ヴォイジャー エピソードガイド
第89話「戦慄! オメガ破壊指令」
The Omega Directive
イントロダクション
第2貨物室。アルコーヴの一つで眠っているセブン・オブ・ナイン。機械音の後に明かりが点き、コンピューターの音声が流れる。『午前6時、再生サイクル完了。』
セブンはアルコーヴから出て、コミュニケーターを押した。「私的記録、セブン・オブ・ナイン。宇宙暦 15781.2※1。今日はキム少尉と共に船尾センサーアレイの総合的な点検を行う。作業時間は 3時間20分を予定。更に少尉が無関係な会話に割くであろう時間を 17分追加。15時に栄養物を摂取、その後 1時間、心機能および循環機能を高める運動をする。その後はドクター推薦の図書、『クリスマス・キャロル※2』を読む予定。ドクターは教育効果があると言っていた。記録終了。」 食堂で、キムはトゥヴォックとパズルゲームの対戦をしていた。次のピースをどこに置くかを考えているキム。「勝つぞぉ、ヒントは出すなよ。」 「私はそんなつもりは全くない。」 セブンがやって来た。「少尉。」 キム:「やあ、セブン。」 「センサーの点検を始められるか?」 「もう朝の 6時? 徹夜しちゃったよ。」 「ヴァルカンのカル・トー※3か。」 「論理のゲームなんだ。ついつい夢中になっちゃうんだ。悪いけど 2、3分待っててくれる。」 トゥヴォック:「勤務時間だ。行った方がいい。掛け金をもらおう。」 笑うキム。「冗談。初めて君に勝てそうなチャンスなんだぞ。ここで引けるかって。」 キムは考え続けている。セブンは待てずに、キムのピースを取り、カル・トーに置いた。するとパズルの形が変わり、調和された形状になった。トゥヴォック:「見事だな。」 セブン:「初歩の空間調和学だ。点検に行けるか?」 キム:「ああ。行くよ。」 歩いて行くセブン。キムはトゥヴォックに言った。「僕だってできた。」 廊下を歩きながら、キムはセブンに尋ねる。「君に不可能はないのか。」 「私はボーグだった。」 「『ボーグだった』。いつもそういうけど、どういうこと。一番種族の知識が詰まってるわけ?」 「そうではない。各ドローンの経験は集合体が一括して処理する。有益な情報のみが残される。」 「でも人間の中じゃ一番頭がいいんだろうなあ。」 「恐らくな。」 「僕らなんか必要ないねえ。」 笑うキムだが、セブンは無表情のまま。キムは「今のは忘れて」と言った。突然、船が揺れる。キム:「何だろう。」 ブリッジのパリス。「ワープが解除されました。」 チャコティ:「どういうことだ。」 「何かの衝撃波を受けたようです。」 「出所は。」 「調べます。」 モニターの表示が消えた。パリス:「だめだ。センサーが全部ダウンしました。」 続いて、画面に大きく「Ω (オメガ)」の表示が現われた。 パリス:「コンピューターに何かメッセージが出てますけど、アクセスできません。見て下さい。」 手元のコンピューターを確認するチャコティ。「ああ、見てる。」 「何です、これ。」 「わからない。私もアクセスできない。副長の承認コードでもアクセスできないメッセージか。これでは動きがとれない。ハリーを呼んで原因を調べさせよう。」 ターボリフトからジェインウェイが降りた。「何もしないで。私が処理する。」 ジェインウェイがコンソールで操作すると、オメガの表示は消えた。指示するジェインウェイ。 「今の素粒子波のデータを作戦室へ送って。トム、エンジン停止。船を停泊させて。」 チャコティ:「艦長、何なんです。」 「今は説明できない。ほかのクルーには他言しないように。詳しくは追って指示します。」 作戦室へ入るジェインウェイ。 |
※1: 本当はもちろん「51781.2」ですが、原語でも間違えています。まだ艦隊に慣れてないことを示したかったのか、セブンにも「寝ぼけ」があるということでしょうか… ※2: A Christmas Carol チャールズ・ディケンズ作、1843年出版。TNG第87話 "Devil's Due" 「悪魔の契約」でも言及。1999年には本国の TV映画でパトリック・スチュワート [TNG ピカード] 主演のものが放送されました ※3: kal-toh ヴァルカンの論理と調和のゲーム。VOY第56話 "Alter Ego" 「ホログラムの反乱」より |
本編
作戦室へ入るなり、すぐに命令するジェインウェイ。「コンピューター、ドアを全て封鎖。許可なしには誰も入れないで。」
『ドアを封鎖しました。』
椅子に座り、手元のコンソールを操作する。再び現われるオメガの文字。「機密データファイル、オメガ 1 にアクセスして。」
『声紋照合。承認コードを述べて下さい。』
「ジェインウェイ-1-1-5-3-レッド、承認レベル10※4。」
『確認。この船舶から 1.2光年以内の地点に、センサーがオメガ現象を感知しました。ただちにオメガ指令※5を実行せよ。ほかのあらゆる任務に優先させること。』 地図が現われる。
「センサーのデータを。」 機関室。チャコティが指示している。 「最高機密として扱えと指示が届いた。情報は作業ごとに必要な分だけ与える。艦長の命令だ。」 トレス:「最高機密? 指示ってどこから? 艦隊は 6万光年の彼方よ。」 「それも教えられない。ベラナ、ワープコアの周囲にマルチフェイズ・シールドを張れとのことだ。」 「こんな構造のシールド、見たことない。乱れが出ないかどうか、コンピューターでシミュレーションしてみるわ。」 「時間がない。11時までに設置するんだ。」 「11時? そんなの無理よ。」 「何とかするんだ。」 セブン:「亜空間放射能から、ワープコアを守るためのシールドか?」 「私も知らされてない。」 「情報がなければ、作業の完了は困難だ。」 「今ある情報でやれ。トム、シャトルを 1機設定変更して、熱への耐性を強化してくれ。最低 1万2千度までだ。」 パリス:「了解。」 トレス:「もしかしてこれ、全部艦長が受けた極秘メッセージとの関係なの?」 チャコティ:「何を聞いた。」 「噂になってるわ。艦長は 16時間作戦室にこもりっぱなしだとか、あとは確か、オメガ指令とか。」 セブン:「オメガ?」 パリス:「知ってるのか。」 チャコティ:「いいか、それ以上は詮索するな。噂話をする暇があったら早く作業にかかれ。わかったか。気になるのはわかる、正直言えば私もだ。だが艦長の命令は絶対だ。始めてくれ。」 取りかかるトレスとパリス。チャコティはセブンに言う。 「艦長がお呼びだ。」 「そうだろうと思った。」 作戦室にはたくさんのパッドが並べられている。そのうちの一つを読んでいるジェインウェイ。ドアチャイムが鳴った。「入って。」 セブンが中へ入り、ジェインウェイは単刀直入に尋ねた。「オメガ指令のどこまで知ってるの?」 「恐らくはほとんど全てだ。」 「だと思ったわ。ボーグは艦隊の艦長を何人も同化した。彼らの知識は全て入ってるのね。」 「その通りだ。指令を執行するつもりなのか。」 「ええ。」 「では例の分子を探知したのだな。」 「そのようだけど。私たちで確認しないと。」 「『たち』?」 「指令の遂行を手伝ってもらう。規則ではこの件についてはクルーに漏らせないことになってるけど、あなたはもう知ってるんだから。協力してもらうか、もしくは…隔離するしかないの。」 「では後者にしてもらおう。オメガを破壊する手助けはしない。利用すべき物質だ。」 「それは不可能よ。」 「ボーグはそう思わない。」 「どういうこと?」 「ある時、オメガ分子※6を一つ作ることに成功した。安定していたのは 1兆分の1ナノセカンドで、その後崩壊した。続けるには、原料となるボロナイト※7が足りなかった。だがその一瞬の成果で、多くの知識を得られた。」 「ボーグはもう一度実験するチャンスを待ってるわけね。」 「ああ、だがボロナイトが手に入らない。未だにな。」 「残念ね。でもオメガの実験を見つけ次第、阻止するのが私の務めなの。でないとこの宇宙域全体が危機にさらされる。」 「その命令は宇宙艦隊の無知と恐怖心によるものだ。無知は私が正そう。恐怖心については…」 「セブン、 Sometimes fear should be respected.その実験の時、何人のボーグが犠牲になったの?」 「ドローンが 60万人死んだが、そんなことは問題ではない。」 「大問題よ、私のクルーには。この宇宙域にとってもね。あなたが手伝わないといっても、オメガを破壊する。」 「では手伝おう。」 「いいの?」 「オメガ分子を直接観察したいと、ずっと思っていた。その貴重な機会を逃したくはない。」 「いいでしょう。貨物室へ戻りなさい。オメガに関するデータを全て集めて、1時間以内に報告して。」 出て行こうとするセブンにジェインウェイは言った。 「あなたがそんなに知的好奇心が強いとは知らなかった。」 「好奇心ではない。渇望だ。」 「渇望?」 「オメガは極めて複雑だが、見事に調和している。存在自体が完璧なのだ。ボーグにとっての、理想だ。」 「ボーグの聖杯ね。」 「何?」 「何でもないわ。じゃ 1時間後に。」 退室するセブン。ジェインウェイは椅子に座り、ため息をついた。 |
※4: 保安アクセスコード security access code "Janeway 1-1-5-3-red: clearance level 10" ※5: Omega Directive 原題 ※6: Omega molecule ※7: boronite VOY第64話 "Real Life" 「ドクターの家庭」でも言及 |
ジェインウェイに尋ねるドクター。「アリスラジン※8を、どうして。」
「シャトルミッションに出るの。」
「超新星の中を散歩でもするんですか?」
「そんなところね。20ミリグラム、いつ用意できる?」
「アリスラジンは、シータ波の最も重い放射能※9汚染に使う物です。接種には医者が立ち会いませんとねえ。」
「それは無理ね。」
「では処方いたしかねます。艦隊の医療規則に違反はできません。」
「私の権限で許可します。」
「あれですか、オメガ指令とやら。何だかわかりませんが。」
「アリスラジンを用意して。」
「……それでは朝には。」
「シャトルへ届けて。」
医療室を出ようとするジェインウェイに、ドクターは言った。
「艦長、どんな任務か知りませんが、これがお会いする最後なんて嫌ですよ。気を付けて。」
ジェインウェイは微笑んだ。「そうするわ。」 貨物室でジェインウェイと共に作業しているセブン。「センサーの記録を、ボーグのアルゴリズムで分析した。衝撃波として感知したのは、おそらく数百にも上るオメガ分子だ。」 「所在地は?」 「10光年以内だ。今のところ、どの星系か特定できていない。」 モニターに丸い形状をした分子が映し出されている。 「数百のオメガ。恐ろしい。」 「シャトルで行っても解決できないぞ。この船の全クルーで対処するしかない。」 「それでも攻撃力が足りない。防衛力も。データを天体測定ラボに移して。向こうで分析する。」 キムと魚雷の作業を行っているトゥヴォック。「口径測定完了。フェイズモジュレーターを。起爆回路は?」 「スタンバイしてます。」 「よし、重力弾装填だ。」 部品を渡すキム。「アイソトン爆弾 50発分にもなる。」 「正確には 54発だ。」 ため息をつくキム。「小さい星でも一つ吹き飛ばすのかな。」 「知らないな。」 「こんな爆弾普通じゃない。艦長の指示なのか。」 ドアが開き、ジェインウェイが科学ラボに入る。「キム少尉、質問が多すぎるわ。計画変更よ。アイソトン爆弾 80発分にして。」 トゥヴォック:「了解しました。」 「ハリー、済んだらシャトル格納庫のベラナを手伝って。外壁を強化してるの。」 キム:「はい。」 指示を与えると、ジェインウェイは出て行った。話を続けるキム。「生命体8472 って噂もある。」 「何だって?」 「この任務だよ。流体空間に穴があって、艦長がそれを閉じようとしてるって。僕の読みを聞きたい?」 「いや。」 「艦長はタイプ6 の恒星の原型※10を発見した。だからそれを破壊して、アルファ宇宙域へのワームホールを開けるんだ。理論的には可能だ。まだあまり期待はもてないから、誰にも言わないんじゃない?」 「なら君も、期待し過ぎないことだ。」 「トゥヴォックはどう思う?」 「私は下らない推測などしない。」 「とぼけるなよ。君だって知りたいだろ。」 「ああ、だが成すべき仕事がある。フェイズモジュレーターを。」 渡すキム。 天体測定ラボ。独りで作業しているジェインウェイ。チャイムが鳴る。「入って。」 チャコティがやってきた。 「報告して」というジェインウェイ。 「全て予定通りです。」 「そう。オメガ指令で詳しくは話せないけど、後の指示はしておく。明朝 6時に、私はセブンとシャトルで出発します。」 「どこへ行くか伺えますか。」 「これだけは言える。起こりうるのは二つに一つ。私とセブンが任務を果たして、2、3日で戻って来るか、長距離センサーが亜空間の大爆発を感知することになるか。もしそうなったら、10秒以内にワープして一目散にここから逃げて。決して振り返らず、アルファ宇宙域を目指すこと。」 「艦隊は官僚主義で上からの命令は絶対でしょうが、いくらなんでも艦長に自殺的な任務を命じるとは思えない。シャトルミッションは艦長御自身の考えですね。」 「指令を果たすために、この状況では、それしかないの。とにかくさっきの命令に従って。」 「それは無茶です。友人でもある艦長を、ただ見殺しにはできない。せめて理由を言って下さい。」 「信頼するあなたに、できることなら話したい。力ずくで情報を引き出そうとした連中も、これまで大勢いたけど、オメガのことは絶対に外部には漏らせないの。」 「それは理解できますが、時にあなたは頑固すぎる。クルーを守ろうという気持ちはわかる。ですが今回は行き過ぎです。危険なミッションに行かなきゃならないのは仕方ない。でも全員でサポートした方が成功の確率も上がるんじゃないですか?」 「普段なら賛成するわ。でもこの指令は何年も前に出されてる。こんな状況は想定されてなかった。援軍もなく、デルタ宇宙域にいるなんて。でも従わざるを得ない。とはいえ、 I won't ask the crew to risk their lives because of my obligation."機密情報を伝えるのは上級士官に限定しましょう。漏洩防止にはあらゆる手を尽くします。独りでやらないで下さい。」 ジェインウェイは考えた後、言った。「士官を招集して。」 会議室で上級士官に説明を行うジェインウェイ。「ここがアルファ宇宙域なら、あなたたちにも話せないわ。私は艦隊にこの事態を報告し、特別部隊が送られてくるのを待つでしょう。それができないこの状況では、私が受けた訓練と、セブンの知識とで対処するしかありません。」 ジェインウェイはコンピューターを操作し、モニターに「Ω」が現われる。 「このマークは見たわね。『オメガ』よ。ギリシャ文字最後の一文字。連邦だけでなく、銀河全体に対する脅威を指す場合に使われるコードよ。どういう事態かは、艦隊の各艦長と、准将以上の将官だけに知らされてるの。一言たりともこの部屋の外に漏らさないこと。いいわね。」 うなずくクルー。 「それじゃ。」 ジェインウェイはモニターのそばにより、分子構造を映した。 「これがオメガよ。」 パリス:「分子ですか?」 「ただの分子じゃない。現状で最も強力なエネルギー源よ。たった一つのオメガ分子に、ワープコアと同じだけのパワーがあるの。理論的には、これ数個で一つの文明を支えられる。ケタラクト※11という艦隊の物理学者が、100年以上前、初めてこの分子を合成した。多分目的は、無限のエネルギー開発。」 セブン:「または武器。」 「ケタラクトはたった一つのオメガ分子を合成したけど、でも何分の一秒かの後には、もう崩壊していた。」 半壊した宇宙基地の映像が映し出される。 「これは、ランタール星域※12にあった極秘研究センターよ。事故が起こって、ケタラクトと連邦の精鋭科学者 126名が死亡したわ。救助隊がセンターに近づこうとして、誰も予想だにしなかった二次災害に気づいた。何光年にも渡って、亜空間に断裂※13があったの。」 パリス:「ランタール星域ですか? あそこでは安定したワープフィールドが作れなくて、亜光速でしか飛べないとしか聞いてたけど、自然現象だと説明されました。それを、たった一つの分子が引き起こしたっていうんですか。」 「オメガは亜空間を壊すのよ。数十個の分子が連鎖反応を起こせば、一つの宇宙域全体で亜空間が破壊し尽くされてしまう。そうなったら、ワープ航行は不可能になる。今のように宇宙を旅する文明は存在し得なくなるのよ。それを知った時、艦隊はオメガに関する全ての情報を封印したの。」 ドクター:「オメガがあるんですか、このデルタ宇宙域に。」 「そのようね。オメガを見つけ次第、直ちに破壊するよう指令を受けています。トム、分子の所在地は割り出してあるわ。操舵席に座標を送ります。通常エンジン全開よ。」 パリス:「はい、艦長。」 「リスクは言うまでもないわね。もしも大規模なオメガの爆発が起きれば、ワープできなくなり、地球へは帰れない。絶対に失敗はできないの。」 席を立つクルー。 |
※8: arithrazine ※9: theta radiation 有害なエネルギー。映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」でも言及 ※10: 原始星 protostar 恒星の初期の発達段階。TNG第176話 "Preemptive Strike" 「惑星連邦“ゲリラ部隊”」など。「惑星の原型」と誤訳。また、「タイプ6」は訳出されていません ※11: ケタラクト博士 Dr. Ketteract ※12: Lantaru Sector ※13: subspace rupture 亜空間現象 (subspace phenomena) の一つ |
「艦長日誌、補足。暗号で記入。オメガがあると思われる恒星系に向かっている。任務の重みを、今改めて感じている。原爆の開発を進言したアインシュタイン※14に、ジェネシス装置を開発したマーカス※15。彼らは成す術もなく、悲劇を見つめたのだろう。私にはそれを阻止するチャンスがある。手遅れでないことを祈る。」 廊下を歩いていたジェインウェイは、貨物室に入った。セブンに尋ねる。「現状報告を。」 「これは調和共鳴チェンバー※16だ。ボーグがオメガを貯蔵するため設計した。」 「光子魚雷を改良してくれといったんだけど。」 「光子魚雷では恐らく効かない。このチェンバーに少し修正を加えてやれば、オメガを安定させ、貯蔵することができる。」 ため息をつくジェインウェイ。「ボーグには脱帽ね。素晴らしいわ、セブン。必要になるかも。」 「だが修正には複雑な計算が必要だ。手伝ってくれ。」 「わかったわ。ボーグは、いつオメガのことを知ったの?」 「229年前だ。」 「同化で?」 「ああ。13の異なる種族からな。」 「13?」 「生命体262※17 が最初だ。原始的な種族だったが、空を燃やす物質があるという神話があった。ボーグは興味をもち、生命体263※18 も同化した。彼らも原始的で、オメガを創造主の血だと信じていた。」 「面白いわね。」 「ああ、だが無意味だ。この神話を何年も追い続け、ついに有効な科学的データをもった種族を同化した。そしてオメガを作ったのだ。」 「連邦では、オメガで大論争が起きたの。宇宙論者の仮説はこうよ。ビッグバン※19の発生の瞬間に、オメガは宇宙誕生の無限時間の中に、存在していたんだろうっていうの。宇宙を生み出したその大爆発のエネルギー源は、オメガだったんじゃないかって。」 「他の種族の神話と同じだ。」 「かもね。ボーグはどう見てるの? オメガは理想だって?」 「ああ。」 「それは科学? それとも信仰?」 セブンが答える前に、チャコティの通信が入った。 『ブリッジより艦長。』 ジェインウェイ:「何?」 『間もなく目標地点です。』 「すぐ行くわ。チェンバーの件はあなたに任せる。必要な資材・人材全て使って。」 セブン:「わかった。」 ブリッジに戻るジェインウェイ。チャコティが報告する。「惑星系に入りました。」 「生命体は?」 「外縁部の星に、ワープ未発達の文明が。オメガの所在地は、中心部です。」 パリス:「この区域の亜空間は、壊滅的ですね。ワープ航行できません。」 船が揺れた。トゥヴォック:「空間のひずみが発生。」 ジェインウェイ:「場所はどこ?」 「Mクラスの衛星。目視領域です。」 「スクリーンへ。」 衛星が映し出された。一部の大気が青く変色している。 トゥヴォック:「大気上層部にサブニュークレオニック核反応あり。衛星地表の構造物から発生されています。」 ジェインウェイ:「センサーで地表を見られる?」 キム:「スタンバイ。」 中央の建物から青い光が出ており、放射状に破壊されている様子が映し出される。 ジェインウェイ:「これは…。」 キム:「30万平方キロに渡って、破壊されています。」 「建物をスキャン。オメガ分子は一つでも残存してるの?」 トゥヴォック:「不明です。いくつかのセクションには、シールドが張られています。」 キム:「生命反応あり。」 チャコティ:「何名だ?」 「2、30名。正確にはわかりません。」 ジェインウェイ:「地表に転送降下できる?」 「できますけど、下の放射能レベルは、かなり高いですよ。」 「トゥヴォック、レスキュー班を編成し、医療室でアリスラジンの注射を受けさせて。それに負傷者収容の準備を。トム、ヴォイジャーを軌道に乗せたら、あなたも来て。衛生兵が必要よ。」 パリス:「了解。」 チャコティ:「艦長も一緒に?」 ジェインウェイ:「オメガがまだあるか突き止めなきゃ。通信は常につないでおく。ブリッジをお願い。」 破壊し尽くされた基地の中。何人もの異星人が倒れている。医療・保安部員がすぐに駆け寄る。トリコーダーを使うジェインウェイ。「オメガの共鳴周波数を感知。あるわね。でも場所を特定できない。」 ジェインウェイは倒れている異星人※20に話しかけた。 「あなたたちが進めていた、実験について聞きたいの。」 「事故が…あったんだ。制御不能になった。」 「あなたたちが作っていたものは、爆発の後も残ったの?」 「ああ。」 「どこ?」 異星人は指差した。「第1テストチェンバーだ。あなたは。」 「ヴォイジャーの艦長、ジェインウェイよ。助けに来たの。」 通信を行うジェインウェイ。 「上陸班よりヴォイジャー。医療室へ 2名転送。」 『了解。』 転送されていく負傷者。トゥヴォックはチェンバーを調べる。「扉はデュリタニウムですね。厚さ 13センチある。」 ジェインウェイ:「開けられる?」 「熱で溶けて、枠に密着しています。フェイザーで切断するしかないでしょう。」 「やって。」 「艦長、お言葉ですがそれでは、艦隊の誓い※21を破ることになります。」 「このミッションの間は艦隊の誓いは無効よ。早くドアを焼き切って。」 貨物室に入る男性士官。中では多くのクルーが調和共鳴チェンバーの作業をしている。セブンは士官に命じる。「デル※22乗組員、もっとお前の能力に合った仕事を任せる。観測ポートのイオン圧力封鎖の目盛りを設定してくれ。お前の名はスリー・オブ・テンだ。」 「了解。」 キムもそこで働いている。ニーリックスがチップを持ってやって来た。「ハリー、アイソリニアプロセッサーの追加を持って来たぞ。」 「ありがとう。でもその前にパワーリレーをつながないと。」 「やめといた方がいいぞ。そりゃワイルドマン少尉の割り当てだ。」 「馬鹿馬鹿しい。セブンはここでボーグ集合体の真似事をして、いい気分だろうけどね。」 「効率がいいらしいからな。」 「相手がドローンならね。」 セブンがキムに近づく。「シックス・オブ・テン、何をしている。」 「頼むよ、名前で呼んでくれ。」 「これでは生産性が損なわれる。」 従おうとしないキム。セブンはキムの作業に割り込んだ。「ここではなく、チェンバーのメンテナンスをしろ。お前はツー・オブ・テンにする。」 笑うキム。「待てよ。それ降格なのか。いつからボーグの階級制になった。」 「艦隊の規則を適用した。降格は適正だ。」 「やな上官だね。」 続いてチャコティが貨物室に入り、セブンに尋ねる。 「進んでるか。」 「適材適所にすれば効率よく進む。共鳴チェンバーは 1時間で完成だ。」 「よし、艦長に知らせる。」 「地表で何か新たなデータを得たのか?」 「まだだ。今第1テストチェンバーの扉を開けている。」 「生存者はいたのか。」 「数人な。今ドクターが治療中だ。」 キムは出ていこうとするチャコティを呼び止めた。 「副長。セブンは僕らにボーグのやり方を押し付けています。作業を細分化し、クルーに番号を付け、そのうち再生させられそうですよ。」 「自分をボーグと思って、慣れろ。」 医療室で異星人の治療を行うドクター。セブンが入り、ドクターに尋ねる。「上級研究員はどっちだ。」 「あの人だよ。どうしてだ。」 「必要な知識を聞き出す。」 「意識がもうろうとしてる。1時間後に来て。」 「承服できない。」 「承服してもらう。ここで彼は休養が必要だ。」 「私は艦長から権限を委譲されている。情報の収集を怠っては、職務怠慢になる。」 立ちふさがるドクター。セブンも引こうとはしない。あきらめるドクター。 「次の人付き合い講座は、これでいこう。『交渉を行う際の外交的センス』だ。」 異星人に尋ねる。 「気分はいかがです。」 「いい、前よりは。」 「話はできますか。彼女が聞きたいことがあると。」 うなずく異星人。「手短にな」とドクターはいい、離れた。質問を始めるセブン。「いくつのオメガ分子を合成したのだ。」 「2億ほどだ。定かじゃない。」 「抑制フィールドのアイソ周波数はいくつだ?」 「1.68テラヘルツ※23。分子の共鳴波からこの値を計算した。」 「ならば安定させられたはずだ。」 「だができなかった。」 「そのようだな。だがその手法は革新的だ。お前たちの技術を更に改良して使おう。私を手伝え。」 身を起こす異星人。「設備がすべてだめになった。オメガをこの船へ、転送することができれば、保存できるかもしれない。」 「オメガを保存するつもりはない。」 「何?」 「オメガを破壊するのが私の任務だ。」 「あれは私の種族を救う最後の希望なんだ。」 「手伝えないというのか?」 「我々の星の資源は尽きた。この実験に未来がかかってるんだ。」 「手伝う気はないのか。」 「ちっぽけな連中め。理解できない物は破壊するのか! じき仲間の救助が来る。破壊などさせないからな。」 ドクターが言う。「落ち着いて下さい。セブン、そこまでだ。」 異星人はセブンの腕をつかんだ。「破壊なんて間違いだ。どんなに重要な物か、わかっていない。」 「そんなことはない。十分にわかっている。」 セブンは医療室を出て行った。 |
※14: アルバート・アインシュタイン Albert Einstein 理論物理学者。TNG第93話 "The Nth Degree" 「謎の頭脳改革」などにホロキャラクターとして登場 ※15: キャロル・マーカス博士 Dr. Carol Marcus ジェネシス装置の開発を率いた、著名な 23世紀の科学者。ジェイムズ・T・カークとの間に、息子のデイヴィッドをもうけました。映画 ST2 "The Wrath of Khan" 「カーンの逆襲」より ※16: harmonic resonance chamber ※17: Species 262 ※18: Species 263 ※19: Big Bang 宇宙の起源に起こった爆発。VOY第34話 "Death Wish" 「Q1, Q2」で訪れました ※20: 名前は Allos (Jeff Austin DS9第72話 "The Adversary" 「恐るべき可変種の脅威」のボリアン役) 種族名不明。声:長克己 ※21: 基本指令 Prime Directive 他文明への干渉を禁じる、宇宙艦隊一般命令第1条。TOS第49話 "A Piece of the Action" 「宇宙犯罪シンジケート」など ※22: Dell ※23: terahertz 1秒あたり 1兆周期 |
衛星地表。部下と共にフェイザーを使っているトゥヴォック。音がし、フェイザーを撃つのをやめる。「ロック機構を破壊しました。」
ジェインウェイ:「フェイザーで中の封鎖も破って。」
「危険です。抑制フィールドを破壊するかもしれない。」
「なら後は手動ね。手を貸して。」
ロックを開け、2人でドアを開ける。「行くわよ。」 青い光が放たれる内部が現われた。
トリコーダーを使うジェインウェイ。「これで、この宇宙域半分の亜空間を破壊できる。」
トゥヴォック:「クルーとヴォイジャーへ引き上げましょう。そして重力弾でここを攻撃するのです。」
「あれじゃ無理ね。ボーグのオプションを使うしかない。少尉。」
「はい、艦長。」
「船へ戻って、副長に早く調和共鳴チェンバーを完成させるよういって。」
少尉はうなずき、立ち去った。
ジェインウェイ:「オメガをヴォイジャーへ転送するのよ。それでこのテストチェンバーを閉鎖できる。」
トゥヴォック:「残念ですね。もっと詳しく、この物質を研究できれば。最後のチャンスかもしれない。」
「その方がいいのよ。」
「珍しいですね。科学を愛する方が。」
「科学を愛しても引き際は心得てるの。トリコーダーを見てご覧なさい。」
取り出すトゥヴォック。ジェインウェイは言った。「オメガは危険過ぎる。I won't risk half the quadrant to satisfy our curiosity. It's arrogant, and it's irresponsible. The 'final frontier' has some boundaries that shouldn't be crossed....これがそうだわ。」 セブンはチャコティに話している。「オメガを破壊する必要はない。安定させる方法を見つけた。医療室のエイリアンは、オメガの共鳴波を使って抑制フィールドを作った。ボーグは知らない手法だ。チェンバーを改良して…」 「命令とは違うな。艦長はオメガを破壊しろと言った。」 「それもオプションの一つだ。このまま艦長が恐怖に屈するならな。」 「説明してくれ。」 「これはオメガの自然な状態のシミュレーションで、非常に不安定だ。そこでチェンバー内に共鳴波形を照射して、オメガの振動を抑える。」 モニターに分子が集まる様子が映し出される。 「見事だな、理論上は。だがただのシミュレーションだ。どうやってテストする。」 「オメガでやる。」 笑うチャコティ。「それはまずい。一つ間違えば、二度目のテストはもうないんだぞ。」 「必ず成功する。」 「将来的にはな。研究は構わない。だが今は計画通りだ。命令通りオメガをこの中へ転送し、中和する準備をしろ。」 「私は 9ヵ月、この船のクルーとして過ごし、一度も個人的な頼みはしたことがない。今それをしよう。続けさせてくれ。頼む。」 「どうしてそうこだわる。」 ため息をつくセブン。「分子 010※25。ボーグがオメガにつけた名称だ。ドローン全員が知っている。あらゆる手を尽くし、同化するよう教育された。オメガは、完璧だ。全く欠点のない存在で、無数の分子が一つになる。」 「ボーグのように?」 「その通りだ。私はもうボーグではないが、この完璧性を理解したいんだ。そうして、初めて私は満たされる。……副長は精神を重んじるな。」 「ああ、そうだ。」 「お前の信じる偉大なる精霊を見るチャンスがあったとしたら、お前ならどうする。」 「どこまでも、追い続ける。」 「ならばわかるはずだ。」 「ああ、わかる。君の意見を艦長に伝えよう。それまでは、命令通りだ。」 「感謝する。」 貨物室を出ていくチャコティ。セブンは作業に戻る。 衛星の建物。ジェインウェイたちは転送の準備をしている。 「抑制ビームを一番細くセットしてちょうだい。」 トゥヴォック:「わかりました。」 「それとここを重力魚雷※26の照準に入れておいて。転送中に何か起きたら、それが最後の頼みよ。」 チャコティの通信。『ブリッジより艦長。インターセプトコースに船を 2隻発見。こちらの呼びかけに応えません。』 「インターセプトまで時間は?」 ブリッジのパリス。「4分もありません、艦長。」 「転送準備を。オメガを共鳴チェンバーへ移して。」 チャコティ:「了解。ブリッジより貨物室。」 貨物室のセブン。「こちら貨物室。」 『スタンバイしろ。急いで片づけなきゃならん。』 「それは勧められない。」 『やるしかない。エイリアンの船が迫ってる。』 「では船を、衛星軌道 5,000キロまで接近させてくれ。」 パリス:『大気圏に突っ込むことになる。シールドなしでそんな無茶なことしたら、ほんの数秒で船は灰になるぞ。」 チャコティ:「チャンスは一度きりだ。接近しろ。」 「了解。」 「転送機、スタンバイは。」 キム:「ターゲットスキャナー、ロック。」 「艦長、準備いいですか。」 トゥヴォック:「パターン強化装置、作動。」 スイッチが入れられる。 ジェインウェイ:「やって。」 スクリーンに青い光が走る。 パリス:「現在地表から、1万1千キロの距離。これ以上近づくと、火がつきます。」 キム:「船体に損傷発生。」 『現在 9,000キロ。』 ジェインウェイ:「そこでいいわ。転送して。」 チャコティ:「転送開始します。」 転送が行われ、貨物室のチェンバーの中が青く光る。 セブン:「オメガ分子は安定している。転送は成功だ。」 安心するチャコティ。キム:「第2転送室にレスキュー班収容。」 チャコティ:「逃げよう。エンジン全開だ。」 パリス:「既に全開。」 「エイリアンの船は。」 「真後ろまで来てます。」 衛星から去るヴォイジャーを、2機の小型機が追いかける。 |
※24: 「星域」と吹き替え。どうも訳に乱れが…。 ※25: Particle 010 ※26: gravimetric torpedo |
通常エンジンで逃げるヴォイジャー。操舵席のコンピューターに地図が表示される。
チャコティ:「何もない場所へ向かっています。生命反応も文明の痕跡もない。二次災害のリスクなしに作業を続けられます。」
パリス:「後ろの 2隻以外はね。」
ジェインウェイ:「追いつかれずに済む?」
「無理ですね。」
チャコティ:「断裂を抜けてワープで飛べるまで、何分だ。」
「10分か 15分でしょうけど、でもその前に連中に追いつかれます。」
ジェインウェイ:「一つ強みがある。オメガがある。撃ってはこないでしょう、ほかの手を全部試すまではね。その間に中和できるかもしれない。」
チャコティ:「一つ問題があります。」
「セブンのこと?」
「オメガを安定させられるといってます。」
「その話は済んだのに。」
「艦長が留守の間に、シミュレーションを見せてくれました。」
「おとなしく従うはずなかったわね。貨物室に行ってる。」
向かうジェインウェイ。 貨物室に入り、作業中のセブンに話しかけるジェインウェイ。 「セブン、状況は?」 「順調だ。オメガ分子の 11%が、既に中和された。」 「処理速度を上げてみてくれない?」 「副長から私の意見を聞いたか。」 「ええ。」 「では、残りは安定させても構わないな。」 「そんな許可はできない。」 「あの指令は、もう意味がない。オメガを制御する方法を見つけたのだ。」 「どんな理由があろうと、オメガを破壊しなければ。」 「…愚かだな。」 「決定を下すのは私よ。どきなさい。」 セブンは言った。「許可など待たずにやることもできた。だが私はお前の指揮系統に従った。…勝手にやるべきだった。今からでもできる。」 「でもやらないでしょ。理想を求めるあなたを邪魔したいわけじゃないのよ。でもこの宇宙域を危険にはさらせない。オメガはどうしても破壊しなければならないの。」 セブンは何も言わず、作業に戻った。再び尋ねるジェインウェイ。「状況は?」 「18%。」 「時間がない。共鳴波を増強できる?」 「チェンバーがもたないかもしれない。」 「どこまでこれで中和できるの?」 「4、50%だろう。」 「十分だわ。残りは魚雷で処分しましょう。ジェインウェイよりブリッジ。」 チャコティ:『チャコティです。』 「第4デッキのクルーを退避させて。このセクションに非常フォースフィールドを張り、合図で第2貨物室を減圧して。」 『了解。』 「トゥヴォック、重力魚雷を装填。チェンバーを放出したらすぐ、撃つのよ。」 トゥヴォック:『わかりました。』 「共鳴波を最大値に。」 ブリッジ。 パリス:「エイリアンが迫ってます。」 トゥヴォック:「トラクタービームで引き止めようとしています。」 チャコティ:「シールドを調整して回避だ。」 キム:「通信です。」 「スクリーンへ。」 異星人※27が映し出される。『すぐに停止し、我々を搭乗させろ。』 「それはできない。」 『我々の技術を盗み、仲間を誘拐した。』 「仲間は無事だ、治療を受けてる。事態が収拾したらすぐにでも返そう。だがオメガは返せない。」 『あの物質を敵の手に渡すぐらいなら、先にこの手で破壊する!』 トゥヴォック:「攻撃準備しています。」 チャコティ:「オメガが爆発したら、君たちも死ぬんだぞ。」 異星人:『ならオメガを我々に返せ。今すぐだ。』 「それだけは、どうしてもできない。」 通信が終わった。するとすぐ、2隻の船は攻撃を行ってきた。非常態勢に自動的に移行する。 トゥヴォック:「命中です。シールド、10%ダウン。」 チャコティ:「回避行動だ。何とか振り切れ。」 再び攻撃を浴びる。 貨物室のセブン。「調和共鳴波は、最大値だ。」 ジェインウェイ:「オメガは?」 「まだ 80%ある。」 「60 まで落とすのよ。」 船の揺れは貨物室にも響く。 セブン:「パワーグリッドに被害が出れば、オーバーロードでオメガの連鎖反応が起きる。」 ジェインウェイ:「ええ、急がないと危険ね。どこまで落ちた?」 「72%。」 「やるしかない。ブリッジ、減圧シークエンスを始めて。」 トゥヴォック:『了解。』 突然チェンバーの警告音が鳴り始めた。セブンに駆け寄るジェインウェイ。「どうしたの? 何なの?」 「オメガが安定し始めた。」 「何?」 「私は何もしてない。自然に起きた。」 「ありえない。」 セブンはオメガの状態を見るため、モニターを覗いた。コンピューターの警告。 『30秒後に減圧開始。』 モニターの中では、多数のオメガ分子が集結し始めていた。『25秒後に減圧開始。』 それを凝視するセブン。ジェインウェイ:「セブン、来るのよ。」 そしてオメガは、一つの球体を形作る。見事な調和。 『20秒後に減圧開始。』 ジェインウェイ:「セブン!」 『15秒後に減圧開始。』 貨物室を駆け出る 2人。 『10秒後に減圧開始。』 ブリッジのチャコティ。「トム、亜空間の断裂は抜けたか。」 パリス:「もうすぐです。」 「10秒以内に最大ワープだ。ここは爆心地になるぞ。」 「了解。」 トゥヴォック:「減圧完了しました。共鳴チェンバー、放出!」 チャコティ:「撃て!」 チェンバーに向かって光子魚雷が命中、爆発。ヴォイジャーは衝撃波が来る前にワープに入った。 報告するパリス。「ふう、やった。ワープ1 です。」 ジェインウェイとセブンが戻る。 ジェインウェイ:「エイリアンの船は?」 パリス:「射程外です。」 「トゥヴォック。」 トゥヴォック:「センサーにはもう、オメガ分子の痕跡はありません。」 ジェインウェイは言う。「ミッション完了ね。」 艦長席に座り、ため息をついた。セブンは考えていた。 「艦長日誌、宇宙暦 51793.4。医療室の客人を彼らの星へ帰すよう手配し、今回のミッションは完全に終了した。オメガ指令に関する記録はこれで最後となる。機密データファイルは廃棄処分にする。」 壁にかけられた、キリストの十字架像。セブンはそれを見つめている。ジェインウェイがやって来た。 「私のプログラムを試してたの? ダ・ヴィンチ先生は夜中のお客は好きじゃないのよ。」 「抵抗したので、彼は削除した。」 「何をしてるの、セブン。」 「このシミュレーションには、宗教的要素が多い。それを見ていた。第2貨物室で見たものを、理解するために。」 「オメガがどうして最後に安定し始めたのかはわからないけど、単なる異常現象だったのかもしれないわ。ただそれだけ。」 「3.2秒間、私は理想を目撃した。オメガが安定した時、奇妙な感覚を覚えた。私が見ているのか、それとも見られているのか。」 ジェインウェイの隣に座るセブン。「ボーグは多くの種族を同化した。神話というものが、ああいう瞬間を説明するなら、…今まで無意味とみなしてきたが、間違いだったかもしれない。」 ジェインウェイは言った。「あなたじゃなかったら、それは神からの啓示なんじゃないって言うところなんだけど。」 |
※27: 異星人船長 (Kevin McCorkie) 声:津田英三 |
感想
絶対と思われていた「艦隊の誓い (基本指令)」にも優先する「オメガ指令」。なかなか思い切った設定で面白いですね。ジェインウェイの日誌にもありますが、オメガ分子は現代では実現できていない核融合などの技術の、24世紀版といったところでしょう。 またジェインウェイとセブンの対立か? と思われた節も、結局仲良く座ってたりして、進歩が見られます。 しかし今回の行動によって、異星人の言葉によれば滅んでしまうであろう彼らについては…ちょっと無責任ですね。ワープ技術は意味がないにしても、別の技術を教えるとか、それくらいのことはしても良かったように思います (どうせ艦隊の誓いにも優先するんなら)。 |
第88話 "Vis a Vis" 「人体を渡り歩く異星人」 | 第90話 "Unforgettable" 「姿なき追跡者」 |