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ディープスペースナイン エピソードガイド
第152話「預言者の呪縛」
Shadows and Symbols

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・イントロダクション
驚くシスコ。「ダックス。信じられないよ。」
矢継ぎ早に話す女性少尉。「私だって信じられないの。でも…ダックスよ。そりゃ、ジャッジアじゃないわ。エズリ・ダックスよ。でもジャッジアの記憶はある。そのほかにも、レラにトビンに、エモニー、オードリッド、ジョランにクルゾン。誰か忘れてる?」
シスコ:「トライアス。」
エズリ:「そうだった。考えてることはわかってるわ。『こいつは誰だ。』『いつ合体したんだ。』『俺はこのダックスともつき合うのか。』『いつもこんなにしゃべるのか。』 当然の疑問よね。答えられれば答えたいけど。」
「答えは後でいい。ダックスが戻って嬉しいよ。」
「ほんとに? 涙が出そうだわ。……涙もろくなっちゃって。エモニー※1の影響よ。多分そうだと思うわ。…やだ、ジェイク!」
笑うジェイク。「やあ。」
エズリはジェイクを見上げた。「…背が伸びたわね。私が小さいの? …私、ホストになんてなりたくなかったのに。」
ジェイク:「じゃあ何で合体したの?」
「成り行きなの。」
ジョセフ※2:「とんだ成り行きだ。」
「私が乗ってたデスティニー※3が、共生生物ダックスをトリルへ運んでたの。でもその途中で、容態が悪化して、すぐホストと合体させる必要が出て…」
シスコ:「トリルは君だけだった。」
うなずくエズリ。「手術台に横たわって目覚めると、全くの別人になってたの。8人の人生を知ってる。もう全然わけがわからなくて。普通合体の前には、何年も準備期間があるのよ。なのに私は、トリル人でもない医者から 15分レクチャーを受けただけ…」
シスコ:「事情が飲み込めてきた。座って。」
エズリは椅子に座った。「こうしてあなたと会えただけで、どんなに安心したか。」
シスコ:「共生生物研究所はどうしたんだ。力になってくれなかったのか?」
「合体審査理事会の人とは何度か会ったわ。」
「それで?」
「本を渡されたのと、カウンセリング。でも、合体した後ではもうあまりできることはないって言ってたわ。両親や友達や船の仲間も、私を他人みたいに見るの。だけど、私も自分で自分がわからないんだから無理ない。それで休暇を取ってここまで来たの。…今の私を助けられるのは、あなたしかいない。」
「何でもするよ。…と言いたいところだが、実はタイリーへ発つんだ。」
エズリも立ち上がる。「いいわ、私も行く。」
ジェイク:「…旅の…目的も聞かずに?」
「関係ないわ。いつ発つの?」
シスコ:「今日だ。」
「決まり! まるで昔みたいね。…ちょっと違うけど。」


※1: エモニー・ダックス Emony Dax
共生生物ダックスの 3番目のホスト。女性の体操選手。DS9第71話 "Facets" 「クルゾンの秘密」など

※2: ジョセフ・シスコ Joseph Sisko
(ブロック・ピーターズ Brock Peters) 前話 "Image in the Sand" 「砂漠からの呼び声」に引き続き登場。声:城山堅

※3: U.S.S.デスティニー U.S.S. Destiny
クラス・番号不明。吹き替えでは「船」

・本編
DS9 にドッキングしているバード・オブ・プレイ、ロタラン。
クリンゴン語で唱えるウォーフ。「ジャッジア・ダックス…スト・ヴォ・コー…」 クリンゴンの服を着ている。マートク※4、オブライエン、ベシアたちも、ろうそくが灯された部屋で立っている。
ウォーフはナイフを手のひらに近づける。
その時、クワークの声が響いた。「クワーク、ケルダーの息子!」 入ってきたクワークを見るウォーフたち。「タイミング悪かったか?」
オブライエン:「何で来たんだ。」
「あんたらと同じさ。俺もこの任務に志願するぞ。」
マートク:「なぜだ。お前はバーテンダーで、戦士じゃない。」
「そうだ。だがジャッジアが好きだったんだ。ここの誰よりも一番にな。…まあ 2番手か 3番手か、ジャッジアがスト・ヴォ・コーに行けるように、俺も命を懸けて協力するぜ。」
「ああ…お前の中にもクリンゴンがいるらしいな。」 クワークの背中を叩くマートク。
「そこまではどうかね。そんで? そのナイフは何だ?」
「血で誓うんだ。死を恐れはしないという…証にな。」 マートクは自分の手を切った。
「さっきの言葉じゃダメか?」
「クワーク!」
クリンゴン人に手を押さえられ、マートクがナイフで切りつけた。叫ぶクワーク。「アアー! おい、痛いよ…」
オブライエン:「痛いものなんだよ。」
「おお…。」
再びクリンゴン語で唱えるウォーフ。「…バトラフ…」 手を切り、血がしたたる。

タイリーへ向かうランナバウト。
エズリ:「本当に恥ずかしいわ。」
ハイポスプレーを打つシスコ。「気にするな。君のせいじゃない。」
エズリ:「私は艦隊士官なのよ。なのに宇宙酔いするだなんて。共生生物と合体してから、ワープの時、ちょっと吐き気がするの。」
ジェイク:「…ちょっとね。」
ジョセフ:「それよりもだ、コントロールパネルが無人になってる。頼むよう、誰でもいいからパイロットの席に座ってくれたら、わしも安心できるんだがねえ。コンピューターを信じないわけじゃないがね。」
シスコは席についた。
ジェイク:「人間の方がいいんだよね。」
ジョセフ:「横になったらどうだ。」
エズリ:「いいえ、もう大丈夫です。」
「ふむ、じゃ、わしはそろそろ寝る。」 コクピットを離れるジョセフ。
ジェイク:「ほんとに大丈夫?」
エズリ:「うん。…トライアスのことが頭を離れなくて。」
「トライアスって、前のホストの一人だよね。」
「シャトルの事故で死んだの。衝突前の最期の何秒かを覚えてる。…こんなことじゃ艦隊でやっていけないわ。…私を連れてきてよかった?」 エズリは立ち上がり、レプリケーターのところへ行く。
後を追うジェイク。「よかったよ。僕はね。君が来て、父さん少し元気になったみたいだから。」
エズリは注文した。「アイス・ラクタジーノ。お父さんのことが心配なのね。でも大丈夫よ。」
ジェイク:「…何でわかるの?」
「ずっと昔から知ってるから。それに、私の専門分野なのよ。カウンセラーなの。ま、ほんとはまだ助手なんだけど。」
「…セラピストなの?」
「そんなに驚くこと?」
「あ…ちょっと。」
「私いつもはもう少し、しっかりしてるのよ。合体前は将来有望な少尉で通ってたんだから。」 ラクタジーノを口にしたが、すぐに咳き込むエズリ。「ひどい味! ラクタジーノって嫌い。」
「…じゃ、何で頼んだの。」
「クルゾンが…好きだったから。」
「うん、ジャッジアもね。」
「私は嫌い。…昔の習慣をコントロールしなきゃ。」
グラスを受け取るジェイク。「ああ。」

DS9。
ロス※5:「ロミュランの件は私も腹に据えかねている。彼らがデルナに武器配備する権利はない。」
キラ:「同じ見解のようでホッとしました。」
「既に連邦から、ロミュラン上院議会に宛てて、抗議文書を送ってる。」
「なるほど。次はどうするんです。」
「我々の抗議に、向こうも抗議文を送ってきたよ。駆け引きだ。」
「質問に答えて頂いてません。」
「…わからんが、最終的にはロミュランも武装解除するさ。」
「いつです? 数日後、それとも数ヶ月後ですか?」
「時期までは特定できん!」
「提督も政治家の口ぶりですねえ。」
「そうかもしれん。だがそれが現実だ。ベイジョー単独でロミュランを追い出すのは無理だ。助けなしにはな。そして連邦は応援を出す気はない、今はだ。わかったか?」
「戦略上、ロミュランの方が重要だって判断ですね。」
「手厳しい言い方だな。」
「それが現実でしょ?」
「力になりたいが、私も手を縛られてる…」
「でも、私の手は…自由です。」
「どういう意味だ。」
「ロミュランの軍事施設はまだ使える状態じゃありません。発射シークエンサーが到着するのを待っているようです。それを私たちが阻止してみせます。」
「どうやって。」
「デルナを空域封鎖します。」
「そんなことをすれば、戦闘は避けられないぞ。勝ち目のない戦いだ。」 司令官室を出て行くロス。

ランナバウトは、惑星タイリーに到着した。
シスコ:「軌道に乗った。地上への転送準備。」
ジェイク:「ここからスキャナーで発光体探せば?」
エズリ:「待機中のイオンが多すぎて無理なの。センサーが干渉受けるから。」
シスコ:「父さんはここで我々を待っててもいいんだよ。」
ジョセフ:「お楽しみを見逃せって? 冗談じゃない。」
「だったら飲料水※6だけは十分もってってくれ。お前たちも同じだ。下は砂漠だ。」
シスコは女性の声を聞く。『ドクター・ワイコフ※7、隔離病棟 4号室へお願いします。ドクター・ワイコフ、隔離病棟 4号室へお願いします。』
周りを見るシスコ。「今の聞こえたか。」
エズリ:「…今のって?」
「……いやいい。」

地表へ転送される 4人。
皆フードを被り、シスコとエズリは白い制服も着用している。
周りを調べるエズリ。「本当にこの辺りなの? トリコーダーには反応ないわ。」
シスコ:「どこかに必ずあるはずだ。だから預言者は私をここへ送った。」
「どっちとかヒントはくれたの?」
シスコはおもむろに指さした。「あっちだ。」
ジェイク:「ああ…預言者のお告げらしい。」
エズリ:「聞き違ってないといいけど。」
4人は歩き始める。


※4: マートク将軍 General Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) 前話 "Image in the Sand" 「砂漠からの呼び声」に引き続き登場。声:大山高男

※5: ウィリアム・ロス提督 Admiral William Ross
(Barry Jenner) 前話 "Image in the Sand" 「砂漠からの呼び声」に引き続き登場。声:石波義人

※6: 飲料水パック water pack

※7: Dr. Wykoff

ロタランは遮蔽状態に入った。
艦長席に座っているマートク。
オブライエン:「接近すれば恒星に電磁パルスを撃ち込める。」
クワーク:「恒星? 造船所を破壊するんじゃないのか?」
「そうだ。」
「チーフの言ってることわかるか?」
ベシア:「完璧に。」
「だったら説明しろよ。」
ウォーフ:「熱く溶けた恒星の中心に向かって飛んでいくんだ。船が彗星のように炎を吹き上げるまでな。」
ベシア:「そこではちょっと、どうかな。」
オブライエン:「恒星のプラズマ放射※8を起こせる距離でいいんだ。その爆発で、1億キロ以内にあるものは全部焼き尽くされる。」
マートク:「造船所も含めてな。」
ウォーフ:「スト・ヴォ・コーの門を照らす、まばゆい壮大な炎の嵐になるだろう。それでジャッジアを迎え入れてもらえる。」
クワーク:「愛の力は恐ろしいねえ。」
ウォーフはクワークを見た。
クワーク:「今の見たか?」
オブライエン:「…何を。」
「俺をにらんだ。」
ベシア:「いつものことだろ?」
「だからムカツくんだよ! 俺たちはジャッジアをスト・ヴォ・コーへ送るために来てるんだ。いくらウォーフといえども、少しぐらいは…感謝したっていいんじゃないか? …ありがとうも言えないのかね。」
「ありがとう。」
「せっかくだが、あいつから聞きたいんだ。」
オブライエン:「やめろ、クワーク。」
「何で? たった一言言うのがそんなに難しいか?」
クワークに近づいたウォーフは、首元をつかんだ。「うるさいぞ!」
クワーク:「確かに一言だ。期待してたのと違うがな。」
「…なぜお前たちに感謝する必要がある。お前たちには何の恩もない。ジャッジアをスト・ヴォ・コーへ送るために来ただと? 自分がジャッジアの大切な友だったと思いたいだけだ。自己満足だ。だがお前たちの中に、彼女にふさわしい者などいやしない。どんな女だったかわかってもいない! …お前の方こそ俺に感謝すべきだ、フェレンギ。この任務に同行することを、許してやったんだからな。」 ブリッジを出て行くウォーフ。
オブライエンはクワークを叩いた。

シスコと共に荒野を歩くエズリ。「近づいてると思う?」
シスコ:「さあ、わからんな。」
「方向としては合ってるの?」
「だといい。」
「オードリッド※9は散歩好きで、砂漠じゃなくて森のね。木に囲まれた谷、そよ風に湧き水に…」
「ダックス、何が言いたいんだ。」
「ずっとかなり速いペースで歩いてるわ。お父さんとジェイクを少し休ませてあげた方がいいんじゃない?」
「休みたい者がいればシャトル※10へ戻ればいいんだ。」
「離れるのは良くないわ。」
シスコは後ろを振り返り、大声で尋ねた。「おい、父さん! そっちの具合はどう?」
ジェイクに付き添われて歩くジョセフ。「上々だ!」 息切れする。
シスコは再び歩き出した。

カーデシア・プライム。
宙図を見るレガート・ダマール※11。「敵の前線を間もなく突破できる。その時には、連邦・ロミュラン同盟をカーデシア領域から叩き出してやる。…カナールのお代わりは?」
隣に女性のカーデシア人がいる。「お願い。」
カナールを注ぐダマール。「勝利に。全ての前線で。」
ウェイユン※12が戻ってきた。「ダマール、あなた…」 言葉を止める。
ダマール:「ウェイユン。こちらシアナ※13。レガート・ホヴァス※14の晩餐会で知り合ったんだ。」
「ダマール。大切な話があるんですけどねえ。あなたのそのお相手は、聞きたくないでしょう。」
「どうしてだ。」
「聞いてしまったら、処刑されることになりますから。」
シアナ:「私もう帰らないと。」
シアナの手を取るダマール。「じゃあ今夜な。」
ウェイユンを一瞥し、シアナは出て行った。
ウェイユン:「何と感じのいい人だ。さて…モナック造船所の建造量を上げることが、絶対命令です。チントカ星系奪還に戦闘機がもっと必要ですからねえ。…ダマール、聞いてるんですか。」 コンピューターに造船所の図が表示された。
ダマール:「…建造量だろ、聞こえたよ。どの程度だ?」
「15%が理想でしょう。」
「そいつは難しいな。」
「あなたなら何とかしてくれると、信じてますよ。」
またカナールを飲むダマールを、ウェイユンは見つめた。

DS9。
オドー:「空域封鎖? ハ、何隻で封鎖するつもりです?」
キラ:「通常エンジンの船※15 12隻。今政府議会が出せるのはそれだけなの。」
「その 12隻でロミュランのウォーバード一隻でも止められると、本気で思ってるわけじゃないでしょうね?」
「ロス提督と同じ口ぶり。」
「ふーん、あなたと長く幸せな関係が続くのを願ってたんですが、短く過激な方でよしとするしかないようですね。」
ソファーに座り、オドーに身を任せるキラ。「それどういう意味?」
オドー:「空域封鎖の指揮は、あなたが執るつもりなんでしょ?」
「そうよ?」
「私も一緒につき合います。」
「…無理しなくていいわ。」
「いや、そうしたいんです。」
オドーの手にキスするキラ。「だからって私たち、墓碑銘を書くにはまだ早いわよ。」
オドー:「だったらまあ、ロミュランの第一波が空域封鎖を突破する時まで、待ちましょうか。」
「大丈夫。私だってロミュランのウォーバード艦隊と一戦交えるつもりは、さらさらないわ。」
「じゃあハッタリですか。」
「ああ…もしベイジョーを攻撃すれば、ロミュランも連邦との同盟関係を危うくするわ。そんなリスクは冒さないと思う。」
「ハッタリだと見抜かれないよう、願うしかありません。」

砂漠を歩くシスコたち。坂を登る。
ジョセフに尋ねるジェイク。「おじいちゃん、本当にシャトルに戻らなくていいの?」
ジョセフ:「一緒にここまで来た。だから帰るのも一緒だ。ベンに借りがある。」

山が続く。
倒れたジョセフを支えるジェイク。「つかまって、大丈夫?」

2つの太陽の光が降り注ぐ。
横になったシスコは、荷物から野球ボールを取り出した。スコップも持ち、更に歩く。
追いついたエズリは、シスコの荷物から飲料水パックを取り出した。後を追う。

遅れているジョセフとジェイク。先は長い。
ジェイク:「行くよ。」

シスコにはまた声が聞こえてきた。大きくなっている。『ドクター・ワイコフ。隔離病棟 4号室へ、至急お願いします。4号室へ、お願いします。ドクター・ワイコフ、ドクター・ワイコフ。隔離病棟 4号室へ、至急お願いします。』
追いつくエズリ。「ベンジャミン。ベンジャミン。ここなの?」
しきりにボールを触るシスコ。「恐らくね。」
エズリ:「確証は?」
シスコは何も言わない。
エズリ:「それじゃ困るじゃない。ベン?」
シスコのボールを取り上げたエズリは、前に向かって放り投げた。砂の上に落ちる。
エズリ:「ベン、聞いてるの?」

シスコが弾いているピアノの上に置いてあった野球ボールが転がり、床に落ちた。

シスコは指さした。「あそこだ。」
エズリ:「どこ?」
「あそこを掘るぞ。」 ボールの落ちた場所に駆け寄るシスコ。
エズリ:「どうしてそこ? 適当に投げただけなのに。」
シスコはスコップで掘り始める。
エズリ:「ベン、私の意識が混乱してるの? あなたが変なの?」
無言で掘り続けるシスコ。


※8: solar plasma ejection

※9: オードリッド・ダックス Audrid Dax
共生生物ダックスの 4番目のホスト。女性で、トリル合体審査理事長。DS9第71話 "Facets" 「クルゾンの秘密」など

※10: 前回 (第148話 "Time's Orphan" 「時の迷い子」) では「ランナバウト」でしたが、また訳が戻っています

※11: Damar
(ケイシー・ビッグス Casey Biggs) 前話 "Image in the Sand" 「砂漠からの呼び声」に引き続き登場。声:古田信幸

※12: Weyoun
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) 前話 "Image in the Sand" 「砂漠からの呼び声」に引き続き登場。声:内田直哉

※13: Siana
(Lori Lively) 声:斉藤恵理

※14: Legate Hovas

※15: ベイジョー・インパルス船 Bajoran impulse ship
ベイジョー船籍の亜光速戦闘船。DS9第22話 "The Circle" 「帰ってきた英雄 パート2」など

ベイジョーの衛星デルナの周りに、多数のベイジョー船が集合している。
キラ:『艦長日誌、宇宙暦 52152.6。デルナ周辺を空域封鎖した。今のところ、突破しようとするロミュラン船はいない。』
キラはパッドを見た。「『燃える接吻※16』? ロマンス小説?」
オドー:「ふーん、それでも探偵ものです。気に入ると思いまして。」
「嬉しいけど、今読書に適当な時期とは言えないんじゃない?」
「そうかもしれませんが、あなたは待つのが大嫌いでしょ? マイク・ハマー※17だったら…イライラを解消してくれると思いましてね。」
「ふーん、どんな風に?」
「最高にタフな男だし、あなたと同じぐらい待つのが嫌いですから。」
「読む前から気に入った。」 笑う二人。
船内のベイジョー人※18が報告する。「中佐、ディープ・スペース・ナインから最優先の通信が入っています。ロス提督です。」
キラ:「つないで。」
ロス:『中佐、今ロミュランのウォーバードが 14隻、デルナ星へ向かってるそうだ。』
ロスの隣にいるクレタク議員※19。『医薬品を補給する必要があり、8時間後に到着します。』
キラ:「クレタク議員、ロミュランはいつからウォーバードを医薬品の輸送に使ってるんです?」
『着陸に問題はありませんね?』
「封鎖を突破すれば、無事着陸はできないでしょうね。」
ロス:『挑発では事態は収拾しない。衝突を起こすんじゃなく、避けたいんだと思っていたが?』
「ロミュランの戦艦も、あまり平和的じゃないと思いますよ?」
『私も好ましい状況とは思っていないが、この 2、3時間で何らかの妥協案を出さねばならない。でないとまた大勢死ぬことになる。』
「そちらでお好きなだけ妥協案を考えて下さい。とにかく…封鎖を突破しようとする船は、全て…攻撃対象ですから。」
クレタク:『中佐? 時代遅れの通常エンジンの船を寄せ集めて、ウォーバードに対抗できると本気で思っているんですか?』
「…それはそのうちわかることです。交信終了。」 映像が消える。「上手くやれた?」
オドー:「マイク・ハマーも脱帽です。」

クレタクは尋ねた。「ご心配ですか?」
ロス:「議員はどうです。」
「特には。中佐は勇敢ですが、馬鹿ではありません。あれはハッタリだわ。」
ロスはクレタクを見た。

ジョセフとジェイクがやってきた。
必死に砂を掘るシスコ。
ジェイク:「こっち。影がある。」 二人は座った。
エズリは荷物からパックを渡した。「お水。」
ジェイク:「ああ。」
口にするジョセフ。「ああ…ああ。」
ジェイク:「ゆっくりね。」
声を聞くシスコ。『ドクター・ワイコフ、隔離病棟 4号室へ。ドクター・ワイコフ、隔離病棟 4号室へ。』
シスコ:「早く行きゃいい。」
エズリ:「何?」
「ドクター・ワイコフさ。隔離病棟へ呼ばれてるんだ。」
「…あなた本当にどうかしてるわ。」

マートクは尋ねた。「俺はどうなんだ、ウォーフ。俺も一緒に来ない方がよかったのか?」
ウォーフ:「いえ、そんなことは言っていません。あなたは違います。クリンゴン人ですし、ジャッジアはマートク家の一員だった。」
「だが彼らもジャッジアの友人だ。同席が彼女の名誉となる。」
話しながらブリッジに戻るクワーク。「冗談じゃないねえ。朝飯にガフ※20、昼飯にガフ、晩飯にガフ。いくらクリンゴンのメニューでも、もっとバリエーションが必要だろう。」
一緒に戻ったオブライエン。「ガフに文句があるのは構わんさ。だが食堂に座って 10人以上のクリンゴンに囲まれてる時に言うのはやめてくれ。」
クワーク:「はいはい、わかりましたよ。」
ベシア:「頼む。」
「だけどクリンゴンも何人かはうなずいてる奴がいたぜえ。」
ベシアはウォーフが近づいていることに気づいた。「待った。ウォーフ、さっきの食堂の件聞いて怒ってるなら…」
ウォーフ:「いや、何も聞いていない。」
クワーク:「じゃ何だ? また嫌みの一つも思いついたか?」
オブライエンとベシアは、クワークを見る。
ウォーフ:「君らに謝罪したい。」
オブライエンとベシアは、ウォーフを見た。
クワーク:「聞いてやる。」
ウォーフ:「ジャッジアが大事な友人だったのはわかってる。逆も同じだ。…二人でその日の出来事をよく話したが、君らのことをしょっちゅう楽しげに話してた。クワークの企みの数々を延々と事細かに聞かされたこともあった。いつも君らの話が出た。…ジャッジアと私が二人だけの時でも、まるで…君らが一緒にいるようだった。」
「なるほど、ひがんでたわけか。嫉妬してたんだな。」
ベシア:「クワーク、黙っててくれよ! 頼むから!」
ウォーフ:「ジャッジアは私の妻で、パーマッカイだった。彼女の愛情を独占しておきたかった。」
オブライエン:「だから俺たちには来て欲しくなかったのか。自分一人でジャッジアをスト・ヴォ・コーへ送りたかったんだな。」
うなずくウォーフ。「私が妻にしてやれる、最期の行為だ。」
クワークはウォーフに近づいた。「それで?」
ウォーフ:「それ以上言うことはない。…ただ、君らが来てくれてよかった。」 持ち場に戻る。
オブライエン:「ウォーフが人に謝るの聞いたの初めてだぞ。」
クワーク:「あんたは単純でいいなあ。俺はもっと衝撃的な話を…期待してた。」
ベシア:「例えばどんな。」
「だからだなあ、ジャッジアが寝言で俺の名前を呼んだだとか、あとは…子供に俺の名前をつけたがったとか。」
マートク:「チーフ。モナック造船所だ。」
スクリーンに、惑星軌道上にあるドミニオンの巨大な造船所※21がいくつも映し出された。
オブライエン:「壮観だな。」
マートク:「ターゲットをスクリーンへ。」
恒星が映される。
クワークは見つめた。「こいつにどこまで近づくってんだよう。」
笑うマートク。「限界までだ。」
ウォーフ:「望むところです。」

砂を掘るシスコ。
スコップが何かに当たった音がした。音に気づいたジョセフ。
エズリも見つめている。
ジェイクが近づいた。「父さん、あった? 見つけたの?」
シスコ:「下がってろ。」 発光体の箱が出てきた。「選ばれし者の、発光体だ。」
エズリ:「…どうするつもり?」
「開けるのさ。」
呼びかける声を聞くシスコ。『ラッセルさん。』
シスコは、鉛筆を手にしていた。
また呼びかけ。『ラッセルさん、それを置いて。』
エズリ:「ベンジャミン、どうかしたの? ベンジャミン?」

壁に書かれたたくさんの文章。鉛筆を持った男。
同じ声が聞こえる。「鉛筆を置いて下さい。」
ベニー・ラッセル※22は病室にいた。
医者のワイコフ※23は言った。「置くんです、ラッセルさん。」
ラッセル:「でも話を書き終わってないんだ。シスコが選ばれし者の発光体を見つけた。でもまだ箱を開けていない。」


※16: 燃える接吻 (くちづけ) Kiss Me, Deadly
1952年に出版。ミッキー・スピレイン(Mickey Spillane) 作。邦訳はハヤカワ文庫から発売

※17: Mike Hammer

※18: ベイジョー人クルー Bajoran crewman
(Cuanhtemoc Sanchez) 声:土田大

※19: Senator Cretak
(ミーガン・コール Megan Cole) 声:定岡小百合

※20: gagh
クリンゴンの料理。TNG第34話 "A Matter of Honor" 「錯綜した美学」など

※21: この造船所は、Star Trek: The Magazine 2001年11月号 P.78〜81 で特集されています

※22: Benny Russell
1950年代の SF作家。DS9第137話 "Far Beyond the Stars" 「夢、遥かなる地にて」より

※23: Dr. Wykoff
(ケイシー・ビッグス Casey Biggs) =ダマール 声:古田信幸

ワイコフは近づいた。「ラッセルさん、壁には書かない約束でしょ?」
ラッセル:「頼んでも紙をくれない。」
「書くのをやめると話し合って決めましたね。体を休めないと。」
「そんな必要ない。それより書き終えたいんだ!」
「経過は良かったんですよ。かなり良くなってた。がんばっていたのに。」
「…うちへ帰して下さい。私は病気じゃない。」
「回復したらすぐ退院できます。」
「どこも悪くない。」
「そうですか? 壁に字を書く。普通じゃないでしょ。」
「なら、タイプライターが欲しい。」
「聞いてないなあ。書くのはやめなきゃ、ベニー。危険すぎます。」
「危険って、一体誰にとって!」
「あなたにです。あなたが作り出した世界は…ディープ・スペース・ナインにシスコ艦長にキラは、全部…幻想なんです。」
「私には現実だ! …もし私が、この話を書き終えないと、もし…もしシスコ大佐が発光体の箱を開けないと、預言者たちとコンタクトできない!」 続きを書こうとするラッセル。
「やめて下さい、ベニー。預言者なんていないんですよ。あなたの想像の産物だ。忘れるんです。病気を治すためだ。その鉛筆を、こっちに渡して…」
「でも書かないと。」
「もう終わりだ。忘れるんです。」

箱に手をかけたまま、動かないシスコに話しかけるエズリ。「ベンジャミン? 何してるの、開けたら? そのために来たんでしょう?」
ジェイク:「聞こえてないよ。」
ジェイクは荷物を置き、発光体の箱に触れた。
その瞬間エネルギーが走り、ジェイクの体は後ろに何メートルも弾き飛ばされた。転がる。
駆け寄るエズリ。「ジェイク!」
シスコは動かない。
エズリ:「ジェイク、大丈夫?」
起きあがるジェイク。「うん。」

ウォーバード艦隊が近づく。
キラ:『艦長日誌、補足。クレタク議員は 8時間後にウォーバードが到着すると言ったが…間違っていた。2時間早い。』 デルナへ向かうウォーバード。
オドー:「8分後に射程距離に入ります。」
キラ:「チャンネル開いて。」
ベイジョー人:「どうぞ。」
「こちらベイジョー政府軍、キラ中佐。デルナ星への転送可能域に入る船があれば、敵対行為とみなし、即時攻撃します。」
オドー:「……返事がない。」
「…キラよりベイジョー全艦。戦闘配置につけ。」
ベイジョー人:「中佐、ロス提督から通信が入っています。」
「つないで。」
ロス:『中佐、もう一度だけ言う。空域封鎖を解除するんだ。』
「それはできないのはおわかりでしょ?」
クレタク:『医薬品を届けるため、私には軍事力を行使する権限もあることを、忘れないでもらいたいですね。…とはいえ、まだ交渉で解決する余地もないわけではありません。』
「ベイジョー政府は、既に立場を明確にしたはずよ。ロミュランがデルナへ武器をもちこむことに関しては、交渉の余地はないわ。」
ロス:『よさないか、ロミュラン船を攻撃すれば、この戦争は負けだ。ドミニオンを破るには、ロミュランと手を組むしかない。』
クレタク:『それに、中佐が無駄死にするのは見たくないですね。』
キラ:「ご心配頂いて恐縮です。」 スクリーンに近づく。「でもまだ死ぬ気はないわ。交信終了。」
オドー:「…生きていられるのは後、6分ですかな。」

ロスは聞いた。「中佐が引くと思いますか。」
クレタク:「それしかないわ。私は引きません。」
ロスはため息をついた。

スクリーンに大きく映し出された恒星。
クワーク:「オーブンから出してくれえ。焼け死ぬ。」
オブライエン:「将軍、見つけました。恒星の赤道付近の磁場が不安定です。」
ベシア:「素晴らしい。すぐプラズマ放射させて引き上げよう。」
「そう簡単じゃない。プラズマ放射が確実に造船所に届いて破壊できるようにしなきゃならない。」
マートク:「だからどうするんだ。」
ウォーフ:「もっと近づかないと。もっと近くに!」
オブライエン:「そうです。」
クワーク:「…スト・ヴォ・コー。待ってろよ。」

ローラーにつけられる、白いペンキ。
それを手に取るワイコフ。「手にとって。」
ラッセル:「どうして。」
「普通の人にはこんな機会はないんです。過ちを消し去れるんですよ?」
「彼らの物語を消せって?」
「ただの言葉です。」
笑い出すラッセル。
ワイコフ:「下らないただの言葉の羅列だ! 消すんです。ここを出て、自由になれる。」
ラッセルは笑いながらローラーを手にした。
ワイコフ:「自分自身を、救い出すんだ。」
笑うのをやめるラッセル。ワイコフが見つめるなか、ローラーを文字に近づけた。
ラッセルの手が震える。

シスコは発光体の箱に砂をかける。
異常に気づくエズリ。「ベン?」
シスコ:「隠してしまうんだ。埋めないと!」
「何してるの!」
止めようとするエズリを押しのけるシスコ。箱を埋めていく。



壁の物語。
ワイコフ:「あなた自身のためです。消してしまいなさい。あなたが幻覚に壊される前に。」
壁にローラーを近づけるラッセル。

シスコは埋め続ける。
エズリ:「ベン、やめて!」
上着を脱ぐシスコ。

デルナに近づくウォーバード艦隊。
オドー:「ロミュランが攻撃準備に入った。ハッタリが見破られたらしい。」
キラ:「補助パワーをシールド前方へ。キラより全艦へ、そのまま待機。」
「中佐、引くつもりなら今しかないですよ。」
無言のキラ。

クレタクと共にいるロス。「中佐、潮時だぞ。」

燃えたぎる恒星。
オブライエン:「あ、くそう。準備 OK です。」
上着を脱いだクワーク。
マートク:「遮蔽解除。発射準備だ。ウォーフの合図で撃て。」
遮蔽を解いたロタランは、更に恒星に近づく。
ウォーフは命じた。「発射!」
ロタランの下部からパルスが発射される。それは恒星の一個所を狙った。
恒星の状況を確認するが、何も変化がない。
マートク:「…ああ、だめだったか。」
クワーク:「やるだけ、やったさ。帰ろうぜ。」
ウォーフ:「だめだ。やり遂げるまでは戻らない。」
オブライエン:「磁気勾配を上げなきゃだめだ。ディフレクターを調整し直す。」
ベシア:「その暇があるかなあ。ジェムハダー戦闘機、3機接近。方位 0-0-5、マーク 1-9-0。」
マートク:「チーフ、作業を急いでくれ。」
ジェムハダー船隊がロタランを追う。

シスコはスコップを振り上げた。
止めるエズリ。「だめ!」
シスコ:「…邪魔をするな!」
「ベン、預言者たちに会いに来たんでしょ、忘れた?」
「どけい!」
「いいえ、嫌よ。正しい道に戻すってジャッジアに約束した。今がチャンスなのよ。箱を開けて、ベン。」
シスコはエズリを押しのけた。振り上げた手が震える。

ペンキのついたローラー。

シスコはスコップを落とした。

床に落ちるローラー。
ワイコフが近づく。「やめろ!」
ラッセルはワイコフたち医者を殴り倒した。
鉛筆を取り、続きを書く。「箱を、開けた。」

発光体の箱を開けるシスコ。
輝く発光体。そして青い光の筋が、空に向かって一直線に放たれる。
預言者は宇宙へと消えた。

心臓の鼓動。シスコは光の中にいた。

DS9 のすぐそばを走り抜ける青い光。
宇宙空間の一点に注がれる。
そしてワームホールが開いた。赤い光が一瞬見える。

デルナ。
オドー:「中佐、矛を収めますか?」
ベイジョー人:「中佐、ディープ・スペース・ナインから通信が入っています。ワームホールが、戻りました。」
席を立つキラ。「スクリーンへ。」
元通りになったワームホールを見る。
オドー:「ネリス。」

ワームホールから赤い光のパー・レイスが出てきた。
それは空間で爆発し、飛散した。

キラは命じる。「ベイジョー船、全艦につないで。現在位置を保ち、私の合図で攻撃開始。ターゲットロック。」
ベイジョー人:「ターゲットロック。」
「来て後悔してない?」
オドー:「これは逃せません。」

静かに話すクレタク。「中佐のもち時間もなくなりつつあるわ。」
無言のロス。

ジェムハダー船の攻撃を受けるロタラン。
ブリッジで爆発が起こる。
マートク:「…ウォーフ、輝かしい戦いになると約束したろ!」
ウォーフ:「これでこそ本望です。」
オブライエン:「ああ…再攻撃準備 OK。」
クワーク:「何グズグズしてんだ、撃てよ!」
マートク:「ああ、いくぞ、チーフ。撃て!」
再び恒星に近づいたロタランは、パルスを発射した。
ベシア:「うまくいった!」
クワーク:「やった! もう、帰れるか?」
ウォーフ:「通常エンジン全開!」
恒星の表面から、一気にプラズマ放射が広がる。
その炎に巻き込まれていくジェムハダー戦闘機。3機とも壊滅した。
放射の先を行くロタラン。
プラズマはモナック4 の造船所に達し、建造中のカーデシア艦を含め、巨大な施設はもろくも崩れ去っていく。
マートク:「カプラー!」 歓声が上がる。
クワーク:「ジャッジアが喜んでくれるといいんだけどな。」
ベシア:「きっと喜んでるよ。」
手を差し出すマートク。握り合うクワーク。
ウォーフはクリンゴン語の詠唱を始めた。「…スト・ヴォ・コー。ジャッジア・ダックス…」 目を閉じ、静かに唱える。「…スト・ヴォ・コー。」
開かれた目は、喜びに満ちていた。

ウォーバードは反転していく。
オドー:「ネリス。撤退していきます。」
ベイジョー人:「中佐、ロス提督から通信です。」
キラ:「つないで。」
ロス:『一息ついていいぞ、君の勝ちだ。議員がデルナから武器を撤去すると同意した。』
「なぜ気が変わったんです?」
『議員がやらないなら私がやると、そう言った。』
「提督の気が変わったわけは?」
『…君だよ。君とはポーカーはしたくないもんだ。』
通信を終える。
微笑むキラ。オドーを見る。

光の中にいるシスコ。「出てきて下さい。あなたたちと話したい。」
シスコはピアノを弾く。落ちたボールを拾ったのは、女性の預言者。「シスコは、今回の務めを果たした。」
その顔を知っていたシスコ。「サラ※24。」
預言者サラ:「コスト・アモージャン※25は脅威ではなくなった。」
「パー・レイスのことか。ワームホールから消えたのか。」
「私が追放した。」
「私をタイリーへよこしたのは、あなたを…発光体から解放するために。」
「コスト・アモージャンは幻覚を見せ、お前を止めようとしたが、お前は惑わなかった。お前は、定めをまっとうしたのだ。」
「定めを? もう死ぬみたいな言い方ですね。」
「シスコにはまだ多くの務めが残っている。」
「どんなものかは聞けないんでしょうね。」
シスコは貝を洗っていた。
預言者サラ:「選ばれし者は有限で、一面的だ。」
シスコ:「一面的でも、答えが欲しいんです。」
「シスコは詮索しすぎる。」
「あなたサラ・シスコですか? 私の母親の。」
「…サラ・シスコは有限だった。一時的に、私と共存した。」
厨房にいて、ボールを持っているシスコ。「母の体を乗っ取って、父と結婚させるようにしたんだ。そしてこの私を、産ませた。」
預言者サラ:「シスコが必要だった。」
「そして用済みになって母から離れた。母が父を捨てたのも無理はない。父を選んだのは、あなただからだ。」
「シスコは別の答えを欲しかったようだ。」
次はテラス。
シスコ:「かなりショッキングな事実ですからねえ。私が産まれてきたのは、あなたたちが仕組んだことだった。」
預言者サラ:「シスコの歩む道は困難だ。」
「なぜ私が! なぜ私が選ばれたんですか。」
「お前以外には、あり得ないのだ。」

シスコは発光体の箱を閉じた。大きくため息をつく。
シスコを見ていた 3人。
エズリ:「ベンジャミン?」
笑みを浮かべるシスコ。
エズリ:「あなたすごくいい体験をしたのね。」
シスコ:「いつかみんなに話すよ。」

DS9。
エアロックから出てきたシスコを出迎える、大勢のベイジョー人たち。「…よかった…お帰りなさい…」 制服を着たシスコは、子供を抱き上げた。
ウォーフ:「おかえりなさい、大佐。」
オブライエン:「ほっとしました。」
キラ:「預言者を連れ戻してくれたんですね。」
シスコ:「君らもよくがんばったそうじゃないか。」 うなずき、歩いていく。
シスコの後ろにいたエズリは、声をかけた。「オドー! ネリス、ジュリアン、会えて嬉しいわ。ウォーフ、後で話しましょう。」 そのままプロムナードを進んでいった。
ベシア:「誰だ?」
教えるジェイク。「ダックスだよ。」
ウォーフ:「ダックス?」
「そうなんだ、エズリ・ダックス。信じられないよね。」
「そんなはずがない。」 立ち去るウォーフ。
クワーク:「何か随分…縮んだなあ。」
オドー:「人生ってのは次々と興味深いことが起こるもんだな。」
プロムナードを見渡していたエズリは、DS9 の仲間を見つめた。


※24: サラ・シスコ Sarah Sisko
(Deborah Lacey) 声:羽鳥靖子

※25: Kosst Amojan
ベイジョーの宗教で、大昔に天空の神殿から追放されたパー・レイス、つまり邪悪な者。DS9第146話 "The Reckoning" 「善と悪の叫び」より

・感想
「後編」にはなってないものの、実質的には完全な続き物となるストーリーです。3つの並行型で、それぞれがユーモアを交えながらの魅力的な展開を見せてくれています。ほんとに要素が盛りだくさんで、何に触れればいいのやら…。
当然見所となるのが新キャラのエズリですが、プロローグからジャッジアとは違った魅力を早速披露しています。確かに背の低い方ですが、それを話題にするとは…(笑) 普通の合体トリルとは違う、準備のできていないという点でも、DS9 キャラに多いアウトロー的な要素を備えていますね。
シスコは産まれる前から「選ばれて」いたことがわかったわけですが、なぜそうしたのかは謎のままです。それにしてもベニー・ラッセルの話をここで引っ張ってくるとは…うならされます。


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