廊下や医療室の照明が暗くなる。ワープコアの反応を確認するトレスとヴォーラック※1。ブリッジも暗くなった。
キム:「艦長、推力減退。第4 から 9デッキ、エネルギー停止。レプリケーター、ホロデッキ、不要な装備はオフライン。残るシステムは通常の 20%にパワーダウン。」
ジェインウェイ:「トム、後どれくらいもつかしら。」
パリス:「重水素供給を 2割に減らして、推力を 4分の1 にしても 1週間以内にガス欠ですね。」
ジェインウェイ:「全員節約に努めて。重水素がある惑星がないか目を凝らして。トゥヴォック、チャコティ、エネルギー節約の方法がないか具体策を。ハリー、地球物理学の分野で手を貸して。代替エネルギーを合成できないか調べて。」
うなずくキム。
ジェインウェイ:「それまで艦内は省エネモード※2で。いいアイデアがあったら遠慮せず言って。」
パリス:「自転車に発電機をつけて、地球までこいで帰るってのはどうです?」
「それは名案。」
「最初のこぎ手にはハリーを推薦したいと思います。」
あきれるキム。ジェインウェイとチャコティは笑った。
廊下を慌ただしく行き交うクルーに命令するトゥヴォック。「生活スペースは非常に限られてくる。各自、必要不可欠な物だけを持参するように。」
前からやってきたニーリックスとぶつかった。持ち物を落とす。
それを拾うニーリックス。「ああ、すまん。」
トゥヴォックは一冊の本を拾った。
「これは一体何だね。」
「ああ、トゥヴォック少佐。その本はジューレックス※3の名作だよ。」
「必需品だけだぞ、ニーリックス。」
「それは必需品だよ。タラクシアじゃ偉大な作家なんだ。俺、こいつを一行でも読まないと眠れない。」
「君も習慣を変えたまえ。パワーが戻るまでは、自分の部屋は使えない。」
「あー、努力してみるよ。」
「それから、これは。」 ニーリックスが持っている枕を取り上げるトゥヴォック。慌てるニーリックス。
「それがないと首が凝っちゃって、大変なんスよ。」
「それならドクターに言って、抗炎症薬を処方したまえ。」
ため息をつくニーリックス。「ああいいさ、首の凝りくらい我慢する。」
「ミスター・ニーリックス。毛布もだ。」
「だめ。これだけは譲れないよ。ママの編んだ毛布は子供の頃から一度も手放したことがないんだ。」
「君もみんなと同じ毛布を使いたまえ。」
「宇宙艦隊の毛布はかゆくなっちゃって。」
「ではドクターに言って…」
「かゆみ止めか? 医療室のベッドみたいに、安眠間違いなしだ。あ! ありがとう、ミスター・ヴァルカン。あんたのおかげでひらめいたよ。」 荷物を全部持っていくトゥヴォック。
チャコティは天体測定ラボに入った。セブン・オブ・ナインに話しかける。
「セブン、何をしている。」
「仕事だ。」
「天体測定は停止させるよう、さっき言われたはず。エネルギーの無駄遣いだ。効率が悪くなるぞ。」
「効率は相対的なものだ。天体測定ラボを動かさなければ、燃料のある惑星を探査できない。」
「君の意欲は認めるが、当分通常スキャナーで我慢してもらう。」
コンピューターに反応があり、確認するセブン。
「通常スキャナーでは発見できなかった。」
「何だ?」
「高濃度の重水素だ。」
「発生源は。」
「コンピューター、位置を提示。」
スクリーンに赤い惑星が映された。
セブン:「現在地より 4光年離れた小惑星だ。地表面に重水素の厚い層を探知した。」
「だめだ。あれはデーモン・クラスの惑星※4だ。」
「デーモン・クラス?」
「通称だ。正式名は Yクラス※5と呼ばれている。惑星を取り巻く大気は有毒。熱電子放射能※6が充満している。惑星の地表温度は 500ケルビン以上。通常の軌道に乗るのも自殺行為だ。」
「しかし事態は逼迫している。」
「そうだ。」
「どんな絶望的な状況でも、適応しなければ。」
スクリーンには惑星が大きく映し出される。
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※1: Vorik (アレキサンダー・エンバーグ Alexander Enberg) ヴァルカン人男性の艦隊士官。VOY第71話 "Day of Honor" 「名誉の日」以来の登場。ここではセリフはありませんが、声は森田順平さんで統一されています
※2: gray mode
※3: Jirex
※4: Demon-class planet
※5: Class-Y 惑星分類システム (planetary classification system) による区分の一つ
※6: thermionic radiation
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