45分しか飛行できません。」
飛行するシャトル。
スポック:「ガリレオからエンタープライズ、ガリレオからエンタープライズ、応答願います。…ガリレオからエンタープライズ、応答願います。」
スポックはふと、手元のスイッチを見た。「全排出」と書かれている。
少し考えた後、それに触れた。
スコット:「ミスター・スポック。」
直後、大きな爆発音が響いた。後ろにのけぞるクルー。
ガリレオのエンジンが火を噴き、速度を上げる。
スポックに近づく一同。
ミアス:「どうしたの?」
スコット:「燃料タンクを捨てて点火した。」
ボーマ:「燃料がないと軌道を維持できません、気が狂ったのか!※51
スポック:「そうかもしれないな。」
マッコイ:「これで後どのぐらい飛べるんだ。」
スコット:「いま使ってる燃料がなくなれば終わりですねえ。まあせいぜいもって、あと 6分ぐらいでしょう。」

航行中のエンタープライズ。
通信が流れる。『A-G セクション※52、確認。』『A-G セクション、重力を確認しろ。全セクション、ファクター3 準備。』『前部走査区からブリッジへ報告…』
スールー:「…船長! スクリーンに何か見えます。トーラス第2惑星方向です。」
スクリーンに映ったトーラス2号星に重なるように、一筋の光が見える。
カーク:「探知機。隕石か。」
スールー:「いえ、水平軌道を保っています。…ほら、あれです。真ん中に見えるでしょ。」 移動する光。
「ミスター・スールー、180度方向転換。ウフーラ大尉、転送ルームに連絡、転送準備をして待機。全速前進。」

筋を残しながら飛行するガリレオ。
みな席に戻り、無言のままだ。
スコット:「…遭難信号ですか? …フン、火のついたタンクを飛ばして? ミスター・スポック、これは大きな博打です。成功するといいです。」 微笑む。
スポック:「一か八かだ。」
燃料の筋は消えた。
スコット:「そろそろ軌道が落ちてきました。…大気突入 10秒前。」
マッコイ:「君が取った最期の行動になるかもしれないが…君らしくなかったな。」
スポック:「非論理的でしたよ。望みはないのに。」
「人間らしくなったよ。」
揺れるシャトル。
装置が煙を上げ始めた。
ミアス:「暑くなってきたわ。」 汗をかいている。
咳き込むボーマ。※53

ウフーラ:「位置を確認、ロックしました。」
カーク:「転送開始。」

ガリレオのクルーが咳をする中、転送が始まった。

スールー:「目標の物体は…いま燃え尽きてしまいました。」
ウフーラ:「……船長! 転送ルームに 5名収容されました。……全員元気です。」
カーク:「……ミスター・スールー。マーカス3番星へコースをセット。ワープ1 で前進。」
スールー:「わかりました! ワープ1 で前進。」
微笑むカーク。

マッコイはブリッジでカークと何やら話している。スポックを見るカーク。
スコット、ミアス、ウフーラもスポックを見つめている。
カーク:「ミスター・スポック。」
スポック:「何でしょう。」
「今回の事件で、どうしてもわからないことがあるんで説明してもらいたい。もちろん理論的にだ。…君は誰にも発見されるチャンスはないと知りながら、あえて燃料タンクを切り離して点火し信号として使用した。これは必死になって思わずやったとしか思えない。」 話を聞いているウフーラとミアス。
「その通りですね。」
「この点に関してはもちろんドクターも同意見だと思うが、必死というのは非常に感情的な精神状態を指す。この辺を君の理論で説明してみたまえ?」
「簡単なことですね。あの時事態を分析したところ、全く悲観的な回答が出ました。…その結果私の理論は、現状においては…必死になって行動するのが一番好ましいと結論を出したんです。全て理論的に説明できますよ。」
「はあ…」 笑うカーク。「なるほどー、それじゃ君は理論的にわざと必死になって感情的に行動をしたのか。」
「…いやあその、それは正確な表現とは言えないと思いますがしかし、基本的にはそうですね?」
「…念のために聞いておくが…君は生まれて初めて自分が、人間的な行動をとったと認めるつもりはないのかね?」
スポックは首を振った。「ありません。」 眉を上げる。
笑うカークやマッコイ。
カーク:「ミスター・スポック。強情な男だな、君は。」
スポック:「…そうです。」
大笑いする一同。


※49: space-normal
ワープではないインパルス航行

※50: 原語では「150ポンド毎平方インチ」。1.05kgf/cm2 のほか、103キロパスカルとも換算できます。吹き替えでは「8平方インチキロ」となっていますが単位の呼び方が間違っている上に、ヤード・ポンド法とメートル法が混在しているのは変ですね

※51: DVD・完全版ビデオでは「燃料がなきゃ軌道を維持できません、血迷ったんですか!」と修正されています

※52: 吹き替えでは「AG-6」

※53: 予告編ではこの辺に入ると思われる、シャトルの窓から外が燃えている様子の見える映像がありますが、実際には含まれません

・感想など
シンプルなデザインがいかにも当時らしい、シャトル・ガリレオが初登場するエピソードです。ストーリーの方も「論理のヴァルカン人」を描いた、スタートレックの基本とも言える図式ですね。スポックに対してあまりにも横柄な部下はちょっと行き過ぎな気もしますが、だからこそ最後の描写が生きてくるんでしょう。この解決法は ENT "Shuttlepod One" 「引き裂かれたクルー」で、オマージュ的に再現されています。
原題は小説版の邦題のように「ガリレオの 7人」という意味 (原語では何度か「7人」とセリフで触れられています) と、ガリレオそのものが 7号機であるというダブルミーニングかもしれません。


dot

USS Kyushuトップ | 「未踏の地」エピソードガイド