イントロダクション
オブライエンとケイコ※1が、寄り添ってベッドで寝ている。 そこへ人形を持ったモリー※2がやってきた。ベッドに飛び乗る。「ねえ、起きて! 時間だよ。」 目を覚ますオブライエン。「ああ…。」 ケイコ:「ああ。ハイ、おはよう。」 モリー:「7時だよ、仕度しなきゃー。」 笑うケイコ。 オブライエン:「…仕度って、何のだ。」 モリー:「ピクニック!」 ケイコ:「ああ…。」 オブライエン:「ピクニックって? 今日だったか?」 モリー:「そう。忘れちゃったのー?」 「ああ、そうか、急いで仕度しなきゃあ…。」 「あたし青いジャンパー着ていく。」 ケイコ:「ああ、そうね。それはいいわね。」 寝室を出て行くモリー。 オブライエン:「あの子もしばらく見ない間に、あんなに大きくなるとは…。」 ケイコ:「人のこと言えない。」 オブライエンのお腹を叩く。 「ああ…。」 「私たちと離れてから、何食べてたの?」 「普通のもんだけど?」 「なら普通の物は終わり。私が戻ったんだから、ちゃんとした物をね。」 「ピクニックから帰ったらにしよう?」 「ダメ。」 キスする二人。 レプリケーターを使って準備するケイコ。 モリー:「ママー。これつけるの手伝って。」 ブレスレットを渡す。 ケイコ:「わかった、いいわよ。」 オブライエン:「日焼け止めはどこ?」 「それならもう入れたわよ。」 ブレスレットをつけてもらったモリーは、写真立てをキラヨシ※3に見せる。「今からここに行くのよ、ヨシ。見て。」 木のそばで写した写真。「この前ゴラーナ※4に行った時、あなたママのお腹にいたのよ。」 オブライエン:「そろそろ出かけよう。シャトルは 20分後だ。」 ネコのチェスター※5が近づく。 モリー:「チェスター連れてっていい?」 ケイコ:「それはどうかしらね。おいていきましょう。」 オブライエン:「迷子になるかも。」 「ほんとにそう思う?」 ケイコはチェスターが乗っていた布を取り上げた。「さ、行きましょ。」 人形を手にするモリー。「おいで、ルーピー※6。」 オブライエンはバスケットの中を見た。「ソーセージなしか?」 青い惑星。 モリー:「大きくなったら何になるか決めたんだ。」 ケイコに髪を解かしてもらっている。 草原の上で横になったオブライエン。「そうか。」 すぐ近くにキラヨシがいる。 モリー:「うん。私、宇宙動物学者になるの。」 「宇宙動物学者? 何だそれ。」 「ほかの惑星の動物を研究する人。」 ケイコ:「チェスターみたいな。」 笑うオブライエン。 モリー:「パパ、またよそ行く時、チェスター連れてっていい?」 オブライエン:「もうお前たちをどこにも行かせない。」 「ほんとに?」 「ああ、本当だ。今までそうしてたのは、ステーションが危なかったからだ。」 「知ってる。」 「これからはずっと一緒だ。」 「本当?」 「約束する。」 「側転できるんだよ。見たい?」 「ああ、見せてくれ。」 モリーは見事な側転を披露した。歓声をあげるオブライエン。拍手するケイコ。 モリーはもう一度回った後、独りで走っていった。 オブライエンはキラヨシに話しかける。「お前は何かできるか? ほーら、どうだ?」 何かしゃべるキラヨシ。「そうだ。お前がやっぱり一番だ。…ほんとの日差しに、綺麗な空気、君と子供たち。…これ以上の幸せはない。」 ケイコ:「さっきあなた、モリーに随分すごい約束したわね。」 「本気だよう?」 「戦争が激しくなって、ステーションが危なくなったら?」 「転任を申し出るよ。もう離ればなれにはならない。」 口づけする二人。 突然モリーの声が響いた。「あー!」 ケイコ:「モリー?」 すぐに声のした方へ走るオブライエン。「モリー!」 また叫び声。 オブライエン:「モリー!」 キラヨシを連れて行くケイコ。 名前を呼ぶオブライエン。「モリー! モリー!」 どこにもいない。 ケイコ:「モリー!」 モリー:「ママ助けてー!」 オブライエン:「モリー!」 声はそばの洞窟の中から聞こえる。「パパー! 助けてー!」 中に入ったオブライエン。「モリー、今行くぞ!」 モリー:「パパー!」 「がんばれ、モリー。離すな。助けてやる。さあ。」 崖のふちにモリーがぶら下がっている。手を伸ばすオブライエン。 モリーの下には、奇妙な赤い池のようなエネルギーフィールドが広がっている。「パパ、助けて。」 オブライエン:「手につかまれ。もう少し。ほら、つかまれ!」 二人の手が触れ合う。 だがモリーのつかまっていた岩が崩れた。 オブライエン:「あっ!」 叫びながら落ちていくモリー。フィールドに飲み込まれ、体が消えた。そしてフィールドも消滅する。 |
※1: ケイコ・オブライエン Keiko O'Brien (ロザリンド・チャオ Rosalind Chao) 植物学者。DS9第110話 "The Bogotten" 「幼き命」以来の登場。声:吉田美保 (継続) ※2: モリー・オブライエン Molly O'Brien (ハナ・ハタエ Hana Hatae) マイルズ&ケイコ・オブライエンの娘。DS9第103話 "The Assignment" 「ケイコのために」以来の登場。声:棚田恵美子 (継続) ※3: キラヨシ・オブライエン Kirayoshi O'Brien オブライエン夫妻の息子で、モリーの弟。DS9第110話 "The Bogotten" 「幼き命」で誕生。「ヨシ」は愛称 ※4: Golana ※5: Chester オスのネコ。DS9第139話 "Honor Among Thieves" 「非情の捜査線」より ※6: Lupi |
本編
洞窟の中では、何人もの宇宙艦隊士官が作業している。 大きな門状の建造物のそばで作業するダックス。 設置された階段を下りてきたキラは、キラヨシを連れたケイコと抱き合った。「ケイコ。」 オブライエンも私服のまま、作業に没頭している。 ダックスに話しかけるキラ。「これが何なのか、まだわからない?」 ため息をつくダックス。「……ある種の時間の入り口※7。クロノトンの痕跡からみると、モリーはどうやら…約300年前に送られた。」 キラ:「ああ…300年前、ここは何だったのかしら。」 「今オドーがベイジョー考古学研究所に連絡を取って調べてる。」 「どうやってモリーを連れ戻すの?」 「まず最初に…この入り口をもう一度開かなきゃ。長い間放置されてて、モリーが入った後は閉じたっきり。…だけど問題は、開け方がわからないってこと。」 「きっとチーフはその方法が見つかるまで、探すのをやめないでしょうね。」 「私もそう思う。」 「…これを開くことができたとして、それから?」 「転送スキャンビームを入り口から送り込み、モリーの DNA を探してロックオンさせる。」 「そして現在に連れ戻す。」 「その予定よ。」 古代の機械を操作していくオブライエン。だが火花を吹いた。「うわー! あー、全く!」 大きな音にキラヨシが泣き出した。 ケイコ:「シー、ほら大丈夫よ。シー、大丈夫。」 オブライエン:「ディファイアントに連れてった方がいい。ここは寒すぎる。」 「いやよ、私ここにいる。」 キラ:「あ…なら私が。」 手を広げる。「さあ、こっち、おいで。」 キラヨシを抱いた。 オブライエン:「心配ないぞ、ヨシ。ほらほら、泣くな。」 ケイコ:「さあ、いいわね、大丈夫よ。」 キラヨシを連れて行くキラ。「行きましょう。」 オブライエンはまた作業に戻った。「手を貸してくれ。いいか。」 倒れた入り口を持ち上げる。 惑星軌道上のディファイアント。 歌を口ずさみながら、キラヨシをあやすキラ。「おお、そうそう。わかってる、わかってる。そうね、そうそう。」 その様子を見ていたオドー。「なついてますね。」 キラ:「わかるみたい。…私のお腹に 5ヶ月いたもの。」 キラヨシを高く上げる。「わかった、どうしたいの? そうね、私もいつか自分の子供が欲しいかな。」 無言になったオドー。「……連絡を取った考古学者の話によりますと、あの入り口を作った文明※8は 2千年前滅亡したそうです。…ということは、落ちたモリーが助かっても…そこには誰もいないわけです。」 キラ:「300年前、あの惑星は全く無人だったということ?」 「…ベイジョーの開拓者が初めて入植したのは、今世紀の初頭です。」 「まだ 8つの子供が、無人の惑星で独りぼっちなのね。可哀想に。」 「運が良ければ落ちて数分後のモリーを、チーフは転送で救い出せるでしょう。あっという間ですよ。」 洞窟を出るケイコ。「マイルズ。不安になってきた。今日一日がんばったけど…少しは前進してるのよね?」 オブライエン:「時間フィールドジェネレーターを変調する方法は見つかった。…上手くいけば、モリーは数時間で戻る。」 二人は座り、寄り添う。 ケイコ:「…モリーはね、ステーションに戻るって話した時からずっとここに来るのを楽しみにしてた。」 首を振り、泣き出す。「あの子どこなの…」 オブライエン:「シー、シー…。ケイコ、大丈夫だ。泣くな。必ず連れ戻す。全てうまくいくよ。」 通信が入った。『ダックスよりオブライエン。』 オブライエン:「どうぞ。」 ダックス:『再設定したパワーコンバーターだけど、起動準備完了よ。』 ケイコ:「何? どういうこと?」 オブライエン:「…モリーが帰れるってことだ!」 ケイコの額にキスする。「行こう!」 立てられた入り口にフィールドが張られている。 機械を操作するオブライエン。「転送インターフェイスは?」 連邦の機械も持ち込まれている。 ダックス:「同期してる。」 オブライエン:「DNA 捕捉センサーは。」 ベシア:「ロックした。」 ダックス:「準備完了。いつでも OK よ。」 オブライエン:「…よし。始めよう。」 音が大きくなってきた。フィールドに乱れが生じる。 ダックス:「フィールドが不安定になってる。」 オブライエン:「パワーが下がってる。」 ダックス:「時間フィールド発生。」 ベシア:「DNA ロック。モリーだ。」 入り口の前に、転送されてくる人物。だが子供ではない。 立ち上がった女性の髪の毛は乱れ、手には木の実のついた枝を持っていた。 近づくケイコ。その女性の腕には、あのブレスレットをはめられていた。 ケイコは言った。「モリー?」 だがモリーは奇声を上げて暴れ始めた。 抑えようとするオブライエン。「大丈夫だ、怖がらなくていい!」 だが手を噛まれてしまう。 ハイポスプレーを打つベシア。モリーは静かになった。 |
※7: ゴラーナ時間の入り口 Golanan time portal ※8: ゴラーナ人 Golanans |
眠っているモリー※9を調べるベシア。「疑いの余地はない。DNA が一致した。間違いなくモリーだ。数値は 18歳だと示してる。」 オブライエン:「…助けるのが 10年遅かった。」 「救い出せただけでも奇跡だよ、マイルズ。」 ケイコ:「ああ…もう一度やったら、まだ小さな子供のモリーを取り戻せないかしら?」 「もしそうしたら、その子は成長してもこのモリーじゃない。この子も存在できないことになる。」 オブライエン:「だけど僕たちのモリーは戻ってくる。」 ケイコ:「この子が私たちのモリーよ。…私たちが一緒に過ごせなかったからって、その 10年をこの子から取り上げる権利は私たちにはない。」 ベシア:「…長い間社会との接触を断ってた。普通の状態にするのは簡単じゃないぞ。言語能力もボロボロ。回復できるかどうかは君たち次第だ。」 「この子私たちを忘れてたわ。」 オブライエン:「怯えててきっと僕たちをよく見なかったんだよ。」 ベシア:「独りで生きていくために、それまでの記憶を遮断してしまった可能性もある。」 ケイコ:「それじゃどうするの?」 「ディープ・スペース・ナインに戻るまで、このままこの娘を眠らせとく。もうシスコ大佐にこの子にあった環境を頼んである。貨物室を改造してくれてるはずだ。目を覚ました時、君たちは近くにいてやってくれ。」 オブライエン:「それからどうなる?」 「こんな状態だ。治療法は何もない。手探りで進んでいくしかないと思う。」 ディファイアントが帰還した DS9。 ウォーフが部屋に戻ると、赤ん坊の声がした。 キラヨシがいる。 ダックス:「見てー! ちっちゃなお客さんよ。さあおいで。」 ウォーフ:「…どういうことだ? 何でこのうちに赤ん坊がいる。」 「つまり…オブライエン夫妻はモリーと過ごさなきゃいけないから、預かってあげたの。」 「今夜君は仕事だと言ってたろ。」 「デノリアス帯※10を通過する彗星の観測だったけど、もしそうなら誰がこの子を見るー?」 「私だ。」 「…いいのよ、私この子といたいの。」 「ジャッジア、君は何週間もその彗星がセンサーレンジに入るの待ってたろ。」 「ああ…ほかにも彗星はある。」 「行け。ヨシは私が見る。」 「ウォーフ、それはとってもありがたい。だけど…あなたは赤ちゃんに向いてない。」 「…アレクサンダーを育てた。」 「それとは違う。あなたが引き取った時、彼は 4つだった。おむつも交換してないし。赤ちゃんは手がかかるのよう? 9人育ててよく知ってる。」 「わかってる。5人の母親で 4人の父親だろ? 私にだって赤ん坊の世話ぐらいできる。」 「できないとは言ってない、ただ…」 「いいから。君は彗星観測に行け。」 キラヨシを抱き上げるウォーフ。「うーん、おお。」 だがキラヨシは泣き出した。 「抱き方が違う。」 「ほっといてくれ。」 「…わかった。それじゃ行ってきます。」 部屋を出て行くダックス。 ウォーフはキラヨシを持ち上げたまま、歌を唄いだした。「ア・ポンベイ・ミッシ、ア・ポンベイ・ミッシ。」 モリーは草の上で目を覚ました。近くには岩がある。 新しい服を着ている。周りを見るモリーは、貨物室に立っているオブライエンとケイコを目にした。岩に隠れる。 ケイコ:「おはよう、モリー。」 怯えて、近くに立ててある木に登り始めるモリー。 オブライエン:「心配いらない。」 モリーは更に高く登る。 オブライエン:「いじめたりしない。」 皿を手に取った。「食べ物欲しくないか? お腹空いてるだろ。」 モリーに近づく。「ゴラーナ・メロン※11だ。」 自分が一口食べるオブライエン。「うーん、おいしいぞう。」 モリーの近くに差し出すが、取ろうとしない。 オブライエン:「お前のだ。」 床に皿を置く。 オブライエンが離れると、モリーは降りてきた。 もう一度食べてみせるオブライエン。 モリーは素早く一つを取り、食べ始めた。 オブライエン:「おいしいだろ?」 ケイコ:「ハイ、モリー。私覚えてる? ママよ。」 モリーはケイコを見つめ、そのまま背をかがめた。 ケイコ:「何してるのかしら。」 オブライエン:「僕たちが誰か知ろうとしてる。きっと小さい頃、見上げたのを覚えてるんだ。」 モリー:「マ…マ…」 「それでいいんだ! ママと、パパだ。」 「マ…マ…あ…あ…」 「あれ見せろ。」 ケイコ:「いい物持ってきたのよ。」 あの人形を見せる。「ルーピーよ。毎晩あなたの枕の上で一緒に寝たでしょう? 寂しかったって。」 モリーはメロンを落とした。 ケイコ:「ほら来て。連れてって。」 モリーはゆっくりとケイコに近づくと、人形を奪いとった。 微笑むケイコ。「あなたルーピー覚えてたのね。」 人形に触れるモリー。 |
※9: モリー・オブライエン (18歳) Molly O'Brien (adult) (Michelle Krusiec) ※10: Denorios Belt ベイジョー星系にある荷電プラズマフィールド。DS9パイロット版 "Emissary" 「聖なる神殿の謎」など。「デノリアス小惑星帯」と訳されていますが、あくまでプラズマフィールドであり小惑星帯 (asteroid belt) ではありません。そもそもワームホールが位置するのもデノリアス・ベルト内ですので…。パイロット版で、色のついたフィールドにランナバウトが入るシーンがあります ※11: Golana melon |
床に座ってケイコと向き合い、ボールを転がしているオブライエン。「これはボールだ、モリー。」 興味津々のモリー。 ケイコ:「ボールをもらえる?」 受け取る。「あなたボールが欲しい? モリー。」 次はモリーに投げる。 オブライエン:「モリー、ボールをくれ。」 だがモリーはそうせずに、岩の陰に行く。そこにはいくつものボールと、人形があった。 ケイコ:「すぐには無理ってジュリアンが言ってた。」 オブライエン:「わかってるけど、ボールがなくなってきた。」 また次のを取り出す。 「これはボールよ、モリー。」 「ボールが欲しいか? このボールをあげよう。そしたら、今度は返してくれ。ん?」 またモリーにボールを渡し、手を広げるオブライエン。「ボールをくれ、モリー。モリー、ボールをくれ。」 隠そうとするモリー。「お願いだ。」 モリーはボールを返した。 オブライエン:「そうだ、それでいいんだ!」 手を叩くケイコ。「そうよ、いい子ねえ!」 モリーも手を叩いて喜ぶ。 オブライエン:「よーし、その調子だ。いいぞ、それでこそモリーだ。」 ボールを返す。 ウォーフは寝室に入るが、キラヨシの泣き声が響き渡る。 疲れた様子のウォーフ。 先に寝ていたダックスが目を開ける。「…あの子大丈夫?」 ウォーフ:「ああ、大丈夫だ。ただどうしても眠ってくれない。」 「おむつ替えた?」 「ああ、替えたとも。」 「ならお腹は?」 「空いてない。」 「お話読んであげた?」 「読んでやったよ。」 「子守歌は?」 「喉が痛くなるほどだ。」 「ああ…やることはみんなやったのね。あと私が代わる。」 「代わる必要はない。」 「ウォーフ、あなた疲れてる。少し眠ったら?」 「…だめだ。私はクリンゴンの戦士だ。宇宙艦隊の士官だ。ドミニオンの地雷原だって、見事に乗り切った。巨大なケルヴィン※12とも真っ向から戦った。手強いジャッジア・ダックスの心もつかみ、勝ち取った。それらを成しえたのだ。あの子を眠らせられないはずがない。」 「ちょっと大げさじゃない? それほどのことじゃない。よく考えてみて? 子供の世話が突然そんなに重要になったの?」 「…私に重要なのではない。」 ダックスに近づくウォーフ。「君にとって、重要だ。」 「何言ってるの、どういうこと?」 「君は私の親としての適性を判断している。否定してもだめだ。目を見ればわかる。私は、君のいい夫であることを証明したが、君の子供のいい父親になれるかどうか疑ってる。」 「…子供を作る話なんか誰もしてない。」 「眠ってくれ。私はすることがある。」 寝室を出るウォーフ。ダックスは微笑み、また眠りについた。 木の上でルーピーを抱いて寝ているモリー。 貨物室に入るケイコ。オブライエンはソファーの上で寝ていた。 ケイコ:「遅くなってごめんなさい。ああ…。」 オブライエン:「大丈夫だ。…2時間ほど前に眠った。」 「よく木から落ちないわねえ。」 「そうだな。」 「あなたのシフトが終わるまで、ダックスがヨシを見てくれるわ。」 「ありがたいなあ。この 2日間で修理のスケジュールがかなり遅れてる。」 髪を解かし始めるケイコ。いつの間にかモリーがそばに来ていた。 ケイコ:「マイルズ。」 モリーは手を伸ばす。 ケイコ:「ブラシが欲しいの、モリー? もってっていいわよ。」 だがモリーはケイコに近づき、ケイコのブラシを自分の髪に当てた。 モリーの髪を解かすケイコ。 廊下。 ターボリフトを降りるオブライエンとベシア。 オブライエン:「見ればみるほど、昔のあの子を思い出す。」 ベシア:「言葉はどうかな。」 「まだだ。だがこっちの言うことはわかってるようだ。」 「名前には反応したか。」 「それは間違いない。見てくれ。」 持っていた紙を広げる。 「面白いなあ。」 「あの子が描いた。悪くないだろ?」 木などに顔が描かれた、子供らしい絵だ。 ベシア:「風景を擬人化してるんだな。」 オブライエン:「ああ、描くのが好きだ。話したかなあ。スプーンを使うようになった。これなら数週間で読み書きもできる。」 「だが急かさないよう気をつけなきゃだめだぞ。フラストレーションを感じたら逆効果だし、元の行動パターンに戻るかも。」 「心配ない。急かしはしない。その気もない、あの子に任せる。」 キラヨシの前でガラガラを見せるウォーフ。「ワートゥコー ド・ゴ・ヤー ゴン・ゴン・ゴン。」 部屋に入るオブライエンたち。 ベシア:「ゴン・ゴン・ゴン?」 ウォーフ:「今この子に教えてたのは、ヘフ・ドゥップだ。」 「ヘフ・ドゥップ?」 「子供たちに目と手の連動を学ばせる、クリンゴンの練習だ。そうやって立派な戦士に成長する。」 「そうか、なるほど。ガラガラは赤ん坊が手にする最初のバトラフだな?」 オブライエン:「素質はどう?」 ウォーフ:「ああ、なかなか上手だったよ。」 「どうもありがとう。」 ベシア:「そうだ、ガラガラおいてってくれないかな。ヨシがヘフ・ドゥップの練習したがるかもしれない。」 ウォーフが無言で差し出したガラガラを受け取るベシア。 出て行くウォーフ。ベシアはガラガラをキラヨシに向けて振る。 貨物室。 戻ってきたオブライエンは、モリーが落ちつきなく動き回っているのを目にする。 抑えようとするケイコ。「モリー。落ち着いて、モリー。モリー、お願いよ!」 オブライエン:「どうしたんだ。」 「1時間以上もこんな感じなの。モリー!」 「僕が落ち着かせるよ。」 「もう行かなきゃ。ヨシを迎えに行って、うちへ連れて帰る。」 モリーは叫んだ。「おーうーちー!」 オブライエン:「…今の聞いたか?」 「おーうーちー…」 ケイコ:「モリー、何が言いたいの?」 「おーうーちー…」 オブライエン:「おうちか?」 「おうち。モリー。」 自分を指さすモリー。 ケイコ:「その通りよ、モリー!」 「モリー、おうち…」 オブライエン:「お前をおうちに連れてって欲しいのか?」 「パパ、おうち、モリー。」 ケイコ:「わかった、連れてってあげる。」 オブライエン:「ママとパパが、おうちへ連れてってやる。」 モリー:「ママ、おうち、モリー…」 ケイコ:「おうちに行きましょう。」 部屋に入る 3人。 オブライエン:「おうちだ、モリー。これがおうちだぞ。」 モリーは部屋の中を見渡す。飾られている風景画。 窓から見える星々。 モリー:「お星様、いっぱい。」 ケイコ:「とても綺麗でしょ?」 「おうち?」 オブライエン:「そうだ。自分の部屋が見たいか?」 子供部屋へ入る。 チェスターがいる。 自分の小さい服を手に取るモリー。 だが、それを引き裂いてしまった。部屋を出る。 ケイコ:「モリー? モリー?」 モリー:「おうち!」 テーブルの上の写真立てに気づいた。前にゴラーナで撮った写真を指さす。「おうち!」 オブライエン:「違う、ここがおうちだ。」 ケイコ:「マイルズ。」 「言ってることはわかる。長くそこに住んでたが、ここもお前のおうちだ。」 モリー:「モリー、おうち。」 ケイコ:「あなたはそう思うわよね。でも今すぐそこへは行けないの。」 オブライエン:「…方法ならある。」 モリーは笑いながら草原を駆け抜ける。 ケイコ:「見て、マイルズ。すごく楽しそう。」 草の上に転がるモリー。 オブライエン:「ホロスイートだとは知らない。」 ケイコ:「わけがわからないでしょうね。さっきまで宇宙ステーションにいて、今は野原を駆け回っているんですもの。」 笑う。 「毎日 1、2時間ここに連れてくるのも悪くない。クワークと話して、決まったスケジュールを組んでもらおう。」 木の上にぶら下がるモリー。「ママ、ママ。パパ。」 二人に近づき、側転するモリー。 オブライエン:「おー! うまいぞ。」 モリーは走り回る。 呼び出し音が鳴った。 オブライエン:「すぐ戻ってくる。」 ケイコ:「わかった。あー、これ見て。ほら。」 花をモリーに見せる。 ホロスイートの出入り口ではクワークが待っていた。「邪魔して悪いんですけど、チーフ。もう終わりですよ。こちらの方が予約してるんです。」 後ろにはクリンゴン人たちがいる。 オブライエン:「もう 30分待ってくれれば、そちらの分も払う。」 次の客はクリンゴン語で話し、クワークの背中をこづく。 クワーク:「午後の大虐殺を楽しむって、心に決めてるようです。今すぐ。」 オブライエン:「…わかった。すぐどくよ。」 「…飲み物でもおごります。」 クワークについて行く、不機嫌なクリンゴン。 モリーと遊んでいるケイコ。「まあ、可愛いわよ、モリー。」 オブライエン:「二人とも。もう行かなきゃ。」 まだ遊ぼうとするモリー。 オブライエン:「モリー。ああ…コンピューター、終了。」 映像が消えた。 うろたえるモリー。「ああ…」 オブライエン:「明日また来よう。」 「あー…あー…おうち!」 ケイコ:「帰らなきゃいけないの、モリー。」 オブライエン:「さあ、出よう。」 無理矢理モリーを連れ出す二人。 クリンゴン人に酒を要求されるクワーク。 ホロスイートから出されたモリー。「あー! あー!」 オブライエン:「大丈夫だ。」 ケイコ:「おとなしくして、また来るから。約束する。」 「大丈夫。」 モリーは逃げ出した。 ケイコ:「ねえ、待って!」 ホロスイートに戻ろうとするモリーをつかまえるクワーク。「悪いけど、お嬢ちゃん。」 モリーに耳を噛まれる。「アー!」 オブライエン:「モリー!」 クリンゴンに怯え、階段を降りていくモリー。 店の客を突き落とし、暴れていく。客の怒号が飛ぶ。「待てまて、止まれ!」 「何だ?!」 人々を突き飛ばしていくモリー。 一人の異星人※13がモリーに立ちはだかった。「だめだ、やめなさい!」 モリーは落ちていた割れたグラスを取り、異星人に突き刺した。彼は叫んで倒れる。 オブライエン:「モリー!」 駆けつけたオドー。「気絶させろ!」 保安部員に撃たれるモリー。 ケイコ:「モリー!」 通信するオドー。「オドーよりドクター・ベシア。クワークの店で重傷者が出た。」 |
※12: ケルヴァ人 Kelvans アンドロメダ銀河出身の文明。TOS第50話 "By Any Other Name" 「宇宙300年の旅」より。そのエピソードでは巨大なケルヴァ人は登場していません ※13: 名前は Madrat ですが、言及されていません。エキストラ |
司令官室。 シスコ:「襲われたターカリアン※14は医療室で回復している。ドクター・ベシアの話じゃ、2、3日で歩けるようになる。」 オドー:「ターカリアンはあの子を訴えた。凶器を使った暴行だ。」 オブライエン:「怪我させる気はなかったんです。逃げようとしただけです。」 「私もそう言おうとしたが、彼は耳を貸さなかった。しょせん言い訳だ。とにかく彼としては、あの子は危険だから監禁して欲しいということだ。」 「監禁するって?」 シスコ:「連邦裁判官と話して事情を説明したが、判事の判断はモリーを…ダルヴォス・プライム※15のケアセンターで鑑定することだ。」 「あの子を収容するんですか。」 「……そうだ。かなり長期に渡る可能性がある。だがその種の施設では最高だ。」 オブライエンはシスコに近づいた。「モリーはケイコと私の子供です。あの子に誰かの手助けが必要なら、私たちです。見も知らぬセラピストじゃありません!」 シスコ:「…気の毒だが、チーフ。ほかに方法があればいいがな…。」 「大佐、お願いです。あの子を奪わないで下さい。」 独房の中を歩き回るモリー。 診察するベシア。「アドレナリンが増加してる。いつまで監禁に耐えられるかわからない。ショックを起こすかもしれないし、何とかして落ち着かせないないと。」 オブライエンは話しかけた。「…モリー!」 話を聞こうとしないモリー。 オブライエン:「モリー!」 モリー:「パパ…おうち…」 「モリー、やめろ!」 出ようとしたモリーはフォースフィールドに当たった。 だが、それでもまだ出ようとする。 オブライエン:「よせ!」 またもモリーはフィールドに突き当たる。 ケイコ:「何とかして!」 オブライエンは保安部員※16に叫んだ。「何してる、消すんだ!」 もう一度衝撃を食らうモリー。 ケイコ:「だめ!」 保安部員の操作によりフォースフィールドが消え、モリーは外へ倒れ込んだ。 ケイコ:「モリー!」 オブライエン:「モリー! モリー!」 モリー:「おうち!」 ベシアはハイポスプレーを打ち、静かにさせた。 ケイコ:「どうしたらいいの?」 ベシア:「鎮静剤を使い続けるのは良くない。やはり、広々とした場所に連れて行かなきゃだめだ。」 オブライエン:「ケアセンターにそんな場所があるのか?」 「大佐に話して、とりあえずホロスイートに戻すことにしよう。」 「だけどセンターに運ぶ時はどうなる。この子はどうなる!」 ため息をつくウォーフ。 ダックスが部屋に戻った。「ああ、クタクタ。早くユニフォーム脱いで楽になりたい。…キラヨシどこ? あなたが見てるんじゃなかった? ウォーフ、何があったの?」 ベシアの声。「キラヨシはちょっと転んだんだ。」 寝室から出てくる。 ダックス:「あの子大丈夫?」 「おでこにちっちゃなこぶができたけど、子供ならしょっちゅうだ。ちょっと眠れば元気になる。」 「ああ…ありがとう。」 「じゃ、医療室に戻らなきゃ。」 出て行くベシア。 ダックス:「何があったのか教えて?」 ウォーフ:「ああ…あの子と遊んでた。私はグリントハウンド※17になって追いかけたんだ。…あの子は笑って大喜びだったが、前を見てなかった。…転んでテーブルにぶつかった。」 「ああ…事故だもの、そんなこと誰にだって起こる。」 「私は乱暴すぎた。注意も足りなかった。…父親の適性を疑うのも当然だ。」 「私はあなたの適性を疑ってなんかいない、勝手に決めつけないで。」 「アレクサンダーでしくじり、キラヨシでもしくじった。…自分たちの子供でもしくじるだろう。」 立ち上がるウォーフ。 「どこ行くつもり?」 「目を覚ました時、いない方がいい。」 「ウォーフ…」 「ジャッジア、君にできると証明したかったが、残念だ。」 ウォーフは出て行った。 ケイコは考えている。「何とかしなきゃ、あの子を渡すわけにはいかない。」 オブライエン:「ほかに方法がない。あの子が慣れるのを祈ろう。」 「よくそんなことが言えるわね。何で簡単にあきらめるの? ……何か考えてるのね?」 「…何を言い出すんだ…」 「マイルズ、あなたとは長いんだから、ごまかしたってだめよ。あなたは私に黙って何かするつもりなんでしょう?」 「…君は知らない方がいい。」 「なぜ!」 「つまり、ただじゃ済まないからだ。」 「なら一緒にやりましょう、私の娘でもあるのよ。」 「ケイコ、よく聞くんだ。」 「何言ってもだめ、あなたと同じで頑固なんだから。さ、どうするつもり?」 「……ランナバウトを盗んで、モリーをゴラーナに戻す。」 「あ…でもあそこじゃ真っ先に探されて、あの子は見つかる。…ただし…あの入り口から過去に送り出せば別だけど。」 「…そうだ。あの子が通ったら、入り口を壊す。あの子が見つかることはない。」 「だけど私たちも会えない。」 「…ほかの方法があればそうするよ。」 「ああ…。」 顔を伏せるケイコ。 「あの子はゴラーナに 10年住んでたんだ。ちゃんと生きていく術を知ってる。あの子は大丈夫だ。」 顔を上げ、ケイコは首を振った。 寝ているモリー。 オブライエンは拘留室に入った。「あの子はどうだ。」 ベイジョー人の保安部員。「あと 2、3時間眠ってるとドクターが言ってました。目を覚ます前にホロスイートへ移します。」 オブライエン:「今使えるホロスイートはない。元の貨物室へ戻せとオドーが言ってた。」 「私は聞いてません。」 「予定表を見ろ。書いてあるはずだぞ。」 保安部員が目をそらした瞬間、オブライエンは取り出したハイポスプレーを打った。 フォースフィールドを解除するオブライエン。 意識朦朧としているモリーを連れ、廊下を歩くオブライエン。「持ってきたか。」 先にいたケイコ。「全部揃ってる。」 エアロックのドアを開ける。 だが声が響いた。「チーフ!」 連絡する宇宙艦隊の保安部員。「ジョーンズ※18より保安部へ。見つけました。」 |
※14: Tarkalean これまでターカリアン・ティー (Tarkalean tea、DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」など)、ターカリアン・コンドル (Tarkalean condor、DS9第102話 "Nor the Battle to the Strong" 「戦う勇気」)、ターカリアン・タカ (Tarkalean hawk、DS9第110話 "The Begotten" 「幼き命」)、ターカリアン・インフルエンザ (Tarkalean flu、VOY第153話 "Body and Soul" 「セブンになったドクター」) が言及 ※15: Dalvos Prime ※16: パナー Pinar (Shaun Bieniek) クレジットでは "Deputy" 声:滝知史 ※17: grint hound ※18: ジョーンズ大尉 Lieutenant Jones (Randy James) 声:三宅健太 |
ジョーンズが見張っている。オドーが到着した。 ジョーンズ:「ランナバウトを奪おうとしました。」 オドー:「パナー保安部員が意識を取り戻したか見てこい。彼の話が聞きたい。」 離れるジョーンズ。 オドーは腕を組み、オブライエンたちを見つめた。 オブライエン:「オドー。お願いだ、逃がしてくれ。」 ケイコ:「拘留室に戻して閉じこめたら、この子は死ぬわ。」 オドー:「困った人ですね、チーフ。もし誰かが牢を破ってステーションから逃がすとすればあなただとは思ったが…。」 だがオドーはエアロックのドアを開けた。「行きなさい。」 オブライエン:「ああ…。」 オドーにキスするケイコ。「ありがとう、ありがとう。」 オドー:「早く。」 3人を見送る。 ランナバウトはゴラーナに到着した。 時間の入り口を調べるオブライエン。 ケイコ:「ナイフも入ってるし、毛布もあるから。」 人形を取り出すモリー。「ああ…ルーピー。」 ケイコ:「ええ、その通り。連れてきたのよ。」 モリーの髪を解かす。 機械を起動するオブライエン。「用意ができたぞ。時間フィールドジェネレーターをセットした。この子が暮らしてた、元の時間に送り返せるはずだ。モリー、ケイコ。こっちに来てくれ。」 操作すると、入り口にフィールドが発生した。 その綺麗な様子を見て喜ぶモリー。入り口に近づく。 オブライエン:「お前はおうちに帰るんだ。おうちだ。そのすぐ向こうだ。」 モリー:「おうち…。」 荷物を渡すケイコ。モリーを抱く。「ママはあなたを愛してる。」 そしてオブライエンも。「パパも愛してる。」 涙をこらえるケイコ。 オブライエン:「さあ、行くんだよ。おうちだ。」 モリーは上を見上げた。「お星様。二人のおうち。」 オブライエン:「その通りだ。いつでも空を見上げれば、パパたちはいる。お前を見てる。」 空を見上げ、悲しい顔をするモリー。「ああ…。」 オブライエン:「行くんだ、さあ。」 「モリー…愛してる。」 入り口へ向かうモリー。 泣き出すケイコを抱くオブライエン。「シー。」 モリーはフィールドの中へ消えた。 オブライエン:「大丈夫だ。」 倒れたままの入り口から現れるモリー。外へ向かう。 だが泣き声が聞こえた。その声の方へ近づく。そこには幼いモリーがいた。体は汚れている。 腕に触れるモリー。同じブレスレットをしている。「モリー。」 幼いモリー:「ママとパパに会いたいよう。」 モリーは入り口を見て、指さした。「そこ。」 幼いモリーを連れて行く。 オブライエンはフェイザーをセットする。 入り口へ連れて行くモリー。「ママ、パパ、そこ。」 モリーは、ルーピーを取り出して幼いモリーに渡した。入り口に入るように示す。 フィールドへ入っていく幼いモリー。 18歳のモリーは言う。「モリー、おうち…。」 消滅した。 入り口へフェイザーを向けるオブライエン。 だがその時、ルーピーを持ったモリーが出てきた。 両親の姿を見て微笑むモリー。すぐに駆け寄る。 ケイコ:「ああ…モリー。」 オブライエン:「モリー!」 抱きつくモリー。「ママー!」 ケイコ:「ああ…本当にあなたなのね!」 オブライエン:「ああ、よかった…大丈夫か?」 「ああ…よかった…」 ウォーフとダックスの部屋。 ウォーフが戻ってきた。 ダックス:「ウォーフ。大丈夫よ、もういない。さっきママとパパのところに帰してきた。戻ったお姉ちゃんを見た時の顔、見せたかった。」 ウォーフ:「二人に謝っといてくれたか。」 「大丈夫、全然気にしないでって言ってた。ぶつけるの初めてじゃないって。今夜夕食に呼ばれたわ。お守りをしたお礼ですって。」 「何と返事をした?」 「ホロスイート予約しちゃったから、あなたと相談して連絡するって答えといたけど? …そういえば、あの『ガン、ガン、ガン』ってどういう意味?」 「なぜそんなことを。」 「だってあの子ったら…すごく変なんだもの。ヨシを部屋に連れて行った途端ガラガラを手に持って、『ガン・ガン・ガン』って。」 「あの子が?」 「楽しそうに大はしゃぎしてた。で、どういう意味?」 「…私とヨシとの秘密だ。」 「ふーん、なるほど。」 ウォーフに抱きつくダックス。「なら…印象悪くなかったみたいね。自分で思うほど子供が苦手じゃないかも。」 「思ったのは君だ。」 「わかった。確かに疑ったかも。でもそれが間違いだって証明されて、幸せ。」 「あ、そうだ。もしホロスイートに行くなら、そろそろ行かなきゃ…」 「ホロスイート? オブライエン夫妻に失礼だ。」 「ええ、それはよくないわね。」 「ふーん。ヨシはほんとに『ガン・ガン・ガン』って?」 「ああ…何度も何度も繰り返し。」 二人は固く抱き合った。 絵を描いているモリー。 オブライエン:「査問委員会には、大佐が出てくれるそうだ。」 ケイコ:「今回の件で、宇宙艦隊を説得できるのは大佐だけね。」 モリー:「ママー。」 「何? モリー。」 「私見つけてくれたお姉ちゃんにまた会える?」 「…いいえ、すぐに会いたくても無理。」 「すごく親切だった。」 オブライエン:「…ダックスの話じゃ、装置の設定がずれたため、18歳のあの子が最初の時間に送られて、この子が戻ったと。」 ケイコ:「あの子は目の前にいる小さな女の子が自分だって知ってたかしら。」 「きっと知ってた。多分それだけじゃなく、この子がうちに帰るってことも。」 できた絵を見せるモリー。「見てー。」 顔のある木や雲。あの絵とそっくりだった。「ピクニックに行ったところ。」 絵を見てはっとしたケイコは、オブライエンと顔を見合わせる。 モリー:「この絵嫌い?」 オブライエン:「すごく綺麗だ。」 モリーにキスし、笑う。 ケイコ:「ああ…モリー、とっても上手よ。すごく素敵ね…。」 二人を見つめるオブライエン。 |
感想
ミーニーが映画出演などで忙しいせいか、最近出てなかったオブライエン。その彼が、これもドミニオン戦争のせいでなかなか登場しなかった家族と共に悪戦苦闘します。毎度おなじみのオブライエン苦労ものですが、今回も最後は泣かせてくれますね…。ご都合主義といえばそれまでですけど、モリーが自分自身を助ける結末が何とも憎いです。オブライエンとケイコが 18歳のモリーに教えたことは無駄ではなかったわけですね。 最後に消えてしまうモリーに表されるように、やはり時間ものは一つ間違えれば消えてしまう「はかなさ」が重要ではあります。でも単に元に戻っただけではなく、記憶の中に残っているのもいいですね。パラドックスを突けば切りがありませんから。人形のルーピー、側転、ケイコに髪を解かしてもらうこと、そして擬人化した絵と、伏線が生かされていました。 キラヨシは演技 (とはまだ呼べない?) ができるようになってからは初めての登場になりますが、まるまると太っているのが何だか微笑ましいです。本編と絡めたウォーフとのサブストーリーもよくできていました。 |
第147話 "Profit and Lace" 「グランド・ネーガスは永遠に」 | 第149話 "The Sound of Her Voice" 「待っている女」 |