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ヴォイジャー エピソードガイド
第88話「人体を渡り歩く異星人」
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・イントロダクション
ガレージの中に自動車が置いてある。ラジオらしき音楽が聞こえる。車の下で、作業服を着た男が作業している。そこへドクターが転送されてきた。おもむろに車に近づき、クラクションを鳴らす。大きな音に驚いたパリスが、下から出てきた。「ドクター、何の真似だよ。」 「抜き打ちの聴覚検査だよ。」 「結果は?」 「合格だ。ということは、今朝の約束はちゃんと聞こえていたってことだな。」 笑うパリス。「そうだな。忘れてた。」 「なるほど。医療室での仕事はボランティアって訳か。だが、近頃全然顔を見せないな。このところ、君はホロデッキに入り浸りのようだ。」 「ドクター、急にどうしたんだよ。それほど深刻になるような問題じゃないだろ。」 「全くのんきなものだ。今の状態で非常事態に対応できるか? くだらん趣味にうつつを抜かす暇があったら、医学書でも読め!」 「お言葉だけどね、俺は朝からずっと複雑な外科手術に取り組んでいたんだ。」 「ふーん、そうかね。」 「萎縮した間欠栓の摘出。クロムの摩耗を防ぐのに必要な処置で、かなり際どい手術だったけど、経過は良好だ。」 「神経の手術は君に任せよう。」 運転席に座るパリス。「どうだい、見事だろう? 1969年型シヴォレーのカマーロ※1、完全モデル。初期の馬力のあるスポーツカーだぜぇ。あぁ、たまらないねえ。時は 20世紀末の北カリフォルニア。髪をなびかせながらハイウェイ1※2 をぶっ飛ばすのは最高だろうなあ。カーラジオをガンガン鳴らしてねえ。」 ドクターはトリコーダーを使う。「シートは狭くて窮屈。内部の燃焼システムは、致死量の一酸化炭素を作り出してる。ふむ、私が間違っていた。君は今すぐ、検査を受けた方がいいなあ。」 「ドクターにこの楽しさをわかってもらうのは無理か。」 「パリス中尉、問題をはぐらかすな。医療行為は名誉なことだ。君ならそれぐらいわかるだろう。」 「わかってるよ。行きますよ。すぐに。」 ドクターは姿を消した。だがすぐにジェインウェイの通信が入る。 『パリス中尉、至急ブリッジへ来るように。』 ため息をつくパリス。「今行きます。」 ホロデッキを後にした。
作業服のままブリッジに入るパリス。「操縦の交代ですか?」 ジェインウェイ:「すぐ持ち場について。ハリー、何かわかった?」 キム:「また空間のひずみをキャッチしました。2,000キロ先です。」 チャコティ:「原因は。」 「わかりません。空間自体がひずんでいるようです。」 ジェインウェイ:「シールド最大。」
宇宙空間に、突如宇宙船が拡大されるように姿を現した。キム:「小型の宇宙船だ。クルーは 1人です。」 パリス:「艦長、宇宙船は多重ワープドライブ※3で強化されているようですね。」 チャコティ:「多重ワープ?」 「宇宙艦隊のエンジニア連中が夢見てた、仮説の推進システムですよ。つまり文字通り、空間のひだを次々折り重ねていって、そして長い距離を一気に進むという理論です。」 ブリッジが軽く揺れた。相手の宇宙船を包むエネルギーフィールドが不安定になっている。 トゥヴォック:「船のワープドライブがオーバーロードだ。」 パリス:「多重ワープドライブが爆発を起こすと、半径 10億キロ以内の空間を破壊するとか。理論上では。」 ジェインウェイ:「理論が現実にならないよう、食い止めて。非常体制!」

※1: Camaro

※2: Highway 1
「1」は訳出されていません

※3: 同軸ワープドライヴ coaxial warp drive

・本編
進み続ける宇宙船。 指示するチャコティ。「船をスキャンしろ。パイロットを転送できるか?」 キム:「障害がありすぎます。」 パリス:「このままじゃ船が危険だ。多重コアが現れる。」 トゥヴォック:「直ちにこの領域※4から立ち去るべきです。」 「パイロットを見捨てるのか?」 ジェインウェイ:「もう一度呼びかけてみて。」 キム:「だめです、こちらを無視しているのか。」 パリス:「意識不明かも。何とか助けましょう。」 ジェインウェイ:「方法は?」 トゥヴォックもキムも言葉が出ない。だがパリスは思い付いた。「シンメトリック・ワープフィールド※5だ。それでスペースフォールディング・コアの不安定要素を阻止できる。」 チャコティ:「断言できるか?」 「高等亜空間幾何学じゃ常識だ。俺がアカデミーで受けていた講座ですよ。パイロットを転送してから、船の周囲にワープフィールドを発生させるんだ。」 トゥヴォック:「軌道が不規則なので、衝突の恐れがあります。」 「艦長、私にやらせて下さい。」 ジェインウェイ:「許可します。」
ヴォイジャーは宇宙船に近づいていく。操作するパリス。「残っていた空間のひだを通過。固定。よし! やった!」 トゥヴォック:「早速宇宙船にワープフィールドを送ります。船のコアがパワーダウンした。」 ジェインウェイ:「トム、よくやったわ。」 パリス:「ありがとうございます。」 キム:「やっと応答がありました。」 チャコティ:「チャンネル、オープン。」 スクリーンに異星人の男性※6が映される。 ジェインウェイ:「連邦宇宙艦ヴォイジャーのジェインウェイ艦長です。お怪我はないですか?」 男性:「私は大丈夫ですが、船の一部が故障したようです。」 「修理が必要なら手をお貸しします。」 「それはありがたい。」 「すぐあなたを転送しますから、待機して。」 「ありがとう。」 「トゥヴォック。」 うなずくトゥヴォック。ジェインウェイも席を立つ。
転送室に入るジェインウェイとトゥヴォック。ジェインウェイは転送部員に命じる。「エネルギー、オン。」 男性が転送されてきた。 ジェインウェイ:「ようこそ。」 男性:「艦長、危険を冒して助けて頂き、感謝します。ありがとうございました。」 「無事で良かったわ。」 「新しいエンジンの実験に夢中で、つい限界を超えてしまいました。」 転送室を出る3人。ジェインウェイ:「多重ワープでの旅は、なかなか大変そうね。」 男性:「揺れはかなりのものですが、速さには変えられません。すごいスピードですからね。」 トゥヴォック:「危険性を考えると、論理的方法とは思えませんが。」 「かもしれません。しかし危険を恐れるようじゃテストパイロットにはなれないでしょう。」 ジェインウェイ:「ご出身は?」 「ベンサン※7星系第4惑星、ここから 20光年離れています。」 「修理についてはエンジニアに伝えましょう。多重ワープなしで帰るのは大変ですものね。」
チャコティのオフィスで、ドアチャイムが鳴った。「入れ。」 パリスが入る。 「副長、お願いがあります。仕事の流れを変えたい。船の修理を手伝いたいんです。」 「時期が悪かったな。」 「どういうこと?」 「ドクターの報告書を読んでいたところだ。今日もサボったとか。」 「あ、今朝は忙しかったんだ。呼び出しを受けて、異星人を助けていたから。」 「トム、どうしたんだ? 悩みでもあるのか?」 「別に何でもない。
Since when is not wanting to spend time with the Doctor a capital offense? You'd have to throw the whole crew in the brig for that one."

ドクターと過ごしたくないっていうのが重大な違反になるんですか? だったらクルー全員を監禁しなくちゃ。」
「そうだな。私はただ、君が心配なんだよ。確かに君はシフト通りに仕事をこなしてはいる。だが心は上の空。気持ちがどこかへ行ってるようだ。」 「ほかの仕事をすれば、気分転換にもなります。」 「4年前にヴォイジャーに来た時のことを忘れたのか。人生をやり直すチャンスなのに、台無しにするなよ。」 「ご心配なく。では医療室に向かいますので、許可を下さい。」 「許可はしない。代わりにステス※8のもとに行け。船の修理を手伝いたまえ。ヴォイジャーでは君しかいないだろう。」 パリスは向かった。
ヴォイジャーと並行して飛行しているステスの船。パリスと話しているステス。「試作エンジンで、エンタバン※9の立ち入り禁止区域に侵入してしまったこともあったなあ。」 「それで?」 「それで、当然フェイザーの大歓迎を受けたよ。」 笑う 2人。ステス:「私はピカピカの機体に開いた、でっかい攻撃跡の穴からはいだして、エンジニアたちのもとに戻ったんだ。なかなか面白い光景だったと思うよ。」 「俺なんか 16の時、地球人の古い習慣を実行したんだ。」 パリスが後ろを向いている時、突然ステスの顔が変わり、別の異星人の女性のようになった。慌てている。気づかずに話し続けるパリス。「…ある日親父のシャトルをもち出して、あちこち乗り回した。」 「息子からおもちゃを取り上げるのは辛かっただろうな。」 ステスの顔は既に戻っている。 「実は取り上げられなかった。シャトルは今でもタホ湖※10に沈んだまま。」 「ほら、これだよ。これが多重誘導ドライブ。原子未満の粒子を吸い込んで、内部の結合構造を変えるんだ。」 手の平大のドライブを手にするパリス。「これがあるから空間を重ねられるのか。」 「ああ、瞬間的にはね。残念ながら不安定な粒子がエンジンのオーバーロードにつながってしまった。だが必ず直してみせる。落ち着く気はないんだ。今はとてもそんな気持ちになれない。様々な船を操縦したいし、魅力的な女性も多い。」 「ああ、全くだ。」 「船が直ったら、新しいミシュラン・クラスの戦闘機※11で初テストをする。宇宙域で最も進んだ戦闘機なんだ。君も一緒にどうだ?」 「きっと素晴らしいぞ。その後に戻ればいい。」 「……ぜひそうしたいよ、ワクワクする話だ。でも、俺には責任があるんだ。みんな俺を頼りにしてる。それにベラナに何て言われるか。」 パリスは思い出した。 「しまった。あ…約束があった。」 慌てて出ていく。
食堂で独りで食べているトレス。入口が開き、パリスがやってきた。気づいたが、トレスは声をかけない。トレスの前に座るパリス。「食べ始めていたのか。」 「もう終わるところよ。遅いのね。」 「ごめんよ。ステスの船の修理を手伝ってた。」 「直りそうなの?」 「まだまだだ。推進システムで、粒子の積み過ぎをどう防ぐかで、立ち往生さ。」 「アイソキネティック抑制フィールドは?」 「ああ、それは真っ先に試したよ。」 「修理は何時間ぐらいかかりそう?」 「わからない。」 「できれば今夜、プラズマ集合体の調整を手伝って欲しいんだけど。」 「ああ、無理だなあ。多分、ステスを手伝わなきゃならない。」 「……ねえ、何か問題でもあるの?」 「俺を尋問するのか?」 「そんなつもりはないわ。」 「俺の行動を全て把握してないと、気が済まないのか?」 「何言ってるの?」 「俺には自分の時間もない。何をするにもいちいち君の許可を取らないとだめなのか。」 「トム、あなたは自由よ。私はただあなたが心配なの。近頃デートをすっぽかしてホロデッキに隠れてばかりいるから。」 「そんなつもりないさ。馬鹿馬鹿しい。」 「そうかしら。どんなホロプログラムに夢中になってるかも教えてくれないし。」 「ミニピアのダンシングガールズさ。これがなかなか面白い。」 「とっても面白そう。」 「考え過ぎじゃない?」 2人の様子に気づき、ニーリックスが近づく。 トレス:「いいえ違う。そんなことないわ。何かがおかしいってわかってるのに、あなたは認めようとしない。」 ニーリックス:「こんばんはトム、食事はまだだろ? 何か持ってこようか。」 パリス:「腹は減ってない。」 トレス:「邪魔しないで。まだ私と話す気がある? その気がないなら失礼するわ。」 「ハ、君がヒステリーを起こさずに、大人の会話ができるならね。」 「おやすみなさい。」 トレスはパッドを持ち、席を離れた。トムはニーリックスの顔を見た。何も言えないニーリックス。
ステスは船で独りでいる。再び体に異常が生じ、女性の姿になったり戻ったりを繰り返す。男性の姿で安定した。「コンピューター、DNA 安定度分析開始。私のゲノム※12が先祖帰りするまで何時間だ。」 答えるコンピューター。『元の姿に戻るまで、3時間13分です。ゲノムの完全な再生が差し迫っています。』

※4: 「宇宙域」と吹き替え

※5: symmetric warp field

※6: (Dan Butler) 声:水野龍司

※7: Benthan(s)
"system" を「星域」と訳していますが、これは「星系」が正しく、星域は sector の訳語として使われます

※8: Steth

※9: エンタバ人 Entabans

※10: Lake Tahoe

※11: Mithran-class fighter

※12: genome


ヴォイジャーの廊下。ステスにパリスが話している。「夕べ寝る前に、ベッドの中でひらめいたんだよ。必要なのはキャブレター※13だ。」 「キャブレター?」 「ああ、何百年も前の装置なんだけどね。何で思い付かなかったのか。」 「何百年も前? そんな古い物役に立つのか?」 「基本に戻ればいいのさ。20世紀の技術で、どれだけ 24世紀の問題を解決できたか聞いたら、きっと君は驚くぜ。」 パネルを操作するパリス。 「コンピューター、パリス・プログラム、アルファ 1、ガレージ※14にアクセス。」 「ガレージ?」 「カーマニアなのさ。」 ステスはパリスに続いて、中に入った。
「燃料だけじゃエンジンは動かないから、キャブレターが燃料と空気を混ぜて気化した形にするんだ。」 「つまり多重ドライブに粒子が流れ込む時、それを薄める装置が必要だということか?」 「その通りだ。ヴォイジャーのポラリックモジュレーターで調整すれば、きっと使えるよ。」 「粒子の希釈※15か! ああ、考えもつかなかったよ。これで解決したな。」 「まずはホロデッキで何度かシミュレーションしてから、実際に試してみよう。」 「トム、いろいろありがとう。」 「なーに、幸運のツールボックスのおかげだ。これで何度も窮地を救われた。」 「ヴォイジャーで仕事ができて、君は運がいい。食料や洋服のレプリケーターに、どんな趣味にも応えてくれるホロ技術。女にも不自由しない。」 「ああ…最高だよ。」 「あまり嬉しそうじゃないな。満足していないのか?」 「もちろん大満足さ、最高だよ。俺は宇宙艦隊で最新式の宇宙船を操縦し、美人の恋人もいる。部下に尊敬されて…、欲しいものは全て手に入れた。」 「うらやましいねえ。君はヴォイジャーには欠くことができない。身を任せられるルールもある。何を選べばいいのか悩む必要もない。私なんて、何が起こるのかわからない不安を抱えて眠りにつく。明日はどんな災難に遭うか。」 笑うパリス。 ステスは話し続ける。「君は明日の心配をしなくていい。安定した暮らしだ。」 「かつては俺もそうだったよ。君のように不安な毎日だった。何をするにも、どこに行くにもね。自分のルールで動いてた。」 パリスは使っていた工具の小さなレンチを、ツールボックスに入れ、自動車の作業に戻って話している。何気なくレンチを手にするステス。するとステスの顔は、再び女性異星人のものになっている。だが声は以前のままなので、後ろを向いているパリスは気づかない。「こんな私も夢はあるんだ。いつかは落ち着きたいと思ってる。でも今は、ひたすら走り続けたいんだ。」 「時々俺も、そういう暮らしにあこがれるよ。」 起き上がるパリス。ステスの姿は既に戻っている。「君の思い通りになるさ。変化は避けられないものだと思うよ。変化は突然やってくるものだ。」 「ああ、そうだな。」 「じゃあそろそろ、私の船でキャブレターを試してみようか。」 「あと 5分だけ待ってくれたら、君に付き合うよ。」 「5分だな。それと、トム。さっきのこと、よく考えておいてくれ。2人で新しい船に乗る話さ。しばらく足かせから逃れるのも、楽しいものだ。」 ステスはホロデッキから出て行った。笑うパリス。ツールボックスからレンチを取ろうとするが、なくなっていることに気づいた。
ステスは独りで、暗い第2貨物室に入った。自分のパッドを持ってコンソールに近づく。「コンピューター、トム・パリス中尉に属する全ファイルにアクセス。メモリーコア・アルファにダウンロードせよ。」 『強制作動コードを入力して下さい。』 ステスはパッドをコンピューターにかざした。『アクセス了解、ダウンロード開始。』 パリスの写真が映され、情報が表示される。貨物室の扉が開いた。入って来たのはセブン・オブ・ナインだ。ステスに近づくセブン。ステスは笑顔で話しかける。「やあ、私はステス。ヴォイジャーに助けられたんだ。」 「お前のことは何も聞いていない。ヴォイジャーのコンピューターにアクセスする権限はない。」 「君はセブンだね。」 「その通りだ。」 「トムに聞いたよ、優れた知能の持ち主だって。」 「そのことと、お前がこの部屋にいることは何の関連もない。」 「実は、船の修理にポラリックモジュレーターのファイルが必要なんだが、アクセス直前にトムが呼び出しを受けて、それで自分で探してたんだ。」 「お前は間違っている。独りでダウンロードは許されない。」 コミュニケーターを押そうとするセブン。 「ああ、これからトムと会うから。向こうで作業するよ。」 「ヴォイジャーの階級は複雑にできている。よく把握しておくことだ。」 「助言をどうも。気を付けよう。」 ステスは出て行った。コンソールを操作するセブン。
「艦長日誌、宇宙暦 51762.4。ステスの多重ドライブの修理が、予定よりかなり早く完了した。」
ステスの船。調整を行うパリス。「これで万全だと思うけど、もう一度フローフィールド・パラメーターをチェックさせてくれ。」 「どうぞ」というステス。 ドライブのチェックを終え、道具を片づけ始めるパリス。すると、あのレンチが置いてあることに気づいた。「俺のレンチだ。ずっと探していたのに。」 「うーん、勝手に持ち出して悪かったよ。でもどうしても実験に必要だったんだ。」 パリスに歩み寄るステス。 「新しい、キャブレターを試すのに?」 「うーん、違うなあ。君は初めての地球人だ。レンチについていた細胞質で、君の DNA を調べたんだ。いい知らせだ。」 パリスの腕と、首をつかむステス。「我々は互換性がある。」 目を閉じるステス。すると数秒で、ステスの体とパリスの体が入れ替わってしまった。その場に倒れる、ステスの体をもったパリス。パリスの体をもったステスは、パリスの声で言う。「これも君のためなんだよ。君はヴォイジャーの退屈な暮らしに飽き飽きしていただろう? だから私が変えてやったんだ。私ならまだ十分楽しめそうだ。ヴォイジャーは素晴らしい船だよ、トム。後は私に任せろ。」 パリスは銃を発射した。
パリスはブリッジに入った。「遅れて済みません。」 ジェインウェイ:「もう戻ってこないんじゃないかと思ったわ。」 ブリッジを見回すように歩くパリス。 キム:「ステスの船が離れていきます。」 スクリーンの船がワープに入り、消えた。それを見つめるパリス。 ジェインウェイ:「トム、どうかしたの?」 微笑むパリス。「いいえ、別に。」 操舵席につく。「もうステスに会えないとは、残念だな。」

※13: 原語では、整備工を意味する「油まみれのサル」 (Grease Monkey) と言っています。ホロデッキ・プログラム

※14: subatomic dilution

※15: carburetor


食堂のチャコティがパリスに話しかける。「一緒にいいかな?」 「もちろんです、副長。」 「チャコティでいいよ、トム。今日はやけに礼儀正しいな。君のエンジニアレポートについてだが、艦長はステスの技術をこのヴォイジャーで応用できないかと考えている。」 「ほんとですか。」 「シャトルで試してみてくれないか。君にできるか。」 「もちろんできます。」 「よし、では医療任務が終わり次第始めろ。」 「医療任務?」 「ドクターは助手が必要だ。君を行かせると言っておいた。」 「もちろんです。」 食堂を出ていくパリス
廊下で「こんばんは」とクルーに挨拶するパリス。「やあ」と返すクルー。その反応に満足するパリス。パッドを持ち、ドアの表示を確認しながら歩いている。ため息をつく。別方向からセブンが歩いてくるのに気づき、「おっと」といって来た道を引き返すパリス。壁にヴォイジャーの構造図があることに気づいた。操作し、詳細な地図を呼び出す。キムがやってきた。「ドクターが苦手で医療室の場所まで忘れちゃったなんて言うなよ。」 笑うパリス。「まさかそんな。俺はただ、自分の部屋から医療室への近道がほかにないか、探していたんだ。」 「そんなにドクターに会いたいのか。ところで、準備は進んでる?」 「ああ、まだだけど、もうすぐ準備できるよ。」 「よおし。何かあればいってくれよ。ポリデュリナイド※16をレプリケートするのは大変だ。」 「ああ、心配ないさ。」 「早くそのクラブを使ってみたいよ。カプラン少尉※17が驚くだろうなあ。」 「何?」 「彼女とゴルフ※18する話さ。この前日時を決めただろ。」 「ああ、そうだった。待ちきれないよ。」 「パットの練習してる? 今度はもう外すなよ。」 「あんなドジはもうしない。」 「それじゃ、ドクターによろしく。」 ターボリフトに乗るキム。 「ああ、わかった。」 パリスはつぶやいた。「彼に会えればな。」
パリスが医療室に入り、ドクターが話す。「これはこれは、ミスター・パリス。チャコティ副長への報告は効果てきめんだな。では挨拶抜きで早速仕事だ。今日はバイオベッド診断から始めようか。各フィジオセンサー※19を調整してくれ。代謝に関する情報を正確に入力したか確認してな。」 「OK。」 「それが済んだらプロテイン構造分析。そして引き続き、心肺組織改造※20の 37の方法をじっくり復習してくれたまえ。独りで大丈夫だな。」 トリコーダーを使おうとするパリスだが、異常な音を発する。 ドクター:「スキャンエミッターの使い方を忘れたのかね。」 パリス:「すいません。」 またもエラー音。 「ミスター・パリス!」 「お、俺、どうしちゃったのかな。」 「複雑なのはわかるが、もう一度試してくれ。」 「あ、何だか…ちょっと気分が悪くて。」 「ここが医療室で良かったな。すぐ調べてみよう。」 「あ、いやー、ドクター。大丈夫ですよ。実は正直言うと……イライラしているだけなんです。いつもはこんなトロくはないですからね。」 「ここは学習の場だ、パリス。そのうち徐々に慣れるさ。」 「おい、軽く言うなよ。」 「何だって?」 「ああ、すいませんドクター。ドクターは医学的天才としてプログラムされているから、何でも楽々。俺はただのパイロットで、カーマニアに過ぎない。ドクターの助手して一生懸命がんばるほど、あなたの足元にも及ばないって、実感するんですよ。」 「それじゃ君は、私の規範に従って行動していたというのか。」 「実はそうなんです。」 「それでわかったぞ。突発的攻撃性、責任回避の行動、全て典型的劣等感に起因している。私の高い知性が、これほど強く君の精神に影響を与えていたとはな。今日はもう休みたまえ。自分の能力について、実行し気づくんだ。君の価値に。」 「そうします、ドクター。ありがとう。」 肩に置かれたドクターの手を叩き、パリスは医療室を出ていった。
トレスは自室に戻った。そこではパリスがゴルフのパットの練習をしていた。「ああ、ベラナ。」 「ここで何してるの?」 「パットだ。」 「私の部屋で?」 「ここじゃまずいかい?」 「まずいわ。」 「いつから。」 「トム、これ何なの。」 「それは、サンド…ウェッジだ。それでバンカーから球を打ち上げる。 「なぜここにあるの?」 「君のためにレプリケートした。ディナーの前に一緒にプレイしようと思ってね。」 「これがあなたの言う、『大人の会話』ってやつ? いきなりこんなことして、私にはあなたの気持ちがさっぱりわからないわ。はっきり言っておくけど、こんなことしても無駄よ。ステスがいなくなって退屈なのはわかるけど、私はだまされない。ご機嫌とってこれまでのことをチャラにしようってたってだめよ。」 「ステスはなかなかいい奴だったよ。あいつが助言してくれなかったら、ここには来なかった。」 「あら、そう。」 「君ともめてると話したら、こう助言されたんだ。『相手と、じっくり話をすることだ。そのためにはまず、自分の非を認めることだ』って。心からね。ベラナ、俺が悪かったよ。許してくれ。」 パリスはトレスの手にキスし、言葉を続けた。「もう約束をすっぽかしたりしない。今日はね、君のために、ドクターに頼んで任務を外してもらったんだよ。たっぷり時間があるとはいえないけれど、ぜひ君と一緒に過ごしたいんだ。」 パリスはトレスに口付けをした。トレスは言う。「ステスって、なかなかいい人ね。いい影響を受けて良かった。」 再びキスに戻る 2人。
ステスの船。自動で操縦されている。船の揺れに、実際はパリスであるステスは目を覚ました。顔や手を確認する。「コンピューター。」 自分の声に驚くステス。「コ、コンピューター、現在位置は。」 『航行マトリックス、1-7-1-1。コトバ広域※21。多重リンク完了。』 「ヴォイジャーとの距離は。」 返答がない。ステスは席を立ち、パネルの前に行く。「コンピューター、ヴォイジャーを最後に確認した位置にロックイン。作動誘導ドライブを稼動。」 『指令を実行できません。』 「なぜだ。」 『作動誘導ドライブが、ロックされています。多重リンクを実行するには、セキュリティ・アクセスコードが必要です。』 船が揺れた。巨大な 2隻の船が取り囲む。通信が入った。『こちらはベンサン・ガード※22のアヴィック司令官※23。お前を収監する。直ちに船を明け渡す準備を。』 「ベンサン? 司令官、どういうことか説明して下さい。あなたは何か誤解して…」 『我々は泥棒とは交渉しない。』 再び船が揺れる。「何? ああ、そう言われても困ります。俺はこの船でヴォイジャーに戻らなければ。」 『おとなしく船を明け渡さなければ、攻撃するぞ。』 船はトラクタービームで拘束されていた。

※16: polyduranide
構造物質。TNG第105話 "Disaster" 「エンタープライズ・パニック」など

※17: Ensign Kaplan
VOY第59話 "Unity" 「ボーグ・キューブ」に登場した女性少尉とは当然別人です。彼女は殉死しました

※18: golf
ホロデッキ・プログラム

※19: physiosensor

※20: cardiopulmonary reconstruction

※21: Kotaba Expanse

※22: Benthan Guard

※23: Commander Avik
「アヴィック副長」と訳されていますが、この状況では明らかに「司令官」もしくは「中佐」でしょう。「チャコティ副長」と混同したものと思われます。声:北川勝博

別の巨大な船が現れ、ベンサン艦に攻撃をしかけ始めた。去って行くベンサン。そしてステスの前に、女性異星人※24が転送されて来た。銃を構えている。彼女の顔は、ステスが変化した時のものと同じだ。
"Why is everybody trying to shoot me today?"

「何で俺ばかり狙われるんだ」
というステス。 「自分の胸に聞いてみろ!」 「俺にはさっぱりわからないね。あんた誰だ。」 「ステスだよ!」 「何だと?」 「しらばっくれるな。私の体と入れ替わるまで、お前は 1年近くこの姿だった。その体は私のものだ。今すぐ返せ!」 「ちょっと待て、待ってくれ。俺たちお互い、協力できるかも。」
ヴォイジャーは惑星軌道上に入った。トレスは転送室に入った。「トム、急用って何? ヴォリックの EPS 調整を中断してきたんだけど。」 パリスは言う。「後悔はさせないさ。」 「それで、びっくりさせるニュースって?」 「喜んでくれるだろう? あの有名な、ケンドレン星系※25の、第4惑星で、ピクニックのプランを立てたんだ。」 「ニーリックスが食料サンプルを集めてるあの星?」 「うん。ちょっとスキャンしてみたら、ある小さな島に美しいビーチを見つけたんだ。ちゃんとピクニック用のランチもレプリケートした。ヴォイジャーの軌道は明日まで動かない。丸一日遊べるぞ。」 笑うトレス。「たった一日だけ? あーん、せめて一週間はのんびりしたいわあ。うーん。」 「俺もそうしたいが、一日が精一杯だなあ。」 「トム、あなた本気なの?」 「大真面目さ。」 「どんなトラブルになるかわかってる?」 「艦長なんて怖くないさ。何されるってんだ。」 「私は死ぬほど忙しいの。一日どころか、一時間だって無理。」 「ベラナ。」 「私には責任がある。あなたにもよ。」 「責任が何だよ! そんなものクソ食らえだ。」 「トム、どうしちゃったのよ。」 パリスはトレスの顔をつかんだ。「君には心底失望したよ。俺も馬鹿だ。君のどこに惚れていたんだろう。」 転送室を出て行くパリス
レプリケーターから飲み物を取り出すパリス。暗くなった食堂の席の上には、いろいろな飲み物や食べ物が置いてある。パッドを読むパリス。ドアが開き、セブンがやってきた。声をかけるパリス。「セブン、こんな時間に何の用だ。」 「今夜 9時にシャトルベイで会うはずだったのに来なかったな。忘れたのか?」 「しまった。本に没頭していて、約束のことをすっかり忘れていたよ。悪かったな。」 「眼球の毛細血管が膨張しているぞ。それに頬の異常な紅潮も認められる。酔っているのか。」 「いいや、まさか。俺はちょっとその、いろんな星の飲み物を試していただけさ。アルコールはほとんどない。」 「お前の勤務は、あと 78分残っている。」 「休憩時間さ。君も一緒にどうだい? トラキアン・ビール※26をもう一杯頼んでやろうか?」 「その必要はない。」 「ああ、固いこと言うなよ。君はもうボーグじゃないんだぞ。仕事は明日シャトルでやりゃあいい。」 「そんな非効率的なやり方はできない。私独りでやる。」 ため息をつくパリス。「ご勝手に。」 「それより、なぜ艦長の個人日誌を読んでいたのか教えてくれ。」 「……誤解だよ。」 「データパッドを見た。間違いなく艦長の日誌だった。」 「見間違いさ。君は、混乱してるんだ。君は何も見ていない。」 「私には視覚メモリーがある。見たものをメモリーに留めるのに 5秒とかからない。日誌の一節を読み上げるか?」 パリスは立ち上がり、セブンの腕をつかんだ。「いいか、これ以上俺に構うな。お前に関係ないことに口出しは無用だ。今度余計なこと言ったら、ひどいことになるから覚えとけ。」 「パリス中尉、私から手を離せ。」 「馬鹿はするなよ。きっと後悔するぞ。」 セブンは手を振り払い、食堂を後にした。再び酒を飲むパリス
ジェインウェイは作戦室で待っていた。ドアチャイムが鳴り、「どうぞ」という。中へ入るパリス。「艦長、ご用ですか。」 「……ええ。セブン・オブ・ナインから夕べのあなたの行動について気になる報告を受けたの。任務中に飲んでいたと。」 「彼女の誤解ですよ。」 「嘘はいいわ、トム。コンピューターを調べたの。あなたは食堂で、5種類のアルコールをレプリケートしてた。セブンはあなたに脅されたって。」 「すいません艦長。ベラナと喧嘩して、飲まずにいられなかったんです。」 「私の日誌を読んでいたのもそれが原因?」 「誤解ですよ。」 「セブンは私の日誌を一語一句復唱してくれたの。」 「彼女はきっと自分でファイルにアクセスしたんだ。艦長、俺よりボーグの言葉を信じるんですか。」 「トム、もうやめましょう。近頃のあなたはどうかしてる。あなたに問題があると報告を受けたのはセブンだけじゃないの。チャコティや、ドクターや、それから…みんなあなたを心配してる。もちろん私も。」 「いろいろすいません。休んだ方がいいな。部屋に戻ります。」 「トム。艦長と友人として、すぐ医療室で検査を受けることを勧めます。病気があなたの行動に影響を及ぼしてるかもしれない。」 「冗談じゃないぜ。検査なんてまっぴらご免だ。」 「これは命令です。」 パリスはジェインウェイに近づく。
ブリッジにジェインウェイの声が響いた。『セキュリティ、すぐ作戦室へ来てちょうだい!』 トゥヴォックは保安部員と共に急行する。中ではパリスがジェインウェイの首を絞めていた。トゥヴォックの撃ったフェイザーで、パリスは倒れる。 ジェインウェイに尋ねるトゥヴォック。「大丈夫ですか。」 「ええ。トムを医療室へ運んで、彼をしっかり見張っててちょうだい。」

※24: (本体の) 名前は Daelen (Mary Elizabeth McGlynn) 声:幸田直子

※25: Kendren System
また「星域」と吹き替え

※26: Trakian ale

異星人の船と並行して航行するステスの船。実際はステスである女性はいう。「あと数分で多重ドライブがオンラインになるぞ。」 そして実際はパリスであるステス。「よし、全てのロックアウト指令を無効にした。君には悪いが、はやくこの体から抜け出したいよ。」 「あの異星人は特定の相手に対して DNA 交換ができる。標的に遺伝物質を移動させながら、相手の DNA を吸収するんだ。その逆も、できると信じるしかない。」 「最後のロックアウト指令だ。多重ワープをセットした。早速ヴォイジャーを探そう。」 船は多重ワープに入った。
「艦長日誌、補足。ドクターによって、フェイザーの傷はすぐに手当てされたが、ミスター・パリスはまだ目覚めない。なぜ彼に襲われたのか未だに謎だ。」
医療室。ドクターが説明する。「神経回路スキャンでは収穫はなかったが、血液分析で非常に面白いことがわかりました。彼のヌクレオチド構造に、第2次 DNA パターンの痕跡が見つかった。恐らく遺伝ウィルスのせいでしょう。」 トゥヴォック:「最近のおかしな行動もそれが原因か。」 「それはわからん。もう少し検査を続ければ、神経回路機能への影響がはっきりします。」 チャコティの通信が入る。『艦長、宇宙船が多重スペースから、右舷前方に現れました。』 ジェインウェイ:「ドクター、また報告して。」
ブリッジに戻るジェインウェイたち。「呼びかけて。」 ステス:『ジェインウェイ艦長。』 「また会えたわね、ミスター・ステス。」 スクリーンにはステス女性が映し出されている。『信じてもらえないかもしれないが、俺はステスじゃない。トム・パリスです。』 「今何て言ったの?」 『そちらに、人の体を盗む異星人が侵入しています。奴と俺は入れ替わった。俺をヴォイジャーに、転送して下さい。』 「少し検討しますから、そのままの位置を維持して。通信終了。」 映像が船のものになる。ジェインウェイは命じる。 「彼をトラクタービームで拘束して。」 「了解。」 「トムの異常な行動に、ステスとあの異星人が関係してるわ。」 チャコティ:「艦長。」 「説明は後。医療室にいます。」
シャトルで独りで作業しているセブンのところへ、ジェインウェイがやって来た。ゆっくりと中へ入る。物音に気づいたセブンが「艦長」という。しかしジェインウェイはフェイザーでセブンを撃った。気を失うセブン。
ブリッジのキム。「シャトルが無許可で発進しようとしています。艦長だ。トムが使っていたシャトルですね。」 チャコティ:「呼びかけてくれ。」 「応答がありません。」 「ステスの船に呼びかけろ。」 ステスたちが映し出される。 チャコティ:「ステス、お前が何者か知らんが、一体何を企んでいる。」 ステス:『シャトルに乗ってるのは。』 「ジェインウェイ艦長。」 『大変だ。俺の体と入れ替わった異星人が、あーー、つまりトムが艦長と入れ替わったんだよ。今すぐトラクタービームを止めてくれ。俺が艦長を追いかける。チャコティ、トムだよ!』 「信用できるもんか。」 『この前あんたの部屋で、チャンスを台無しにするなと忠告された。俺の決意を見てて欲しい。シャトルを追わせてくれ。それぞれが自分の体を取り戻す方法は、ほかにない。』 「ハリー、トラクタービームを解除しろ。」 ステスはため息をついた。
シャトルを追う船。ステスは「あと 2万キロだなあ。もうすぐ追いつく」という。 女性:「もう気づかれたか。」 船が揺れた。「そのようだな。」
シャトルが船を攻撃している。操縦しているジェインウェイ。「ご両人、これ以上私を追跡しない方がお前たちのためよ。私を殺せば永遠に元の体に戻れない。」
女性:「もっともだ。奴が死んだら大変だ。」 ステス:「でもこのままじゃ俺たちがやられる。」 大きく船が揺れた。ステス:「クソ、操縦しにくいなあ。シャトルとは大違いだ。」 女性:「シールド、ダウン。」 ジェインウェイの声が響く。『お前がそれほどヴォイジャーに戻りたがっているとは驚きだね、トム。私はもうお前の人生にうんざりした。』 ステス:「じゃあ交換は失敗だったな。」 「新しい体を探すわ。あ、トム、君のベラナによろしく伝えてちょうだいね。」 無気味に笑うジェインウェイ女性:「多重ドライブを使うつもりだ。」 ステス:「センサーをセットして追跡だ。」 「だめだ、ブロックされている。多重ワープに入ったら最後、奴の追跡は不可能だ!」
シャトルはエネルギーを充填していく。女性:「消えて行く。」 ステスは思い出した。「キャブレターだ! 修理の時多重ドライブにポラリックモジュレーターを付けた。よおし、あのモジュレーターを狙ってクロモ電子パルス※27で撃てば、奴のエンジンを止められる。いくぞ。」 パルスが発射され、消えかかっていたシャトルの船体は姿を完全に現した。ジェインウェイステスの声が届く。『俺のレンチは、まだあるかな? あれがないと欠陥キャブレターを直すのは大変だ。』 あきらめるジェインウェイ
「艦長日誌、宇宙暦 51775.2。異星人の侵入者が私の体の中にいる間に、ドクターはトムとステス、それと私をそれぞれの体に戻す方法を見つけた。」
礼を言うステス。「ドクター、あなたは私の恩人です。やっと自分に戻れました。」 ドクター:「楽な作業だった。」 「もう一生、元には戻れないと覚悟してました。」 パリス:「俺も、ただトム・パリスに戻れたことが嬉しいよ。」 ジェインウェイ:「これからどうするの?」 ステス:「彼女をベンサンに連れ帰ります。体の元の持ち主が見つかるといいんですが。」 ドクター:「それでことが片付くかな。これまで彼女が何回、体を入れ替わっているのかわからないんだぞ。」 「時間はかかるでしょうけど、必ず全員を見つけ出しますよ。入れ替わった人物、一人残らず。」 ジェインウェイ:「船までセキュリティ・チームに護送させましょう。それからフォースフィールドで拘束すればいいわ。」 ステスと女性は保安部員と共に出て行った。
ガレージの扉を開けるパリス。綺麗に磨かれた自動車。トレスは聞く。「こんな所に隠れてたの? ガレージに?」 「ただのガレージじゃないぜ。この車は、言わば記念碑だよ。これまで何時間も、君と過ごしていたかもしれない。」 「かもしれない?」 「そうだよ。」 「トム、素敵なガレージだとは思うけど、どうして私をここに連れて来たのかしら?」 「ああ、車を見せたのは象徴的な意味で、どうしても君に伝えたかったんだよ、俺の思いを。」 「なるほど、はっきり言うと、この車と同じくらい私も大事ってこと? 『カマロ』と。」 車体の綴りを読むトレス。 「これは新車同様のピカピカの 1969年型。『カマーロ』だ。でも俺には、君の方が大切だよ。」 車に乗った 2人は、口付けを始めた。ラジオの音楽が鳴り響く。

※27: chromoelectric pulse

・感想
ネタバレ邦題でおわかりのように、人体を乗っ取る異星人が登場。よくあるプロットですが、何度も入れ替わったきているのがミソですね。普通のエピソードながらもパリスが久々に活躍するのでよかったです (そもそも最近、レギュラー一人にスポットを当てて描くエピソードが少ないんですが)。エピソードガイド中、色を変えているのは「外見はその人でも中身は別人」という意味です。


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