カーンはウォーフの部屋で寝ている。いきなり目を覚まし、衛兵、水をくれと叫ぶカーン。牢屋じゃない、落ち着けというウォーフ。何と柔らかい寝床だ、この部屋の何から何まで、クリンゴン戦士には似つかわしくないというカーン。住むには十分だとウォーフが言うと、いつも連邦の肩を持つんだな、そんなに連邦がいいかと聞くカーン。なぜそんなに言いなりになっているんだ、部屋の趣味にしてもという。ウォーフはそれよりも、4ヶ月も音沙汰なしでどこにいたかと聞く。モーグという名の誇り高き一族の最期を見届けてきた、あんたも知っているだろうというカーン。言わずともわかっている、俺がガウロンに逆らったため家が取り潰しになったのは無念に思っているというウォーフ※5。カーンはだからどうなんだ、許しを請うか、同情でもするのかという。それでは何もしない地球人と同じだとののしる。自分のしたことは悪いとは思っていない、ガウロンは間違っているというウォーフ。カーデシアや連邦と戦争を始めるのは不名誉な行為だというが、カーンは自分の名誉さえ守れば一族はどうなってもいいのか、見上げた行いという。もう済んだことだとウォーフは言う。カーンはあんたは連邦で暮らしていけるからいいが、俺はどうなるという。モーグの一族は最高評議会に議席を持ち、友人たちからの信頼も厚く敵から恐れられていたという。ガウロンが死ねば次の総裁は一族から出るだろうとまでいわれていた。だがウォーフが祖国を敵に回したため、領地も所有する船も、評議会の議席も剥奪されてしまったのだ。ウォーフはおまえがどんなに苦しんでいるかはわかるという。カーンは何がわかるのか、ガウロンの部下が乗り込んできて領地を占領し、一族の名を剥奪するのをみたか、皇帝陛下※6が見ている前で追放される屈辱を味わったのかと尋ねる。俺が苦しんでいるとき、あんたはここでのうのうと暮らしていたというカーン。あんたには未来はあるが、俺には名誉すらない、ただ一つ取り戻す方法があるという。名誉の死かというウォーフ。どうせ死んだも同じだ、クリンゴンは誰も俺に見向きもしないというカーン。名誉を取り戻せるのは兄であるあんたしかいないといい、俺のモクトヴァの儀式を行ってくれという。名誉ある死を、その手で俺に与えてくれといった。
宇宙暦49556.2※7。オブライエンはカーデシアと国境を接するベイジョーコロニーの視察を終え、シャトルでDS9へ向かっている。こちら連邦小型艇ユーコン※8という呼びかけに対しベイジョー管制塔から応答があり、IDコードとフライトプランを送信するように言う。パネルを操作し、椅子の上で寝ているキラを起こすオブライエン。何回か呼びかけると、飛び上がって起きた。起こしてすみません、もう少しで着きますよというオブライエン。ありがとう、もう着くのというキラ。寝ていた時間を聞くと、7時間。普段でも7時間も寝ないのにと驚くキラ。俺が一緒だからというオブライエンに、キラは笑った。管制塔から進入許可が下りた。あくびをし、おなかが空いて死にそう、クワークの料理でも食べられそうというキラ。オブライエンはそいつは重傷だという。そのとき前方に強烈な光が走った。エネルギー放電現象だ。ほんの5000キロ先で、国境のすぐ外だ。タキオンが増加し、亜空間衝撃波も出ているというキラ。船が爆発したのかしらというが、船の残骸もワープフィールドもありませんというオブライエン。キラは調査することにし、爆発から500メートルの地点まで接近するように命じた。
近づき、停止するユーコン。爆発の痕跡はないが、またタキオンが上昇してきた。すると前方からクリンゴンのバードオブプレイが遮蔽を解き、姿を現した。クリンゴン帝国宇宙艦コリナー※9といい、当宇宙域で軍事演習を実行中だという。ただちにベイジョーの領域へ戻れといってきた。キラは爆発があったと認められるため、調査にというが、相手は恒星間条約に基づいて警告は発したという。敵はディスラプターをロックした。キラは引き返すことにするが、爆発の座標のスキャンは続けるようにいう。ただの軍事演習ではすまない、何かが必ず起こるはずよといった。
稽古着を着たダックスが、カウンターのクワークにウォーフは知らないか尋ねる。ホロスイートで待ち合わせたのに5分も遅刻しているという。たったの5分とクワークは言うが、ウォーフらしくない、私が2分遅れただけでもカンカンに怒るというダックス。今朝見たっきりだ、あんなに失礼な奴二度と来なくてもいいというクワーク。無愛想なのはいつものことじゃないとダックスは言うが、いつもに輪をかけて変だったというクワーク。クリンゴンのお香を注文したからレプリケーターで作ってやったら、ひったくって出ていったという。アダンジ※10という名前のお香だ。どうしてアダンジなんかというダックス。クワークが特別な物かと聞くが、答えないままダックスは歩いていった。客としゃべるのはもうやめたというクワーク。
そのお香が、ウォーフの部屋で炊かれている。お前はこの世で道を絶たれ、もはや何も残されていないというウォーフ。名誉も、未来もないと言いお香をカーンの前に近づける。この命を捨て、来世にて名誉を取り戻すというカーン。赤き血の川を越えストヴォコル※11へと渡る覚悟はできていると続ける。
ダックスはオドーとすれ違った。オドーを呼び止め、昨日来たクリンゴン人について尋ねる。名前はカーン、ウォーフの弟だそうですというオドー。ダックスは大変だわといい、ウォーフに連絡を取る。しかし反応はなく、コンピューターに位置を聞く。自室で、カーン船長と一緒にいるという答えを聞き、ダックスはオドーと共にすぐに向かった。
ウォーフはナイフを手に取った。この刃にて、死の旅へ誘うという。両手で持ち、頭の上で構えた。カーンは胸を開いた。さらば弟よ、さらば兄よと言い合う2人。そしてウォーフはナイフを振り下ろした。叫び声を上げるカーン。胸の中心に突き刺さっている。倒れるカーン。ダックスとオドーが入ってくる。オドーはすぐにウォーフを制し、ダックスがカーンに近づくと司令室に通信を入れ、医療室に2名の転送を命じた。転送されるダックスとカーン。これは俺達の問題だというウォーフに、シスコ大佐は許さないでしょうというオドー。助かるように祈るんですな、さもなくば殺人罪だといい、オドーは部屋を出ていった。
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※5: DS9第73・74話 "The Way of the Warrior, Part I and II" 「クリンゴンの暴挙(前)(後)」より
※6: カーレス (Kahless) のこと。TNG第149話 "Rightful Heir" 「クリンゴン神カーレスの復活」など
※7: オブライエンが記録する、「作戦日誌」 (Operation's Log)
※8: U.S.S. Yukon ダニューブ級、NCC-74602。例に漏れず川の名前にちなんで名づけられています。DS9第82話 "Our Man Bashir" 「ドクター・ノア」で破壊されたオリノコに代わり配置。runabout が珍しく小型艇と訳されています
※9: Imperial Klingon Ship (略して I.K.S.) Korinar
※10: adanji
※11: Sto-Vo-Kor クリンゴン人が死後行くといわれている場所。"Rightful Heir" より
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