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ディープスペースナイン エピソードガイド
第126話「洞窟の密約」
Rocks and Shoals

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・イントロダクション
航行するジェムハダー船。
『艦長日誌※1、補足。船の修理に 3日かかるとオブライエンは言ったが、その余裕はなさそうだ。センサーがジェムハダーの戦闘機を感知している。メインパワーなしで対抗できる確率は、限りなく…ゼロに近い。』
ダックスはコンソールを叩いた。
オブライエン:「ちくしょうめ。ジャイロダイン※2のパワーをスラスターから迂回させてみろ。」
ノーグ※3:「了解。」
シスコ:「ガラック、敵機の現在位置は。」
ガラック※4:「方位 3-1-0、マーク 2-1-5。こっちへ向かっています。」
シスコもバーチャルディスプレイを装着した。2隻のジェムハダー船が見える。
オブライエン:「ノーグ、パワーは迂回させたのか?」
ノーグ:「やったけどスラスターが受け付けないんです。ちくしょう!」
「側面スラスターで試せ。それと口に気をつけろ。右舷の機関部コンソールから、非常用コアにアクセス。」
ダックス:「もうやってみたけど、兵器にもシールドにもパワーがこないの。」
シスコは上の方を見る。「ダックス、暗黒物質の星雲※5が 60度上方にある。そこへ行けるか。」
「ええ、でも未調査の星雲よ。何があるかわからないわ。」
ガラック:「ジェムハダー 2機が、射程圏内に入ってきます。」
武器を発射する敵船。
シスコ:「ダックス! 星雲内に入れ。通常エンジン全開!」
だがダックスが操作していたコンソールが爆発し、ダックスの上に梁が落ちてくる。
シスコ:「シスコよりベシア。緊急事態だ!」
オブライエン:「舵が利きません!」
星雲の中へ入って行くシスコの船。敵船は追うのをあきらめ、星雲から去った。
苦しむダックス。
ベシアが到着した。治療を行う。「もう大丈夫だ。すぐに手当てするから、心配ない。右の腹腔に、穴が開いています。共生生物が傷ついているかもしれない。」
まだ爆発が続いている。
オブライエン:「センサー、ダウンしました。通常エンジンも機能停止。全システムダウンです。今は非常用パワーで保ってます。」
シスコ:「ガラック、外の様子はどうだ。」
ガラック:「ちょっと待って下さい。」 ヘッドセットを直す。
「チーフ、何だったんだ。」
オブライエン:「わかりません、わかりませんが…強力な重力か何かに引きつけられて…」
ガラック:「ああ、大変だ!」
シスコ:「ガラック!」
「つかまって!」
ジェムハダー船は、惑星へ墜落していく。


※1: 「司令官日誌」と訳しています。また、CC では「宇宙暦 51096.2」となっていますが、実際には「補足」です

※2: gyrodyne

※3: Nog
(エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) 前話 "A Time to Stand" 「明日なき撤退」に続いて登場。声:落合弘治

※4: エリム・ガラック Elim Garak
(アンドリュー・J・ロビンソン Andrew J. Robinson) 前話 "A Time to Stand" に続いて登場。声:大川透

※5: dark-matter nebula
外部から見える内部エネルギー源の存在しない、星間塵・ガス雲。VOY第13話 "Cathexis" 「幽体離脱」など

・本編
海岸に立っているジェムハダー、レマタクラン※6のところへ、もう一人の兵士、リマラソン※7がやって来た。「洞窟の入り口付近に防衛境界線を作った。両方向の海岸線の偵察に、パトロールを 2人送ってある。…ヴォルタ人の容態は悪い。間もなく死ぬだろう。」
「ファーストとセカンドはどうした。」
「死体は私が消滅させた。装備類は残りの兵士らに分配した。お前がファーストだな。」
「いや。俺はヴォルタ人の命令に口を挟んだ。彼が生きている限り、俺はサードのままだろう。」
「だがお前は正しかった。もし星雲へ入らなければ、墜落せずに済んだんだ。」
「立場はわきまえばならん! 忘れるな。服従は勝利をもたらす。」
「勝利こそ命!」
「通信を再開できるまで、この星をドミニオンの星とする。」
「もし通信を再開できなかったら?」
「それでも、ドミニオンのものとする。我々が死ぬまでな。」
戻っていくリマラソン。

海を泳ぐノーグ。岸に泳ぎ着き、あおむけになって咳をする。
そこへ来たのは…ガラックだ。「候補生、任務中だ。寝てる暇はないぞ。」
手を差し出す。
その近くでは、シスコたちが海から貨物を上げようとしていた。「引き上げろ! 引き上げろ!」
到着し、倒れこむ士官。貨物の中央部にはダックスが寝かされている。
シスコ:「具合は。」
ベシア:「今は安定してますが…ガラック! 手を貸してくれ。」
手伝うガラック。ノーグも荷物を取る。
沖ではジェムハダー船が沈んで行く。
オブライエンは言った。「何てこった。」
シスコ:「何だ。」
「冗談じゃない。」
「どうした。」
「ズボンが破れてる。」
「何? え? ズボンが破れた?」 笑い出すシスコ。
「ええ、破れてるんですよ!」 2人につられて、女性士官ニーリー※8も笑った。
オブライエン:「全く。とんでもないことになっちまった。」
笑いは続く。船は完全に沈んだ。

テロック・ノール。
自室のベッドで寝ているキラ。
コンピューター:『午前5時、0分です。』
目を覚まし、鏡で笑顔を作る。

制服を着たキラは、ターボリフトのボタンを押した。
開いたドアの中は、カーデシア人やジェムハダーで一杯だ。キラはうなずき、共にターボリフトに乗る。

司令官室に到着したキラは、当直のカーデシア人と交代した。
すぐにカーデシア人が飲み物の入ったカップを持ってくる。
キラ:「ありがとう、メイヴェク※9。」 それを口にした。

焚き火のたかれた洞窟にジェムハダーたちがいる。横になっているヴォルタ人、キーヴァン※10。「この光景はさぞ愉快だろうが、この薄汚い洞窟で死んで、お前たちを喜ばせるつもりはないぞ。……生き延びてみせる。」
レマタクラン:「わかっています。」
「通信システムの修理はいつできる。」
「セブンのヤクタロン※11の予測では、テストできるようになるまで、10日はかかるだろうということです。」
「10日もか。」 咳をする。
「…ホワイトの時間ですが。」
うなずくキーヴァン。ジェムハダーがケトラセル・ホワイトの入ったケースをもってくる。他のジェムハダーも集まった。
それを操作し、中を見るキーヴァン。一瞬戸惑う。「サード・レマタクラン。忠誠の誓いの言葉を。」
レマタクラン:「我らは創設者のしもべ。この命のある限り。」
「では創設者のケトラセル・ホワイトを、受け取るがいい。」
手にするレマタクラン。リマラソンが口を開いた。「一本だけ?」
レマタクラン:「立場をわきまえろ!」
キーヴァン:「ホワイト一ケース、救助が来るまでの 10日、もたせなければならない。10日以上だろう。日割にして与える。心配ない、私はヴォルタだ。お前たちの面倒は見る。」 再び横になった。

シスコたちは洞窟の中にいる。大きな岩をフェイザーで撃つニーリー。赤く光り、熱を発する岩で制服を乾かす。
ズボンを見るガラック。「縫い目に沿って裂けて運がよかった。」
オブライエン:「繕えるか?」
「運悪く、裁縫箱は船と共に沈みましてね。」
ニーリー:「回収できるんじゃないの? 沈んだ場所は水深たったの 500メートルですもの。」
オブライエン:「ノーグ、何分息止められる?」
シスコは隅で寝ているダックスに近づいた。「マダム、ズボンは乾きましたよ。ブーツとベストはしばらくお待ちを。その間に、当ホテルのギフトショップでも、覗かれてはいかがです。」
ダックス:「いえ、結構。それより、このホテルなってないわ。」
「うん。」
「ベッドが…岩みたいに硬いの。」
「後ほど、考慮しましょう。容態はどうなんだ。」
ベシア:「重傷ですが、大丈夫。出血は止まりましたし、体内の傷はもう治療しました。共生生物へのダメージは診断が難しいんですが、十分休養を取れば、どちらも全快するでしょう。」
ダックス:「じゃ私は…滞在中ずっとホテルの店長見てるわけね。」
微笑むベシア。
シスコ:「24時間サービスですので、ご安心を。」
痛みをこらえるダックス。
「私が無事連れ出してやるよ、おやじさん。約束する。」
「約束果たしてよ、ベンジャミン。」

外でトリコーダーを使い、ガラックとノーグが調査している。
どこかノーグの行動がおかしい。ガラックが後ろに下がると、自分も下がる。
ガラック:「何をしてる!」
ノーグ:「命令の遂行だよ。大佐※12に言われたろ。真水の有無と植生を調べろって。」
「そのことじゃないのはわかってるだろ? さっきからずっと私の後ろを歩くようにしてるな。これはもしかしたら、去年のちょっとした誤解と、何か関係があるのか?」
「縛り上げて、殺すって脅したろ。」
「状況が状況だった。仕方ないだろ。」
「でも脅した!※13 俺が前にいるなら構わないし、横を歩くのもいいけど、絶対あんたに背中は見せないぞ。」
「候補生、お前なかなか見こみがあるな。」
トリコーダーに反応がある。
ノーグ:「何だろう。」
ガラック:「よくわからんが…」
一瞬の間に、姿を隠していたジェムハダーたちが近づき、コミュニケーターを取り上げた。銃を向けられる。
ガラック:「…こういうことか。」


※6: Remata'Klan
(フィル・モリス Phil Morris TOS第12話 "Miri" 「400歳の少女」の軍帽を被った男の子、映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」のフォスター訓練生 (Trainee Foster)、DS9第101話 "Looking for Par'Mach in All the Wrong Places" 「クワークの再婚」のクリンゴン人ソポック (Thopok)、VOY第128話 "One Small Step" 「電磁空間アレース4」のジョン・マーク・ケリー中尉 (Lt. John Mark Kelly) 役。俳優グレッグ・モリスの息子で、1988年の「新スパイ大作戦」でバーニー・コリアの息子も演じました) 声:手塚秀彰

※7: Limara'Son
(Paul S. Eckstein DS9第174話 "The Dogs of War" 「自由への叫び」のジェムハダー、VOY第86・87話 "The Killing Game, Part I and II" 「史上最大の殺戮ゲーム(前)(後)」の若いヒロージェン、VOY第107話 "Gravity" 「ブラックホールと共に消えた恋」のヨスト (Yost)、第156話 "Flesh and Blood, Part II" 「裏切られたホログラム革命(後編)」の新しいアルファ・ヒロージェン、第160話 "Prophecy" 「預言の子」のモラック (Morak) 役) 名前は言及されていません。声:水野龍司

※8: リサ・ニーリー中尉 Lieutenant Lisa Neeley
(Sarah MacDonnell) ファーストネームは言及されていません。声:林加代子

※9: Mavek
エキストラ

※10: Keevan
(クリストファー・シー Christopher Shea VOY第114話 "Think Tank" 「頭脳集団クロスの陰謀」の Saowin、ENT第21話 "Detained" 「テンダーの虜囚」のセイジン (Sajen)、第41話 "Cease Fire" 「戦場の絆」のテレヴ (Telev) 役) 後にも登場。声:山路和弘

※11: Yak'Talon
ジェムハダーの階級は序数で表されるので、正確には "Seventh" です (後の「シックス」も同様)

※12: 「司令官」と吹き替え

※13: DS9第122話 "Empok Nor" 「眠れるステーション エムポック・ノール」での出来事

前に座らされたノーグとガラックに尋ねるキーヴァン。「仲間はほかに何名いるんだ。」
ノーグ:「ノーグ。士官候補生。認識番号、C-X ダッシュ 9-3-7 ダッシュ…」
ガラック:「やめろ。」
ナイフを突きつけられるノーグ。
ガラック:「あなたの部下に説明したように、私はカマーと申します。それから、かつてオブシディアン・オーダーと呼ばれていた、カーデシア諜報局※14の諜報員です。1週間前、創設者たちに奉仕すべく、任務を果たしていたところ、U.S.S.ケンタウロスに捕らえられましてねえ。彼らのシャトルに拘束されていたんだが、それが…」
キーヴァン:「失礼だが、カマーさん。もしそれが本名ならだが…あなたが我らの同盟員なら、どうしてこれをつけていた。」 コムバッジを見せるキーヴァン。
ノーグは目を閉じた。
ガラック:「ああ…その件は聞かないでいてもらいたかったんですがねえ。」
キーヴァン:「君たちに聞きたいことはあと一つだ。…仲間に医者はいるか。」
「……ええ。」
ノーグ:「ガラック!」
キーヴァン:「彼にきつく当たるな。今君の命を救った。彼らを閉じ込めておけ。」 連れて行かれる 2人。「サード。任務を与える。宇宙艦隊の部隊を見つけるんだ。だが見つけても、殺してはならない。場所を確認し、彼らの兵力を見極め、報告に戻れ。」
レマタクラン:「はい、わかりました。」
「わかっちゃいない。だが構わない。お前たちは理解する必要はない。命令を正確に遂行すればいい。それだけだ。」
「服従は、勝利をもたらす。」
「ああ…ああ、その通りだ。行け!」

テロック・ノール。
ジェイク:「近々、ドミニオンの世話人一行を、4,000人もベイジョー星に受け入れることになったって聞いたんですけど、詳しく説明してもらえますか。」 保安室にはオドーとキラもいる。
キラ:「違ってる。人数は 400人よ。それにどこから聞いてきたの? 公式発表は明日の予定なのに。」
「耳に入るんです。詳しく教えてください。読者に真実を知らせなきゃ。」
オドー:「ハ、読者はいないだろう。ウェイユンはまだ君の記事の配信を差し止めてるんだからね。」
「今はね。でも気が変わるかもしれない。外の世界にここで何が起きているか、知ってもらいたくないんですか。」
キラ:「……戦争が始まってから、ベイジョーとほかの星との貿易関係は、完全に絶たれてるの。だからたとえば機械の部品だとか医療品を調達したくても、相手がいないのよ。ドミニオン以外ね。それで、世話人の一行がベイジョーに 2、3ヶ月滞在して、技術的な手助けをしてくれるの。」
「じゃあ、ヴェデク・ヤジム※15みたいに批判的な人たちにはどう答えるんです? ヴォルタ人を大勢ベイジョーに迎えることが、ドミニオンのベイジョー支配に一歩ずつ近づいているって批判には。」
オドー:「世話人たちは武器も持っていないし、ジェムハダーの兵士たちは一人も同行しないって確約を取りつけてある。」
「オドー、ステーションの統治評議会に加わることで、ドミニオンの占領を認めることになるんじゃないかって、それを…心配したことは、一度もありませんか?」
「ハ、ドミニオンには私の了承など必要ないさ。奴らがここにいることに変わりはない。血を流さずに済ませたい。」
キラ:「もう終わり?」
ジェイク:「あとちょっと、ちょっとだけ。えっと…明日のデモにどちらかが参加する予定はありますか?」
オドーはキラを見た。
キラ:「…何ですって?」
ジェイク:「ヴェデク・ヤジムがデモ行進するって言ってるんです。明日の午後、プロムナードでね。ドミニオンの基地占拠に抗議するんです。」
オドー:「馬鹿な。今そんなことをしたら、デュカットに締め付けを厳しくする口実を与えることになる。」
キラ:「…ヤジムに話すわ。」
ジェイク:「じゃあ、ヴェデク・ヤジムの抗議行動を抑えつけるつもりですか? あ…別に…少佐のことを個人的に攻撃しようってわけじゃないんです。ただ確認したいだけで。」
「インタビューは、もう終わりよ。」
オドー:「ええ、大賛成です。」
出て行くキラ。オドーも仕事に戻る。
ため息をつくジェイクは、自分につぶやいた。「口に気をつけろ。」

オブライエンが話している。「可能性としては、コムバッジを一つセンサーに配線でつなげてやれば、原始的な通信機にはなりますが、動力源がない。」 ベシアはダックスを診ている。
シスコ:「フェイザーのパワーを利用できないのか。」
「それは考えました。でもパワーセルをつなぐコンバーターが必要で、イオン交換マトリックスなしにはコンバーターは作れません。」
保安部員のゴードン※16が洞窟に戻ってきた。「大佐、非常事態のようです。ガラックとノーグに応答がなく、呼びかけにも応じません。」

フェイザーライフルをもって地表を進む一行。
トリコーダーを使うニーリー。「大佐、がけの上に生命反応が複数あります。距離、75メートル。高さは、30メートル。」
シスコ:「偵察場所か。ジェムハダーだな。」
「そのようです。」
「簡単にやられるわけにはいかん。チーフに 10時方向にある、大きな突き出た岩の方へ向かうように言ってくれ。走るなと言え。」
オブライエンに近づくニーリー。「チーフ。10時方向にある大きい岩に向かって。」
進むオブライエン。

岩に隠れて見張っているジェムハダーたち。
リマラソンは言った。「駄目だ、我慢できん!」 発砲する。
他のジェムハダーも堰を切ったように攻撃する。
岩に隠れ、フェイザーで反撃するシスコたち。


※14: Cardassian Intelligence Bureau

※15: Vedek Yassim

※16: ポール・ゴードン少尉 Ensign Paul Gordon
(Joseph Fuqua) ファーストネームは言及されていません。声:浜田賢二

双方とも攻撃を続ける。
部下のジェムハダーを止めるレマタクラン。「やめろ! 撃つんじゃない! 撃ち方やめ!」
まだ撃っている者に銃を向けるリマラソン。「おい、撃つなと命令が出たんだぞ!」
レマタクラン:「命令は知ってるだろ! 攻撃するなと言われていたんだ。誰が最初に撃った。」
リマラソン:「俺だ。」
「シックスに降格だ。」
「はい。」
「全員偽装※17して、ベースキャンプに戻るぞ。」
「もう偽装する体力がない。」 他のジェムハダーも首を振った。
「お前と、お前! 撤退できるように援護するんだ。」
「ああ、わかった!」
「撤退だ!」
攻撃するリマラソン。「レマタクラン! 命令に背いてすまない。」
次々と走って行くジェムハダー。
オブライエン:「撤退する気かなあ?」
シスコ:「そのようだな。」
「カモフラージュもしてませんよ。」
「ああ、確かに妙だ。こっちに都合のいい理由だといいんだが。撃ち方やめい!」

キーヴァンの前にジェムハダーが並んでいる。「なぜ私の命令に背いた!」
レマタクラン:「ホワイト不足で、不安感が高まっています。感情を抑えられない者が出ました。」
「誰だ。」
「もう罰は下しました。」
「誰なのかと聞いているんだ!」
「部下の処分は、私の責務です。」
「名前を言え!」
レマタクランはキーヴァンに近づいた。「私はサードですが、それでも部隊のリーダーです。あなたが私を、そして私が部下の行動を律する。それが物事の理です。」
「いいだろう。処分は任せよう。」
「解散だ。」 出て行くジェムハダーたち。
「サード、ご苦労だったな。ファーストにしてやってもいいぞ。その前に、お前に任務を与える。」

テロック・ノール。
女性のベイジョー人、ヤジム※18が話している。「ドミニオンは悪だ。預言者の教え通り、悪とは戦わねばならない。」
キラ:「ヴェデク、それには異論はありません。だけど抗議行動やデモでは何も変わらないんです。住民への締め付けが厳しくなるだけだわ。」
「それではほかにどんな、手段があるのだ。」
「だから…あ……今はあなたにもほかのヴェデクにも、できることはないと思います。」
「そうか。ではベイジョーの連絡将校として、お前の戦い方を教えてもらおう。」
「戦うことはしません。今回は違うんです。カーデシアの占領時代とは。」
「違う? カーデシアが基地を支配しているではないか。ベイジョー人の自由は、一つずつ剥ぎ取られてゆき、間もなくエイリアンの最初の部隊が我々の星へ上陸しようとしている。」
「今回は非武装のヴォルタの世話人を受け入れるだけのことです。それに彼らは、仕事を終えたら帰るんです。」
「自分の姿が見えていないのか。連中の手下になろうとしている。悪の手先に成り下がるか! キラ、お前の目を開き、悪に立ち向かう心を思い出させるには、私はどうすればいいのだ。」
「ヴェデクは、何もわかってらっしゃらない。」
ヤジムは立ち上がった。「その通りだ。わからない。多分明日には、お互いわかりあえるだろう。」 ベイジョー神殿を後にする。

戦略を話すシスコ。「3つの防戦地点を設ける。君とゴードン少尉は南側の峰、ニーリー中尉は溶岩層付近、ベシアと私は、砂地に陣取る。」
ダックス:「私はホテルを守ってる。」
笑うシスコ。
通信が入る。『ニーリーよりシスコ大佐。』
シスコ:「どうした。」
『今ジェムハダーの兵士が、歩哨地点にやってきました。大佐と話したいそうです、2人きりで。』

ニーリーにフェイザーを向けられたまま、レマタクランが洞窟に入る。手を見せ、武器を持ってないことを示した。
「それでは。」 歩いて行くニーリー。
シスコはレマタクランの前に立った。「ベンジャミン・シスコ大佐だ。」
「サードのレマタクランだ。お前の部下を 2名、我々が拘束している。お前と医者が来れば、2人を返そう。」
「なぜ医者がいるんだ。」
「ヴォルタが重傷を負っている。」
「で私は。」
「ヴォルタから話があるそうだ。」
「階級の低い捕虜 2名を人質にして、上級者 2名と交換しようというのか。君ならそんな取引に乗るか。」
「いや。」
「私に勧められるか。」
「勧めはしない。」
「君はあまりいい交渉人とは言えないな。」
「俺は交渉に来たんじゃない。伝言を伝えるよう、指示されただけだ。」
「なるほど。それなら、私は交渉のできる人物と話がしたい。ファーストを呼んでもらおうか。」
「ファーストは存在しない。」
「ということはセカンドもいないんだろうな。」
「指揮官は俺だ。」
「ヴォルタの下のな。大変だろうな。兵士としてヴォルタから命令を受けねばならないのは。」
「ヴォルタがジェムハダーを指揮する。それが物事の理だ。」
「『服従は勝利をもたらす』か。ジェムハダーと、ある任務で一緒になったことがある。もちろんこの戦争の前だ。うーん、優秀だったよ。タフで、プロに徹してた。学ぶことも多かったが、あの時のヴォルタ人は…何か…信用できなかったな。二枚舌で、腹が読めない。誰からも信用されてなかった。最期には……殺されたよ。ジェムハダーのファーストにな。※19驚いたか。」
「そういうことがないわけではない。だが非常に稀だ。規律が失われた部隊でのみ、起きることだ。」
「例えば辺境の星の海岸に難破した、そんな部隊のことかな?」
「お前にも医者にも、危害は加えないと伝えるよう、ヴォルタに言われている。そして用が済めばそのまま、帰って構わないそうだ。お前の返事を聞きたい。」
「ヴォルタ人の言葉には、何の重みもないな。…君自身は我々が無事帰れることを保証するか、レマタクラン。」
「用が済めば、お前たちを無事帰すよう命令されている。俺がその命令に逆らうことはありえない。」
「……それならいい。取引に応じよう。でも 1時間後だ。」
「承知した。」 帰って行くレマタクラン。
話を聞いていたダックスは口を開いた。「もうちょっとで気持ちを動かせそうだったのにね。」
シスコ:「ドミニオンの精神的な支配は、そう簡単に…うち破れるもんじゃない。フン。」
「ヴォルタに逆らうよう、仕向けられるとほんとに思う?」
「わからんよ。だが今朝あの崖の上に、ジェムハダーの兵士が少なくとも 7人はいた。ベースキャンプにはガラックたちの見張りと、ヴォルタ人の警護で、あと 2人はいる。ガラックとノーグをこっちの数から引くと、ほとんど 2 対 1 で向こうが有利だ。」
「チェックアウトしたくなってきたわ。」
「私もだ、おやじさん。」


※17: shroud
直訳すると「覆い、幕」

※18: Vedek Yassim
(リリアン・シャーヴィン Lilyan Chauvin) 声:定岡小百合

※19: DS9第95話 "To the Death" 「戦士の宿命」より。ジェムハダーのファーストとはオメティクラン (Omet'iklan)、ヴォルタ人とはウェイユン (現在とは別のクローン) のこと

湖の真ん中に、細い道になった陸地ができている。片側から 2人の人物が歩いてきた。
逆側にはジェムハダーたちがいる。「行っていい。」
ガラックとノーグが歩き出す。
シスコとベシアが反対側からやってくる。
ノーグは走り出した。
ガラック:「ノーグ、走るんじゃない。奴らを刺激したくないからな。」
すれ違う 2組。
ガラック:「ああ、どうもこんにちは、大佐、ドクター。」
シスコ:「怪我はないか。」
「ええ、そっちは?」
ベシア:「ぐったりだよ。」
交換は終わった。

プロムナードを歩くキラ。ベイジョー神殿の前にいるオドーに尋ねる。「動きは?」
「まだ何も。中にヴェデクが 2人いますが、今のとこ神殿を離れる様子はないようです。」
「ヤジムはどう?」
「来ていません。」
「来ないといいわ。ベイジョー市民をプロムナードで逮捕するなんてこと、したくないもの。」
ジェイクがやって来た。
「ジェイク、記事になりそうなことはなさそうよ。」
ジェイク:「そうかな。ヴェデク・ヤジムから連絡があったんです。きっかり午後2時に、抗議行動を始めるってね。」
「ええ、だけどどう見たって何も…」
「おい、見ろ!」 男の声が響く。
見上げると、2階の通路にヤジムがいた。「悪をのさばらせてはならん!」
首に紐をつけたまま、ヤジムは飛び降りた。
駆け寄ろうとするキラを押さえるオドーとジェイク。
紐はまっすぐに伸びきり、ヤジムの体は宙に浮いた。被っていた帽子が落ちる。
キラは見つめていた。

シスコとベシアが洞窟に入る。すぐに診察を始めるベシア。
キーヴァン:「…シスコ大佐。私はキーヴァン。話し合わねばなりません。」
ベシア:「今は口を利かないで下さい。すぐに手術をしないと。」
シスコ:「今か。」
「早くしないと手遅れになる。」 ジェムハダーがシスコを押しのけ、キーヴァンに近づく。「僕は医者だよ。傷つけたりしない。」
キーヴァン:「そんなことに興味はない。彼らはヴォルタ人の体内を見てみたいだけなんです。」
手術を始めるベシア。

自室のベッドで目を開けたまま横になっているキラ。
コンピューター:『午前5時、0分です。』
鏡で顔を見つめる。

制服を着たキラは、カーデシア人やジェムハダーと共にターボリフトに乗る。浮かない顔をしている。

司令官室に到着したキラは、カーデシア人がもってきたカップを手にとる。
「ありがとう、メイヴェク。」 それを口にした。
周りにはジェムハダーがいる。カーデシア人も。
キラは司令室を出ていった。

手術を終えたベシア。ジェムハダーは離れていく。
シスコ:「ショーはどうだった。」
レマタクラン:「有益だった。」
キーヴァン:「ああ…生き返った。」
ベシア:「勝手な自己診断は禁物ですよ。医者は僕です。内出血はもう止まってるな。遊離コラーゲンのレベルも落ちてる。組織の成長因子もうまく安定してるし、細胞への酸素供給量も 50%上昇。うん、生き返りましたね。」 動こうとするキーヴァン。「動かないで。内臓は細胞マイクロ縫合※20で何とか縫い合わせてありますけど、まだ運頼みだ。」
「……外せ。部下も連れて行け。」
ジェムハダーは全員出て行く。
キーヴァン:「そこにあるケースを、ここへ。」
ケトラセル・ホワイトの容器を運ぶベシア。
キーヴァン:「大佐、ここには 10人のジェムハダーがいます。」 ケースを開けた。「そして、残っているケトラセル・ホワイトはあと一本のみ。彼らのコントロールは効かなくなる。理性のないただの狂暴なけだものに、なってしまうのです。目につく者は全て殺す。私もあなたも、あなたの部下も。最期は互いに殺し合う。」
シスコ:「なぜ我々に話すんだ?」
「明日の朝、あなた方のベースキャンプを襲うよう命じます。ですが、攻撃プランの詳細を前もって教えましょう。彼らを皆殺しにできる。」
ベシア:「自分の部下でしょ。」
「ええ。」
シスコ:「まだ私の質問に答えていない。なぜ我々に話すんだ。」
「そこに…通信システムがあります。修理が必要ですが、優秀と名高い艦隊のエンジニアが一緒でしょうから、石でも通信機にできる。禁断症状のジェムハダーがやるより、ずっと早く直せると思いますよ。彼らを始末してくれれば、通信機を渡し、私は降伏します。捕虜にして下さい。」
ベシア:「そして戦争が終わるまで、待遇のいい艦隊で、のんびり捕虜として暮らすか。部下たちはこの星で腐っていくっていうのに?」
「わかりが早いようですね。……私の提案に賛成でも反対でも、あなた方を攻撃するようジェムハダーに命じます。ですから彼らを殺すか、殺されるかですね。彼らは…止められない。」


※20: microsuture

地面に図を描くシスコ。「ジェムハダーがここまで来たら、十字砲火を浴びせるんだ。」
ゴードン:「逃げ道はないな。」
ガラック:「それが目的でしょうに。お忘れかもしれないが、今は戦争中だ。」
オブライエン:「たとえ戦争でも、ルールってもんがある。」
「正確には、地球人※21の戦争にはですな。おかげで随分余計な手間がかかって、勝利が遠のいてます。」
ゴードン:「全員を…撃つんですね。」
ニーリー:「もし立場が逆なら、彼らはためらわない。」
ノーグ:「俺たち、ジェムハダーとは違います。軍規を守るのが…」
シスコ:「意見は聞いてないぞ! …決定は私が下す。ガラックの言う通り、これは戦争なんだ。我々か彼らか、選ぶとなれば議論の余地などない。さあ、行くぞ!」
フェイザーライフルを持つ。
ダックス:「無事を祈る必要、どうやらなさそう。」
シスコ:「祈っててくれ。俺はまだ、ほかの方法をあきらめたわけじゃない。」
手を差し出すダックス。「そうだったの。無事で戻って。」

テロック・ノール。
オドーは 2階にいるキラに近づく。「ダマールが 5時間も前から少佐を探してますよ。」
1階を見つめていたキラは、手の中に持っているコミュニケーターを見せた。「あの光景が、頭から離れないの。自分が信じられない。あそこに立って、ドミニオンへの抵抗運動を止めようとしてたなんて、この私が。レジスタンスだった頃は、そういう連中を心から軽蔑してたのに。オドー、私は裏切り者だわ。」
「違います。大佐がベイジョー人全てに望んだことを守ってるだけです。中立を保ち、戦争に加わらないという。」
「昔よく言ったわ。戦わない者は敵に荷担してるって。今アルファ宇宙域の半分が私たちの自由のために戦ってるのに、私は…何をしてるの? 毎日三食十分に食べ、柔らかいベッドで眠って、あの人殺しどものために報告書まで書いてる。」
「誰もが苦しい時です。私が平気だと? 毎日デュカットやウェイユンと同じテーブルにつき、連邦の壊滅計画をただ聞いてる。」
「オドー、別にあなたを責めてるんじゃないの。奴らを利用しろって言ったのは元々私なんだし、そうじゃなくて…私なのよ。朝起きて、鏡を見た時、そこに写った顔を見て吐き気がする。そんなのはもう、嫌なの。ヤジムの言った通りよ。行動を起こさなきゃ。戦わなきゃいけないのよ。」
「取り返しがつかなくなる。派手に抵抗すれば、弾圧を招くだけです。」
「オドー、あなたまで敵に回したくないのよ。でも必要なら、そうするわ。」
ため息をつくオドー。「わかりました。だが新しいレジスタンスを計画するなら、もっと目立たない場所にしましょう。」
2人は歩いて行く。

谷の中心をジェムハダーたちが歩いている。周りの岩場にはシスコたちが隠れている。
だがシスコは声を上げた。「レマタクラン! 話がある。」
立ち止まるジェムハダー。
レマタクラン:「いいだろう!」
シスコはフェイザーを持ったまま、谷を降りる。
レマタクラン:「ここで待機しろ。向こうが撃つまで撃つな。」
リマラソン:「了解した。」
他のジェムハダーを残し、レマタクランはシスコに近づいた。
シスコはフェイザーを降ろした。「この谷には逃げ道はない。既に全員に照準を合わせている。」
レマタクラン:「そっちがかなり、有利なようだな。」
「勝敗が明らかな状況で殺し合うのは、無意味だ。そこである提案をしたい。」
首を振るレマタクラン。
「よく聞いてくれ。ケトラセル・ホワイトが足りないのは知っている。だから救助が来るまで、君たちに鎮静剤を打たせよう。その後、ケトラセル・ホワイトが手に入るまで、眠らせることもできる。」
「投降の選択肢は与えられていない。」 歩いて行くレマタクラン。
「キーヴァンは裏切ったんだ!」
レマタクランは立ち止まり、振り返った。
「夕べ彼から攻撃プランを全て聞かされている。」
もう一度、シスコに数歩近づくレマタクラン。「お前たちのキャンプへ向かうのにこの谷を通るのは、戦術的に確かに誤りだからな。」
「知ってたんだな。」
「疑ってはいた。キーヴァンがどう思っていようと、ジェムハダーは常にヴォルタの先を読んでいる。」
「ならそれを行動で示したらどうなんだ。降伏するんだ。」
「命令には従う。」
「キーヴァンのような男に忠誠を尽くすのは、無駄なんじゃないのか。」
「忠誠に値するかどうかなど関係ない。我々は彼らに仕えるために生まれた。俺はジェムハダーで、彼はヴォルタだ。それが物事の理なんだ。」
「…物事の理のために…自分の命を、捨ててもいいのか!」
「俺の命は俺のものじゃない。最初からな。」
レマタクランは戻っていった。シスコも下がる。
合流するレマタクラン。
オブライエンは戻ってきたシスコに尋ねる。「何ですって?」
シスコ:「彼らは間違ってるよ。」
部下に話すレマタクラン。「我らの死は、創設者の栄光だ。」
シスコたちは全員ジェムハダーを見ている。
レマタクランは岩場を見据え、発砲しながら走り出した。反撃するシスコたち。フェイザーライフルが次々とジェムハダーに命中する。全員が倒れた。
ゴードンが倒れている。脈を取ったベシアは、シスコに向かって首を振った。
オブライエン:「大佐。」
谷を見ると、通信機を持ったキーヴァンがいる。シスコはフェイザーを構えた。
キーヴァンはジェムハダーの死体を見下ろしていた。「シスコ大佐! ホワイトがあと 2カプセルもあれば、あなたたちは生きていられなかったろう。」
フェイザーを降ろすシスコ。「チーフ! そのゲス……彼をキャンプへ連れて行け。そして通信機の修理にかかるんだ。」
オブライエン:「了解。」
「ニーリー中尉。」
ニーリー:「はい。」
「戦死者を埋葬しろ。」
「わかりました。」
キーヴァンを見つめるシスコ。


※22: 「人間」と訳されています

・感想
はじめから道具として作られた生命、ジェムハダーについて描かれています。連邦が忌み嫌う遺伝子操作の対極にある存在であり、恐ろしいのと同時に悲しくもありますね。それに対してヴォルタ人キーヴァンのいやらしさがよく出ており、ステーションでのキラやオドーの葛藤も含め、相変わらず DS9 らしい深くて「先の読めない」ストーリーを見せてくれます。今回もうまい引っ張り方で、来週が待てませんね。
今回は特撮はあまり目立ちませんでしたが、海に沈みゆくジェムハダー船のようにさりげなく使われています。


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