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ディープスペースナイン エピソードガイド
第162話「平行世界に消えたゼク」
The Emperor's New Cloak

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・イントロダクション
※1ベシアとエズリが談笑している。
その様子を遠くから見ているクワーク。「全くもって胸くそ悪い野郎だあ。舐めるように彼女を見やがって。ムカツくぜ。あの手つき!」
オドーはクワークがエズリたちのことを話しているのに気づいた。「手がどうしたんだ。」
クワーク:「嫌らしいんだよ。逮捕してくれ。」
「無茶言うな。」
「奴も哀れだな。…エズリはこの俺を愛してる。」
「彼女がお前のことをか? はっきり言って私にはそう思えないね。」
「ありがとよ、オドー。」
ロム※2が駆け込んできた。「兄貴! マミーがね、グランド・ネーガスのゼクが消えちゃったって言うんだよ。」
クワーク:「消えたってどういうことだ。」
「ゼクはママに、新しい市場を開拓するというメモを残して出かけたらしい。」
「さすがネーガス。」
「5日で戻ると言ったのに、もう 12日も音沙汰なし。」
「…そんなに?」
オドー:「よくあることなのか?」
ロム:「こんなに長くは。旅行のことを誰も聞いてないんだ。ゼクは事故に遭ったか死んだのかも。何とかしなきゃ大変だ!」
クワーク:「ライサに寄ってるかもしれんぞ。ちょいと息抜きをしてるのさ。」
「ライサ? ゴージャスな女性たちがいる星だろ? マミーがいるのに?」
「…お前最近のマミーを見たか? 寄る年波には勝てん。」
「でも…」
「心配するなって、ゼクのことはほっといても大丈夫だって。今に戻る。」
「本当に?」
「じゃあな、ロム。…あばよ。」
店を出て行くロム。
クワークはベシアたちがいなくなっているのに気づいた。「あれ、エズリは?」
オドー:「ああ、彼女なら一緒に出ていったぞ、ベシアと。」
「一緒に?」
「ああ、2人で仲良くお手々つないでな。」
「……そうか。」

クワークは、金色をしたフェレンギ人の胸像の前で祈っている。「聖なる金庫※3様、貪欲は永遠なり。ささやかなる献金ではありますが、耳をおっぴろげて…どうか哀れな私の願いをお聞き届け下さい。今後もラチナムをたんまりもった客がドンドン店に集まるよう、商売繁盛をお願いします。…もちろん、ダボも下手な客がいい。…それから、ついでにもう一つ。」 ラチナムを像の耳に入れる。「ドクター・ベシアを何とかして下さい。うーん、暴力はいけませんが、しばらく顔を見なくて済むよう、上手くお取りはからいを。ヘ…ああ…それから、もう一つだけ。」 もう一枚入れた。「あ…実は…3ヶ月前から愛しのエズリにアタックしているんですが、ちっとも進展しません。…何とか、お力添えをお願いします。」
ドアチャイムが鳴った。クワークは像を隠す。何度も鳴らされるチャイム。
クワーク:「どうぞ!」
そこにいたのはエズリだった。だが制服も着ておらず、いつもと雰囲気が違う。
クワーク:「エズリ。」
エズリは突然クワークの腕をつかみ、後ろに回った。「ほかに誰かいる?」
痛みに声をあげるクワーク。「俺たちだけさ。」
無理矢理歩かせるエズリ。「そっちは寝室か?」
クワーク:「嬉しいねえ。初めてなんだから優しくしてよ。」
エズリは持っていたナイフをクワークのあごに近づけた。驚くクワーク。
エズリ:「何勘違いしてるか知らないけど、よく考えな。」
クワーク:「どういうこと? これ、新しいセラピーのつもりかい? 子供の頃の体験でも話そうか?」
「ふざけるな。」
「よかった。だって、将来の話がいい。ダックス、ダックス…君は俺にとって最高に魅力的な女だ。ああ…本当さ。」
「私はダックスじゃない。」
「おお…わかったぞ。その格好にナイフ、攻撃的態度はホロプログラムか。俺はシュマン※4だ。」
「シュマン?」
「ああ、君のことはトゥラナ※5と呼ぼう。『ヴァルカン愛の奴隷』※6 3巻のヒロイン。」
「あんた、ややこしい男だねえ。」
「ああ。」
ナイフを離すエズリ。「…ゼクはあんたを頼りにしてるようだけど、期待できそうもないね。」
クワーク:「ゼク? 何でゼクが関係ある。」
エズリはアイソリニアロッドを取り出した。「これを観ればわかる。」
再生される映像には、ゼク※7が現れた。『やあ、クワーク。わしだ。お前のグランド・ネーガスじゃ。わしが今どこにいるかわかるか?』
クワーク:「ライサですか?」
なぜかゼクの話がつながる。『馬鹿言え、よく考えてみろ。わしは平行世界におるんだ。なぜわしがここにいるか…』 話し続ける。
クワーク:「君はダックスじゃない。あっち側の人間か。」
エズリ:「やっとおわかり?」
「そうか…。」
ゼク:『…つまりだ、ちょいと面倒に巻き込まれた。わしは同盟軍の捕虜にされてしまったんじゃ。自由の身になるにはお前の力が必要だ。お前が船を消す遮蔽装置を持ってこなければ、わしは永遠に帰れないんじゃ。連中は装置をもっていない。前もってそれを知っておればよかったんだがなあ。』 エズリはため息をつく。『そしたらこんな目に遭わずに済んだし、その上いい商売ができて、一石二鳥だった。』 クワークもため息をつく。『とにかくだ、わしの運命はお前の手にかかっておる。遮蔽装置が必要だ、すぐに持ってきてくれ。わしにはお前しか頼る者がおらん。頼みを聞いてくれたらわしは終生お前に感謝し続けるじゃろう。それからイシュカに必ず伝えておくれ、愛しているとな。頼んだぞ。』 手を挙げるゼク。映像は終わった。
クワーク:「まさかこんなことに。」
エズリ:「3日以内に装置を用意しろ。」
「そんな無理だよう。ああ…遮蔽装置はそう簡単に手に入るものじゃない。」
「手に入れてもらう。」
「できなかったら?」
「爺さんは殺される。」
「ああ…。」


※1: 冒頭に "In memory of Jerome Bixby" (Jerome Bixby を追悼して) と表示されます。Bixby は、鏡像世界が初登場した TOS第39話 "Mirror, Mirror" 「イオン嵐の恐怖」の脚本を担当した方です。その他第66話 "Day of the Dove" 「宇宙の怪! 怒りを喰う!?」、第76話 "Requiem for Methuselah" 「6200歳の恋」の脚本、および第50話 "By Any Other Name" 「宇宙300年の旅」の原案・脚色も担当しています。1998年4月28日に 75歳でお亡くなりになりました

※2: Rom
(マックス・グローデンチック Max Grodenchik) DS9第160話 "It's Only a Paper Moon" 「ペーパームーンに抱れて−戦争の影パートII」以来の登場。声:田原アルノ

※3: Blessed Exchequer
フェレンギ神話において、死後の世界 (聖なる宝物殿) を統括する会計士。DS9第79話 "Little Green Men" 「フェレンギ人囚わる」より

※4: Shmun

※5: T'lana

※6: "Vulcan Love Slave"
ロマンチックな小説。DS9第107話 "The Ascent" 「あの頂を目指せ」など

※7: Zek
(ウォーレス・ショウン Wallace Shawn) DS9第147話 "Profit and Lace" 「グランド・ネーガスは永遠に」以来の登場。声:田の中勇

・本編
DS9 に係留しているバード・オブ・プレイ。
エアロックのドアが開き、クワークは周りに誰もいないことを確認する。
中からロムの声が聞こえる。「誰かいる?」
クワーク:「大丈夫だ。」
「じゃ、運び出そう。」
「よし。『せーの』で持ち上げるぞ。せーの!」
「うー、重たいね。」
「当然だ!」
二人は何か重い物を運んでいるようだが、その姿は見えない。
クワーク:「足元に気をつけろ。」
ロム:「わかってる、兄貴。」 一瞬、二人が持っている装置が見えた。「でも遮蔽装置を遮蔽するっていいだろ?」
「そうだな。重さの方も何とかしてくれよ。」
「ああ…無理だ。でも我慢してよ。ディファイアントの装置の方が、ずっと重いんだからね。」
「ああ、腰がガタガタだ。」
廊下を歩くロム。「それよりいいのかなあ。同盟軍のために遮蔽装置を盗むなんて間違ってるんじゃない?」
クワーク:「奴らのためじゃない。これも、ゼクを救うためなんだ。」
「でももう一人のエズリは? トリルでしょ?」
「だから。」
「彼女は反乱軍の味方で、同盟の敵になるわけでしょ?」
「今度そこのところを確かめてくれ。ああ…油断するなよ。ナイフを持ってるからな。…シーッ!」
「え?」
「…誰か来るぞ。下に置くぞ、急げ。」
遮蔽装置を置く際、クワークは足の上に置いてしまった。痛みに壁を叩く。
マートク※8の声が聞こえる。「…このままではステーションが危ない。」
クワーク:「普通にしてろ。」
壁に向かって立つクワーク。ロムも壁に手を触れ、凝視する。
シスコと歩いてきたマートク。「…大佐、カランドラ星系の先にも、前線を広げる道を探さなければなりません。」
話しながら、そのまま歩いていくシスコ。「そうだなあ、急がなければ我々は、イオンストームで孤立してしまうだろう。」
マートク:「そうなればドミニオンに攻撃される。」
2人は立ち止まり、振り返った。クワークたちに近づく。
シスコ:「どうかしたのか。」
クワーク:「壁の色が。」
マートク:「色が何だ。」
「ロムが部屋をこの色に変えたいと。」
シスコ:「もうこの色だろ。」
「だから言ったろ!」
ロム:「やっぱりいい色だなあ。しっとりした、いいグレーですよねえ。」
シスコ:「そりゃあよかったな。」
ため息をつくマートク。「参りましょう。」
シスコ:「ん? ああ、続けて。」
歩いていく 2人を見るクワークたち。
シスコ:「ロス提督に話してみる。」
マートク:「私の方もガウロン総裁に話してみます…」
ロム:「…2人でクリンゴン船に向かったよ! 装置を盗んだことがばれちゃうかも。」
クワーク:「早いとこズラカろうぜ。」
クワークは遮蔽装置を置いた場所がわからなくなってしまった。「装置は?」
ロム:「さあ、どこかなあ。」
「探せ!」
クワークの手が床の近くで感電してしまう。「イテー…」 遮蔽装置の姿が見えた。
ロム:「でかしたぞ、兄貴! でも僕だったら誘導コイルには触らない。」
クワーク:「早く言えよ!」
運び上げるロム。「よし、せーの!」
クワーク:「急ごう。第14貨物室でエズリが待ってる。」

貨物室。
転送パッドの上で、ロムは遮蔽装置の遮蔽を解除した。
クワーク:「さあ、これがお望みのクリンゴンの遮蔽装置だ。」
エズリ:「執政官に渡せばゼクはすぐに解放される。」
「それからどうなる?」
「連れて帰ればいい。」
ロムはエズリを見つめる。
エズリ:「いい加減にしてくれよ。」
ロム:「…何が。」
「じっと見るな!」
「ごめん。でも見れば見るほどエズリそっくり。君の方が背が高いけど。」
クワーク:「何言ってるんだよう! 背の高さは同じだって。」
「いやあ、ちょっと違うよう。」
「バカ言うな。二人は瓜二つだ…多分。」
まだ見ているロムに怒鳴るエズリ。「…ゴチャゴチャ言ってるとここから放り出すよ!」
慌てて台を降りるロム。「これは確かだね、二人の性格は正反対だ。約束通り執政官はゼクを返してくれるんだろうねえ!」
多次元転送機を持っているエズリ。「さあね? でも私を信じるしかないだろ?」
ロム:「そんなことない。僕たちもついていこう。」
「あっち側の世界を気に入るとは思えない。」
クワーク:「ああ、そうだろうな。でも、弟の言う通りだ。俺たちも行く。」
突然、マートクの声が響いた。「フェレンギめ!」 驚くロム。マートクは近づいてくる。「耳をちょん切ってやるから、覚悟しろ!」
クワーク:「さっさと連れてってくれえ!」 慌てて転送台に乗る。
貨物を押しのけながら向かってくるマートク。
3人は転送された。

ベイジョー軌道上のステーション。
全く同じような貨物室に実体化する。
ロム:「…失敗したの?」
エズリ:「成功だ。ここはテロック・ノール。」
「ディープ・スペース・ナインとそっくりだね。」
クワーク:「どこの宇宙にいようとも、貨物室には変わりないさあ。」
「でもここは平行宇宙、何もかも反対でしょ?」
「そうとも。シスコ大佐がいつか言ってただろう。ここじゃ俺たちは既に死んでる。」
「悲しいなあ。自分に会いたかった。ああ…。」
エズリ:「さあ急ごう。着陸パッド『C』で船が待ってる。」
「なぜ急ぐの?」
「ここは反乱軍の基地だから危険だ。」
ドアが開き、銃撃の音が聞こえてきた。火花が散る。
中に入った男を見て驚くロム。「ヴィック※9!」
両手に銃を持ったヴィック・フォンテーン。「……二人とも死んだはずじゃあ。」
ロム:「ああ…そうなんだあ!」 飛び跳ねる。
クワーク:「ホログラムじゃないのか?」
ヴィック:「何い?」
またドアが開き、鏡像ベシアたちテランが入ってきた。ヴィックに向けて発砲する。
貨物の陰に隠れるクワークたち。
ベシア:「武器を捨てるんだ、フォンテーン!」
ヴィック:「地獄へ道連れにしてやる!」 反撃する。
ベシアが撃った武器は、ヴィックを直撃した。
断末魔と共に、ヴィックは死んだ。
クワーク:「マジかよう。ヴィックがジュリアンに撃たれちまったぜえ!」
ロム:「ドクターのお気に入りの歌手なのに。やっぱりここはディープ・スペース・ナインじゃないんだねえ。」


※8: Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) DS9第157話 "Once More unto the Breach" 「今一度あの雄姿を」以来の登場。声:大山高男

※9: ヴィック・フォンテーン Vic Fontaine
(ジェイムズ・ダーレン James Darren) DS9 "It's Only a Paper Moon" 以来の登場。声:堀勝之祐

ベシアは大声で言った。「隠れてるのはわかってるぞ! さっさと出てこい。」
エズリ:「従うしかない。」 立ち上がる。
出てきたエズリに話すベシア。「これはこれは驚いた。誰かと思えば。」
クワーク:「俺たちの姿に驚いたようだなあ。説明させてくれ。」
クワークを無視するベシア。「エズリ、お前はこの宇宙のクズだ!」 顔を殴る。
クワーク:「彼女に手を出すな!」
クワークは飛び出すが、ベシアの傍らにいた片目の男に銃で殴られる。気を失った。
ロム:「おい! ジュリアンはいい奴のはずなのに!」
ベシアたちは銃をロムに向けた。
両手を挙げるロム。「…勘違いでした。」

クワークは頭を押さえている。
「スマイリー」こと、鏡像オブライエンが話す。「悪いが、君らの遮蔽装置は地球レジスタンス軍が頂いた。」
クワーク、エズリと共に独房に入れられているロム。「そんなの困る! 装置は絶対返してもらうよ! ネーガスを救い出さなきゃ。」
ベシア:「人の心配してる場合じゃないだろ。同盟軍への協力者がどんな目に遭うか知ってるか…」
オブライエン:「よせ、ジュリアン。」
「こいつらが当然の報いを受けるまでは黙らんぞ。」
ロム:「僕は向こうのベシアの方が好きだな。」
オブライエン:「許してやってくれ。最近辛い目に遭ってな。同盟軍との小競り合いで親友を殺された。」
ベシア:「ジャッジアとは関係ないだろ。同盟軍が遮蔽装置を手にしたらどうなると思う。」
「まずいだろうなあ。」
「数週間で我々は消される。それに、俺は裏切り者が大嫌いなんだ。」
エズリ:「私は裏切ってない。」
オブライエン:「もっともだ。最初から同志じゃなきゃ、裏切るも何もない。」
「私が信じるのは報酬だけ。あんたたちにはこの前の貸しがあったね。」
「これは自由のための戦いだ。生きるためのな。金しか興味ないのか。」
「あんたの言う通り、何か信じるものがなきゃ。」
ベシア:「信じればいいってもんじゃないんだぞ。」
オブライエン:「大事なことを忘れてる。遮蔽装置を手に入れた我々の方が断然有利だ。だから二人には感謝しないと。」
「どうしろと言うんだ? 勲章でもやるか。」
「二人が我々に関わるのを向こうのシスコ大佐はよく思わんだろう。」
ロム:「だから無断で来た。」 クワークに小突かれる。
「ハハ…やっぱりな。…元の世界に帰すのが無難だろう。後は任せよう。」
クワーク:「俺たちが戻る時は、ゼクと一緒だ。」
「君らには二つの道がある。…素直に元の世界に戻るか、同盟軍の陣地に進むかだ。素手で仲間を救うがいいさ。明日の朝までには決めろ。」
エズリに言うベシア。「どっちにしろ、お前はここに残れ。」 オブライエンと共に拘留室を出ていく。
ロム:「ついてないねえ。」
エズリ:「平気だ。」
クワーク:「本当か?」
「…私は大丈夫。スマイリーの言う通りだ。遮蔽装置をもたずに同盟軍の領内で見つかったら、殺される。」
「元の世界に戻れと?」
「それが賢明だ。」
「…俺たちバカなんだ。」

ワープ中のクリンゴン戦艦。
ゼクは耳をマッサージされている。「お前の指使いは実に繊細じゃのう。」
笑うキラ。「わかってるったら。」 鏡像世界のキラ監督官だ。
キラの膝に寝ているゼク。「お前がいなかったら退屈な監禁生活には耐えられなかったじゃろう。」
キラ:「お役に立てて、嬉しいわ。」
「早く礼ができればいいんじゃがなあ。お前はわしなんかよりずっと長く監禁されておるんだから。」
「悪くなかったわ。いつも自分なりの楽しみを見つけてきたの。」 独房にはメイハードゥ※10もいて、キラの話を聞いている。「それにあなたの仲間が執政官に遮蔽装置を渡せば…2人とも自由になれる。」
「クワークとロムの二人がドジを踏まなきゃな。」 ゼクはキラに耳をつかまれた。「ああ…。」
キラはメイハードゥに近づく。怯えるメイハードゥ。「おとなしく座ってて!」 ゼクに話す。「言ったわよね。仲間は必ず遮蔽装置をもってくるって、約束したわ。」
ゼク:「ああ…言ったとも。きっともってくる。」
「…だったら心配ないじゃない。」 笑い出すキラは、メイハードゥに言う。「ああ。あんたって、か弱いのねえ。」
またキラの膝に寝るゼク。「お前は実に短気なところがあるんじゃなあ。」
キラ:「ええ、私の長所よ。さあ、どこまでいったかしら。」
「もう一度耳毛を引っ張るところからやってくれないかねえ?」
「うーん……何でもやってあげる。」
気持ちよさそうに声をあげるゼク。

テロック・ノール。
気持ちよさそうに眠っているロム。
クワークは起きている。「何とか脱出しよう。」
エズリ:「それから?」
「遮蔽装置を取り返し、当初の目的を果たす。」
「…それで? あんたたちのグランド・ネーガスを救い出してから、どうする?」
「うちに帰る。ここには戻らない。」
「それだけ?」
「十分だろ?」
「クワーク、私はだまされない。彼のために命を賭けるにはわけがあるはず。」
「ネーガスだぞう? フェレンギ同盟の長で、おふくろが愛する男だ。」
「金持ちってわけね。」
笑うクワーク。「相当なもんだ。」
エズリ:「なるほど。いくらもらえると踏んでるの?」
「ネーガスの性格から言って…頭をなでて、儲け話をする程度かな。」
「バカらしい。」
「理屈じゃないんだ。彼はネーガス。自分のネーガスが困ってたら、助けるものなのさ。」
「なぜ?」
「さあな。忠誠心か。」
「冗談だろ! 忠誠心で助けるだって?」
「そんな目で見るなよう。自分がアホに見える。」
「アホだよ。」
ロムは突然目を覚ました。「兄貴、僕ふと気づいちゃったんだよ。」
エズリ:「そりゃおめでとう。」 エズリを制するクワーク。
「ここは僕らの宇宙と逆の宇宙だろ? でもオブライエン司令官は僕らのチーフ・オブライエンみたいにいい人だった。」
クワーク:「だから?」
「わからない? 理屈が合わない。『悪い人』のはずなのに。」
「さっさと寝ろ。」
「そうさあ…複雑すぎてついてけない。」
銃声が聞こえてきた。
ロム:「何の音?」
3人は外の様子をうかがう。
クワーク:「さあ、何かな。」
入ってきたのは、銃を持ったフェレンギ人だった。
ロム:「危ない、ブラント※11だ!」
クワーク:「俺たちのブラントじゃない。」
エズリ:「遅かったじゃない。」
鏡像ブラントは独房のロックを解除しようとする。「すまん、ちょいと手間取った。貨物室へ侵入して、例の遮蔽装置を取り返し、船に載せてたんだ。」
エズリ:「言い訳はいいから、早く引き上げよう。」
「ああ、今やってるさ。よし。」 ブラントはロックを銃で破壊した。フォースフィールドが解除される。
ブラントはエズリと抱き合い、銃を渡す。クワークたちに話しかけた。「腹減っただろ? 船に食料と飲み物を用意した。」
2人についていくロム。「いい人だね。」
クワークも続く。「何だか、気味悪い。」


※10: Maihar'du
(タイニー・ロン Tiny Ron) DS9 "Profit and Lace" 以来の登場。声優は恐らく割り当てられていません

※11: Brunt
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) DS9 "Profit and Lace" 以来の登場。鏡像世界では初登場。声:小島敏彦

ワープ中のフェレンギ船。
揺れた船に気づくクワーク。「何だ、今のは。」
エズリ:「ブラントがマトリックスを変えて、出力を最大にしたのさ。」
「奴が? まさか。」
「優秀なエンジニアだ。」
器に入った食事を食べていたロム。「…料理の腕もいいね。イモムシのフライ※12は最高に美味しいー!」
クワーク:「毒入りかもしれんぞ。」
無言になるロムを見て、笑うクワーク。
ロムも笑う。「僕らのブラントならやりかねないけどね、ここじゃないよ。ここは…全てが…反対なんだ。彼はいい人だ。」 だが手の動きを止めた。「つまりここにあるイモムシは毒入りってことかな? だって向こう側のは毒入りじゃない。でもブラントが毒入りイモムシをくれたってことは、彼は僕らが思ってるようないい人じゃないってこと? でも彼はいい人のはず。向こうのブラントは悪人だ。」
クワーク:「ロム、頭が変になる。」
「みんなこの逆さ世界のせいさ、理屈に合わないよ。」
やってきたブラントは、別の器を持ってきた。「もう少しどうだい。」
ロム:「あ、頂く。いや…あ…ハーイ!」
ブラントはクワークを見るが、断るクワーク。「いやあ、俺はいい。」
ブラント:「じゃあ、後でどうぞ。」 エズリに話す。「向こうに熱いお茶を運んでおいた。少し休め。」
うなずくエズリ。「長い一日だった。」
あくびするロム。「全くだね。」 イモムシの器を持って出ていった。
エズリ:「46時間以内に執政官の船と会うことになってる。」
ブラント:「その前に起こしてやるよ。フン。」
出ていくエズリ。
笑いながら席につくブラント。「遮蔽装置が盗まれたと知った時のベシアの顔はそりゃ見物だろうなあ。見られなくて残念。」
クワーク:「スマイリーたちは追ってくると思うか?」
「ああ、あの技術を執政官に渡すわけにはいかないからなあ。」
「お前反乱軍の味方なのか?」
「同盟軍は嫌いだ。」
「じゃなぜ装置を盗んだ。」
「俺とエズリはパートナーだ。それ以上かな。彼女とは…親しい間柄だ。」
「どれぐらい親しいんだ?」
「……恋人じゃあない。」
「お気の毒。」
「俺はタイプじゃない。…あんたも彼女のタイプじゃない。」
「何でわかるんだ?」
「こと男の好みに関しちゃ、エズリは…変わっててね。」

クリンゴン艦。
鏡像世界のウォーフ執政官は、大きくくしゃみをした。「ああ…面白い。これほど鮮明にわしの鼻が反応するとは。フェレンギからもっとせしめてこい、嗅ぎタバコを。」
部下の鏡像ガラック※13。「はい。ですが陛下、監督官のことでお話が。あの裏切り女を探し出すのに、2年以上かかったんです。さっさと消してしまいましょう。」
ウォーフ:「あれの始末はわしのやり方で、わしの好きな時にやる。お前は口を出すな! まずは遮蔽装置だ!」
「はい…。」
「いいか。透明化された艦船で、反乱軍を一気に潰してしまうことができるんだぞう!」
「それから、あの女の始末を。」
「…その通り。」

クリンゴン戦艦に近づくフェレンギ・シャトル。
目の前の船を見るロム。「でっかい。」
クワーク:「執政官は信頼できる人間なのか? …遮蔽装置を手にしたら我々は始末されるかもしれないぜ。」
ブラント:「だが今更後戻りはできない。」
エズリ:「装置を渡すことであんたは執政官の役に立つ。大丈夫。…執政官は使える人間を殺したりしない。」
クワーク:「……だといいがなあ。」
ロム:「そうだねえ。」

ウォーフは両手に、トゲのついた篭手をはめさせた。
別の部下を呼ぶ。「お前! ちょっと来い。わしの前に立て。」
クリンゴン人をいきなり殴るウォーフ。部下はそのまま倒れた。
ウォーフ:「いい具合だ。」 艦長席に座る。
ガラックが戻ってきた。「お待ちかねの客が到着しました。約束通り、手土産を持参しています、しっかりと。」
クリンゴン人が遮蔽装置をウォーフに手渡す。
エズリと共にやって来るロム。「執政官はウォーフだ!」
クワーク:「だな。」
「じゃあ惑星連邦の大統領はガル・デュカット?」
「ここに連邦はない。」
ウォーフ:「どうした、フェレンギ。」
クワークは挨拶する。「何でもございません。陛下、我々はネーガスを連れて、おとなしく帰ります。その後は破壊計画でも大量虐殺でもご自由にどうぞ。お好きにおやり下さい。」
ウォーフ:「ついに勝利を手にする時がきた! 1時間で使えるようにしろ。」
ガラック:「早速、準備に取りかかります。お待ちを。」 運ばれていく遮蔽装置。
クワーク:「約束したでしょ、ね?」
ウォーフ:「さあな。」
エズリに頼むクワーク。「言ってくれ。」
キラの声。「ええ、そうよ。」 ブリッジに入る。「ほんとのこと言ったら?」
エズリの顔に触れるキラ。「エズリ、お前を信じてた。」
二人は口づけした。
その様子を見ているブラント。
ロム:「ア、オ。」
クワーク:「ネーガスを返さないつもりだな。エズリ…最初からだますつもりで?」
エズリ:「さあ、どうだか。忠誠心があってね。」
キラ:「最高の腹心だわ。」
ガラック:「理解できません。あの女を解放する?」
ウォーフ:「当然だ、装置を手に入れるアイデアは彼女の思いつきだ。二人を始末しろ。」
ブラント:「待って下さい、役に立ちますよ。」
ガラック:「いいか、お前。陛下が尋ねてもいないのに出しゃばるんじゃない!」
ウォーフ:「もう少し生かしておくか。」
「ですが陛下…」
「黙れ! 監禁しろ。」
「行くぞ。」 クワークとロムに近づくガラック。
クワーク:「再会できてさぞ嬉しいだろうねえ。」
キラ:「もちろんよ?」
ガラックに連れて行かれる二人。


※12: ジムシのフライ fried tube grubs

※13: Garak
(アンドリュー・J・ロビンソン Andrew J. Robinson) DS9第153話 "Afterimage" 「再生する魂」以来の登場。声:大川透

ワープ航行中のクリンゴン艦。
拘留室のロム。「僕らのエズリなら絶対裏切らない…ってことは…」
クワーク:「ロム! もうやめろ。」
「だねえ。」
ゼク:「ロム、マミーにわしとあの監督官の仲を告げ口するなよ?」
「とても言えない。」
「イシュカが傷つくからな。いいか、彼女と私はお互いに…崇拝し合っておるんじゃ。それでこれはお前のせいなんだぞ? お前がいなければわしがこの世界に来ることもなかったのだ。最後にイシュカを尋ねた時のことを覚えとるか。そう、あの晩お前が寝ている時、わしは腹が減って目が覚めた。そして偶然、キッチンテーブルの宇宙艦隊のパッドが目に入った。」
「…僕のエンジニアノート? 多次元転送装置の概略図と一緒に、チーフ・オブライエンがくれた物だ。盗んだんですか!?」
「わしはネーガス。何でも知っておく権利があるんじゃ。」
クワーク:「それでもまだ何の目的でネーガスがここにいらしたのか、わかりませんが。」
「単純なことじゃ。フェレンギのために商売の販路拡大を狙っていたんじゃ。」
ロム:「平行世界にですかあ?」
「…ああ、いいアイデアに思えたんだがなあ、その時は。」
クワーク:「とにかくですね、今はここから早く脱出する方法を探すことが先決ですよ。」
うなずくゼク。

エズリに話すブラント。「このままで、いいわけはない。クワークとロムが気の毒だ。」
エズリ:「二人のことは忘れなよ。」
「それができないのさ。あいつらが好きだ。君だって、そうだろう。」
「人のことを決めつけるな。」
「監督官に話せば、きっと聞いてくれる。フェレンギは約束を守ったんだ、こっちも守るべきだ。」
キラがやってきた。「大胆な提案ねえ。最後に約束を守ったのは、いつだったかしら。」
ブラント:「これから守ればいい。」
エズリ:「よせ、ブラント。」
「いや。今回は譲らない。」 キラに近づくブラント。
キラ:「いいわあ。話しなさいな、ブラント。…今回の件でひどく腹を立てているようだから。私って他人のそういう感情にも敏感なの。どうぞ?」
「二人を消して何の得になる。ゼロだ。だが殺さずに生かしておけば、何かと重宝するはずだ。」
「考えもしなかった。」
「あんたが執政官に頼めば、二人を利用させてくれる。」
「そうね。でも何であの耳のお化けにそこまで? 馬鹿馬鹿しい。あんたの提案はとても聞けないわ。それに実は私、あんたも嫌いなのよ。」
キラは素早くブラントのナイフを抜き取ると、突き刺した。叫び声をあげて倒れるブラント。
エズリ:「やめろ!」
キラ:「私を裏切ろうとしたのよ、目を見てわかったわ。…お前は裏切らないわよね? どうなの?」 エズリを抱きしめる。「ああ…ああ、そうよ、お前は裏切るわけない。…そう、私はこれまで多くの人に裏切られ続けてきたのよ。ブラント、シスコ、バライル、挙げたら切りがない。…片づけてくれる、気が滅入るわ。」
「あんたがやったんだ、自分で片づければ?」 エズリは部屋を出て行った。
「あの娘怖いものなしって感じね。やるじゃない。」

コンソールを操作するクリンゴン人の操舵士※14。「陛下、長距離センサーが敵船を感知しました。ディファイアントです。」
ウォーフ:「よし! 遮蔽装置を試すいい機会だ。」
ガラック:「あの…実はまだ使える段階ではありません。」
「……どうしてだ。」
「それが…非常に、複雑な装置でして。」
エズリ:「フェレンギの一人が使い方を知っています。」
ウォーフ:「すぐにここに呼べ。」
「ただいま。」 ブリッジを後にするエズリ。

ロムは答えた。「遮蔽装置をオンラインにする? 簡単だよ。」
エズリ:「よし。フォースフィールドを解除。」 クリンゴン人が操作しようとする。
クワーク:「ちょっと待て。執政官を助けろだと? そんな義理はない。」
「あんたたちの命を助けたいからさ。」
ゼク:「そりゃあ立派な心がけじゃなあ!」
クワーク:「いつから俺たちを心配するようになった。」
エズリ:「だったらもういい。」
ロム:「よくないよ。…ごめん、兄貴。兄貴はこの滅茶苦茶世界で死んでも構わないのかもしれないけど、僕は御免だ。」
ゼク:「わしだって嫌じゃあ。フォースフィールドを解除しろ!」
エズリの合図で、フォースフィールドが解除される。
ロムに続いて出ようとするクワーク。「別に失うものもないか。」
エズリは押し止めた。「どこに行くつもりだ?」
クワーク:「弟は俺の助けがいる。」
「お前はバーテンダーだろ? 弟にカクテルでも作るか。」
フォースフィールドが戻される。
ロム:「いいよ、兄貴。喉乾いてない。」
エズリ:「信じてもらおうとは思っちゃいないけど、本気で助けようとしてるんだ。」 歩いていく。
クワーク:「そうだな。とても信じられないね。」

取り付けられた遮蔽装置。
ロム:「ああ、そうか…。アイソダイン連結器※15を。」 道具が渡される。「…君にはこれがアイソダイン連結器に見えるのかい? 何でこんなところで手間取るんだよ。」
ガラック:「いい気になるな! 言葉の使い方に気をつけろ、フェレンギめ!」
「じゃあ殺せば? 遮蔽装置が使えなくてもいいのかなあ。」
「ああ…すまん。悪かったな。お願いだから、作業に…戻って…頂けませんか。」
連結器を取るロム。「わかればいいんだよ。」

キラはウォーフに近寄り、耳打ちしていた。「…ですから…」
ウォーフ:「あ! ほんとか。」
「絶対です。」
「一度も経験がないが。」
「すごい効き目よ。きっと陛下も興奮なさるはず。」
「…代わりに何が望みなんだ。」
「もちろんテロック・ノールよ。」
「あのステーションは破壊する予定だ。」
「予定は変わるもの。」
「…考え直すか。」
「まあ、嬉しいわ。」
二人がキスしようとした時、ロムが呼びかけた。「あのう…陛下殿?」
ウォーフ:「…何の用だ!」
「完了しました。」
「ああ。」
ガラック:「お前はもうどいてろ!」
クリンゴン艦は、遮蔽状態に入った。
ガラック:「消えました。」
ロムを誉めるエズリ。「よくやった。」
キラ:「誰にも私たちの船は見えない。何て楽しいんでしょう。」
ウォーフ:「…装置の操作方法は完全に把握したのか。」
ガラック:「ええ、わからないことはこれからおいおいと。」
ロム:「簡単ですよ。基本がわかればね。で、兄貴とネーガスはどうなるんです?」
ウォーフ:「…何かいい使い道があるのか。」
ガラック:「思いつきません。」
「では追い払え。」
ロム:「うちに戻れるってこと?」
ガラック:「いいや? 2人とも殺されるのさ。」
エズリを指さすロム。「決めたぞ! もう二度と君を助けないからな!」
キラ:「もう誰も助けはいらない。」
ガラック:「さあ、行くんだ。」
連れて行かれるロム。「やっぱりとんでもないところだ、ますます嫌いになってきた。」
エズリは考えていた。

注射器の液体を見せるガラック。「いいか諸君。ここにあるのは、10cc のウルカーティック・ウィルス※16の濃縮液である。極めて有害な液体で、強い痛みを…引き起こす。これを注入されると、体温が上昇し、文字通り内蔵がグツグツ沸騰するまで熱くなるのだ。最初は、あの裏切り女に使う予定だったんだが、君たち 4人に与えるとしよう。さて…誰から、いこうか?」
クワークたちは顔を見合わせた。


※14: Helmsman
(Peter C. Antoniou)

※15: isodine coupler

※16: Ulcartic virus

ガラックは尋ねる。「さあ、誰にする?」
クワーク:「ヘヘ…考えるのに 2、3日もらえないか? その後で知らせるよ。」
「ではこちらで選ぼう。そうだなあ…」
「甘いねえ!」
「何だって?」
「俺たちのガラックに比べてってことだ。そう、奴は自白のプロだからな。」
「自白させようとは思ってない。」
ゼク:「何でじゃ。わしらはお前の利益になるようなことを知っておるかもしれんのに、放っておくというのか。」
「例えば?」
ロム:「すぐには話せない! 自白させてみろよ。」 腕を組む。メイハードゥも真似する。
「そんな時間はない。ディファイアントを破壊する時、ブリッジにいたいからな。」
ゼク:「わしらの宇宙じゃ、お楽しみは仕事の後に待ってるものと決まっておる。」
クワーク:「俺たちの知ってるガラックなら秘密を聞き出すために、逆さづりにしただろう。」
ガラック:「秘密だと?」
ロム:「簡単には教えないと言っただろ…!」
クワーク:「俺だったら、あっちの世界に行ってガラックから助言を頂いてくるだろうなあ。あらゆる拷問、暗殺、破壊工作。奴から学ぶことは多い。」
ガラック:「破壊工作なら私だってよく知っている。」
笑うクワークたち。
ロム:「まるでわかっちゃいないねー!」

ワープで追うディファイアント。
オブライエンは艦長席にいる。「おかしいな。フェレンギ船に追いついてもいい頃だ。」
ベシア:「見つける。」
「執政官は既に遮蔽装置を手に入れたのかもしれん。我々が狙われていても確認しようがないがね。」
「ちょっと考えすぎだぞ、スマイリー。たとえ装置を手に入れたって、まだ作動していない可能性もある。」
「だといいが。」

ディファイアントの後部。それはクリンゴン艦のスクリーンに映ったものだった。
ウォーフ:「真後ろにいると、気づきもしない。」
キラ:「こういう待ち伏せほどワクワクするものはないわ。」
「…時間だぞ!」
キラは持ち場についた。

ガラックは尋ねた。「どうもわからん。君らのガラックは殺し屋なのか、仕立屋なのか?」
クワークたちは同時に答えた。
クワーク:「殺し屋。」
ロム:「仕立屋。」
ゼク:「両方だ。」
ガラック:「もういい。そろそろブリッジに戻る。さて、誰にする?」

ウォーフは命じた。「遮蔽解除!」
ディファイアントの真後ろに、巨大なクリンゴン艦が姿を現す。

驚くベシア。「君が正しかったようだ。」
オブライエン:「すぐ回避行動を!」

続けて命じるウォーフ。「発射!」
だが艦内が暗くなる。

拘留室のフォースフィールドも消失した。
ガラック:「何だ?」
ロム:「破壊工作に間違いない!」
クワークたちは、ガラックに飛びかかった。

報告するクリンゴン操舵士。「主要システムが破壊されました!」
キラ:「きっとあのフェレンギのせいよ!」
「オンラインに戻すことができません!」
怒りに椅子を叩きつけるウォーフ。

ガラックは逆にクワークに覆い被さった。「お前にはいろいろ教わったから、お返しに痛みの全てをじっくり教えてやろう。」 笑い、ウィルスの注射器を近づける。
ガラックの手を引きはがす者がいる。エズリだ。
エズリは注射器をガラックの首元に押しつけた。ガラックは叫んで倒れる。
クワークを起こすエズリ。
クワーク:「いくら払えばいいのかなあ。」
エズリ:「金のためじゃない。」
「じゃなぜだ?」
「助かりたくないのか?」
倒れたままのゼク。「無論助かりたい。」
エズリ:「だったら無駄口はやめて急げ!」
ため息をつくクワーク。

状況を確認するベシア。「追ってこない。」
オブライエン:「なぜだ!」
「追えないのさ。パワーグリッドがオフラインだ。」
笑うオブライエン。「じゃちょいと、挨拶でもしてやるか。」
ベシア:「攻撃準備を。」
ディファイアントはクリンゴン戦艦を攻撃していく。

揺れるクリンゴン艦内。
ウォーフ:「シールドを上げろ!」
操舵士:「できません!」
キラ:「船体はこれ以上の攻撃に耐えられません!」
爆発が続くブリッジ。
操舵士:「ディファイアントからの呼びかけです。」
無言のウォーフ。
ディファイアントのブリッジが映る。
オブライエン:『なかなかいい船だ。壊すのは忍びない。』
ベシア:『ですが、どうしてもと言うなら。』
ウォーフ:「……条件は何だ!」
オブライエン:『うーん、無条件降伏をするというなら助けてやろう。』
キラ:「選択の余地はありません。」
ウォーフ:「…勝利は譲ろう。」
ベシアと共に笑うオブライエン。『乗船準備を!』
ウォーフ:「あー、わしとしたことが。あのフェレンギ共をさっさと殺しておけば、こんなことにはならなかった!」
キラは密かにブリッジを離れた。
立ち上がったウォーフは、艦長席を無理矢理引きはがし、床に投げつけた。

廊下を歩いているエズリたち。
前からキラがやってきた。銃を構える。「これは驚いた。ずーっと探してたのよ?」
エズリも銃を向ける。「何か用か。」
キラ:「私に銃口を向けるの。」
「こっちも同じことを言いたいね。」
2人は同時に、ゆっくりと銃を下ろした。
笑うキラ。「ああ、それでいいわ。私と一緒に、脱出シャトルで逃げましょう。」
エズリ:「ご勝手に。私はここに残る。」
「冗談でしょう?」
「あんたはブラントを殺した。」
「今更心を痛めたって、どうにもならない。」
「そんなことない。」
「フン。」 歩いていくキラ。
ゼク:「ブラントが死んだ!」
ロム:「ご安心を。別のブラントです。」
クワーク:「彼女を見逃すつもりなのか?」
エズリ:「借りがあるからね。」
ゼク:「ああ、行かせてやれ。わしも今回あの女には結構世話になったからなあ。」
歩いていくエズリ。首を振り、クワークも続く。

テロック・ノール。
エアロックの前には、多数のテラン・レジスタンスのメンバーが集まっていた。ドアが開き、大きな歓声が上がる。
捕まったウォーフは、オブライエンたちに連れられていった。
続いて降りてくるロム。「やっと戻れますね。」
ゼク:「実に嬉しい。だがいずれまた来ることになる。」
「ここに? 何で?」
「この平行宇宙でたっぷり金儲けができるぞ。わしの耳たぶがそう感じとる。」
クワーク:「今度は何があっても助けに行きませんよ。」
「ああ、よくわかっとるとも。最初からお前たちを連れてくるさ。」 笑うゼク。
エズリ:「だったら、別れの言葉はいらないね。」
クワーク:「そうだなあ…ここに戻ってくるっていうのも悪くない。…また君に会えるならね。」
「いつでもここにいる。」
「2、3日一緒に過ごしてもいい。ステーションを案内してもらうかな。」
「それはやめておいた方がいい。」
「君の心が落ち着くよう、力になれるかもよ?」
「他人の助けはいらない。」
ベイジョー人の女性が近づく。「失礼します。」
ロム:「リータ※17!」
鏡像リータは尋ねた。「…わたくしをご存じ?」
ロム:「僕の妻だ!」
嘲笑するリータ。「どうかしてる。」
呆然とするロム。
リータ:「あなたがエズリね。スマイリー司令官から話を聞くように言われてるの。」
微笑むエズリ。「今日はツイてるかも。」 2人は歩いていった。
ゼク:「ここは実に魅力的な場所じゃのう。そう思わんかね?」
ロム:「早く帰りたいよ。」
クワーク:「俺もだ。」
うなずくメイハードゥ。


※17: Leeta
(チェイス・マスタースン Chase Masterson) DS9 "It's Only a Paper Moon" 以来の登場。鏡像世界では初登場。声:榎本智恵子

・感想
第1・5シーズンを除くと、シーズン毎に一話ずつあった「鏡像世界」の第5弾です。今後の内容を全て知っているわけではありませんが、恐らく完結編でしょう。
前シーズンのが「こちら」の宇宙だけで、キラと鏡像バライルの関係に終始していたので、今回は第4シーズンの「鏡あわせのジェニファー」の続編という要素が大きいですね。平行宇宙ならではのドタバタ劇は、多少設定が突拍子なくても、やはり面白いものです。俳優もそうですが、声優も普段とは違った演技で楽しんでいるように思えます (ウォーフ執政官のクシャミとか、セリフにならない声が絶妙でした)。
タイトルは日本でも有名な童話「裸の王様」 "The Emperor's New Clothes" から。マントなどを意味する衣服の cloak と、遮蔽装置の cloaking device を掛けているんでしょうね。


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