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ディープスペースナイン エピソードガイド
第163話「眠らぬ殺意」
Field of Fire

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・イントロダクション
クワークの店に、士官たちが集まっている。
オブライエン:「ジュリアン。」
ベシア:「はい、じゃあ注目。乾杯しよう。ヘクター・イラリオ中尉※1。我らが艦隊アカデミーが生み出した、銀河一優秀な戦闘機パイロットに…」 若い宇宙艦隊士官が座っている。
「乾杯!」
「ああ、まだ終わってない。」
キラ:「白けさせないでよ。乾杯のスピーチの基本は、短く適切によ。」
イラリオ:「僕は聞きたいけどな。」
「ああ。」
エズリ:「こら、調子に乗りすぎないの。」
ベシア:「別に構わないじゃないか。この青年は、この…未だにミルクの匂いを漂わせているこの坊やは…」
イラリオ:「22ですけど?」
「ああ、ただの例えだ、気にするな。神が授けた天才パイロットと言っていい。6機のジェムハダー機を相手に、独りディファイアントを操り、果敢に挑んでいった結果、戦い済んだその戦場に、無傷で残る一隻の戦艦。皆さん、それこそが彼のディファイアント号だったのです!」
オブライエン:「生まれながらのパイロットだな!」
「全員異議なし。」
一同は言った。「かんぱーい!」
笑うキラ。
イラリオ:「ありがとう。すごく嬉しいです。」
オブライエン:「せいぜい楽しんでってくれ。」
ベシア:「望みがあれば、何なりと…力になる。」
イラリオ:「じゃあ、一つだけ。」
「どうぞ。」
「お二人と一緒に、ホロスイートへ行ってみたいんです。」
オブライエン:「…すまないんだが。」
ベシア:「ダメだ。」
「問題外だな。」
「絶対無理。」
キラ:「あんまり気にしない方がいいわ。この人たち、ホロスイートには独特のこだわりをもってるの。」
ベシア:「ストレス発散にはいい。」
オブライエン:「ああ、お勧めはお勧めだ。」
「でも一緒は無理。」
「ああ、何て言うか…ホロスイートにいる時っていうのは、すごく無防備になるだろ?」
「つまり彼は、アライグマの尻尾を垂らした帽子を被ってる姿を見られたくないのさ。」
イラリオ:「ああ、なるほど。」
クワークが近づく。「お二人さん、ホロスイートが空いたよ。」 アイソロニアロッドを置いた。
ベシア:「待ってました!」
オブライエン:「ああ。」
「ほかに希望があれば。」
「言ってくれよう。」
2人は 2階へ行った。
イラリオ:「一緒にホロスイートへ行ったことは?」
キラ:「私が? ないわよ。」
「ふーん。」
エズリ:「行くわけないじゃない。」

クワークの店。
酔っぱらったイラリオ。「72年組にかんぱーい!」 独りで酒を飲む。「うう…もう一杯いく?」
キラたちは同時に答えた。「結構よ。」
エズリ:「結構。」
イラリオ:「…帰る時間?」
キラ:「帰る時間を 1時間過ぎてるわ。」
「了解。」 立ち上がるが、ふらつくイラリオ。
キラ:「おーっと。」
エズリ:「おっと。」
「しょうがない、送ってやるわ。」
「私が送ってく。方向一緒だから。」
「いいの?」
「酔っぱらいを送るのは初めてじゃないもの。」
あくびするキラ。
エズリ:「機会があったら、ボリアス※2のバーで酔っぱらった、若き日の大佐の話をしてあげる。ほら、こっち!」
微笑むキラ。

エズリとイラリオは、笑いながら廊下を歩いてきた。
イラリオ:「初めてソーリアン・ブランデーを飲んだよ。大佐のお気に入りだよね。」
「後からジワジワ効いてくるわよ。」 笑うエズリ。
イラリオはドアを行きすぎたことに気づいた。「まだ話していたいんだけど、着いちゃった。…僕の部屋だ。」
2人は中に入る。ため息をつくイラリオ。
エズリ:「大丈夫? ラクタジーノいる?」
イラリオ:「大丈夫。大丈夫。」
イラリオはテーブルの上の写真立てを手に取った。「こいつらもいてくれたら、よかったのにな。」 友人と写っている写真※3のようだ。「僕の雄姿を見せたかった。…すごかったんだぞ!」
エズリ:「…じゃあもう行くわ。ゆっくり休むのよ。」
「一つ言っていいかな。あなたは綺麗だ。」
「あなたは酔っぱらってる。」
笑うイラリオ。「確かに。でも明日…酒が抜けても、きっと綺麗だと思うな。」
「おやすみ、イラリオ。」
「おやすみ。」
出ていくエズリ。

エズリの部屋。
コンピューターが時刻を知らせる。『ただ今の時刻は、6時丁度です。』
毛布を被ったままのエズリ。
また目覚まし。『ただ今の時刻は、6時0分、10秒です。』
エズリ:「はいはい、起きるわよ。」

制服を着たエズリは、レプリケーターに注文する。「ファナリアン・ティー※4。ホットで。」
カップを口にするエズリ。パッドを読む。
人々の騒いでいる声が聞こえてきた。
ドアを開けると、何人も廊下を走っている。「警報を出せ。」 「大佐に報告を。」 「了解。」

廊下を急ぐエズリ。
士官が集まっている部屋に入る。
話している保安部員たち。「何も心当たりはありません。」
床を見て息を飲むエズリ。
そこには、胸から出血したイラリオが倒れていた。
エズリ:「何があったの?」
オドー:「イラリオ中尉が殺されました。」
「殺された? どうして…!?」
遺体に付き添うベシア。「誰かに、撃たれたらしい。」


※1: Lieutenant Hector Ilario
(Art Chudabala)

※2: Bolarus
ボリアス9号星。ボリアンの母星

※3: 写っているイラリオたちは、古いタイプの制服を着ています

※4: Fanalian tea
DS9第68話 "Explorers" 「夢の古代船」などでファナリアン・トデー (Fanalian toddy) が言及

・本編
報告するオドー。「凶器は化学的に弾丸を発射させる、推進発射機のようです。」
シスコ:「銃か。」
「ベシアがイラリオの胸部から、トリタニウム※5の銃弾を摘出しました。」
ベシア:「心臓を、撃ち抜かれてました。」 証拠を渡す。
オブライエン:「そう見かけるもんじゃない。」
オドー:「この種の武器はもう使われてません。」
シスコ:「トリタニウムだと言ったな。」
「そうです。」
「チーフ、TR-116型のライフル※6を知ってるかね?」
オブライエン:「プロトタイプです。エネルギー妨害フィールドや、放射能の中で使用するために艦隊保安部が開発しました。」
「その通り。フェイザーが使えない場所で、使うための物だ。確か TR-116型のライフルは、トリタニウム製の弾丸を使用していたと思ったが。」
オドー:「プロトタイプと言いましたが、一般に使われているのかね。」
オブライエン:「いや、フェイザーが改良されて、116型は製造を中止された。」
シスコ:「だが 116型の設計図は残っている。レプリケートは可能なはずだ。」
「武器ファイルを見られるのは、艦隊士官だけですよ。」
「そうだ、残念ながらな。」
ベシア:「艦隊士官が、身内の士官を殺すわけがありませんよ。」
オドー:「私も信じられません。」
トリコーダーで調べるオブライエン。「待ってくれ。妙だなあ。弾丸の飛距離は、8センチから 9センチと出ています。」
シスコ:「犯人は至近距離から直撃したわけだ。」
オドー:「そうだとしても、火薬による火傷がない。」
ベシア:「…火薬の火傷?」
「銃器によって、至近距離から撃たれた場合、被害者の肌や衣服の上に、残留燃焼物が残るものなんです。」
シスコ:「詳しいんだな。」
「20世紀の犯罪小説を読むもんで。レイモンド・チャンドラー※7やマイク・ハマー※8を。」
「うーん。では、犯人が至近距離から撃ったとして、なぜ火傷が残ってないんだ。」
オブライエン:「…わかりません。」
オドー:「必ず、突き止めます。」
エズリ:「死亡時刻は?」
ベシア:「3時17分だ。」
「私がここを出た 7分後だわ。」
シスコ:「誰かいたか。」
「いなかったと思うけど、長居したわけじゃないし。」
「イラリオの詳しい情報は。勤務記録以外のだ。」
オドー:「わずかです。ここには 10日しかいませんでしたから。」
エズリ:「私の知る限り、知的でひたむきで明るくて…みんなに好かれてた。」
シスコ:「だが殺された。彼についての情報を全て知りたい。交友関係、敵の有無。それからステーション中の警備を強化するように。」
オドー:「了解。」
「それと、オドー…」
「犯人は必ず捕まえろ。わかってます、大佐。」

クワークの店で話すベシア。「イラリオの家は、兄弟が多いって言ってた。男 3人、女 2人だ。」
オブライエン:「男 2人、女 3人じゃなかったか?」
「いや、違う。」
「確かか?」
「…そっちは。」
エズリ:「こっち見ないでよ。家族の話はしたことないわ。話のほとんどはアカデミーと…あなたたちのこと。」
ベシア:「僕たち?」
「あなたたちに憧れてたから。」
「ホロスイートに連れて行けばよかった。」
オブライエン:「ああ、全くだ。」
エズリ:「私がもう少し部屋に残っていればよかったのよ。そしたら助かってたかも。」
ベシア:「もしくは君も一緒に死んでたか。」
「オドーは犯人を捕まえるわよね?」
「そう願うよ。」
オブライエン:「…ほんとにホロスイートへ連れてけばよかった。」

貨物室。
惑星連邦の旗がかけられた、光子魚雷容器の棺。エズリがそばにいる。
ベシアがやってきた。「エズリ?」
エズリ:「ああ…まだ寝ないの?」
「それはこっちのセリフだよ。」
「ええ。何だか眠れなくて。」
「僕もだ。自分を責めてるんじゃないか? イラリオのことで。」
「違うわ。そうじゃない。」
「じゃ何だよ。」
「まだ、殺されたのが信じられなくて。」
「それは無理ないよ。誰が信じられる。人が人を簡単に殺せるなんて、普通の感覚じゃ到底理解できない。」
「私はできる。」
「…どういうこと。」
「人を殺す気持ちがわかるってこと。どうしようもなく、命を奪いたくなる気持ちが。」
「ジョラン※9のことを言ってるの。」
「彼は 3人殺した。…私と同じダックスのホストだったわ。」
「だが君とは別人だ。」
「私だってそう思いたい。ジャッジアもそうだったわ。彼の記憶は心の奥底にしまい込んでた。でも消せはしない。殺した…被害者の顔は。」
「君の被害者じゃない。」
「わかってる。…でもこういうことが起きると…ジョランのような男がそばにいると思うと…」
ベシアは止めた。「エズリ。もう戻って休んだ方がいい。」
「そうね。どうせベッドに入っても、ただ天井を見つめてるだけだろうけど。…おやすみ。」
「おやすみ。」
独り残ったベシアは椅子に座り、棺を見つめた。

廊下を歩くエズリ。
オドーの声が聞こえる。「言いたいことがあるなら判事に言いたまえ。」
保安部員たちが歩いてきた。
エズリ:「オドー、犯人が見つかったの?」
犯人らしき男を連れて行くオドー。「こいつはなかなかの知能犯ですよ。」
エズリは男に詰め寄る。「どうして! なぜあんなひどいことを?!」
だが顔を上げた犯人は、イラリオだった。「どう思う、カウンセラー。」
驚くエズリ。「あなた、死んだはずじゃ。」
手錠をつけた手のまま、エズリにつかみかかろうとするイラリオ。「だったら、そう言ってよ。」
オドー:「すいませんね、中尉。心を残したままの死体ほど、厄介なものはない。」 連れて行った。
エズリ:「何? え?」
自分の両手を見るエズリ。血まみれだ。
部屋にイラリオが倒れている。
エズリ:「ダックスから保安部。…オドー? キラ? 誰かいないの? 保安部、ねえお願い、答えて。」
突然、後ろからつかまれた。振り返るエズリ。
トリル人の男が立っていた。
エズリ:「ジョラン※10?」
ジョラン:「私がわかるらしい。嬉しいよ。」
「望みは何?」
「尊敬に、理解に、愛だ。」
ピアノの音楽が聞こえてきた。近づくエズリ。
クワークの店で弾いているのはジョランだった。「私を恐れるのはやめてくれ。知らない仲じゃない。君の中にいる共生生物は、以前は私の中にいたんだ。」
エズリ:「ジョラン。」
2階にいるエズリに、顔を近づけるジョラン。「君は私の一部だ。」
エズリ:「私はあなたとは違う。」
逃げようとするエズリの前に、すぐにまたジョランが立ちふさがる。「そうだろうか? イラリオを殺した犯人を見つけたいんだろ? だったらすぐ出現の儀式を行って、私に助けを求めるんだ。力になってやろう。」
エズリ:「助けて欲しくなんかない。」
「そうかもしれん。だが必要だ。」
「あなたは 3人も人を殺した。私はあなたとなんか関わりたくない。ほっといてよ!」
「それは無理だ、ほかに行くところがない。私は常に、君と共にいるんだ。利用したまえ。」
「嫌よ!」
「私にはわかる。犯人の考えることが。二人でなら、必ず奴を捕まえられる。そして…償いを、させられる。」
笑いながらエズリを突き飛ばすジョラン。エズリは叫びながら 1階へ落下する。
鈍い音が響いた。

ベッドで飛び起きるエズリ。
もう一度横になる。
通信が入った。『シスコからダックス。至急、居住リング J-17 へ行ってくれ。』
エズリ:「あ…何でしょう、大佐。」
シスコ:『また殺人事件だ。』


※5: tritanium
連邦の宇宙船体に使われる、希少な合金。TOS第47話 "Obsession" 「復讐! ガス怪獣」など

※6: TR-116 rifle

※7: Raymond Chandler

※8: Mike Hammer
架空の私立探偵。DS9第152話 "Shadows and Symbols" 「預言者の呪縛」より

※9: Joran Dax
トライアス・ダックスの後継に当たる、ダックスの 6番目のホスト。旧名ジョラン・ベラー。DS9第50話 "Equilibrium" 「仮面の幻影」など

※10: Joran
(リー・J・マクロスキー Leigh J. McCloskey VOY第52話 "Warlord" 「暴君の星」のティエラン (Tieran) 役) DS9 "Equilibrium" では Jeff Magnus McBride が演じていました

部屋に入るシスコたち。保安部員が見張っている。
シスコ:「報告。」
オドー:「グレタ・ヴァンダーウェグ少佐※11。科学士官。地球人で 37歳。勤務歴は 12年、3年前にここへ赴任しました。」
ベシア:「彼女もやはり、至近距離からトリタニウム弾を撃たれています。」
シスコ:「イラリオと接点はあるのか?」
オドー:「調べましたが可能性は薄いです。イラリオはここへ来て 10日ですし、うち 7日はディファイアントに。」
「だがなぜイラリオとヴァンダーウェグなんだ。2人に恨みを抱いている者が、誰かいるのか。それともただ無作為に殺しただけなのか!」
ベシア:「僕は未だに、艦隊士官の犯行とは思えない。」
オドー:「このステーションには 900人以上の艦隊士官が勤務しているんです。」
シスコ:「オドー、まずは容疑者の絞り込みから始めるとしよう。」
「はい、大佐。」
エズリに尋ねるシスコ。「アカデミーではどのくらい法心理学の勉強をしてたんだ。」
エズリ:「あんまり好きな科目じゃなかったから。」
「早急に犯人の動機を突き止めねばならん。」
「やってみます。」

レプリマットにいるオブライエン。「なぜ TR-116 なんだ。」
ベシア:「フェイザーじゃなく?」
「ああ。しかも至近距離から撃つのに、なぜライフルを使う必要があるんだろう。」
「さあな。もしかしたら、元々は遠くから狙って撃とうとしてたのかもしれない。だからライフルを選んだのかも。それかこの型に、特別な思い入れがあるかだな。ほら、執着心というか異常愛というか。」
「うん、そうだな。」
「先月渡したデイヴィー・クロケットの伝記読んだか?」
「いやあ、すぐ読むよ。」
「そうじゃなくて、中に…クロケットとライフルの関係にまつわるエピソードを集めた個所があるんだ。そこでは、人と武器は特別な関係だと言ってる。開拓者にはライフルに名前をつける者もいた。女性の名前をね。すると武器に対して、女性への愛情のようなものが生まれるらしい。」
「うーん。じゃあ俺もトリコーダーを『サリー』と呼ぼう。」
笑うベシア。「エピソードはどれも面白い。一番面白いのは、彼が木の後ろの…獲物を射止める話だ。彼は木の近くにフライパンを並べた、あるパターンで。その後その中の一つを狙って撃つと、弾は別のフライパンに跳ね、それが次へ、また次へと跳ねていったんだ。」
オブライエン:「待ってくれ、それだよ。標的の置き換えだ。それを使ったんだ。」
「誰が。」
「犯人だよ。奴は弾道を変化させる方法を思いついたんだ。遠く離れた場所から獲物を狙って撃てるように。ありがとう、お前天才だよ。」 歩いていくオブライエン。
「礼を言うなら、クロケットに言ってくれ。」

中央の台に、大きな果物がセットされている。
エズリ:「どう思う?」
オドー:「…いいメロンだ。」
「私たちと何の関係が?」
「わかりませんね、私はチーフからあなたを連れてくるよう言われただけです。見せたいものがあると。」
通信が入る。『オブライエンだ。』
オドー:「どうぞ、チーフ。」
オブライエン:『準備は?』
エズリ:「一体何なの?」
『すぐわかる。まずはそこのゴーグルをつけてくれ。』
言われた通りにする 2人。
オブライエン:『つけたら、そこから少し下がって。もう少し。まだ慣れてないんでね。』
オドー:「ああ。」
エズリ:「これでどう?」
オブライエン:『OK!』
その直後、メロンは破裂した。
中に入るオブライエン。「すごいなあ。」 ライフルを持ち、頭に小型の機械をつけている。
オドー:「ご無事で?」
エズリ:「あのメロンよりはね。」
オブライエン:「成功だあ! 廊下にいながら、このメロンに弾丸を撃ち込むことに成功した。」
「壁を貫通させたの?」
オドー:「どこにも穴は開いてません。」
オブライエン:「このライフルにマイクロ転送機を装着してみたんだ。発射した瞬間、弾丸をメロンから数センチ離れた場所に転送させるんだよ。」
「しかし弾道はそのまま続いていく。犯人が同様の転送装置を使ったとしたら、被害者に火薬の火傷がないことも説明がつきます。」
「更に、外部グラフィックセンサーを使えば、隔壁を通してスキャンできる。」 頭部の機具を外すオブライエン。
「ステーション内のどこからでも攻撃できるというわけか。発砲された弾丸の転送サインをたどって、犯人を突き止められないかね。」
「それは無理だ。サインが弱すぎる。」
「…実に上手く考えたな。」
エズリ:「犯人は相当頭がいいわね。」

エズリの部屋。
コンピューターにイラリオとヴァンダーウェグの情報が表示されていた。「ないわ。何の接点もない。」
ため息をつくエズリ。

笑うダボガールを連れ、モーンはターボリフトに乗った。
独りレプリマットにいたエズリ。歩いていく。
何かの物音に気づいた。2階を見上げる。「誰かいるの? ねえ、誰?」
周りには誰もいない。「クワーク、あなたなの?」
2階に上がるエズリ。「ねえ、ふざけないで。」
また音がした。エズリの背後に近づく者がいる。
驚くエズリ。だがそれはよく知る男だった。「ウォーフ。」
ウォーフ:「もう遅い。部屋に戻った方がいい。」
「私を…つけてたわけ?」
「こんな時間に独りでウロウロしているのは危険だ。」
「心配してくれるの?」
「殺人犯がいるんだぞ? こんな風に自分を危険にさらすもんじゃない。」
「やっぱり心配してくれたのね。どうもありがとう、ウォーフ。嬉しいわ。」
「君は私の仲間だ。チーフ・オブライエンにも、ドクター・ベシアにも、同じことを言う。」
「もちろんよ。私も他意はないわ。」
「では誤解はないな。」
「全くない。」
「調査は進んでいるのか。」
「ああ…あんまり。」
「もし、何かできることがあれば…」
「気持ちは嬉しいけれど、いいわ。独りでやるしかないの。…解明できそうな人が、一人だけいるんだけど…助けて欲しくないし。」
「なぜだ。」
「いろいろあってね。」
「だが事件を解明できるんだろ?」
「でも頼りたくないの。」
「…そうかもしれん。だが君は任務を全うするために必要な手段は必ず講じるはずだ。」
「なぜそんなことがわかるの?」
「君はダックスだ。…性格は変わらない。」

祭壇の皿の中で、特殊な液体が煮えたぎっている。
詠唱を行うエズリ。「イノラ ジャカラ ヴォック ザ エズリ ザイアンタラ※12 レク ポラアール ジム ダックス タナス レム ジョラン」
鏡の前で目を閉じる。もう一度唱える。「ザ エズリ タナス レム ジョラン」
上手くいかない。「…来てよ、ジョラン。私を困らせないで。」
再び目を閉じるエズリ。「ジョラン タナス レム ヴォック エズリ ジョラン タナス レム」
目を開けると、鏡に映った自分の姿がジョランのものに変わっていく。
ジョラン:『後悔させはしない。約束する。』
その瞬間、エズリの後ろのソファーにジョランが座っていた。「追放され、忘れ去られしホスト、ジョランだ。」
エズリ:「人殺しのね。」
「それは私の個性のほんの一部分に過ぎない。」
「あなただけが離れているのを見るのは…妙な気分だわ。」
「実際にここにいるわけではない。君の頭の中にいるのだ。君は私の話を聞いている。実に久しぶりのことだ。クルゾンや、ジャッジアは私を無視していた。」
「みんなあなたの記憶を抹殺したがってたわ。」
「愚かなことを。私には利用価値があるのに。」
「じっくり見せてもらう。早速、本題に入りましょ。犯人を見つけるわよ。」
「何から始める?」
「犯人の考えを知りたいわ。」
「では武器の選択から始めよう。」
「TR-116型を改造したのはわかってる。」
「だが君は実際に自分で持ってはいないだろ? 実際に追跡ディスプレイを覗き、獲物を選び、何も気づいていない獲物をロックしながら、神になったような気分を味わう。本当に犯人を見つけ出したいのなら、犯人と同じ思考方法を学ばなければ。」


※11: Lieutenant Commander Greta Vanderweg

※12: ジャンタラ zhian'tara
合体したトリルが共生生物の過去のホストと会える儀式。DS9第71話 "Facets" 「クルゾンの秘密」より

科学ラボに来たエズリは、ライフルが入っているケースを開けた。
ジョランもいる。「いい武器だ。」
エズリ:「そうかしら。」
「君にだってこのライフルがもつ美しさはわかるはずだ。否が応にもある種の危うさと…パワーを感じる。引き金から銃口まで、死のイメージを思い起こさせるだろう。下ろしたまえ。」
取り出し、テーブルに置くエズリ。
ジョラン:「『手にとってみろ』という意味だ。」
エズリ:「なぜ?」
「犯人の気持ちを理解するためだ。」
ライフルを手に持つエズリ。
ジョラン:「私に従う気がないなら、犯人は見つけられん。」
エズリ:「ちゃんと持ったじゃない…」
「私をなめるな! 助けが欲しいのなら、素直に従うのだ。追跡ディスプレイ装着。」
言われた通り、頭に機具をつけるエズリ。片目の前にディスプレイが来る。
ジョラン:「では、実際に使うように構えてみたまえ。……いい気分だろ?」
エズリ:「前にも持ったことはある。」
「戦場でだろ。混乱の中で不特定多数を殺すのとは違う。君はこの瞬間をたっぷりと味わうことができるんだ。さ、何が見える?」
エズリには壁を通して、ステーションの内部が見えていく。貨物室、コンピューター回路、エアロックのドア。
エズリ:「いろんな階層のドッキングリング。」
ジョラン:「ドッキングリングに獲物がいるか? 犯人の気持ちになれと言ったろ。居住リングへ向かえ。」
方向を変えるエズリ。「見えたわ。今廊下にいる。」
ジョラン:「よし。君はハンターだ。狩りを始めろ。」
銃を操作するエズリ。「ベイジョーの保安部員がいる。」
ジョラン:「廊下にいる必要はない。部屋に入るんだ。」
「誰もいない。」 隣の部屋に移る。「男性士官が一人いるわ。機関部員、35歳前後。」
「よし、獲物だ。今君の目に映ってる。どんな気分か正直に言ってみろ。」
「全てを、支配しているような…」
「そうだ、犯人もそう思っていた。」
「怒りは感じない。興奮も。」
「君は冷静だ、落ち着いている。」
「観察する感じ。」
「よーし、わかってきたようだな。君は遠くから標的を撃つ。冷酷に、そして正確に。まるで科学者のように、あるいは医者だ。」
「そうね。でもどうしてこんなやり方で? プロムナードやバーに行って殺せばいい。」
「その答えを知りたいなら、引き金を引くんだ。やってみろ!」
エズリは映っている男を凝視する。
ジョラン:「何も考えるな。撃て!」
男の額に照準が合う。
ジョラン:「撃つんだ!」
エズリ:「嫌よ!」 ディスプレイを外した。
銃を置くエズリ。
ジョラン:「エズリ、弾は入っていない。」
エズリ:「…じゃあどうして引き金を引けなんて言ったの!」
「犯人の気持ちを知りたいんだろ?」
息を荒げるエズリ。

クワークの店。
ジョラン:「すまん、エズリ。怒らせるつもりはなかった。」
エズリ:「私は人殺しじゃない。あなたじゃないわ。」
「だが私の記憶は残ってる。殺す瞬間に感じたあの興奮と、激情。標的がこちらを見ながら、自分の死を悟った瞬間のあの表情を。」
「私には関係ないわ。あなたじゃないもの。」
クワークが近づく。「エズリ? 働き過ぎじゃあないか? 独り言言ってたぞ。」
エズリ:「あ…考え事が、声に出ちゃったの。」
ジョラン:「実に不快感を催させる男だ…」
クワーク:「何か飲むか食べるかする?」
「そんな暇はない。仕事に戻るぞ。」
エズリ:「いえ、いいわ。お腹は空いてないから。」
クワーク:「じゃあ腹が減ったら、来てくれよ?」 歩いていく。
ため息をつくエズリ。
ジョラン:「あばらの間にナイフを突き立ててやりたいよ。」
エズリ:「そんな暇はないんじゃない? 仕事に戻りましょう。さっさと犯人を見つけ出して、あなたに消えて欲しいの。」
「楽しんでると思ったが。」
「誤解のようね。」
「もっと人に好かれる人間にならないとな。では次は、被害者の部屋を探ってみるとしよう。何が見つかるかな?」

写真立てが置かれた、イラリオの部屋。
エズリ:「何を見つけるの?」
ジョラン:「手がかりさ、当然だ。」
「犯人がここへ来たかどうかもわからないのよ?」
「被害者が 2人とも部屋で殺されたのは偶然か? それとも理由が?」
「わからない。」
「考えるんだ。よく見てみろ。忘れるな、君が見る物は、犯人が見た物だ。」
部屋を見回るエズリ。
写真立てを見るジョラン。「ここに写ってる友人は調べたのか?」
エズリ:「オドーが艦隊司令部に問い合わせたわ。…一番左の彼は 5週間前に戦死。真ん中の彼は、トルーマン※13に乗ってる。もう何ヶ月もここの近くには来てないわ。」
「うーん、残念だ。続けたまえ。」

次はヴァンダーウェグの部屋。
ジョラン:「随分私物の多い女性だな。」
エズリ:「もう長く住んでたから。うちも同然。」
「実に趣味の悪い部屋だ。ああ、感想を言ったまでだ。」
エズリは立てられた写真に気づいた。手に取り操作すると、ヴァンダーウェグと夫らしき人物の、幸せそうな映像が動き出した。
再生を止めるエズリ。「グレタの旦那さんは、モラ5号星※14の古代微生物学者よ。彼女は既婚者、イラリオは独身。片やここに来て 3年、片や数日。彼女は成熟した女性で、イラリオはほんの子供。…制服を着てる以外、2人に共通点なんか全くないわ。つまり無作為に選ばれたってことよ。これを結論とするなら、調査は時間の無駄だわ。」

クワークの店。
エズリに話すジョラン。「放り出そうとしている。」
エズリ:「そんなこと言ってない。」
「言う必要はないさ。既に全身で語ってる。」
「失望させたなら失礼。」
「犯人が見つからないのは手がかりがないからじゃない。君のせいだ。」
「私の?」
「君は躊躇している。拒んでいるんだよ、犯人の目でものを見、感じ、犯人の立場で考えることを。」
「私を人殺しにしたいの? あなたのような。」
「君は私だ。」
「私が人を殺したら、あなたみたいになったらどうする?」
「大歓迎さ。」
声が響いた。「止まれ!」 2階にいる保安部員を見上げるエズリ。
怒号が飛ぶ。「おい待て!」「捕まえろー!」「下へ行ったぞ!」
エズリ:「見つけたんだ。」
宇宙艦隊士官が降りてくる。保安部員の声。「応援を呼べ!」「誰か、止めてくれー!」
エズリは椅子を倒し、男をつまずかせた。すぐに飛びかかる。
殴られるエズリ。
ジョランが言う。「ナイフが落ちてる。」
それを拾い、突き立てるエズリ。怯える男。
ジョラン:「いいぞう、早くやれ! 殺せ!」
エズリは手をつかまれた。「ああ…」
オドーだ。「もういい。」
息の収まらないエズリ。


※13: U.S.S.トルーマン U.S.S. Truman
クラス・番号不明。恐らくアメリカ第33代大統領ハリー・S・トルーマンにちなんで。「トルーマン」と吹き替え

※14: Mora V

ナイフを手にするシスコ。「説明してもらおうか。オドーが止めなかったら、バートラム少尉※15を刺していたそうじゃないか。」
エズリ:「…逃げるのを止めようとしただけです。殴られたからカッとしたので……でも確かにやりすぎでした。」
シスコはナイフを投げ置く。「その通り。」
ジョラン:「もっと君に感謝すべきだ。そうだろう。」
エズリ:「すみません。自制すべきでした。でも彼は 2人も殺したんですよ?」
シスコ:「彼は誰も殺してはいない。」
「じゃなぜ保安部員が追いかけてたの?」
「1ヶ月前何の許可もなく、116型のレプリケーター・パターンにアクセスをしていたからだ。」
ジョラン:「犯人も同然だ。」
エズリ:「使いもしないライフルをレプリケートするのはおかしいですよ?」
シスコ:「彼は武器マニアなんだ。連邦、クリンゴン、カーデシア。」
ジョラン:「何という偶然だ。」
エズリ:「だからって無実とは限りません。」
シスコ:「確かに。だが彼は最初の殺人が起きた時、ベイジョーにいた。」
無言になるエズリ。
シスコ:「ここのところ、疲れが溜まってるようだ。しばらく…」
エズリ:「大佐、外さないで下さい! 必ず犯人を見つけます。自信があります。もう少しだけ時間を下さい。」

ターボリフトに乗っているジョラン。「君といい、ジャッジアやクルゾンといい、なぜあの男を慕う。いかにも傲慢で、艦隊然としてやがる。…彼が狙われなかったのが不思議だよ。…もちろん冗談だ。だが彼のせいで、我々の計画が狂う危険がある。君にも多少責任があるぞ。」
ターボリフトを降りるエズリ。「はあ? 私が何したの?」
ジョラン:「彼に私のことを言うべきだったのだ。」
「冗談。そんなことをしたら捜査から手を引かされるわ。」
「では、私は黒子に徹しよう。君がシスコのお気に入りでいられるように。…でも関係ない。シスコがどうであれ、捜査は進められる。いいな。」

部屋に戻ったエズリは、すぐに祭壇に火をつける。
ジョラン:「何をする気だ!」
エズリ:「何をするように見える? イノラ ジャカラ ヴォック…」 詠唱を始める。
「そんなに簡単に私を消せると思うか?」
「ジーム ダックス ナ ササヤーン…」
「私だって君と同じ、ダックスの一部なんだぞ?」
「ドゥザ・ウ バ・ジスト…」
「頼む、戻さないでくれ、エズリ。」
鏡の前に立つエズリ。「ジョラン リー ジェヤー ヘイ・ダー ジョラン リー ジェヤー ヘイ・ダー…」
鏡に映った姿のジョラン。『…私なしで犯人は捕まえられん。』
通信が入った。『オドーからダックス中尉…』 驚くエズリ。
儀式が中断されたため鏡の姿はエズリになり、背後にジョランが現れた。
オドー:『居住リング H-4-3 へ来て下さい。』
エズリ:「すぐに向かうわ。」
微笑み、ついていくジョラン。

倒れている宇宙艦隊士官。
オドー:「ジム・ブロット下士官※16。ボリアン。ディープ・スペース・ナインに赴任して 5年になります。」
エズリ:「よく知ってる。…っていうかジャッジアが。ボリアスに奥さんやほかの家族※17がいるわ。」
オブライエン:「標的は地球人という仮説は崩れましたね。」
ベシア:「大佐。」
シスコ:「心臓を直撃か。」
「…至近距離で。」
ジョラン:「別に驚かんね。」

ブロットの部屋を捜索するエズリ。
ジョラン:「我々が捕まえない限り、犯人は艦隊士官を殺し続けるつもりかね。なぜこんな不細工な子供を連れて笑ってられるんだ。」
エズリ:「今何て言った?」
ジョラン:「この写真だよ。」
エズリは目を見張る。「それだわ。その写真よ!」 手に取る。「彼は笑ってる。」

ヴァンダーウェグの部屋。「彼女も笑ってる。」

イラリオの部屋。「これが被害者の共通点よ。笑顔で撮った写真。」
ジョラン:「犯人は笑いを憎んでる。感情を憎んでる。」
エズリ:「…ヴァルカン人ね。」
「…感情を否定しているからといって、笑ってる人間を殺しはしまい。」
「この犯人は別。何かがあったのよ。彼に、自制心を失わせるほど打撃を与えるような何かが。そして追跡センサーを覗き、この写真を見つけた時、この笑顔が彼を刺激した。」
「犯人の気持ちになってる。いいぞ、エズリ。」
「コンピューター、ヴァルカン人の艦隊士官は何人いる?」
『ディープ・スペース・ナインのヴァルカン人士官は、48人です。』
ジョラン:「では 47人を一人ずつ消せばいい。」
エズリ:「…オドーに言わなきゃ。」
「証拠が先だ。」
「探しましょう。」

科学ラボ。
エズリ:「まだ 28人残ってる。みんな何らかのショックで心に傷を負ってるわ。」
ジョラン:「かなり狭まった。」
「まだ不十分。」

プロムナードを歩いているヴァルカン人を見ているエズリ。
近くには食事をしている者もいる。
エズリ:「…どうしてもわからないことがあるの。笑顔が憎いというだけなら、どうしてバーやホロスイートで標的を探さないの?」 独りで話しているように見えるため、近くを通る者が不思議そうに見ている。
ジョラン:「ほかに原因があるのか。」
「そうだわ。写真を撮ることによって、瞬間を停止させたことが原因かも。その笑顔の瞬間が永遠に続くことが……。」

ターボリフトに乗るエズリ。「レベル12、中央コア※18。」
ジョラン:「それで? 何をする気だ。」
「容疑者のリストを見直すの。もっと狭められないか。その後、証拠に関係なくリストをオドーに渡す。」
途中でターボリフトが止まり、男性のヴァルカン人が乗ってきた。「居住リング、レベル K-55。」
ジョランはヴァルカン人に近づき、まじまじと見つめる。
エズリ:「何してるのよ!」
ヴァルカン人:「私に言ってるのか?」
「…ごめんなさい、気にしないで。」
ジョランは言った。「こいつだ、エズリ。間違いない。犯人を見つけた!」


※15: Ensign Bertram

※16: Petty Officer Zim Brott

※17: 原語では "a wife and co-husband" と言っています。co-husband というのは「夫仲間」とでもいうべき存在でしょうが、つまりボリアンは一妻多夫制なんでしょうか?

※18: 「セクション4」と誤訳。一体どこから…?

話し続けるジョラン。「私はこいつが犯人だと言ってるんだ。早く奴の目を見てみろ。」
エズリはヴァルカン人に話しかけた。「ああ…私は、カウンセラーのダックスよ。」
ヴァルカン人:「知っている。」 ターボリフトが到着し、先に降りた。
ジョラン:「何をしてる。降りてしまったぞ。」
エズリ:「証拠がいるわ。オドーを説得できるような。」
「君が悠長に証拠を探してる間、あのヴァルカン人は何をすると思う。新たな標的を探すのさ。」

先ほどのヴァルカン人の情報が表示されている。
エズリ:「科学士官チュラック※19。97歳。3ヶ月前にディープ・スペース・ナインに赴任し、その前はグリッサム※20に乗艦。」
ジョラン:「異動の理由は。」
「リクトール・プライム※21の戦いでジェムハダーに攻撃され、グリッサム号は大破。彼はわずか 6名生き残ったうちの一人よ。」
「クルーは 1,250人いたはずだ。」
「彼は 10年も乗艦していたのよ? 大勢の友人を一度に殺されたも同然。」
「…ヴァルカン人といえど、耐え難いな。」
「でも犯人とは言えない。」
「君の直感はそうだと言ってる。直感に従うんだ。私に従え。彼だ。」
「コンピューター、チュラック士官の居場所は?」
『チュラック中尉は部屋にいます。』
ジョラン:「次の獲物を探してる。」
エズリ:「コンピューター、チュラックの部屋はどこ?」
『居住リング、レベル D-12。』

科学ラボにやって来たエズリ。
ケースからライフルを取り出す。
ジョラン:「間違いない。」
エズリは更に部品と映像ディスプレイを取り出す。撃つ準備を整えた。
ジョラン:「何が見える。」
部屋を移っていくエズリ。チュラックの背中が見える。「コンピューターコンソールの前に座ってる。」
ジョラン:「何をしてる。」
奥を見るエズリ。コンソールに写っているのは、エズリの写真だった。
息を飲むエズリ。
ジョラン:「どうした!」
エズリ:「私だわ。私の記録を見てる。」
「疑ってることに気づいたんだ。」
「隣の部屋に行ったわ。」
「何をしてる。」
「戻ってきた。何かを持ってる。」
「ライフルじゃないか? そうだろ。」
「…ええ、そう。」
「撃つんだ!」
エズリは部品を取り替え、弾を込めた。
チュラックもディスプレイを取り付けているのが見える。
ジョラン:「何も考えるな。ただ撃てばいい。」
ライフルを持つチュラック。
ジョラン:「殺せ!」
照準をチュラックの心臓に合わせる。息を震わせるエズリ。
チュラックもライフルをこちらへ向けてくる。
エズリは発砲した。チュラックの肩に当たる。
同時にチュラックも弾を撃つが、それはエズリの背後の壁に当たった。蒸気が噴き出す。
ジョラン:「おめでとう、よくやった!」
ディスプレイを外すエズリ。

廊下を歩くエズリに話すジョラン。「誇りに思うぞ。」

倒れたチュラックは、緑色の血を流しながら床をはいつくばっている。落としたライフルに手を伸ばす。
部屋に入る者がいる。チュラックの手がライフルに届く前に、ライフルに足を置かれる。
エズリはそれを拾い上げ、チュラックに向けて構えた。
見上げるチュラック。
ジョラン:「撃つんだ。早くとどめを刺せ。」
エズリ:「…教えて。なぜ人を殺したの?」
チュラック:「論理がそれを、望んだからだ。」
ジョラン:「何をグズグズしてる。彼は死ぬべきなんだ。わかってるだろう? だったら自分の本能に従うんだよう…。」
互いに睨み続けるチュラックとエズリ。
エズリはライフルを下ろした。「ダックスから医療室。すぐに救急チームをよこして。居住リング、D-12 よ。」
ベシアの応答が返る。「了解。」
エズリはジョランに言った。「そうガッカリした顔しないで。」

エズリの部屋。
詠唱するエズリ。「ジズイ ヴォック エズリ シャ・ハー・バ・シャー イノラ、ジャカラ ヴォック…」
ジョラン:「一緒に過ごせてどんなに楽しかったか。」 部屋には色のついた煙があふれている。
エズリ:「ジーム ダックス ナ ササヤーン ドゥザー・ウ バ・ジースト」 鏡の前に立つエズリ。映った姿はジョランだ。「ジョラン リ ジェヤー ヘイ・ダー」
ジョランが語りかける。『私を忘れることも、ジャッジアやクルゾンのように無視することもできん。』
エズリ:「わかってる。」
『私は君の一部だ。オードリッドやトライアスと、同じように。』
「肝に銘じておく。…トゥー ダックス ノー ジアン ヴォック ジーズイ ジョラン リム タナス エズリ」
ジョランの姿は消え、エズリのものになった。


※19: Chu'lak
(Marty Rackham) 「中尉」と訳されていますが、年齢や勤務年数を考えると大尉が適切なように感じますが…(階級章は確認できません)

※20: U.S.S.グリッサム (グリソム) U.S.S. Grissom
連邦宇宙艦、エクセルシオ級、NCC-42857。TNG第70話 The Most Toys" 「究極のコレクション」より。「グリッサム」と吹き替え。映画 ST3 "The Search for Spock" 「ミスター・スポックを探せ!」では同名の船が登場 (オーベルト級、NCC-638)

※21: Ricktor Prime
この部分は訳出されていません

・感想
前話では鏡像だったとはいえ、実質的にエズリのストーリーが 3話連続となりました。TNG でも最終シーズンにデータ主役が続いたことがありましたが、3話というのはやはり多いと感じますね。それほどエズリというキャラクターを取り急ぎ描きたいという印象を受けます。短いシーンでしたが、ウォーフとの会話が印象に残りました。
久々に再登場した「殺人鬼」ジョランのまとわりつくような演技も良いです。映像的にも少し変わったところが多くて、全シリーズ含めて現在までにこのエピソードしか監督していない Tony Dow の影響が見受けられます (この方、50年代のドラマ「ビーバーちゃん」のレギュラーだったそうです)。


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