奇妙な植物を見るダックス。「どこが悪いかわかる?」
ベシア:「医療従事者としての専門的意見を言わせてもらうと、病気だね。」
「わかってるわ? でも何で病気なの?」
「僕は医者なの、人間相手の。※4…植物ならケイコに聞けば?」
「ケイコは会議があってライジェル4号星※5に出張中よ? 来週まで帰らないわ?」
「ダックスと合体した人で植物好きはいないの?」
「それがみんな園芸には疎いのよねえ。トビン※6がちょっと庭いじりをしてたけど、下手だったわ。女にもからっきしダメな人だったけど。」
「どこの植物なんだい?」
「レオドニア3※7 で採ったの。」
「ちょっと貸して。」
「ええ、いいわよ。」
トリコーダーをコンピューターとリンクさせるベシア。「ああ、これでわかったぞ。レオドニアの土壌にはある種の菌※8がすみついていて、植物の水分を逃がさないんだ。だがこの鉢植えの土にはその菌がほとんどない。残っている菌を取り出して、ラボで培養して戻してやれば大丈夫だ。」
ダックス:「ケイコ顔負けじゃない。」
「…コンピューターのおかげさ。人間の患者もこう扱いやすければいいのに。」
「チーフがまた肩を脱臼したの?」
「いやあ、ガラックが…ランチに並んでる時、かなり大きな発作を起こしかけたんだ。息も苦しそうだし、痛みもかなりきてたはずだ。でも診察室に行こうって言ったら、断固拒否するのさ。」
「医者嫌いなだけなんじゃないの?」
「いやあ、そうじゃない。ガラックは、いつもああやってはぐらかしてばっかりなんだ。過去を話したくないならそれはいいけど、でも病気の時ぐらい素直にさ。…何で話してくれないんだろう。」
「ずいぶんと熱心じゃないの。」
「…そうかもしれない。週に一度、一緒に昼を食べるようになって 1年だよ? もっと信用してくれてもいいのに。」
「あら何で? 親友ってわけじゃないんでしょ?」
「そりゃね。…そりゃそうだ。僕だって心から信用はしてないもんな。彼はカーデシアのスパイなんだし。」
「その通りよ?」
土のサンプルを採るベシア。「僕に助けて欲しくないんなら、勝手にしろだ。」
クワークの店を閉めるフェレンギ人。モーンは名残惜しそうに見ていたが、歩いていった。
ターボリフトを出るベシアは、クワークの声に気づいた。「この世の中、ラチナムで買えない物はない。」
下を見るベシア。
クワーク:「フェレンギ人の手に入らない物もない。」 まだ店におり、笑っている。
相手のガラックは、落ち着かない。「…これでお互いよく理解し合えたと思うが。」
クワーク:「ガラック。どれくらいこのステーションにいるんだい?」
「もう長い。」
「その間、俺に失望させられたことがあるか?」
「私達が取引するのはこれが初めてだろ。」
「だからこそ俺は、この機会を大事に思ってる。あんたとの初めての仕事だから、絶対に上手くやりたいんだ。心配ないって。ブツは手に入れてやる。」
「急いでくれ。これ以上は待てないんだ。」 店を出ていくガラック。
ベシアは階段を下りてくる。「お前とガラックが一緒に仕事だと? 悪いが今の会話は聞かせてもらったよ。」
クワーク:「ああ、今の? 店で使う新型のサイズスキャナーを頼まれたんスよ。」
「サイズスキャナーねえ…。」
「ただのサイズスキャナーじゃない。最高の、メラック2※9 製のです。マイクロメーターまで測れるやつで、その上お値段も出血大サービスの超安値。」
「ほんとか? ガラックは、何だか慌てた口ぶりだった。」
「ガラックが慌ててた? 気づかなかったな。ところで、こんな時間に何の御用です、ウン? ソーリアン・ブランデー※10でもどうですか? それとも、よければ…ホロスイートで夜のお楽しみは?」
「…いや。ありがとう。でも今夜はやめとくよ。」 去るベシア。
「またどうぞ。」 表情を硬くするクワーク。
診療室。
ベシア:「さあ、これでどうです?」 器具をジャバラ※11看護婦に渡す。
シスコ:「ああ、楽になった。」
「しばらくは提督に向かって怒鳴るのはやめておいた方がいいですよ?」
「怒鳴ってるんじゃない。気持ちを表現してるんだ、大声でね?」
笑うベシア。
入れ違いになるシスコ。「チーフ。」
オブライエン:「司令官。」 ベシアに尋ねる。「何か、用ですか。」
ベシア:「ああ、よかった。困ってたんだよ。カーデシアの昔の医療ファイルを取り出したいんだが、どうしてもアクセスできなくってね。」
「そうでしょうねえ。カーデシアは撤退する時、全システムを一掃していったから。医療ファイルもその時一緒に消されたんでしょう。」
「復元させる方法はある?」
「まあね。このサブルーチンの損傷は、エンジニアリングファイルほどひどくない。消去の跡を、ミクロ・スキャンすればデータを復元できるかもしれません。」
「どれぐらいかかるの?」
「うーん、2、3週間ですか。」
「…そうか、じゃあ別にいいや。どうもありがとう、チーフ。」
「いや、お役に立てなくて?」
通信が入る。『クワークよりドクター。』
ベシア:「こちらベシア。」
クワーク:『ドクター、うちの店に来て下さい。大至急!』
医療キットを持っていくベシア。
瓶が並んでいる。
クワーク:「…もうよせ、ガラック! それだけ飲みゃ十分だ。」
酔っているガラック。「いやあ、まだまだだ。お前の店で酒を飲めば、痛みも悩みもみんな忘れられるってのは、真っ赤な嘘だったんだな! あ?」 笑う。他の客が見ている。
店に入るベシア。「どうしたんだ。」
クワーク:「頭が痛いから酒くれって。うちのカナール酒※12を半分空けちまったんスよ!」
ガラック:「ああ、ドクター。これは、嬉しい驚きだ。この前は本当に失礼しました。私のお詫びの気持ちを受けて下さい。さあ、どうぞかけて?」
ベシア:「お言葉に甘えて、いいかな?」
「どうぞどうぞ。」 クワークに瓶の口をふさがれ、怒るガラック。「何なんだ、その手は!」
「そうだ。この店は少し、騒々しすぎる。」
「うん?」
「もっと静かな所で、飲み直そう。」
「ええ、是非そうしましょう。じゃあ私の部屋へどうぞ。」 ベシアが手にした瓶に、ガラックが栓をした。
「ああ、それでもいいよ? その前に、診察室に寄っていきたいんだけど。」
「診察室へ? いやあ、ダメですよ、ドクター。私がそんな手に引っかかると思うんですか。酒を返して下さい。…酒を…返して下さい。早く!」 クワークがベシアから瓶を取っていく。
「わかった。診察室で返す。」
「私は診察室になんか行きません。こんなくだらないゲームはもうウンザリです。早く…さ…酒を…」 ガラックは倒れてしまった。
すぐにトリコーダーで調べるベシア。
ガラック:「…止めてくれ…止めてくれ…。」
ベシア:「司令室へ、緊急患者です。診察室へ転送。転送開始。」
共に転送されるガラックとベシア。
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※4: 原語では "I'm a doctor, not a botanist." 「僕は医者だ、植物学者じゃない。」
※5: Rigel IV TOS第36話 "Wolf in the Fold" 「惑星アルギリスの殺人鬼」など。訳出されていません
※6: トビン・ダックス Tobin Dax 2番目のホスト。DS9第23話 "The Siege" 「帰ってきた英雄 パート3」など
※7: レオドニア3号星 Ledonia III
※8: 正確には「菌根菌 (mycorrhizal fungus)」
※9: メラック2号星 Merak II TOS第74話 "The Cloud Minders" 「惑星アーダナのジーナイト作戦」より
※10: Saurian brandy TOS第5話 "The Enemy Within" 「二人のカーク」など
※11: Jabara (アン・ギレスピー Ann Gillespie) DS9第5話 "Babel" 「恐怖のウイルス」以来の登場
※12: カナール kanar TNG第86話 "The Wounded" 「不実なる平和」など
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