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ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第86話「史上最大の殺戮ゲーム」(前)
The Killing Game, Part I

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・イントロダクション
※1「フーチャー! 揃って先祖のもとへ行くがいい!」
クリンゴン人戦士の姿をしたジェインウェイ。2人の屈強なクリンゴンがバトラフで襲いかかっている。メクラフで対抗するジェインウェイ。打撃を受け、倒れてしまう。
「今回は勝ちを譲ってやる。だがモカイの家は決して屈したりはしない。」 近くに倒れているクリンゴン人の棍棒を取り、再び立ちあがる。
別の人物の声がする。「ゴーチャスクリュー! どけ、腰抜け!」 クリンゴンの服装をしたヒロージェン※2だ。「俺が殺してやる。」
相対するジェインウェイ。「背を向けてる時にやるべきだったなあ。」
「その目に映る恐怖が見たい。」
「よく見るがいい。この目に映るのはお前の屍だ。」
「獲物にしてはいい根性だ。」
「私は獲物などではない!」
ジェインウェイが棍棒を振り上げた瞬間、ヒロージェンはダクタフ・ナイフを突き刺した。言葉を失うジェインウェイ。
「俺の獲物だ。今も、そして死んでからもな。」 ヒロージェンは手に持ったコミュニケーターを押した。「医療室、こちらホロデッキ2。ジェインウェイが負傷した。今から転送する。」

※1: このエピソードは後編と合わせて、1998年度エミー賞 ヘアスタイリング賞にノミネートされました

※2: アルファ・ヒロージェン Alpha-Hirogen
(ダニー・ゴールドリング Danny Goldring DS9第53話 "Civil Defense" 「暴徒制圧モード始動」のレガート Kell (Legate Kell)、第102話 "Nor the Battle to the Strong" 「戦う勇気」のバーク (Burke)、ENT第10話 "Fortunate Son" 「復讐の連鎖」のノーシカン船長 (Nausicaan Captain)、第38話 "The Catwalk" 「嵐を告げる男達」のタクレット人船長 (Takret Captain) 役)

・本編
ヴォイジャーは 4隻のヒロージェン艦に囲まれている。
バイオベッドで気を失っているジェインウェイ。ヒロージェンの医者※3が言う。「心配いりません。」
「神経接続器※4はどうだ?」と尋ねるヒロージェン。
ジェインウェイの首に特殊なライトが当てられると、首筋に小さな機械が見えた。「異常なし。」
「本当か? 自分が何者なのか、自覚してたようだった。」
「ありえません。ずっと彼女をモニターしていましたが、彼女は自分がクリンゴン※5だと信じていました。同じシミュレーションに戻しますか?」
「いや、ホロデッキ1 へ送れ。ほかに試したいプログラムがある。彼女の母星で起きた戦争だ。彼女の本能を、刺激できる。」

ピアノの曲が始まった。ドレスを着た、長髪の女性が歌い出す※6。セブン・オブ・ナインだ。そのバーには軍人が何人もいる。カウンターの中のバーテンは、白いスーツを着たトゥヴォック。
店内に入って来た客を、同じくスーツを着たジェインウェイが出迎えた。「ル・コー・デ・リオン※7へようこそ。カトリーヌ※8です。この店の主人である私からお願いが一つ。戦争は外に置いてらして。」
ウェイターに「9番テーブルにエスカルゴを」と指示する。客に話しかける。「ジャック、今夜は独りぼっち? どうやって慰めてあげようかしら。」 別の客が集まっているテーブルにつく。「ごめんなさい、話に戻りましょう。」
「マダム。」
「えっと、パリでの武勇伝だったわね。」
ジェインウェイはカウンターを見た。うなずき、合図を送るトゥヴォック。店の入口を見ると、2人のヒロージェンが入って来た。軍服を着ている。
「また新しいお客様だわ。失礼」と笑い、カウンターへ行くジェインウェイ。ヒロージェンたちが案内されていった。「彼です」と言うトゥヴォック。
「新しい司令官?」
「この街を占領するために、指揮官として送られたそうです。」
「何者なの。」
「北アフリカで、ロンメル※9将軍に仕えていたそうです。有能な軍事戦略家であり、その冷酷さでも有名です。」
「そう。使えそうね。シャトー・ルトア※10のボトルを出して。」
「29年もので?」
「とんでもない。もったいない。36年にして。」
「承知しました。」

セブンの歌が終わり。大きく拍手が起こった。「メルシー。演奏はミスター・プロードです。今夜も素敵なピアノありがとう。」 礼をする演奏者。「お休みなさい。」
若い方のヒロージェン※11が、歩いて行こうとするセブンの腕をつかんだ。「歌え。」
「今夜は終わりです。明日ご来店を。」
「歌え!」
「手を離してちょうだい。」
「歌うのだ。さもないと、お前を捕獲し、狩猟船にその骨を飾ることになる。」
司令官を演じるヒロージェンが言う。「座って演技を続けろ。ここには狩猟船など存在しない。我々はこの世界を征服しようと企む、兵士なのだ。役を全うしろ。」
ジェインウェイがやって来た。「まあまあ、何事なの。マドモアゼル・デ・ヌフ※12は歌をやめたりしませんわ。休憩したら、すぐ戻ります。」
「もう遅い」というセブンだが、ジェインウェイは念を押した。「そうよね?」
ため息をつくセブン。「わかった」といい、歩いていく。
「カー司令官※13」と呼びかけるジェインウェイ。
「知ってるのか?」
「お噂はかねがね。カトリーヌです。ル・コー・デ・リオンへようこそ。この店の主人としてお願いが一つ。戦争は外に置いてらして。」
「彼女と話したい。外してくれ。」
ほかの客は歩いて行く。「オールボア」と挨拶するジェインウェイ。若いヒロージェンも、ジェインウェイを一瞥して去った。
「威勢がいいのね」というジェインウェイ。
「まだ混乱してるのだ。こういう世界は初めてなんでな。」
「じき、慣れますわ。フランス※14はどなたでも大歓迎です。」
「それはどうかな。」
「どうして?」
「市民の中には私たちがここにいることに、反感をもっている者がいる。」
「レジスタンス※15のこと? パリはそうかも。でもこの街は小さく、もろいわ。外国とは仲良くしなきゃ。この戦争の戦勝国ともいい関係を保っていきたいの。」
「どこが勝とうとな。」
「どこが勝とうと。」
「この街はもろいかもしれんが、非常に重要だ。ドイツへ攻め入ろうとするいかなる部隊も、この街を通らねばならん。レジスタンスも必ず来るはずだ。」
「来ても、私はこう言うだけだわ。戦争は外に。」
「見上げた人だ。」
ヒロージェンが戻って来た。「司令官、機関室でトラブルが発生した模様です。ワーププラズマ・ネットワークが不安定に。」
「何の話?」と尋ねるジェインウェイ。
「君には関係ない。狩りに。」 グラスを上げるヒロージェン。
「狩りに?」
「レジスタンス狩りだ。楽しみでしょうがない。奴らを追いかけまわし、八つ裂きにするのがな。」 ヒロージェンはジェインウェイの手にキスをすると、歩いて行った。「オールボア」とつぶやくジェインウェイ。

セブンは札束を数えている。「売り上げは?」と尋ねるジェインウェイ。
「土曜にしては不十分だ。1,247フラン※16と 81ラヒスマルク※17。」
「ラジオの受信域を広げる発信機を買うには十分だわ。明日朝一番で郊外まで出かけてくれないかしら。ムッシュ・グローが三番橋を越えたところでコテージを経営してるの。ワインセラーに真空管※18がうなってるわ。高周波数の発信機を買ってきて。提示額は 300フラン、上限は 500フランよ。」
「もっと必要な物がある。」
「例えば?」
「爆薬だ。装甲貫通手榴弾の発射管を作る。」
笑うジェインウェイ。「戦車でも爆破するつもり?」
「必要とあらば。」
「私たちは軍隊じゃないわ。」
「では考え直すべきだ。新たにドイツの歩兵部隊 3隊が攻め入り、機甲部隊は 11キロ先に待機中だ。アメリカ※19軍が到着し、奴らとの戦闘が始まれば、ピアノのそばで歌を唄っている暇などない。」
「私たちの助けがなければアメリカ軍は来られないわ。彼らが来られなければ、ドイツへの急襲は失敗に終わる。今すべきなのはドイツ軍に関する情報を集めて、連合軍※20の司令部に渡すことよ。」
「もうナチ※21の連中が差し出すタバコに火をつけるのにはうんざりだ。あのブタどもを殺す方が、連合軍の助けになる。」
「そんなことをすれば、正体がばれてしまう。まだ誰にもばれてないのに。あなたの安易な衝動のために、この作戦全体を危険にさらすことは許さないわ。」
「それはあなたの意見だ、マダム。」
「私はこの組織のリーダーよ。私の意見は全員の意見なの。発信機を手に入れて来て。」 ため息をつくジェインウェイ。「私も疲れてるみたい。もう 4年だもの。でも信じて、それは第三帝国※22も同じ。ここまでくれば根競べだわ。アメリカ軍もじき行動を起こすはずよ。」
「多分な」といい、歩いて行くセブン。
トゥヴォックがジェインウェイに近づく。「またか。」
「まただわ。まるで私たちを、危険に陥れようとしてるみたい。」
「実際そうなのかも。」
「何か疑っていることがあるなら聞かせて。」
「最初から反抗的でしたし、あなたから直接下された命令にも、頻繁に背いています。」
「頑固なのよ。必要な素質だわ。」
「しかし、我々の正体を明かす危険がある。」
「彼女は唯一の軍需品エキスパートよ。歌も上手いし、手放せないわ。でも注意は必要ね。2、3日尾行してちょうだい。彼女がナチのスパイなら、消す必要があるわ。」


※3: Hirogen Medic
(Mark Metcalf) 声:宝亀克寿

※4: neural interface

※5: ホロデッキ・プログラム名 「クリンゴン戦闘」 Klingon battle

※6: 歌は "It Can't Be Wrong"

※7: Le Coeur de Lion
内装はシリーズ初期に使われた、シェ・サンドリーヌ (Chez Sandrine、VOY第6話 "The Cloud" 「星雲生命体を救え」など) のセットの部品が組み込まれました

※8: Katrine

※9: エルヴィン・ロンメル Erwin Rommel
(1891-1944)

※10: Chateau Latour

※11: ヒロージェン SS (ナチス親衛隊) 士官 Hirogen SS Officer
(Mark Deakins 映画 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」のトーネル (Tournel) 役。VOY第146話 "Unimatrix Zero, Part I" にも出演) 声:田中正彦

※12: Mademoiselle de Neuf
"Lady of Nine" の意味。「マドモアゼル」と吹き替え

※13: Commandant Karr

※14: France

※15: ホロデッキ・プログラム名 「フランス・レジスタンス」 French Resistance

※16: Reichsmark

※17: vacuum tube

※18: franc

※19: アメリカ合衆国 United States of America

※20: Allied Forces

※21: ナチ・ドイツ Nazi Germany
TOS第52話 "Patterns of Force" 「エコス・ナチスの恐怖」でも

※22: Third Reich

街中※23を自転車に乗って進むニーリックス。「ボンジュール、マダム!」 途中で店先から野菜を取り、「好きにしといて!」という。怒る女店主。ニーリックスは笑いながら自転車を進める。
「グーテンダーク!」 ヒロージェンたちナチスに挨拶するニーリックス。だが呼び止められた。「おい! 止まれ!」
ヒロージェンはニーリックスに近づく。「自転車から降りろ。何を運んでいる。」
「ご覧の通り、命の素っス。」
ヒロージェンは、ニーリックスが運んでいたパンを折って中身を確かめる。ワインボトルを空にして、ビンの中も確認した。「目的地に行くがいい。」
「それでは、お言葉に甘えて。」
ヒロージェンはニーリックスに言った。「俺が上官なら、お前などとっくに殺してる。」

ラジオの音声。『天気予報です。ドーヴァー市、および海峡付近の現在の気温は 15度。今日の最低気温は 7度、最高気温は 17度……。』 音声が乱れる。それを書き取っていたのは、トレスだ。「これじゃ聞こえやしない。」
ジェインウェイとトゥヴォックは、飾られた絵画を裏返した。そこには地図があり、指差すトゥヴォック。「最新情報によれば、ドイツの機甲部隊の現在位置は、こことここです。」
「正確にはいつの情報?」
「48時間前です。」
「古すぎるわ。」
ラジオの音に注意する 2人。『英国ラジオネットワーク※24、レジナルド・スミス※25がお送りしました。次回の天気予報は…』 ラジオの声に合わせて言うトレス。「45秒です。」 『45秒後です。』 「遅れたら承知しないから。」
ドアを叩く音がした。ジェインウェイはピストルを持ち、近づく。「準備中よ。」
「モーニングサービスです。」
その声に安心し、ジェインウェイはニーリックスを出迎えた。トゥヴォックはテーブルを準備する。ジェインウェイ:「遅いじゃない。どうしたの?」
ニーリックス:「支配民族※26のお方と話が弾んじゃいましてねえ。」
「今週 2回目じゃない。パトロールを強化しだしたようね。」
トゥヴォック:「別の要員を使った方が懸命だ。君は目をつけられている。」
ニーリックス:「心配しなさんなって。毎日通り道は変えてるし、ゲシュタポさんには気に入られつつある。お手製のデザートが好評でね。」
ニーリックスはナイフでワインのラベルを剥がした。裏には文字が書かれており、受け取るジェインウェイ。ラジオの音楽が終わった。再び書き取るトレス。
『ただいまの演奏は、ジャジー・マクナルティーでした。それでは、今日のお天気です。1944年9月22日、ロンドンでは曇り空が広がり、午後には雨の降る確率が高いでしょう。最低気温は 10度、最高気温は 23度。北部沿岸では雨・風共に強く、波の高さは 1メートルになる予想です。デヴォン州、ハートフォード州、ソンゲン州でも雨が降り出しています。ドーヴァー市および海峡付近の現在の気温は 15度、今日の最低気温は 7度、最高気温は 17度になる予想です。英国ラジオネットワーク、レジナルド・スミスがお送…』
「OK。コードキーは?」と尋ねるトレス。ジェインウェイは暗号の解読を終えた。「5番目の文字の 3番目の母音よ。日文字の解読法を使って。」
トレスは紙に文字を書き出していく。
ジェインウェイ:「A、H、C。連合軍の上層部からだわ。」
ニーリックス:「重要ってことか。」
トゥヴォック:「戦争に関する情報は全て重要だ。程度の問題に過ぎない。」
「そうやって何でもかんでも、論理でくくるなよ。」
"In any convert battle... logic is a potent weapon. You might try it sometime."

「論理的思考は、何にも勝る武器だ。君も使ってみるといい。」
文章を読み上げるジェインウェイ。「『アメリカの歩兵部隊が、サンタクレア※27に進攻。火曜日未明。』」
ニーリックス:「ってことは、明後日だ!」
「『援護を請う。敵の通信手段を奪え。以上。』」
トゥヴォック:「ドイツ軍の無線送信機は、奴らの本部にある。」
ニーリックス:「あの建物は護衛兵に囲まれてる。入って爆弾仕掛けるなんざ、無理だ。」
トレス:「何とかなるかも。」
ジェインウェイ:「方法は?」
トレス:「『具合が悪いの。今すぐ彼に、会わせてちょうだい。』 仕事場だろうと押しかけてやる。」
トゥヴォック:「偵察のためか。」
「無線機の場所や、護衛兵の人数、鍵の有無。できるだけの情報を集めてくる。」
考えるジェインウェイ。「危険過ぎるわ。捕まったら拷問されるわよ。」
「彼はそんな人じゃないわ。自分の子供を、傷付けるわけない。」 トレスは、大きくなった自分のお腹をさすった※28
「連合軍司令部に暗号を送って。『メッセージは確かに受け取った。要請された任務も実行中だ』と。」

ナチスの本部近く。歩いていた女性が、トレスに向かって唾を吐きかけた。トレスは様子を伺いながら本部に近づくと、突然苦しむ様子を見せる。護衛兵が声をかける。「どうしました?」
「どうしても大尉に会わせて欲しいの。」
「わかりました。こちらへ。ドアを開けろ!」 本部へ入れられるトレス。

ナチスのマーク。壁に大きな絵画が飾られている。「私は学生の頃から、この絵を気に入っておりました。それがこの手に。普通は金や領土を欲しがるのでしょうが、私は違う。勝利者にふさわしいのは芸術です。」 ナチ大尉※29の前にはヒロージェンの司令官がいる。
「当然の報酬か? だが本当に当然か?」
「というと。」
「我々は息も絶え絶えの獲物に、武器をもって襲いかかった。その好意に報酬が、必要だと?」
「ドイツ人は、全ヨーロッパを手に入れる権利があります。」
「なぜだ。」
「大佐。宿命だからです。」
「それはわかっている。君の言葉でその理由が聞きたい。言いたまえ。なぜ我々は支配民族なのだ。」
「純潔だからです。我々ドイツ民族は、堕落した連中がのさばる以前から、この地に住んでいました。ヨーロッパは浄化されるべきです。」
「君はその堕落した連中より強いと思っているのか? 頭がいいと。」
「もちろんです。」
「では軍の後ろ盾もなく、たった一人でも狩りを続けるかね? 相手が弱々しい獲物でなく、武器をもっていたとしたら。」
「一体、何をおっしゃって…」
ヒロージェンは大尉の首をつかんだ。「お前は決して優れてなどおらん! 自分の獲物の能力を過小評価したり見下したりするな! その途端、お前が狩られる側になる。敵がこの街に攻め入ってきたら、私のこの言葉を思い出すのだ。」
うなずく大尉。ドアを叩く音がする。「入れ!」と言うヒロージェン。大尉から手を離す。入って来たのはトレスと護衛兵。驚く大尉。「ブリジット※30!」
「ごめんなさい、こんなところまで来てしまって。彼は悪くないわ。私が無理を言ったの。」 護衛兵を弁護するトレス。
ヒロージェンは「どうやら私はお邪魔のようだな、大尉」といい、護衛兵と共に出て行く。
「ハイル、ヒトラー!」と手を挙げる大尉。トレスに話しかけた。「気にしなくていい。大佐は少しお疲れなんだ。」 抱き合う大尉とトレス。
大尉は尋ねる。「子供がどうかしたの?」
「わからない。めまいがして。」
「ドクターを呼ぼう。」
「いいの。もう治ったみたい。あなたの顔を見たからよ。もっと早く来てみたかったわ。」
「街の人を刺激したくなかったんだ。これ以上君がいじめれたら困る。」
「私はそんなのへっちゃら。綺麗ね。」 像が置いてある。
「プラクシテレス※31。古代ギリシャの彫刻家だ。これはヨーロッパ中に 3体しかない。」
「すごいわ。貴重な物ばかり。」 トレスは部屋の中を見回した。たくさんの絵のほかに、通信機も置いてある。

2人で街を歩きながら、ヒロージェンのナチス士官が怒っている。「司令官は一体いつまでこの茶番を続けさせる気なんだ。冗談じゃない! 狩りを始めよう。獲物の研究が必要だと言うが、俺にとっちゃ十分だ。武器の準備をしろ。」 前から自転車を押してくるニーリックスがいる。
「頭は狙うなよ。」 ヒロージェンたちはいきなりニーリックスに向けてピストルで発砲し出した。怯える民衆。倒れる自転車。ニーリックスは割れたワイン瓶を取ろうとする。
帽子を被ったセブンが、ヒロージェンに銃で反撃する。ニーリックスに近づく。「こっちだ!」
「でもメッセージが!」
「いいから!」
銃を撃ち合う両者。2人は路地へ逃げ込み、隠れた。笛が鳴らされ、ナチスがバイクに乗って通り過ぎていく。
銃を構えるセブン。ゆっくりと路地に戻るが、ヒロージェンが狙っていた。セブンの銃が撃たれ、取り落とす。逃げるニーリックスとセブン。だがヒロージェンは後ろから 2人を撃った。倒れる 2人。ヒロージェンは言う。「コンピューター、ホロデッキ退出。医療室に連れて行く。」 路地の先にアーチが開いた。


※23: この道路はロサンゼルス、ユニヴァーサルスタジオの「ヨーロッパの街路」で撮影

※24: British Radio Network

※25: Reginald Smith

※26: Master Race

※27: Sainte Claire

※28: 通常は特別なジャケットで隠していましたが、このエピソードでは逆にストーリーに生かしています

※29: ナチ大尉 Nazi Kapitan
(J・ポール・ボエマー J. Paul Boehmer DS9第172話 "Tacking into the Wind" 「嵐に立つ者たち」の Vornar、VOY第96話 "Drone" 「新生ボーグの悲劇」のワン (One)、ENT第28話 "Carbon Creek" 「スプートニクの飛んだ夜に」のメストラル (Mestral)、第76話 "Zero Hour" 「最終決戦」などの士官 (Officer) 役。ゲーム "Klingon Academy"、"Bridge Commander" でも声の出演) 声:藤原啓治、DS9 ベシアなど

※30: Brigette

※31: Praxiteles

ドクターと共にいる、ヒロージェンの医者。「神経接続器が損傷している。」
「あんたの仲間が彼女の頭蓋骨めがけて撃ったいい証拠だ。」
「代わりの物を持ってくる。インストールしろ。」
「傷の治療が先だ。」
「時間は。」
「脊柱が折れ、肺には穴が空いてる。1時間は必要だ。」
「そっちは。」 別のベッドにニーリックスが寝ている。
「ヴァイタル系統は安定させた。だがまだ弾丸の破片が肩に刺さっている。」
「私が見よう。」
「頼むよ。裂傷の治療は 2度目だ。今度こそへまはしないだろう。前回君が治療したクルーは、内出血で戻ってきた。」
「お前の患者はもろ過ぎる。簡単に死んでしまう。」
「何を期待してる。彼らはこの 3週間、刺され、撃たれ、戦い続けてきているんだ! そんな仕打ちに耐えられるわけない。」
医療室にヒロージェンの司令官がやって来た。「何が起きた。」
答える医者。「獲物がトゥランジに撃たれました。2人とも重傷です。」
訴えるドクター。「頭に深刻な傷は負わせないと約束したはずだ。1センチずれてたら、弾丸は脳を貫通してた。部下を統制できないなら、直ちにこんなゲームやめたまえ!」
ヒロージェンは「シミュレーションは続行する」という。
「ホロデッキの安全規約※32を守ってくれ。」
「断る。」
「あんたの部下の命を守ることにもなるんだぞ!」
「同時に挑戦する気持ちを失わせる。」
「この 12時間で、負傷した患者 28名、死者は 1名だ。治療の優先順位さえつけられない。」
「お前が治療しなければ死ぬだけだ。彼らの命はお前が握っている。治療を続けろ。」
ドクターは治療に戻る。
ヒロージェンはニーリックスについて、医者に命じる。「奴を治したら、ホロデッキ2 に連れて行け。クリンゴンとどう渡り合うか見たい。」
「女の方は。」
「女はホロデッキ1 だ。また歌が聴きたい。」

ブリッジに戻るヒロージェン。科学コンソールで作業をしているキムに尋ねる。「順調か?」
「第4、5、6デッキの隔壁を破壊して、両方のホロデッキ・グリッドを 5,000平方メートルまで拡張したよ。」
「もっとだ。」
立ち上がるキム。「これ以上は無理だ。ヴォイジャーの主要システムに支障が出る。」
「そんなことは構わん。」
「ホロデッキには大量のエネルギーを必要とするんだ。既に必要のないシステムからパワーを流用してる。これ以上広げれば推進力を失う。ディフレクターや、生命維持システムもだ。」
「狩猟船からパワー供給モジュールを転送し、この船を強化する。両デッキを囲む全セクションをホロデッキに改造するのだ。必要なエミッターをレプリケートしろ。」 歩いて行くヒロージェン。
「了解」とキムは言った。

ヴォイジャーの廊下。パネルが外され、キムとアッシュモアが調整に取りかかる。ヒロージェンが見張りについている。
トリコーダーで調べるキム。「ここのホロエミッターは安定してる。セクション19 へ移ろう。」
キムは小声でアッシュモアに命じる。「その前に、護衛を機関室へ連れてけ。タイプ3 のアイソリニアエミッターが必要だと言ってな。難癖つけられたら、それがないと任務を遂行できないと言え。」
アッシュモアはヒロージェンのところへ行き、「機関室へエミッターを取りに行きたい」という。アッシュモアとヒロージェンはターボリフトに乗った。それを確認し、キムはパネルを操作する。ドクターが現れた。「少尉、どうやって私を。」
「僕が転送した。新しいエミッターを使ってね。」
「何か計画が?」
「完全じゃないけどね。」
「聞こう。」
「船を奪い返す前に、クルーを船に戻す。それには神経接続器を切らなきゃ。」
「言うは易しだ。腕の立つハンターがウジャウジャしてるんだぞ。」
「大丈夫、いい方法があるんだ。医療室のコンソールにアクセスする。ただ、問題は…。」 ターボリフトの音がする。ヒロージェンたちが戻ってきた。
キムは言う。「そこで待っててくれ。もうすぐ終わる。」
通路の角を曲がったところで、再びドクターを呼び出す。「ただ問題は?」
「誰かがホロデッキ内から、コントロールリレーにアクセスする必要がある。」
「人出は減らせん。」
「わかってる。」
「だが…医療室にセブンがいる。彼女に協力してもらおう。」

作戦室に入るヒロージェン・ナチ士官。司令官が待っている。「ヴォイジャーのデータベースで次のシミュレーションプログラムを探していた。候補が山ほどある。彼らの歴史は争いの歴史だ。とっておきの獲物も見つけておいた。」 コンソールを部下に見せる。「ボーグだ。第二次大戦※33が終わったら、ウルフ359 と呼ばれる大規模な戦闘を再現するとしよう。」
「楽しみにしています。」
「ああ、それがいい。だが今後も命令を無視し続ければ、その目では見られないだろう。お前は獲物を 2匹も殺しそうになった。不注意が過ぎる。」
「もう限界だったんです。我々はこの船を研究し、既に防護も突破しました。なのにまだあなたは、獲物を殺すなと言う。一体いつまでこのゲームを続ければ気が済むんです。そろそろ戦利品を手に入れ、先に進むべきだ。」
「殺戮への欲望に目がくらんでる。若いハンターにありがちだ。獲物を研究すればするほど、その行動を知れば知るほど、何かを学ぶことができる。」
「学ぶことなど何もありません。」
「それは違う。どんな獲物でも独自の生き方を示し、我々に可能性を見せてくれる。未来を考えたことがあるか? この領域の獲物を狩り尽くしたら、我々はどうなると思う。」
「別の領域へ移動すればいいのです。新しい獲物を探せばいい。今までのように。」
「ヒロージェンはこの 1,000年間、ずっとそうして生きてきた。」
「変える必要が?」
"Species that don't change... die.

「変わることのできない種族は、滅ぶ。
もはや自滅寸前だ。我々は他種族を狩るという本能に身を任せ、宇宙域中に同胞を散らし、全方角に船を送り続けてきた。そして民族としての団結を失ったのだ。今の我々はあまりにももろい。もはや文化も擁さず、アイデンティティーもない。あと 1,000年もすれば、ヒロージェンという名前さえ忘れ去られるだろう。我々は再び団結せねばならん。力を結集し、文明を築き直さなければ。」 作戦室には、多数の戦利品が飾られている。
「狩りはどうするのです。」
「もちろん今後も続けるさ、新しい方法で。この船を巨大なシミュレーションルームに改造するつもりでいる。様々な、そして決して死なない獲物を供給するのだ。そしていずれは、このテクノロジーを仲間に伝える。これさえあれば、我々は過去の伝統を守りながら、未来を築けるのだ。」
「私が納得したとしても、周囲が許しません。」
「ではお前は。」
うなずく部下。
「私はプログラムを探す。明日ホロデッキ1 で会うことにしよう。アメリカ軍が進攻を開始する予定だ。」
部下は作戦室を出て行った。


※32: safety protocol
ホロデッキやホロスイートのような、ホログラムの環境シミュレーターのサブルーチン。DS9第119話 "Soldiers of the Empire" 「我らクリンゴン」

※33: 第二次世界大戦 World War II

セブンにハイポスプレーが打たれる。目を覚ますセブン。ドクターは小声で話しかける。「動いちゃだめだ。静かに。バイオラボにいるヒロージェンに聞かれたくない。最後の記憶は。」
「攻撃だ。ヒロージェンがヴォイジャーの船体を破壊し、乗船して来た。私は第3デッキで応戦した。覚えているのはそれだけだ。」
「ホロデッキのシミュレーションについては?」
「何も。」
「神経接続器は記憶中枢を回避しているらしい。」
「神経接続器?」
「大脳新皮質をホロデッキに接続させる皮下送信機だ。プログラムの中の登場人物だと思い込ませることができる。」
「私はなぜ医療室に?」
「シミュレーション中に負傷したんだ。君らをプログラムに戻すのが私の仕事だ。クルーの半数は拘束され、残りの半数がホロデッキで闘ってる。もう 19日間もこの状態だ。シナリオはどんどん残酷になっている。十字軍※34での君の暴れっぷりはすごかった。」
「またホロデッキに戻されるのか。」
「そうだ。だが今回は、こっちにも分がある。接続機を無能にする方法を見つけた。ボーグインプラントを改造して、妨害シグナルを発射させるんだ。君がホロデッキへ戻ったら、数秒でそのシグナルを作動させる。」
「私の任務は?」
「ホロデッキ内にあるコントロールパネルを探し、ブリッジのアクセスリレーにつなぐ。そうすれば、クルー全員の神経接続器を停止させられる。艦長たちが意識を取り戻したら、ヒロージェンに対する攻撃を開始してくれ。」
「私が行くプログラムは?」
「第二次大戦、20世紀の地球で起きた戦争だ。知ってることは?」
「ない。」
「先が思いやられる。接続機を無能にしたら、自分の役柄をすっかり忘れてしまうだろう。仕方ない。なるようになれだ。全力を尽くせ。」
ヒロージェン医者が戻ってきた。「最後の神経接続器だ。治療が終わったらレプリケートを手伝ってくれ。」
再びラボへ戻るヒロージェン。ドクターは「では眠らせるぞ」と言った。セブンは意識を失った。

ピアノの前で歌う※35セブン。ジェインウェイとヒロージェンが同じテーブルで歌に耳を傾けている。機械音がし、セブンは意識を取り戻した。歌をやめてしまう。ピアノの演奏者にいう。「これ以上、この活動は続けられない。具合が悪い。」 ステージを降りるセブン。別の曲を弾き始める演奏者。
ヒロージェンは「歌が終わりならもう帰るとしよう」という。慌てるジェインウェイ。「待ってください、司令官。まだ終わりません。お待ちを。」

カウンターのセブンに近づくジェインウェイ。「どうしたの?」
「水を一杯飲ませてくれ。」
「早くしなさい。夜まで歌うと司令官に約束したの。できるだけ情報を聞き出さなくちゃ。」
「具合が悪い。」
「死にそうでも構わない。ステージに戻って。」
「断る。」 セブンは歩いて行った。
トゥヴォックに話すジェインウェイ。「やっぱり怪しいわ。」
「証拠は増すばかりです。我々の要員が撃たれた時も、現場にいた。だがなぜか彼女に怪我はない。今夜は解放前夜にも関わらず、協力を拒んでいる。」
「私に任せて。」

ルーズベルト大統領の写真。ランプの点いたテントの中にチャコティがいる。地図を確認している。その中にヘルメットを被ったパリスがやって来た。「大尉。」
「楽に。メッセージは?」
「ありません。サンタクレアのレジスタンスからは。」
「内部からの援護はないってことか。」
「サンタクレアの市民はそんなに柔じゃありません。一夏過ごしてわかりました。」
「ほう、カタツムリを食べて、地元の女と恋に落ちただけじゃないのか?」
笑うパリス。「あ、いや。ええ、まあそんなとこです。」
「やっぱり。」
「でも信じて下さい。彼らは街を守るためなら、命も惜しみません。見限るのは早い。」
「わかった。だがあてにもしないぞ。計画は続行だ。明日朝一番に急襲をかける。」
ため息をつくチャコティ。パリスに飲み物を渡す。「で? 彼女の名は?」
「ブリジットです。足が綺麗で、気性が荒い。」
「お前好みだ。」
「36年の 8月29日、午後12時17分。私を乗せた列車が発車しました。それから会ってない。最初の 3年は文通をしてましたが、戦争が始まり、手紙も途絶えました。」
「サンタクレアは狭い。すぐに見つかるだろう。」
「そう願います。」 2人は乾杯をした。

地図を示すジェインウェイ。「あなたはここで待機。ドアの 20メートル前方よ。軽機関銃を持って、異常がないか目を光らせててちょうだい。」 トレス以外は全員、黒い作業着を着ている。
トゥヴォック:「了解。」
「午前4時15分に護衛が交代する際、20秒の空白があるのは調査済み。東側の窓から、十分建物へ侵入できる。」
トレス:「昨日見た時は、踊り場には全て護衛兵が待機してた。2階へはエレベーターシャフトを使って。司令室は突き当たりにある、メインギャラリーの中。」
「爆薬を設置したら、すぐに無線機を吹き飛ばして。あなたはここに。私たちが捕まったら、証拠は全部消してしまって。仲間のリスト、暗号リスト、全て。」
「了解。」
「1時間後に。」

手榴弾が詰まった箱。セブンは一つを手に取り、見ている。ジェインウェイがやってきた。爆薬を確認する。「これじゃ役に立たないわ。信管を忘れてどうするの?」
「今すぐ付ける。」
「気がついて良かったわ。任務が失敗に終わるとこよ。何か気がかりなことでもある?」
「いや。」
「これ以上のミスは許されないわ。」
「もう二度としない。」
「だといいけど。」 ジェインウェイはピストルを持って行った。


※34: Crusades
ホロデッキ・プログラム名

※35: 歌は "That Old Black Magic"

キムは食堂でコンピューターを操作した。ドクターが現れ、キムに近づく。「これ以上会わない方がいい。」
「ホロデッキ1 のスキャンができるようにした。セブンが行動に移ったようだ。医療室の準備は。」
「ヒロージェンの先生が、バイオラボで仕事中だ。コンソールにアクセスできるまで、少なくとも 20分はかかる。」
「だったら、その間に僕はブリッジへ。」
ドアが開いた。すぐにキムはドクターを消す。ヒロージェン※36たちが入り、挨拶するキム。「ごきげんよう。」
「何をしている。」
「レプリケーターを修理しようと思ってね。あんたたちはどうか知らないけど、僕は合成プロテインには飽き飽きなんだ。この宇宙域で一番のハンターなら、もう少しましな食い物を取って来てくれないかなあ。何だよ。」 キムの前に立ちふさがるヒロージェン。
「この部屋から無許可の信号が発信されていたのだ。」
「信号って何の。」
「わからん。お前は知らないか。」
「僕は…メインコンピューターのパワーをつなぎ直してただけだ。あー、そうそう、さっきうっかりして、コミュニケーションサブルーチンにつまづいたんだ。きっとそのせいだろう。あんたらが、この船を滅茶苦茶にしてくれたおかげで、思いもかけないアクシデントが起こるんだ。ブリッジに戻る。」
「見せてみろ。」
「何を!」
「けつまづいたサブルーチンをだ。どうやってアクシデントが起きたのか、この目で見たい。」
「断る。時間がないんだ。」
ヒロージェンは、持っていた銃でキムを殴り倒した。「いいから言う通りにするのだ。」
「わかったよ! 先にブリッジに連絡して、上官に僕は遅れるといってくれ。彼じゃなくあんたの命令を優先すると。どうした、早くしろよ。あんたのせいで怒られたくない。」
「ブリッジへ出頭しろ。」
「了解。」 ヒロージェンを押しのけ、食堂を出るキム。

ナチスの本部からライトが照らされ、周りを監視している。トゥヴォックが建物に隠れ、本部を見張る。

本部の中では無線機を使っている。静かに扉が開き、ジェインウェイとセブンが中に入った。通信士が気づくが、ジェインウェイは彼を殴って気を失わせた。セブンに指示する。「爆薬はここと、そことそこ。これは敵の偵察部隊からのメッセージだわ。」 ジェインウェイは、自分で聞き始める。「それぞれの軍隊に配備場所を指示してる。」
セブンは近くの本棚に気づき、本を取り始めた。奥にホロデッキコントロールが見える。
「街の外に新たな軍隊を投入したようね。私たちが予想してたよりも、遥かに大規模な兵力だわ。」 セブンはジェインウェイが気づいていないのを確認して操作し、小さく音が発せられる。

ブリッジのキムのコンソールに反応が現れた。ヒロージェンの様子を伺いながらブリッジを歩く。別のコンソールに「ホロデッキ1 アクセス可能」と表示されている。操作するキム。

医療室に反応が出る。モニターには「神経接続器 アクセス可能」。ドクターはクルーの一覧を出し、「ジェインウェイ艦長」を選択した。

情報を集め続けるジェインウェイ。「機甲部隊を谷の方へ移動させてる。アメリカ軍が来るのを知ってるのよ。彼らに伝えなきゃ。」
振り向いたジェインウェイは、セブンが操作しているのに気づいた。「何してるの? 爆薬をセットしてないじゃない。それは何!」
「無線機に違いない。何とか、止めてみる。」
「ナチにメッセージを送ってるのね。」
「違う。」
「離れて。さもないと撃つわ。」 銃を向けるジェインウェイ。

ヒロージェンの医者が戻って来た。ドクターに言う。「何をしてる。」
「ああ、別に。診断書を見てただけ…」
「神経接続器に何をした! すぐにそこを離れろ!」 ドクターは最後のボタンを押した。

「もうミスは許さないと言ったはずよ。最後の一線を越えてしまったようね。」 引き金に力を入れるジェインウェイ。

モニターに反応が出ている。ヒロージェンに武器を向けられながらも、ドクターは微笑む。表示は「神経接続器 停止」。

ジェインウェイは首元に痛みを感じた。我に返る。「セブン!」
「艦長。」

クリンゴンの姿をしたニーリックス。「聞け。ターグだ。捕まえに行こう。」 鳴き声が聞こえる。
ヒロージェンの司令官。「敵に囲まれてるんだぞ。下手に動けば命取りになる。」
「飢えほど怖い敵はなしって言うだろ!」 独りで進み始めるニーリックス。
ヒロージェンの司令官に通信が入った。「こんなところまで何だ。」
医療室のヒロージェン。「ホログラムのドクターが艦長の神経接続器を停止させました。」
『どうやって。』
「わかりません。再接続は不可能です。」
『チームをホロデッキ1 へ送り、彼女をシミュレーションから出せ!』

潜んでいるトゥヴォック。ナチスの服を着ていないヒロージェンたちが歩いている。トゥヴォックは彼らに向かって、機関銃を連射し始めた。自分たちの武器で対抗するヒロージェン。

音に気づいたセブンとジェインウェイ。セブンが外を見る。「ヒロージェンのハンターだ。」
コンソールをチェックするジェインウェイ。「このホロデッキ内に 13人いるようだわ。」

トゥヴォックは身を隠しながら、機関銃を撃ち続ける。「手を貸そうか?」 チャコティの声。アメリカの部隊だ。「第5機甲部隊のミラー大尉※37だ。」
「サンタクレアへようこそ。」
指示するチャコティ。「歩兵部隊、チャーリー・1 を。この道沿いに入ってくれ。集中砲火を浴びせる。」
部下が連絡を取る。「歩兵部隊、チャーリー・1 を。」

「アメリカ軍が到着した」と伝えるセブン。

ブリッジに戻るヒロージェン。「お前がコントロールをいじったのか! どうやった!」
壁に突かれたキムは言った。「地獄へ落ちろ!」

サイレンが鳴る。レジスタンスのアジトにいるトレスは人の気配に気づき、銃を持って隠れた。入って来た人物と、武器を向け合う。「ボビー※38?」
パリスは銃を下ろした。「手紙書けよな。」

機関銃を使うトゥヴォック。命令を与えるチャコティ。「ロビー 700メートル、横風に備えよ。次に発射。援護を頼む! チャーリー・1 は詳細を知らない。」

作業を続けるジェインウェイ。「ヴォイジャーにアクセスできないわ。」 大音響と共に光が走った。セブンに尋ねる。「ここはナチの本部だって言ってなかった?」
「そうだ。」
「だったら間違いなく攻撃される。早く出ましょう!」

脱出する 2人。本部が攻撃され、大爆発を起こした。衝撃で吹き飛ばされる。

揺れはブリッジにまで及んでいた。「どうした?」と聞くヒロージェン。
キム:「ホロデッキ1 のシミュレーション内の爆発で、3デッキに渡るホログリッドが吹っ飛んだ。」
「プログラムは続行中か?」
「ああ。」

トゥヴォックやチャコティたちは、空間に広がる巨大な「穴」を見た。何デッキにも渡るヴォイジャーの構造が空中に浮かび、周りの映像が乱れている。

ジェインウェイとセブンもそれを見ていた。顔を見合わせる。

トゥヴォック:「あれは?」
チャコティ:「隠れ家らしい。」 無線を使うチャコティ。「全部隊に告ぐ。ナチの秘密基地と思われる建物を発見した。援護を頼む。中へ入る。」

状況を確認するキム。「シミュレーションが周囲のセクションに広がってる。ホロデッキの兵士を第5デッキに配備した方がいい。」
ヒロージェン:「コントロールを取り戻すまで、ホロエミッターを停止させるのだ。」
「無理だ。プログラムを制御できない。戦争が望みか? どうやら、叶ったらしい。」
何も言わないヒロージェン。

「援護を頼む! 敵が潜伏しているかもしれん!」 「わかりました!」 アメリカ軍が進攻する。「第1小隊、向こうへ回れ! 回れー!」 彼らは穴に向かって進んでいく。


※36: 若いヒロージェン
(Paul S. Eckstein DS9第126話 "Rocks and Shoals" 「洞窟の密約」の Limara'Son、第174話 "The Dogs of War" 「自由への叫び」のジェムハダー、VOY第107話 "Gravity" 「ブラックホールと共に消えた恋」のヨスト (Yost)、第156話 "Flesh and Blood, Part II" 「裏切られたホログラム革命(後編)」の新しいアルファ・ヒロージェン、第160話 "Prophecy" 「預言の子」のモラック (Morak) 役)

※37: Captain Miller

※38: Bobby

・感想
今回もヒロージェンが敵役として登場。これまでとは多少違い、ホロデッキを利用するという頭脳プレー(?)を見せてくれます。部下には馴染めていない者もいましたが、少なくともアルファ・ヒロージェンのホロデッキ・プログラムについての知識はなかなかのもの。最後のシーンでは現実と非現実の境が壊れたように描かれていましたが、後編でどのように決着をつけるのか楽しみです。

それにしても、いきなりヴォイジャーが占領されているのは…物悲しいですね。


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