リサの声を聞くシスコたち。 
 リサ:『私はリサ・キューザック※9。2日前までオリンピア※10を指揮していました。私の船です。』 
 シスコ:「オリンピア?」 
 『8年あまり前、ベータ宇宙域の長距離探査のため、連邦を発ちました。』 
 「船はどうしたんです、艦長。」 
 『ようやく帰途につくと、偶然にも近くの恒星系に不思議なエネルギーをキャッチして、調査することに決めました。すると第4惑星に、見たこともないエネルギーバリアを発見したんです。スキャナーで探査すると、量子反応が引き起こされ、メトリオン放射線※11の激しいサージでエンジンが止まりました。次の瞬間、急回転で地上に真っ逆さま。私は脱出を命じて、最後に覚えているのは、目の前の制御板が爆発したこと。気がつくと、地上の脱出ポッドにいて、1日半洞窟から亜空間通信で救助を求めていました。』 
 ベシア:「艦長、医療主任のドクター・ベシアです。お話では、そこは Lクラスの惑星だそうですが、本当ですか。」 
 『その通り。次の質問の答えも言うと、4時間ごとに 15シーシーの三酸化化合物※12を注射してる。大気中の過剰な二酸化炭素を中和するためです。医療用トリコーダーに従ってる。』 
 「薬の残りはどれぐらいです。」 
 『150ミリリットルだけど。』 
 「…注射する量ですが、減らしてもらえますか、艦長。6時間ごとに 8シーシーです。できるだけ節約して引き延ばしたいんです。」 
 イエイツ:「薬がなくなったら、彼女どうなるの?」 
 リサ:『それはいい質問ね。ドクター、どうなるのかしら。』 
 ベシア:「やがて、低酸素症の症状が現れ始めます。ですがそうなるまでに、三酸化化合物が、心肺系を強化してるので、その症状にかなり耐えると思われます。」 
 『「その症状にかなり耐える」。つまり、空気を求めてもがき、あなた方が来る頃には私真っ青な顔で死ぬ寸前ってこと?』 
 「…ええ、そういうことです。」 
 『明るい気持ちになってきた!』 
 イエイツ:「何かできることあります?」 
 『ないこともない。眠れないの。注射のせいで目がさえちゃって。それにこの 2日間、誰とも会話してない。』 
 シスコ:「それなら、私たちが力になれます。ずっと通信をつないでおいて、必ず誰かに…相手をさせましょう。」 
 『楽しく相手しろと命じて下さい。』 
 「わかった。」 
 笑うオブライエン。 
 リサ:『それじゃあ、誰からですか?』 
 シスコ:「…まず私がいいでしょう。」 
 『私もそう思う。』 
 「…いろんなことがありました。あなた方が発ってからです。」
  
 作戦室。 
 シスコ:「先月第二艦隊が、ベタゾイドのドミニオン軍を 3度叩きました。しかし彼らは常に援軍を呼び、増強を続けたんです。で、我々は…」 
 リサ:『わかりました、もう結構。』 咳をする。『お願い、戦争の話はやめにしましょう。気が滅入ってくる。』 
 「ああ、すいません。」 
 『いいえ、ほんとに残念。あなたや私にとっても、連邦のみんなにとっても。まさか戦争になるなんて。話題を変えましょう。いい知らせはないかしら。帰還するのが楽しみになるような話よ。人はまだ恋をし、結婚し、家庭を作ってるんですよね?』 
 「…そうです。」 
 『よかった。あなたはどうです? 結婚してる?』 
 「いえ。」 
 『恋人は? 詮索は嫌いだけど、宇宙艦の艦長にまだ明るい面もあるって思いたいんです。』 
 「ああ…つき合ってる相手ならいます。」 
 喜ぶリサ。『ああ、それにしましょう。その人の名前は、何て言うの?』 
 シスコ:「キャシディ・イエイツ。」 
 『キャシディ? さっき私が話した、あのキャシディさん?』 
 「その通り。」 
 『彼女も士官?』 
 「いいえ、民間人です。貨物船の艦長。」 
 『まあ…あまりうまくいってないみたいですね。』 
 「どうしてそう思うんですか。」 
 『あなたの声が楽しそうじゃないもの。彼女の名前言った時、急に緊張した。戦争の話の方がリラックスしてたわ。』 
 シスコは無言になり、別のパッドを取りに行く。 
 リサ:『…ベン? まだいるんでしょ?』 
 シスコ:「…ええ。ちゃんと聞いてますよ。あ…ただその…不意を突かれて。ちょっとね。」 
 『わかりますよ。私も上級士官になる前、民間人と 6年つき合ってた。』 苦しそうなリサ。『聞きたい? 是非聞かせてあげる。』 シスコは止めようとしたが、構わず話し続けるリサ。『だって、面白い話で、聞けば元気が出るわよ。出会ったのはアンドリア※13。当時私は連邦大使館で武官をしてて、彼はアンドリア農務省の職員だった。初め私は関わりたくなかった。彼のオフィスに行くと、いつも私をチラチラ見て、イヤな奴と思った。』
  
 店の客を押し分けるクワーク。「すみませーん、通して下さい。すみません、恐れ入ります。オドー!」 
 箱を持っているオドー。「これだ。用意したよ。」 
 クワーク:「見てもいいか?」 
 オドーは考えたが、中身のペンダントを見せた。 
 2人の様子を遠くから見ているジェイク。 
 クワーク:「オー、バッチリだ、すごいよ。きっと少佐も気に入る。…どうやって渡すんだ? 記念日の晩の演出だよう。」 
 オドー:「演出など考えてないが。」 
 「ああ。よかった、幸い時間はまだある。」 オドーを呼び、ケースを開けるクワーク。「どれにする?」 
 「ホロスイートのプログラムか。」 
 「これは記念日なんだぞう! 特別なことしなきゃ。」 
 「プレゼントを買った。」 
 ケースを閉めるクワーク。「好きにしてくれ。でももし俺なら、一生探し求めた真実の愛をつかんだからには、毎月記念日には、お祝いするねえ。」 
 オドー:「わかった。ちょっとそのプログラムを見せてくれ。さあ!」 
 ケースを持っていくオドー。ジェイクは見て見ぬ振りをする。 
 オドーは 2階へ上がっていった。 
 クワーク:「これで保安主任は土曜の晩、忙しくなりそうだ。つまりステーション中、俺をつけ回すこともできなければ、エアロックに犯罪者が来ても気づかない。貨物室で違法な取引があっても、それどころじゃないだろう。」 
 ジェイク:「でも、部下がいる。」 
 「部下なんか平気さ。オドーさえいなけりゃ。この俺にとって最大の悩みは…儲けた金の使い道さあ!」 
 ジェイクをつかむクワーク。ジェイクは笑った。
  
 医療室に流されるリサの声。『…姉たちは 2人とも教師をしてる。よくできると感心する。私は、子供に耐えられない。』 
 ベシア:「なるほど。」 
 『もちろんみんなは子供が好きだけど、私はねえ。」 
 「そう。」 
 『あなたはどう? 子供好き?』 
 「まあね。」 
 『…ほんとに?』 
 「ええ。」 
 『ねえ、ドクター。もしかしたら…そう、ほんとにもしかしたらだけど、あなた私の言ってることにあまり…ちょっと待って。何なの? そこで何か動いてる。…近づいてくる!』 
 「何?」 
 『あっちへ行って! やめて、何もしないで!』 
 「艦長、どうしたんです。」 
 『お願い、あっちへ行って! いや、やめて。」 絶叫するリサ。「いやー!」
 
 
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※9: リサ・キューザック艦長 Captain Lisa Cusak
  
※10: U.S.S.オリンピア U.S.S. Olympia クラス・番号不明。古代オリンピックが開かれた、西部ペロポネソスの地域にちなんで
  
※11: metreon radiation VOY第15話 "Jetrel" 「殺人兵器メトリオン」でメトリオン爆弾 (metreon cascade) が言及
  
※12: tri-ox compound 薬物。TOS第34話 "Amok Time" 「バルカン星人の秘密」など
  
※13: アンドア Andor アンドリア文明の母星。DS9第143話 "In the Pale Moonlight" 「消された偽造作戦」など。その後のセリフで「私をチラチラ見て」と訳されていますが、原語では「私に触角を向けてきて」。言うまでもなくアンドリア人だからですね
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