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ディープスペースナイン エピソードガイド
第93話「二人の女神」
The Muse

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・イントロダクション
プロムナードのテラスにいるジェイクがパッドを持って、小説のための人物スケッチといって録音開始させる。エアロックから降りてくる人々を説明していく。ダボガールの気を引こうとしている、かつらをかぶったボリアン※1。ベイジョー人の修道士をみて、泥棒が化けてフェレンギ人をペテンにかける気だという。次に降りてきた異星人の女性※2。こんな遠くまで一人旅のようだ。ふとその女性と目があった。ジェイクが目をそらすと歩いて行った。
オドーが保安室に戻ると、椅子に座って泣いている女性がいる。ラクサナさん、と声をかけるオドー。こんにちはといってラクサナ※3が振り返った。泣いているんですかと聞くと、どうしても我慢できなくってというラクサナ。立ち上がったラクサナのお腹は膨らんでいる。妊娠しちゃったのというラクサナに驚くオドー。

※1: Bolians 時々見かける青い顔をした種族。ボリアス人と訳されていますが、間違いとも言い切れないようです

※2: (メグ・フォスター Meg Foster)

※3: ラクサナ・トロイ (メイジェル・バレット Majel Barrett TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」のナンバー・ワン (Number One)、TOS クリスティン・チャペル (Christine Chapel)、TNG以降の連邦コンピューター音声役など多数。ジーン・ロッデンベリーの妻) TNG ディアナ・トロイの母親でベタゾイド大使。DS9には第17話 "The Forsaken" 「機械じかけの命」、第56話 "Fascination" 「恋の感謝祭」に続き3度目の登場


・本編
まさかまだ妊娠できるなんで奇跡だというラクサナ。ではさっきのは嬉し涙なんですねというオドーに、彼を止めなきゃというラクサナ。誰と聞くと、夫のジェヤール※4だという。赤ちゃんを奪いに来る、だから逃げてきたというのだ。落ち着いて訳を話すように言うオドー。タヴニア人※5だからよ、あの星では男の子は父親が、女の子が母親が育て、異性とは隔離されて暮らすという。16歳になるまで異性の存在は知らないという。今度生まれる赤ちゃんが男だと知った途端、ジェヤールはラクサナから引き離して育てるといっているのだ。タヴニア人じゃないからタヴニアの慣習にしたがって子供を手放す義務はないといったのだが、許さなかった。結婚式の時にそれは感動的な言葉で愛を誓ってくれた、でも自分を持ち物の一部としか見なくなったと怒るラクサナ。それで必死に逃げてきたという。自分の家なのにまるで囚人のような生活をさせられているというラクサナ。オドーはこれで子供とは離れないという意志を命がけで示したわけだ、ご主人も考え直してくれますよという。とんでもない、あんな頑固者見たことないというラクサナ。今ほど誰かの助けが必要だと思ったことはないという。あなたの辛い立場はわかりました、ぜひ力にならせて下さいとオドーは言う。そう言ってくれると思った、本当に優しいのねというラクサナ。しかしあいにく非常に忙しい身でというオドーに、もちろん迷惑にならない程度に力になって欲しいだけという。プライバシーも尊重する、私はただ静かに赤ちゃんを産める場所が欲しいだけという。すぐにベタゾイドへの船の出航時間を調べましょうといいコンピューターを操作しようとするオドー。だがラクサナはベタゾイドへは戻れない、ジェヤールが最初に考え付きそうなところだという。だからここへ来た、あなたなら守ってくれるはず、そうでしょオドーというラクサナ。
先ほどの異星人の女性が、プロムナードのテーブルでパッドとにらめっこをしているジェイクの後ろに座った。作家だったのね、さっき見かけた時から何かを創作する人だと思ったという。小説を書いているんですというジェイクに、想像する魂を感じることができるという。オナヤ※6と名乗る女性にジェイク・シスコですといって握手する。ここに住んでるのと聞き、カーデシアの建築様式は全てが調和していていいというオナヤ。全ての要素は調和し、なおかつ独自の美しさをもたなければならない、よくケルがいっていたという。ジェイクも知っている、建築家のタヴォール・ケル※7のことだ。亡命中に知り合ったというオナヤ。ジェイクはどんな人だったと聞く。シャイで自分に自信がない、でも才能はあったというオナヤ。誰にも気に留められないけど、私は芸術家に弱いという。彼のデザインからはとてもシャイだとは思えないというジェイク。私が会った頃はデザインも臆病だった、だから自分を検閲するのはやめるようにいったというオナヤ。言うことを聞いたんだねというジェイクに、芸術家の方が私に弱いと気づいた、私の願望でもあるという。ケルが生きていたらどんなデザインを考えていただろうというジェイクに、彼は人の何倍も充実した人生を送ったはずとオナヤは言う。名前は全宇宙に知れ渡って、彼の建物は何世紀も建ちつづけるでしょうという。芸術家にとって人の記憶に残るほど嬉しいことはない、だからあなたも書いているんじゃないというオナヤ。ジェイクはわからない、でも一番の理由は書くのが好きだからという。オナヤは何も隠すことはない、野心を持つことで創作意欲が湧くという。ジェイクは僕も人に覚えててもらいたいという。希望をかなえるために何をしようとしてるのと聞かれ、地球のペニントンスクール※8へ行こうと思っていると答えるジェイク。もう十分な才能がある、ただその採用を目覚めさせてくれる誰かが必要だとオナヤはいった。方法はたくさんあるというオナヤに、ジェイクは教えてくれるように頼んだ。今夜部屋に来るように言うオナヤ。ジェイクは必ずいくよと言った。

※4: ジュヤル Jeyal

※5: Tavnians

※6: Onaya

※7: Tavor Kell

※8: Pennington School ニュージーランドにあります DS9第68話 "Explorers" 「夢の古代船」より


部屋で小説の続きを考えているジェイク。シスコが私服で現われ、支度できたか、もうすぐキャシディの船が出るという。やっぱり留守番するよというジェイクに、お前が言い出した旅行じゃないかというシスコ。3日もかけてベイジョーの奥地を見て回るなんて、めったにできないという。僕がいない方が2人で楽しめるんじゃないというジェイク。シスコは気を使うのは止めろ、お前がいた方がいいに決まっているという。それだけじゃない、今小説を書いている途中で集中していたいというジェイク。旅行中だって書けるだろ、無理に来いとはいわないがやっとで取れた休暇だ、3人で行くのを楽しみにしていたのにというシスコ。僕もそうだけど今は書くのに没頭していたいんだというジェイク。シスコはわかったといい、ジェイクと抱き合った。3日後に会おうといい部屋を出て行くシスコ。
結婚は失敗だったと話しているラクサナ。周りの席には稽古着を着たウォーフ、衣装をまとったダックスやキラがいて話を聞いている。愛だと思っていたのは監獄以外のなにものでもなかったというラクサナ。悲しい顔をして聞いているキラとダックス。それでどこへ行くつもりだったのと聞くラクサナ。ホロスイートのアーサー王の謁見式だ※9。キャメロットね、愛は裏切られ、夢は閉ざされたというラクサナ。
その様子を離れてみているクワークとオドー。まるで通夜だ、ベタゾイド人だからか知らないがラクサナのペースだというクワーク。あいつがここへ来た途端静まり返ってしまったという。私にどうしろというんだというオドー。あの女を元気づけるか、連れ出すかしてくれというクワーク。そうでなきゃ俺が放り出すという。ため息をつき、ラクサナに近づくオドー。
オドー、仲間に入らないというラクサナ。オドーは時間が空いたので散歩にでもという。そうだなあというウォーフに、ラクサナさんを誘っているんですというオドー。ラクサナは喜んでといい、席を離れた。何だかすごく憂鬱、とつぶやくダックス。
ケストラは6歳の時に死んだ、可愛い娘だったというラクサナ※10。私は両親も姉も夫も亡くしている、だけどあの子の死が一番辛かったと話す。一人でしゃべっちゃってごめんなさいとオドーに謝る。気にしないで下さい、あなたがなぜそこまでお腹の子を手元に置きたがるのかがわかりましたというオドー。オドーの部屋の前まで来た。ラクサナの部屋の向かいだ。ラクサナは部屋のレプリケーターが壊れたから貸してもらえない、ガヴィランティー※11が飲みたいと頼む。いいですともといい、オドーは部屋に招きいれた。
レプリケーターならあちらにありますというオドー。オブライエンに修理させましょうというと、連絡ならもうしてある、手が空き次第修理してくれるというラクサナ。オドーの部屋を歩き回っている。オドーはガヴィランティーを注文した。ラクサナは家具を見て、姿を変えるのに使うのと聞く。そうです、ほとんどの人はただの彫刻だと思っていますがというオドーに、みんな何もわかっちゃいないのよといいお茶を受け取るラクサナ。一つ聞いていいかしら、彼女のこととというラクサナ。うまくいったと聞いても取り乱したりしないから大丈夫という。オドーは少し考えた後、キラ少佐はシャカール首相と愛し合ってらっしゃいますと言った。辛いわねというラクサナに、とんでもない、良かったと思ってますというオドー。ラクサナは私の二の舞は踏まないでね、ただ寂しいからと結婚した挙げ句妊娠して逃亡生活なんてという。そんな事態を起こさせるような相手もいませんしというオドー。急にラクサナがお腹を抑えて痛み始めた。赤ちゃんが蹴っているという。どこかに座ってもいいかしらというラクサナに、あいにくここには椅子というものがないというオドー。床で結構よといって壁にもたれかかって座るラクサナ。オドーはどんな気分なんですかと聞く。丁度可変種が同じ形を保ちすぎた感じと答えるラクサナ。なるほど、それならよくわかりますといって隣に座るオドー。ラクサナは動いているわといってお腹をオドーに触らせる。その動きを感じ、ほんとだというオドー。何だか疲れたわ、ここ何週間夜もろくに寝られなかったからといってラクサナはオドーにもたれかかった。この子はベタゾイドの子だからどんなことを考えているのか伝わってくるという。今はすごく安心してるみたいというラクサナ。オドーはほんとだ、私にも感じられるといって目を閉じた。誰かがいってた、人生とは母の体内で感じた安らぎを探しつづける旅だというラクサナ。オドーは私に母はいないと言った。ラクサナはうとうとしながら、それでもきっと同じ安らぎを見つけられるという。オドーはレプリケーターが壊れたなんて嘘ですねという。そうよと答えるラクサナ。私の態度が冷たすぎたからだ、それしか接し方を知らないんですというオドー。ラクサナの名を呼ぶが、既に眠りについていた。オドーは手の形を変化させ、毛布にしてラクサナを包むのだった。
ジェイクはパッドを持ち、オナヤの部屋にやってきた。扉が開くとオナヤがいて、入ってという。部屋の中はカーテンがかけられ、幻想的な雰囲気だ。いくつか書いた作品を持ってきましたというジェイク。オナヤは読む気はない、興味があるのは次の作品だという。緊張しているようねというオナヤに、少しというジェイク。それは無理もない、新しいことをする時は緊張するものよというオナヤ。でもちょっと違う緊張のようねといい、女の部屋に一人で入るのは初めてと聞く。頭を切り替えて、本を書きに来たのよというオナヤ。今までで一番書きたいと思ったストーリーを尋ねる。暖めてるのは、伝記のようなものなんだというジェイク。母親を亡くした男の話で、でもそれに固執しないでいろんなエピソードを入れたいという。オナヤは書きたいエピソードがありすぎて、うまく盛り込めないんじゃないと聞く。そうなんだというジェイク。オナヤはでも最初の書き出しはもう決まっているという。何でわかったのというジェイク。オナヤは見せたいものがあるといい、箱を手渡した。レヴァラス※12が待ち伏せ※13を書いたときのものだという。そこには万年筆が入っていた。知り合いなのというジェイクに、芸術家には弱いっていったでしょう、あなたに持っていて欲しいという。すごく嬉しいと喜ぶジェイク。オナヤはまだ見せたいものがあるといって、何枚もの白い紙を見せた。紙になんか書いたことがないというジェイク。レヴァラスの口癖は、作家というものは画家がカンバスに筆を走らせるがごとく、紙にペンを走らせるものだというものだったというオナヤ。それが本能に従う手法※14だという。何それと聞くジェイクに、私がいっていた書く手法の一つという。僕にも教えてくれないというジェイクに、そのためにここに呼んだのよといいジェイクの後ろに座るオナヤ。最初の一行を書いてみてという。ペンで紙に書き始めるジェイク。先を続けて、頭の中で浮かんだものを書けば、その流れが意識の流れを生み出していくというオナヤ。後で見直せばいい、とにかく書いてみてという。どんなことでもいい、みやしないから、心に浮かぶものを吐き出すのと次々に言うオナヤ。選んでちゃだめ、手の中で紙やペンの感触を感じるのという。体のリズムに従えばいい、私の親指を感じるかと聞き、ジェイクの頭の後ろに触れるオナヤ。生体エネルギーの活動の中心点で、もう一つあるといってこめかみに触れる。ヴァルカン人はキラリ※15と呼び、古代地球のインド人はチャクラ※16と呼んでいたところだ。オナヤは私はここを刺激する方法を知ってる、リラックスして、力がみなぎり創作意欲が湧いてくるはずという。ジェイクの筆はどんどん進む。すごいというジェイク。だから力になるって言ったでしょう、言葉を解き放ってというオナヤ。ジェイクは次の紙に書き始める。あふれるままにといいながら、オナヤはジェイクの頭に手を置く。するとエネルギー状のものが取り出された。手の上のエネルギーを見つめながら、そのまま続けるのよというオナヤ。

※9: King Arthur's court DS9第73話 "The Way of the Warrior, Part I" 「クリンゴンの暴挙(前)」でも同じ格好をしていました

※10: TNG第159話 "Dark Page" 「心のダーク・サイド」で明らかになった、ケストラ・トロイ (Kestra Troi) のこと

※11: Gavaline tea

※12: Revalus

※13: The Wait

※14: visceral writing

※15: qui'lari

※16: shakras これらは英語では foramen magnum、日本語で大孔と呼ばれる個所です


ラクサナはオドーの部屋で何かを探している。岩を手に取るラクサナ。だが違うらしく、次に金網に向かってみつけたと言った。するとラクサナの後ろにある家具が姿を変え、その上にオドーが姿を現した。笑い、私の勝ちだというオドー。ラクサナも笑い、オドーったらずるい、そんなものにまで変われたのと聞く。もう1回やらないというラクサナに、疲れてませんかと聞くオドー。ラクサナはこんなに楽しいことなんて久しぶりだという。オドーは家具の上から飛び降り、私もですという。すると保安部から通信が入った。ユマニ星域※17からお探しの男が乗った輸送船が到着したという。指示どおり動くように命じるオドー。夫が来たのねというラクサナに、私に任せて下さいといってオドーは部屋を出ていった。
ジェヤール※18が保安室にやってきた。こんなところまで呼び付けて何のようだという。保安部のチーフです、それでおわかり頂けるのではというオドー。これはこれは、確か可変種のオドー君といったかなというジェヤール。それがなにかというオドーに、ラクサナから聞いている、彼女をふったらしいなという。なのにわざわざ逃げ込むとは、突然の妊娠で気が動転してたんだというジェヤール。ラクサナは極めて冷静で、あなたには会いたくないといっているというオドー。わざわざ来たんだ、手ぶらでは帰れないというジェヤール。彼女はあなたとは帰る気はないというと、妻ではなく私の息子は私の手で育てる、女の手に渡すわけにはいかないとジェヤールは言う。ラクサナには子供を渡す気はないようですというオドーに、彼女の意向はどうでもいい、夫として息子を引き取る権利があるという。オドーはタヴニアの法律には明るい方ですがといい、それによると男の赤ん坊は、その母親の夫のものだとあるという。その通りというジェヤールに、子供の父親ではなく母親の夫のものというオドー。ラクサナが出産する頃には、あなたは夫ではなくなっていると言った。
オドーはラクサナと結婚することを提案している。タヴニアの正式な結婚を行えば、ジェヤールとの婚姻は自動的に無効になるからだ。急に言われても何ていっていいか、ありがとう、そこまでしてくれてというラクサナ。オドーはたいしたことじゃない、ほんの数ヶ月タヴニアの法律に触れない程度夫婦のふりをしておき、その後離婚すればいいんですという。別に私に結婚のあてがあるわけでもありませんしという。それでも、ありがとうというラクサナ。オドーは一つ理解しかねることがあるといって、ジェヤールが結婚式に出席したいといって聞かないという。ほんとにと驚くラクサナ。不都合でもとオドーが聞くと、タヴニアの結婚式※19の習慣では、花婿は花嫁の前でなぜ結婚したいのかを述べなくてはならないという。それから家族や友人の前で愛を宣言し、プロポーズするのだ。たとえ先週の犯罪報告を読み上げても、あなたは結婚を承諾するんじゃないですかというオドー。そういう問題じゃない、もし列席者の誰かが花婿の誠意を疑えば、結婚に異議を申し立てることができるというラクサナ。つまりあなたと結婚するには、ジェヤールを説得しなければならないというオドー。ラクサナはうなずき、苦い顔をするオドー。
ジェイクは書き続けていた。こんなこと初めてだ、どんどん文章が浮かぶという。オナヤはジェイクからエネルギーを奪うのを止めない。その通りよ、すごいでしょうというオナヤ。突然紙の上に血がたれた。ジェイクが鼻血を出したのだ。ジェイクと声をかけるオナヤ。平気だよ、ただの鼻血だというジェイク。オナヤは少し休んだらというが、大丈夫だといって続きを書き始めるジェイク。オナヤは怪しくジェイクを見つめていた。

※17: Umani sector

※18: (マイケル・エンサラ Michael Ansara TOS第66話 "Day of the Dove" 「宇宙の怪! 怒りを喰う!?」、DS9第39話 "Blood Oath" 「血の誓い」、VOY第44話 "Flashback" 「伝説のミスター・カトー」のカング (カーン、Kang) 役)

※19: wedding これまでアンドリア人、地球人、クリンゴン人、ヴァルカン人について触れられました


オドーが結婚するなんて知らなかったというベシア。本人も知らなかったんじゃないというキラ。オブライエンはジェヤールを見て、あれはと聞く。多分元夫よというキラに、よく来るなというオブライエン。
ローブをまとったオドーが現れた。ジェヤールにご列席感謝しますという。そうだろうな、今ならやめられるぞというジェヤール。あんたは体面を重んじる、恥はかきたくないだろうという。私はこんな茶番にだまされるほどつきあいのいい男じゃないというジェヤール。オドーは失礼します、私にとって大切な儀式ですのでと言った。
続いて同じローブを着たラクサナが現れた。部屋にはクワークやダックスもいる。ラクサナは台の上に乗り、その前に立ったオドーが話し始める。「タヴニアの伝統にのっとりまして、あなたがたを前に我が家同然の愛着のあるこの場所に立ち、心からの願いを申し上げます、この女性をぜひ私の妻に迎えたい。彼女はその美しさと同様優しい女性であり、私は今日から彼女を一生の伴侶にしたいと思います。結婚してくれ、ラクサナ。」オドーが手を差し出す。しかしジェヤールはそこらへんの女なら誰でも通用するような愛の宣言があるか、下らん芝居はよせと怒る。ラクサナはそこらへんの女じゃない、特別な女だというオドー。ジェヤールは証明してみろと言った。オドーはラクサナを見やり、咳払いをすると再び話し始めた。「彼女に出会うまで、私の世界は非常に狭いものでした。私はいつも自分に独りで生きていけると言い聞かせ、それを誇りにさえ思っていました。でもその裏で自分の本当の姿を恥じ、いつも恐れていたんです、私の本当の姿を知られたら、皆離れていくと。ラクサナは私の本当の姿を知っていました。でも離れていくどころか、もっと知りたがった。私は生まれて初めて、ありのままを受け入れられたんです。私は彼女によって変わりました。ラクサナと出会って、私は孤独ではなくなったのです。そんな彼女を一生の伴侶として、添い遂げたい。結婚してくれ、ラクサナ。私を導いて欲しい。」手を差し出すオドー。ラクサナはその手を取り、あなたについていきます、死ぬまでどんな時もと言った。オドーは妻とすることを宣言し、異議のある者は名乗り出るがいいといった。ジェヤールはうつむくだけだった。オドーは紹介します、私の愛する妻ですと言った。拍手が起こり、おめでとうと声をかける。みんなと抱き合い、握手をするオドーとラクサナ。
ジェヤールはラクサナに、愛していた、一番大切な宝だったという。息子を頼む、父のことを話してやってくれという。ラクサナは無言でうなずいた。クワークはオドーに全く隅に置けない男だと笑っている。ジェヤールは出ていった。クワークはめでたい提案をさせてもらうといい、ご両人のためにパーティを開きましょうという。本気と聞くダックスに、当然でしょう、俺はロマンチストだというクワーク。笑いながら出て行く士官たち。
オドーはラクサナに大丈夫ですかと聞く。大成功だわ、おとなしく帰っていったと喜ぶラクサナ。あなたのスピーチのおかげよ、私本当にプロポーズされてるのかと思ったという。早くみんなに本当のことを言わなきゃ、パーティ後にしましょうかといい2人で出て行く。
オナヤは恍惚の表情を浮かべている。ジェイクに少し休みなさいというが、ジェイクは手が止まらないという。オナヤはいまだエネルギーを奪いつづけている。もうすぐお父様が帰ってくる、部屋にもどらなきゃというオナヤに、後で会うからいいというジェイク。だいぶ疲れているようだ。オナヤはペンを取り上げた。何するんだよというジェイクに、あまり無理しない方がいいという。今までにないくらい頭がさえてる、このペースでいったら2、3日で書き終わるというジェイク。もちろん保証する、でも今休んだらもっと素晴らしい作品になるというオナヤ。ジェイクは部屋に帰り、少し寝ることにした。また来るでしょとオナヤに聞かれ、もちろんさ、君がいなきゃと答えるジェイク。
ターボリフトに乗り、プロムナードへいくように命じるジェイク。めまいがする。プロムナードに着くが、ふらふらしながら歩くジェイク。レプリケーターにオレンジジュース※20を注文し、席につこうとしたその時、ジェイクは倒れてしまった。
ベッドに寝ているジェイク。正体不明の何かが、ジェイクの脳機能を刺激しているようですというベシア。大脳皮質の毛細血管が20%膨張し、神経伝達物質の生産量も増え、神経活動も桁外れですという。原因の見当はつかないのかというシスコに、今のところは、でもジェイクは絶対安静です、大脳皮質のシナプスが崩壊寸前ですからというベシア。しばらくは神経安定装置※21を付けていなくてはならない。ジェイクはオナヤと名前をつぶやいている。シスコが何があったと聞くが返事はない。オドーにオナヤという女性について何かしらないか話してみるというシスコ。ベシアは容体に変化があったらお知らせしますといった。看護婦※22にラボにいると伝え、奥にいくベシア。
看護婦が一人でジェイクの検診を行っていると、後ろに突如光が現れた。みるみるうちにオナヤの姿になる。気配に気づいた看護婦を手でなぎ払い倒すオナヤ。いらっしゃいジェイク、完成させるのよ、あなたの作品をといった。

※20: orange juice

※21: neurotransmitter TNG第125話 "The Inner Light" 「超時空惑星カターン」など

※22: 名前は Tagana (パトリシア・トールマン Patricia Tallman TNG第144話 "Starship Mine" 「謎の潜入者」のキロス (Kiros)、DS9第73・74話 "The Way of the Warrior, Part I and II" 「クリンゴンの暴挙(前)(後)」の武器将校 (Weapons officer) 役。TNGやDS9、映画ジェネレーションズのスタント)


医療室の隔壁をトリコーダーで調べながら、何かの濃縮した光電子エネルギーの痕跡が見られるというオブライエン。ジェイクの診察でも何らかの光電子エネルギーが神経活動を刺激していた、テレパシーのようなと話すベシア。看護婦の見た人物が怪しいなというシスコ。ベシアは早くジェイクに神経安定装置をつけないと命が危ないという。オドーにいって、トリコーダーで光電子エネルギーを探知できるように改造するというオブライエン。光電子の残留は数分で消滅するため、急がないとというベシア。
作業用通路の中にジェイクとオナヤがいる。がんばるのよ、あなたを見た瞬間私の力を与える価値があると感じたというオナヤ。永遠には一緒にいられない、これがあなたのチャンスなの、あなたが死んでからも永遠に残る名作を書き上げるという。エネルギーを奪いつづける。また鼻血が出るジェイクに、大丈夫、すぐ止まるというオナヤ。
トリコーダーで調べながら通路を進むシスコら。20メートル先に反応がある。シスコはこのまま行くといい、部下にトンネル61Gから回り込むように指示した。
もはやジェイクには書く気力さえ残っていない。もう書けないというジェイクの手を取り、無理矢理字を書かせるオナヤ。そこへシスコが飛び降りてきた。フェイザーを構え、息子から離れろという。父さん邪魔しないでというジェイク。オナヤは立ち上がり、ジェイクから離れた。シスコは司令室に連絡を入れ、自分のシグナルを追跡してジェイクを医療室に転送するように命じる。しかし炉心に近すぎるため、干渉波が強すぎてロックできないというキラ。では医療部員を至急よこしてくれというシスコ。オナヤに何者だと聞く。正体より何をしているかが大切なのよ、何人もの心に触れてきたというオナヤ。カトゥーリス※23、タルボッド※24、キーツ※25、その他何百人もの才能を引き出したという。才能を引き出した挙げ句がこれか、ジェイクを見てみろというシスコ。死と引き換えに名声を与えている、彼らの名前は永遠に生き続けるというオナヤ。彼らを殺して何を得ると聞くシスコに、生き続けるエネルギーよ、新しい天才を探して才能を解放していたというオナヤ。ジェイクは今まで一番若かった、とても熱心に持っている才能を一つの作品に昇華したがってたという。残念だわ、あなたのことは忘れないといいエネルギー体に変化し始めるオナヤ。シスコはどこにも逃がさないといいフェイザーを撃つが、効果はなくそのエネルギー体は隔壁を通過していった。そして宇宙の彼方へ飛び去っていった。
ラクサナが保安室に飛び込んでくる。とってもいいニュースがある、今日の午後にベタゾイド行きの船が出る、家へ帰れるというラクサナ。てっきりここで出産されると思っていたというオドーに、もしそうしたら産後数ヶ月はここを動けなくなる、迷惑はかけられないというラクサナ。オドーはいつ生まれてもおかしくないんです、ベタゾイドは遠すぎる、ここへ残った方がいいと勧める。ラクサナはそうしたいという。ではなぜ行くんですと聞くオドー。ラクサナは随分私がそばにいることに慣れたみたいねという。オドーの顔に手を振れ、何て優しい人なのかしらというラクサナ。いつも誰かのために世話を焼いていたいのねというラクサナに、いけないことですかと聞くオドー。もちろんそんなことはない、私がそれ以上のことを望んでしまうからいけないというラクサナ。止めようとしてもだめ、まだあなたを愛している、私と同じだけ、あなたの愛を望んでしまう、無理なことなのにという。オドーはうつむいた。できるならここに残ってあなたを振り向かせたいが、ありえないからさっぱり忘れるというラクサナ。恨んでせっかくの友情を壊したくないという。今ここでベタゾイドへ帰った方がお互いのためだというラクサナ。再びうつむくオドーのあごを上げ、口付けをするラクサナ。さようなら旦那様というラクサナに、さようなら妻よとオドーは言った。
ジェイクの調子は良くなりつつある。シスコはジェイクの書いた作品を読み終えたところだ。感想はと聞かれ、正直言ってよく書けているというシスコ。会話は切れるし、ストーリーも面白い、人物も生き生きしているという。だがスペルは落第だというシスコ。特に父親がいいというシスコに、思い当たる人はいると聞くジェイク。若干ねと答え、いい作品だというシスコ。わかってる、でも僕のじゃないというジェイク。オナヤがいなかったらというと、これはオナヤが書いたんじゃないというシスコ。引き出したんだというジェイクに、お前の中にその才能があったということだという。後は自分で才能を引き出す方法を学ぶだけだろうというシスコ。そうだね、でも正直言うと続きを書く気にはなれないというジェイク。シスコは無理もない、休んだ方がいい、そしていつの日かまた続きを書けばいいさという。読みたいんでしょというジェイク。微笑むシスコ。仕事に戻るといい、ジェイクのほおにキスをするとまた様子を見に来るといって出て行った。ジェイクは「アンスレム」※26と名づけられたその作品に、自分の名前を書くのだった。

※23: Catullus

※24: タルボルデ Phineas Tarbolde TOS第2話 "Where No Man Has Gone Before" 「光るめだま」で触れられた作家。1996年に「ナイチンゲール・ウーマン (Nightingale Woman)」を執筆

※25: ジョン・キーツ John Keats (1795-1821) 実在したイギリスの詩人。詳しくはこちら

※26: Anslem DS9第75話 "The Visitor" 「父と子」で登場した、ジェイクの作品の一つ


・感想
ひさびさに登場のラクサナで、今回はあまり派手なことはやりませんでしたがオドーとのつながりが深くなりました。今まではどちらかといえば迷惑に思っていたオドーも、感動的なスピーチを披露してくれます。サブストーリーは謎の女性により創作に没頭するジェイクで、あの「アンスレム」という題が登場。STではあまり実際に字を書くシーンはないので珍しいのではないでしょうか。字幕が欲しい?^^;


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