※1艦長日誌、宇宙暦 50460.3。ここ数日、反転星雲※2の観測を続けている。アルファ宇宙域では見られない珍しい現象だ。実にミステリアスで興味をそそられる。
ブリッジの艦長席で、連邦の宇宙天文理論によれば、反転星雲は非常に不安定なのでわずか数年で燃え尽きてしまうそうよというジェインウェイ。だがこの星雲は何百年も経っているようだ。その理論が間違ってたんでしょう、誰も実物を見たことはなかったんだからというパリス。あまり近づくな、すぐそばのプラズマリボン※3が燃え出しそうだという科学ステーションに座っているチャコティ。安全のため、2千キロメートル後退するように命じるジェインウェイ。キムに、センサーをフルスペクトルスキャンにして観測を続けるように指示する。星雲がフレアを起こす瞬間を見逃さないようにするためだ。だがキムは返事をせず、ボーッとしていた。ミスター・キム、センサーに集中してと注意するジェインウェイ。キムは我に返って謝り、フルスペクトルスキャンを開始した。スクリーンの映像を見ながら、反転星雲がこんなに美しいものだなんて、美しくて神秘的で、この世のものとは思えないというジェインウェイ。同感ですねといい、トゥヴォックに相づちを求めるパリス。この天文現象の価値は理解できますが、地球人のようにセンチメンタリズムに浸る必要性は感じませんと述べるトゥヴォック。感情に動かされるのは悪いことじゃない、感動するのもいいもんだぞというチャコティ。笑うジェインウェイ。キムはまだ何かを考えていた。
トゥヴォックは自室で、棒で組みあがったパズルのようなものを解いている。チャイムが鳴り、入ってきたのはキムだった。何か用かと聞かれ、それカル・トー※4だよね、ヴァルカンのチェスと尋ねるキム。カル・トーに比べたら、チェスなど子供の遊びに等しいというトゥヴォック。難しいんだねというキムに、用は何だ、少尉と聞く。教えて欲しいんだ、どうやったら感情をヴァルカン人のように殺せると聞くキム。それには長年の修練が必要だというトゥヴォックに、それはわかってる、でもヴァルカン人に伝わる特別なテクニックがあると聞いてという。トゥヴォックはうなずき、タサンサハット※5か、感情パターンを分散する瞑想方法だと教える。キムは習いたいと言った。理由を聞くトゥヴォックに、ある感情を消したい、忘れたいという。それは簡単に予想がつくが、一体どういう種類の感情だと尋ねるトゥヴォック。僕、恋をしてるんだ、でも忘れたいというキム。なるほど、それでその恋愛の対象は誰なんだと聞かれ、名前はマレーナ※6と教える。クルーにそんな名前のものはいないと思うがというトゥヴォックに、彼女はクルーじゃないからと微笑むキム。真顔に戻り、ホロデッキのキャラクターなんだと言った。コンピューターのサブルーチンに恋をしたというのかというトゥヴォック。だから悩んでるんだろというキム。トゥヴォックはカル・トーの続きを始めた。するとパズルが一瞬光り、整った別の形に変わった。興味深い、とトゥヴォックは言った。
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※1: ドクター役のロバート・ピカード監督です
※2: inversion nebula
※3: プラズマひも plasma strand
※4: kal-toh
※5: t'san s'at
※6: Marayna
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