DS9。 
 帰還するシスコ。「大尉、カーデシア中央司令部につないでくれ。」 
 ダックス:「丁度よかったわ? パーン総督が後 1時間で到着よ?」 
 「総督が? 光栄だなあ。待つ間に艦隊と話をしておこう。」 ターボリフトに乗るシスコ。 
 「ネチェーエフ提督がいらしています。」
  
 シスコは司令室に戻る。「チーフ。マキはあの小惑星※1に到着する前にデュカットを転送したらしい。拉致先を突き止めてくれ。」 
 オブライエン:「ワープを追跡してみます。ほかの船が目撃してるかも。」 
 「頼むぞ。」
  
 司令官室に入るシスコ。「提督。」 
 ネチェーエフ※2:「カーデシア中央司令部は、ガル・デュカットが誘拐されたことを受けて、軍隊を警戒態勢におきました。」 
 「当然でしょうね。」 
 「ここの保安チーフをしている、流動体生物の…」 
 「オドーです。」 
 「そのオドー。彼でなく、連邦士官に警備を任せた方がいいのではありませんか?」 
 「提督。私はオドーには、絶対の信頼をおいております。」 
 「本当に彼でいいのね?」 
 「構いません。デュカットにつきましては、現在全力を挙げて、拉致先を突き止めようとしております。」 
 「結構。進展があったらすぐ報告を。」 
 「了解。しかし提督、デュカット救出より大きな問題があるんです。」 
 「何ですか。」 
 「マキです。」 
 「…マキは単なる過激派の集団に過ぎません!」 
 「しかしボックノールを爆破したのはマキですよ?」 
 「ええ、そのことはわかっています。非武装化地帯のカーデシア領内に、連邦入植者を残したのが間違いでした。」 
 「しかし現実として、残ってるんですから。」 
 「ハドソンはどうしたのです。今回の入植者の不始末について、どう言っているのですか?」 
 「それは、聞いてみませんと…。」 
 「そうして下さい。」 出ていくネチェーエフ。「ああ、司令官。あなたはマキのメンバーと…話し合いをもって、連邦の方針を理解させて下さい。カーデシアとの協定を維持していくことは、絶対必要なのです。」 
 「しかしこの協定がそれほど重要なのでしょうか。」 
 「連邦の方針に、異議があるのですか?」 
 「いやあ、ただ…非武装化地帯における状況が、加速度的に悪化していきますので。」 
 「そこまで悲観的になることもないでしょう。マキと対話をしてみて下さい。彼らも連邦の一員です。聞く耳ぐらい、あるでしょう。では、期待しています。」 ネチェーエフは去った。 
 「マキと対話して上手くいかなかったから言ってるんじゃないか。」 
 入れ違いに入るキラ。「司令官。」 
 シスコ:「連邦の一員だからって、何をされても我慢できるってわけじゃないんだ!」 
 「どうしたんです?」 
 「諸悪の根元は何だ!」 
 「知りません…。」 
 「地球が問題なんだ。」 
 「そうですか。」 
 「地球には、貧困もなければ、犯罪も、戦争もない。艦隊本部の窓の外には楽園が広がっているんだ。楽園では聖人を気取るのも結構だろうが、マキの人々が生きているのは厳しい現実だ。現実に、非武装化地帯の問題は、何も解決されていない。聖人ぶってなんかいられないんだよ! みんな、必死だ! 怒ったり、怯えたり、復讐心に燃えたりすることが、人間として当然じゃないのか! 連邦がどうこう言おうが聞くはずはないだろう!」 
 「その通りですわ?」 
 「……ありがとう。それを聞いてホッとしたよ。」 
 「パーン総督が第5ドックに到着しました。今の演説を聞かせてやったらどうです?」 
 「いっちょぶち上げてくるか。」 
 通信が入る。『オドーより司令官。』 
 シスコ:「どうした、オドー。」 
 オドー:『ガル・デュカットを誘拐したヴァルカン女の共犯者を逮捕しました。』
  
 独房で座っているクワーク。「まさかサコンナがガル・デュカットの誘拐を考えてるなんて知らなかったんだよう!」 
 オドー:「そうかい。お前彼女と随分長い間話し込んでたそうじゃないか。」 
 「…美人と一緒にいたいって思うのは何も罪じゃないだろうが。お前もやってみろよ! 性格が明るくなるぞ?」 
 「ヴァルカン人がお前の耳たぶに関心を抱くとはちょっと思えないがねえ?」 
 「ヴァルカン人って民族はなあ! 耳を見る目があるんだよ。司令官。みんなの前でプライベートな付き合いをしゃべらせるなんて恥ずかしいからやめて下さいよ。」 
 シスコ:「そのうち恥ずかしいだけじゃ済まなくなるぞ? いいからサコンナとどんな取引をしたのかさっさと白状しろ。」 
 「わかりました。でもその前に言っておきますけど。サコンナの色気に惑わされちまったんで…。」 
 オドー:「言い訳なんぞしなくていいから、さっさと何をしたのか吐くんだ。」 
 「サコンナからある物を調達して欲しいってもちかけられたんで、斡旋してやっただけです。それも破格のお値段でね?」 
 シスコ:「ある物って?」 
 無言になるクワーク。 
 オドー:「何だ、言えないのか。」 
 クワーク:「そうだなあ、何からいこうか、えーと…サコンナの注文はディフレクターシールドに、ナビゲーションアレイに…それから光子魚雷も、何百発か…」 
 シスコ:「光子魚雷だと?!」 
 「それから、パルス大砲に、高エネルギーディスラプターだ…」 
 オドー:「お前…テロリストにそんなに武器を売ったのか!」 
 「俺は売ってねえよ? 売ったのはパイゴリアン人※3で俺は…ただ、仲介してやっただけだ。それにデュカットが誘拐されるまでマキなんて知らなかったし。」 
 シスコ:「サコンナに売った武器の完全なリストが欲しい。」 
 クワーク:「わかった。法廷でサコンナに対する証人が入り用なら、俺が立つから。」 
 オドー:「本気か?」 
 「もちろんだよ。ほかに証言して欲しい奴がいたら喜んで。」 
 「ハ!」 
 「司令官、あともう一つ。サコンナはものすごく急いでた。武器を何に使うのかは知らないが絶対 2、3日のうちだよ。」 
 シスコ:「いいからリストを作れ!」 
 オドー:「司令官。もう一度、ガル・デュカットを探しに行かれるんでしょ?」 
 「ああ、拉致先がわかったらな。」 
 「保安チーフとして御一緒していいですか。」 
 「もちろん大歓迎だ。」 
 「それとクワークは、いつまで拘置しておきますか?」 
 「好きなだけだ。」 拘束室を出ていくシスコ。 
 クワーク:「待てよ。」 何も言わず去るオドーに言う。「冗談じゃねえよう。オドー!」
  
 キラが保安室を出たシスコに近づく。「パーン総督がどうしてもすぐに司令官に会いたいそうです。」 
 カーデシア人のレガート・パーン※4がやってきた。「事態は急を要するのでな。直ちに、対応策を取らねば。カーデシア中央司令部の一員として、こう申しあげるのだが、今は非常に危機的な状況だと言わねばならない。」 
 シスコ:「わかっています。現在全力を挙げて、ガル・デュカットの行方を探しております。」 
 「司令官、お気持ちはありがたいがそれは必要ない。中央司令部の調査では、ガル・デュカットは…一部の血迷った士官たちを密かに組織し、非武装化地帯の植民地に武器を流していたようなのだ。」 
 キラ:「じゃあマキの言うとおり、やはりカーデシア中央司令部がかんでいたんですね?」 
 「いや、我々はデュカットたちがそんなことをしていたとは知らなかったのだ。中央司令部が、連邦との協定に違反するような行為をするはずがないだろう。」 
 プロムナードを歩き出す 3人。 
 パーン:「デュカットの部下たちは、既に逮捕した。いずれ、裁きを受けるだろう。」 
 シスコ:「デュカット本人は。」 
 「そのままマキの…ところにいればいい。」 
 「では彼を探す必要はないと。」 
 「探さずとも、マキがデュカットを処刑してくれるだろう。」 
 「まあ、そうなるでしょうねえ。」 
 「マキが処刑しようが我々が処刑しようが、同じことだ。」 
 キラ:「デュカットが殺されたのを理由に、カーデシアが軍隊を派遣するかもしれませんよ?」 
 パーン:「いやあ、それは約束しよう。カーデシアは決して報復しない。」 ドアの前に来た。「カーデシアは、今再び連邦と戦う意思はもっていない。ここで誓ってもいい。」 
 笑うキラ。「誓うですって?」 
 シスコ:「よすんだ。大変意義のある話し合いをもてました。」 
 パーン:「そうだと嬉しいが。」 
 「申し訳ないが、私は任務がありますので。もし御時間があれば、ごゆっくりなさって下さい。」 
 「ありがとう。しかし、私にも任務があるんでね?」 ドアを開けるパーン。出てきたベイジョー人たちを見る。「それにこのステーションも、昔と違ってあまり楽しい場所ではなくなったようだからな?」 
 パーンは中に入り、ドアが閉められた。 
 キラ:「信用できるもんですか。」 
 シスコ:「ああ、同感だな。だが知りたかったことはこれでわかった。彼の言うとおりだ。カーデシア中央司令部は植民地に武器を流していたんだ。」
  
 司令室。 
 ダックス:「連邦の入植者が 3人、ハクトン7※5 で殺されたとの報告が入りました。カーデシア側は、ボックノール爆破の報復だと声明を出しています。」 
 シスコ:「次はマキがまた報復に出るだろうな。チーフ、わかったか。」 
 オブライエン:「ワープドライブの痕跡を追跡した結果、デュカットを誘拐したマキの船のコースがわかりました。」 星図を表示させる。「この通り、長距離センサーにはこのコースを通っている船はほかにありません。」 
 「なるほど。ほかの船には転送していないのか。じゃ惑星か。」 
 「考えられます。コースに沿って Mクラスの惑星が 5つあります。それぞれの座標はコンピューターに入れておきました。」 
 「よーし、ご苦労。シスコよりオドー。」 
 オドー:『はい、司令官。』 
 「ドクター・ベシアと発着パッドC へ来てくれ。」 
 『了解。』 
 キラ:「司令官。デュカットを助ける必要なんかありません。パーン総督だってそう言ってたじゃないですか。」 
 シスコ:「ほっといてマキに殺させろって言うのか?」 
 「あんな男のために危ない真似をすることはありません。マキに殺されたって、身から出た錆ですよ。」 
 ターボリフトに乗るシスコ。「カーデシアが死を望むなら、それだけでデュカットを生かしておく理由はある。発着パッドC へ。」
 
 
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※1: 「惑星」と誤訳
  
※2: アリーナ・ネチェーエフ提督 Admiral Alynna Necheyev (ナターリア・ノグリッチ Natalia Nogulich) TNG第172話 "Journey's End" 「新たなる旅路」以来の登場。階級章は三つ星。TNGでは「ナチェフ」と訳されていました。声:滝沢久美子 (TNG では磯辺万沙子)
  
※3: パイゴリアン、パイゴリア人 Pygorians
  
※4: Parn (ジョン・シャック John Schuck 映画 ST4 "The Voyage Home" 「故郷への長い道」・ST6 "The Undiscovered Country" 「未知の世界」のクリンゴン人大使 (Klingon ambassador)、VOY第142話 "Muse" 「ヴォイジャーの神々」のコーラスその2 (Chorus #2)、ENT第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」・第92話 "Divergence" 「優生クリンゴン」のアンターク (Antaak) 役) 階級の Legate が初言及。後には「特使」「評議員」「レガート」などと訳され、ガルより上を意味します。パーンは ST で初めての「ふくよかな」カーデシア人です。声:村松康雄、DS9 ゲモールなど
  
※5: ハクトン7号星 Hakton VII
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