ヴォイジャー エピソードガイド
第44話「伝説のミスター・カトー」
Flashback
イントロダクション
※1食堂。ポポラシード※2のエキスをちょっぴりブレンドした、インセリシックシトラス※3ピールのオレンジジュース※4だと説明しながら、ニーリックスがグラスに注いでいる。まだ試作品だ。前に座っているトゥヴォックは、こう言ってはなんだが、君の試作品の成功率はあまり高くないという。ゴールワット少尉※5に昨日飲ませたら、美味いっていってたぞと反論するニーリックス。彼女はおかわりまでしたんだ、今までなかったことだという。ゴールワット少尉はボリアン※6で、舌が軟骨で守られているので腐食性の強い酸を飲んでもびくともしないというトゥヴォック。なんでそう構えるんだ、味見を頼んでるだけなのにとニーリックスは言う。仕方なくオレンジジュースを口に含むトゥヴォック。まずくはないとの答えにニーリックスは喜び、おかわりも作っとく、朝食もすぐポロカンエッグ※7を準備するという。ポロカンとは、このセクターで一番美味い卵だと指を鳴らす。スクランブルしてイノンドの葉※8を少々とランガーゾー※9を一つまみ入れれば耐えられない美味さだ、でも下ごしらえが大変だと話し出す。ポロカス4号星から取って来て、低温保存室※10で殺菌するのに 3日かかり、更に 1個1個湯通しするのだ。ミスター・ニーリックス、朝食ができるまでの歴史は省いてもらいたいんだがというトゥヴォック。ニーリックスは、タラックスじゃ歴史を聞くのが習わしなんだ、食べる前に、その方がただ食べるより面白いだろという。おふくろはそれが得意で、メインから付け合わせまで全部キャラクター付けして物語風に話すという。俺が好きなのはカニ料理の話なんだけど…といったとき、コンロの火が燃え上がった。慌ててふたで火を消す。どうしたんだというトゥヴォックに、オーバーロードしたんじゃないかなというニーリックス。料理は黒こげだ。朝食は焼け死んだよ、おふくろが言う悲劇的結末ってやつだというニーリックス。今機関室で新たなエネルギー源に合わせてプラジマコンジットを調節している、その影響で火力が急増したんだろうと推測するトゥヴォック。そこへジェインウェイから通信が入り、トゥヴォックをブリッジへ呼んだ。ニーリックスもだ。すぐに向かう 2人。 艦長日誌、宇宙暦 50126.4。可燃性が高く用途の広いエネルギー源であるシリリウム※11を含むガス星雲を発見、早速調査に向かった。 シリリウムが大量にありそうだわとニーリックスに言うジェインウェイ。この機会にできるだけストックしとかないと、だから第3収納庫を貯蔵室として使いたいと話す。そこはニーリックスの食料庫だ。悪いけど食品をほかへ移してちょうだいと頼むジェインウェイ。わかりました艦長、シリリウムを使えば調理時間をスピードアップできるかもしれないとニーリックスは思い付く。でもキッチンが半分吹っ飛ぶでしょうという機関コンソールのトレス。シリリウムはワープドライブの触媒に使うべきだという。トゥヴォックはディフレクターシールドの効率アップにも使えると言う。奪い合いになりそうだというチャコティに、名案はあればあるほどいいというジェインウェイ。全部署にシリリウムの利用案を出させることにする。星雲が見える距離に達し、スクリーンに青いガス星雲が映し出される。分析結果をキムに尋ねるジェインウェイ。17クラスの星雲で、水素とヘリウムの含有量は標準、シシリウムは 100万に 7,000 の割合※12だ。シシリウムの収集にはブサードコレクターがいいでしょうというトレス。アイスクリームのさじのように切り開くという。その時トゥヴォックは、目を見開き手を震わせていた。プラズマ乱気流が発生していますから、かなり揺れそうですというパリス。気流に合わせてシールドを調整できるかトゥヴォックに聞くジェインウェイ。何も答えないトゥヴォックを見て、ジェインウェイたちも異常に気づいた。どうしたんだ大尉と尋ねるチャコティに、わかりません、突然めまいがして、意識が遠のいたというトゥヴォック。医療室へ行く許可を認めるジェインウェイ。 ターボリフトに乗り、第5デッキを指示するトゥヴォック。「助けて」という声が聞こえた。「トゥヴォック、お願い助けて。」 泣き叫ぶ少女の姿。ターボリフトを降りるトゥヴォック。「手を離さないで。」 少女の手を握っているのは、幼いヴァルカン人だ。よろよろと医療室へ向かって歩くトゥヴォック。「トゥヴォック! 私落ちちゃう。」 ついに手が離れ、少女はがけから落ちて行った。 医療室に入ったトゥヴォックに気づくケス。だが抱きかかえる間もなく、トゥヴォックは目を見開いたまま倒れた。 |
※1: 1966年に始まったスタートレックの、1996年に作られた 30周年記念作品。DS9では第104話 "Trials and Tribble-ations" 「伝説の時空へ」です
※2: papalla seed ※3: Anthraxic citrus
※4: orange juice ※5: Ensign Golwat
※6: ボリア人 Bolians ※7: Porakan eggs ※8: dill weed ※9: rengazo ※10: cryostatic chamber ※11: sirillium
※12: parts per million
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本編
私は少女の手をつかんでいた、がけから落ちそうになっているのを助けようとしたが、助けられずに死なせてしまったと説明するトゥヴォック。それにあの時感情面でも反応し、不安や恐怖、自分に対する不条理な怒りまで感じた。だが、いつの記憶かはトゥヴォックには覚えがない。少女もああいう状況も知らないが、少年は自分だった。記憶の一部のようだが、あんな記憶はないと話す。トラウマ的体験だ、心拍数は毎分 300まで上がり、アドレナリンレベルは 113%まで上昇、神経電気の数値は測定不可能なほどだったと伝えるドクター。地球人だったら錯乱状態に陥っていただろうという。私は地球人じゃないというトゥヴォックに、そうだな、説明はいくらでも考えられるというドクター。幻想、異星人からのテレパシー交信、記憶の抑圧、異次元との瞬間的コンタクト。宇宙ではなんでもありだからなという。星雲に接近したせいかもしれない、ミスター・キムにセンサー記録を調べさせてみましょうというジェインウェイ。うなずくトゥヴォック。ドクターは君も任務に戻っていい、生体機能は元に戻ったし、後遺症の心配もないという。ただし、この神経皮質モニター※13を付けていきたまえといい、耳の下辺りに小さな機械を取り付けた。もしまた発作が起きれば、脳内の映像を完全に記録して同時に医療室へ知らせてくれる。賢明な予防措置ですといい、医療室を出て行くトゥヴォック。 トゥヴォックの部屋。「構築、論理、機能、制御。構築は基盤なしには成り立たない。論理は機能を支える基盤である。機能は制御にとって不可欠だ。私は調和が取れている。私は調和が取れている。」 トゥヴォックはパズルのような置物を組み立てていたが、崩れてしまった。部屋のベルが鳴る。入ってきたのはケスだ。ドクターに頼まれてきた、ペプチド数値も拾えるようにモニターを調整するという。邪魔なようなら後で来るけどというケスに、構わない、始めてくれというトゥヴォック。調整を始めるケス。何してたのと尋ねると、カシーラ※14という儀式だと答えるトゥヴォック。意味は近い言葉に訳せば「調和の構築」、瞑想しやすくしてくれるもので、組み立てるには鋭いバランス感覚と集中力が必要だ。心が研ぎ澄まされ、精神統一に役に立つと教える。今は調和が取れてないみたいねというケス。そうだというトゥヴォック。完成した時はどんな形になるのと聞くケス。形は予想がつかない、組み立てるものの心の状態をあらわすというトゥヴォック。したがって、時によって違う。完成したら見せてねというケス。再び組み立て始めたトゥヴォックをみて、おやすみといって部屋を出て行く。トゥヴォックはケスを呼び止めた。いいのよ、わかってるからといい、ケスは去った。目を閉じ、再びカシーラを始める。「構築、論理、機能、制御。構築は基盤なくして成り立つことはない。論理は機能を支える基盤である。機能は制御にとって不可欠だ。私は今調和が取れている。私が今調和が取れている。」 今朝の気分はどうだと尋ねるチャコティ。昨日の一件でしたら、任務に支障をきたすことはありませんのでご安心くださいというトゥヴォック。そんなつもりで聞いたんじゃない、君のからだが心配なんだというチャコティに、心配はご無用ですという。余計だったかというチャコティ。申し訳ありません、ついイライラしてと謝るトゥヴォック。夕べ 14時間かけて瞑想し、原因を突き止めようとしたのですが無駄でしたと話す。忘れた方がいい、問題を考えないようにすれば解決策が浮かぶこともあるというチャコティ。忘れるのは難しい、モニターが付いていれば考えざるを得ませんとトゥヴォックは言う。2人は機関室に入った。確かになというチャコティ。キムに現状を聞く。センサー記録を調べましたが、星雲から発散された何かがトゥヴォックに影響を与えたとは思えませんという。星雲自体にも変わった点はなく、標準的なクラス17だ。星雲にタキオン※15照射を行ってはどうでしょう、船が遮蔽していれば暴き出せるというトゥヴォック。遮蔽した船と聞き返すチャコティ。そうです、クリンゴンの領域付近では注意しないと、とトゥヴォックは言った。トゥヴォック、クリンゴン帝国は銀河の反対側よというトレス。トゥヴォックは気づき、そうだ、いるはずがない、私としたことが明らかなミスをという。チャコティは医療室に戻った方がいいと勧めた。モニターに映し出された星雲を見つめるトゥヴォック。トゥヴォックを呼ぶチャコティ。「お願い助けて、トゥヴォック」 再び少女の姿。「お願い、手を離さないで。」 叫びながら落ちていく少女。トゥヴォックは倒れた。反応する神経皮質モニター。 脳のモニターを見るドクター。恐らく抑圧された記憶が原因だろう、脳の海馬状隆起※16の裏にある記憶痕跡※17が分裂しており、そして周囲の組織を虫食んでいる。ヴァルカンではトロカン分裂※18と呼ばれ、蘇ろうとしているトラウマ的記憶を抑制するために起こる。それが脳を傷付けるのと聞くジェインウェイに、不思議ですよ、地球人にすれば抑圧された記憶は単に精神的なもので標準的な精神治療で対処できるというドクター。しかしヴァルカン人の場合は、意識と無意識の葛藤が肉体に影響を及ぼす。ひどい場合には、患者の精神が文字通り一人歩きする。対処法はなく、医学では治療できない。ヴァルカンの対処法では、患者が家族の誰かと精神融合を行い抑圧された記憶を意識の中へ戻すのだ。トゥヴォックにとって家族に一番近いのは私だわというジェインウェイに、だからお呼びしたんです、本人もぜひあなたにと、というドクター。 腕を組んで寝ているトゥヴォックに近づくジェインウェイ。ドクターからお聞きになりましたかと尋ねる。ええ、でもあなたはそれでいいのというジェインウェイ。ほかに方法はありません、ドクターはこれを記憶だといっている、しかしどんなにがんばっても思い出せないというトゥヴォック。ドクターの言う通り、もしこの記憶を無意識の中へ押し込めているなら、私にとっては命にも関わる危険ですという。本来ならば艦長にお願いするべきではない、ヴァルカン人のクルーに頼もうとも思ったのですが、この場合の精神融合は信頼が大事ですというトゥヴォック。普通は無条件に信頼できる家族の一員を相手として選ぶんですが、この船ではあなたを一番信用していますからといった。何があろうと私がついてるわ、一緒に乗り越えましょうというジェインウェイ。トゥヴォックは起き上がり、では精神融合を行い、記憶の断片を呼び起こしますという。あなたには記憶の中で、私のパローラ※19になってもらうという。パローラとは案内人であり、カウンセラーだ。記憶を完全に復元してくれ、トゥヴォックが再体験した体験を具体化してくれる。記憶を抑圧するのではなく、真っ向から向き合って恐怖や怒りやそのほかの感情を克服し、記憶を再び意識の中へ戻せる。記憶の中に入ったら、私も一緒に再体験するのと尋ねるジェインウェイ。いいえ、あなたの姿は私にしか見えない、あくまで記憶のオブザーバーであり、参加はしないんですというトゥヴォック。だから私を客観的に導くことができると言った。いつ始めると尋ねられ、準備が必要ですので 1時間後に来てくださいとトゥヴォックは頼んだ。出ていくジェインウェイ。 医療室。いつでもどうぞというドクター。トゥヴォックと同じく神経皮質モニターを付けたジェインウェイはうなずいた。トゥヴォックの手がジェインウェイの顔に置かれ、ジェインウェイは目を閉じる。「我が精神をあなたに送り、あなたの思考を私に送る。共に記憶をさかのぼり、少年時代の私のもとへ、あのがけの上にいた少年へ。」 ジェインウェイは船の上にいた。攻撃され、大きく揺れる。反撃、だめだ、ターゲットスキャナーをやられたという声が飛ぶ。クルーは全員、古い赤い制服を着ている。再び艦が揺れ、艦長が被害報告を求めた。彼は、ヒカル・スールー※20大佐だった。 |
※13: neurocortical monitor
※14: keethara
※15: tachyon
※16: engram ※17: hippocampus ※18: t'lokan schism ※19: pyllora
※20: ヒカル・スルー Hikaru Sulu |
コンジットを封鎖しろと命じるスールー。12デッキ、セクション47で船体に亀裂、第5、第6、第10デッキでパワー停止、19名が負傷と報告する、通信士官のジャニス・ランド※21中佐。ジェインウェイはトゥヴォックに近寄り、私が見えると尋ねる。はいと答えるトゥヴォック。他のクルーと同じように赤い制服を着ている。ここはどこと聞くジェインウェイに、最初に配属されたエクセルシオ※22ですと答えた。なぜここへ来たのかは、トゥヴォックにもわからない。少女のいるがけへ向かわなくてはというジェインウェイに、私もそのつもりだったのですがと言う。ここは来たのには訳があるんだわ、この記憶は少女と関係あるんじゃないかしらというジェインウェイ。いつのことと尋ねると、トゥヴォックは宇宙暦 9521ですから、およそ 80年前※23ですという。相手はクリンゴンだ。トゥヴォックが機関室で倒れる前に、クリンゴン領に近いといっていたことを思い出すジェインウェイ。争いの原因は、3日前にある事件が起こりそれで拍車がかかったのだという。 場所が変わった。トゥヴォックたち士官のいる部屋に、ランドが入ってきた。ガンマシフトの諸君、ガス星雲の恐怖から連邦を守ってちょうだいという。笑うクルー。ヴォイジャーもガス星雲に遭遇したわといってトゥヴォックに近づくジェインウェイ。そしてトゥヴォックに異常が起きた。偶然とは思えない。おはよう少尉とトゥヴォックに声をかけるランド。今朝の通信記録を持ってきた、任務に入る前に見たいと思ってと言う。ヨークタウン※24からお待ちかねのメッセージが届いている、お父様からよといいボードを渡す。お茶を飲んでる時間はないでしょ、あと 5分でブリッジへ行かなきゃというランドに、自分にではなく艦長にですと答えるトゥヴォック。スールー艦長は毎日お茶を飲まれるようなので、ヴァルカンブレンドをおすすめしたくてという。なるほどね、1ヶ月中に中尉になろうと狙ってるわけというランド。私もあなたくらいの頭があれば、少尉を 3年やることもなかったのにという。私にそのような下心はありませんというトゥヴォックに、別にいいのよ、ブリッジで会いましょうといってランドは出て行った。私にもお茶を持ってきたら、とジェインウェイは言った。 お茶を注ぐトゥヴォック。それを飲んだスールーは、これは美味い、君を昇進させてやろうと言った。どうか誤解なさらないで下さい、そんなつもりでお持ちしたわけではありませんというトゥヴォック。ミスター・トゥヴォック、私の船になじみたければ、冗談を楽しむということを覚えなければなというスールー。ヴァルカンにユーモアのセンスがないとは言わせないぞ、私はよく知ってるんだと言った。楽しみを努力いたしますというトゥヴォックに、結構、本当にありがとうというスールー。ジェインウェイはスールーの顔を見て、艦隊司令本部にある肖像とは全然似てないと話す。23世紀ではホログラムの解像度が低かったんですといい、持ち場に座るトゥヴォック。科学ステーションだ。私は下級科学士官の一人でしたというトゥヴォックに、でもあなたの勤務記録には載っていない、最初の船はワイオミング※25になっていると言うジェインウェイ。話せば長いのですが、とにかくここが私の艦隊のキャリアの出発点ですというトゥヴォック。29歳※26だった。この後はクリンゴンと遭遇するのと尋ねるジェインウェイに、そうではなくクリンゴンの衛星、プラクシス※27が爆発しますという。この当時、クリンゴンにとっては主要なエネルギー源だった。ジェインウェイも思い出した。爆発は宇宙域全体に多大な影響を及ぼし、連邦とクリンゴンが和平を結ぶきっかけになった。でもそれががけの少女とどうつながるのというジェインウェイ。トゥヴォックは答えることができない。船が揺れ出した。艦長のテーブルの上にあったカップが、落ちて割れる。エネルギー波の方向を知らせる、士官の一人のヴァルテイン※28。映像が出される。驚くスールー。 巨大な衝撃波が迫り来る。シールドと叫ぶスールー。エクセルシオに衝突する衝撃波。操縦不能ですという操舵士※29。右舷スラスターを、波の中へ突っ込めと命じるスールー。エクセルシオは衝撃波の中を通り抜けていく。推力 4分の1、被害報告を求め、艦長席に戻るスールー。システムが総チェックされる。衝撃波はエクセルシオを過ぎ去って行った。まさか流星の雨じゃないだろうなというスールーに、違います、今の亜空間衝撃波の発生源の場所は、クリンゴンの衛星プラクシスですと答えるヴァルテイン。エネルギー源かというスールー。この後はプラクシスへ行くのと尋ねるジェインウェイ。いいえ、クリンゴンに警告され調査活動に戻りますというトゥヴォック。しかし 2日後に 2人の艦隊士官がクリンゴン宰相の殺害容疑をかけられ、裁判のためにクリンゴンへ連行されるという。 スールー艦長はその 2人の下に長く仕え、強い忠誠心をもっていたというトゥヴォック。スールーは操舵士に、クロノスへワープ最大で向かうように命じた。アジュール星雲を抜けていけば、感づかれずに接近できるという。艦長は何をするつもりなのというジェインウェイに、救出に行くんです、カーク船長とドクター・マッコイをというトゥヴォック。ご覧のように、誰もこの違反行為に対して異議を唱えなかった、しかし私は違いましたといい、スールーに近づく。その 2人を救出に行くおつもりなのでしょうかと尋ねるトゥヴォック。もちろんだ、何か言いたいことでもというスールー。トゥヴォックは艦隊司令部への明らかな造反であり、連邦とクリンゴン帝国との全面戦争へも発展しかねない行為ですという。言分はわかった、持ち場へ戻れとだけ言うスールー。私は艦隊士官として正式に抗議しますというトゥヴォック。トゥヴォックといさめるランド。少尉にしては大胆だな、しかも勤務経験はたったの 2ヶ月だろうというスールー。トゥヴォックは、経験が浅いのはわかっていますが、艦隊の規律は心得ておりますし守るのが義務だと思っていますという。いい加減にしなさい、任務から外すわというランド。スールーに謝り、私からよく言ってきかせますという。確かに君の意見は正しい、しかし同時に勘違いしているとトゥヴォックに言うスールー。いずれはわかる時が来るだろうが、命令に従い規律を守ることだけが宇宙艦のブリッジでの仕事ではない、そこには自分が仕える上官への忠誠心があり、家族意識があるという。訴えられた 2人は、私が長い間仕えた上官だと言った。命を助けられたことも一度や二度ではない、その彼らを救うためなら、私は何でもする、艦隊の規律に背こうともというスールー。あなたの見解は非論理的ですというトゥヴォック。スールーは、だがこれが本心だといい、操舵士に発進を命じた。トゥヴォックにあなたは間違ってないというジェインウェイ。どうでしょうとトゥヴォックはいった。 進み続けるエクセルシオ※30。アジュール星雲※31に接近しましたという報告。スクリーンに青い星雲が映し出された。ジェインウェイはそれを見てトゥヴォックを呼ぶ。そっくりだわ、ヴォイジャーが遭遇したものという。「お願い助けて、トゥヴォック。」 がけの記憶だ。「手を離さないで。」 少女は落ちて行った。 ジェインウェイの顔から手を離すトゥヴォック。体を震わせる。コードラジン※32を 50ミリグラムと命じ、トゥヴォックに駆け寄るドクター。 |
※21: Janice Rand (グレース・リー・ホイットニー Grace Lee Whitney) 初代エンタープライズのカーク船長の、初のファイブ・イヤー・ミッションの初期にカークの秘書として務めた宇宙艦隊士官。TOS第3話 "The Corbomite Maneuver" 「謎の球体」で初登場、映画TMP、ST3、ST4、ST6 にも登場。TOSの吹き替えでは「ジェニー」。声:鈴木紀子。TOSの吹き替えは此島愛子
※22: U.S.S. エクセルシオール U.S.S. Excelsior ※23: 西暦2293年
※24: U.S.S. Yorktown
※25: U.S.S. Wyoming ※26: このことより、初めてトゥヴォックが西暦2264年生まれということが判明します。この時点で 109歳
※27: Praxis
※28: Dmitri Valtane ※29: 名前は Lojur (Boris Krutonog)。映画ST6にも登場 ※30: ここまでのシーンのエクセルシオは映画ST6の流用でしたが、ここからは新しく作られたミニチュアが使われています ※31: Azure Nebula
※32: cordrazine |
海馬状隆起に急激な変動があった、医療室にいなければ昏睡状態に陥ったでしょうというドクター。だがまずいことにシナプス経路がどんどん失われていて、抑圧された記憶が蘇ろうとするほど損傷がひどくなり、ゆくゆくは神経構造が崩壊し脳死状態になる。でも一歩前進したわ、抑圧された記憶にアクセスできたのというジェインウェイ。がけの少女と、少年時代のトゥヴォックを観た。起こせないとの問いに、今はまだと答えるドクター。激しい神経トラウマを受けていますから、2、3時間は眠らせないと、という。起こせるようになったらお知らせしますというドクター。ジェインウェイは出ていった。 作戦室。キムが入ってきた。この星雲とエクセルシオが 80年前に遭遇したのは別でしょう、こっちは 17クラスで、向こうは 11ですとジェインウェイに報告する。共通点はシリリウムを含んでいることだけだ。同じに見えるというジェインウェイに、肉眼では、でもセンサーは違うというキム。全く別です、ドクターに聞いたんですが抑圧された記憶はちょっとしたきっかけで蘇るという。例えば匂いや、視覚的なものでだ。トゥヴォックもよく似た星雲を見て、エクセルシオの記憶が蘇ったのではという。ならあの少女の記憶はどうなるの、スールーの船での経験とは何にも関係ないというジェインウェイ。エクセルシオとトゥヴォックの少年時代はかけ離れている。ヴァルカンの精神構造はわかりません、何の関係もないのかもしれない、エクセルシオのことを思い出したのは単なる偶然で、似ている星雲を見たために起こったフラッシュバックじゃないですかというキム。かもしれない、でもエクセルシオの記録を調べてみたのといい、コンソールをこちらに向けるジェインウェイ。だが手がかりは何もない。スールー艦長はあの旅を公式記録には残さなかったようね、ガス星雲で船がダメージを受けて修理が必要とされたことには何となく触れているが、それだけだという。つまり記録を改竄したと、というキム。ジェインウェイは笑い、今とは時代が違うわという。スールー艦長、カーク船長、ドクター・マッコイ、彼らは全く別の種類の艦隊士官よと言った。今じゃ想像もつかない、アルファ宇宙域はまだほとんどが未知で、クリンゴンとは一触即発だし、ロミュランはあちこちの星雲に隠れているという。それに技術も今とはとても比べ物にならず、プラズマ兵器※33もマルチフェイズシールドも何にもない。レプリケーターもホロデッキもない、僕はアカデミーで艦隊の歴史を習ったんですが、その時代ってどんな風だったか、いつも不思議でしたというキム。きっと宇宙は今よりずっと広かったでしょうね、だからルールを曲げなきゃいけないこともあったのよというジェインウェイ。艦隊の誓いもまだ徹底されていなかったし、みんな血気盛んですぐにフェイザーを抜いた。もちろん今なら艦隊から追い出されたでしょうね、でもできることなら、その頃の艦隊士官と一度同じ船に乗ってみたいわとジェインウェイは言った。ドクターから通信が入った。ミスター・トゥヴォックを起こしますというドクターに、すぐ行きますというジェインウェイ。 医療室。星雲に入る数時間前にクリンゴンに遭遇した、戦闘になり、救出活動は中止されましたというトゥヴォック。それらの出来事とあの少女をつなぐものは何かあると尋ねるジェインウェイ。関係があるとしても思い当たりませんとトゥヴォックは言う。もう一度精神融合を行って、少女の記憶を呼び覚ましましょうと言った。準備を行い、再び精神融合が始まる。「あなたの精神を私に送り、私の思考をあなたに送る。共に記憶をさかのぼり、少年時代の私のもとへ。あのがけの上にいた少年へ。」 そこはエクセルシオだった。また 80年前のクリンゴンとの戦いに戻っているわというジェインウェイ。私にもなぜかわかりませんが、偶然だとは思えませんというトゥヴォック。ジェインウェイは最初に星雲を見た時に戻れればいいんだけど、何があったのと尋ねる。スールー艦長は星雲を抜けてクリンゴンの領域に入るのに 5時間かかるとみていた、我々ガンマシフトは休憩で部屋に戻ったんですというトゥヴォック。 2人はその部屋にいた。私は眠ろうとした、しかし同室のディミトリ・ヴァルテインが話しかけてきたのですというトゥヴォック。トゥヴォック、眠れそうかと上のベッドから尋ねるヴァルテイン。いやというトゥヴォックに、俺もだ、しかし信じられない、艦長には驚いたという。規律に背いてまで仲間を助けに行くガッツがあるなんてというヴァルテインに、その口調からすると違反行為を肯定するのかと尋ねるトゥヴォック。すごいよ、度胸があるというヴァルテインに、無謀で非論理的だ、艦長の見解は間違っているという。ガス星雲の調査よりずっと面白いだろというヴァルテイン。「面白い」という幻想が地球人の歴史の中で多くの悲劇を起こした、今まで地球人が滅びなかったのはほとんど奇跡に近いというトゥヴォック。たまには力を抜けよ、ヴァルカンとヴァルテインはいう。いや、私はアカデミーに入って以来、ずっと地球人のエゴに耐えてきたというトゥヴォック。君たちは誰もが地球にならうべきだと思っている、ユーモアのセンスや価値観を押し付けようとしているんだという。そんなに嫌いなら何で艦隊になんか入ったんだよというヴァルテイン。両親の期待を裏切りたくなかった、だが今回の任務が終了したら艦隊を辞めようと思っているとトゥヴォックは言った。勝手にしなといい、ヴァルテインは眠りについた。 トゥヴォックに近づき、今のは本心なのと尋ねるジェインウェイ。もちろんそうでした、当時はアカデミーとエクセルシオの経験に愛想が尽きていましたというトゥヴォック。あなたが 50年間艦隊から遠ざかってたのは知ってたけど、地球人との対立が原因とは知らなかったとジェインウェイは言う。私は地球人と艦隊に偏見をもっていた、それは自ら進んで入隊したわけではないからですというトゥヴォック。ご両親に強く勧められたからなのというジェインウェイに、期待に添うのが自分の義務だと感じていましたという。50年間の間には、ヴァルカンに戻り数年間奥地に引きこもってコリナー※34に没頭していた。感情を完全に排除するための厳しい修行だ。私は純粋な論理の世界に行きたかったというトゥヴォック。しかし修行に入って 6年後にポンファー※35が始まり、妻をめとった。タペル※36だ。家庭を築く決心をしたので、修行は延期したという。艦隊に戻った理由を尋ねるジェインウェイ。子供を育ててみて初めてわかったんです、両親というもののありがたみがとトゥヴォックは言った。それに若い頃の自分の判断が必ずしも正しくないことに気づき、両親が艦隊を勧めたわけもわかったという。地球人やほかの種族と接すれば、知識を広げられる、だから私は艦隊に戻る決心をしたんですというトゥヴォック。艦隊もトゥヴォックを受け入れた。あなたの気が変わって良かったわというジェインウェイに、私も同感です、だがもちろん感情で決めたわけではありません、論理的な決断ですという。そうでしょうねというジェインウェイ。攻撃音が響いた。通信が入り、非常警報、総員戦闘配置と告げた。ライトが点く。なんだよ、クリンゴン領まで 5時間はあるはずだろといい、ベッドから降りるヴァルテイン。星雲内でクリンゴン戦艦が遮蔽解除しました、それが船首に向けて威嚇射撃を行っていますというトゥヴォック。 |
※33: plasma weapons
※34: Kolinahr
※35: Pon farr
※36: T'Pel |
エクセルシオと向き合うクリンゴン戦艦※37。通信が入り、スクリーンに出す。ミスター・スールー、あんたいつか必ず艦長になる器だと思っていたよというクリンゴン人。それはどうも、カン※38というスールー。だが長く務めたければ注意しろというカンに、我々はこの星雲を調査しているに過ぎない、ただ航行システムが機能不全を起こし、道に迷ってしまったようだと笑うスールー。もちろん修理が済み次第すぐ引き上げると話す。迷ったのなら連邦領まで送り届けてやろうというカン。気持ちはありがたいが、それには及ばないというスールー。カンはさっさと出て行けと言った。だったら帰り道を教えてくれないか、また迷うのはごめんだからなというスールーに、カンは船を旋回させるようにいって方角を伝えた。会えて良かったよ、カンというスールー。カンは唸り、通信を終えた。スールーは救出活動は続行するといい、操舵士に旋回を命じた。 エクセルシオを追うクリンゴン戦艦。戦術状況を尋ねるスールーに、前方ディスラプターを我々に向けていますというヴァルテイン。トゥヴォック少尉、この星雲の成分は何だと聞くスールー。主に酸素とアルゴン、微妙ながらシータ・キセノン※39とフッ素、シリリウムを含んでいると答えるトゥヴォック。シリリウムは可燃性の高い物質だろうと確認するスールー。点火できる方法はないかという。陽電子ビーム※40を調整して亜空間周波に合わせれば、シリリウムに熱化学反応を引き起こせますというトゥヴォック。ガソリンにマッチを投げ込むようなものだ、向こうのシールドは熱に耐えられるかというスールー。恐らく、しかしセンサーと戦術システムは数秒間使えませんとトゥヴォックはいう。それだけあれば十分だ、陽電子ビームを調整して準備しろ、星雲を抜け次第シリリウムに火を付けるとスールーはいった。操舵士にワープ最大で発進する準備をし、合図を待つように命じる。全部署に通達を入れ、持ち場に戻り正念場に備えろというスールー。トゥヴォックが陽電子ビームの準備ができましたと言った。合図を待てと言うスールー。星雲を抜ける。ミスター・トゥヴォック、マッチを擦れと命じるスールー。 エクセルシオの後部から星雲に向かって陽電子ビームが発射された。爆発が起こり、巻き込まれるクリンゴン戦艦。追っては来られません、クリンゴン艦は操縦不能ですというヴァルテイン。スールーは操舵士にクロノスへコースをセットし、発進するよう命じた。 ワープ航行を行うエクセルシオ。スールーがランド中佐に話しかけようとした時、長距離センサーが 3隻のクリンゴン艦を捉えました、魚雷を準備してますとヴァルテインが報告する。スールーはコースを維持させる。数発の光子魚雷がエクセルシオを襲った。撃ち返せというスールー、しかしターゲットスキャナーをやられた。手動に切り替える。攻撃は続いている。トゥヴォックはヴァルテインに、コンソールの裏にあるプラジマコンジットが危ない、すぐそこを離れろと言った。ちょっと待ってくれというヴァルテイン。ディミトリ、早くというトゥヴォック。コンジットが爆発、ヴァルテインは吹き飛んだ。駆け寄り、医療室に救護班を要請するトゥヴォック。ヴァルテインはトゥヴォックと言い残し、息を引き取った。「トゥヴォック!」 子供の頃のトゥヴォック。「助けて!」 「手を離さないで!」 落ちていく少女。 ヴォイジャーの医療室では、モニターを見ていたケスが何かに気づいた。記憶痕跡が不安定になっていると言うドクター。精神融合に異変が起きたらしい、すぐ中止させようという。だがコンピューターを操作しても反応がない。神経パターンが結合しており、融合を解くことができないのだ。トリコーダーでトゥヴォックを調べ、シナプスパターンの損傷が進んでいる、20分で脳死に陥るぞというドクター。皮質刺激装置※41をと言った。 またあなたを観たわ、少女もというジェインウェイ。ヴァルテインの死が引き金になって、記憶が蘇ったのかもしれない。トゥヴォックはうろたえた。精神融合に異変が起きているという。ジェインウェイを見たスールーは言った、「誰だ君は。」 |
※37: クティンガ級の戦艦 (バトルクルーザー)
※38: カング、カーン Kang ※39: theta-xenon
※40: positron beam ※41: cortical stimulator ヒューマノイドの神経システムの活動を回復させるために使われる医療用機具。VOY第13話 "Cathexis" 「幽体離脱」など |
侵入者警報、保安部員を呼べというスールー。どういうこと、なぜ見えるのとトゥヴォックに尋ねるジェインウェイ。君は何者だ、何をしているというスールー。トゥヴォックは脳の損傷が進んでいる証拠だと思います、トロカン分裂がひどくなるに連れ、記憶や思考のプロセスが低下し混乱するという。この女性を知ってるのかと聞くスールー。融合を解きましょうというトゥヴォックに、待って、だんだんわかってきた、全ての中心にあるのはヴァルテインの死よというジェインウェイ。左舷船首を直撃、シールド 20%、第5から第7デッキで酸素を消失と報告するランド。スールーは艦長席に戻り、補助動力で船体構造を強化しろと命じる。死の瞬間彼との間に何か起こったのよ、思い出せないほど些細なことがというジェインウェイ。もう一度今までの場面を再現してみることにするが、融合中に神経が崩壊すればジェインウェイの脳も傷つくという危険が伴う。ジェインウェイはわかってると言った。保安部員が到着し、スールーは 2人を拘留室に入れるように命じた。だが記憶を再現しても、あなたが見つかればまた邪魔が入りますというトゥヴォック。2人はターボリフトへ入れられた。なら怪しまれない人物に化ければいいのよというジェインウェイ。 トゥヴォックはお茶を入れている。ランドが入って来て、ガンマシフトの諸君、ガス星雲の恐怖から我々を守ってちょうだいという。笑い、任務に出て行く士官たち。おはよう少尉とトゥヴォックに声をかけるランド。ジェインウェイを見て、この人はと尋ねる。トゥヴォックはその隙に、ランドの肩をつかんだ。倒れるランド。頼めばよかったのにというジェインウェイに、女性士官に脱いでと頼めば、誤解されますというトゥヴォック。ランドの服を脱がす 2人。 トロン※42放射を発するよう皮質刺激装置を改造した、これでテレパシー皮質※43を刺激すれば精神融合を中断できるはずだというドクター。トゥヴォックの額に装置が取り付けられる。合図したら、まず 20キロダインを 5秒間照射してくれとケスに言う。開始。よし、神経パターンが別れているというドクター。急にそんな馬鹿なといった。画面を指差し、上がトゥヴォックの記憶痕跡、下が艦長のだと説明する。だがトゥヴォックのものに重なって、赤い別のパターンがある。3人目ということはありえない、記憶痕跡であるはずがないというドクター。神経化学的に見れば、これは記憶痕跡のふりをしている。ウィルスが破壊されるのを防ぐために血液成分に化けるように。これもウィルス※44なのだ。トロン放射のせいで姿を現したんだろう、放射レベルを上げれば破壊できるはずだというドクター。40キロダインで 10秒間放射と命じた。 追っては来られません、クリンゴン艦は操縦不能ですというヴァルテイン。スールーは操舵士にクロノスへコースをセットし、発進するよう命じた。通信席に誰もいないことに気づき、担当はと尋ねる。ランド中佐のはずですがというヴァルテイン。手前の席には、ランドの服を着たジェインウェイがいる。彼女はどこにいるというスールー。その時、長距離センサーがインターセプトコースに 3隻のクリンゴン艦を捉えました、魚雷を準備してますとヴァルテインが報告する。スールーはコースを維持させる。光子魚雷がエクセルシオを襲った。撃ち返せというスールー、しかしターゲットスキャナーをやられた。手動に切り替える。ジェインウェイはトゥヴォックのもとへ向かう。攻撃は続いている。トゥヴォックはヴァルテインに、コンソールの裏にあるプラジマコンジットが危ない、すぐそこを離れろと言った。ちょっと待ってくれというヴァルテイン。ディミトリ、早くというトゥヴォック。コンジットが爆発、ヴァルテインは吹き飛んだ。駆け寄るトゥヴォック。集中して、これからの 2、3秒間に起こったことを思い出すのよ、細かくというジェインウェイ。ヴァルテインはトゥヴォックと言い残し、息を引き取った。「助けて! 離さないで、トゥヴォック!」 少女の姿。見えたわ、思い出してというジェインウェイ。やっているんですが、精神力が落ちててというトゥヴォック。これが最後のチャンスよ、あのがけへ連れていってちょうだいというジェインウェイ。神経を集中して、あの少女のもとへという。目をつぶり、集中するトゥヴォック。 もう少しだ、精神融合も解けるし、ウィルスもこれで死滅するというドクター。放射レベルを更に…といった時、ウィルスが移動してジェインウェイの脳に入ってしまったことを確認した。皮質刺激装置をというドクター。ケスが準備する。 ジェインウェイ。「キャスリン! お願い助けて!」 がけの上にいるのは幼い頃のジェインウェイだ。「離さないで。私落ちちゃう。」 落ちていく少女。 装置をジェインウェイに取り付け、合図したら 50キロダインを 5秒間放射しろというドクター。開始。 がけの上にいるのは、再びトゥヴォックに戻った。「助けて、トゥヴォック!」 ウィルスのプロテイン構造が崩れている、もう少しで死滅するというドクター。80キロダインを 15秒間放射開始。 「ディミトリ、手を離さないで! 私落ちちゃう。」 今度は幼いヴァルテインがいる。 もう一度トロン放射。 「助けて!」 野球帽を被った少年が、がけの上に。落ちていく少女。次々と古い人物に入れ替わる、がけの上の子供。奈落の底へ少女が落ちていく。精神融合が終わった。 医療室。モニターに映し出されるウィルス。明らかにウィルス性の寄生体ですが、その起源やゲノム分類は記録にありませんというドクター。トロン放射を使って殺したんですというケス。わかっていることは、脳で発生するペプチドを養分として成長し、記憶痕跡に化けて宿主の免疫システムをかわすことだ。多分がけから落ちる少女の記憶は、カモフラージュとして使ったんでしょうというケス。非常にトラウマ的な記憶を偽造し、人から人へと感染する。決して意識の届かない、抑圧された脳の一部に隠れて。宿主が死んだのを感じて、ほかを探したんだわというジェインウェイ。そしてヴァルテインからトゥヴォックに移った。でもあの少女は、実在したの、それともウィルスの創作と尋ねるケス。その判断は難しい、実際の出来事でも忘れたり思い出したりを繰り返すうち、記憶がぼやけていくと言うドクター。ご苦労様といい、医療室を出て行くジェインウェイ。トゥヴォックも後に続く。 結局エクセルシオはカークとマッコイを救出できたのと尋ねるジェインウェイ。あの後連邦領への撤退を余儀なくされ、カーク船長はいつものように自力で脱出しましたというトゥヴォック。しかしキトマーの戦いでは我々が中心となったという。ミスター・トゥヴォック、あなたエクセルシオにいた頃が懐かしいんじゃないのというジェインウェイ。私はノスタルジーなど感じませんというトゥヴォック。でもたまに思い出すことはあります、カークやスポックに会えたことは、貴重な経験だと思っていますと言った。私まで一緒に経験したような気分よというジェインウェイに、では私の分まで一緒に懐かしがってくださいというトゥヴォック。2人はターボリフトに乗り、顔を見合わせた。微笑むジェインウェイ。ヴォイジャーは星雲を離れた。 |
※42: thoron 前話 "Basics, Part II" 「ケイゾン総攻撃(後)」など ※43: telepathic cortex ※44: 記憶ウィルス memory virus |
感想
お待ちかねの作品でした。DS9の 30周年記念作品ほどのインパクトはありませんが、内容も期待通りで、スールー、いや加藤艦長の姿をまた観れるのは嬉しいですね。トゥヴォックの過去に関する言及も多く、彼のファンには見逃せない話でしょう。24世紀の人間が、23世紀の時代をどう思っているかという点が興味深いです。 |
第43話 "Basics, Part II" 「ケイゾン総攻撃(後)」 | 第45話 "The Chute" 「地獄星からの脱出」 |