ディープスペースナイン エピソードガイド
第21話「帰ってきた英雄 パート1」
The Homecoming
イントロダクション
※1クワークの店で談笑する異星人たち。 盛り上がるダボ・テーブル。 オドー:「クワーク。」 クワーク:「ああ…またオドーかよ。」 「話がある。」 「後にしてくれ。」 「いいや、今すぐだ。」 「わかったよ。ああ…手短に頼むぜ、忙しいんでね?」 カウンターからロム※2が見ている。 「こないだお前が教えてくれたサバイトの貨物船※3のことだけどな?」 「シーッ。」 「アイソリニアロッドの欠陥品をベイジョーに密輸してくるっていう。」 「ああ、それがどうした?」 「それでその貨物船のことを調べてみたんだよ。その結果何がわかったと思う?」 「…俺の教えたとおりだったろう?」 「……その通りだ。第一航海士※4と部下を 2人逮捕したよ。」 「おめでとう、お前ならやると思ってたぜ? …そいじゃ悪いけど…2階に用があるんでね。」 「ちょっと待て。話はまだ終わってないぞ?」 「全くお前って奴は何でいつもそう不機嫌なのかねえ! せっかく密輸団の情報を教えてやったってのに、何で俺をかたきみたいに扱うんだよう!」 「事実お前は敵だ。」 「おい、俺はお前を助けてやったんだぜ?」 「…そこなんだよ。そこがどうしても腑に落ちない。」 「単純なこったよ。いがみ合うのはいい加減にやめて、これからは仲良くやっていこうと思ったからさあ?」 「仲良く? ハ、まさか冗談だろ?」 「冗談で密輸の情報を教えるか? 少しは感謝してくれたっていいだろう!」 「……何か企んでるな?」 「なぜそう疑う。」 「お前は根本的にワルだからだよ。」 「…すぐに友達とはいかないだろうが、まいずれは…仲良くできるさ。」 「フン、フン。そんな日がくるかね。」 首を振り、オドーは店を出て行った。 近づいたロムに話すクワーク。「オドーのあんなに訳がわからないって顔…初めて見たなあ。」 ロム:「俺だってわかんないよ。あのサバイトの密輸が上手くいきゃ大儲けできたのに。」 「金儲けの秘訣第76条だよ。」 「あー、な、76…」 「『時には敵に塩を送ってみるべし。敵を困惑させるのに役立つ。※5』」 笑い、2階へ向かうクワーク。 納得できない様子のロム。 クワークが 2階へ上がっていくと、女性の異星人※6が降りてきた。階段に腰を下ろす。「ハーイ、クワーク。耳たぶの具合はどう?」 クワーク:「いやあもう。ゾクゾクしてるよ。何を飲む、ウン?」 女性の空のグラスに指を入れ、舐める。「ブラックホール※7か?」 「…いいえ、時間がないの。じき船が出るから。ベイジョーへ行く人誰か知らない?」 「ベイジョーならしょっちゅう船が行き来してらあ。何で?」 「これを届ける約束をしたのよ。でも今回はベイジョーには寄らないから。」 「イヤリングかあ。」 「ええそう、イヤリングよ? 実はカーデシア4※8 の修理工から言づかった物なの。」 「カーデシア人からベイジョー人のイヤリングを預かったって?」 「誰でもいいからベイジョー人に、見せればすぐにわかるって言ってたわ?」 「誰でも?」 「DS9 はベイジョーのステーションでしょ?」 「うん。」 「なら誰か、このイヤリングを託していける人がいるはずだわ?」 「もちろんいる。」 「だーれ?」 受け取るクワーク。「…俺さ。」 女性にキスし、降りていく。 ベイジョーの紋章の前で、手を広げているキラ。ドアチャイムが鳴る。舌打ちするキラ。「どうぞ?」 ろうそくの火を吹き消す。 クワーク:「驚いた?」 キラ:「あら何の用?」 「一度お部屋を見たかったんスよ。」 「私の部屋を見たいだけでわざわざ来たの?」 「少佐はあまり人を呼ばないでしょ。」 笑うキラ。「そんなことないわ、あなたを呼ばないだけよ。」 奥へ向かう。 クワーク:「その奥の部屋は…寝室?」 「一歩でも入ってごらんなさい、二度と生きては帰れないわよ。それでもいいの?」 「入ってみたいなあ?」 「5つ数える間に用事を言いなさい。」 「お茶ぐらい入れて下さいよう。」 「5、4…」 「せめて座ってお話を。」 上着を着て出てくるキラ。「3、2、1!」 クワークを押しやる。 クワーク:「待ってよ。これ持って来たんスよ?」 そのイヤリングを見つめるキラ。「どこでこれを見つけた?」 クワーク:「貴重品なんスか?」 キラは手にした。「どこで見つけたか教えて。」 クワーク:「ボスリック※9の船長がカーデシア人から言づかったとか。」 「どこで。」 「カーデシア4 で。って彼女は言ってましたけど?」 自室を出ていくキラ。 クワーク:「…礼ぐらい言えよ!」 |
※1: このエピソードは、第2シーズン・プレミアです。西暦は 2370年、宇宙暦は 47000台になります ※2: Rom (マックス・グローデンチック Max Grodenchik) DS9第12話 "Vortex" 「エイリアン殺人事件」以来の登場。声:山崎たくみ ※3: Subytt freighter ※4: 普通は副長と訳します (First Officer) ※5: No.76 "Every once in a while, declare peace. It confuses the hell out of your enemies!" ※6: 輸送船船長 Freighter Captain (レスリー・ビヴィス Leslie Bevis) 初登場。後に脚本でのみ Rionoj という名前を与えられます ※7: Black Hole ※8: カーデシア4号星 Cardassia IV ※9: Boslic |
本編
プロムナードを歩くシスコに、2階からジェイクが声をかける。「パパ、ちょっと待って!」 シスコ:「シーッ。」 降りてくるジェイク。「今いいかなあ。」 シスコ:「もちろん構わないぞ?」 「嬉しいことがあったんだ。」 「代数のテストで満点か。」 「もっといいこと。」 「ボブ・ギブソン※10の速球を打てた。」 「違う、もっといいこと。」 「もっといいことなんてあるのかい? ぜひ聞きたいねえ。」 「この前話したベイジョーの彼女ねえ。」 「笑顔が可愛いって子か?」 「そう、レイラ※11っていうんだけど。デートに誘いたいんだ。」 「そうか、がんばれよ? それで、何て言って誘ったらいいのかパパに聞きに来たってわけか。」 「パパ…」 「とにかく断られるのを怖がっちゃダメだぞ?」 「もう誘ったんだよ。OK してくれたよ。」 「そうか、そりゃよかったな。」 「それでさ、二人でどこに行けばいいと思う? ホロスイートに行こうかと思うんだけど。」 「ホロスイートはやめておけ。」 「…何でさ。」 「ホロスイートに彼女を連れて行くには早すぎる。」 「…じゃ僕の部屋に連れてきてもいい?」 「おいおいおい、部屋なんてもっとダメだ。」 「…話をするだけだよ。」 「どっか外で会え。」 「二人きりがいいんだ。」 「そういうことなら、上の窓が最高だぞ。ワームホールを行き来する船を見ながらなんて、ロマンチックだろ。」 「退屈そう。」 「何を言ってる。」 「彼女に子供っぽいって笑われる。」 「初めてのデートで生意気だぞ?」 「初デートで振られたくないもん。」 キラがやってきた。「司令官、お話があるんですが。」 シスコ:「…ちょっと待ってくれ。」 ジェイク:「やっぱりパパにはこういうことはわからないんだよね?」 「わからないだと?」 「自分で考えて何とかするからいいや。だから、心配しないで。」 歩いていくジェイク。 「おい、ちょっと待て!」 キラ:「司令官。」 「…何か飲もうか。」 レプリマットに入るシスコ。「…ラクタジーノをジャカライン※12のスライス入りで。」 キラ:「…私は結構です。」 シスコは出てくるカップを手にし、別のレプリケーターへ注文する。「アイコベリーのタルト※13を一つ。」 ため息をつくキラ。 シスコ:「さて…少佐。話って何かな。」 キラ:「シャトルを貸して下さい。」 「なぜだ?」 「…それはお聞きにならない方がよかったのに。」 「聞かないわけにはいかんだろう?」 「黙って貸していただけませんか?」 「少佐、どこに何しに行くのかわからなければ、宇宙艦隊のシャトルは貸せないよ?」 「……カーデシア4 へ、ベイジョーの戦争捕虜を救出に行きます。」 表情を変え、口笛を吹くシスコ。「全くだ、できれば聞きたくなかったな。」 キラ:「…カーデシア4 からこのイヤリングが届けられたんですが。この印は間違いなく、リー・ナラス※14のです。」 「レジスタンス指導者の…」 「最高の指導者でした。特にガル・ザレーラ※15との壮絶な戦いは…」 「もちろんそのことは私も知ってるが、戦死したんじゃなかったのか?」 「死体は発見されなかったんです。もしほかにリー・ナラスを救い出す手だてがあれば、こんな無理な御願いはしません。でもベイジョーの船では、機動性も防御の性能も低いので、カーデシア4 から無事にリーを救い出すのは無理だと思うんです。」 イヤリングを手に取るシスコ。「リーのに間違いないんだな。」 キラ:「裏に残っていた皮膚組織※16を、ダックスが分析してくれたんですが、リーの DNA と一致しましたので。」 「ベイジョー政府には話したのか。」 「3人の閣僚に話しましたが、3人とも私の予想通りの反応でしたね?」 「つまり政府は、たかがイヤリングのために危険を冒す気など、ないというわけだな?」 イヤリングを返すシスコ。「だが政府の気持ちもわかる。」 「司令官。ベイジョー政府がどんなに無能かよく御存知でしょう? 権力争いばかりで、ベイジョーの将来なんか全然考えようとしていないんです。…オパカを失ってから、事態はますます悪くなってきています。6つの地区で党派的な闘争が起こっているし、南部諸島では宗教的な暴動が広がっています。…今こそ強力な、国民が信頼する指導者が必要なんです。」 「リー・ナラスならその指導者になれるのか。」 「ええ、保証します。」 通信が入る。『オブライエンより司令官。』 シスコ:「どうした、チーフ?」 オブライエン:『オドーと御一緒に、居住区の 13階第4地区に来ていただけませんか。お見せしたいものがあります。』 「わかった、すぐ行く。」 キラ:「シャトルを、貸していただけますか?」 「……考えさせてくれ。」 イヤリングを見つめるキラ。 廊下で話すオブライエン。「フィールドモジュレーターの修理に第3クロスオーバーブリッジへ向かう途中で、見つけたんです。」 壁に、大きな模様が描かれていた。 シスコ:「…これは、包括的統一のための同盟※17。通称サークルのシンボルだ。」 オブライエン:「サークル。そんな奴らがここで何してるんです。」 オドー:「ベイジョー人の優越性を主張する非常に過激な組織ですよ。ベイジョー人以外の民族はベイジョーから出て行けと言って。」 シスコ:「ベイジョーではよく見られるシンボルだな。」 「ええ、そうです。でもステーションでは初めてです。」 「ステーションのどこかに、このシンボルがまた描かれたら、すぐ連絡してくれ。」 「わかりました。」 オブライエン:「こんなシンボルを描くことで、我々を追い出せるとでも思ってるんですかね。」 シスコ:「今のところはただ威嚇しているだけだろうなあ。」 オドー:「居住区は警備が緩いですからね。そこを狙って入り込んだんでしょう。」 「しかしこれからは、ステーション全体を厳しく警備してくれよ?」 |
※10: Bob Gibson 1935年生。殿堂入りを果たした投手で、1959〜1975年にセントルイス・カージナルスで活躍。合計 3,117個のストライクを取り、1968年と 1970年には最優秀投手に与えられるサイ・ヤング賞を獲得 ※11: Laira ※12: jacarine ※13: icoberry torte 初登場 ※14: Li Nalas ※15: Gul Zarale ※16: dermal residue ※17: Alliance for Global Unity |
野球ボールで遊んでいるシスコ。 ダックスが司令官室に入る。「ベンジャミン、何か用?」 シスコ:「ああ、ダックス。」 ボールを投げる。「座ってくれ。」 「もしかして野球に関係ある話なの?」 「いや、今日は違う。」 「よかった。」 「野球の話は好きだと思ってたが。」 「ええ、クルゾンはまあまあね? でも半分は、あなたに合わせてたみたいよ?」 ボールを返すダックス。「それで、話って何なの?」 「我々の、ここでの任務のことさ。今まで一生懸命やってきたのに、ベイジョーの情勢は安定するどころか、暴動が頻発している。」 「最初から厳しい任務なのはわかってたけど…正直これほどだとは思ってなかったわね?」 「現在の混乱したベイジョーに安定をもたらして秩序を回復させ、国をまとめ上げる力のある指導者に心当たりがあるって言ったら?」 「キラに、シャトルを貸してあげて?」 「…何で君がそのことを知ってるんだ。」 「…それは言わないって約束したの。」 「わかった。しかしキラがリー・ナラスを見事救出したとして、カーデシアには何て言えばいいんだ。」 「…でもカーデシアだって協定違反になるのよ? ベイジョーの捕虜は全員解放するはずなのに。」 うなずくシスコ。ダックスは出ていく。 ダックスはキラに近づき、微笑んで手に触れた。 続いて出てくるシスコ。 キラは微笑み、うなずいた。司令室を去る。 シスコ:「チーフ、キラにシャトルを用意しろ。」 オブライエン:「おお…カーデシア4 に乗り込むわけですか。」 「何だ、ステーション中に触れ回ってたのか。」 「…クワークには、言ってないんじゃないですか?」 「ならクワークには、キラは鉱物標本を採りに、ラメンダ・プライム※18へ行ったっていうことにしておけ。」 「了解。」 「ところで、シャトルが連邦のものだと識別されないような方法は、何かないか。」 「エンジンのパワー放出を調整して、シールドグリッドの型を変え、亜空間エミッターコイルにフィールドバッファーをつければ、カーデシアは…リセピアン※19の輸送船としか、思わないでしょう。」 「チーフ。ずいぶんスラスラ答えが出てきたなあ。」 「…予習済みですんで。」 笑うオブライエン。 キラの部屋。 制服は着ていないキラは、腹ごしらえをしている。チャイムに応えた。「どうぞ?」 シスコと、同じく制服を着ていないオブライエンが入る。 キラ:「司令官。チーフもどうしたんですか?」 シスコ:「旅の無事を祈ろうと思ってね。……それと、チーフ・オブライエンを君に同行させることにしたよ。」 「……それはまずいんじゃないんですか? 連邦士官を同行したりしたら、あとで問題になるかもしれません。」 「それは覚悟の上だ。君は優秀なパイロットだが、オブライエンは更に優秀だ。それに…できればシャトルは無傷のまま帰ってきてもらいたいしね。」 「お気持ちはありがたいですが…これはベイジョーの問題です。」 「いや、それは違う。正直言って、私もリー・ナラスが帰ってきてくれることを望んでいるんだ。」 オブライエン:「それに、カーデシアの捕虜の扱いはむごすぎる。人権問題でもあります。」 「でももし捕まったら私達もそういう扱いを受けるんですよ?」 「…捕まったら、でしょ?」 「……同行してもらえるなら喜んで。」 シスコはうなずき、出ていく。 ランナバウトに乗るキラ。「操縦は御願いね、チーフ?」 オブライエン:「了解。」 「…出発する前に一つ、はっきりさせたいことがあるの。」 「何ですか?」 「私達の選択肢は二つ。…リー・ナラスと帰ってくるか、帰らないかよ。」 「わかりました。」 「……それじゃあ出発しましょうか。」 「離陸プロセススタート。」 DS9 を発つランナバウト。 |
※18: Lamenda Prime ※19: Lissepian DS9第15話 "Progress" 「第五の月“ジェラドー”」より |
航行するランナバウト。 キラ:「カーデシア4 まではどれぐらいかかる?」 オブライエン:「あと 30分ほどですかねえ。」 「……ちょっと待って。スキャンされてるわ?」 「どこからですか?」 「…位置は固定してるわね。コース 219、マーク 23 だわ?」 「ナビゲーションコントロール・ポストだ。きっと定時のスキャンでしょう。」 「…交信してきたわ。」 「こりゃちょっとまずいですね。」 「また交信してきたわ。」 「…位置はスキャンされてますが、まだ映像では捉えられてないはずです。ごまかせますよ。」 「……チャンネルオープン。」 カーデシア人の声。『こちら、カーデシア・ナビゲーションコントロール・ポスト※20 24。そちらは誰だ。』 キラ:「こちらリセピアンの輸送船、マルタック※21です。」 『スキャンによれば、そちらの亜空間フィールドエミッターは故障しているようだが。』 通信が中断される。 オブライエン:「…フィールドバッファーがパワーサインを消してるんですよ。」 また話すキラ。「ああ、少々。フェイズモジュレーターの調子がおかしいので現在修理中なんです。」 カーデシア人:『もしも必要ならば、修理船を派遣するが?』 オブライエン:「お断りですよ…。」 キラ:「ポスト 24 へ、申し出はありがたいですが、自力で何とかできます。」 カーデシア人:『大丈夫なのか、パワーサインがかなり不安定だが。』 「疑ってるみたいだわ。」 ため息をつくオブライエン。 キラ:「…ええ、大丈夫ですので御心配なく。それに…ガル・マレインがカーデシア4 で今運んでいるルラットの種※22の貨物が着くのをお待ちです。急がないと貨物もダメになりますし、ガル・マレインのお怒りを…買いますのでね。」 カーデシア人:『了解。では貨物を降ろしたあと、修理を受けるように。』 「はいそのつもりでおります。」 通信は終わった。「…チャンネルを閉じてくれたわ?」 オブライエン:「……しかし少佐、ガル・マレインって誰ですか。」 「知るもんですか、出任せよ?」 笑う 2人。 ランナバウトは惑星に近づく。 オブライエン:「フテット労働キャンプ※23の真上の同期軌道に乗りました。…ベイジョー人のみを対象に、バイオスキャンを開始しました。……おかしいな。複数値を示しています。12人前後のベイジョー人がいるようです。」 キラ:「え? ……ビーム転送は一度に 2人が限界だわ。」 「その通りです。最初の 2人を転送した途端に敵に気づかれるでしょうしね。」 「最初の 2人にリー・ナラスがいるとは限らないわ? …キャンプのセキュリティはどうなの。」 「カーデシアの標準的なフォースフィールドで、囲まれています。」 「…着陸しましょう。全員を助けるにはそれしかないわ。」 「人目につかない場所を探します。」 地表の岩場。※24 カーデシア人:「こら、サボるな!」 多数のベイジョー人が働いている。 そこへ堂々と近づいていくキラとオブライエン。 キラ:「引っかかるかしら。」 オブライエン:「カーデシアの男なら舌なめずりしますよ。」 「だといいんだけど。」 「…全くです。」 2人に気づいたカーデシア人※25。「止まれ!」 オブライエン:「長官に会いたいんだが?」 「何の用事だ。」 笑う 2人。 オブライエン:「長官と約束してたんだよ。」 カーデシア人:「…俺も昔ベイジョーに行っていたことがある。」 「じゃ野暮を言うなよ、わかってんだろう…?」 その様子を見ているベイジョー人の男。「何をしに来たんだ。」 そばにいるベイジョー人の老人※26。「何でしょうね。」 カーデシア人:「その女の値段はいくらなんだ?」 キラ:「…私は安くないわよ。」 オブライエン:「ラチナムの延べ棒 2本で御相手させてやる…」 「こんな男冗談じゃないわ。」 カーデシア人:「俺が遊んでやろう。」 「あんたみたいなのに? …私が手に負えるかしらねえ。」 オブライエン:「フフン。」 カーデシア人:「下がっていろ。金を払う前に調べさせてもらうぞ?」 「見るのはいいけどね。つまみ食いはダメだよ、金を払ってからだ。」 「こっちへ来い。」 近づくキラ。カーデシア人は手にした道具を使い、間を阻んでいたフォースフィールドを解除した。 中に入るキラ。だがオブライエンが入る前に、フォースフィールドが再び現れた。 カーデシア人:「さあ、ラチナム 2本出すだけの価値があるのかどうか見せてみろ。」 キラ:「いいわよ…?」 服をはだけさせる。 覗き込むカーデシア人。 するとキラはカーデシア人を殴った。そのまま倒す。 事態に気づいた別の護衛が向かってくる。 キラは先にフェイザーで撃った。 道具を使い、再びフォースフィールドを解除するキラ。 中に入ったオブライエンもカーデシア人を撃っていく。崖を転がり落ちる護衛。 ベイジョー人に近づくキラ。「リー・ナラス※27!」 先ほどの男性が尋ねる。「…君は誰だ…」 キラ:「キラ少佐です、助けに参りました。」 老人:「イヤリングだな? 届いたのか。」 「ええ。」 リー:「私のイヤリングはないぞ!」 老人:「私がベイジョーへ送ったんです。」 オブライエン:「さあさあ、積もる話は後にして下さいよ。」 キラ:「こっちへ。」 逃げ出すベイジョー人たち。 だが背後からリーが足を撃たれた。 キラ:「リー!」 反撃するオブライエン。 老人:「しっかり…。」 撃たれるベイジョー人もいる。 フォースフィールドが再び消えた。 キラ:「どうぞ。急いで、船が待ってます。」 走るベイジョー人たち。「急げよ…」 さらに何人もカーデシア人が追ってきた。 最後尾を歩きながら撃ち返すオブライエン。「このペースじゃ無理です。」 老人:「リーを連れて行ってくれ。私達 4人が残って敵を食い止める。」 リー:「そんなことはできない!」 「あなたさえ助かればいいんです。…お願いします、リーをベイジョーへ。」 キラ:「約束するわ。さあリー、急いで。急いで!」 老人:「早く…。」 撃ち合いを続けるオブライエン。 残ったベイジョー人たちはフェイザーを持っている。 ランナバウトに乗るオブライエン。「さあ、急ぐぞ。」 リーをはじめ、ベイジョー人を入れていくキラ。「早く!」 オブライエン:「離陸しますよ、少佐。」 「まだよ! なるべく多く連れて行くわ?」 「じゃ急いで!」 痛みに耐えるリー。 オブライエン:「ガロア級※28の戦艦が 2隻こっちに向かってます。…あと 1分45秒で現れますよ?」 リー:「少佐。見捨てないでやってくれ!」 「…あと 1分30秒です、今離陸しなければ逃げ切れません。」 キラ:「……離陸してちょうだい。」 ドアを閉めた。 オブライエン:「了解。」 カーデシア4号星を離れるランナバウト。 |
※20: Cardassian navigational control posts 声はデュカット役の大川さんが兼任 ※21: Martuk ※22: rulot seeds 訳出されていません ※23: Hutet labor camp 吹き替えでは単に「キャンプ」 ※24: ロサンゼルス北部のソレダド峡谷で撮影。ロケ撮影ではブロンソン峡谷が多く使われますが、あえて別の場所にしたということです。非常に暑く、ヴィジターやミーニーも苦労したとか。後に DS9第100話 "The Ship" 「神の船」のトーガ4号星、第126話 "Rocks and Shoals" 「洞窟の密約」の暗黒物質星雲内の惑星でも利用されます ※25: ノンクレジットで俳優も不明。これだけセリフがあればエキストラではないはずですが…。声はロマー・ドゥエック役の青山さんが兼任 ※26: 名前は Borum (マイケル・ベル Michael Bell TNG第1・2話 "Encouter at Farpoint" 「未知への飛翔」のグラップラー・ゾーン (Groppler Zorn)、DS9第41話 "The Maquis, Part II" 「戦争回避(後編)」のドルフォ・アーワ (Drofo Awa) 役。ゲーム "New Worlds"、"DS9: The Fallen"、"Starfleet Command: Volume II" で声の出演) ですが、脚本にあるのみで言及されていません。「ボラム」としている日本語資料あり。声はジャロ役の小形さんが兼任 ※27: Li Nalas (リチャード・ベイマー Richard Beymer 映画「ウエスト・サイド物語」(1961)、ドラマ「ツイン・ピークス」に出演) 声:佐古正人 ※28: 吹き替えでは「ガラー級」と聞こえます |
エアロックからリーを連れて出てくるキラ。「フェイザーガンにやられたの。」 看護婦と共に待っていたベシア。「さあどうぞ、しっかり。」 リー:「ああ…ドクター。みんな 10年も捕虜になっていたんです、早く診察を!」 「ええ、でもまずは傷を処置しないと。さあ。ベシアよりダックス。」 ダックス:『こちらダックス。』 「救急の患者が発生した。治療室へ転送して。」 『スタンバイ。』 転送されるベシアたち。 司令官室に入るキラ。「司令官、お話が。」 シスコ:「ああ、少佐か。ちょうどよかったよ。」 コンソールにガル・デュカット※29が映っていた。 キラ:「…申し訳ありません。お忙しいところを。」 シスコ:「いいや、大丈夫だ。」 「外で待っております。」 「いいんだよ、少佐。君にも聞いてもらおう。で、ガル・デュカット。」 デュカット:『…少佐。今シスコ司令官にも伝えたところだが、カーデシア最高司令部は、ベイジョー国民に対して正式に謝罪の声明を出した。』 キラ:「…謝罪ですって?」 『カーデシア4 に、まだベイジョー人の捕虜が囚われているとは、全く知らなかった。…このような捕虜拘束行為は協定の…2645条に明らかに違反している。…もちろんのこと、キャンプの長官は規則に則って厳重に処罰する。』 「残っている捕虜はどうなります?」 『もうベイジョーへ向かう船に乗っている。』 「…そうですか。みんなの無事な顔が見られるのを待っています。」 『ああ、待っていてくれ。今回の不幸な事件に対して、我々カーデシアが取った速やかな対応から…カーデシアが、もはやベイジョーの敵ではないことをわかってくれればと願っている。』 通信は終わった。 「司令官。」 シスコ:「いや、私もビックリしたよ。」 「…カーデシアがこんなに下手に出るなんて、理由があるはずです。」 「ああ、同感だ。しかしカーデシアの真意はさておき、捕虜が無事に帰還したことを、今は喜ぼうじゃないか。よくやってくれたな、君の任務は成功したわけだ。」 うなずき、出ていくキラ。 診察するベシア。「よーし、どうですか、気分は?」 リー:「……大丈夫。」 「よかった。…見かけより傷が浅かったですから。もっとひどいかと思った。」 「そんなにひどけりゃ死んでますよ。」 「ガル・ザレーラとの戦いは、本で読みました。」 「ずいぶん昔の話だ。ああ…」 「僕もあの頃に比べりゃ年を取りましたけど、カーデシアに対するあなたのレジスタンス戦略は実に素晴らしい…」 「ドクター。そういう話は私でなく、誰かほかの人間を捕まえてやってくれませんか…。」 「すいません。…お気持ちはわかります。」 プロムナードを歩くリーは、身なりを整えている。「驚いたなあ。」 キラ:「何がです?」 「いやね? 昔私がこのステーションにいた頃とは、大違いだから。」 ベイジョー人たちがリーに気づいている。 シスコ:「ええ、この頃はすごく活気が出てきましてね。」 オドー:「司令官、先ほどベイジョーからジャロ大臣が到着なさいましたが。」 「少佐、ジャロ大臣の出迎えは、君が行ってくれるか。」 キラ:「はい、わかりました。」 向かった。 レプリマットに近づくシスコ。「空腹でしたら、ベイジョー料理も楽しんでいただけますよ。」 ベイジョー人たちの様子を見るリー。「ああ…いや実は、疲れていまして。部屋で休みたいんですが。」 シスコ:「ええ、どうぞ。」 集まっているベイジョー人。「キラ少佐が救出したんですって…」 シスコ:「みんなあなたがわかるようだ。」 リー:「ああ…。」 部下と共にエアロックから降りてきたベイジョー人に話すキラ。「ジャロ※30閣下、どうも。」 ジャロ:「少佐。リーはどこだ。」 「司令官とプロムナードにおられます。」 「様子はどうだ。」 「…10年間捕虜だった割には御元気です。」 「ふむ。リーが生きていたとは。誰が想像したろう。…運命が君に味方したんだな。」 「いえ、そんな。ベイジョーに味方したんです。」 「だが閣僚※31の中には君のしたことに、怒っている者もいる。」 「そうでしょうねえ? でも後悔はしていません。」 「今日君のしたことはカーデシアに宣戦布告したも同じなんだぞ? 向こうがのってこなかっただけで。」 「リーのためなら宣戦布告もいといません…」 「そう言うと思ったよ。しかし次回このような行動を取れば、君の軍人としてのキャリアは終わりだと思えよ。…だが本音を言えば、国民の一人として感謝しているよ。」 「……ありがとうございます。」 「さあ、リーに会わせてくれ。」 ベイジョー人が殺到している。 オドー:「下がって下さい、さあ押さないで!」 レプリマットに座っているリー。「司令官、申し訳ありません。」 シスコ:「…みんなあなたの言葉を聞きたがっているんですよ。」 オドー:「その通りです。」 ベイジョー人たちの声が聞こえる。「頼むよー!」 リー:「……それで収まるなら。」 リーが立ち上がって振り向くと、ベイジョー人は歓声を上げた後、静かになった。 リー:「自由は素晴らしい。……あの長かった…苦しみの時代を抜けて、ベイジョーはついに自由を勝ち取った。」 ジャロが近づく。「ああ、自由は素晴らしい。元気か。…それにしても本当に君なんだろうねえ。」 リー:「リー・ナラスです。」 「私は大臣のジャロだ。無事に帰ってきてくれて実に嬉しいよ。」 「私こそ戻ってこられて嬉しいです。」 「…私が演説してもいいかな。政治家としてこんな晴れ舞台は滅多にない。」 「ええ、構いませんよ?」 「ありがとう。…皆さんにどうしても一つ申しあげたいこと。お願いしたいことがある。この時を忘れないで下さい。なぜなら、いずれ皆さんは子供や孫から聞かれることになるからです。リー・ナラスがベイジョーに帰還した、この日のことを。」 歓声と笑い声が上がる。 ため息をつくリー。 リーは部屋に入った。 シスコ:「この部屋です、気に入ってもらえるといいが。」 笑うリー。「司令官。…私は 10年間も、カーデシアのキャンプにいたんです。個室なだけで、十分に満足ですよ。」 花の匂いをかぐ。 シスコ:「ではどうぞ、ごゆっくり。みんなのあの歓迎ぶりでは、独りになれるのは今だけでしょう。」 「……私など、忘れられていると思っていた。」 「いや、その逆ですよ。」 「今朝の私は奴隷だった。なのに…夜には英雄だ。」 「信じられないお気持ちはわかりますよ。」 「いいや、何が信じられないかと言って、今まで…自分が命を懸けて闘ってきたことが、現実になったことです。カーデシアが撤退し、ベイジョーが勝った。……司令官の目には、どう見えますか。自由なベイジョーは。」 「非常に満足していますよ、大体のところは。」 「…大体のところは?」 「ただ強力なリーダーシップに欠ける。」 「ああ…それでキラ少佐はあんなことを。…帰ってくる途中シャトルで、私が戻れば…ベイジョーに安定が戻ると。」 「その通りです。ベイジョーが不安定なままでは私も困るんでね。…でも救世主としてベイジョーへ戻る前に、今晩はゆっくり休まれた方がいい。」 握手するシスコ。 「ええ、そうさせてもらいます。」 出ていくシスコ。独りになったリーは、ゆっくりと椅子に座った。 店に響くクワークの声。「お前に 1本、そんでー? 俺様には 6本だろ? お前に 1本、そんでー? 俺様には 6本だろ? お前に 1本、そんでー? 俺様には…そんなシケたツラやめろよ! せっかくの給料日じゃねえかあ! 喜べよ!」 ラチナムを数えていた。 ロム:「わかってるけどさあ。でもどうせ毎週同じだろ? 兄貴が 6本で俺には 1本。…不公平だよ!」 「…確かに。」 「ほんと?」 「ああ、お前の言うとおりだ。」 「ほんとかい?」 「ああ、確かに不公平だ。」 喜ぶロム。 また配るクワーク。「お前には 1本。そんで……俺様には、7本だ。…お前には 1本、そんでー? 俺様には 7本だ、ならいいだろ?」 立ち上がるロム。 クワーク:「おい、どこ行くんだ?」 ロム:「…もう寝る、儲けを平等に山分けする夢でも見てくるよ!」 「勝手にしろう。…お前には 1本、そんでー? 俺様には 7本だ。」 またドアの開く音がし、声が響いた。「おい。」 クワーク:「今度は何だよ…」 いきなり首をつかまれた。 マスクとフードをつけた複数の人物に、床に押し倒される。 口を布でふさがれ、頭に棒状の物を突きつけられる。 焼ける音。クワークは悲鳴を上げた。 |
※29: Gul Dukat (マーク・アレイモ Marc Alaimo) DS9第19話 "Duet" 「謎のカーデシア星人」以来の登場。声:大川透、DS9 ガラックなど。通常は幹本雄之さんが演じ、別の方が担当したのは恐らくこの一話だけだと思われます ※30: ジャロ・エッサ大臣 Minister Jaro Essa (フランク・ランジェラ Frank Langella 映画「ドラキュラ」(1979) に出演) ノンクレジット (家族が DS9 を観ているためだとか。自分が出ているのを秘密にして驚かせたかった?)。名のエッサは後に言及されますが、訳出されていません。声:小形満 ※31: ベイジョー閣僚議院 Bajoran Chamber of Ministers 初言及 |
治療するベシア。「クワーク、クワーク! ジッとしてろ。」 クワークの頭には、サークルのマークが残っていた。「…ドクター。跡残ります?」 ベシア:「いいから動かないで、ジッとして。」 「残るんですか!」 「いや。皮膚再生装置※32を使えば、火傷も綺麗に治る。だから何も心配いらないよ。」 「ああ…」 「ただしジッとしていないと、保証は…しないぞ?」 シスコ:「襲った奴らの顔を見たか。」 クワーク:「いいや、仮面を被ってて。」 キラ:「襲う時何か言ってなかった?」 「いいやあ、冶金を押してあっという間に帰っちまいました。」 オドー:「あの時間のプロムナードは人通りがないから目撃者もいないんですよ。」 シスコ:「いいか、オドー。保安クルーを全員、厳戒態勢におけ。」 「もう手配しました。」 リー:「犯人は誰なんですか。」 キラ:「ベイジョーで最近勢力を増している、サークルという過激派です。」 「…ベイジョー人がこんなことを。」 シスコ:「残念ながらね。」 「でもなぜ。」 キラ:「ベイジョー人以外の人種をベイジョーから追い出すのが目的なんです。」 「ベイジョー政府は、何か手を打ってないんですか。」 「そりゃもちろん。でも政府よりサークルの方がよっぽど組織がしっかりしてるんで。」 クワーク:「冗談じゃねえ、おりゃベイジョー政府を訴えて慰謝料をもらうつもりだからな?」 シスコ:「よすんだ、クワーク! …国民は無能な政府に痺れを切らしているんですよ。だからサークルへ参加する。来い、オドー。」 診療室を出ていく 2人。 キラ:「今のベイジョーには、国民から信頼される強い指導者が必要なんです。」 ベシア:「さ、これでいいだろう。」 火傷は治っていた。 ため息をつき、去るリー。 クワーク:「どう? 俺の顔。」 外へ向かいながら答えるキラ。「どうって、相変わらず濃いわよ。」 クワーク:「…誉めてんだよねえ。」 笑う。 自室に帰ってきたシスコは、あくびをした。「ジェイク、まだ起きてたのか?」 ジェイク:「眠れなくてさ。」 「デートはどうだった。…今夜の約束だったろ?」 「彼女都合が悪くなって。来られなかったんだ。」 「よくあることだ。」 「お父さんから駄目だって言われたんだって。」 「何でだ。」 「…僕がベイジョー人じゃないから。」 「……それはお前のせいじゃないのになあ。なあジェイク。今ベイジョーでは、社会が不穏になってて…暴動も起こってる。…まさか…お前みたいな子供まで巻き込むとはな。お前のせいじゃない。だから気にするな。」 ジェイクの頭にキスするシスコ。 無言のジェイク。 シスコは肩を叩いた。「さあ、もうお休み。」 ジェイク:「…わかった。ああ…おやすみ、パパ。」 寝室へ向かう。 通信が入る。『司令官、第2目標塔にドッキングしているティガリア※33の船から通信です。』 シスコ:「…回してくれ。」 コンソールに映る。『シスコ司令官。私はナヌット※34副長、ロマー・ドゥエック※35です。』 異星人の姿。『これからガンマ宇宙域へ向かうつもりですが、先ほど当船内にベイジョー人の密航者を一人発見したのです。どうすればいいか指示を頂きたい。』 続いて映ったのは、リーだった。 司令官室のシスコ。「ナヌットはガンマ宇宙域から 2年は戻らない予定なんです。」 リー:「私はもっと長く戻らない気でいた。」 「どういうことです。」 ため息をつき、ためらいがちに話し始めるリー。「……私がこれからする話を…信じていただけますか。」 シスコ:「お聞きしましょう。」 「占領時代に、私はある小さなレジスタンス組織に所属していました。ある日、サーヴィング渓谷※36を取り巻く山脈で、カーデシア軍に待ち伏せされたのです。逃げ延びたのは 3人だけでした。2日間山に潜み、ついに水も食料も尽きて谷へ降りました。我々は小さな、湖へ向かって尾根を下りました。フェイザーガンを持っていたのは私だけだったので私が先頭でした。半分ほど下った時、私は…足を滑らせて転がり落ちました。その時カーデシア人が湖から出てきた。水浴びをしていたのでしょう。彼は驚いて、そこに立ちつくしていた。下着を一枚着けたきり、寒さで…身を震わせてね。私も転がったまま、仰天して身動きすらできなかったが、彼が服と一緒に置いてあった…フェイザーライフルへ手を伸ばすのを見て、初めて自分もフェイザーガンを持ってるのを思い出して、撃ったんです。彼が、私の上に…覆い被さるように倒れた時仲間が来た。仲間の一人が彼を知っていました。ガル・ザレーラでした。ベイジョーの 6つもの村で、虐殺を指揮した男です。私はほんとのことを言いました。なのに仲間はなぜか私が死闘の末にガル・ザレーラを倒したと頭から信じ込んでしまったのです。仲間は会う人会う人にこの話を吹聴しました。私がどんなに否定しても噂はどんどん一人歩きを始め、ベイジョー全土に広まってしまったのです。私の組織が勝利を得るたびに、全て私の…手柄にされました。みんなが私を、屈強だの勇敢だのと褒め称え、英雄視し始めたのです。私が否定してももう無駄でした。カーデシアの捕虜になってもそれは変わらず、私がいることで…周りの囚人が奮い立つのです。私は何もしていない。ただ、裸のカーデシア人を撃っただけだ。水浴びを終えたところをね。彼の死に顔は今でも忘れられない。驚きと、怒りで歪んでいた。…司令官、私は…ベイジョーへの義務はもう果たしました。私は今まで長いことずっと、自分の伝説の奴隷として生きてきた。いい加減に、もう自由になりたいんです。」 「…あなたはベイジョーに必要です。」 「…私はみんなが思ってるような男じゃない。」 「たとえそうでも、今ベイジョーに必要なのは…象徴なのです。あなたはそれだ。…もう部隊を指揮して勇敢に戦ったり、素手でカーデシア人を殺したりしなくてもいい。……プロムナードで、あなたを囲んだ人々は…目を輝かせていた。強さ、名誉、あなたはその象徴だ。人々はあなたに希望を見ているのです。」 「…でも元々は嘘なんですよ。」 「いいえ、嘘じゃない。伝説です。伝説には、人を動かす力があります。ベイジョーにはそれが必要だ。あなたが必要なんです。」 司令室。 ダックス:「イエリカンの輸送船※37が離陸します。」 キラ:「第6ドックの係留クランプを外してちょうだい。」 シスコはキラを呼んだ。「少佐。」 ターボリフトでジャロとリーたちがやってきた。 ジャロ:「司令官。」 シスコ:「これはジャロ閣下。リー。」 「リー提督※38だ。昨日の議会で称号が決まったんだ。」 キラ:「おめでとうございます。」 腕を組んだままのリー。「提督は、史上初めてだそうだ。現在ある称号はふさわしくないとかでね。新しいのを考えてくれた。」 シスコ:「ベイジョーに到着したら、何千人もの国民が迎えに出るでしょうね。」 ジャロ:「ああ、歓迎式典もあるそうだ。だがすぐ、ここに戻ってくる。」 「なぜステーションに。」 「リー提督には新しいポストが与えられたんだ。ディープ・スペース・ナインの、ベイジョー側の代表となる。」 「でもちゃんとキラ少佐がおりますが。」 「それは今日までだ。キラ少佐の任務は今日で解き、ベイジョーへと呼び戻す。」 |
※32: dermal regenerator ※33: Tygarian ※34: Nanut ※35: Romah Doek (ポール・ナカウチ Paul Nakauchi) クレジットでは「ティガリア人士官 (Tygarian Officer)」。「ロマー」は訳出されていません。また、副長 (Executive Officer) は「総司令官」と吹き替えされています。声:青山穣、VOY トゥヴォックなど ※36: Sahving Valley ※37: Navarch 宇宙艦隊の提督は "admiral" ※38: Yelikan transport |
To Be Continued...
感想
変則的なものはいくつかありますが、純粋な三部作としては、現在まで含めてこの「帰ってきた英雄」しか存在しません。第6シーズン冒頭の 6連、最終章の 10連エピソードの走りとも言えますね。この三部作はあまり評価は高くありませんが…。ジェリ・テイラーが TNG 用に書いた脚本が下敷きとなっているため、DS9 では珍しく彼女のクレジットが含まれています。映画「リバティ・バランスを射った男」(1962) の要素も入っています。 ベイジョーとカーデシアの設定を最大限に生かした、リーのキャラがいいですね。第3シーズンからはドミニオンが入ってきますから、このようなストーリーを作れるのはこの時期だけだったとも言えます。真実を明かすシーンは類を見ないほどの長台詞。あとガラック声のデュカットは、なかなか違和感がありました (初見時は気づきませんでしたけど)。 |
第20話 "In the Hands of the Prophets" 「預言者の導き」 | 第22話 "The Circle" 「帰ってきた英雄 パート2」 |