ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第128話「電磁空間アレース4」
One Small Step
イントロダクション
※12032年10月19日、火星。その軌道上に一隻の探査船がある。男性の通信。『アレース4※2 よりクマガワ。火星からの日の出はどうだい。』 女性のローズ・クマガワ※3は応えた。『綺麗よ。今日の空の色はちょっと緑がかってたわ。ほんとに壮大な眺めだった。』 アレース4 の中には、一人で操縦しているジョン・マーク・ケリー中尉※4が座っている。「観たかったな。」 『また今度ね、中尉。』 「溶岩原には穴を開けたか?」 火星地表の映像を観るケリー。 『ええ、もちろん。酸化鉄の層を突破して、8メートル掘り進んだわ。』 もう一人の男性、アンドレイ・ノヴァコヴィッチ※5の通信が入る。『このまま予定通りにいけば、今日中にサンプルが取れそうだ。』 ケリー:「それより重大なニュースだぞ。ヒューストンからの最新版だ。ワールド・シリーズ第5戦は、ヤンキース※6の勝ち。」 クマガワ:『20ドル頂きね。』 「勝負はまだ 6戦目が残ってる。今日歴史になったのは我々だけじゃない。ボカイ※7がディマジオ※8の記録を破った。」 モニターに地表で作業をしている 2人の宇宙飛行士の姿が映っている。ノヴァコヴィッチ:『嘘だろ?』 「多分ヒューストンが情報を操作しているのさ。」 クマガワ:『探査計画司令室には、キングス※9のファンが大勢いるのよ。』 「でもほかにディマジオの記録を破るなんてありえない。」 突然探査船が揺れ、通信が乱れた。 クマガワ:『中尉? 今通信が中断しました。』 ケリー:「ちょっと揺れただけだ。待機を。」 スイッチを操作するケリー。「乱気流をキャッチした。」 ノヴァコヴィッチ:『その高度で?』 「ライダーをチェック。一体これは…。」 クマガワ:『ジョン、何なの?』 「何か物体が接近している。方位 121.6。正体不明の巨体物体だ。直径 1キロ以上!」 ノヴァコヴィッチ:『何でそんなでっかいなものがいきなり現れるんだ。』 「わからない。直ちに回避行動を取る。スラスター始動。」 クマガワ:『ただの太陽フレアかもしれない。』 「だといいがね。」 さらに揺れは激しくなる。そして前方の窓に見える宇宙空間に、突如明るい光を放つ物体が姿を現した。どんどん大きくなっていく。ケリーの瞳に映る明るい光。 「一体何なんだ、これは!」 |
※1: ドクター役、ロバート・ピカード監督。ヴォイジャー全エピソード中、このエピソードと第56話 "Alter Ego" 「ホログラムの反乱」のみ担当しています ※2: アレース4号 Ares IV アレースは火星を意味するギリシャ神話の軍神で、ローマ神話名では「マルス」。デザインについて、公式雑誌 Star Trek: The Magazine 2001年6月号で特集されています ※3: Rose Kumagawa 声: 岩本裕美子 ※4: Lt. John Mark Kelly (フィル・モリス Phil Morris TOS第12話 "Miri" 「400歳の少女」の軍帽を被った男の子、映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」のフォスター訓練生 (Trainee Foster)、DS9第101話 "Looking for Par'Mach in All the Wrong Places" 「クワークの再婚」のソポック (Thopok) 役。DS9第126話 "Rocks and Shoals" にも出演。「新スパイ大作戦」のレギュラー、グラント・コリアー役で、「(初代) スパイ大作戦」でバーニーを演じた故グレッグ・モリスの息子 (設定上も親子)) 声: 中田和宏 ※5: Andrei Novakovich 声: 河野智之 ※6: Yankees 20〜21世紀のプロ野球チーム。DS9第58話 "Past Tense, Part II" 「2024年暴動の夜(後編)」で言及 ※7: Bokai バック・ボカイ (Buck Bokai)。プロ野球の最も偉大な選手の一人。TNG第12話 "The Big Goodbye" 「宇宙空間の名探偵」で初言及、DS9第16話 "If Wishes Were Horses" 「夢幻の刻」に登場 ※8: DiMaggio ジョー・ディマジオ (Joe DiMaggio)、1914〜1999年。20世紀の野球選手。これも TNG第12話 "The Big Goodbye" 「宇宙空間の名探偵」など。同エピソードでボカイがディマジオの連続安打記録を破ったのは 2026年と言及されているので、別の記録でしょうか (そもそもワールド・シリーズ中に連続安打記録達成がありうるのかどうか??) ※9: Kings ロンドン・キングス (London Kings)。21世紀のプロ野球チーム。同じく TNG第12話 "The Big Goodbye" 「宇宙空間の名探偵」など。ボカイの在籍チームですが、なぜか吹き替えでは「ディマジオ (のファン)」と誤訳されています |
あらすじ
24世紀。ヴォイジャーの後ろに、突如亜空間エネルギーの塊が姿をあらわした。「電磁空間」と呼ばれるもので、通常は亜空間に存在しているが、たまに通常空間に出てくるのだという。21世紀にアレース4 の司令船が吸い込まれたのも同じ現象だった。電磁空間が亜空間に戻る前に、調査を始める。中には 21世紀の船に使われていた成分が含まれていることが発見された。 かつてボーグが電磁空間に入ろうとしたことがあったため、セブンの協力でその技術をデルタ・フライヤーに応用する。現象が亜空間に戻るまでは 16時間と推測された。ケリーを英雄と称えるチャコティをリーダーとし、パリス、セブンと共にシャトルに乗る。激しい揺れの中、無事電磁空間の内部へ入った。 中は安定しており、見事な光景だ。亜空間に戻るまで 5時間半。フライヤー内で様々な物質の分析も行われる。ついにアレース4 の司令船も見つかった。一方ヴォイジャーでは、電磁空間が暗黒物質小惑星に引き付けられていることを感知する。衝突するまで 4分しかないため、ジェインウェイはチャコティにすぐに電磁空間から出るように命じる。しかしチャコティはトラクタービームで司令船を運ぼうとする。そのため脱出に間に合わず、衝突のせいでチャコティは怪我をして倒れてしまった。システムも損傷を負い、残り時間は 2時間もない。 トレスの提案により、デルタ・フライヤーのパワーとして使えるアレース4 の司令船の部品を取ることになった。環境スーツを着たセブンが転送され、ケリーの遺体を確認する。彼の日誌を再生すると、電磁空間に入った後もしばらく生きていたことが初めてわかった。 記録を取りつづけたケリーは、窓の外に見える未知の船の残骸に興奮していた。空間から脱出しようとし、失敗、そして少しでも長く記録を残すために生命維持装置を切った、最期の日誌。セブンはパワー源と共にケリーの遺体もデルタ・フライヤーに転送させた。エネルギーを得たフライヤーは、電磁空間が亜空間に戻っていく中、脱出を図る。ヴォイジャーからはトラクタービームで補佐し、無事抜け出すことができた。ヴォイジャーではケリーの葬儀が執り行われ、彼は宇宙空間へ送り出されたのだった。 |
用語解説など
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感想
次シリーズ「エンタープライズ」のコンセプト同様、現在と 23〜24世紀の間について描かれています。その中でもごく近未来の話ですね。ジェインウェイのセリフにある、「科学知識が全てなら、連邦は宇宙船ではなく探査機の艦隊を造った」というのが良かったです。実際に調べてこそ…というのは、スタートレックならではのテーマと言えます。 上でも書いている通り、特集記事のある The Magazine を読むと、合わせて 1分も映らないであろうアレース4 のデザインにリアリティを追求しているのがわかります。本当にさすがという感じですね。 最後のケリー中尉のシーンやセブンのセリフは良かったのですが、途中が間延びしていて、なかなかアレース4 の内部に入らなかったのが残念。チャコティも珍しく活躍 (暴走?) してたのに、結局セブンに取られちゃってましたね。 |
第127話 "Dragon's Teeth" 「亜空間制圧戦争」 | 第129話 "The Voyager Conspiracy" 「果てしなき疑惑」 |