DS9。
クワークの店にいるウォーフ。「今は将軍のお立場もよく理解できる。戦いの時こそ、リーダーを支えるのが戦士たちの義務だ。ガウロン総裁に挑めと頼むなど、私は間違っていた。」
エズリ:「それでどうするつもり?」
「攻撃を中止するよう総裁を説得し続ける。……今日はおとなしいなあ。」
「ああ…ウォーフ、このことに関して私が口を出していいものかわからないのよ。クリンゴンの問題だから。」
「君は今もマートク家の一員だ。」
「…そんなこと初耳だわ。」
「数週間前に将軍と話し合った。将軍も承知してる。君を名誉ある女性と考えておられる。ジャッジアを立派に引き継いでいると。同感だ。」
「とっても素敵。」
「素敵?」
「…クリンゴンの言葉じゃないわね?」
「ああ。」
「つまりその…名誉なことだわ。」
「いいだろう。ちょっと見え透いているが。では、意見を聞かせてくれ。」
「いいわ? でも気に入らないかも。」
「構わん。」
「総裁の問題は、より大きな問題が起きる前兆よ。クリンゴンは死にかけてる。そうなるのも当然ね?」
「君の言う通りだが、気に入らないなあ。」
「誤解しないで? 私をまだ、マートク家の一員と考えてくれて感動したわ? でも、クルゾンやジャッジアだった時より、クリンゴンを懐疑的に見てしまうの。…クリンゴンの社会自体をかなり否定的に見てるわ。クリンゴンの戦士の文化について話してるのよ? 何世紀にも渡って…名誉と高潔の伝統を誇ってきたわけでしょ? でも現実には、上層部は自ら腐敗を招いてる。」
「君は話を誇張しすぎだ。」
「そうかしら? じゃあ心から尊敬できる評議会のリーダーは? 一人でもいた? これもクリンゴン帝国のためと諭されて、あなたは何度総裁の罪をかばってきたの? …少し…厳しいことを言うようだけど、腐敗しているとわかっている政府を、あなたは黙って受け入れているのよ? ガウロン総裁は明らかな例。ウォーフ、あなたは私の中で、最も名誉を重んじる立派な人。…そんなあなたがガウロンを黙認して、クリンゴンにどんな未来があるの?」
カーデシアのシャトルは、宇宙空間に浮かぶ修理施設に近づく。
ジェムハダー船のすぐ近くに、同じくドッキングする。
後ろ手の手錠。ターボリフトに乗っているダマールたち。手錠をかけられているのはキラだ。到着する。
カーデシアの軍服を着たガラックは、カーデシア人※14にパッドを渡した。「船を指揮するヴォルタに捕虜を連れてきた。」
キラの制服は乱れている。近くにいるジェムハダー。ダマールは目立たぬよう、後ろに立った。
カーデシア人:「…異状はないようですね。武器はお預かりします。」
ガラック:「なぜ。」
「司令部の新しい規則で、ジェムハダー船に武装カーデシア人は乗せられません。」
「我々は、信頼されていないな。」
「残念ですが、命令ですので御了承を。」
「君のせいじゃない。彼に従え。ベイジョーの女一人だ、丸腰でも大丈夫さ。」
「ブリッジへ!」
ジェムハダーがエアロックへ通す。
順番に武器を受け取り、ケースへ片づけていくカーデシア人。
最後にダマールの番になった。
カーデシア人はジェムハダーがいないことを確認し、話しかけた。「幸運を。レガート・ダマール。」
うなずくダマール。
ジェムハダーを先頭にエアロックを通り、ガラックたちはジェムハダー船に乗った。
立ち止まったキラは簡単に手錠を外し、床に置く。
その手錠は姿を変えた。液体状のまま、オドーは床の穴に消えた。
報告しているヴォルタ人※15。「2時間14分後に最初の発射テストを実施します。了解。中央司令部と調整を。何事?」
キラたちと共にブリッジに入るガラック。「捕虜です。」
ヴォルタ人:「わかっています、なぜブリッジに。」
「この女はロタ司令官※16で、全セクターの情報部副幹部です。ですから、尋問に興味がおありかと思いまして。」
「報告を受けていません。」
「恐らく遅れているんでしょう。当然ですよ。司令官を捕らえたのはつい昨日のことで、通信も機能停止状態でしたから…」
銃を向けるジェムハダー。
ヴォルタ人:「指令書を。」
ガラック:「どうぞ。」
そこへ女性可変種がやってきた。
ヴォルタ人:「創設者! お目にかかれて光栄です。まさかこのセクターにおいでとは。」
女性可変種:「私がどこにいようとお前には関係ありません。」
「はい。」
女性可変種はキラと顔を見合わせた。「新しい捕虜の尋問はもう始めていますか?」
ヴォルタ人:「まだです。」
「結構。では私が尋問を指揮しましょう。」
「仰せのままに。」
「ああ? それが改良されたという、新しいプラズマ銃ですか。ちょっとこちらに。」 ジェムハダーに話す女性可変種。
ルソットはダマールと目線をかわす。
女性可変種は銃を手にする。「ああ、見事な銃です。いかがです?」
受け取るガラック。その瞬間、ジェムハダーたちに向けて発砲した。
驚く女性可変種の前で、ヴォルタ人も殺された。
すぐ指示するキラ。「出口を見張って。」
女性可変種はオドーの姿に戻った。「殺す必要はなかった。」
ガラック:「捕虜に手間取っている余裕はありません。」
キラ:「議論は後にしてちょうだい。ブリッジより下の全デッキを神経ガスで満たす用意を。ワープドライブをオンラインに。コースを惑星連邦に設定。」
「指揮官! ブリーンの兵器はまだ設置されていません。出発は無理です。」
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※14: 名前は Vornar (J・ポール・ボエマー J. Paul Boehmer VOY第86・87話 "The Killing Game, Part I and II" 「史上最大の殺戮ゲーム(前)(後)」のナチ大尉 (Nazi Kapitan)、第96話 "Drone" 「新生ボーグの悲劇」のワン (One)、ENT第28話 "Carbon Creek" 「スプートニクの飛んだ夜に」のメストラル (Mestral)、第76話 "Zero Hour" 「最終決戦」などの士官 (Officer) 役。ゲーム "Klingon Academy"、"Bridge Commander" でも声の出演) ですが、言及されていません
※15: ルアラン Luaran (キティ・スウィンク Kitty Swink DS9第30話 "Sanctuary" 「さまよえるスクリーア星人」のローザン大臣 (Minister Rozahn) 役。クワーク役アーミン・シマーマンの妻。ゲーム "DS9: The Fallen" でも声の出演)
※16: Commander Rota どちらかと言えば「ロタ中佐」が適訳だと思われます
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