熟成室を覗き込むセブンたち。ジェインウェイ:「ボーグはどこから?」
セブン:「恐らく、このサイエンスラボで生まれたに違いない。我々がヴォイジャーに転送された時、装置が不調だった。その時、パターンが一時的に漏れ、私のナノプローブがドクターのモバイルエミッターに侵入したのだろう。」
トゥヴォック:「同化を始めたのか。」
「ああ。ナノプローブは遭遇した技術を利用するよう設定されてる。エミッターを同化したら、このセクション全体を変容させてしまうだろう。ボーグはムルケイ少尉の DNA を採取している。」
「彼の遺伝子コードを基に、生命体を作ろうって気ね。」
熟成室の中が光り、ボーグの姿が大きくなった。トリコーダーで調べるトゥヴォック。
「ドローンの質量が、17%増加しました。」
セブン:「通常のボーグより、25倍も成長スピードが速いな。」
ジェインウェイ:「トゥヴォック、このセクションをレベル10 のフォースフィールドで囲んで。24時間体制で見守ること。」
トゥヴォック:「このまま成長させる気ですか。」
「殺すのは簡単。でも危険だとわかるまでは様子を見ましょう。分析を再開して。どういう事態になるのか、正確な情報が欲しい。どういう相手なのか。」
セブン:「了解した。」
原始星雲は成長を続けている。
セブン:「ボーグ・フォースフィールドを破るためにセンサーを調整した。」
天体測定ラボのスクリーンを見るトレス。「胎児だって聞いてたけど…。」
「1時間前まではな。現在は妊娠期間の第4段階に入った。人間で言えば 6歳の子供だ。」
ドクターも通信で参加している。『6歳の男の子だな。つまりこのドローンは男性ということだ。セブン、君のセンサーデータをこちらに送ってくれ。調べたいことがある。』
「スタンバイ。」
「どれどれ…大部分は人間の肉体に似ているな。ボーグ・インプラントで構成されているのはおよそ 27%だ。」
トゥヴォック:「面白い。ドローンの皮膚はポリデュートニック合金※8でできている。」
『モバイルエミッターも同じだ。』
セブン:「ナノプローブはエミッターの技術を利用したのだ。それでああいう独特の形態になった。」
トレス:「ちょっと待って。ドクターのエミッターは 29世紀の技術よ。私たちの今の技術より 500年進んでるはず。」
「つまりこのドローンも、我々より進んでいるということか。」
「29世紀のドローンってわけ。」
「本質的にはな。」
ドクター:『モバイルエミッターのありかがわかった。彼の大脳皮質に埋め込まれている。』
セブン:「エミッターは中枢神経系の一部として使われている。自律神経機能をコントロールしているのだ。」
『つまり取り外し不可能。ドローンを殺さない限りね。」
トゥヴォック:「集合体と交信しているのか。」
セブン:「いや。ボーグ・トランシーバーの機能は停止させた。」
トレス:「今はいいけど、成長後はどうなるか。」
セブンはスクリーンを見つめた。
「防御機能をもつ皮膚。マルチ次元の環境適応力。内部転送ノードですって?」 パッドの情報を読むジェインウェイ。
セブン:「このドローンはかなり進んだ技術を有する。2時間以内に大人に成長、今はボーグ・シールドは作動していない。今なら抹殺可能だが、ぐずぐずしてはいられない。」
「待って、セブン。一つ教えてくれない? 通常ドローンが熟成室から出ると、どういう状態になるのかしら。」
「集合体からの指示を待つ。」
「では指示がなければ、無害ということなのね。でしょ? 目的がない。」
「その通り。」
「ドローンと集合体のつながりを阻止して、私たちが彼に目的を与える。」
「艦長?」
「セブン、これは最も進化したドローンよ。彼に人間の価値観を教えるの。個人の存在意義を教えるのよ。」
「失敗すれば、あれが同化されたら、ボーグ集合体は計り知れない力を得る。」
「だからそうならないよう全力でボーグとのつながりを阻止するのよ。できることなら、抹殺命令は下したくない。セブン、あなたとの時だって今回と同じだったの。やはり反対したクルーたちがいた。」
「状況が違うだろう?」
「そう? 同じよ。集合体から切り離されたボーグ。曖昧な存在で、潜在的脅威をもつ。でも成功した。今回も同じ手を使いましょう。今度はあなたが先生役になるの。」
「私が人間社会の生き方を彼に指導するのか?」
「ファースト・コンタクトだと思って。あなたは私たちの代表よ。」
ジェインウェイが差し出したパッドを受け取るセブン。
保安部員が見張る熟成室。セブンとトゥヴォックがサイエンスラボに入る。既にドローンは大人に成長している。
コンピューターを操作するセブン。「ドローン、成熟サイクル完了。」
チューブが外れ、ボーグ※9が降りてくる。
「我々はボーグ。我々の名称は。」
セブン:「共通の名称はない。お前は集合体の一部ではなく、個人である。これから私が指示を出す。」
「非効率的だ。」
「私に従え。」
「非効率的だ。我々はボーグ。」
「私の名前はセブン・オブ・ナイン。第3属性ユニマトリックス 0-1 だ。セブン・オブ・ナインと呼べ。」
「セブン・オブ・ナイン。」
「私の指示に従ってもらう。」
「セブン・オブ・ナイン。」
「そうだ。我々は、ボーグではない。個人である。わかったか。」
「我々の名称は。」
トゥヴォック:「通じていない。」
セブン:「受け答えはプログラムされているから、話が理解できないのだ。神経接続器に直接伝える。」
「危険ではないのか?」
「意志の疎通を図るにはそれしかない。」
「…始めろ。」
セブンがボーグに近づくが、彼は後ろへ下がった。
セブン:「危害を加えるつもりはない。」
動こうとしないドローン。
セブン:「抵抗は無意味だ。」
ボーグはセブンに近づいた。腕の同化チューブを接続するセブン。
「これから指示を与える。」
しばらくの間の後、セブンは言う。「これで大丈夫だ。」
だがボーグはセブンの腕をつかんだ。離そうとしない。
「ドローンが私の神経経路を探っている。私の全知識を吸収しようとしている! リンクを外せない!」
トゥヴォックはボーグに向けてフェイザーを撃った。だがシールドに阻まれ、全く効果がない。
セブン:「接続を解除せよ。指示に従うのだ。何をする気だ…。」
やっとでドローンは接続を外した。
「指示に従います。」
まだ息の荒いセブン。
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※8: polydeutonic alloy
※9: (J・ポール・ボエマー J. Paul Boehmer DS9第172話 "Tacking into the Wind" 「嵐に立つ者たち」の Vornar、VOY第86・87話 "The Killing Game, Part I and II" 「史上最大の殺戮ゲーム(前)(後)」のナチ大尉 (Nazi Kapitan)、ENT第28話 "Carbon Creek" 「スプートニクの飛んだ夜に」のメストラル (Mestral)、第76話 "Zero Hour" 「最終決戦」などの士官 (Officer) 役。ゲーム "Klingon Academy"、"Bridge Commander" でも声の出演) 声:大川透、DS9 ガラックなど
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