カークはフェイザーを向ける。生物は止まっている※28。
フェイザーを下げると近づいてくるが、再び向けると後ずさりし始めた。
同じ行動を繰り返すカーク。やはりシリコン生物はフェイザーを恐れているようだ。
カークは脇へ動こうとするが、にらみ合った状態のままになる。
呼び出しに応えた。「カークだ。」
スポック:「船長。いま反応が現れました。生物はこの付近にいます。正確な位置を読み取ります。」
カーク:「その必要はない。どこにいるかはよく知ってる。」
スポック:「どこですか。」
カーク:「…私の 3メートル※29前だ。」
スポック:「殺してください。早く。」
カーク:「…しかし、敵対行為は取っていないようだがね。」
スポック:「危険は冒さない約束でしょ? 殺すんです!」
カーク:「殺すのに反対だったのは誰だ? 捕まえろと言ったのは?」
スポック:「船長、それは凶暴な生物です。危険を冒さないでください!」
カーク:「いや、何かを待っている。」
スポック:「何人殺されたか知ってるでしょ? すぐ行きます! スポック、アウト。」
カークもコミュニケーターを納めた。
進むアペルたち。
シリコン生物の前でカークは座った。「よーし、どうするつもりだ? …話し合うのか。」
生物は後ろの部分を見せるように回った。一部分が白くなっている。
カーク:「…やはりさっき負傷したのだな。」
元の向きに戻るシリコン生物。
カーク:「ただ座ってる気か? …何とか言いたまえ。」
スポックが駆けつけた。そちらに向かう生物。
カーク:「駄目だ、撃つな!」
シリコン生物は 2人の間で止まった。
カーク:「仲間に入ったらどうだ。」
カークに近づくスポック。「奇跡ですね※12。向かってこなかったんですか。」
カーク:「そうだ、何かを待ってるようだな。でも話しかけても反応はない。」
スポックは指さす。シリコンの球体がたくさんある。
カーク:「見たまえ。ここも倉庫みたいだ。無数にあるな。…数え切れん。」
スポック:「大変な数です。」
「…何か意味があるかな。」
「重大な鍵がありそうですね。これだけ集まると。…船長。私には二つの心を結ぶ超能力※30があります。」
「…これに通用すると思うかね。」
「ひょっとすると。」
「…ミスター・スポック。お互いの心の障害を取り除くのは大仕事だと思うが、もし望みがあるなら。」
「やってみます。」
スポックは近づく。後ずさりする生物。
スポックはフェイザーを納めた。手を広げる。
目を閉じ、突然絶叫した。「…苦しい! …苦しい。苦しい。」
カークが支える。
スポック:「…苦しいだけです。苦痛が波のように押し寄せてきて。可哀想に。」
シリコン生物はそばの岩に乗った。音が響く。
その場を動くと、岩に英語が刻まれていた。"NO KILL I"。
カーク:「『殺さない、私』。…どういう意味だ。殺さないでくれという意味か。…私達を殺さないという約束なのか。」
スポック:「それはわかりません。今の心の交流で、我々の知識を吸収したんですね。私にも今の接触で、これは高度な頭脳をもっている非常に水準の高い生物だとわかりました。…苦痛は傷からもたされるものですが、普通の生物のように凶暴になっていません。名前はホルタ※31と言ってます。」
「…ホルタ。ホルタ。原子炉の循環ポンプをどこに隠したんだ。もう一度テレパシーで聞きたまえ。」
「それを教えるほど好意的だとは思いませんね。自分の惑星を侵略した人間を追い払いたいはずです。」
「それは当然だと思うが、何とか得られないか。信用を。」 コミュニケーターを使うカーク。「ドクター・マッコイ、カーク船長だ。」
マッコイ:『どうした。』
「救急セットを持って至急こちらへ来てくれ、大変な患者がいる。」
『誰か怪我したのか。』
「何も言わずにレベル23 へ来たまえ。トリコーダーで正確な位置はわかる、以上だ。」
スポック:「しかしこれはシリコンを基本成分とする生物なんですよ? ドクターの医学知識など、何の役にも立ちません。」
「医者なら何でも治せるはずだ。ミスター・スポック、君はもう一度心の交流を図りたまえ。なぜ見張りを殺したのかそのわけを知りたい。」
「そこまで深い交流をもつためには、相手に直接触れなければ駄目です。」
「……我々も相手を信頼しよう。」
スポックはホルタに近づいていく。カークはフェイザーを向ける。
ホルタに触れた。目をつぶるスポック。
連絡するカーク。「ジョットー少佐、カークだ。」
ジョットー:『こちらジョットー。大丈夫ですか。』
「異常はない。どこにいる。」
ジョットー:「今、トンネルの外れです。ミスター・ヴァンデルベルグたちも一緒ですが、みんな興奮してますよ。そちらへ通しますか。」 作業員たち※32が集まっている。
カーク:「たとえ何が起ころうと、通してはならん。ドクター・マッコイが現れたら、彼だけ通せ。」
ジョットー:「わかりました。」
首を振るスポック。「人殺し! …何千と…悪魔だ。…永遠は終わる。…生命の部屋。明日への祭壇。…人殺し! やめろ! 殺せ! 復讐だ! 怪物だー!」
マッコイが走ってきた。「何だこれは一体。」 ホルタを見ながらカークに近づく。「スポックは何してるんだ。」
カーク:「重傷を負ってる、早く治したまえ。」
「あれをか?」
「見ればわかる。」
精神融合を続けるスポック。
ホルタの傷の個所に近づくマッコイ。
スポック:「生命の終わり。破壊者。」
マッコイはトリコーダーで調べてきた。「本気じゃないだろうな。これは石でできてる生物だぞ?」
カーク:「早く治療したまえ。」
「私は医者だ、石屋ではない!※33」
「患者を見殺しにするのか? 命令だ。」
再びホルタに近づくマッコイ。
カーク:「ミスター・スポック。…全力を尽くすと伝えたまえ。」
スポックは息を荒げる。
カーク:「循環ポンプを。」
スポック:「…理解した。……生命の終わりだ。永遠は、終わる。こ…ここを出て、トンネルへ入れ。…生命の、部屋がある。」
トンネルを見るカーク。
スポック:「泣け。子供のために。…静かに…中へ。明日への祭壇※34の中に。…祈れ。殺された、子供たち。」 泣く。「……欲しいものはそこにある。…ゆけ。ゆけ。…悲しみ。悲しみ。生命の、終わり。ゆけ。トンネルの中へ。…横道へ入れ。早く、さあ早く。」
カークは向かった。
作業員たちの前で話すジョットー。「全員ここで待てと船長の命令なんだ。奥へは一歩も入れんぞ?」
アペル:「人殺しの怪物が奥にいるんだぞ? 殺すまでは引き下がらん!」
「私がいる限り入れん!」
カークはトンネルを進む。部屋に出てきた。
そこにはたくさんのシリコン球体があった。割れているものもある。
かけらを手にするカーク。
コミュニケーターを手にしたマッコイ。「同じことを二度言わせるな、早く転送すればいいんだ。なぜいるかなんて余計なことを聞くんじゃない。とにかく早く送れ! 何してる。」
涙を流すスポック。「眠る。時間だ。全て…終わった。…悲しい。…侵略者。勝った。死は…そこにある。ここに、命を。」
カークが球のかけらを持ってきた。「ミスター・スポック。ミスター・スポック。スポック。スポック。目を覚ませ。」
スポック:「ああ…。」 我に返る。
装置を見せるカーク。「無傷の循環ポンプを見つけたぞ。奥には何千というシリコン団塊が、山と積まれていた。あれは卵なのだな?」
スポック:「そうです卵です。間もなく孵る。」
「多分鉱夫が、孵卵地域を掘って…何千という、卵を壊したんだ。だから。」
アペルは叫んだ。「ほら、こっちへ来るぞ!」
振り向いたジョットーを殴り倒す。他の保安部員も作業員たちにやられた。
アペル:「さあやるぞー!」
作業員:「よーし!」
「みんなついてこい!」
ヴァンデルベルグ:「行こう!」
作業員:「さあ行こう。」
カーク:「どんな具合だ。」
手が泥で汚れているマッコイ。「話は後だ。」
作業員たちが駆け込んできた。フェイザーを向けるスポック。
カーク:「待て、撃つな!」
アペル:「殺せ!」
「最初に撃った者は殺す。」
ヴァンデルベルグ:「…そいつは部下を 50人も殺したんだぞ…」
「我々が先に危害を加えたんだ。」
「何?」
「君たちが片っ端から壊していたそのシリコン団塊は、卵だったんだ。…教えてやりたまえ。」
フェイザーを納めたスポック。「ここには古代からホルタが生息しているが、彼らは 5万年ごとに死滅する習性をもっている。残るのは、一匹だけだ。…その残った一匹が卵の世話をし、守り抜き、全員孵ると母親の役を務める。無数の子供のだ。これは、全種族の唯一の母親だ。」
カーク:「ホルタは平和を愛し、知性もある。温厚だ。だから君たちが卵を壊し始めるまでは、人間がこの惑星に来ても敵意をもたなかった。彼女の行為は子供の命を脅かされた母親として当然だ。…責めるのは間違ってる。」
ヴァンデルベルグ:「そんなこととは知らなかった。じゃあ、この卵が孵るとこれと同じのが何千匹と這いずり回るわけか。」
「ここが家なんだ。岩を食べて生きるんだから、仕方がないだろ。」
スポック:「これほど平和を好む生物はいない。生命を脅かされたら別だが。」
アペル:「でもこっちはペルジウムを掘らないと。」
カーク:「…わかってる。…さあ、循環ポンプだ。…君は確か、ここは作業さえ簡単にできれば素晴らしい鉱物資源の宝庫だと言ってたな? ところがこのホルタは岩の中を自由に動き回り、後に無数のトンネルを残す。…まさに宇宙一の鉱夫と言えるだろう。だからここで共存共栄を図るために、条約を結んだらどうだろう。彼らが掘り、君たちはそれをもらう。そうすれば、生産作業はこれまでの何倍もスピードアップされるはずだ。」
話す作業員たち。
ヴァンデルベルグ:「こっちはそれで結構だが。」
スポック:「問題は一つ。ホルタは重傷を負っている。死ぬかもしれん。」
両手を挙げているマッコイ。「その心配はない。何でもやってみるもんだなあ。おかげで石屋もやれる自信がついたよ。」
カーク:「望みはあるか。」
「大ありだ、治したぞ。」
「何だ。」
「船に頼んで、熱コンクリート※35を 100キロほど転送してもらったんだ。ほらよく、緊急避難所を造ったりするあれだよ。シリコンが主成分の。…そいつを傷口へ流し込めば、治るまで包帯の役目をしてくれる。ちょっと見ろよ。芸術品だ。」
「ご苦労だが、もう一度ホルタと話し合ってくれるか。提案を伝えて欲しい。トンネルはいくら掘ってもいい、むしろ大歓迎だ。…我々は掘り出された鉱物を運ぶだけで、お互いに干渉しない。同意してくれるかな。」
スポック:「論理的には妥当ですね。それにホルタは非常に、論理的ですので。ま人間※36と付き合うのも、何かと参考になるでしょう。」
カークはマッコイを見た。
エンタープライズ。
ブリッジに入るカークとマッコイ。
スポック:「コースをセット、周回軌道離脱準備よし。」
カーク:「よろしい、ミスター・スポック。」
「ヴァンデルベルグが、チャンネル1 で待機中です。」
「よし。やあチーフ、カークだ。」
オフィスのヴァンデルベルグ。「卵が孵り始めたので知らせようと思ってな。孵ったばかりの小さいのがもう掘り出してる。おかげで新しいペルジウム鉱脈を当てたよ。この調子だと、金やプラチナや希少な金属がどんどん出てきそうだ。」
カーク:「それはよかった、朗報だな。卵がみんな孵って一斉に掘り出したら、君たちはたちまち大金持ちだ。」
ヴァンデルベルグ:『ホルタも慣れてくると可愛い動物だよ。じゃあ、気をつけて。いろいろありがとう。』
「幸運を祈る。頑張ってくれ。」
スポック:「面白いな。今チーフが言ったのとそっくり同じことを、あのホルタが私に言っていましたよ? …人間の姿は気味が悪くて好感がもてないが、慣れれば大丈夫だろって。」
マッコイ:「ほう、人間がね? ついでにその耳のことも何かおっしゃってなかったかね?」
「はっきり聞いてませんが、人間の部分でこの耳だけは非常に魅力的だと感じていたようですね? …でもこれは私だけだとわかったらガッカリ。」
カーク:「その耳が気に入ったかね。」
「船長。ホルタは高い知性をもち非常にデリケートな生物でして? …趣味も高尚ですね?」
「その耳を誉めたからか?」
「いえそうは言ってませんよ。」
「これは観察するに足る面白い傾向だな? 君は性格的に次第に人間に近づいてきてるな。」
「…理由もなく公の場所で侮辱するのはやめて下さい。」 スポックは離れた。
カークは微笑んだ。「ワープ2 で前進。」
宇宙空間を進むエンタープライズ。
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※28: この辺のシーンから、カークが後ろ姿 (左下) の部分は代役が演じています。撮影中にシャトナーの父親が亡くなったためで、先に精神融合のシーンが撮影されました (訃報が届いてからも、シャトナーは当日の撮影を中断することはなかったとか)。そのためカットによって持っている物が変わったり、フェイザーを持った手が上がったり下がったりする個所があります
※29: 原語では「10フィート」
※30: ヴァルカン精神融合 (Vulcan mind-meld) のこと。原語でも「ヴァルカンの技術」と言っているだけです
※31: Horta 演じているのはジャノス・プロハスカ (Janos Prohaska、TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」の類人猿 (Anthropoid Ape)/ヒューマノイド型の鳥 (Humanoid Bird)、第45話 "A Private Little War" 「カヌーソ・ノナの魔力」のムガート (The Mugato)、第77話 "The Savage Curtain" 「未確認惑星の岩石人間」のヤルネク (Yarnek) 役。ホルタのデザイン・製作自体も手がけ、「アウターリミッツ」でも活躍しました。1974年3月に死去)
※32: DVD 補完では作業員役としてスコット役小林さんの兼任があるそうですが、この個所のガヤかもしれません
※33: "I'm a doctor, not a bricklayer!" bricklayer =レンガ職人
※34: Vault of Tomorrow
※35: thermoconcrete
※36: 吹き替えでは「我々人間」。スポックは地球人の意味で言っています
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