ディープスペースナイン エピソードガイド
第165話「アドリブ作戦で行こう!」
Badda-Bing, Badda-Bang
イントロダクション
※1アライグマ帽を手にするヴィック・フォンテーン※2。「アラモなら知ってるさあ。」 ベシア:「ほら、そう言ったろ?」 「ローレンス・ハーヴェイ、リチャード・ウィドマークにジョン・ウェイン※3。戦闘シーンがすごい。長いのが玉にキズだがね。」 オブライエン:「映画の話じゃないんだ。」 ベシア:「ああ、ホロスイート・プログラムのアラモの方。」 ヴィック:「そのアラモか。それが?」 「1時間予約してあるんだけど、ヴィックも一緒にやらないかと思って。」 「お誘いは光栄だけどね。どうかな。」 オブライエン:「ヴィックのマトリックスを、アラモに転送するよ。」 ベシア:「たまにはヴェガスを出たっていいだろう。」 ヴィック:「そりゃあそうだが…今回は遠慮しよう。」 「どうして。」 「ウェスタン・ルックが似合わない。」 笑うオブライエン。 ヴィック:「でもせっかくだ。テキサス気分になれる歌をプレゼントしよう。頼むよー! 『アラモ』※4だ。」 ステージに上がり、バンドの演奏が始まる。 Walkin' around in San Antonio Baby, I'm lonesome tonight 誰もいなかった席には人があふれ、騒がしい。 Davy Crockett really came... ブーイングが起こる。「帰れー!」 仕方なく歌をやめるヴィック。ステージの奥から、腕だけが見える。 口笛が鳴らされる。肌も露わな女性たち※5が出てきた。 男達の声が飛ぶ。「邪魔だ、爺は引っ込め!」 ベシアとオブライエンも立ち上がり、ステージを見る。 騒ぐ観客。「たまんねー!」「イエーイ!」「踊れおどれー!」 呆然とするヴィック。 列になって踊るダンサーたちに、歓声が上がる。「色っぽいね、いいぞ!」 ヴィックはステージを降りた。「何だこりゃあ!」 ベシアたちに近づく。 ベシア:「どうなってるんだ!」 「こっちが聞きたいよ。」 オブライエン:「多分、ホロスイートのパラメーターファイルのポインターミスだろう。」 男の声が響いた。「これはこれは。色男の歌い手さんか。」 大柄の男を連れ、その声の主はラウンジに入る。 ヴィックは知っているようだ。「フランキー・アイズ※6? ヴェガスで何してる。」 フランキー:「ご挨拶だなあ。こういう時は『久しぶりだな』ぐらい言うもんだろ。愛想がないねえ。…ひどいもんだよ。」 隣にいる男。「礼儀も知らねえ。」 フランキー:「お里が知れるね。」 ベシア:「こちらの『紳士』は友達か。」 ヴィック:「知り合いだ。」 フランキー:「フィラデルフィア時代から長いよな。」 うなずくヴィック。「ビジネスで来たのか、遊びか?」 フランキー:「しばらくいることになるな、ヴィッキー・ボーイ。トンズラでもするか?」 「そんな必要はないね。」 「それがあるんだな。このホテルを買った。クビだ。」 「クビにはできん。契約書がある。」 「まあ壁紙にでもするんだな。ヴェガスじゃあんたは終わりだ。」 「私を干す気か?」 「この街じゃもう、ウェイターの職にもありつけないだろうなあ。わかったら、さっさと出てくんだな。それとも放り出されたいか? どっちでもいいんだぜ。」 オブライエン:「俺に任せてくれ。コンピューター、キャラクター消去だ。フランキー・アイズと、それに…ああ…悪い、名前何だったっけ?」 大きな男は答えた。「チーチ※7!」 ベシア:「チーチだ!」 オブライエン:「チーチをプログラムから消去だ。」 チーチ:「プログラムって何スか?」 フランキー:「さあな。」 ベシア:「消えないぞ、チーフ。」 オブライエン:「コンピューター、プログラム停止。」 だが相も変わらず、ステージではダンスが続いている。 オブライエン:「消去アルゴリズムに、ちょっと問題があるらしいなあ。」 チーチはヴィックにつかみかかった。「ドアはあっちだ!」 ヴィック:「ちょっとじゃ、なさそうだ。」 |
※1: このエピソードは、1999年度エミー賞のヘアスタイリング賞にノミネートされました ※2: Vic Fontaine (ジェイムズ・ダーレン James Darren) DS9第162話 "The Emperor's New Cloak" 「平行世界に消えたゼク」以来の登場。声:堀勝之祐 ※3: 順に Laurence Harvey、Richard Widmark、John Wayne 1960年の映画 "The Alamo" 「アラモ」のこと ※4: "Alamo" ※5: ダンサー Dancer (Jacqueline Case)、(Kelly Cooper)、(Michelle Johnston)、(Michelle Rudy)、(Kelly Sheerin) ※6: Frankie Eyes (ロバート・ミアノ Robert Miano) ※7: トニー・チーチ Tony Cicci (マイク・スター Mike Starr) |
本編
フランキーは尋ねた。「さあ、どうする、ヴィック?」 ヴィック:「荷造りでもするかな。」 「それが利口だ。チーチ、行くぞ。カジノの入りを見てこよう。」 ヴィックを下ろすチーチ。フランキーと共に歩いていく。 ヴィックはため息をついた。 ベシア:「参ったな、どうする。」 ヴィック:「どうにもならんよ。…奴は組織の人間なんだ。」 「フランキーの話じゃないよ。プログラムを早く修正してくれないと。」 オブライエン:「手動で停止するのは可能だ。で、リセットする。でもヴィックの記憶が消えちまう。起動してからのメモリーがなくなるからな。」 ヴィック:「記憶を消すなんて勘弁してくれよう。」 ベシア:「そんなことしないさ。ほかに手があるだろ。」 オブライエン:「どんな手があるんだ?」 「フィリックス※8に聞いてみよう。このプログラムを作ったのは彼なんだ。」 ヴィック:「頼むよ。」 オブライエン:「でもそれまでは、フランキーに近づかないようにな。」 「それには異論はないね。」 司令室で話すノーグ※9。「フランキーって奴、もしヴィックに怪我でもさせようもんなら…俺が黙っちゃいませんから。」 ウォーフ:「ホログラムのことでなぜそう真剣になるのか、理解できないな。」 「ただのホログラムじゃないですから。友達です。」 オブライエン:「ヴィックを嫌いか?」 ウォーフ:「歌手としての彼は…一流だろう。だがそれだけのことだ。好きでも嫌いでもない。ただのホログラムだ。現実には存在しないんだからな。」 キラ:「私には現実。」 ウォーフと入れ違いにターボリフトでやってきたベシア。「今フィリックスと話したよ。プログラムが乱れてる理由がわかった。ビックリ箱だ。」 ノーグ:「何?」 オブライエン:「ビックリ箱だよ。地球のおもちゃで、箱を開けると人形が飛び出して『ビックリ』だ。」 ベシア:「このビックリ箱はちょっと違うけどね。」 ノーグ:「飛び出さないの?」 「ああ。プログラムの奥深くに、埋め込まれてるんだ。」 オブライエン:「そしてトラブルを起こす。退屈防止だ。」 ノーグ:「退屈なんて、してた?」 キラ:「ちっとも。ヴィックがいるだけで満足よ。」 ベシア:「でもとにかく、フランキーさえ追い出せば、全部元通りになるらしい。」 「ならよかったわ。」 ノーグ:「だけどどうやってフランキーを追い出す。」 ベシア:「知恵比べだね。ただ時代考証は守らなきゃならない。」 オブライエン:「つまり奴を撃つなら、フェイザーじゃなく 45口径か。」 「銃撃なんて危険すぎるよ。」 「マフィアに報復されるしな。」 「ヴィックに何かあったら、彼のマトリックスは永久に消える。」 ノーグ:「条件良くなるばっかりだよね。」 司令官室から出てきたシスコ。「何のことだ。」 キラ:「大佐、何でもありません。ホロスイート・プログラムのことで。」 ベシア:「ヴィックのホテルが買収されたんです。ギャングに。」 シスコ:「ほう。仕事にはいつ戻るんだ。」 オブライエン:「…今すぐに。」 シスコはターボリフトで去った。持ち場につこうとする部下たち。 だがノーグが言った。「チーフ、追い出し作戦には僕も入れてよ。ヴィックは恩人だ。足をなくしたら艦隊にいられないと思い込んでたのに、目を開かせてくれた。※10」 キラ:「私の人生も変えてくれた。オドーのもね。※11」 ベシア:「よし。作戦を立てよう。」 シスコの部屋。 キャシディ・イエイツ※12が食事している。「うーん、お父さんのレシピね。」 シスコ:「父さんは名コックだからね。」 「素敵。」 「一日、どうだった。」 「うん、まあまあね。」 「何かあったのか。」 「…ヴィックよ。」 「ヴィック?」 「ヴィック・フォンテーン。フランキーってギャングが彼のラウンジを乗っ取ったの。店は変わっちゃうし、元に戻す方法わからなくて。」 シスコは無言になった。 イエイツ:「何?」 シスコ:「別に?」 「こんな話あなたには、下らない?」 「ちょっとね。」 「だけど知ってるでしょう? ヴィックはただのホログラムじゃないの。みんなの…心の友なの。」 「キャシディ、何か別の話をしよう。」 「了解。…なぜヴィックの店に一度も行かないの?」 「いいじゃないか。君は好きでも、私は違う。それだけのことだ。」 「聞いただけじゃない。」 「だから答えただろう。」 「…時々あなたって人がわからないのよねえ。」 「…ま、それも魅力のうちじゃないかな。」 「そうやってごまかすのね。」 ホテルのドアを叩くベシア。 ヴィック:「誰。」 オブライエン:「マイルズと、ジュリアンだ。」 「今開ける。」 鍵を開ける音がする。 出てきたヴィックは、ひどい怪我をしていた。「ああ…君ら氷もってないよなあ…。」 倒れるヴィックを支えるベシアたち。 |
※8: Felix ベシアの友人。DS9第144話 "His Way" 「心をつなぐホログラム」より ※9: Nog (エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9第160話 "It's Only a Paper Moon" 「ペーパームーンに抱れて−戦争の影パートII」以来の登場。声:落合弘治 ※10: DS9 "It's Only a Paper Moon" より ※11: DS9 "His Way" より ※12: Kasidy Yates (ペニー・ジョンソン Penny Johnson) DS9第154話 "Take Me Out to the Holosuite" 「がんばれ、ナイナーズ!」以来の登場。声:弘中くみ子 |
ヴィックは声をあげた。「痛いよ、相棒! 奴の味方か?」 ヴィックを診ているベシア。「ごめん、肋骨にヒビが入ってる。それに左手首は捻挫。でもよかったね。頭蓋骨は無事だ。」 オブライエンから氷袋を受け取る。「ありがとう。」 氷を頭に当てるヴィック。「ああ、ホッとしたよ。ビックリ箱とは、フィリックスも何の恨みが。」 ベシア:「ヴィックがどうこうじゃない。僕を退屈させないように考えてくれたんだ。」 「そりゃあ私の仕事だ。」 「エンターテナーとしては、ほんともう、最高だ。」 オブライエン:「それで、何があったんだ?」 ヴィック:「あ、バスタブで滑った。」 笑うベシアたち。 オブライエン:「絆創膏を探して家具をひっくり返したって?」 ヴィック:「そんなとこだ。フランキーがチーチを送り込んできた。さっさと荷造りしろって念押しにね。ハ…」 「奴とはどういう関係だ。」 「近所の悪ガキ同士でいつも…三角ベースで負かしてね。」 ベシア:「それで?」 「それだけさ。昔から私が気に入らない。」 オブライエン:「フィリックスの奴、随分きっちりビックリ箱仕掛けてくれたもんだよなあ。」 「ハ、さすがだよ。」 ベシア:「しばらく休みとって、旅行にでも行ったらどう。」 「旅行? ディープ・スペース・ナインがドミニオンに乗っ取られるって時に、旅行だとう?」 オブライエン:「それとは別だろう。」 「同じだとも。ここが私の全てだ。尻尾を巻いて逃げたりしない。」 ベシア:「別に逃げろなんて言ってないよ。いい手を思いつくまで、身を潜めたらどうかな。」 「いい手?」 オブライエン:「フランキーを追い出すんだ。」 ベシア:「オドーとキラが、今ラウンジにいる。」 ヴィック:「何してる。」 オブライエン:「奴の情報集めさ。弱点を探り出さないとな。」 「…わかってて言ってるんだろうな。君らがしくじったら、砂漠に埋められるのは私なんだ。」 今夜もステージでダンスが続いている。 歓声を上げる男達。ウェイトレスたちが酒を運ぶ。 それぞれスーツとドレス姿の、オドーとキラがやってきた。 キラ:「いいわよ、あなたがここをチェックして私がカジノでしょ?」 オドーはダンサーに見入っていた。「あ、ああ…いや、私が向こうに。」 笑うキラ。「目の保養して。だけどいい? 仕事は忘れないでよ。」 なまめかしい踊りを続ける女性たち。 オドー:「もちろん。」 振り返るが、既にキラはいなかった。 チーチが話をしながら笑っているのが聞こえる。「…そいつを車に乗せて、森へ連れてったのさ。」 オドーは近づいていく。「バン、バン、バーン※13! 後頭部に 3発、ぶち込んだ。リトル・ポーリーの最期だ。報告に戻ったらフランキー、何て言ったと思う。『リトル・ポーリー? 阿呆! ビッグ・ポーリーをやれって言ったんだ!』」 また笑う一同。「…この家業の悪いとこだ。ポーリーって奴が多すぎるのさ!」 オドーも一緒になって笑い始めた。 カジノでカードゲームをしているキラ。「ちょうだい。」 クイーン、6 の次は、8 のカードだ。「…終わりね。」 フランキーが近づく。「気が早いな。レディにそのカードはないだろう。もう一枚。」 キラ:「ルール違反じゃないの?」 「気にしないでくれ。チップを倍に。」 キラが出したチップに、更に加えるフランキー。「ふーん。」 ディーラー※14が出したのは 10。 フランキー:「26? 何のつもりだ。もう一枚。」 次はクイーン。 カードを投げるフランキー。「俺を怒らせるなよ!」 5 を出すディーラー。 フランキー:「21。やっとだ。支払いを。」 ディーラー:「はい。」 「勝ってるうちに、やめた方がいい。」 キラ:「うーん。」 「俺はフランク・チャロマーズ※15。だが通称、フランキー・アイズだ。」 「どうして?」 「イカサマは見のがさない。」 「あら、相当自信家ねえ。」 「不安は負けを呼ぶ。」 「それに哲学者。」 「本でも書くよ。」 「何てタイトル?」 「…考えるのを手伝ってくれ。」 「才能の切り売りはしない。」 「それイケる。タイトルにしよう。」 「アイデア料はもらったわ?」 「じゃあ、ルーレットで第一章のアイデアも売ってもらえるかな?」 ルーレット台の方から声が聞こえる。「さあ、ほかのお客様はどうです? まだ賭けられますよー。運試しはどうです? さあ、どうぞ。」 フランキーはキラを連れて行く。 チーチはバーテンを呼んだ。「おい、マックス。来いよ。これ見てみろ。」 席についているオドーは、右手の少し前にグラスを置いた。 チーチ:「ああ。」 オドーの裾をつかむ。 オドーは可変種であることを利用して、手首だけを伸ばし、グラスを手に取った。そのまま腕を引っ込める。 チーチ:「ああ、すっげえな、2回目だあ。」 笑う。「20年いろんなバーへ行ったが、こんな芸当初めてだ。」 オドー:「大したことじゃない。」 「聞いたか。世界の不思議に入ろうって男が。どこ出身だって?」 「ベイジョーだ。」 「…ニュージャージーだよな?」 「ああ。」 「おい、マックス。こいつにもう一杯やってくれえ。ヘヘ…」 オドーはホテルで話す。「フランキー・アイズは、どうも…カール・ジーモ※16って男の指示でヴェガスへ来たらしい。」 イエイツや、他の士官も集まっている。 ヴィック:「ハ、フランキーは出世してるらしい。」 キラ:「ジーモって人知ってるの?」 「裏社会を牛耳ってる。表向きは人のいい老人だが、残忍で恐ろしい男だ。やっと事情が飲み込めてきた。フランキーにホテルを買う金があるはずないと思ってた。」 エズリ:「ジーモにはある。」 「腐るほどね。ジーモにとってもうまい話だ。カジノの上がりは月に、大体100万ドル。キャッシュだ。そこから、ジーモへの上納金が…20万ドルかな。」 オドー:「つまり、『ピンハネ』だな?」 「帳簿には載らず、税金もなし。フランキーにとっては儲けの一部をジーモに回せば済むだけだ。」 キラ:「フランキーによると、ジーモが最初の上がりを受け取りに、6日後訪ねてくるそうよ。ヴェガスは初めてだからお楽しみも兼ねて自分のホテルを見に来るって。」 オブライエン:「金を納められなかったら…フランキーはどうなるのかな。」 ヴィック:「ヘヘ…フランキーもバカじゃない。」 ベシア:「マイルズ、同じこと考えてるのか?」 オブライエン:「お前も考えてたのか?」 「僕たちでジーモに、一セントも渡らないようにすればいいんだ。」 エズリ:「カジノのお金を盗み出すってこと?」 オブライエン:「そういうこと。」 イエイツ:「危なくないの?」 ヴィック:「ギャングの金だぞ、もちろんだとも。見つかったら、即この世とおさらばだ。」 オブライエン:「じゃ見つからなきゃいいんだろ?」 「…君たちどうかしてるぞ。第一、金は金庫の中だ。」 ノーグ:「どんな金庫?」 「さあねえ、集計室にある。ドアの外には守衛が 24時間張り付いてる。それをかいくぐっても、また難関だ。中には集計人が 2人いる。」 キラ:「どんな金庫か調べるわ。」 ベシア:「守衛も何とか、やり過ごす。」 イエイツ:「集計人も。」 エズリ:「ほかのことも全部カバーする。」 オブライエン:「決まりかな?」 ベシア:「決まりだな。」 キラ:「乗った!」 オドー:「私も。」 イエイツ:「当然。」 エズリ:「OK。」 ノーグ:「やるぞー。」 ヴィック:「ハ、待てよ。つまりこういうことか? マフィアに一杯食わせて、100万ドルを奪い取ろうって言うのか?」 オブライエン:「ヴィック…もう一度あのラウンジで歌うんだ。」 ヴィックは笑った。「…乗った。」 |
※13: Badda-bing, badda-bang 原題 ※14: Croupier (Sammy Micco) ※15: Frank Chalmers ※16: Carl Zeemo |
大量のお札が、テーブルの上に置かれていく。 集計人のアル※17がまとめていく。 フランキー:「いい眺めだと思わないか?」 キラ:「実入りのいい日だったみたいね?」 フランキーはその中から、金をキラに渡した。「夜はこれからだ。」 キラ:「あ…私に?」 アルが見ている。「それとも預かっておくだけ?」 「お前のものだ。外で増やせばいい。」 「ああ…手伝ってくれる?」 フランキーはアルに言った。「何見てんだ。」 アル:「別に。」 「いいから数えろ!」 作業に戻るアル。 フランキー:「じゃ、行こうか。」 キラと共に集計室を出ていく。 スロットマシーンで遊ぶイエイツは、キラたちが去ったのを確認して、そばにいる守衛※18に話す。「ほんとにノースカロライナのアッシュビル高校に行ってなかったあ?」 守衛:「残念ながらね。」 「変ねえ。当時のフットボール部のキャプテンそっくりなのに。彼に夢中だったの。」 「…いやまあ、実は僕も…フットボールはやってた。」 「やっぱり! たくましい身体してるもの?」 笑う守衛。イエイツの目は鋭い。 怒るチーチ。「これがチーズステーキサンドかあ! こんなもん、お巡りでも食わねえぞ。」 持ってきたウェイターを、そのサンドで叩く。 オドーがエズリを連れて入る。「いいかな? チーチ、話がある。」 チーチ:「ちょっと待ってくれ。おい、本物のフィラデルフィア・チーズステーキサンドが食いたいんだ。飛行機で買ってこい!」 ウェイターの口にサンドを詰め込む。倒れたウェイターは、慌てて飛び出していった。 チーチ:「ああ…ロクな食いもんがねえ。」 うなずくオドー。「エズリ、こちらトニー・チーチ。」 エズリ:「はじめまして。」 チーチ:「ほう…べっぴんさんだなあ。」 オドー:「エズリは街に来たばかりで、仕事が欲しい。」 エズリ:「ウェイトレスにして下さい。」 チーチ:「ああ、美味いピザおごってくれたらな。」 「今はちょっと。厨房に頼めばいいの?」 「いいよう。ここのコックはピザがどんなもんかわかってねえんだ。」 オドー:「ハ。」 笑うエズリ。 チーチ:「うん、ウェイトレスの件は、俺に任せときな。」 エズリ:「本当に? 助かります!」 オドー:「すまん、一つ借りだ。」 チーチ:「いいんだよ、ストレッチ。また例のやつ、見せてくれりゃあ。」 笑う。 チーチは外にヴィックが立っているのに気づいた。「ああ…懲りねえ奴だ。」 近づいてくるチーチに話すヴィック。「おい、待てまて。ちょっと待ってくれ! 揉めたくはない。」 チーチ:「そりゃあありがたいね。」 「フランキーに会わせてくれ。お互い、損にならない話がある。済んだことは水に流そう。」 ルーレット台。 ヴィック:「フランキー、助けてくれえ。サンズも、デューンズも、どのホテルも雇ってくれないんだ。」 フランキー:「そんなことは知ってる。」 隣にキラがいる。 「ここはお互い水に流そう。」 進行するルーレット。「黒の 17です。」 フランキー:「俺は構わんよ。お前次第だ。」 ヴィック:「頭を下げろと言うなら下げる。誠意を見せる。チャンスをくれ。ギャンブル好きの大金持ちを大勢知ってる。連中を連れてくるよ。」 「何だ? サクラをやるか?」 「一晩で、一万二万三万だって賭ける連中だ。」 キラ:「やらせれば? これ以上哀れっぽい泣き言はウンザリ。」 フランキー:「2、3人連れてこい。それからだ。」 ヴィック:「助かったよう。一杯、おごらせてくれ。」 「負け犬とは飲まん。験が悪い。あっちの、ポーカーテーブルへ行こうか?」 キラと一緒に離れるヴィック。 後ろで見ていたチーチは、歩いていく前に言った。「働けよ!」 ヴィックは微笑んだ。 尋ねるシスコ。「何の役だって?」 イエイツ:「集計室へ忍び込む間、守衛の気をそらす役。」 「キャシディ、本気で関わってるとは信じられん。くだらなすぎる。」 「何よ、がんばれって言ってくれないの?」 「しかもうちの上級士官が、ほぼ全員、このたわごとに関わっているとはね。」 「友達が困ってる時は助けて当然でしょう? たとえホログラムでも、ヴィックが困ってるの。関心ないんでしょうけどね。」 「問題なのはヴィックのことじゃない。」 「だったら何なのよ。」 「知りたいか。何が気に入らないか、本当に知りたいのか? じゃあ言おう。1962年のラスヴェガスという設定だ。1962年には、黒人は歓迎されていなかった。ダンサーや清掃係はいただろうな。だが客は皆無だ。」 「実際のヴェガスじゃそうだったかもしれないけど、ヴィックの店じゃ違うわ。私一度も不愉快に感じたことないし、ジェイクだって同じよ。」 「だからそれが、まやかしなんだ。1962年には、公民権運動は産声を上げたばかりで、我々には苦難の時代だった。何もなかったような振りはできないね!」 「…ベン。私もヴィックのラウンジが事実を忠実に再現してないのはわかってるけど、それも…反省あればこそよ。こうあるべきだったのにって姿を…見せてくれてるんだわ。」 「歴史の真実から目をそらすべきじゃない。」 「…頑固ねえ。別にヴィックの店に行ったからって、過去を忘れたりはしないわ! その歴史があった上で、今は何の制約もないってことを感謝するだけよ。あなた自分で自分を縛ってるんじゃない。」 ホロスイート。 イエイツ:「ウォーフはどう?」 キラ:「ダメ。彼は見込みなし。」 エズリ:「クワークがいるわ。」 オドー:「どうかな。ヴィックを商売敵だと思ってる。」 ドアをノックする者がいる。 ノーグ:「僕が出る。」 オブライエン:「こいつを隠そう。」 見取り図を描いた黒板を、ベランダへ入れる。 エズリ:「ほぼ完璧なのに、あと一人足りないわ。」 ベシア:「ヴィックの連れの金持ち役がね。派手に賭けて、集計室から目をそらさないと。」 オブライエン:「でなきゃ計画がパーだ。」 入ってきたのは、スーツを着たシスコだった。「ここでオジャンにはできないな。」 驚く部下たちに言う。「何だ、どうした? 何をするのか言ってくれ。」 |
※17: Al (James Wellington) ※18: Guard (チップ・メイヤー Chip Mayer) |
ヴィックは言う。「もう一度おさらいしよう。」 ノーグ:「またやるの? もうみんな、自分の役目はわかったよねえ。」 エズリ:「計画自体はシンプルだもの。」 ヴィック:「もちろん信用はしてるさ。艦隊士官はみんな優秀だからね。」 オブライエン:「ただ現金強奪は、艦隊士官の仕事には入ってないからな。」 キラ:「ミスは絶対許されないわね。」 シスコ:「ミスは犯さない。再確認しよう。」 ヴィック:「そうこなくっちゃ。」 黒板を裏返す。「全てはキラからだ。」 微笑むキラ。 ヴィック:『フランクを、カジノと集計室から引き離す。』 フランキーはキラの手を取り、キスをした。 ヴィック:『それから私と大佐が、クラップスのテーブルで…派手に大金を賭けて、周りの目を引きつける。』 タキシードを着たシスコとヴィック。 シスコ:『元手はどこで調達する?』 ヴィック:『私もそれくらいは蓄えはあるさ。毎晩 11時45分きっかりに…』 ヴィックは集計室からアルが出てくるのを見た。 シスコ:『アルが…集計人の一人が、うちに電話をかける。時計のように正確にな。毎晩 8分電話で話す。』 時計を見るアル。 集計室には別の集計人がいる。 ヴィック:『その間に、もう一人の集計人ハワードが、マティーニを注文する。』 ウェイトレスのエズリ。 エズリ:『私の登場。まずポーカーの 3番テーブルに寄って、ジュリアンに一杯渡す。』 ベシア:『そしてもう一杯に薬※19を垂らす。』 かき混ぜるエズリ。 エズリ:『その後、集計室へ持っていく。』 守衛が集計室の鍵を開ける。 計算しているハワード。 エズリ:『トレイごと置いて部屋を出る。』 ヴィック:『エズリが、集計室を出たら…』 イエイツ:『私が守衛に駆け寄って、チーフが私のチップを盗んだと訴える。』 オブライエンを指さす守衛。近づく。 ヴィック:『とにかく、何でもやって引きつけてくれ。必要とあれば、涙も流してね。チーフは、知らぬ存ぜぬだ。』 オブライエン:『「俺は無実だ! こんな女、見たこともない。」』 『その調子! 2人で少なくとも、2分間は守衛をドアから引き離しておいてくれ。』 ベシア:『マティーニを飲むと、ハワードは集計室からワープスピードで飛び出してくる。』 口を覆いながら出てくるハワード。近くに清掃係の姿をしたノーグがいた。 ノーグ:『そこで僕の出番。』 中に入るノーグ。 ヴィック:『フェレンギの素晴らしい耳を生かしてもらおう。』 ノーグは金庫に耳を当てる。 ノーグ:『金庫を開けたら…』 さっきエズリが持ってきたトレイが、形を変えていく。 オドー:『大金の入れ物が必要になるな。』 スーツ姿のオドーになり、片手はアタッシュケースを握っている。 ヴィック:『100万ドルは重いぞう。独りで大丈夫かなあ。』 オドー:『そのくらい何とかなります。』 ケースを開け、金庫から大量の札束を入れていく。ノーグは着替える。 ヴィック:『カジノから出るまで、誰とも話すな。目を合わせるな。そして絶対に、走るな。出口へ歩き、金を外のゴミ箱へ捨てるんだ。金庫は空で、上納金もない。フランキーは、一巻の終わりだ。』 出て行く 2人を見るシスコとヴィック。 ベシア:『全ては元に戻り、僕らはシャンパンを開ける。』 確認を終えるヴィック。「…音楽が聞こえてくるようだなあ。」 シスコ:「8分間だ。8分間で集計室へ忍び込み、金庫を開け、金を詰め、出てこなきゃならない。」 ベシア:「5分でできますよ。」 ノーグ:「それで、いつ決行します?」 イエイツ:「早い方がいいわね?」 エズリ:「ジーモが来るのは 2日後よ?」 シスコ:「選択の余地はないな。明日の夜だ。」 笑うヴィック。「全く! イカレてる。」 医療室。 コップの水に入れられた紫色の薬は、少しかき混ぜるだけで見えなくなった。 オブライエン:「こりゃ早い。」 ベシア:「そうでなきゃ。」 ノーグは金庫を開けようとしている。 成功すると、向こう側にエズリがいた。「2分14秒よ?」 ノーグ:「もっと早くやらなきゃ。」 「そうね。」 上級士官室に置かれた、金庫の扉部分だけを再び閉めるノーグ。「ゴー!」 キラがドレスを着るのを手伝うオドー。肩にキスする。 台にダイスを投げるシスコ。笑う。 奥からイエイツがやってきた。「そろそろ服着ちゃって。時間よ。」 シスコのネクタイを締める。 各々の服装に着替えた 8人は、列をなしてプロムナードを歩いてくる。 それを見つめるクワークたち。 店に入り、2階へ向かう 8人。 クワーク:「まずいぞ、モーン。ヴィックの店で怪しげなことになってるぞう?」 うなずくモーン。 ラウンジへ入るキラ。 フランキーは独りで酒を飲んでいた。「ああ…。」 隣に来たキラに気づく。「いつ見ても見飽きないな。」 キラ:「それって顔だけ?」 「ほかは見たことがない。」 「ことわざにもあるじゃない。『待てば海路の日和あり』って。」 「待って…何人望みを遂げた?」 「教えてあげなーい。」 「だと思ったよ。」 イエイツとオブライエンは、同じブラックジャックのテーブルにいる。 イエイツ:「うーん、19 よ? これよりいいの出せる? …23! ダメね。」 オブライエンは集計室を見て、ポーカーテーブルの方に目を向けた。 オブライエンと視線を交わしたベシア。やってきたウェイトレスに注文する。「ウォッカマティーニ、軽く…混ぜたの。」 そのエズリは応えた。「はい、ただいま。」 ディーラーの声が響く。「黒の 17 に入りました。」 シスコは札束を置いた。「1万ドル。」 ディーラー:「いきますねえ。さ、チップをどうぞ。賭けて下さい。イレブンで 10ドル。」 ヴィック:「100ドルかあ?」 シスコ:「多いかな?」 「大金持ちの役なんだぞ、最初から飛ばして、2千ドルだ。」 「ああ…2千ドルね。」 フランキーは尋ねた。「クラップスで遊ぼうか? スッてもいいぞ?」 キラ:「喉が渇いたから、まず何か飲ませて? 酔ったら何かいいことあるかもね?」 「なるほど。そいつはいいな。」 フランキーを連れていくキラ。 アルが集計室から出てきた。 確認するヴィック。「スタートだ!」 電話をかけ始めるアル。 時計を見たエズリは、マティーニを持っていく。 ベシアがいるポーカーテーブルへ近づく。 だが通りがかった男とぶつかり、トレイごと落としてしまった。「すいません!」 ベシアは立ち上がった。「大丈夫だ。」 近くにいた別のウェイトレスから、マティーニを取る。「悪いね。」 トレイを拾うエズリ。 ベシアはグラスを載せるのと同時に、薬を注入した。 目を合わせる 2人。エズリはグラスをかき混ぜる。 クラップスのディーラー。「では、次のシューターです。」 シスコ:「ここから面白くなるぞう? 来いよう! 7 だ!」 集計作業が進んでいる。慎重にマティーニを運ぶエズリ。だが集計人を見て驚く。「ハワードじゃない!」 別の集計人※20がいた。「風邪で帰った。」 エズリ:「…じゃあ、これ飲んじゃって下さい。」 「喉は渇いてない。」 「でも…」 「おい、数がわからなくなるだろ?」 「すいません。…じゃ飲んじゃおっかな。何時間も立ちっぱなしだし、飲めばちょっとは元気が出るわ。」 「お前らも苦労するな。涙が出るよ。」 集計人はグラスを手に取り、飲み干した。 ゲームが進むクラップス。「7 が出るまでです。賭けて下さい? さあ、どうぞ。」 シスコ:「ツキが回ってきたぞ。」 「賭けて下さい? よろしいですか。」 オブライエンを見るヴィック。 集計室から出てくるエズリを見ると同時に、イエイツとオブライエンは行動を開始した。 イエイツが守衛に駆け寄る。「お願い、助けて、あの男が! あの男が私のチップを盗んだの!」 守衛はオブライエンに言った。「おい待て! そこで止まれ。」 オブライエン:「俺か?」 「この人のチップを盗んだって?」 「ヘ、そんなことしてない。」 イエイツ:「嘘よ。この男が盗んだのよ! 泥棒!」 「酔ってるだろ。」 「酔ってません!」 守衛:「とにかく、ちょっと落ち着きましょう。」 「だってお金が盗まれたのよ?」 口論を続ける 2人。 オブライエン:「冗談じゃない。」 「盗んだじゃないの。」 「あんたの金なんか盗んでないよ。」 「嘘つき!」 集計室から集計人が口を押さえて走り出てきた。 近くを掃除していたノーグが部屋に入る。 金庫に耳を近づけるノーグ。 トレイは形を変えていく。 ノーグ:「やばい。」 オドーの姿になった。「何が『やばい』んだ。『やばい』ことに関わる暇はない。」 ノーグ:「この金庫、自動再ロックシステムだ。自動再ロックシステムだなんて聞いてないよ。」 「キラは知らなかったんだろうな。」 「これじゃ時間が足りない。」 「やるしかないだろ。」 取りかかるノーグ。 キラと話すフランキー。「この手で、バグジー・シーゲルと握手した。ヴェガスを造った男さ。」 手を握るキラ。「ああ…。」 フランキー:「先を見通してた。なのにこの街には彼の銅像もない。」 「世の中おかしい。」 「全く。」 笑うフランキー。「本当にカジノへ行かなくていいのか?」 「私は、ここがいいわ。」 「美人にゃさからえない。」 酒を注ぐフランキー。 まくし立てるイエイツ。「突っ立ってないで、この男捕まえて! 200ドル分のチップ盗んだんだから。」 オブライエン:「俺は 5ドルしか持ってなかっただろ。」 「信じちゃダメ!」 「勘弁してくれ! この女どうかしてる。」 「ちょっとあんた、それどういう意味よ。」 「言った通りの意味さ。」 2人の様子を見ているヴィック。 クラップスの周りが盛り上がった。 シスコ:「やった! ビギナーズラックだ! これはディーラーに。」 ヴィック:「もう 6分だ。」 「何をグズグズしてるんだ。」 アルが電話を終わらせようとしている。「もう切るぞ。時間オーバーだ。それじゃあな。」 ノーグは金庫を開けることができない。 外の様子を気にするオドー。 キラも時間を見る。 フランキー:「急いでるのか?」 キラ:「…私?」 「時計ばかり見てる。」 「そう? あはは、気づかなかった。」 「それに酒も、飲んでない。」 「これは…若くないし、ペース配分よ。」 「ペース配分? 何で。」 チーチが近づく。「フランキー、お客が来てる。」 フランキー:「忙しいんだ。」 声が響いた。「そうは見えないな。」 若い女※21を連れた老人だ。 フランキー:「ああ…これは、ジーモさん※22。いらっしゃるのは明日じゃ…。」 ジーモ:「何か都合でも悪いのか?」 「いえ、とんでもない。どうぞ、飲み物を。」 「飲むのは後だ。それよりも、集計室は?」 「ああ…こっちです。」 予想外の出来事に、キラは言った。「あ…ジーモさん。」 手を伸ばす。「お会いできて光栄です。」 ジーモ:「それで?」 「…フランキーからお話は伺ってました。」 「フランキー。」 フランキー:「はい。」 「金だ、フランキー。」 「…こちらです。」 「早くしてくれ!」 案内するフランキー。時計を見るキラは、とりあえずついていく。 オドーは言う。「ノーグ。もう 8分になる。時間がないぞ?」 急ぐノーグ。 |
※19: 原語ではトコン (吐根、ipecac) ※20: Countman (ボビー・ライリー Bobby Reilly 通常のロバート・オライリーとは異なったクレジット表記。TNG/DS9 サブレギュラーのガウロン総裁 (Chancellor Gowron)、TNG第45話 "Manhunt" 「魅せられて」のスカーフェイス (Scarface) 役) ※21: クレジットでは「ブロンド (Blonde)」。(Andrea Robinson) ※22: ミスター・ジーモ Mr. Zeemo (マーク・ローレンス Marc Lawrence TNG第57話 "The Vengeance Factor" 「復讐の虜」のヴォルノス (Volnoth) 役) |
金庫を開けようとするノーグ。 外を確認するオドー。 だがノーグは、また失敗した。 時間を気にするヴィック。 アルは電話を終わらせようとしていた。「ああ。もう切るからな。じゃあな。」 ベシアは微笑む。ポーカーの良い手ができた。 だがアルが電話を終わらせたことに気づいた。「降りる。」 テーブルを離れ、アルに近づいた。「失礼! アルだよね。」 アル:「あんたは?」 「フランキーが呼んでる。」 「フランキーが?」 「あんたを待ってる。裏でね。」 「…俺は、何もしてないぞ。」 「なら心配いらないだろ?」 ベシアはシスコたちを見てから、アルを追った。 ヴィック:「まさか、そんな!」 シスコ:「どうした。」 ジーモたちがカジノに入る。 シスコ:「ジーモ!」 ヴィック:「早く来たんだ。私が時間を稼ぐよ。」 ジーモの連れの女性に近づくヴィック。「ニーナ! ニーナ。やあ、奇遇だなあ。」 抱き合う。 ジーモ:「こいつは?」 フランキー:「何でも。おい、ヴィック。消えろ!」 ヴィック:「どこに姿をくらましてたんだ。」 女性:「あなた、誰よ?」 「マイアミだよ。あの 1週間を忘れた? 彼女のビキニ姿ときたら。うーん、マンマミーア。」 笑うヴィック。 ジーモ:「お前いつマイアミへ行った?」 女性:「何の話かわからない。」 ヴィック:「この男は? おじいちゃんかい? ハハア…。」 ジーモ:「フランキー。」 フランキー:「チーチ。」 チーチ:「終わりだな。」 「始末しろ!」 ヴィックを連れていくチーチ。「こっちへ来るんだ。」 ジーモ:「フランキー。早く金を見せろ。」 フランキー:「ええ、わかってます。こっちです…」 その時、シスコは言った。「今日はお祝いだ!」 稼いだ金を、まき散らす。 驚くニーナ。手を広げる。 ベシアも便乗して手持ちの札束を投げあげた。 カジノの中は大混乱だ。 外の騒がしい様子に気づくオドー。 ノーグはまだ開けられない。 金をまくベシア。 チーチも拾い始めた。 ジーモ:「どうなっとるんだ!」 我先にと金を取り合う人々。 エズリもヴィックたちに合流する。 金庫に手応えがあった。 笑い、開けるノーグ。「ちょろいね。」 金を入れていくオドー。ノーグは着替える。 オブライエンも騒ぎを目にする。「もう行っていいか?」 イエイツ:「どこへも行かせないわよ。この人捕まえて。」 守衛:「チャーリー!」 別の守衛を呼ぶ。「来てくれ。」 金を全て入れていくオドーたち。 守衛はチャーリーに指示した。「この人を、警備室へ…連れてってくれ。」 イエイツ:「でも、あなたに捕まえて欲しいわ。」 「持ち場を離れられない。チャーリー、脱がせて調べろ。」 連れられるオブライエン。「脱がせる?」 イエイツに微笑む守衛。 イエイツはノーグたちが集計室から出てくるのに気づき、守衛に抱きついた。「ああ!」 別の方へ歩いていく 2人。 守衛:「まあまあ、泣かないで。」 オドーとノーグはカジノを離れる。 イエイツ:「あのお金がいるの。ママに贈り物したくて。」 2人が去ったところで嘘泣きをやめ、イエイツはさっさと歩いていった。残される守衛。 上手くいったことを仲間と確認するシスコ。 ジーモ:「また面白い、経営だな。」 キラ:「グズグズしないで、フランキー。ジーモさんに集計室をお見せしなくちゃ。」 「お嬢さんの言う通りだ。」 フランキーはジーモを連れていく。「このカジノですが、買われて…全く大正解でしたよ。続々金が入ってきます。」 キラは微笑み、その場を離れた。 開けられる金庫。 フランキー:「でかいカバンをお持ちでしょうね。」 何も入っていない。 ジーモ:「ああ…。」 振り返るフランキー。 ジーモは怒った。「金はどこだ。ああ?!」 ラウンジで踊り続けるダンサーたち。 フランキーがやってきた。真後ろに男がついている。 ベシアたちはカウンター席にいる。 一瞬キラを見たフランキーだが、何も言わず歩いていく。チーチにも、銃を隠し持った男が後を歩く。 4人が出た直後、いつものヴィックのラウンジに戻った。ステージにはバンドがいる。 ヴィック:「こうでなくっちゃな。」 オドー:「さらばフランキー・アイズだな。」 キラ:「フィリックスに、ビックリ箱のフタを閉じたっていっといてよ。」 ベシア:「喜んで。」 ヴィック:「君らのおかげだ。シャンパンをおごろう。」 笑うキラ。オブライエンがスーツを着ながら戻ってきた。 ベシア:「いいね。」 オドー:「乾杯だ。」 ベシアはオブライエンに尋ねる。「どこにいたんだ。」 オブライエン:「聞かないでくれ。」 笑うエズリ。皆、グラスを手にした。 ヴィック:「アラモ砦の戦いをやる時は、呼んでくれ? アライグマ帽も被るぞ。」 ベシア:「絶対だよ?」 「ホログラムと、人との友情に。」 「乾杯。」 オブライエン:「乾杯!」 ヴィック:「借りが、できたな。」 笑うオドー。 ベシア:「乾杯、ヴィック。」 エズリ:「乾杯。」 グラスを掲げるキラとオドー。シスコとイエイツも乾杯する。 ヴィック:「よーし、みんないくぞ。」 演奏が始まる。「大佐? 一緒にどうです?」 呼ばれたシスコは、ステージへ向かった。 キラ:「何?」 イエイツは微笑んだ。 歌い始めるヴィック。※23 The best is yet to come and, babe, won't it be fine? You think you've seen the sun, but you ain't seen it shine Wait till the warm-up's underway Wait till our lips have met Wait till you see that sunshine day You ain't seen nothin' yet And, babe, won't it be fine? The best is yet to come, come the day you're mine Wait till your charms are ripe for these arms to surround You think you've flown before Now, wait till you're locked in my embrace Wait till I draw you near Wait till you see that sunshine place And, babe, won't it be fine? The best is yet to come The best is yet to come Come the day you're mine. |
※23: "The Best Is Yet to Come" この歌は CDアルバム "This One's from the Heart" に収録されています (シスコ=ブルックスとのデュエットではありませんが) |
感想
「スパイ大作戦」シリーズや、最近「オーシャンズ11」としてリメイクされた「オーシャンと十一人の仲間」に通じるものがある、全編が楽しいエピソードです (当然「オーシャンズ11」の前です)。最終章が近づく「ここにきて」というのは製作陣も考えていたようで、DS9 らしいところですね。実際、製作番号は来週のエピソードの方が前であり、このエピソードが最終章前の最後となっています。 最後にまるまる 2分間も使って、ヴィックとシスコ…というよりダーレンとブルックスの歌を含めてしまう思い切りのよさ。それだけに、しつこいようですが字幕がないのがつくづく残念です。ぜひ上記の歌詞を見ながら (または覚えて) 再度観てみて下さい、印象が全然違いますから。ちなみに冒頭で少し流れる歌、「アラモ」はオリジナル曲だそうです。だから CD にも収録されてないんですね。 |
第164話 "Chimera" 「仮面の下の孤独」 | 第166話 "Inter Arma Enim Silent Leges" 「闇からの指令」 |