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ディープスペースナイン エピソードガイド
第157話「今一度あの雄姿を」
Once More unto the Breach

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・イントロダクション
※1クワークの店。
オブライエン:「ジュリアン、サンタ・アナが戦争のルールなんか気にするもんか。アラモでクロケットを殺した方が、名誉に思うに決まってるさ。」
ベシア:「それじゃあ、こう考えてくれ。当時のクロケットは 49歳。当時としては年取ってる方だ。戦士としてならしたのは遥か昔。アラモの時は、ただの元政治家にしか過ぎない。彼は絶対に死ぬまで戦うような人間じゃないんだよ。状況は絶望的だった。既に弾薬は尽き、メキシコ軍はアラモ砦になだれ込んでくる。…降伏したに決まってるさ。ちょっと考えればわかるだろ。」
「確かに、あり得ないとは言わないよ。だが証拠はどこにもない。」
ウォーフ:「論点がずれてる。」 近くに座っていた。「問題にすべきは、クロケットの伝説を信じるか否かだ。信じるなら、彼は間違いなく名誉の戦死を遂げた英雄だ。だが信じないのだとしたら…彼はただの男に過ぎん。死に方など関係ない。」 店を出て行く。
ベシア:「…解決しちゃったな。」
オブライエン:「そのようだ。」

帯を置くウォーフ。ドアチャイムが鳴る。
ウォーフ:「どうぞ。」
外には、年老いたクリンゴン人が立っていた。
ウォーフ:「…コール※2!」
コール:「ナクナー※3。ウォーフ、久しぶりだな。」
「…我が家へようこそ。何かお飲みになりますか。」
「…ではモーグの息子と、ブラッドワインを酌み交わす栄誉に預かろう。」
用意するウォーフ。
コール:「……ジャッジアのことを、聞いたよ。」
ウォーフ:「……名誉ある死でした。」
「疑う余地はない。」
ジョッキを受け取るコール。「今は亡き戦友に。」
ウォーフも掲げる。
コール:「うーん、2309年もの※4はうまい。」
ウォーフ:「どうぞ。」
座るコール。「ああ。どうだ、ウォーフ。戦争では活躍してるか? さぞ、名誉ある勝利を重ねていることだろうな。」
ウォーフ:「そうですね。幸運にも…」
「おい、ウォーフ。戦士が謙遜などするもんじゃない。堂々と胸を張って誇るがいい。実力だと。」
「そうします。」
笑うコール。
ウォーフ:「あなたも戦場でご活躍を?」
コール:「……いや、ウォーフ。私は何もしていない。時代は変わった。もはや戦場に私の出る幕などないようだ。」
「ですが、あなたはコールです。ダハール・マスター※5です。トゥーナグ※6からカーマ運河※7を守った人だ。…あなたの評判ならば指揮官につけるはずです。」
「だが、いい評判ばかりではないぞ。私の邪魔をしようとする者には、容赦をしないとも言われている。確かに私にも非はあるのだ。部下が恐れるのを楽しんでいるところもあるしなあ。…しかし自分の野心にのみ固執する者は…必ずその代償を支払わされる。私は敵を作ってしまった。恐らく必要以上に。」 立ち上がるコール。「…帝国内では、私にはもう何の権威も残っていない。たとえ我が種族をあげてドミニオンと戦うことになっても、敵ばかり多く…友の少ない老いぼれには出番などないのだ。……だからこそここへ来た。できるものならば、こんな…無様なことはしたくない。…だがほかに頼れる者がおらん。私を戦士に戻してくれ。最期に名誉ある死を遂げられるように、力を貸してくれんか。」

マートクの部屋。
たくさんのパッドを持っているマートク※8。「どれだけ報告書を書けば評議会は満足する!」
隣にいる老クリンゴン。「前回と同じです、将軍。艦隊からは修理要請に署名をと、矢のような催促がきています。」
「うーん…。今に見ていろ、ダロック※9。お前の助けなど必要なくなる日が必ずくる。」
「大いなる期待をもってその日がくるのを待っているとしましょう。それまでは…。」
ウォーフが部屋に来たことに気づくマートク。「おお、ウォーフ。よく来たな。…もういいぞ、ダロック。」
ダロック:「はい。」 ウォーフに一礼し、出ていく。
「…シスコ大佐の温情がなければ、とっくにお払い箱だがな。何か用か、ウォーフ。」
ウォーフ:「夕べ、ダハール・マスターのコールが来ました。出動命令を待っておられるそうで…」
「あの男に船を任せろと言うんじゃないだろうな。」
「…実はその要請に…」
「ではその申し出は断る。我が一族はあの男を歓迎しない。我が艦隊の船を指揮させるわけにはいかん!」
「将軍、コールは友人です。私はもう彼に…」
「それ以上言うな! 一言もだ、いいな! ……今すぐ出て行け。でないと何をするかわからんぞ。」
ウォーフは出ていった。

部屋から出た後、振り返るウォーフ。


※1: このエピソードから最新版のエンサイクロペディアに項目として掲載されていません。更なる改訂版が発売された場合、単語などの追加・修正を行う場合があります

※2: Kor
(ジョン・コリコス John Colicos) 伝説的なクリンゴン戦士。DS9第81話 "The Sword of Kahless" 「カーレスの剣」以来の登場。声:立木文彦、VOY マージ・カラなど (継続)

※3: nuq'nuh
=「やあ。」 "Hello."

※4: 恐らく前話 "Treachery, Faith and the Great River" で手に入れた物でしょう

※5: Dahar Master
最も偉大なクリンゴン戦士たちだけに授けられる、とても名誉ある肩書き。DS9第39話 "Blood Oath" 「血の誓い」より

※6: トナッグ T'nag
カーン、コール、コロスの旧敵。DS9 "The Sword of Kahless" より

※7: カーマの運河 Korma Pass
戦略地帯。同じく DS9 "The Sword of Kahless" より

※8: Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) 前話 "Treachery, Faith and the Great River" 「予期せぬ亡命者」に引き続き登場。声:大山高男

※9: Darok
(Neil Vipond VOY第168話 "Natural Law" 「原始惑星の人々」のクレッグ (Kleg) 役) 声:筈見純、VOY コロパック、ST5 カークなど

・本編
宙図を指さすマートク。「トレルカ第5基地※10を攻撃し、カーデシアを撤退させようと思っている。目標はマノラ※11造船所。次いでジェムハダーの製造施設に、シーヴァ2※12。そしてボリアス星※13の補給倉庫だ。」
シスコ:「トレルカ基地を破壊するには第九艦隊の半分はいる。」
「破壊はしない。単に損害を与えるだけだ。防御バランスを失わせては、次の攻撃目標に移る。それだけで、奴らの後方戦線にどれだけの混乱を与えられるか。」
「騎兵隊戦法か。…かつて地球の兵士は馬に乗っていたんだ。素早く敵の後方戦線にダメージを与えては、巧みに攻撃をかわしていった。…船は何隻必要なんだ。」
「バード・オブ・プレイ 5隻。巡洋艦ではこの任務には遅すぎるし、大きすぎる。」
「ディファイアントはどうだ?」
「ディファイアントはここへ残しておくべきだろう。ジェムハダーが独自の…騎兵隊戦法を取らんとも限らんからな。念のためディファイアントをはじめ、10隻ほど艦船を待機させておいてもらえると助かるのだが。」
「敵を引き連れてここへ戻るというのか。」
「大佐ならきっと歓迎してくれるでしょうからなあ。」
「フェイザーでもてなすとしよう。」
「うーん。」
笑う 2人。

DS9 に係留しているバード・オブ・プレイ。
クリンゴン人のコラーナ※14が報告する。「ディスラプター・ターゲティングセンサーは、交換が必要です。ガイダンスシステム・リレーも。」
マートク:「ダロック、チーフ・オブライエンに伝えろ。我々を優先してくれるはずだ。」
ダロック:「ふむ。」
待っていたウォーフに話すマートク。「何か話があるなら早くしろ。またダロックが書類の山を持ってくる。」
ウォーフ:「…コールのことをお願いに来たんです。嫌悪感を抱いているのは百も…」
マートクは他の部下に命じた。「ブリッジから出て行け!」
ウォーフだけを残し、ダロックたちはブリッジを出ていく。
マートク:「まさかまたお前がその話をもちだすとは、思ってもいなかったぞ。」
ウォーフ:「私もあなたに話してはいけないことがあるとは思いもしませんでした。それともこの私は…ダロックと同類なのでしょうか。※15
「…いいや。もちろん違う。いいだろう。…さっさと話を終わらせろ。」
「…コールがこの私に、助けを求めてます。友として。彼はもう若くありません。身よりもないし、帝国への影響力も残ってない。彼は、ただクリンゴン戦士として名誉ある死を望んでいるだけです。だから私はあなたに頼んで、ポストを用意すると伝えました。」
「奴には食事の時にしゃぶり尽くした骨の一本さえやる気はない! …指揮官のポストなどなおさらだ!」
「なぜです。一族の間に怨念などないはずだ。コールはあなたに会ったことはないと言っている。」
「……会ったことなどなくとも、その名誉を汚すことはできる。…子供の頃、私の一族はケサ※16の低地で暮らしていた。貧しかったが恥じたことはない。我々は戦士の一族だった。15代に渡り戦士として帝国に仕えていたのだ。だが父は私にそれ以上のことを望んだ。自分の息子が士官になることを望んだのだ。」 笑うマートク。「父は大変な苦労をした末、やっと私の後援者を探し出したのだ。私は入学試験に受かり、第一関門を突破。後は評議会の最終許可を得るだけだった。形式的なものだ。…だが私の申し出は拒否された。評議員の一人によってな。コールだ。」
「…なぜです。」
「『なぜ』? …コール一族は帝国立法府※17を継ぐ『名門』。代々奴らは法を守るために生まれてきた。カーレスの意思によってなあ。だが私は…ケサの僻地から来たガキに過ぎん。奴は私のような者が士官になることが…どうしても許せなかったのだ。父は恥をかかされ、私は一生消えぬ屈辱を背負わされ…私の申し出は却下された。…それだけじゃない。私は奴のせいで兵士にさえなれなかったのだ。そこで仕方なく 5年間、一般市民としてシヴァング将軍※18の旗艦に乗船した。そして…チャンスが巡ってきた。ハ、ロミュランが無謀にも我々の船に乗り込んで来やがったのだ。私はやっと戦うことを許された。残念ながら、私の父は…その栄光を知ることなくこの世を去った。……コールの権威が生きていたら、私は未だに一般市民として士官の汚れ物を洗っていただろう。」
「わかりました。しかしここは私の権限も使わせて頂き、コールを第九艦隊の士官に任命します。」
「…奴を士官にするのか。そんな簡単に。奴と私の名前の差だろうなあ。奴のドアは常に開き、私のは閉まっている。」
「私はただコールを…」
「何も言うな! 言い訳など聞きたくはない。だがいいか、ウォーフ。…コールはお前の責任下にある。私には何の関係もない。」

笑うコール。「それじゃあ、レナヴィー※19でデュークのハーレム※20に押し入ったことは覚えているか?」
話している相手はエズリだ。「ああ! 忘れられるわけないわ! クルゾンの大好きな思い出の一つよ。」
また大きく笑う 2人。
ウォーフがやってきたことに気づくエズリ。「ハイ!」
ウォーフ:「…やあ。」
コール:「お前も一緒に話さんか?」
席を立つエズリ。「ああ…私仕事なの。また後でね。」
コール:「うーん。」
キスするエズリ。「また会えて嬉しかったわ、コール。」
コール:「うーん。」
エズリと入れ替わりに、ウォーフが近づく。
コール:「ダックスのやつ、全く変わっとらん。身体は別人だが。」
ウォーフ:「あなたに指揮官は任せられないそうです。」
「ああ…。」 テーブルを叩くコール。
「あなたはマートク将軍がケサの出身だという理由だけで、士官のリストからはねたそうですね。」
「私が? …ああ…いや、覚えとらん。だが…士官は大勢いたからなあ。そういうこともあったかもしれん。」
「帝国に仕えることを禁じる理由としてはふさわしくなかった。」
「…ウォーフ、お前は民主主義というぬるま湯に長く浸かりすぎたようだなあ。お前の一族は知っている。我々は共に高貴な家の出身だ。我々には、家は今なお強い意味をもつ。マートクも、クリンゴン人であればわかるはずだ。」
「いいえ、恨んでます。」
「ああ…。…私のポストはないのか?」
「いえ、チュタン※21に乗船して頂きます。…第三士官として。」
「第三士官? …ハハ、ああ…仕方ない。ああ…今の私は、乗船できるだけでもよしとせねばな。ありがとう、お前は真の友だ。」
「…明朝7時に乗船して下さい。将軍には、逆らわないように。」
「私がいるとは気づきもしないだろう。」
歩いていくウォーフを呼び止めるコール。「ウォーフ、ああ…船は何と言った。」
ウォーフ:「…チュタンです。」
「チュタン、そうだ。そこで会おう。」
離れるウォーフ。コールの表情は暗くなった。

DS9 の上に集まった、5隻のバード・オブ・プレイ。
コラーナ:「全デッキ、準備完了。防御システム、オンライン。機関室、スタンバイ。転送室より最後のクルーが乗船したそうです。」
マートク:「よろしい、小隊に合図。航行に備えよ。遮蔽スタンバイ。」
ウォーフ:「了解。」
「操舵手、コースセット。3-2-5、マーク 0-0-3。」
コールがブリッジに入る。その姿に見入るクリンゴンたち。
マートクは気づかずに命令を続ける。「境界線の標識を越えるまでフルインパルス。その後…。」 ダロックの様子に、初めてコールを目にした。
コール:「第三士官コール、出頭いたしました。」
操舵手のシノン※22。「ダハール・マスター。」
マートクは不満なようだ。
ウォーフ:「配置につけ。」
命令に応じるコール。
周りのクルーは皆、コールを見つめている。
マートク:「お前たち、仕事をする気がないのなら船を下りろ! 操舵手、コースを言ったはずだ。」
シノン:「チャー・ヴェイ※23!」
チュタンをはじめとするクリンゴン船は、遮蔽に入った。
ダロック:「あのコールが…ここに! 我々の船に!」 笑う。
マートク:「ほかに何かすることがあるだろう。」
「…いいえ。」
「では何か探せ!」
ダロックはコールに近づいている。「ご乗船頂けて、光栄です。」
握手するコール。「わざわざどうもありがとう。」
コラーナ:「ようこそ、ダハール・マスター。」
うなるマートク。


※10: Trelka V
このように訳されていますが、本来は「トレルカ5号星 (の) 宇宙基地」という意味です。全て吹き替えのままにしています

※11: Manora

※12: Sheva II
実際は「シーヴァ2号星のジェムハダー製造施設」という意味

※13: 正確にはボリアス星団 (Bolias Cluster)

※14: Kolana
(Nancy Youngblut VOY第66話 "Displaced" 「消えてゆくクルー達」のタリーン (Taleen) 役) 名前は言及されていません。声:くじら

※15: 原語では「私はダロックのように、こき使われるシュヴァック (shuVak=召使い、servant) になったのでしょうか?」

※16: Ketha

※17: Imperial Court

※18: General ShiVang

※19: Renavi

※20: Duke's harem

※21: I.K.S.チュタン I.K.S. Ch'Tang
後にわかりますが、マートクやウォーフの乗るバード・オブ・プレイです。ロタランはどうなったのでしょうか…?

※22: Synon
(Blake Lindsley) 階級は大尉 (後に言及されますが、訳出されていません)。名前は言及されていません。声:中澤やよい

※23: Chah-Veh
=「了解。」 "Yes, sir."

DS9。
キラ:「それで? コールとは何を話したの?」
エズリ:「…いつもと一緒。みんなにしてきた説明を彼にも繰り返したわ。みんな最初はショックを受けるの。それから私の顔をじっと見て、ダックスの面影を探し、口を揃えて言う。『信じられない。ほんとに君かい? 確かに君の目はジャッジアにそっくりだ。笑顔はクルゾンに似ている。』」 ため息をつく。
「トリル共生体が宿る時には、どうしても準備期間がいるのよ。みんなどうしても前のホストと比べるもの。きっと乗り越えられるわ。」
「…そうね。今までのホストだって乗り越えたんだもの。」
「そう。」
「…やるじゃない。結構いいカウンセラーだった。仕事変えたら?」
「そうね、きっと私の前に行列ができる。『どんな夢を見たの? イカレてるわね。わかったら帰ってちょうだい。次の人?』」
笑うエズリ。「…夢の話が出たから言うけど、コールと話してからずっと、彼の夢ばかり見るの。すごく鮮明な。」
「例えば?」
「クリンゴンの船に行った時の夢。」
クワークが近づいた。
エズリ:「一緒に戦ったり、ブラッドワインを飲んだり。まだ私にはピンとこないけど。歌も唄ってた。私の一部が彼に会いたがってる。心配してるの。」
話を聞いているクワーク。
エズリ:「さっき、前のホストと一緒にされたくないって言ったことと、矛盾するっていうのは自分でもわかってるんだけど、でも…彼と過ごした日々の記憶があまりにも鮮明なの。彼を失うなんて耐えられない。もう一度彼と一緒に過ごせるなら、どんなことだってするわ。もう一度隣に座りたい。以前のように。」
キラとエズリは、クワークに気づいた。
クワーク:「ああ…。」
キラ:「私たちに何か用?」
「…いや。」 グラスを置くクワーク。「別に。」 離れていく。
エズリ:「それで? カウンセラーのご意見は?」
キラ:「うーん、イカレてる。」
笑うエズリ。「はい、次の人!」

クワークの様子に気づくオドー。「どうしたんだ。チップでももらい損ねたか。」
クワーク:「ヘ! ……エズリのやつ、あいつ…。とても言えねえ。」
「言ってみろ?」
「…彼女、ウォーフとよりを戻したがってるんだ。」

食堂で話すマートク。「それでカーデシア人が我々に気づく前に、キャンプ丸ごととついでに中継基地も破壊してやった。」
笑うコラーナ。「マートク将軍のフェルトン・プライム※24での勝利に!」
マートク:「ああ…」
一斉にジョッキを掲げるクルー。「カプラー!」
コールが食堂に入ってきた。皆立ち上がる。
コラーナ:「この粗末な食堂に、ダハール・マスターがいらして下さったことを名誉に思います。」
コール:「おいおい、座ってくれえ。そんなにかしこまるな。ここじゃ私は第三士官なんだ。特別扱いは困るぞ。」
シノン:「ガフをどうぞ、ダハール・マスター。」
「ああ、どうもありがとう…」 会話を続けるコール。
その様子を見て、ため息をつくマートク。
ウォーフはマートクに尋ねる。「トレルカ第5基地の攻撃戦略は整ったんですか?」
マートク:「……まずはマルパラ※25とニンタオ※26の 2機を攻撃に向かわせる。」
マートクの話を聞くコール。
マートク:「ただし攻撃は一度のみ、その後すぐに星系を去る。そして敵の修理班が損害規模を計っている間、残り全機が一斉に姿を現すのだ。うまくいけば、奴らの不意をつけるだけでなく、指揮系統を完全に叩くことができる。」
コール:「素晴らしい。素晴らしい作戦だ、将軍。」
「気に入ってもらえたかね?」
「もちろん。ケイレブ4※27 で連邦を相手にカーン※28と戦った時と同じ作戦だよ。」
コラーナ:「ケイレブ4 に?」
「何だ、知らんのかね。」
ダロック:「子供の言うことです、お許しを。」
笑うコール。「私もかつては若かった。よく無知を笑われたものだよ。」
コラーナ:「ケイレブ4 のお話を聞かせて下さい。」
ダロック:「そうです、ぜひ聞かせて下さい。」
シノン:「ええ、お願いします。」
不快そうなマートクを見るウォーフ。
コール:「そんなに話すことはないんだがな。戦いは連邦がそれと気づく前に決着がついていた。…私はクロソス※29の第1艦隊を指揮しておった。D-5 型※30の巡洋艦だ。カーンは第2艦隊を指揮してた。そう、念のために言っておくが、あの頃は…遮蔽装置はまだ発明されたばかりの技術でなあ。」 感心するクリンゴン人たち。「操作できる機関士は、帝国艦隊に一握りしかいなかった。…クロノスを発つ前、私は 3日間機関室で過ごし、独りで遮蔽装置を分解して…」
離れたマートクは、ジョッキを叩きつけた。
コールは構わず話し続ける。「またそれを組み立てなおした。それで操作が非常にしやすくなったのは、周知の通りだ。」
話に聞き入るクルー。

マートクに話すウォーフ。「クルーが悪いわけではありません。コールのような英雄に仕えるのに慣れてないのです。」
通信が入った。
コラーナ:『ブリッジからマートク将軍。』
マートク:「何だ。」
『トレルカ第5基地に接近。』
「第1防御態勢に入れ。」
全艦にコラーナの通信が流れる。『第1防御態勢。総員、戦闘配置につけ! 繰り返す。総員、戦闘配置につけ!』
部屋を出るマートクとウォーフ。

廊下を歩くコール。
ドアの前で立ち止まり、周りを見渡す。「私は何をするんだ?」
シノンが近づく。「ダハール・マスター!」
コール:「どこへ行くのだね?」
「ブリッジです。トレルカが近いので。」
「ブリッジか!」 ドアを開けるコール。
「大丈夫ですか?」
「もちろんだ。何をグズグズしてる、持ち場につきたまえ!」
「チャー・ヴェイ!」 向かうシノン。
コールは言った。「精神を集中せねば。」


※24: Felton Prime

※25: Malpara

※26: Ning'tao

※27: Caleb IV

※28: カング、カン Kang
伝説的なクリンゴン戦士。TOS第66話 "Day of the Dove" 「宇宙の怪! 怒りを喰う!?」に初登場。コール、コロスと共に DS9 "Blood Oath" に登場して死亡。また VOY第44話 "Flashback" 「伝説のミスター・カトー」にも登場

※29: Klothos
TAS第12話 "The Time Trap" 「魔のスペース・トライアングル」で、コールが乗る同名の船 (吹き替えでは「クロッソス」) が登場しています。これは通常非正史と考えられる TAS から取られた設定ということで珍しいものですが、これだけで TAS 全てが正史とみなされるわけではないでしょうね。なお同エピソードではジョン・コリコスではなく、スコット役のジェイムズ・ドゥーアンがコールの声を担当しています

※30: D-5
主に TOS に登場したクリンゴン巡洋戦艦は D-7級とされているので、それより多少古いクラスだと推察されます。前述の TAS エピソードでのクロソスは D-7級ですが、細かい個所は TOS とは違うようです

遮蔽を解く、2隻のバード・オブ・プレイ。トレルカへ向かう。
地表にある基地を攻撃する。
コラーナ:「敵シールド、65%。ドックにカーデシアの巡洋艦 3隻。逆側の軌道上です。うち 2隻発進。マルパラとニンタオが攻撃を完了。」
軌道上に戻ってきたマルパラとニンタオ。カーデシア艦が攻撃を始めた。一隻は破壊されてしまう。
コラーナ:「マルパラが…大破。…生存者なし。ニンタオ、制御不能。カーデシア船、追跡中。」
マートク:「奴らの基地は無防備だ。すぐに基地へ向かえ! 上空 300メートルに停止。遮蔽解除に備えよ。」
シノン:「上空 300メートルを維持。」
「基地をスキャン。」
コラーナ:「現在、損害規模を調査中。砲列 2機ダウン。主要シールドグリッドも不能です。」
「遮蔽を解け。攻撃開始。」
遮蔽を解きながら、チュタンら 3隻のクリンゴン船が基地に近づく。
一斉に攻撃を行うが、敵も反撃してくる。
被害が及ぶブリッジ。
コラーナ:「シールド、85%にダウン!」
ウォーフ:「緊急パワーを補助シールドエミッターへ回せ。」
マートク:「魚雷を発射! 操舵手、回避行動を取れ!」
シノン:「了解!」
激しい攻撃が続く。
ウォーフが倒れている。マートクも起きあがれない。
コールは持ち場を離れ、ブリッジの中央に出た。「攻撃を続行! 敵の中央反応炉を狙え。」
コラーナ:「チャー・ヴェイ。」
「別のルートを探すんだ。」
シノン:「了解!」
倒れたままのマートク。「いかん、ルートは一つしか…。」
基地に戻っていくバード・オブ・プレイ。攻撃を再開する。
マートク:「星系を脱出…。」
コールはマートクに近づく。「心配はいらん、任せろ。」
マートク:「この老いぼれめ…。」
コラーナ:「オランソ※31の艦長および副長死亡。左舷後部に亀裂が入りました。」
コール:「攻撃続行を促すのだ。至急カーンに呼びかけろ。」
「…カーンに?」
「成功したと伝えるのだ。ケイレブ4 の連邦前哨基地は、一時間以内に落ちるとな!」
「カーンはもう何年も前に亡くなってます。」
「上陸隊を組織。…基地を乗っ取るぞ!」
シノン:「1万の守備隊が待機しているのにですか?」
マートク:「いいから、そいつの言うことは無視して脱出しろ!」
立ち上がるウォーフ。
コール:「勝利は我らにある。連邦は無敵のクリンゴン帝国に、無謀な挑戦をしたことを悔やむ日がくるだろう。」
マートクはナイフを取り出す。
話し続けるコール。「ケイレブ4 を落とし、廃墟と化した奴らの基地に、我ら勝利ののぼりを立てるのだ!」
マートクはナイフをコールに向けて投げはなった。だがウォーフが受け取る。そしてコールを殴り倒した。
ウォーフ:「回避行動、急げ!」
攻撃から逃れながら急上昇し、大気圏を脱出する 3隻。
コールはゆっくりと立ち上がった。
マートク:「遮蔽開始。」
コラーナ:「オランソ、シュリヴァン※32遮蔽。トレルカからの追跡なし。」
「グズグズするな、急げ! 直ちに合流し、マノラ造船所へ向かう。ワープ、7!」
ウォーフ:「医療班、ブリッジへ!」
「ウォーフ…あの老いぼれをつまみ出せ!」
コールは無言で、ブリッジを出ていった。ドアが閉まり、立ちつくす。


※31: Orantho

※32: Slivin

DS9。
エズリがクワークの店に入る。カウンター席にはジェイクがいる。
周りを見ているエズリに、クワークが近づいた。
エズリ:「ハーイ! そうねえ、今日の気分は…」
クワーク:「待った! …話があるんだ。…余計な…お節介かもしれねえが、誰かが言わなきゃならねえから、俺が言うことにした。今から言うことをよく聞いてくれ。」
「…わかったわ。」
クワークはエズリを横へ呼び、小声で話し出した。「あんたまでウォーフを追いかけ回すってのは、間違ってると思う。」
エズリ:「…何ですって?」
「聞こえたろ。ジャッジアはウォーフに惚れてた。だが彼女はあんたじゃない。あんたはエズリ・ダックスだ。もっと外に目を向けて、あんたなりの恋愛をした方がいい。まだ若いし…器量もいい。身体だって健康だ。記憶にすがって生きてちゃいけないよ。俺は元々ウォーフにいい感情をもっちゃいないが、それは関係ない。あんたのためを思って言ってるんだ。いいか、ウォーフってやつは、絶対に…もう一度言う、絶対に、あんたに合わねえ。…今のあんただけを見つめてくれる男を見つけた方がいい。過去は忘れて。あんたにはそれだけの価値がある。俺が言いたいのはそれだけだ。」
「……私の意見言っていい?」
うなずくクワーク。
エズリ:「私はウォーフには全く何の興味ももってないわ。好きは好きだし、きっとこれからも好きだろうけど、お互い恋愛対象にはならないと思う。」
クワーク:「そうか、ならよかった。」
「でも心配してくれて嬉しかったわ。すごく親切で…あったかくて、でもあなたの言葉だと思うと顔が赤くなるようなセリフだった。」
エズリは指でクワークを呼び、頬にキスした。「あなたって優しいのね。…注文していい?」
その様子を見ていたジェイクは微笑んでいる。
クワーク:「…うん。」
エズリ:「モスコ・ミュール※33。」
「はい、ただいま。」
微笑むエズリ。
準備するクワークは、ジェイクに言った。「今の聞いた? 『優しいのね』だってよ!」
ジェイク:「ああ。だから?」
「俺に惚れてる。」
笑うジェイク。「何でそうなるの。」
クワーク:「『優しいのね』!」
「…ほんと、おめでたい性格してるよ。」
「惚れられちゃった!」
ため息をつくジェイク。

マートクは部下に話しながら、食堂へ入った。「ニンタオの力不足はわかっていた。確かにルーコン艦長※34は若い。だが奴は気づくべきだった。」 コールが独りで食事しているのに気づいた。「…フォーメーションの重要性をなあ。…次の目標について考えてみた。もっと大きなターゲットを狙うべきだ。我々の脅威となるような…例えば、ケイレブ4 の基地なんかどうだろうか。」
笑うシノン。
雰囲気を察したダロック。「失礼します、仕事がありますので。」
マートク:「ここにいるのが、お前の仕事だ!」
仕方なく座るダロック。
マートク:「誰だったか、ケイレブ4 について詳しい奴がいたなあ。誰だったっけ。」
シノン:「確か第三士官だったと思います、将軍。」
「そうだ、第三士官。ケイレブ4 の話をしよう。」 コールに話すマートク。「守ってるのはジェムハダーか、カーデシア軍か?」
コラーナ:「連邦の基地だったと思いましたが。」
「そんな馬鹿な。惑星連邦は同盟軍だぞ、コールだって知っているだろう。」
シノン:「混乱してしまったのかも。」
「混乱だと? ダハール・マスターがか? それはない。混乱しているのは我々の方だろう。教えてくれ。ケイレブ4 を守っているのは誰だ。ドミニオンか? 連邦軍か?」
コラーナ:「…忘れたようです。」
シノン:「居眠りしているのでは?」
マートク:「よさんか! 2人とも。…失礼にもほどがある。彼は帝国の最も偉大なる英雄だぞ。考えているのだ。時間をやれ。偉大なるコール一族最後の息子を、そう急かしてはならん。」
答えないコール。
コラーナ:「どれぐらい待てばいいです?」
シノン:「カーンに聞いてみればどうでしょう。」
大きく笑う 2人。
コールは食事の皿を押しやり、立ち上がった。出ていこうとする。
マートク:「何とか言え、爺! もうしゃべれんのか? 老いぼれてな!」
振り返るコール。「……果実のうまみを存分に味わうがいい、若き友たちよ。つるから取り立ての新鮮なうちはその味も甘い。だが死に際はわきまえよ。果実は必ず腐る。…時と共にな。」 食堂を出て行った。
マートクは皿を払いのけた。

椅子に座り、上を見上げているマートク。
ウォーフが作戦室に入る。「……新しい勤務表です。」
パッドを受け取るマートク。「コールを現場から外したのか。」
ウォーフ:「選択の余地はありません。」
「だが友達だ。辛い決断だったろう。」
「友なら、現場につけるべきではありませんでした。」
「…私はこの 30年、奴を憎んできた。あの男がもつ階級や称号が全て剥ぎ取られる日がくるのを夢みていたのだ。そして、奴にはもはや友もなく、親の名も効をなさぬと自覚する日がくることを。…そして今その夢を達成した。…だが喜びは微塵も感じない。…ディープ・スペース・ナインに戻った後の、彼の処遇は考えたのか。」
「故郷に戻ってコールにふさわしいような何らかの職務に就けるよう、ガウロン総裁に…頼むつもりです。」
「…私からも総裁に頼むとしよう。」
コラーナの通信。『ブリッジからマートク将軍。』
マートク:「どうした。」
『お話中すみません。センサーが大規模な敵艦隊を探知しました。』
「すぐに行く!」

ウォーフとブリッジに戻るマートク。「敵の位置は。」
コラーナ:「船尾方向から、ワープで接近中。ジェムハダー編隊です。我々を追跡しています。」
「それはありえん。」
ウォーフ:「先頭の船が、長距離タキオンスキャナー使って遮蔽を見抜いています。」
シノン:「ドミニオンにそんな装置があったでしょうか。」
マートク:「あったようだなあ。」
ウォーフ:「敵機は。」
コラーナ:「現在のところ 10機ですが……どんどん増えてます。」


※33: Moscow mule

※34: Captain Lurkan

スクリーンにジェムハダー船隊が映っている。
ウォーフ:「我々が攻撃可能域に入るのは。」
コラーナ:「2時間12分後です。」
マートク:「操舵手。ディファイアントの位置は。」
シノン:「はい、将軍。カランドラ星域※35で 7隻の連邦艦船を従え待機中。しかし…到着まで 3時間45分かかります。」
ため息をつくマートク。
ウォーフ:「ジェムハダーのワープを 10分間不能にすることができれば…ディファイアントの待機場所に到着するまで、我々に追いつけません。」
マートク:「素晴らしいアイデアだが、実行できるのか?」
「…反重力子バーストを起こせばワープフィールドを粉砕できます。重力子が消えるまで、通常航行を余儀なくされるでしょう。」
コラーナ:「相当大規模なバーストでない限り、あの規模のフィールドは壊せません。」
「ワープパワーをメインディフレクターへ送れば、バード・オブ・プレイ一機で可能です。」
マートク:「何分不能にできる。」
コラーナ:「ワープコアの再起動には 2分しかかかりません。」
ウォーフ:「…通常航行を強いられているうちに戦闘を仕掛ければ…もっと遅らせることができる。お任せ下さい。」
マートク:「任せろとはどういうことだ。」
「オランソの艦長と副長は死亡しました。シュリヴァンのディフレクターは、ダメージを受け重力子バーストを起こせません。ニンタオの艦長はまだ若く、経験不足です。…私が適任かと。」
「ああ…だがそれでは…ニンタオのクルー全員をいけにえに…すると…いうことになるぞ。」
「そうはさせません。任務遂行前にほとんどのクルーを転送するつもりです。必要なのは、6名の希望者のみ。」
「ああ。……ニンタオに連絡。クルーに指揮官の交代を伝えよ。」
準備するウォーフたち。

コールが寝ている。ドアチャイムが鳴った。「どうぞ。」
食事を持ったダロックが入る。
コール:「腹は減っとらん。」
ダロック:「これは私の分です。何時間も食べてない。」
「うーん…」
「我々の時代には食事の時間なんてなかった。」 笑うダロック。「腹が減ったら飯を食らい、腹が立ったら敵と戦う。ああ…単純に生きてたあの頃が懐かしいですよ。」
「私も、あの頃が懐かしくてならん。」
「なのにこの船に乗っている連中と来たら、全く何もわかっとらん。だが子供というのはそういうもんです。」
「ふーん…」
「彼らは勝手にバラ色の未来が開けていると思いこみ、過去を振りかえらん。」
「急に昔話なんかもちだして、何が言いたいのだ。」
「彼らはまだほんの子供だっていうことです。マートクさえ…あの男は欠点も多いが優秀な男だ。だがそのマートクでさえ、私らに比べればまだほんの子供です。彼らは思いこみばかりで、許すことを知らない。まだまだ学ぶことが多い。……我々は、ジェムハダーの艦隊に追跡されています。ウォーフはわずか一機でそれを止められると信じている。」
起きあがるコール。「どうやって。」
パッドを見せるダロック。「いい戦略ですが、欠点が一つある。わずかな時間で敵の艦隊全体を戦闘に巻き込めるかどうかは全てウォーフ一人にかかっていることです。」
コール:「……できるだろう。最初に魚雷を浴びせ、センサーを混乱させればいい。それが鍵になる。」
「恐らく。…しかしそのような芸当を成し遂げるには、経験の 3倍の力を要します。作戦を遂行する者は、自分の能力に絶対の自信をもっていなければならん。」
「過去に絶対の自信をもっていなければ…とても引き受けられまいな。」
ダロックはうなずく。「……お仕えできて光栄でした、コール。ライナー※36の息子よ。」 礼をし、部屋を出て行く。
うなずいているマートク。

廊下を歩くウォーフを呼び止めるコール。「ウォーフ! ニンタオに乗り込むらしいな。」
ウォーフ:「…そうです。」
「健闘を祈ってるぞ。スト・ヴォ・コーの門で会えることを願っている。」
コールの肩に手を置くウォーフ。「私もです。」
コール:「ジャッジアに何か伝言があれば、伝えてやろう。」
その瞬間、コールはハイポスプレーをウォーフの首元に打った。
倒れたウォーフに近づくコール。「私が名誉ある死を遂げたら、お前の妻を探そう。そしてお前は高潔なる戦士であり、今でも妻を愛していると伝えるよ。さらば、友よ。元気で。」
コールはコンソールを操作した。「帝国よ、永遠なれ!」 転送されていく。
遮蔽を解いたニンタオは、コースを反転させ、再びワープに入った。

ダロックはマートクにブラッドワインのボトルを差し出した。
マートク:「ん? ブリッジでか。」
ダロック:「成功の暁には彼らの勇気を称えて。失敗しても、やはり彼らの勇気を称えましょう。」
コラーナ:「ニンタオ、敵艦隊に接近。重力子バーストを開始しました。ワープフィールドが不安定に。通常航行に減速。」
マートク:「カーレスに感謝を。何機だ。」
「全機です。ニンタオ、通常航行に減速。敵艦隊と交戦中。」
「…安らかに、ウォーフ。」 目を閉じるマートク。
ウォーフ:「今日は私が死ぬ日ではない。」 ブリッジに入る。
マートク:「…ウォーフ! では誰が! …コールか。」
「転送室の前でハイポスプレーを…打たれました。」
「うーん…あの老いぼれ、自分が何をしているのかわかってるのか。戦闘状況は。」
コラーナ:「探知可能域ギリギリですが、敵のフォーメーションが崩壊したのは明らかです。ニンタオ、回避行動。ジェムハダーに猛攻撃を受けています。あ…見失いました。」
「一機で…10機を…。不可能だ。」
ウォーフ:「成功しますよ。彼はコール、ダハール・マスターです。」
うなるマートク。

報告を待つマートクたち。
コラーナ:「やりました。ジェムハダーは時間切れです。我々がディファイアントと合流するまで、追いつけません。」
マートク:「うーん…。あの老いぼれめ、たった一機でどうやってジェムハダーの艦隊を引きつけたというのだ。」
ウォーフは言った。「どうでもいい。」
マートク:「…ダロック、ボトルをよこせ。」 ナイフで栓を開ける。「コール! ダハール・マスターへ。名誉ある戦死を祝して。」
ワインを口にするマートク。
ダロックは、クリンゴン語の歌を唄い始めた。
歌を唄いながら、ブラッドワインを回し飲みしていくクルー。皆で歌う。
最後にボトルを受け取るマートク。
帰還するチュタンの中で、その歌は高らかに響いた。


※35: Kalandra Sector
ベタゾイドとアーゴリス星団近くにある、連邦内の宇宙領域。DS9第145話 "The Reckoning" 「善と悪の叫び」など

※36: Rynar

・感想
原題はシェイクスピアの「ヘンリー五世」の一節から取られた、クリンゴン話。TOS、DS9 第2・4シーズンにも登場したコールが、最期の見せ場を作ってくれました。最近レギュラー並みに出ているマートク将軍ともしっかり絡めて、地位や出自を題材にしたクリンゴンらしい展開が続きます。
バード・オブ・プレイならではの大気圏内の攻防は素晴らしく、対して最後の戦闘シーンをあえて描かない、あっさりとした終わり方もいいですね。冒頭のウォーフの言葉が、最後で生きてきます。
コールを演じたジョン・コリコスは、2000年3月にお亡くなりになっています (このエピソードは 1998年11月放送)。


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