治療を行うドクター。「動脈破裂、13番椎骨骨折、すぐ手術だ。」
ヒロージェンの患者が医療室に入る。診断するヒロージェン医師。「顔と首に第1級、第2級の火傷。治療しろ。」
ドクターは従わない。「軽傷じゃないですか。後でいい。」
「治療しろと言ったんだ。」
「こっちの患者は重傷だ。すぐ手術しないと死んでしまいます。」
「すぐ治療しないなら、お前のプログラムを停止するぞ。」
「君も医者の端くれだろ。より危険な患者を優先的に治療するのが基本だ。」
「そんなことは、関係ない。」 ヒロージェン医師がコンピューターを操作し、ドクターの姿が消えた。「今後、傷ついた獲物はその場に放っておけ。仲間だけを治療する。」
うなずくヒロージェン。
ホロデッキ2 でクリンゴンとなったニーリックスは笑っていた。他のクリンゴンと、焚き火を囲んで酒を飲んでいる。「俺は素面だ。まだまだ飲めるぞ、ざるだからな。ターパクのクレーターと同じだ。何でも吸い込む。」 大きく笑うニーリックス。
ニーリックスはクリンゴン人の酒を取ろうとする。「まだ飲んでる」というクリンゴン※8。
「仲間と分け合うもんだ。明日は戦いだぞ!」
渡そうとしないクリンゴン人。ニーリックスはナイフを取り出した。「俺は酔っちゃいるがな、お前をあの世へ送るぐらい朝飯前だ。死体をここで腐るに任せてやる。それとももう腐ってるのか? 臭うぞ。」 笑うニーリックス。酔ったクリンゴンは、その場に倒れた。それを見てまた笑うニーリックス。
廊下を慎重に歩くキム。だが前にナチス兵がいた。銃声がし、倒れたのはその兵士だった。後ろを振り向くキム。「トム!」
部下の兵と共にいるパリス。「人違いだ。言葉わかるのか?」
手を挙げるキム。「ああ。アメリカ人だ。」
「アメリカ人?!」
「うん。敵に気づかなかった。命の恩人だ。」
「軍服はどうした。どの中隊の所属だ。」
「いや…その…民間人なんだ。」
「フランスの戦闘地帯でか。ふざけるなよ。」
近くで銃声が響く。パリスは部下に命じる。「行け。すぐに追いつく。」 走っていく兵士。
パリスはキムに近づく。「おい、ここで問い詰めてる暇はない。アメリカ人だと言ったな。いいだろう。もしベティ・グレイブル※9がいきなり現れたら、彼女のどこを見る?」
悩むキム。
「残念。時間切れだ。」 ピストルを構えるパリス。
キムは言った。「足だ! 足に決まってるだろ。」
驚いた表情をするパリス。「ご名答。見逃してやる。」
パリスは歩いて行った。ため息をつくキム。
ジェフリーチューブを進むジェインウェイに言うチャコティ。「あんたも男勝りだな。」
「あら、気に入らない?」
「いや、あまり慣れてないってだけだ。俺の国の女は、ちょっと違う。」
「仲間たちの命が懸かってるのよ。だから自然となるみたいね、男勝りに。」
「別にいいさ。俺も部下のためなら必死になる。」
ジェインウェイはボタンを操作する。
チャコティ:「それどころか毎日考えてるねえ。あいつらを無事に家に帰す。俺の命に賭けても。」
「よくわかるわ。これから、街の下を通ってる洞窟に入るわ。」
「洞窟?」
「そこで内通者と会えるの。言っとくけど、この洞窟にはちょっと変わった連中が住んでるの。でも心配ない。」 さらにジェフリーチューブを進む。
ニーリックスたちは、大声でクリンゴン語の歌を唄っている。
洞窟から、ジェインウェイとチャコティがやって来た。「お邪魔するわよ」と声をかけるジェインウェイ。
バトラフを手にするクリンゴンたち。ニーリックスは言う。「何もんだ! どうやって戦場の前線を越えた!」
「同盟軍なの。味方よ。」
「何族のものだ。」
「何族? トマグ族よ。」
「トマグ族だとお? 聞いたこともないな。」
「でしょうね。ここから遠いから。」
「ならこの戦いも関係ないだろう。」
「まあね。でも、偉大な戦士たちと戦うのは名誉なことだわ。気が進まないなら、武器は持ちかえるけど。」
「待て! 考えてやらんこともない。だがまず、根性を見せてもらおう。飲め!」
ニーリックスは持っていた酒をチャコティに投げ、そしてクリンゴン語で叫んだ。「サンロー、タポタ、ジャー!」
チャコティ:「フランス語はこんなだったか?」
ジェインウェイ:「飲んじゃだめ。ウィスキーの倍強いから。すぐ戻るわ。」 洞窟に戻るジェインウェイ。
笑うニーリックス。
洞窟の壁を探るジェインウェイ。ニーリックスの声が聞こえる。「どうした! 何をしているんだ。飲め! サンロー、タポタ、ジャー! 早く飲め! どうした、このいくじなしめ。」
壁にコンピューターのパネルが現れた。操作すると、ドクターが転送された。「艦長! 本当に、艦長で?」
うなずくジェインウェイ。「ええ。残りの接続器を断ち切らないと。」
「医療室のコンソールからコントロールしてるんです。解除には時間がかかります。」
「時間はない。医療室床下のジェフリーチューブに爆弾を仕掛けて、コンソールごと爆破するしかないわね。」
「爆破? 武器庫はヒロージェンが押さえています。」
ジェインウェイは荷物を見せた。「大丈夫よ。必要な物は持ってきたから。」
「ホログラムの爆薬を?」
「生命保護機能がオフだから、本物と同じに使えるわ。」
「ふむ。」
2人はニーリックスたちのところに戻る。ドクターに気づくニーリックス。「おお? そいつも戦士なのか?」
ジェインウェイ:「ええ。」
「ヘヘ、随分と生っちろい奴だな。」
「コンソールを破壊したらまたあなたを呼ぶから、それまでここにいて。」
ドクター:「クリンゴンと?」
「ここの方が、サンクレールよりは静かよ。大尉!」
チャコティは酒をクリンゴン人に返し、ジェインウェイと共に出て行った。
ドクターの背中を小突き、笑うニーリックス。何も言わないドクターを、もう一度叩いた。「やめてもらえないかな」というドクター。また笑うニーリックス。
ドイツ軍に応戦するトゥヴォック、トレス、パリスの 3人。
パリス:「多勢に無勢だな。」
トレス:「武器も足りないわ。奴ら通りの向こうにマシンガン※10を据え付けてる。」
ジェフリーチューブからセブンが戻って来た。工具を持っている。やってきたトゥヴォックが「どこにいた?」と尋ねる。
「物資を取りにな。」 調整を始めるセブン。
「何だ、それは。」
「ドイツ軍の武器だ。研究所から盗ってきた。これで我々の武器を強化できる。」
トゥヴォックはドイツ軍との戦闘に戻る。
壁に隠れるヒロージェン・ナチス士官と大尉。ヒロージェンは通信を行う。「ヴォイジャーのクルーを何名か追いつめましたが、ビルに立てこもっています。ニュークレオニック爆弾※11でビルを破壊して構いませんか。」
ブリッジのアルファ・ヒロージェン。「ニュークレオニックではホロデッキまで破壊されてしまう。銃で攻撃しろ。」
「ではもっとハンターがいります。」
『今そちらへ送る。』
時計付きの爆弾を準備するチャコティ。
ジェインウェイはパネルを操作している。「そうよ! コンソール周辺にはレベル9 のフォースフィールドがある。それを解除しないと。」
「フォースフィールド?」
「後で説明する。爆発は 5分後にセットして。」
時計がセットされ、カウントダウンが始まった。
医療室から報告するヒロージェン医師。「1時間で 5人のハンターが死にました。生命保護装置をセットした方がいいのでは。」
モニターにアルファ・ヒロージェンが映っている。『保護装置は機能しない。』
「では助手をよこして下さい。」
物音がした。「お待ちを。」 通信を終える。
「お前は…。」 そこには、ジェインウェイとチャコティが武器を構えて立っていた。
ジェインウェイ:「彼を連れ出して。」
チャコティ:「この床下にダイナマイト※12がある。3分後に爆発するぞ。こっちへ来い。」
2人が出ていったのを見て、ジェインウェイはコンソールを操作する。「医療室保安フィールド/認証アクセスのみ」と表示されている。
ブリッジのアルファ・ヒロージェン。「ブリッジより医療室。医療室、応答を。ブリッジより第5デッキ。すぐに医療室へ向かえ。」
操作を続けるジェインウェイ。「医療室保安フィールド解除」※13という表示になった。
チャコティに銃を向けられたままのヒロージェン医師。後方からやってきたヒロージェンたちに発砲するチャコティ。医師は、その隙を突いてチャコティから逃げる。
医療室に戻るヒロージェン医師。ジェインウェイは気づいて銃を取ろうとするが、その前に足を撃たれてしまった。反対側のドアから逃げ出す。医師はコンソールに近づき操作するも、「アクセス拒否」と表示された。うろたえるヒロージェン。
時限爆弾のカウントがゼロになった。爆発が起こり、隔壁をも吹き飛ばす。
痛みに首元を押さえるパリスたち。その様子に気づいたセブンは説明する。「ここはホロデッキだ。攻撃されてる。」
だがすぐにレストランの入口から、ナチ大尉たちが次々と入って来た。ヒロージェンもいる。セブンは構えていたピストルを下ろした。
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※8: (Peter Hendrixson) 声:北川勝博
※9: Betty Grable (1916〜1973) エンターテイナー。「フーピー」(1930)、「私の夫(ハズ)は二人いる」(1954) などに出演。参考:Betty Grable - The Original Pin Up
※10: machine gun
※11: nucleonic charge
※12: dynamite
※13: 前編とは違い、このあたりのモニター表示には字幕が入っていません。その代わりに、ここではジェインウェイが「フィールド解除!」、その後のシーンではヒロージェン医師が「アクセス拒否」という吹き替えだけが入っています
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