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ディープスペースナイン エピソードガイド
第82話「ドクター・ノア」
Our Man Bashir

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・イントロダクション
ファルコン※1はガラスを突き破りながら倒れた。タキシードを着た男は、美しい女性、カプリース※2からシャンパンを受け取る。瓶を見ると、立ち上がるファルコンが写っているのが見えた。ナイフを構え近づいてくる。男はシャンパンをファルコンに向け、栓を開けた。コルクが頭に当たり、ファルコンは倒れた。さすが45年もののシャンパン※3だという。ありがとうございますと礼を言い、名前を尋ねるカプリース。男はベシア、ジュリアン・ベシアと答えながらカプリースを抱き寄せ、キスを交わした。ふいに拍手が聞こえてくた。あれは誰と聞くカプリース。ベシアは招かれざる客だ、ちょっと失礼といいその場を離れる。
拍手をしているのはガラック※4だった。いいスーツだ、出てけというベシア。来たばかりなのにというガラックにホロスイートのプログラムに入り込むのは無礼な上に違法だ、オドーに逮捕させるという。他人に見られたら恥ずかしいプログラムなんですねというガラック。プライバシーを侵害されたから不愉快だというベシア。そんなに狼狽しますか、このプログラムを受け取ってからというものホロスイートに入り浸りだとガラックは言う。興味があるのにどんなプログラムか教えてくれない、ドクターは口数の多い方で秘密なんか似合わないという。秘密は君の専売特許だものな、失礼するというベシア。深層心理を具体化したものなんですか、だから私を警戒しているのですかと聞くガラック。真の姿を見られるのがやましいんですかと聞くと、空想の世界であってやましいところはないと答えるベシア。ガラックはそれならご一緒させて下さいと頼んだ。いいだろうと答え、勤務まで2時間しかないんだから水を差すなという。物音一つ立てない、でも一つだけ申し上げたいことがあるといい、肝心のお相手がもうお帰りだと指差す。カプリースは奥の方にいってしまった。ついさっきまで好意があると思っていたのにというガラック。ベシアはガラックを見た。ガラックはすみませんといい、もしベシアの立場ならシャンパンのコルクの栓で撃ち殺すといった。たたき出さなかったのが馬鹿だったというベシア。2人で楽しくやりましょう、空想の世界にピンチはないしといってベシアの肩をたたくガラック。

※1: Falcon 眼帯に鷹の絵があります

※2: Caprice (Melissa Young) caprice = 気まぐれ

※3: champagne ドン・ペリと呼ばれる種類

※4: エリム・ガラック Elim Garak DS9第74話 "The Way of the Warrior, Part II" 「クリンゴンの暴挙(後)」以来の登場


・本編
ベシアは家にやってきた。1964年当時の内装だ。そこはクーロン、香港にある街だ。さっきまでパリのナイトクラブにいたのにというガラック。女性が入って来た。こんなに早くお戻りになるなんてとベシアに言う。彼女は個人秘書のモナ・ラヴジット※5。ガラックと握手をする。ベシアはモナにガラックの分も服を見繕ってもらうことにする。かばんを片づけに奥にはいるモナ。スイッチを押すと壁が回転し、たくさんの銃が取り揃えてある側が現れた。本当に秘書ですか、お抱えの殺し屋じゃないんですかと聞くガラック。優秀な秘書だ、7カ国語を話せ生理学に化学に物理学、飛行機も飛ばせるしというベシア。ほかにご用はときくモナに、ベシアはあったら呼ぶよという。あなたの役回りは、女好きで武器に詳しいダンディな金持ちってところかなというガラック。もっとすごい設定だ、スパイだというベシア。それなのにこんな家にというガラックに、ベシアは説明をはじめる。自分はイギリス情報部のスパイで、このころは世界は冷戦状態にあった。服も家も秘書もすべて国から支給されているというと、私も至れり尽くせりの情報部に仕えたかったというガラック。
オリノコ※6がDS9に帰って来た。シスコはエディングトン※7に連絡を取り、着艦許可を取る。会議はためになったがみんなぐったりだというシスコ。シャトルにはキラ、ダックス、ウォーフ、そしてオブライエンもいる。エディングトンが宇宙艦隊司令部からメッセージが届いているが、緊急なものはないと報告している時、オブライエンがワープコアに異常を発見した。プラズマコイルに変動が現れている。ワープコアを停止しようとするが出来ない。コマンドシステムが作動した。シスコはワープコアの切り離しを命じるが、切り離しシステムがなくなっていた。破壊工作だというオブライエン。後10秒でワープコアが破裂する。エディングトンは通常エンジンを止め、ディフレクターを解除するようにいう。DS9に転送収容するのだ。シスコは頼むといい、メインパワーを切らせた。停止するシャトル。捕捉が完了し、5人が転送され始める。それと同時にシャトルは爆発した。実体化する5人。しかし光と共に爆発したように、5人の姿は消えてしまった。後に残るのは煙だけだった。

※5: Mona Luvsitt (Marci Brickhouse)

※6 U.S.S. Orinoco ダニューブ級、NCC-72905。DS9第23話 "The Siege" 「帰って来た英雄 パート3」で初登場

※7: マイケル・エディングトン Michael Eddington DS9第78話 "Rejoined" 「禁じられた愛の絆」以来の登場


オドーが司令室に駆けつける。エディングトンはシャトルの爆発エネルギーが逆流し、エネルギーコイルをふっ飛ばしたらしいという。まだ転送パターンは残っている。一刻も早く保存しなければ消えてしまう。単なる物とは違う、5人分の膨大な神経構造を保存しないといけないというオドー。1人分でも大変なメモリーを使用するものだ。エディングトンはコンピューターに、転送バッファ内のパターンを保存するように命じるが、やはりメモリーが足りない。全システムのコンピューターのメモリーを消せば保存できるかと聞くが、試したことがないのでわからないというコンピューター。オドーはパターンが消えてしまうぞという。エディングトンは最優先指令として、バッファを保存するのに必要なコンピュータのメモリーを削除するように命じ、承認コードをいった。命令が実行される。すると司令室の照明が落ち、暗くなった。トリコーダーで調べるオドー。バッファ内の結合と、転送パターンは消えていた。保存は出来たが場所が分からないというエディングトン。
モナがガラックに服を着せている。趣味はなかなかだが、襟のところが今一つというガラック。ベシアは似合ってるぞという。スパイにしては派手すぎませんかというガラック。世間の目をくらませるためだ、僕はジェット族だからそれらしくしないと、というベシア。当時の金持ちはジェット機で世界を回っていた。ふと物音がした。ベシアは銃を構え、スイッチを押す。ワインの瓶が置いてある壁が回転し、ベッドが現れた。そこに寝ているのは、ドレスを着たキラだった。うたた寝しちゃったみたいという。冗談じゃないぞというベシア。一体何人連れて来たんだというと、ガラックは連れてきていないという。少佐と声をかけると、キラは違うわ大佐よといい、カーゲイベイのアナスタシア・コマナノフ大佐※8だという。ジュリアンと呼び、アイスランド上空で気球が爆発したと聞いたからてっきり死んでいたと思っていたという。パラシュートがあったんだ、それに潜水艦が待っていたしというベシア。どうして知っているんです、プログラムを読んだんですかと聞く。だが何をいってるのといい、横になってという。すっかりキラ少佐はなりきっているようですなというガラック。ネリス頼むよとベシアが言うと、誰なの、そのネリス・キラ少佐ってと聞く。キラ・ネリスだよというベシア。ガラックはこの方はキラだとは思えないという。ベシアはコマナノフ大佐のイメージをオリジナルのものに戻すように言う。だがコンピューターは、大佐のキャラクター媒介変数は正常で実行できないという。誰かがプログラムをいじったみたいだというガラック。遊んでいる暇はないわというコマナノフ。ベシアはちょっと待ってといい、プログラムを停止させる。だが実行できない。緊急事態のためコンピュータコントロールが混乱しているという。司令室に連絡を取るベシア。
今手が離せないというオドー。どこにいるんですと聞くエディングトンにベシアはホロスイートにいると答える。まだプログラムが動いていることを不思議に思うエディングトン。誰と話しているのと聞くコマナノフ。キラの声だというオドー。ベシアは本物じゃない、誰かが登場人物のイメージを変えたらしいという。エディングトンはトリコーダーで調べながら、しばらくプログラムを続けるように言う。
一体何があったのと聞くコマナノフ。エディングトンは絶対プログラムを止めないように言う。さっきの転送事故で、ホロスイートのメモリーコアに5人の転送パターンが記憶されているようだ。プログラムを停止させれば消えてしまう恐れがある。話せば長いが、5人の転送パターンはホロスイートのデータベース内にあるというエディングトン。オドーは今ホロスイートを出れば、ホロイメージアレイが混乱する恐れがあるといい、続行するようにいう。ああわかったというベシア。
ため息をつき、ベッドに座る。緊張した顔ねというコマナノフに、職業柄ねという答えるベシア。慰めてあげたいところだが今回はお仕事だといいファイルを渡すコマナノフ。24時間以内に、ウラジオストックからニューヨークの広い範囲に、一連の地震が観測されたという。分析したところ恐るべき結論が出た、人工的な地震だというコマナノフ。難しいことじゃないと話し始めるガラックを止めるベシア。何か知っているようねというコマナノフに対し、あいつは何も知らないんだというベシア。この大災害に両国の政府が協力して対処することになったという。私たち2人も仲良くしましょうねと顔を近づけるコマナノフ。今回の任務は、その地震を誰が何の目的で起こしたかを突き止めるものだ。あいまいな任務だというガラック。手がかりが一つあるとコマナノフは言い、世界的な地震学者のハニー・ベア教授※9が行方不明になっているという。誘拐されたと見ているという。渡された写真に見入るベシア。ベアはニューヨークを最初の地震が襲った数時間前に姿を消していたという。非常事態だ、スパイごっこで遊んでいる暇はないというガラック。ベシアは写真を見せた。面白いというガラック。それは眼鏡をかけているものの、紛れもなくダックスだった。ベアが殺されればキャラクターが消えてしまい、ダックスのパターンまで消去されてしまう。コマナノフにベアの情報を聞くベシア。コマナノフが話そうとしたとき、扉が開きモナが立っていた。少し待ってというベシア。だがモナは膝を突き、倒れた。背中にはナイフが刺さっている。銃を構えた男たちが入って来た。最後にやって来たのは、眼帯をしたオブライエンだった。チーフというガラック。違う、ファルコンだというベシア。会えて嬉しいぜ、一つ借りがあるんでねとファルコンはいう。そしてベシアにピストルを突き付けた。

※8: Anastasia Komananov KGBのスパイ。キラの姿を想像して読んで下さい

※9: Professor Honey Bare


さすがに驚いたみたいだな、シャンパンのコルクでなくまともな武器を使うんだったなというファルコン。例えば、といい喉に銃を突き付ける。コマナノフは待ってといい、最後にもう一度キスをと頼む。いいだろう、俺はこれでもロマンチストでねと一旦離れるファルコン。コマナノフはベッドから立ち上がり、イヤリングと囁いてベシアとキスをする。ファルコンは気付かない。キスをしながらコマナノフのイヤリングを手に取るベシア。長すぎるぞとピストルを構えるファルコン。ベシアがイヤリングを放り投げると、ファルコンの足元で爆発した。怯んだすきに部下とファルコンを倒す2人。ガラックも唇を切りながらも敵を倒した。面白い宝石だというガラックに、去年のクリスマスにプレゼントしたんだといいながら銃を取るベシア。血が出てるぞとガラックに言う。唇の血をぬぐいながら、ホロスイートの安全装置が効いていないというガラック。コマナノフはあの世へ送ってやると、ファルコンに銃を向けている。ベシアは慌ててそれを止める。どうして、こいつは9年間もあなたを付け狙っていたのよというコマナノフ。ガラックもとどめをさしておくという。チーフだぞというベシア。殺し屋だ、安全装置が効かないなら本当に殺されかねないというガラック。それならどうしろと言うんだというベシアに、ガラックはこれはホロスイートのゲームではく現実だ、本物のスパイは厳しい結論を下すという。誰も彼も助けるのは不可能だ、誰かを犠牲にしなくてはならないという。それはその時になって考えるというベシア。ダックスを見つけるのが先決だという。ダックスって誰と聞くコマナノフに後で教えるよというベシア。ハニー・ベアを誘拐した犯人はわかっているのか尋ねる。十中八九ドクター・ノア※10が黒幕だというコマナノフ。ノアはこの2年、世界中の優秀な科学者を60人も誘拐しているという。どこに連れて行かれたかはわからないが、誘拐された人は必ずパリにあるクラブに招待されているというコマナノフ。その名前はクラブ・アンジェンヌ。だと思ったといい歩き出すベシア。モナにかたきを取るといい、すぐにパリへ発つというベシア。コマナノフはダックスって誰と叫んだ。
ホロスイートのデータベースを見る。データベースには少々手を加えてあるというロム。複雑に絡み合っている回路を見て、これじゃごみためだというエディングトン。クワークが新しい部品を買ってくれないから、いろいろなもので代用しているというロム。収支はトントンで部品を買う余裕はないというクワーク。コアメモリーインターフェイスはと聞くエディングトン。ロムはへらの後ろにあるという。へらがプラズマコンダクターの代用にぴったりだというロム。エディングトンがトリコーダーで調べると、確かに5人分のボディパターンが見つかった。ホロスイートは高度で複雑なパターンを処理するように出来ており、ボディパターンがキャラクターに課されたのだろうという。だが神経エネルギーは見つからない。量子レベルだからホロスイートでは扱えないというロム。ボディパターンはこことして、ブレインパターンはどこなんだというオドー。クワークはそこかしこだろう、人間の脳の構造を記憶するにはステーション中のコンピュータのメモリが必要だという。レプリケーターや武器システム、生命維持装置などだ。そうかも知れない、それなら元に戻すにはどうすればいいんだというオドー。
音楽が流れるクラブ・アンジェンヌ。正装したベシア、ガラック、コマナノフが入って来た。ウェイターにドクター・ノアに招待されてやって来たというベシア。ウェイターは奥にいき確認を取ると、ベシアたちを呼ぶ。奥にあるカジノテーブルに座っているのは、白いスーツを着たウォーフだった。招待状はどちらにと聞く。彼はノアではなく、ノアの仕事仲間のデュシャン※11。ベシアはパトリック・メリーウェザーと名乗り、妻としてコマナノフと友人のガラックを紹介した。お美しいだとコマナノフの手にキスをするデュシャン。招待状をお見せいただこうという。実は招待状はないというベシア。デュシャンは葉巻を吸いながら、ノアは招かれざる客はお嫌いだという。ノアはお喜びになると思う、主人は世界でも五指に入る地質学者だというコマナノフ。なぜ地質学者をドクター・ノアがと聞くデュシャンに、ガラックがノアは科学に非常に興味をお持ちのようで、有名な科学者を何人も招待しているんでしょうという。招いていただけないのは、学者としてのプライドが傷ついたわけでというベシア。同情します、もちろん会わせて差し上げたいが、500万フランというデュシャン。ベシアは財布を取り出し、ではこれでというと1枚だけ紙幣を取り出した。残りはどこにと聞くデュシャンに、ベシアはあなたの目の前にという。デュシャンの札束だ。はじめましょうかというベシア。
オドーは先ほど、カーデシアの分離主義者グループ「真実の道」※12がシャトルを爆破したと犯行声明を出したという。和平協定に反対し、カーデシアの政治や経済の混乱は連邦の責任だと主張しているグループだ。今までテロ行為に訴えたことはなかったというオドー。見つかりましたとエディングトンに聞く。今のところクワークが正解だ、5人分の神経パターンはステーション中に分散されているというエディングトン。誉められると照れるねというクワーク。要はホロスイートのボディパターンと統合して、物質化すればいいというロム。ディファイアントを使うことを提案するエディングトン。パワーシステムも独立しており、転送機もあるからだ。ただし、ホロスイートはそのままでは連邦のシステムにはつなげないというロム。
バカラ※13の勝負を続ける、ベシアとデュシャン。また勝ったベシアは、500万フランを手に入れた。なかなかやりますなというデュシャンに、賭け事と地質学は生き甲斐でねというベシア。デュシャンは赤い印の付いた葉巻を取り出した。これで条件は満たした、出かけますかというベシア。デュシャンはええすぐにというと、立ち上がり葉巻をくわえ煙を吹きかけた。その煙を吸い込み、倒れるベシアたち。
3人が目を覚ますと、別の部屋にいた。内装の趣味が悪いというガラック。ベシアに我が楽園へようこそと声をかける男がいる。シスコの顔をしたその男は、ヒポクラテス・ノアだと名乗った。

※10: Dr. Hippocrates Noah 007に出てくるドクター・ノオ (Dr. No) のパロディ名(?)

※11: Duchamps

※12: The True Way

※13: baccarat トランプを使ったゲーム


確か君の専門は地質学だったなといい、最近手に入れた石をみてみるがいいというノア。金でできた置物は、数々の高価な宝石で飾りたてられていた。ルビーのクロム含有量を見て、チベット高原のものだというベシア。当然でしょう、我々がいるのはエベレストの南東斜面、高さは6,600メートルですかという。7,500だというノア。それじゃ観光客もきませんねというベシア。お客も私もプライバシーを覗かれたくないというノア。特に私の政治信条を理解しない国から送り込まれる、招かれざる客は嫌だという。無政府主義者なのと聞くコマナノフ。とんでもない、秩序ある社会が好きだというノア。ここから新たな未来、新たな歴史が開かれようとしていると話すノア。私の島だという。島だとと聞くベシア。先を急ぎ過ぎた、ご説明しようというノア。
奥の壁が開き、世界地図のパネルが現れた。スイッチの並んだ操作盤も見える。そこにはハニー・ベアがいて、準備が出来たという。全幅の信頼を置いているぞというノア。ベアはノアに協力していたのだった。ベシアに、新しい未来だけではなく、新しい世界を作り出そうとしているというノア。各都市の地下には、新型のレーザー装置が隠してあり、地殻を突き破りマントルまで到達する威力があるという。それで地震が頻発していたのだ。このレーザー装置を起動させれば、全世界に今まで経験したことのないような巨大地震が起こるというノア。人類を滅亡させるつもりかと聞くガラック。ノアは例えて言うならば、シロアリでぼろぼろになった家は、一旦家を壊して建て替えなければならないという。地震は壮大なプロジェクトの副産物に過ぎないというノア。真の目的はレーザーで地殻をぶち抜き、何百万トンもの溶岩を噴出させることだ。そうすれば地殻構造プレートが沈み始めるというベシア。そうすれば地球の表面が縮む、針でつついた風船のようにしぼんでいくというノア。そして縮んだ地表を、海が覆い尽くす。この悪魔めというベシアに予言者と呼べといい、人類は再出発するのだ、この楽園でというノア。全世界で陸地が残るのは、このエベレストの上部だけだという。ノアは選りすぐりのエリートを集め、我々は交配し新たな人類を生み出していくという。加えることが出来なくて悪いなというノアに、招待は取り消すんですかと聞くベシア。それだけではすまない、ミスター・ベシアというノア。この山には世界の頭脳だけではなく、最高の警備システムも用意してあるという。ガードマンも厳選してあるといい、テーブルの裏のスイッチを押すノア。入ってきたファルコンと肩を組み、君とは知りあいだろう、今回雇ったファルコンだといった。
ディファイアントの通路はむき出しになった回路だらけだ。こんなことまでやるのかと聞くエディングトンに、ベストを尽くさないとというロム。パターンを統合できるまで1時間かかる。オブライエンが戻ったら殺されるなとつぶやくエディングトン。
ベシアとガラックは、洞窟の中にある巨大な装置に縛り付けられてしまった。ノアは世界に74あるレーザー発射装置の一つで、スイッチを入れれば解除できない5分間のカウントダウンが始まるという。そして洞窟は溶岩で満たされる。アナスタシアはどこだと聞くベシアに、彼女は美しい女性だ、第2の人類を生み出すのに必要だというノア。そして装置のスイッチを入れ、同時にカウントダウンが始まる。潔く死にたまえといい、ファルコンと共に出て行くノア。ベシアとガラックはどうすることも出来ない。


残り時間は3分40秒。これからどうする気ですかと聞くガラックに今考えていると答えるベシア。絶対に20世紀のレーザーに縛り付けられて死ぬのは願い下げだというガラック。プログラムを終わらせてしまおうというが、ベシアはパターンが消えてしまうからできないという。エディングトンに部下を呼んでもらい、手錠を外させたらどうかというが、オドーが言っていたように、出入りを繰り返すとホロイメージアレイの混乱により全員死んでしまうかもしれない。レーザーが発射されて溶岩が流れ込んでくれば、確実に死ぬというガラック。そこへハニー・ベアがやってきた。救いの女神が来たというベシア。機械の調整をしているベアに、もったいないなあ、そんな美人なのに誰も気付かないなんてと声をかけるベシア。くさすぎますというガラックにうるさいなというベシア。ベシアは、ノアはベアの頭脳が欲しいだけで、女らしさには目もくれないという。最期のお願いだ、眼鏡を取ってみせてくれないかと頼む。あきれるガラック。ベアは眼鏡を外し、これでいいと聞く。きれいだというベシア。さらに、髪を肩に下ろした方が可愛いという。空想に突き合わされるこっちの身にもなって下さいというガラック。ベアは髪を下ろし、肩にかけた。君の微笑みを胸に抱いて、旅立つというベシア。ベアはありがとうといった。そしてベアは立ち去ろうとしたが再び戻り、ベシアとキスをする。お邪魔してすみませんがというガラック。ベアは去っていった。万事休すだ、エディングトンを呼ぼうというガラック。だがベシアは手錠を外した。ベアが鍵を渡してくれていたのだ。キスのときにすりとるなんて、オブシディアンオーダーじゃ教えてくれないというガラック。ベシアはガラックの手錠も外した。残り時間は8秒。2人は急いで逃げ出した。レーザーが発射された。
揺れる洞窟の中を引き返す2人。コントロールルームに戻らなくてはならないというベシア。靴裏から取り出した部品とペンを使って、小さなピストルを作る。この結末はコマナノフかベアがノアに殺され、残った方がベシアとくっつくことになっているという。今回は両方助けなければならない。そんな武器でノアに立ち向かうつもりですかと聞くガラック。だめですよというが、ベシアは進みつづける。
キラかダックスが殺されたら、というベシア。殺されたら気の毒だが、つきがなくなるときはあるというガラック。身を引くのが一番いいという。オブシディアンオーダーではそう教えているのかいと聞くベシア。その通り、生き延びてこられたのは潮時をわきまえていたからだというガラック。諜報活動に関わるプロのスパイなら誰でもわかることだという。それが本音じゃないのか、僕が君の領域に踏み込むのが嫌かと聞くベシア。スパイを遊びでするのがプライドが許さないのかというと、ガラックはスパイを何もわかっていないという。プライドも良心もない、あるのはプロとしての意識だけで、いまが潮時だというガラック。コンピューターを呼ぶガラック。ベシアはよせといい、銃をガラックに向けた。私を殺しますかと聞くガラック。プログラムを止めるわけにはいかないというベシア。私を撃てるとは思えないというガラックに対し、うぬぼれない方がいいとベシアは言う。現実を見ましょう、あなたがヒーローになりたがるのは、本質がヒーローでないからだというガラック。私もヒーローではないが、選択するときは選択する、自分を助けることだという。そしてコンピューターにプログラムを停止するといいかけたその時、ベシアは発砲した。よろめくガラック。首の辺りからは血が出ている。かすっただけだから大丈夫だというベシア。命中していたらどうしたんですか、殺す気だったんですかというガラック。どうして撃たないと思ったんだというベシアに、見直しましたというガラック。お褒めの言葉をありがとうといい、コントロールルームに向かうベシア。くるのかこないのかと聞かれ、正義のスパイ、ジュリアン・ベシアの立てた作戦ならうたがいはしませんといいついていくガラック。
コントロールルームに入る2人。全員動くなというベシア。ガラックはすぐにファルコンの武器を取り上げる。武器をよこせ、ドクター・ノアというベシア。ベアにお前の責任だというノア。申し訳ありませんというベア。ベシアはコマナノフの手錠を外す。何とか間に合った、ノアはレーザーの最終シークエンスを作動させるところだという。殺してというコマナノフだが、今回は殺せないんだというベシア。なら私が殺すと、ベシアから銃を取ろうとするコマナノフ。よせとベシアはいう。
デュシャンが入ってきて、大甘な男だといいガラックに銃を突き付ける。よくやったといって、ベシアのピストルを取り上げるノア。エディングトンから通信が入り、2分後に5人を物質化できる見込みだという。わかったと答えるベシア。何がわかったのかな、さっき殺しておくべきだったことかなというノア。同感だな、ヒーローになることばかりを考え過ぎだという。私はヒーローになろうとはこれっぽっちも思っていないというノア。そしてベシアに銃を向ける。待てといい、僕もヒーローを気取るのは疲れたというベシア。よく考えてみると、ノアの言うことは正しいという。社会は退廃し無秩序だ、君の計画は素晴らしく思えてくるというベシア。コントロール装置に近づき、スイッチに手を近づけるノア。そんな言葉を信じると思うのかという。お前はあのジュリアン・ベシアだ、祖国に敵対する勢力を相手に、人生を戦い一筋に費やして来た男だという。確かに、しかし戦う意味がないだろうというベシア。この世界はじき破壊される、世界を守って戦って何の意味があるのかという。いいやと答えるノア。僕はプロのスパイだ、スパイとして学んだことは、状況が苦しくなりつきがなくなり始めたら、黙って身を引くことだったというベシア。自分が生き残ることができたのは、潮時をわきまえていたからだという。
ロムは司令室に連絡を取り、準備完了したという。神経エネルギーのディファイアントへの移送を始めるようにいうロム。司令室のオドーが操作を始める。
君の言うことは正しく思えるが、私は君を殺すのを楽しみにしていてねというノア。昔のことは水に流そう、今は新しい世界の秩序を考えるときだ、役に立つといいパネルに近づくベシア。コントロールを壊そうとしているなら時間の無駄だというノア。まさか破壊しようなんて考えていない、使わせてもらうぞといいベシアはスイッチを押した。最終シークエンスが作動したというベア。これでこの世界はおしまいよというコマナノフ。
データ移送完了、次にステーションのコンピューターコントロールを復活させるオドー。司令室の照明も元に戻った。
地図上の陸地はみるみる小さくなっていく。計画通りだ、成功ですねというファルコン。だがなぜか勝った気がしないというノア。それはやはり、お前が生きているからだという。お前を殺すといいベシアに向けて銃を構えるノア。その瞬間、ノアとファルコンが転送され始めた。コマナノフ、デュシャンそしてベアもだ。
ディファイアントの転送機の上に転送される5人。一体どうしたんだと聞くシスコ。オブライエンも回線を見てなんだこれはと驚く。今説明しますといい、ベシアにもうホロスイートを終わらせてもいいと連絡を取るエディングトン。
ありがとうというベシア。おもしろい、世界を壊すことでピンチをしのぐとはねというガラック。それもオブシディアンオーダーでは教えていないかというベシア。今日は勉強になりました、少しでもチャンスがあれば賭けてみるとか、空想の世界に入り浸ることも柔軟な精神を養うとかという。明日の昼はと聞くベシア。ごいっしょに、でも香港のお部屋で食べませんかというガラック。もしスパイを続けるならですがというガラックに、ベシアは心配いらないよ、正義のスパイ、ジュリアン・ベシアは不死身なんだといった。※14


※14: Star Trek Chronology によると、このエピソードの直前にエンタープライズEが就航したことになっています

・感想
題名でわかる通り、この話は主に007といったスパイを元にした話になっています。TNGに比べてDS9では、あまりホロスイート(ホロデッキ)を中心とした話はなかったのですが、今回も例にもれずおもしろい内容でした。使われている音楽も007っぽいもので、「ドクター・ノオ」を知っていればもっと楽しめるのかもしれません。本物のスパイである(事をおおっぴらに言うのもすごいですが)ガラックとの考え方の違い、そしてガラックの話を引用してノアに言うベシアが見所です。


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