USS Kyushuトップに戻る

ディープスペースナイン エピソードガイド
第171話「嵐の予兆」
When It Rains...

dot

エピソードガイド エピソードガイド

・イントロダクション
※1上級士官室。
宙図の前で説明するオブライエン。「それは全く突然のことでした。ブリーンの…エネルギー抑制兵器によって、我々は完全に無力化されてしまったんです。全311隻。連邦、ロミュラン、クリンゴン船の…区別なく。」
シスコ:「だが一隻だけ、例外がある。キタング※2です。」
ロス※3:「なぜだ。何がほかと違う。」
オブライエン:「まだ不明です。唯一確認できたのは、キタングの機関主任が戦闘前に、ワープコアの抑制トラブルを解消するため、反応炉にトリティアム※4を混入させていた点です。」
マートク※5:「クリンゴン船の反応炉には全て同じ処置を行うよう、命令済みです。」
ロミュランの将軍、ヴェラル※6。「我々の船は設計が…異なるが、同じ処置で防護できるだろうか。」
シスコ:「残念だが不可能だ。ロミュラン船には効かん。連邦軍も同じです。」
オブライエン:「兵器について、知る限りの情報を、ロミュランの科学省※7と艦隊の機関部に送りました。…しかし防護法を発見するまでには、時間がかかると思われます。」
「ご苦労、オブライエン。」
出ていくオブライエン。
ロス:「今のところ…我々の頼みの綱は、クリンゴン艦隊だけのようだな。仕方ない。」
ヴェラル:「これからどうするのです。」
マートク:「うーん……明日までには、1,500 のクリンゴン船が反応炉の処置を終え、配備可能になる。」
「だがブリーン・カーデシア・ジェムハダー軍の船の総数は、その 20倍にも及ぶぞ。」
「そんなことは百も承知だ、将軍。」
シスコ:「ドミニオン軍と対等に戦うことはできなくても、彼らを混乱させることは可能だ。」
「我々は小隊を編成して遮蔽技術を使い、敵に攻撃を仕掛ける。思いっきり煽ってこちらを追わせます。」
「成功すればドミニオン軍は、バランスを失うことになる。攻撃能力も衰えるだろう。」
ヴェラル:「どのくらい。まさか永遠とはいかんでしょう。」
「その通りだ。だが幸い現在のドミニオン軍の敵は、我々だけではない。」
ロス:「ダマール率いる反乱軍か。」
ヴェラル:「当てにはならん。ロンダックの攻撃で半数は死んでいる。」
シスコ:「ロンダックの奪還は失敗したが、カーデシア人の目を覚ますことには成功した。…目覚めた彼らは反乱軍に勝利の可能性を見出せば、皆立ち上がる。」
「反乱軍に勝利の可能性はあるのかね。」
「ある。適切な戦略を組めばな。攻撃ポイントは狭い範囲に集中させ、重要な施設だけを狙う。」
ロス:「ダマールは官僚軍人だ。そのような戦闘をした経験は?」
「いいえ、ありません。我々が適切な人物を、送ります。」

不満なキラ。「私に敵陣へ乗り込んで、カーデシア人に反乱軍としての戦い方を教えろって言うんですか?!」
シスコ:「皮肉な話だな? だが君がベイジョーからカーデシアを追い出した戦法こそ、彼らが今最も必要としているものなんだ。」
「ダマールに協力する。…彼はジヤルを…私が家族のように思っていた無実の少女を殺したんですよ!」
「この際私情は脇へおいてくれないか。君がどう思っていようが、我々には彼が必要なんだ。ドミニオンは反乱軍を抑えようと、躍起になっている。それを阻止できるのは、君だけだ。考える余地はない。」
「…了解。…ロンダックの攻撃以降、反乱軍は身を隠してるはずですが、どうやって探し出せばいいでしょうか。」
「ミスター・ガラックに相談してみてはどうかね。」
「ガラック!」
「まだカーデシアと交流がある。私だったら、彼に協力を頼むがね。きっと役に立つ。」
「ダマール。ガラック。楽しい任務になりそうだこと。」 司令官室を出るキラ。


※1: このエピソードは、ウォーフ役マイケル・ドーンの監督です。DS9 で担当した 3話のうち、第142話 "Inquisition" 「記憶なきスパイ」以来で最後となります。参考

※2: Ki'tang

※3: ロス提督 Admiral Ross
(Barry Jenner) 前話 "'Til Death Do Us Part" 「変節の時」に引き続き登場。声:石波義人

※4: 三重水素 tritium
水素の同位元素で、原子量 3 をもつ。DS9第7話 "Q-Less" 「超生命体“Q”」でも使用

※5: Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:大山高男

※6: Velal
(Stephen Yoakam) 名前は言及されていません。DS9第166話 "Inter Arma Silent Leges" 「闇からの指令」で、クレタク議員の代理として言及された人物。そのエピソードでは階級は「副司令 (官)」とされていました

※7: Romulan Ministry of Science

・本編
ビーカーを手にするベシア。「戦争が激化すれば、人工臓器を供給し続けるのは難しくなる。肝臓なんか山ほど必要だ。もちろん…心臓も。」
オドー:「それはわかります。しかしそれと…この私と何の関係が。」
「究極の臓器の移植方法ってのは、患者に未分化の細胞組織を注入することなんだよ。体内で必要な臓器に変化できるように。唯一の問題は…」
「ドクター、要点だけ、お願いします。」
「分けて欲しいんだ、身体の…一部を。」
「何ですって?」
「頼むよ。返すから。君の形態マトリックスを研究したいんだ。形態を自在に変えられる、人工臓器組織を作れるように。」
「多数の臓器移植に備えたいと。」
「その通り!」
「それでしたら、私をスキャンしてはいかがですか。」
「サンプルが欲しい。念のために。」
うなずくオドー。「…わかりました。」
オドーは指を一本ビーカーに入れ、先端を液体化させた。中に入れていく。
ベシア:「もう少し、頼むよ。」
呆れながらも追加するオドー。
ベシア:「ありがとう。」
オドー:「いいですか? 必ず返して頂きますからねえ、キラとの任務から戻り次第。」
「君も行くのか。」
「役に立てることがあるらしい。」
「いつ発つんだ。」
「ダマールの居場所を見つけ次第、すぐにです。」 ビーカーを見てから出ていくオドー。
ベシアは微笑んだ。

惑星ベイジョー。
ウィン※8:「心配でたまらないわ? ソルボーがこんな風に姿を消すなんて。何とてでも彼を捜し出してちょうだい。」
ベイジョーの保安部員、ボーダン※9。「わかりました。」 出ていった。
デュカット※10:「お見事。私も信じるとこだ。」
ウィン:「さすがはカーデシア人ね? ソルボーの死が愉快でたまらないんでしょう。わたくしは彼を殺したことをどんなに悔やんでいるか。」
「我々の邪魔をするからだ。…誰だろうと我々の邪魔をさせはしない。」
デュカットの手を振り払うウィン。「自分の立場を忘れたの?」
デュカット:「君のベッドに入れるのは私だけでは?」
「…それはあなたの正体を知る前だわ?」
「アダミ、私はもはや以前と同じ、ガル・デュカットじゃないぞ? パー・レイスが、私を変えたんだ。」
顔に伸ばされた手を避けるウィン。「でもあなたの罪は変えられない。その手は、我が同胞の血で真っ赤に染まってるわ。そんな手がこの身に触れるのを許すことができると思う?」
デュカット:「我々が炎の洞窟からパー・レイスを解放すれば、君の手も、同胞の血に染まる。」
「パー・レイスは価値がある者には許しを与えるわ? あなたはそうはいかないでしょうけど。」
「君はもう、何日もその書物にかかりきりだ。少し、私が代わろう。」
「このコスト・アモージャンの書物は、わたくしの目でしか見られないの。」 本のページをめくるウィン。
「…それで、少しはわかったのか? パー・レイスを解放するためには、どうすればいいのか。」
「そう簡単にわかるようなものではないわ。消えて、そこにいると気が散ってしょうがないの。」
無言で出ていくデュカット。ウィンは苦々しい顔を浮かべる。

DS9。
ロス:「ガウロンはいつ到着する。」
シスコ:「朝には。」
「ふむ。マートクは儀式を控えて緊張している。」
「ガウロン総裁がわざわざクロノスから、カーレスの勲章※11を授けに来るんです。私でもしますよ。」 ドアチャイムが鳴る。「入れ!」
キラたちが司令官室に入る。「ダマールと連絡を取ることに成功しました。」
ガラック※12:「早速居場所を知らせてきました。早急なる支援を願うとのことでした。」
「できれば明日の朝一番で出発したいのです。」
シスコ:「よろしく頼む。」
キラは出て行こうとしたが、ガラックが言った。「一つ問題があるのですが。」
シスコ:「言ってみたまえ。」
「ダマールはキラ中佐が指揮官を務めることについて、非常に懸念しているのです。」
キラ:「ドミニオンを倒したいのなら、この際私情は脇へおいておくべきだと思うけど。」
「もちろん、彼自身はそれを十分承知していますし、あなたの能力も高く買っています。しかしながら、彼の部下たちは中佐の制服を侮辱と取る可能性がある。カーデシアは誇り高き種族。ベイジョー人を野蛮なテロリストではないと認めることに…すみません。」
笑顔でうなずくキラ。
ガラック:「屈辱を覚えます。言ってしまえば、ベイジョーを指揮官におくことは、ダマールの権威を傷つけることになるのです。」
ロス:「すまん、中佐。…別の人物を探すとしよう。」
シスコ:「いいえ。提督…キラ中佐以外には考えられません。別の解決法を考えましょう。」

ガラックはキラの服を調整している。
オドー:「…わからんね。いくら宇宙艦隊の制服を着てみたところで、あなたはベイジョー人だ。何も変わらない。」
制服※13を変えたキラ。「連邦を代表する権限を与えられたベイジョー人よ?」
ガラック:「あなたも、その制服を何とかしなければなりませんよ?」
オドー:「その言葉を恐れていたんだが…」 一瞬で服を変えた。「どうだね。」
「ああ…少々その、地味では?」
「私は以前この格好でカーデシア人に仕えていたんだ。」
「ああ、でしたら、とりあえず彼らには受けがいいでしょう。」 キラに聞くガラック。「ところで…ドクター・ベシアは、あなたのその鼻を直すことができるでしょうか。」
キラ:「いいえ、そこまでやる必要はないわ? 私がそばにいることに慣れて、耐えてもらわなくちゃ。」
「それはもちろん耐えるでしょう、ある程度は。でも私なら…決して背は見せません。では、明日の朝。」 保安室を出るガラック。


※8: カイ・ウィン Kai Winn
(ルイーズ・フレッチャー Louise Fletcher) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:沢田敏子

※9: ボーダン警護官 Deputy Bodan
エキストラ

※10: ガル・デュカット Gul Dukat
(マーク・アレイモ Marc Alaimo) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:幹本雄之

※11: Order of Kahless

※12: Garak
(アンドリュー・J・ロビンソン Andrew J. Robinson) DS9第166話 "Inter Arma Enim Silent Leges" 「闇からの指令」以来の登場。声:大川透

※13: 階級章は中佐のもの

惑星。
洞窟の中ではカーデシア人たちが作業している。
ルソット※14:「何か、問題が?」
ダマール※15:「食料が底をついてきた。」
「レプリケーターが手に入るまで、各自の割当を減らそう。」
「ガラックにもってくるよう言っておいた。」
「惑星連邦のレプリケーターをか。」
「どこのものだろうと、拒否してる余裕はない。」
「連邦の助けを借りるだけでも恥なのに、ベイジョーのテロリストにまで助けを頼むとはなあ。」
「キラ・ネリスは我々に必要な能力を備えている。…ドミニオンを打ち倒すためのな。」
「我が耳を疑うな。テロック・ノールにいた頃、お前は口を開けばキラへの侮蔑を並べ立てていた。」
「嫌いだった。だがもうそんな贅沢を言える身分じゃない。お前も協力してくれ。」 ルソットの肩を叩き、歩いていくダマール。

DS9 に係留しているバード・オブ・プレイ。
ロスと共に歩いてきたシスコ。「将軍。ミスター・ウォーフ。」
4人は一列に並ぶ。
エアロックからガウロン※16総裁が降りてきた。
シスコ:「ようこそ、ディープ・スペース・ナインへ、総裁。」
うなずくガウロン。「久しぶりだな。大佐。」
シスコ:「ロス提督です。」
ロス:「キトマー※17で会いました。」
ガウロン:「提督。覚えている。マートク。お前に名誉を授けに来たぞ。…モーグの息子か。」
ウォーフ:「総裁!」
「お前の一族に迎え入れたそうだな。」
マートク:「その通りです。」
ガウロンはウォーフを見つめた。「では過去は水に流すとしよう。マートクが兄弟と認めたのなら、私にはそれで十分だ! 上等なブラッドワインの樽をもってきた。今夜中に飲み干すとしよう!」
マートク:「はい!」
「2309年物のビンテージワインだ。」 笑うガウロンとマートク。ウォーフも歩いていく。
ロスと残されたシスコ。「…我々は飲めないらしい。」

医療室のベシア。「ついにクワークのバーで彼女を捕まえ、率直に聞いてみた。『エズリ、どうして僕を避ける。』 だがそこで仕事の呼び出しが入ってね。」
オブライエン:「君を避けてたとはなあ。ただの妄想じゃないのか?」
「もう何日も会ってないんだ。」
「この広さじゃ当然さ。そりゃ単に、君が彼女に会いたいと思ってるから、かえって会えないように感じられるだけだ。」
「いやあ、何かがおかしい。エズリがここへ来たら確かめてやる。この前の検診結果について、話したいって言ってあるんだ。」
「フン、公私混同じゃないか。」
「まあね。」
「オドーか?」
ビーカーを手にするベシア。「ああそうだ、一部だが。」
オブライエン:「やっぱり聞かなきゃよかった。」
「コンピューター。形態酵素の分析を開始。」 構造がモニターに表示される。
ドアが開き、エズリが入る。「ハイ。」
ベシア:「エズリ。」
オブライエン:「やあ。」
エズリ:「ああ…話があるとか。」
ベシア:「そう。入って。」
ベシアはオブライエンに目配せする。
オブライエン:「…ああ、ここで君に会えてよかったよ。ずっと会ってなかったから。」 出ていく。
ベシア:「どうも。」
エズリ:「検診結果のことだって言ってたけど。」
「ああ、そうなんだ。これこれ。」 パッドを持って近づくベシア。「…そういえば、この前の話、まだ終わってないんじゃなかった?」
「この前の話?」
「クワークのバーで、なぜ僕を…避けてるのか、聞いたろ?」
「……今言うのが一番いいみたいね? …話はウォーフとブリーンに捕まった時にさかのぼるの。彼とずっと一緒だった。」
「だろうね。」
「当然昔の、ホストの感情が甦ってくるわよね。」
「ああ。」
「それで…あの、いろいろ思い出しちゃって、私…」
「エズリ。それ以上言わなくていい。」
「でも言いたいの。」
「いや、やめてくれ。ああ…君たち二人の、幸せを祈ってるよ。」
「君たち?」
「君とウォーフ。」
コンピューターに反応がある。
エズリ:「ああ、違うのよ、ジュリアン。そうじゃ…」
ベシアはモニター画面を見つめる。「エズリ、何も言う必要はない。」
エズリ:「違うの。あなた誤解してる。さっきから私が言おうとしてるのは、あなたが好き…」
「おい、嘘だろ!」
「…何? ジュリアン、どうしたの?」

ワープ航行中のランナバウト。
通信画面のベシア。『君のサンプルを分析したところ、ちょっとした異常を…発見した。』
オドー:「異常とはどんな異常ですか?」
『病気だ…君ら特有の。君も感染してる。』
言葉の出ないオドー。驚くキラ。


※14: ガル・ルソット Gul Rusot
(ジョン・ヴィッカリー John Vickery) 名前は初言及。前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:小室正幸

※15: Damar
(ケイシー・ビッグス Casey Biggs) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:古田信幸

※16: Gowron
(ロバート・オライリー Robert O'Reilly TNG第45話 "Manhunt" 「魅せられて」のスカーフェイス (Scarface)、DS9第165話 "Badda-Bing, Badda-Bang" 「アドリブ作戦で行こう!」の集計人 (Countman) 役。ゲーム "Star Trek: Klingon" にもガウロン総裁 (声) で出演) エムレルの息子で、2367年にクンペックの跡を継いだクリンゴン最高評議会のリーダー。DS9第112話 "In Purgatory's Shadow" & 第113話 "By Inferno's Light" 「敗れざる者(前)(後)」以来の登場。声:佐藤正治 (継続)

※17: Khitomer
ロミュラン・クリンゴン境界近くの Mクラス惑星。映画第6作 "Star Trek VI: The Undiscovered Country" 「未知の世界」など

話し続けるベシア。『女性流動体生物とつながった時に感染したんだろう。』
キラ:「ねえ、それ本当なの? 何の兆候もなかったじゃない。」
『今まではね。だがウィルスは、これから急速に増えていくはずだ。症状が出るまで、そうかからないだろう。』
「早くステーションに戻らないと。」
オドー:「いや。我々には成し遂げねばならない任務がある。」
「オドー。」
ベシア:『いいんだ、今戻っても何もできない。だが、治療法を見つける自信はある。』
オドー:「というと?」
『今、君のサンプルのテストを続けてる最中だ。艦隊医療部が、3年前に行った君の検査結果※18も取り寄せてる。その結果を比較すれば、ウィルスの詳細がわかるだろう。きっと治療法も見つかるよ。』
キラ:「ありがとう、ジュリアン。」 通信は終わった。
オドー:「あと数分もすれば、ドミニオンの領域に突入することになる。」
ガラック:「では、敵のパトロールをスキャンするとしましょう。」
キラはオドーを見つめた。

夜のベイジョー。
ドアが開き、周りをうかがいながらデュカットは暗い部屋に入った。
コスト・アモージャンの書物が置いてある。
ライトをつけ、持っていた鍵を取り出すデュカット。
椅子に座り、封印を開けた。「君は私に何を隠しているんだね、アダミ? ここには一体何が書いてあるんだ?」
ページをめくるデュカット。パー・レイスのシンボルが描かれてある。
それに触れると、ふいに赤く光った。
目を見開くデュカット。その時突然、書物から赤いエネルギー状の光が、デュカットの両目に注がれた。
叫んで目を押さえるデュカット。
気づいた寝間着姿のウィンがやってきた。「デュカット!」
デュカット:「アダミ…助けてくれえ!」
「馬鹿なことを!」
「ああ…目が、目が見えない!」
「言っておいたはずよ! コスト・アモージャンはわたくしにしか見られないようになっているって!」
うめくデュカット。

DS9。
皿に置いたクリンゴンの紋章の上に、血が滴る。
ナイフで手を傷つけているガウロン。「ああ…。我らが兄弟マートクに対し、ここに…カーレスの名誉を授ける。」 ろうそくが灯されている。
見守るクリンゴン人たちから声が上がる。
マートク:「ああ…。」 ガウロンからナイフを受け取る。「謹んでお受けします。マートク一族の名において。そしてこれからも帝国のためにお仕えできることを、願ってやみません。」
同じように手から血を落とす。
名を呼ぶクリンゴンたち。「マートク! マートク!」
シスコ:「次は我々です。」
ロス:「……嘘だろ?」
「だといいんですが。」
大きく歓声が上がった。
誇らしげに見ているウォーフ。

ブラッドワインを汲むウォーフ。「お見事でした。」
首から先ほどの勲章をぶら下げているマートク。「協力感謝する、友よ。」
クリンゴン人がシスコたちにジョッキを掲げる。
ロス:「まだ、ヒリヒリしてる。」
シスコ:「だからワインを飲むんですよ! やあ、おめでとう、将軍。」
マートク:「ああ。」
ガウロン:「マートク。帝国で最も名高い戦士となった感想は。」
「このような機会を頂いて、感謝しております。」
「お前の貢献の賜物だ。この長期の戦争によく耐えている。」
「何の苦もありません。我らが勝利を手にする日まで、戦い続けるつもりです。」
「いや、友よ。これ以上お前にこの重荷を背負わせられん。これからはお前に代わり、この私が背負っていくとしよう。今日から、この私が我が部隊を…直接指揮する。」
静かになる一同。
マートク:「総裁、よく…よく理解できません。私の、私の仕事ぶりに不満な点がおありになったのでしょうか。」
ガウロン:「不満があるのにわざわざカーレスの勲章を授けたりすると思うか。喜べ、戦士に戻れるんだ。会議に出る必要も、報告書を書く必要もない。戦場に戻り、血が沸き立つ熱気を楽しめ。うらやましいぞ。私はすぐにもこの戦争を終わらせる。敵は私の名を聞き、震え上がることだろう!」
上級士官室を出ていくガウロン。マートクも去った。

医療室。
通信相手の宇宙艦隊士官、ウェルドン少尉※19に話すベシア。「いいや、ダグラス中尉※20はもう結構だ。ダグラス中尉とは、もう十分に、話した。僕は検査結果が欲しいんだ。患者の命がかかってるんだぞ。」
ウェルドン:『お役に立ちたいのはやまやまですが、そのファイルは極秘扱いなんです。』
「なぜオドーの検査記録が極秘扱いにされなきゃならないんだ!」
『私にはわかりかねます。』
「君の上官と話をさせてくれ。」
『それが、ダグラス中尉です。』
「だったら彼女の上官と話をさせたまえ、少尉!」
『すぐにおつなぎします。返事は同じだと思いますが?』
画面が消えた。ため息をつくベシア。
別の人物が現れる。『ヒリヤード※21中佐だ。』
「ああ、中佐。是非とも私の力になって…頂けませんでしょうか。ファイルは極秘扱いということですが、しかし状況が状況だけに、今回だけは特例として閲覧を…許して頂きたい。」
ヒリヤード:『その前に、いくつか質問に答えてもらえるかね?』
「ああ、もちろんその必要があるなら。」
『君は艦隊に、オドーの検査記録を請求してる。宇宙暦…』
「49419 です。」
『また、君は彼が創設者を冒した形態ウィルスに感染してると主張してるが?』
「そうです。」
『感染経路は。』
「彼らとつながったためと思われます。」
『敵とつながったというわけか。』
「そうですが、最近じゃない。1年以上前です。」
『君はオドーの検診を、もう何年も続けていると察するが?』
「もちろんです。」
『それで十分では。』
「医療部の記録と比較して、治療法を探したいんです。」
『治療法?』
「そうです。」
コンピューターを操作し、何も言わないヒリヤード。
ベシア:「……ほかに質問は。」
ヒリヤード:『いいや? もう十分だ。』
「よかった。それで…ファイルのコピーはいつ頂けますか。」
『残念ながら極秘扱いだ。』
「ですが…貸して下さることを前提に今の質問をされたんじゃないんですか。」
『いや、それは誤解だ。使用許可、シグマ 9 を有する者でなければ貸せん。』
「何なんですか、そのシグマ 9 って! それがないから何だって言うんです! 僕はただこの病気の治療法を見つけたいだけだ!」
『なぜ君が敵を蝕む病気の治療法を見つける必要があるのかね。戦争中なんだぞ!』
「これは創設者とは関係ないんです! 僕はオドーを救いたいだけだ!」
『オドーは君も言った通り、敵と交わることができる。』
「…中佐、どうかこの状況を…ご理解下さい。」
『状況など知ったことか! 治療法を見つければ、いつドミニオンに知られるかわからん! 艦隊がそんな危険を冒すわけにはいかんのだ。ファイル閲覧の要請は却下。このことはすぐ忘れた方がいい。艦隊保安部に知られる前にな。』 通信を終えるヒリヤード。
ベシアはため息をついた。

レプリマットで話すオブライエン。「完全に官僚主義に毒されちまってるんだろう。」
ベシア:「いや、それ以上だ。まるで裏切り者のように責められた。オドーを助けたいって言っただけでドミニオン側についたような言い方をするんだ。」
「司令部が攻撃されたんでビビッてるんだろう。ヒリヤードみたいな奴は戦場に行った経験がないからな。」
「うーん、どうしてもファイルを手に入れたい。大佐に頼んでもらおうか。」
「大佐はシグマ 9 をもってるのか?」
「…オドーのためにも、そう願うよ。」 歩いていくベシア。

ランナバウトは、惑星に到着した。
カーデシア人に洞窟を案内されるキラたち。
ダマールが出迎える。「…カーデシア解放軍の司令部へようこそ。…久しぶりだな。」
キラ:「…本当に。」
ルソット:「要求した物は持ってきたか。」
オドー:「フードレプリケーター、武器、ご希望の物は全てあります。」
ダマール:「ありがたい。カーデシアの同胞は連邦の寛容さを忘れないだろう。」
ガラック:「素晴らしい! では堅苦しい挨拶は終わりにしましょう。我々の共通の敵はドミニオンなのですから、どうかお忘れなく。」
ルソット:「わざわざ言われんでも自分の敵くらい承知している。」


※18: DS9第83話 "Homefront" & 第84話 "Paradise Lost" 「地球戒厳令(前)(後)」で地球を訪れた際だと思われます

※19: Ensign Weldon
(Colby French) 名前は言及されていません

※20: Lieutenant Douglas

※21: Hilliard
(スコット・バークホルダー Scott Burkholder ENT第38話 "The Catwalk" 「嵐を告げる男達」のレラス・タグリム (Rellus Tagrim) 役)

説明するキラ。「反乱軍を組織する時は 10人から 20人の小グループにして、各グループを独立させるの。そうすればたとえ誰かが捕まっても情報が限られてるため、組織全体を危険にさらす心配はない。知らない名前を漏らすことはできないでしょ?」
ガラック:「オブシディアン・オーダーも同じ組織法でした。」
「あなたの部下を散らせる必要があるわ。味方を一個所に集めておくのは危険すぎる。」
ルソット:「兵力を分散させてしまってはドミニオンの奇襲にあった時に、それを防ぐことができん。」
「でも一個所にいたら、一度の攻撃であなたたち反乱分子は全員一掃されてしまう。小規模の方が安全よ。追跡は困難を極めるわ。」
ダマール:「ほかに潜伏できそうな場所があるか調べさせよう。」
「そうして。オドーとガラックが、そちらの情報部の報告書を読んで、攻撃が容易そうな対象物のリストを作ったわ。」
オドー:「アダラク・プライム※22の兵器庫を警護しているのは守備隊一個だけです。」 星図を指さす。「当然、外辺部の防御が手薄になる。こちらは少人数でも敷地内に侵入することが十分、可能でしょう。」
ルソット:「アダラク・プライムを守ってるのはカーデシアの守備隊だ。」
「その通りです。」
別のカーデシア人、セスカル※23が怒った。「貴様、同胞を攻撃しろと言うのか!」
キラ:「必要な場合はね、そうよ。」
ルソット:「論外だ、話にならん。」
ダマール:「同感だ。…攻撃はジェムハダーとブリーン軍に限定する。」
キラ:「私を信じて。その気持ちはよくわかる。私も活動中は…ベイジョー人が働いてる施設は攻撃したくなかったわ。でもやった。なぜなら敵の協力者だから。敵の味方だからよ。」
ルソット:「我々はベイジョー人とは違う。同胞は殺さない。」
「だったら今すぐ降伏した方がいいわ。あなたたちが、同胞が守っている基地を攻撃しないと知った瞬間から、ドミニオンは全ての基地にカーデシア人を配置させる。」
オドー:「その通りです。創設者はカーデシア人同士を戦わせることでしょう。」
「反乱軍に入っていない者は誰だろうと、あなたたちの敵よ。」
ダマール:「……いいだろう。アダラク・プライムの、防御が甘いんだな。」
ルソット:「ダマール!」
「それ以上何も言うな、ルソット! …続けろ。」
オドー:「まず守備隊の保安プロトコルを不能にする必要があります。」
ガラック:「それは私にお任せ下さい。」

DS9。
モニターを見ながら笑うベシア。「シスコ大佐がシグマ 9 をもってると知った時のヒリヤードの顔。」
オブライエン:「フン。…それで、苦労して手に入れた甲斐はあったのか?」
「期待以上のデータが載ってたよ。詳細に記録されてる。」
「ところで…エズリはどうした…?」
「…聞かないでくれ。」
「言えよ。」
「彼女はウォーフのことが好きらしい。」
「何? 彼女が言ったのか?」
「遠回しにだけどね。」
「ジュリアン。この前ウォーフと飲んだんだが、エズリはただの友達だって言ってたぞ? 君の誤解なんじゃないか?」
「…もしかしたらそうかも。はっきりとは言われたわけじゃないしな。」
「で避けられてた理由はわかったのか?」
「いや…」 コンピューターを見るベシア。「変だな。」
「何が?」
「この共鳴スキャンの分散パターン。前に見たことがある。」
「どういうことだ?」
「ここに赴任したての頃、オドーの生理機能を把握するのに、ドクター・モーラ※24が貸してくれたデータを見た。これはそのオドー発見直後のスキャン結果と同じだ。」
「本当にあの数字全部同じなのか?」
「この目で見たんだ。間違うわけないだろ。」
「…遺伝子操作受けてんだもんな。」
「このスキャン結果は、オドーが 3年前艦隊医療部に行った時のもの。」
「2度のスキャン結果が全く同じ分散パターンを示すことは?」
「ありえない! ドクター・モーラの記録を、誰かが盗んで改竄したんだ。これは本物の、記録じゃない。」
「艦隊医療部がそんなことをするとは思えん。君を黙らすためだけに記録を改竄するなんて。」
「同感だ。艦隊医療部は絶対にそんなことはしない。」
「じゃやっぱり…」
「セクション31。」
「…連邦の『ため』ならどんなことでもやってのける、秘密組織。連中の仕業とすればうなずけるな。」
「治療法が創設者に…渡ることが怖いんだ。」
「それを防ぐために、オドーを犠牲にする気か。」

勲章を手にするマートク。「勲章を授けておいて指揮権を奪うとは、矛盾にもほどがある。」
ウォーフ:「我々はあなたを帝国の救世主と見なした。それがガウロンには気に入らないのでしょう。自分が救世主になりたいんです。」
「何を恐れている。奴のポストを狙うとでも? 俺は政治には興味はない、俺は戦士だ! …カーレスの加護によって、俺は自力でここまできた! 無数の戦いを勝ち抜いてきたのだ、奴は何をした? 権力を握ろうと画策していただけだ。」
「彼の戦闘経験には限界があります。あなたには遠く及びません。」
「この戦いで多くの勇敢な戦士たちが命を散らしてきた。……ガウロンの狙いが何であれ、ドミニオンを倒すために協力するのが我らの務めだ。死んでいった同士に借りがある。」
「…あなたを、誇りに思います。」
「……さて…荷物をまとめるとするかな? ここはガウロンに引き渡さねばならん。」 部屋を出るマートク。

カーデシア解放軍司令部。
キラは食事していた。
オドー:「おいしいですか?」
キラ:「レプリケーターだもの。」
うなずくオドー。
二人の様子を見ているセスカル。「聞くのか聞かないのか!」
ガラック:「やめといた方がいいだろう。」
「…正当な質問だろ、ガラック。」
ガラックたちの話に気づくキラ。
ガラック:「この場にはそぐわない話題だと言ってるんだ。共に、協力せねばならぬ、この状況では。」
セスカル:「いいだろう。お前が聞かなければ俺が聞く。」 キラたちに近づく。「…オドー。お前がテロック・ノールで保安責任者を務めてた時…自分が逮捕したベイジョー人がどうなると思ってたのかな?」
キラ:「答える必要はないわ。」
ルソット:「なぜだ。正当な質問だぞ。」
「彼を挑発してるだけじゃない。」
ガラック:「だから言ったんです。」
オドー:「私は当然彼らが…公正な判断によって処置されるものと考えていた。しかし、すぐに悟りましたよ、カーデシア人には、公正さなど念頭にないと。」
セスカル:「ああ、ではなぜ、自ら辞職を希望しなかったのだ?」
キラは持っていた皿を床に投げつけた。セスカルに詰め寄る。「何が言いたいの?」
オドー:「ネリス、やめろ!」
セスカルを抑えるルソット。「神経に障ったようだ。キラ指揮官は、恋人が敵に協力していたことを思い出すのを、好まんらしい。」
キラ:「オドーは協力してたわけじゃない!」
「それは、協力者をどう定義するかによるなあ。」
オドー:「ネリス。ほっておけ。」
ガラック:「オドーの言う通りです。」
キラ:「…見解の相違があるようね?」 その場を離れる。
オドーもルソットを見てから、キラの後に続いた。
ガラック:「あなた方はラッキーだ。」
ルソット:「ほう? なぜだね。」
「まだ生きてます。」
笑うルソット。「…あれで殺されちゃたまらんよ。」

キラは周りの物を叩き散らしていく。
オドー:「私も、協力したつもりはありません。」
キラ:「じゃあなたもその辺の物蹴っ飛ばしたら?」
「よく思いとどまりましたね、ネリス。敵はドミニオンです、ルソットじゃない。」
「そんなこと言われなくたってわかってるわ! ああ…ごめんなさい、私…ごめんなさい。ああ……何だかここ…ここ、暑くない?」
「ああ…カーデシア人は暑さを好むので。」
「私は嫌い。何か部屋を冷やす物探してくる。」
「私も行きます。」
「大丈夫よ。誰も殴ったりしないから。」
「そう願いたいですね?」
微笑み、歩いていくキラ。
倒れたケースを起こそうとした時、オドーは手の異常に気づいた。皮膚が荒れている。
呆然とするオドー。


※22: Adarak Prime

※23: Seskal
(ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong TNG第20話 "Heart of Glory" 「さまよえるクリンゴン戦士」のコリス司令官 (Commander Korris)、DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」のガル・ダナー (Gul Danar)、VOY第7話 "Eye of the Needle" 「ワームホールの崩壊」のテレク・ルモール (Telek R'Mor)、第122話 "Survival Instinct" 「ボーグの絆を求めて」のトゥー・オブ・ナイン (Two of Nine)=ランサー (Lansor)、第143話 "Fury" 「帰ってきたケス」のヴィディア人船長 (Vidiian Captain)、第155話 "Flesh and Blood, Part I" 「裏切られたホログラム革命(前編)」のアルファ・ヒロージェン (Alpha Hirogen)、第171話 "Endgame, Part I" 「道は星雲の彼方へ(前編)」のコラス (Korath)、ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」などのアーチャーの上司フォレスト提督 (Admiral Forrest)、第14話 "Sleeping Dogs" 「名誉に生きる者」のクリンゴン船長 (Klingon Captain)、第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」などのクリタサン船長 (Kreetassan Captain) 役。ゲーム "Armada II"、"Bridge Commander"、"Starfleet Command III"、"Elite Force II" でも声の出演) 名前は言及されていません

※24: モーラ博士 Dr. Mora
モーラ・ポル (Mora Pol)。デノリアス・ベルトでオドーが発見された後、ベイジョー科学省で研究した科学者。DS9第32話 "The Alternate" 「流動体生物の秘密」などに登場

オドーは手の荒れを元に戻した。
キラが帰ってくる。「ちょっと信じられないわよ。」
オドー:「何がです?」
「ダマールが私たちに冷却装置を用意しといてくれた。ああ…。」 オドーの視線に気づくキラ。「どうしたの?」
「いや。君がまたルソットとやり合ってるんじゃないかと思っていたもんだから。」
「大丈夫。二度とカッカしないから。この冷却装置も手に入ったことだし。」
微笑むオドー。

ベイジョー。
ウィンが部屋に入る。
目の見えないデュカット。「アダミ? 君か?」
わざと応えないウィン。デュカットはため息をつく。
笑みを浮かべて声を発するウィン。「ええ、そうよ? ドクターと話してきたの。あなたの目にはどこも異常が見られないと言ってたわ?」
デュカット:「そいつはヤブ医者なんだ。カーデシア人の医者ならとっくに治してる。」
「この期に及んでもわからないの? パー・レイスが視力を取り上げたのよ。あなたの傲慢さを罰するために。その目はパー・レイスしか治せない。」
「彼らに敬意をもってなかったわけじゃない。私はただ、早く彼らを解放できるよう、君の力になりたかっただけだ。」
「自分独りで解放できないか、知りたかったんじゃない? …無理な話だわ。」
手を伸ばすデュカット。「私のために祈ってくれ。パー・レイスに許しを…請うてくれ。」
ウィン:「断るわ、自分でやることね。」 ドアチャイムが鳴る。「入って。」
保安部員が入る。
ウィン:「ボーダン警護官が出口へ案内します。」
デュカット:「…『出、出口へ』って、それはどういうことだ…。」
「あなたは謙虚さを学んだ方がいい。わたくしがそのチャンスをあげます。」
「私を外に放り出す気か?」
「ベイジョー人の優しさを身をもって知るといいわ? 彼らが困っている盲目の人を放っておくわけがありません。運が良ければ十分な食べ物と、その日の宿くらい、恵んでもらえるでしょう。」
笑うデュカット。「…まさか、まさか本気じゃないんだろ?」 手を伸ばすが、ウィンはそこにはいない。
ウィン:「価値のある人間だということが証明できれば、視力は戻るかもしれないわ? 連れてって。」
「アダミ、待って…」 ボーダンに連れて行かれるデュカット。「アダミ…アダミ、待ってくれ、頼む! アダミー!」 ドアが閉まった。
ウィンは独り、微笑んだ。

DS9。
部下に指示を出していたガウロン。「いいな。」 チャイムが鳴った。「入れ! …ああ、入れ。」 パッドをクリンゴン人に渡す。「今後の戦略を研究してたとこだ。私の作戦を聞いて欲しくてな。」
マートク:「もちろんです。」
「そっちへ。ドミニオンは艦隊を配備し、最終攻撃のために備えている。我々の船は破壊される一方だ。」
ウォーフ:「しかし連邦とロミュラン艦隊が戦線に復帰するまで、現状を維持すべきです。」
「いや。わからんのか。それこそ敵が望んでいることなのだ。今こそ行動を起こすべきだ。」
マートク:「どういうことでしょうか。」
「我々は攻撃に転ずる。明日の朝、我が軍を敵陣の奥深くへと進撃させ、ドミニオンの息の根を止めるのだ!」
「我々は辛うじて現状を維持している状態です。」
ウォーフ:「境界線を守るためには、全船必要です。」
ガウロン:「2人ともどうした。我々は勝利をつかまなければならん!」
マートク:「敵の兵力は我らの 20倍ですよ!」
「関係ない。勝利の女神は我々の味方だ。」
「総裁、私の意見では…」
「誰がお前の意見など聞いた。…私を信じろ。全ては鮮明に見えるのだ。同盟軍が戦闘不能の今、我らクリンゴン帝国が、ドミニオンに対し最終的な勝利を手に入れる。アルファ宇宙域の救世主となるのだ。栄光は我らの手に。我らだけのな。」
無言のマートクとウォーフ。

医療室で話すオブライエン。「なあ、ジュリアン。セクション31 が絡んでるなら、大佐に報告すべきじゃないか?」
ベシア:「それはできない、マイルズ。大佐に報告すれば、すぐに司令部へ話が行き、先手を打たれるに決まってる。奴らがファイルの改竄に気づかれたと知れば、次は必ず治療法を封じる手段に出る。」
「フン、それもそうだな。…どんな手でくるかな?」
「考えるな、きっと知らない方がいい。」
クワークが入る。「失礼、お二人さん。」
オブライエン:「コーヒーか?」
「あんたたち、オドーを助けるためにずっと働き詰めだろ? 俺には…これくらいしかできないから。」
ベシア:「オドーのこと知ってるのか。」
「小耳に挟んだ。」
オブライエン:「ほかの連中には言うなよ?」
「どうして?」
「どうしてもだ!」
「わかった。で、コーヒー飲むの?」
「これ知ったら、オドーも喜ぶだろう…」
「あんたまさか、オドーに言ったりしないだろうなあ。」
「俺たちの秘密だ!」
「がんばって。」 出ていくクワーク。
カップを置くオブライエン。「はいよ。」
ベシア:「ちょっと待ってくれ。今いつオドーが感染したか調べてるんだ。彼のサンプルを分析し、ウィルスのライフサイクルを出す。ウィルスが現在の密度に至るまでにどれくらいかかるのか、コンピューターで計算してみるんだ。」
「なるほどう。」 表示されたグラフを見るオブライエン。「それ何だよ。2年以上前に感染してたの。」
「それ以上だ。理解できない。これだと、女性流動体生物とつながる前に感染したことになる。」
「そんな前に移ってて、なぜ今まで症状が出なかった?」
「確かにな。出た、宇宙暦 49419 だ。」
「ほぼ 3年前だぞ。」
「待ってくれ。49419 は……オドーが、艦隊医療部に行った時だ。」
「ほんとか?」
「もちろん。だからヒリヤードの奴、必死にファイルを隠してたんだ。セクション31 がウィルスを発明し、オドーに感染させたんだよ。キャリアーとして利用したんだ!」
「ほかの可変種とつながる度に移すようにか? そしてついに全体が感染した。」
「僕らが治療法を見つけるのを防ごうとしていただけじゃなかった。彼らが犯した大量虐殺を隠すためだったんだ。」
「ウィルスを発明できたのなら、治療法もある。」
「何としてもその治療法を手に入れなくては。」
「ああ、31 に気づかれる前にな。」



・感想
今週も盛りだくさんな内容でした。先週のような戦闘シーンはないものの、各ストーリーの濃さは上回っています。ウェイユンなど登場していないキャラもいるのですが、それを感じさせません。さすが俳優の監督作品ですね。その中でもデュカットの失明は意外でした。そのシーンを予告編で観た時は、またパー・レイスが乗り移ったのかと思いましたが…。
驚きといえば、やはり最後のセクション31 の仕業でしょうか。3年前にウィルスを感染させたということは、創設者との遭遇から 1年ちょっとで完成していたことになります (オドーの研究も使われたとすれば、情報はもっと古いものも利用されたのでしょうが)。ベシアとオブライエンが独自に調査している点も重要ですね。


dot

previous第170話 "The Changing Face of Evil" 「変節の時」 第172話 "Tacking into the Wind" 「嵐に立つ者たち」previous
USS Kyushuトップ | DS9 エピソードガイド