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ヴォイジャー エピソードガイド
第96話「新生ボーグの悲劇」
Drone

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・イントロダクション
セブン・オブ・ナインが鏡の前に立っている。笑顔を作る。すぐに元の顔に戻るセブン。また笑う。
ドクターが貨物室にやってきた。「セブン・オブ・ナイン、今日はご機嫌いかがかね。」
「不愉快だ。いきなり事前の予告なしにこの部屋に入ってくるな。」
「すまん、ノックもせずに悪かった。」
「準備はいいか?」
「ああ、センサーの分析によれば機は熟したようだ。原始の星雲※1が、あと 20分ほどで形成される。パリス中尉がお待ちかねだ。」
歩いて行くセブン。ドクターは鏡を覗いた。「うん、なかなか男前だな。」
セブンは振り返ったが、何も言わない。

廊下を歩くドクター。「星雲調査なんてワクワクするねえ。」
「私には単に任務の一つに過ぎない。今回のドクターの役目は?」
「星雲がクルーに与える放射線を調べる予定だ。新型の放射線が出るかもしれん。どんな姿の星雲ができあがるのか、楽しみでたまらんねえ。この通りちゃんと、ホロイメージ装置※2も持って来たんだ。」
「これは任務だ。写真を撮って遊んでいる暇はないぞ。」
「ボーグってのは全くノリが悪いな。明日は君に生きる喜びを実感できるような社会訓練をするぞお。」

9型シャトル。セブン、トレス、ドクターがいる。揺れが起こる。
パリス:「おっと、失礼しました。ちょっとした重力の乱れだ、心配いらないよ。」
またシャトルは揺れ、バランスを失ったトレスはドクターに身をあずけた。
ドクター:「やあ、トレス中尉。」
立ち上がるトレス。「あなたは平気でしょうけど、私第2級の閉所恐怖症なのよ。」
パリス:「ああ、すっかり忘れていたよ。」
セブン:「第2級とは?」
トレス:「宇宙艦隊ではこのシャトルを第2級※3って呼んでたからよ。速くて操縦しやすいけど、乗り心地は最低。」
パリス:「1週間もの間、6人の士官が狭いシャトルに詰め込まれたんだ。外に出た時は、仲間の面を見るのもウンザリ。」
セブン:「広くて能率的なシャトルを設計すればいいのだ。」
トレス:「…もっともな意見ね。」
揺れが続く。セブン:「左舷前方にプラズマの波動を感知した。」
シャトルの前方で爆発が起こり、小さな星雲が誕生した。
トレス:「停止して。距離を保つのよ。」
ドクター:「セブン、ちょっと代わってくれ。写真を撮りたいんだ。」
セブン:「忙しい。」
「怖い顔するな。笑顔も得意だろ?」
ドクターを睨み付けるセブン。
大きな振動が起こった。
トレス:「今のは何?」
セブン:「プラズマの波動だ。」
「大規模だわ。トム、離れて!」
星雲から遠ざかるシャトル。だが星雲の成長が速く、巻き込まれてしまう。
トレス:「測定された重力とずれが起きてる。」
パリス:「エンジンをやられた。」

ブリッジのキム。「シャトルより救難信号を受信しました。」
トゥヴォック:「星雲のねじれに巻き込まれたようです。」
ジェインウェイ:「推力最大。ブリッジより第1転送室。緊急転送待機。」

転送を担当するムルケイ少尉※4。「完全にロックできません。星雲の外に出られたら…。」
転送室に入ったチャコティは言う。「無理だ。シャトルはパワーダウンしてる。」
「とにかく、転送を試みます。」
「エネルギーオン。」
4人の姿が転送台に現れるが、なかなか安定しない。
ムルケイ:「パターンの分離がうまくいきません。」
チャコティ:「パターンバッファをリセットしろ。」
「シグナル、回復しました。」
転送が完了する。
チャコティ:「みんな大丈夫か。」
うなずくパリス。全員転送台を降りる。だがドクターの映像が乱れた。
ドクター:「エミッターの調子がおかしいようだ。」
トレスはすぐにコンソールを操作する。「ドクターのプログラムを医療室に転送。待機して。」
ドクターの姿が消え、モバイルエミッターが床に落ちた。それを拾ったセブンは、トレスに渡す。
ドクターの通信が入る。『医療室より第1転送室。状況は。』
トレス:「どうやら転送中にエミッター回路の一部が切れてしまったようね。」
「修理可能か。」
『多分ね。まずは診断テストしなきゃ。」
「多分とは?」
「焦らないで。また連絡する。行くわよ。」 転送室を出るクルー。

モバイルエミッターがコンピューターの上に置かれる。
トレス:「コンピューター、アルファ 3-6 の診断テストを実行。」
『診断テストを実施します。』
「ムルケイ、朝一番に結果をチェックしといて。」
ムルケイ:「朝一番ですね。」
2人はサイエンスラボを出る。その時モバイルエミッターから何本もの腕状の回路が飛び出した。それはコンピューターに突き刺さり、ディスプレイの表示を変化させていく。

※1: 原始星雲 protonebula

※2: holo-imager ホログラム映像記録装置。DS9第54話 "Meridian" 「次元移動惑星M」より

※3: クラス2 シャトル class-2 shuttlecraft
タイプ6、8、9のシャトルの総称

※4: Ensign Mulchaey
(Todd Babcock) 宇宙艦隊士官。声:浜田賢二

・本編
「艦長日誌、補足。原始の星雲はまるで意志をもっているようだ。星雲は依然として膨張を続けている。適度な距離を保ちつつ、成長を見守ることにする。」
トレスの部屋。モニターにスイッチが入る。ドクター:『朝ですよー。』 まだベッドの上で起きないトレス。 ドクター:『もう 6時だよ。鳥はとっくに鳴いてる。』 手を叩くドクター。トレスはやっとで目を覚ました。 「…何の用?」 『エミッターが故障して、私は朝から最悪の気分だ。いつ修理が終わるのか教えて欲しい。』 「もう…消えてよ…。」 『およその時間だけでもいい。』 体を起こすトレス。「まったく! 何時に寝たと思ってんの?」 『眠いのが何だ。それくらい我慢してくれ。こっちは自由がないんだ。』 ドクターの映像を切るトレス。
トレスは隣の部屋に入る。「コンピューター、ソニックシャワーお願い。」 服を脱ぎ、身体を洗う。突然、その部屋のモニターにドクターが映し出される。『一つ言い忘れていた。エミッターを…。』 振り向くトレス。慌ててタオルを手にする。「ちょっと!」 ドクター:『私はドクター、覗きの趣味はない。※5気にしないでくれたまえ。それより、エミッターを持ち込んだら一緒に仕事ができる。準備はこちらでやるから…』 トレスはモニターにタオルを投げかけた。医療室のドクター側の映像が暗くなり、何も見えなくなった。「もしもし? ベラナ?」
モバイルエミッターの周辺のディスプレイは、変化を続けている。貨物室のセブンは目を開けた。アルコーヴを降りる。コンピューター:『再生サイクルが不完全です。』 セブンは貨物室を出る。
艦長席に座っていたキムは、立ち上がってチャコティを出迎える。「副長。よく眠れましたか?」 チャコティ:「まあな。星雲は。」 「時速 8,000立方キロの速度で、まだ膨張を続けています。11回もコースを調整しました。」 「艦長の気分を味わったようだな。」 「とても有意義な夜でした。」 「がんばったらしいねえ、クルーたちが誉めていた。『キム艦長』と呼ばせていたとか。」 「あの…」 セブンがブリッジに入る。 チャコティ:「おはよう。」 セブン:「挨拶している場合ではない。」 「どうした。」 「頭部インプラントのボーグ・トランシーバーが作動した形跡がある。つまり近くにボーグがいるということだ。」 「ハリー。」 キム:「一晩中センサーを見守ってました。それらしき船は見なかった。」 セブン:「星雲に隠れていたのかもしれない。」 「いや、ありえない。10秒と隠れていられませんよ。ボーグ・キューブでもね。」 チャコティ:「警告はミスかもしれん。君のトランシーバーの調子が悪かったか。」 セブン:「可能性はある。」 「医療室で検査してもらえ。こっちでも確認のために、もう一度よくスキャンしてみよう。」 「…よろしい。」 ブリッジを出ていくセブン。 キム:「私にお任せ下さい。」 チャコティ:「艦長から少尉に降格だな。」 笑うチャコティ。
ムルケイはサイエンスラボに入った。すぐに中の異様な雰囲気に気づく。一面緑色の光。トリコーダーで調べるムルケイ。中央の物体に近づく。突然、ムルケイの首に 2本のチューブが刺さった。
反応するセブン。 ドクター:「どうした。」 「ボーグ・トランシーバーが今また作動した。」
キムが報告する。「ワープコンジットから、誰かがパワーを流しています。」 チャコティ:「どこに。」 「第8デッキ、セクション22。サイエンスラボです。」 「ブリッジからサイエンスラボ。…ムルケイ少尉、応答せよ。」 「ハリー。」 「センサーがある種のフォースフィールドで湾曲されてます。副長、フォースフィールドの信号はボーグです。」 「非常体制。艦長はブリッジへ。※6トゥヴォック、保安部隊をサイエンスラボへ。セブン・オブ・ナイン、君が正しかったようだ。船内でボーグの存在を感知。第8デッキのサイエンスラボだ。」 医療室のセブン。「ドローンの数は。」 『不明だ。トゥヴォックがラボへ向かった。』 「すぐ合流する。」 ドクターはつぶやいた。「サイエンスラボ。私のエミッターが危ない。」
フェイザーライフルを構えたトゥヴォックたち保安部員と、セブン。サイエンスラボのドアを手で開ける。ラボの中心には筒状の機械が置いてあり、チューブがつながっている。 セブン:「これはボーグの熟成室※7によく似た作りだ。だが、各構成要素は見たことがない。」 保安部員がトゥヴォックを呼ぶ。「少佐。」 ムルケイが床に倒れている。 セブン:「この傷は同化チューブの跡だ。組織を採取したのだろう。傷の周りにナノプローブの痕跡がある。…暗号シークエンスは私のと同じだ。」 トゥヴォック:「君のナノプローブ。なぜだ。」 「わからない。」 「少尉を医療室へ。」 まだ意識がもうろうとしているムルケイを連れて行く保安部員。 セブンは熟成室に近づく。 トゥヴォック:「何をする気だ?」 セブン:「ボーグなら近づいても問題ない。」 フォースフィールドを難なく通過し、中の機械に触れるセブン。窓が空き、内部が見えるようになった。そこには小さなボーグが入っている。 セブン:「ドローンだ。だが見たこともない形態だ。」 トゥヴォック:「まだ、胎児の段階だな。」 「なぜだ。ボーグは同化するだけだ。このような方法では再生しない。」 液体の中に浮かぶ、ボーグの胎児。

※5: 「私は医者だ、のぞき屋じゃない。」 "I'm a doctor, not a peeping Tom."

※6: "Captain to the Bridge." を、なぜか「チャコティよりブリッジ」と訳しています。チャコティはブリッジにいるのに…。

※7: maturation chamber

熟成室を覗き込むセブンたち。ジェインウェイ:「ボーグはどこから?」 セブン:「恐らく、このサイエンスラボで生まれたに違いない。我々がヴォイジャーに転送された時、装置が不調だった。その時、パターンが一時的に漏れ、私のナノプローブがドクターのモバイルエミッターに侵入したのだろう。」 トゥヴォック:「同化を始めたのか。」 「ああ。ナノプローブは遭遇した技術を利用するよう設定されてる。エミッターを同化したら、このセクション全体を変容させてしまうだろう。ボーグはムルケイ少尉の DNA を採取している。」 「彼の遺伝子コードを基に、生命体を作ろうって気ね。」 熟成室の中が光り、ボーグの姿が大きくなった。トリコーダーで調べるトゥヴォック。 「ドローンの質量が、17%増加しました。」 セブン:「通常のボーグより、25倍も成長スピードが速いな。」 ジェインウェイ:「トゥヴォック、このセクションをレベル10 のフォースフィールドで囲んで。24時間体制で見守ること。」 トゥヴォック:「このまま成長させる気ですか。」 「殺すのは簡単。でも危険だとわかるまでは様子を見ましょう。分析を再開して。どういう事態になるのか、正確な情報が欲しい。どういう相手なのか。」 セブン:「了解した。」
原始星雲は成長を続けている。 セブン:「ボーグ・フォースフィールドを破るためにセンサーを調整した。」 天体測定ラボのスクリーンを見るトレス。「胎児だって聞いてたけど…。」 「1時間前まではな。現在は妊娠期間の第4段階に入った。人間で言えば 6歳の子供だ。」 ドクターも通信で参加している。『6歳の男の子だな。つまりこのドローンは男性ということだ。セブン、君のセンサーデータをこちらに送ってくれ。調べたいことがある。』 「スタンバイ。」 「どれどれ…大部分は人間の肉体に似ているな。ボーグ・インプラントで構成されているのはおよそ 27%だ。」 トゥヴォック:「面白い。ドローンの皮膚はポリデュートニック合金※8でできている。」 『モバイルエミッターも同じだ。』 セブン:「ナノプローブはエミッターの技術を利用したのだ。それでああいう独特の形態になった。」 トレス:「ちょっと待って。ドクターのエミッターは 29世紀の技術よ。私たちの今の技術より 500年進んでるはず。」 「つまりこのドローンも、我々より進んでいるということか。」 「29世紀のドローンってわけ。」 「本質的にはな。」 ドクター:『モバイルエミッターのありかがわかった。彼の大脳皮質に埋め込まれている。』 セブン:「エミッターは中枢神経系の一部として使われている。自律神経機能をコントロールしているのだ。」 『つまり取り外し不可能。ドローンを殺さない限りね。」 トゥヴォック:「集合体と交信しているのか。」 セブン:「いや。ボーグ・トランシーバーの機能は停止させた。」 トレス:「今はいいけど、成長後はどうなるか。」 セブンはスクリーンを見つめた。
「防御機能をもつ皮膚。マルチ次元の環境適応力。内部転送ノードですって?」 パッドの情報を読むジェインウェイ。 セブン:「このドローンはかなり進んだ技術を有する。2時間以内に大人に成長、今はボーグ・シールドは作動していない。今なら抹殺可能だが、ぐずぐずしてはいられない。」 「待って、セブン。一つ教えてくれない? 通常ドローンが熟成室から出ると、どういう状態になるのかしら。」 「集合体からの指示を待つ。」 「では指示がなければ、無害ということなのね。でしょ? 目的がない。」 「その通り。」 「ドローンと集合体のつながりを阻止して、私たちが彼に目的を与える。」 「艦長?」 「セブン、これは最も進化したドローンよ。彼に人間の価値観を教えるの。個人の存在意義を教えるのよ。」 「失敗すれば、あれが同化されたら、ボーグ集合体は計り知れない力を得る。」 「だからそうならないよう全力でボーグとのつながりを阻止するのよ。できることなら、抹殺命令は下したくない。セブン、あなたとの時だって今回と同じだったの。やはり反対したクルーたちがいた。」 「状況が違うだろう?」 「そう? 同じよ。集合体から切り離されたボーグ。曖昧な存在で、潜在的脅威をもつ。でも成功した。今回も同じ手を使いましょう。今度はあなたが先生役になるの。」 「私が人間社会の生き方を彼に指導するのか?」 「ファースト・コンタクトだと思って。あなたは私たちの代表よ。」 ジェインウェイが差し出したパッドを受け取るセブン。
保安部員が見張る熟成室。セブンとトゥヴォックがサイエンスラボに入る。既にドローンは大人に成長している。 コンピューターを操作するセブン。「ドローン、成熟サイクル完了。」 チューブが外れ、ボーグ※9が降りてくる。 「我々はボーグ。我々の名称は。」 セブン:「共通の名称はない。お前は集合体の一部ではなく、個人である。これから私が指示を出す。」 「非効率的だ。」 「私に従え。」 「非効率的だ。我々はボーグ。」 「私の名前はセブン・オブ・ナイン。第3属性ユニマトリックス 0-1 だ。セブン・オブ・ナインと呼べ。」 「セブン・オブ・ナイン。」 「私の指示に従ってもらう。」 「セブン・オブ・ナイン。」 「そうだ。我々は、ボーグではない。個人である。わかったか。」 「我々の名称は。」 トゥヴォック:「通じていない。」 セブン:「受け答えはプログラムされているから、話が理解できないのだ。神経接続器に直接伝える。」 「危険ではないのか?」 「意志の疎通を図るにはそれしかない。」 「…始めろ。」 セブンがボーグに近づくが、彼は後ろへ下がった。 セブン:「危害を加えるつもりはない。」 動こうとしないドローン。 セブン:「抵抗は無意味だ。」 ボーグはセブンに近づいた。腕の同化チューブを接続するセブン。 「これから指示を与える。」 しばらくの間の後、セブンは言う。「これで大丈夫だ。」 だがボーグはセブンの腕をつかんだ。離そうとしない。 「ドローンが私の神経経路を探っている。私の全知識を吸収しようとしている! リンクを外せない!」 トゥヴォックはボーグに向けてフェイザーを撃った。だがシールドに阻まれ、全く効果がない。 セブン:「接続を解除せよ。指示に従うのだ。何をする気だ…。」 やっとでドローンは接続を外した。 「指示に従います。」 まだ息の荒いセブン。

※8: polydeutonic alloy

※9: (J・ポール・ボエマー J. Paul Boehmer DS9第172話 "Tacking into the Wind" 「嵐に立つ者たち」の Vornar、VOY第86・87話 "The Killing Game, Part I and II" 「史上最大の殺戮ゲーム(前)(後)」のナチ大尉 (Nazi Kapitan)、ENT第28話 "Carbon Creek" 「スプートニクの飛んだ夜に」のメストラル (Mestral)、第76話 "Zero Hour" 「最終決戦」などの士官 (Officer) 役。ゲーム "Klingon Academy"、"Bridge Commander" でも声の出演) 声:大川透、DS9 ガラックなど

「セブン・オブ・ナイン私的記録。ドローンの言語データベースを作動。同化情報も入手可能だ。神経経路と直接つながるのは危険なので、ボーグのデータノードを使うことにする。」 ボーグは保安部員の見守る中、サイエンスラボをうろうろしている。
機関室のディスプレイには情報が次々と表示されている。ニーリックスが部品を持って来た。「速達だよ。ボーグ・データノード 2丁。」 トレス:「また? データポートにつないどいて。ヴォイジャーは一体何人のボーグを拾うつもりかしら。集合体の新しい作戦かもしれない。同化せずに無力な振りをしてヴォイジャーに現れる。」 「ベラナ。」 「とんでもない悪党になるかもしれない。1日で赤ん坊から大人に成長するのよ。」 「俺たちの希望通りに成長するさ。」 「ふん、全くのんきね。」 通信が入る。『セブン・オブ・ナインよりニーリックス。』 「ニーリックスだ。」 『至急サイエンスラボに来てくれ。最初のデータノードが欲しい。』 「今行くよ。」 機関室を出ていくニーリックス。トレスはため息をついた。
データノードをセットするセブン。隣にニーリックスがいる。ドローンが台から降りて来た。 「我々はボーグ。我々の名称は。」 セブン:「このデータノードに同化のための情報を編集した。」 「理解不能です。」 「すぐわかる。まずはこのデータを同化するのだ。こちらへ。」 動かないボーグ。 セブン:「命令だ。」 その言葉で、下へ降りる。 セブン:「腕を出せ。」 また従わない。 セブン:「同化チューブでデータノードを吸収する。アクセスポートのな。」 「理解不能です。」 セブンはボーグの腕をとり、ボタンを操作する。同化チューブがデータノードに入り、情報が取り込まれていく。目を見開くドローン。そしてチューブが離れた。 ドローン:「あなたの名前はセブン・オブ・ナイン。」 セブン:「そうだ。」 「あなたの名前はニーリックス、タラクシア人。」 ニーリックス:「よろしくな。」 「ここはサイエンスラボ。船の中だ。」 「宇宙艦ヴォイジャーさ。」 「恒星間宇宙空間を移動中。」 セブン:「そうだ。」 「なぜ?」 「ヴォイジャーは探査船だ。」 「私は探検家。」 ニーリックス:「みんな仲間だ。」 「我々はボーグ。」 「そりゃ違うな。」 セブン:「お前は一人の存在であり、大勢のクルーの一人だ。この船はボーグ集合体ではない。わかるな?」 ドローン:「一人の存在。私は私か。」 「その通り。」 腕を出すドローン。「私はもっと情報を吸収したい。」 セブン:「焦るな。神経経路は一度のたくさんの情報を処理し切れない。じき再生の必要がある。貨物室のアルコーヴをお前の身体に合うよう調整しよう。ドクターのところで、医療分析を受けさせてくれ。ついていけ。」 だがボーグはニーリックスではなく、セブンの後を追いかける。 セブン:「新しいクルーは医療室で検査を受ける決まりになっているのだ。」 やはりセブンを見ているドローン。セブンは言う。「ここが片付いたら、私も医療室に行こう。」 その言葉を聞き、ボーグはニーリックスと共にサイエンスラボを出る。
「船体はデュラニウム※10。配電はプラズマベース。三環生命維持装置。人工重力防護壁。」 ドローンは説明しながら廊下を歩いている。一緒に歩くニーリックスの後ろには、保安部員が付き添う。 「あー、全部当たってる。システム分析は君の得意らしい。ヴォイジャーの未来は君に任せたよ。」 一人のクルーがボーグに気づき、すれちがった。 ドローン:「人間、女性。」 ニーリックス:「ふ、当たりだ。」 「彼女は私に驚いた。」 「なぜわかる。」 「彼女の活性物質反応が高かった。」 「そりゃ見慣れない奴だからな。クルーが慣れるまで、少し時間かかるさ。俺がヴォイジャーに来た時もそうだった。俺も最初はみんなによく驚かれたもんだよ。今でも時々ある。この顔だ、ひげ面にまだら模様。」 「あなたも怖がられたのか?」 「いや、どうかな。」 「ボーグだから私を恐れている?」 「確かにボーグってのは時々怖いけどなあ。あんたのことじゃないからね。」 「集合体のことを詳しく知りたい。」 「本気? 気持ちはわかるけど…」 「ボーグについて教えてくれ。」 「あー、よく知らないんだ。人工的に強化された生命体ってことくらいで。あ、ボーグについて学ぶ時間はこれからいくらでもあるよ。でもまずあんたはこのヴォイジャーの環境に適応することが大事だ。さあ、ミスター…。おっと、肝心の名前を聞くのを忘れちまったよ。」 「私に名前はない。」 「誰だって名前の一つももってるさ。あんたをただのドローンとは呼べないよ。それじゃ味気ないでしょうが。」 「名前は不要だとセブン・オブ・ナインに言われた。」 「そりゃおかしい。あんたは自分で名前を選ぶべきだよ。他人と区別できるようにさ。一人の存在なら当然さ。」 「一人。」 「あ、ここが医療室だ。」 2人は中へ入る。
ドクター:「おはよう。」 ドローン:「あなたは緊急医療ホログラムだな。」 「なかなか鋭い観察眼だ。こちらへ来たまえ。」 ニーリックス:「俺、食堂に戻らなきゃ。心配するこたあないさ。ちょいと検査するだけだよ。あっという間に終わっちまうからね。」 ドローン:「従います。」 ニーリックスは出ていった。ドクターがトリコーダーで検査しようとするが、ボーグは避けようとした。ドクター:「組織は傷つけないから安心したまえ。痛みも全くない。中枢神経は正常に機能しているな。だが神経経路の退化が始まっている。再生する必要がある。」 ドローン:「私の中枢神経はドクターのエミッターで調節されている。」 「その通り。」 「モバイルエミッターはこれらの医療機具より優れている。」 「格段にね。エミッターは、今からの400年後の 29世紀の技術だからな。」 「私は未来の生命体である。」 「そうだ。」 「一人の存在だ。私が生まれた経緯は。」 「話せば長い。」 「ぜひ聞きたい。」 「いずれな。」 「今聞かせてくれ。さあ。」 「転送装置の不調がことの始まりだった。転送中にエミッターが融合した。セブン・オブ・ナインのナノプローブとね。」 「偶然のできごとか。」 「テクノロジーが無作為に集中したためだ。」 「歓迎されていないのか。」 「とんでもない。新しい生命体を探すこともクルーの大事な任務だ。君の存在は予想外ではあったが、今に君はクルーの一員として認められるだろう。何しろ君の大脳新皮質を動かしてるのは私のエミッター。どうりでピカピカ輝いてるはずだ。」 笑うドクターは、付け加えた。「まあジョークだがね。」 「ジョーク。人を笑わせるのが目的の、言葉や仕草だな。」 「君はユーモアのセンスを受け継いでいる。」
機関室。セブンがドローンに説明する。 「ここは第11デッキのセクション32、メイン機関室だ。これはワープ…」 「ワープコア。燃料は反物質反応で得ているので、秒速最大 4,000テラダインを生産する。光推進より速いパワーを生み出す。」 「よろしい。」 トレス:「ここは学校じゃないのよ、セブン。」 「ベラナ・トレス中尉、機関室チーフ。半分クリンゴン人だ。システムについて卓越した知識をもつが、熱しやすい気質の持ち主だ。」 ドローン:「熱しやすい。形容詞。低温で容易に熱くなることである。怒りっぽく、激しく興奮する性格か。」 トレス:「よろしい。優秀な生徒ね。」 セブン:「入室の許可は得ている。早くヴォイジャーに慣れるよう、艦長に頼まれた。」 「そう。バイオ栽培室で野菜の世話でもさせてたら。こっちは忙しいのよ。あと 1時間で星雲の膨張速度を予測しなきゃ。でないと艦長は調査全体を打ち切っちゃうから…」 トレスはボーグにぶつかった。「邪魔しないで。」 ドローン:「マルチ空間アルゴリズムを使えば、膨張速度を予測できる。私が手本を見せよう。」 トレス:「いいわよ。」 すぐに取りかかるドローン。圧倒的な速さで計算していく。トレスは言う。「すごいわ。」
「はじめまして。我々の名前は……私の名前はワン※11です。お元気ですか。」 ジェインウェイはボーグに応えた。「元気よ、どうも。『ワン』?」 セブン:「彼が、自分は一人だと。それでワンと名づけた。」 ジェインウェイ:「今日の気分はどう、ワン?」 ワン:「はい、上々です、ジェインウェイ艦長。」 「ヴォイジャーには慣れた?」 「はい。膨大な種類の事柄について、470億テラクワッドの情報を吸収し終えました。粒子物理学から、比較人体解剖学まで。ワープフィールド理論も含めて。それから、デルタ宇宙域の料理法も。」 セブン:「ミスター・ニーリックスから、いろいろ学習したらしい。」 「私の評価は終了しましたか? ご満足…頂けたでしょうか。」 ジェインウェイ:「ええ、もちろん、ワン。満足し過ぎるくらいよ。めざましい向上を遂げたわね。でも単にあなたに会いたくて呼んだだけなのよ。」 「では退室の許可を頂きたい。トレス中尉と手伝いの約束が。中尉はブサードコレクターの効率を上げたがっています。」 「許可します。」 作戦室を出ていくワン。保安部員が続く。 ジェインウェイ:「セブン、よくやってくれた。」 セブン:「どうも。」 「ものの数日で膨大な知識を吸収しただけじゃない。クルーに溶け込んでるうえに、彼には独特の個性がある。」 「適応速度が非常に速い。」 「それにしては何だか浮かない顔ね?」 「ボーグに対する好奇心が芽生えてきている。」 「はあ…彼がボーグのことを知りたがるんじゃないか、集合体に惹きつけられないか。」 「そうだ。」 「彼が知りたがってることを教えるべきかも。集合体から知るより私たちが教えた方が。」 「艦長、同化の誘惑は非常に強烈だ。彼はボーグを探し出すかもしれない。そうなれば、情報が全て漏れる。」 「では、話すのはしばらく後にして。でも忘れないで。個性をもとうとしてる。セブン、ワンには知る権利がある。いつまでも彼の疑問を無視できない。」
貨物室に入るワンとセブン。 ワン:「第8デッキ、セクション4、第2貨物室。予備の部品や余剰品を保管しておく部屋か。」 セブン:「私が再生した部屋でもある。お前もここに属する。」 「情報をもっと吸収したい。」 「今日は…もう十分だ。お前はクルーに協力して優れた能力を発揮した。期待以上に働いてくれた。」 「もっと期待に応えることができる。」 「…『ありがとう』で満足しろ。」 「ありがとう?」 「感謝を言葉で表現する習慣だ。お前を誉めたのだ。これから再生する。」 アルコーヴに近づく 2人。 ワン:「これは宇宙艦隊のパラメーターと適合しない。」 セブン:「そうだ。」 「私はボーグ。この技術はボーグだ。」 「これから再生する。」 「私はボーグに属する全データを吸収したい。」 「アルコーヴに入るのだ。」 命令に従い、アルコーヴに入るワン。だが逆向きに入ってしまう。 セブン:「向きが違う。こちらを向け!」 ワンは反対向きに立ち、アルコーヴに収まった。 セブンもワンのとなりのアルコーヴに入る。「コンピューター、再生サイクル作動。アルコーヴ・ベータとガンマ。」 ワンは話しかけた。 「セブン・オブ・ナイン。」 「…何だ。」 「ありがとう。」 ワンを見つめるセブン。「再生の準備を。」 目をつぶるワンとセブン。その時、ワンの首元の機械が、定期的な光と音を発し始めた。
宇宙空間を飛行する、球体のボーグ艦。内部に声が響く。『ボーグ探査シグナルを探知した。発生源、ユニマトリックス 3-2-5。空間グリッド 0-0-6。コースを変更して同化せよ。』

※10: duranium
金属合金。TOS第16話 "The Menagerie" 「タロス星の幻怪人」など ※11: One

再生を終えるセブン。すると貨物室に、ジェインウェイをはじめとし、トゥヴォックら保安部員が集まっていた。 「艦長。」 「ドローンがボーグ探査シグナルを発信したわ。彼を起こして。」 まだ再生中のワンのアルコーヴを操作し、起こすセブン。「集合体と交信したな。」 ワン:「いいえ。」 ジェインウェイ:「ボーグ・トランシーバーを調べて。」 「それは 2日前に非活性化されたはず。」 トリコーダーで調べるセブン。「頭部インプラントが身体に適応し、新しいトランシーバーができたらしい。」 ジェインウェイ:「予備の装置ってわけね。」 「そうだ。怪しい船が接近していないか。」 トゥヴォック:「長距離センサーが、トランスワープコンジットを感知した。船が近づいている。」 「猶予はどれぐらいある。」 「およそ 3時間というところだ。」 ワン:「ボーグか。」 セブン:「そうだ。」 「会ってみたい。」 ジェインウェイ:「セブン。」 ジェインウェイはセブンを呼び、小声で言った。 「ボーグの実態を彼に説明する時がきたようね。」
天体測定ラボのスクリーンに、ボーグ・キューブなどの情報が映し出される。 ワン:「ボーグは何千という種族を同化したのか。」 セブン:「そうだ。」 「同化された後はどうなる。」 「彼らの神経経路は再構成されて、中枢部で一つの心につながる。肉体はサイバーテクノロジーで強化され、全員ドローンになる。」 「ボーグの心を体験してみたいものだ。」 ジェインウェイ:「そうなったら最後、あなたは独りではいられなくなる。ボーグはその人の個性を破壊してしまうの。」 「私もそれは、望んでいません。」 「結構。ボーグは我々が出会った最も破壊的な生命体よ。彼らはこれまで無数の個人を無理矢理同化してきたの。」 ワンはセブンに言う。「あなたも同化されていた。」 セブン:「今は集合体とのつながりは切れてる。」 「集合体にいた時は、他の種を同化していたのか?」 「ああ。」 「ボーグは破壊的だというが、セブンはそうではない。」 ジェインウェイ:「それはセブンが独りになったからよ。チャンスがあれば、ボーグはまた彼女を同化する。ヴォイジャーのクルー全員を同化するでしょう。あなたの進んだ技術を取り込めば、集合体はますます破壊的になる。それを阻止するためにあなたの力を貸して欲しい。あなたの力でヴォイジャーの防御を強化して欲しい。シールドや、武器をね。協力してくれるわね。」 「…セブン・オブ・ナイン。あなたは集合体に戻りたいか。」 セブンは言った。「このヴォイジャーが、私の集合体だ。」 「情報をもっと吸収して、ボーグとの戦いに備えたい。」 チャコティの通信。『全員戦闘態勢。ボーグ艦が接近している。』 ジェインウェイ:「時間切れのようね。」 ラボを出るジェインウェイとセブンに続く、ワン。
廊下を歩くセブンに話すワン。他のクルーも慌ただしく行き交っている。「セブン・オブ・ナイン。自律神経系に、何か異常を感知した。心臓欠陥の刺激、血管収縮。」 「お前は不安という感情を経験しているのだ。一時的なものだ。」 「これが不安か。恐れによって引き起こされる感情。」 「ボーグはほかの生命体を不安にさせる。」 「あなたも不安を感じているのか?」 「ああ。ヴォイジャーのクルー全員が感じている。」 「同化を恐れているからか?」 「そうだ。ブリッジへ向かうぞ。第1デッキ。」 ターボリフトに乗る。 「セブン・オブ・ナイン。」 「何だ?」 「これから何が起こる。」 「ボーグと、戦う。」 「ヴォイジャーは破壊されるのか?」 「ボーグは強敵だが、艦長は経験豊富なリーダーだ。我々は抵抗する。」 「抵抗は、無意味だ。」 「……かもしれない。」
ボーグ・スフィア※12が原始星雲に近づく。

※12: Borg sphere
小型ボーグ艦。映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」より

チャコティが報告する。「ボーグ艦は射程距離に入りました。」 ジェインウェイ:「スクリーン、オン。」 ボーグ・スフィアが映る。 ワン:「遠距離戦術艦。トランスワープ能力。船体はアブレーション装甲。」 キム:「敵に見つかりました。」 ワンに命じるセブン。「ボーグは攻撃を仕掛けてくる。ヴォイジャーのシールドを強化しろ。このセクションから、シールドジェネレータにアクセスできる。」 トゥヴォック:「呼びかけです。」 ジェインウェイ:「回線をつないで。」 『我々はボーグ。お前たちを同化する。抵抗は無意味だ。』 最後のフレーズを一緒に言うワン。「抵抗は無意味だ。ボーグの声を、心で感じる。」 船が揺れた。 トゥヴォック:「トラクタービームでロックされました。」 ワン:「集合体が私を呼んでいる。」 セブン:「私にも聞こえる。無数の声が一斉に押し寄せてくる。」 セブンを見るチャコティやジェインウェイ。 セブン:「いいか、奴らの声を無視するのだ。そうしなければヴォイジャーは破滅に追い込まれてしまう。」 ワンはコンソールに同化チューブを突き刺した。 トゥヴォック:「シールドが再調整されました。」
ボーグ・スフィアから発射されていたトラクタービームが解除され、ヴォイジャーは自由になった。 パリス:「ボーグから離れました。」 ジェインウェイ:「フェイザーの機能を強化できる?」 ワン:「はい。」 「急いで。作業が済んだらボーグの推進システムを狙って。パリス中尉、ワープ航行準備を。」 「シールド強化終了。攻撃可能です。」
ヴォイジャーがフェイザーを撃つ。だがエネルギーが跳ね返った。 チャコティ:「どうした。」 セブン:「フェイザービームが、フィードバックパルスに転化された。」 攻撃が続く。 パリス:「ワープドライブが破壊されました。」 ワン:「ヴォイジャーの技術は限界がある。これ以上の強化は無理です。」 同化チューブを外す。 ワン:「集合体の中に入って調整する。中からボーグ艦を妨害します。」 セブン:「お前も同化されるぞ。」 「大丈夫です。」 セブンはジェインウェイを見る。うなずくジェインウェイ。「ハリー、ワンをロックして。」 ワン:「必要ありません。」 ワンは自分の腕のボタンを押すと、瞬間的に転送された。 トゥヴォック:「ワンが中に入りました。」
ボーグ艦の中にいるワンに、声が届く。『我々はボーグだ。お前を同化する。』 「テクノロジーはこちらが上。攻撃をやめなければお前たちを破壊する。」 『お前の進化したテクノロジーは我々のパワーとなる。抵抗は無意味だ。』 奥へ進むワン。
攻撃に耐えるヴォイジャー。 キム:「シールド、29%にダウン!」
ワンは体のシールドだけで、他のボーグを蹴散らしていく。
セブンは言う。「ワンは、ボーグ艦をコントロールしている。」
アルコーヴからのアクセスを行うワン。ボーグ・スフィアが動き出した。
報告するパリス。「ボーグ艦は星雲に向かっています。」 セブン:「近づき過ぎれば、船体が崩壊する。」
ボーグの声。『接続を解除するのだ。』 ワンは目をつぶったままだ。ボーグ・スフィアは星雲の圧力に耐え切れず、ひしゃげていく。そして爆発を起こした。その衝撃はヴォイジャーにも及ぶ。
ジェインウェイは命じた。「非常体制解除。トゥヴォック、全セクション停止。チャコティ、被害状況をチェックして。」 セブンはスクリーンを見つめている。 キム:「艦長、残骸に生命反応を感知しました。ワンです。彼は生きています。」 すぐにキムのコンソールに近づくセブン。 「身体にマルチ空間フォースフィールドを張り巡らした。危険な状態だ。」 ジェインウェイ:「至急ワンを転送。医療室に運んで。」
「ダメージは。」 ドクターに尋ねるセブン。 「爆発でインプラントをやられたが、全て再生した。だが生物学的組織はそうはいかない。大脳皮質の傷は深く、内出血もひどい。一刻も早く手術が必要だ。」 ベッドに横になっているワンは、頭部が出血している。「ボーグ艦は。」 セブン:「破壊された。お前はよくやった。」 「ボーグとつながっている間、彼らの考えが読めた。ボーグの目的が。ボーグは私の存在を知った。私を追いかけてくるだろう。」 「心配ない。捕まえられはしない。」 ドクター:「手術を始めたい。」 ワン:「いいや。私は存在すべきじゃない。偶然生まれた。テクノロジーの偶然のなりゆきで生まれたのだ。」 セブン:「一人の存在だ。」 「宿命は変えられない。私が存在している限り、あなたに危険が及ぶ。クルー全員が危険にさらされる。」 ドクター:「とにかく話は後だ。」 ハイポスプレーを注射しようとするドクター。だがワンのフォースフィールドがそれを拒否した。 セブン:「ドクターにすべてを任せるんだ! フォースフィールドを弱めろ。」 ワンの身体の異常を警告する音が鳴り響く。ドクター:「急がないと危険だ。」 セブン:「私の指示に従え。」 ワン:「従えません。」 「これは命令だ! 頼む……言う通りにしろ。」 「…じき慣れますよ。」 セブンの見ている前で、ワンの機械部分の光が消滅した。動きが止まる。茫然としているセブンに、ドクターは言った。「亡くなった。」 セブンはその場を離れ、うろたえる。
貨物室で、ワンが使ったアルコーヴに近づくセブン。電源を切る。セブンはふと、鏡に気づいた。そこに映った自分は、悲しい顔をしていた。


・感想
29世紀の技術であるモバイルホロエミッターと、ボーグを結び付けたアイデアが面白いですね。TNG のデータやラル、ヒューを思い起こさせる「ワン」の行動は笑いを誘います。育てられた者が育てた者を助けるために自分を犠牲にするというのは、昔読んだドラえもんの「フー子 (台風の子供)」の話を思い出しました。お決まりのセブンやボーグネタですが、うまく活かせばこのように良いエピソードにもなりますね。こればっかりだとやっぱり飽きるでしょうけど。
映画でもあっさりやられてたボーグ・スフィアは、機能はすごいが弱いというイメージが…。


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