イントロダクション
クワークの店。 指示を出していくオドー。「それじゃあ、ここに並んでるバースツールは全部撤去すること。」 クワーク:「いくらかかったと思ってる。」 「さあなあ、私には関係ない。ステーション規則 2562条第4項、『プロムナードで使用される全ての設備は危険なものではあってはならない。』」 2人の様子を見ているジェイク。 クワーク:「何が危ない。」 オドー:「背もたれがないからモーンはいつ転げ落ちるかわからない。背骨が粉々になるかもしれないし、肺が 3、4つ※1破裂するかもしれない。」 席を立つモーンを座らせるクワーク。「バカバカしい。こいつの体重をこのスツールはしっかり受け止めてるんだ。」 モーンを回転させる。「クルッと回れば、可愛いダボガールの眺めをバッチリ楽しめる。それで、飲み物のお代わりが欲しくなれば、またクルッと戻れば済む。」 オドー:「危険な点がまた見つかった。めまいを起こす。」 クワーク:「こんなんでめまいを起こす奴がいるか。」 クワークはモーンに勢いをつけて回し始めた。クルクル回るモーン。 オドー:「言い分は聞いたが却下だ。バースツールを今日中に撤去しろ。それから…ダボ・ホイールの方もちょっと気になる違反の可能性がある。ステーション規則 4721条だ。それによれば…」 キラ:「オドー。」 「ネリス。」 店に入るキラ。「今忙しい?」 オドー:「いいえ。」 「一緒に昼食でもどうかと思って。」 「どこに行きます?」 肩を組むオドー。 「クリンゴン・レストランなんてどう? もうずーっと行ってないから、ジュージュー焼けたクラダ・レッグ※2がすごく食べたい。」 二人は出て行った。 ジェイク:「バースツール残念だったね、良かったのに。」 クワーク:「あの人が入ってきた途端、オドーの態度がコロッと変わったぞ。」 「愛してんだ。」 「愛ってことは…」 「だから…」 「愛は気をそぞろにする。気がそぞろな保安主任は…こりゃチャンスだ。」 パッドを持ってクワークを追うジェイク。 ディファイアント。 『艦長日誌、宇宙暦 51948.3。船団 PQ1 が無事ヴェガ※3星系に到着し、護衛任務は完了した。これより帰還する。』 イエイツ※4船長はシスコの前に座った。「宇宙艦隊司令部への最初で最後の報告ができたようだわ。初めこの船団の連絡任務を依頼された時、こう思った。『ええ、もちろん引き受ける。船団の艦長はほとんど知り合いだし、朝飯前の仕事だ』って。まさか毎日日誌を 20もつけて、毎晩公式レポートを書く羽目になるとは知らなかった。」 シスコ:「君はいい仕事をしたようだな。」 「やるんだったらしっかりやれ。昔よく父親に言われたわ。」 ベシアがやってきた。 シスコ:「父親はみんなそう言う。私だってね。」 イエイツ:「それはあなたがいい親だから。決まり文句みんな言えるでしょ?」 ベシアが近づく。「あら珍しい。しばらく見なかったわね。」 ベシア:「艦隊医療部への報告を書いてた。」 パッドをシスコに渡す。 「だから私は宇宙艦隊に入らなかった。書類書きなんて耐えられないの。」 ぶっきらぼうに応えるベシア。「それがいい。」 別のテーブルへ向かった。 イエイツ:「こういう時に彼に注意した方がいいんじゃない?」 シスコ:「彼のああいうところが好きなんだ。」 「あら、そうなの。」 「冗談だよ。」 微笑むシスコ。 「いいえ。本気でしょ?」 通信が入る。『ウォーフよりシスコ大佐。』 笑みの消えていたシスコ。「こちらシスコ。」 ウォーフ:『大佐、ブリッジにおいで下さい。救難信号を受信しました。』 「すぐ行く。」 ラクタジーノをイエイツに渡し、食堂を出て行くシスコ。 ブリッジに入るシスコ。 ウォーフ:「今のところ受信だけで、こちらからの連絡はつきません。信号がルサリアン星域※5から発信されていることは突き止めました。」 シスコ:「聞かせてくれ、チーフ。」 乱れた音声が流される。女性※6の声だ。『…それに、ギャツビー中佐※7も死んでしまった。船が破壊される前に、脱出したポッドはほかになかった。多分助かったのは私だけ。私のポッドも墜落の衝撃で壊れて、雨が入ってくる。通信機とサバイバルキットはあるけど、環境スーツはその時に破損したようで役には立たない。ここは Lクラスの惑星で、大気の成分も呼吸には適してない。繰り返します。これは緊急救難信号です。私は惑星連邦の市民であり、宇宙艦隊の士官です。もし聞こえたら、返事をして下さい。どんな助けでも構いません。政府がお礼をします。それに何より、私には天の助けです。繰り返します。これは緊急…』 シスコは止めさせた。「もう止めていい。どれくらいで到着できる。」 ウォーフ:「最大ワープで向かって、6日ですが…。」 「もっと近くに船はいないのか。」 「いません。」 「ではウォーフ少佐、針路変更、ルサリアン星域にコースをセットしろ。」 「了解。」 「…チーフ、その女性と交信できるよう、こちらから呼びかけてくれ。で、つながったら、伝えろ。…『天の助け』がそっちに向かってると。」 微笑むオブライエン。 |
※1: このルリアンの特徴については訳出されていません ※2: krada legs ※3: Vega 太陽系から 26.5光年離れた恒星。別名こと座アルファ星。七夕の織女星 (織り姫)。TOS第1話 "The Cage" 「歪んだ楽園」でヴェガ植民星 (Vega Colony) が言及 ※4: キャシディ・イエイツ Kasidy Yates (ペニー・ジョンソン Penny Johnson) DS9第137話 "Far Beyond the Stars" 「夢、遥かなる地にて」以来の登場。声:弘中くみ子 ※5: Rutharian sector ※6: (Debra Wilson) 声:山像かおり ※7: Commander Gatsby |
本編
『艦長日誌、補足。遭難した宇宙艦隊士官の名前はリサ※8。彼女は救助を求め続けている。だが今のところまだ、チーフ・オブライエンは相互の通信ができないでいる。』 機関室。 リサの音声が流されている中、作業を行うオブライエン。 ベシアが入った。「どんな具合?」 オブライエン:「だめだ。何かの理由で、亜空間通信の周波数が周期的に変わる。信号を送り返す方法がなかなか見つからない。」 「それでしゃべりっぱなしなのか。」 「それもあるが…彼女は孤独だ。こっちは聞き続けるしかない。」 「相手はそんなこと知らないぞ。聞き続けていることはもちろん、いらついてることも知らない。」 「別に嫌じゃない。俺に話しかけてるように思えることさえある。……ほんとだ。特に家や家族の話をしてる時はね。従兄弟を思い出すよ。」 リサ:『…全くもう、ほんとに信じられない。また雨が降ってきた。どうしてこんなに水があるのに…』 ベシアは出て行く。「二人っきりにしてやるよ。」 リサ:『…ほんとにここが嫌いになってきた。繰り返します。これは緊急救難信号です。もしもし? 誰か聞いていませんか? 誰かいますよね? 聞いてるのはわかってます、だったら答えて下さい、今こちらに向かってると。私を助けに来るって。独りぼっちで死なせないと言って。』 オドーはクワークの店に入った。スツールが背もたれつきの物になっている。 ジェイクの近くにいるクワーク。「満足してくれたか? 俺のクリエイティブな面を否定するのが楽しいんだよな。」 オドー:「ハ! あのスツールが芸術表現なのか。そんなこと思ってるのはお前ぐらいなもんだ。」 「そうか。ならあんたはクリエイティブかい? 少佐への…プレゼントは決めたのかい?」 「…プレゼント?」 「今度の土曜にさ。…今度の土曜は知ってるよなあ。」 「土曜か。」 「そうだ。キラ少佐との初デートから 1ヶ月目の記念日だ。」 「うーん。そのようだな。」 「ならもう決めたんだろ?」 「フン、なぜそんなことを。」 「ああ…3年間ひたすら片思いに胸を焦がし続けた男が、今ようやく彼女の愛を手に入れたんだ。それを祝わないなんて男としてどうかしてる。」 「何を売りつけようとしてるか知らんが、ダメだぞ。」 「俺が口を出すと思うか、やめてくれ。土壇場になってプレゼントを探す、パニクった男とつき合うのだけは、御免だぜ。ハ、プロムナードにはいくらでも店がある。もしプレゼントを買いたきゃ、どうぞ。」 「フーン、1ヶ月記念のプレゼントだと? フン…そんな馬鹿な話聞いたことあるか?」 ジェイクはうなずいた。 店を出るオドーを、クワークは見ていた。 オドーは露天で品定めを始める。 クワークに近づいたジェイク。「なるほど。オドーにプレ…」 クワーク:「シーッ!」 小声になるジェイク。「プレゼントさせてどうするつもり。」 クワーク:「話したら書くだろ、そうなりゃ俺はたちまち御用だ。」 「いや、絶対書かない、約束する。ただの人物研究さ。」 「そうか。」 「クワーク、聞いて。犯罪小説書いてんだけど、今壁に突き当たってるんだ。つまり、真実味がないんだな。インチキな作り事なんだ。血の通った、リアルで迫力ある人物が書けない。特によこしまなキャラクターをね。」 ジェイクを見るクワーク。「…だから今からしようとしてることを見学させてもらえれば、何をしようとしてるにしろ、すごく助かると思う。きっと内面が見えてくる。クワークをモデルにして書けるかもね。」 「…レッスンその1。違法な活動でも積極的に行動すれば、悪いことやってるとは思わなくなる。」 「…そうか。」 「俺はビジネスマンだ、いいな。…それで、もしお前が俺のビジネスをもっと知りたいなら、教えてやれないこともない。」 喜ぶジェイク。「やった!」 クワークは小声で話す。「だがここで見たり聞いたりしたことを、一切本に書くんじゃないぞ。いいか、何一つだ。特に親父には黙ってろよ。」 ジェイク:「…わかった。」 機関室にはリサの声が流され続けている。『…もちろん太陽は存在する。だから日が昇ってくると、今私がいるひどい世界が見えてくる。あるのはただ泥と、岩ばかり、泥また泥、岩また岩…』 イエイツ:「チーフ。」 オブライエン:「うん?」 「個人的なこと聞いてもいい?」 「…ああ。」 「あなたは、この私がディファイアントに乗ってて不愉快?」 「いいや。どうしてそんな。」 「私民間人だから、戦艦の中ウロウロするの目障りじゃない?」 「民間人乗せるの、初めてじゃない。気にはならない。」 「そう言われると思った。」 「何だって?」 リサ:『…もしもし!』 イエイツ:「何でもない、気にしないで。」 オブライエン:「ちょっと待って。」 リサ:『…受信しました! 聞こえますか?』 オブライエンがコンピューターを操作すると、リサの声が鮮明になってくる。『もしもし? もしもし? 2人の会話が聞こえる。そちらは聞こえますか?』 オブライエン:「聞こえる! ちゃんと聞こえてるぞ!」 『ほんとに! よかった! 誰だか知らないけど、愛してる!』 オブライエンとイエイツは笑った。 |
※8: Lisa |
リサの声を聞くシスコたち。 リサ:『私はリサ・キューザック※9。2日前までオリンピア※10を指揮していました。私の船です。』 シスコ:「オリンピア?」 『8年あまり前、ベータ宇宙域の長距離探査のため、連邦を発ちました。』 「船はどうしたんです、艦長。」 『ようやく帰途につくと、偶然にも近くの恒星系に不思議なエネルギーをキャッチして、調査することに決めました。すると第4惑星に、見たこともないエネルギーバリアを発見したんです。スキャナーで探査すると、量子反応が引き起こされ、メトリオン放射線※11の激しいサージでエンジンが止まりました。次の瞬間、急回転で地上に真っ逆さま。私は脱出を命じて、最後に覚えているのは、目の前の制御板が爆発したこと。気がつくと、地上の脱出ポッドにいて、1日半洞窟から亜空間通信で救助を求めていました。』 ベシア:「艦長、医療主任のドクター・ベシアです。お話では、そこは Lクラスの惑星だそうですが、本当ですか。」 『その通り。次の質問の答えも言うと、4時間ごとに 15シーシーの三酸化化合物※12を注射してる。大気中の過剰な二酸化炭素を中和するためです。医療用トリコーダーに従ってる。』 「薬の残りはどれぐらいです。」 『150ミリリットルだけど。』 「…注射する量ですが、減らしてもらえますか、艦長。6時間ごとに 8シーシーです。できるだけ節約して引き延ばしたいんです。」 イエイツ:「薬がなくなったら、彼女どうなるの?」 リサ:『それはいい質問ね。ドクター、どうなるのかしら。』 ベシア:「やがて、低酸素症の症状が現れ始めます。ですがそうなるまでに、三酸化化合物が、心肺系を強化してるので、その症状にかなり耐えると思われます。」 『「その症状にかなり耐える」。つまり、空気を求めてもがき、あなた方が来る頃には私真っ青な顔で死ぬ寸前ってこと?』 「…ええ、そういうことです。」 『明るい気持ちになってきた!』 イエイツ:「何かできることあります?」 『ないこともない。眠れないの。注射のせいで目がさえちゃって。それにこの 2日間、誰とも会話してない。』 シスコ:「それなら、私たちが力になれます。ずっと通信をつないでおいて、必ず誰かに…相手をさせましょう。」 『楽しく相手しろと命じて下さい。』 「わかった。」 笑うオブライエン。 リサ:『それじゃあ、誰からですか?』 シスコ:「…まず私がいいでしょう。」 『私もそう思う。』 「…いろんなことがありました。あなた方が発ってからです。」 作戦室。 シスコ:「先月第二艦隊が、ベタゾイドのドミニオン軍を 3度叩きました。しかし彼らは常に援軍を呼び、増強を続けたんです。で、我々は…」 リサ:『わかりました、もう結構。』 咳をする。『お願い、戦争の話はやめにしましょう。気が滅入ってくる。』 「ああ、すいません。」 『いいえ、ほんとに残念。あなたや私にとっても、連邦のみんなにとっても。まさか戦争になるなんて。話題を変えましょう。いい知らせはないかしら。帰還するのが楽しみになるような話よ。人はまだ恋をし、結婚し、家庭を作ってるんですよね?』 「…そうです。」 『よかった。あなたはどうです? 結婚してる?』 「いえ。」 『恋人は? 詮索は嫌いだけど、宇宙艦の艦長にまだ明るい面もあるって思いたいんです。』 「ああ…つき合ってる相手ならいます。」 喜ぶリサ。『ああ、それにしましょう。その人の名前は、何て言うの?』 シスコ:「キャシディ・イエイツ。」 『キャシディ? さっき私が話した、あのキャシディさん?』 「その通り。」 『彼女も士官?』 「いいえ、民間人です。貨物船の艦長。」 『まあ…あまりうまくいってないみたいですね。』 「どうしてそう思うんですか。」 『あなたの声が楽しそうじゃないもの。彼女の名前言った時、急に緊張した。戦争の話の方がリラックスしてたわ。』 シスコは無言になり、別のパッドを取りに行く。 リサ:『…ベン? まだいるんでしょ?』 シスコ:「…ええ。ちゃんと聞いてますよ。あ…ただその…不意を突かれて。ちょっとね。」 『わかりますよ。私も上級士官になる前、民間人と 6年つき合ってた。』 苦しそうなリサ。『聞きたい? 是非聞かせてあげる。』 シスコは止めようとしたが、構わず話し続けるリサ。『だって、面白い話で、聞けば元気が出るわよ。出会ったのはアンドリア※13。当時私は連邦大使館で武官をしてて、彼はアンドリア農務省の職員だった。初め私は関わりたくなかった。彼のオフィスに行くと、いつも私をチラチラ見て、イヤな奴と思った。』 店の客を押し分けるクワーク。「すみませーん、通して下さい。すみません、恐れ入ります。オドー!」 箱を持っているオドー。「これだ。用意したよ。」 クワーク:「見てもいいか?」 オドーは考えたが、中身のペンダントを見せた。 2人の様子を遠くから見ているジェイク。 クワーク:「オー、バッチリだ、すごいよ。きっと少佐も気に入る。…どうやって渡すんだ? 記念日の晩の演出だよう。」 オドー:「演出など考えてないが。」 「ああ。よかった、幸い時間はまだある。」 オドーを呼び、ケースを開けるクワーク。「どれにする?」 「ホロスイートのプログラムか。」 「これは記念日なんだぞう! 特別なことしなきゃ。」 「プレゼントを買った。」 ケースを閉めるクワーク。「好きにしてくれ。でももし俺なら、一生探し求めた真実の愛をつかんだからには、毎月記念日には、お祝いするねえ。」 オドー:「わかった。ちょっとそのプログラムを見せてくれ。さあ!」 ケースを持っていくオドー。ジェイクは見て見ぬ振りをする。 オドーは 2階へ上がっていった。 クワーク:「これで保安主任は土曜の晩、忙しくなりそうだ。つまりステーション中、俺をつけ回すこともできなければ、エアロックに犯罪者が来ても気づかない。貨物室で違法な取引があっても、それどころじゃないだろう。」 ジェイク:「でも、部下がいる。」 「部下なんか平気さ。オドーさえいなけりゃ。この俺にとって最大の悩みは…儲けた金の使い道さあ!」 ジェイクをつかむクワーク。ジェイクは笑った。 医療室に流されるリサの声。『…姉たちは 2人とも教師をしてる。よくできると感心する。私は、子供に耐えられない。』 ベシア:「なるほど。」 『もちろんみんなは子供が好きだけど、私はねえ。」 「そう。」 『あなたはどう? 子供好き?』 「まあね。」 『…ほんとに?』 「ええ。」 『ねえ、ドクター。もしかしたら…そう、ほんとにもしかしたらだけど、あなた私の言ってることにあまり…ちょっと待って。何なの? そこで何か動いてる。…近づいてくる!』 「何?」 『あっちへ行って! やめて、何もしないで!』 「艦長、どうしたんです。」 『お願い、あっちへ行って! いや、やめて。」 絶叫するリサ。「いやー!」 |
※9: リサ・キューザック艦長 Captain Lisa Cusak ※10: U.S.S.オリンピア U.S.S. Olympia クラス・番号不明。古代オリンピックが開かれた、西部ペロポネソスの地域にちなんで ※11: metreon radiation VOY第15話 "Jetrel" 「殺人兵器メトリオン」でメトリオン爆弾 (metreon cascade) が言及 ※12: tri-ox compound 薬物。TOS第34話 "Amok Time" 「バルカン星人の秘密」など ※13: アンドア Andor アンドリア文明の母星。DS9第143話 "In the Pale Moonlight" 「消された偽造作戦」など。その後のセリフで「私をチラチラ見て」と訳されていますが、原語では「私に触角を向けてきて」。言うまでもなくアンドリア人だからですね |
ベシアは尋ねた。「キューザック艦長、聞こえます? もしもし?」 コンソールを操作する。「もしもし? まずい。」 濁った声が聞こえる。『女は死んだ!』 ベシア:「誰だ? 何をした?」 『俺は女を食った!』 「何?」 『女を食った! 構やしないだろう、どうせ話を聞いてなかった!』 ベシアは事態に気づいた。「…ほんとに申し訳ありませんでした。仕事に気を取られていて。」 声を戻すリサ。『私は患者よね、つまりあなたの仕事の一部。』 ベシア:「そうです、全くその通り。僕が間違ってました。…これからは気を入れて、話を聞きます。」 『うん、だけどいい知らせがある。私話疲れちゃった。…そろそろあなたが話して、死を目の前にした患者の気を紛らわせて欲しい。』 「あなたは死にません。」 『もう気分が晴れてきたわ。簡単なもんでしょ? さ、続けましょ。」 「では、何を話しましょうか。」 『患者に対してこんな接し方で、よく医学アカデミーを出られたわねえ。あなたはほんとに医者なの?』 「ええ、アカデミーを次席で卒業しました。」 『まあ、それはすごい。自慢しなきゃね。』 「…僕が自分で掘ったこの大きな墓穴からはい出すには、何時間かかかりそうな気がしてきました。」 『そんなことない。何日かかかるだけ。』 微笑むベシア。 DS9。 ノーシカン※14と通信しているクワーク。「この俺が保証する。ハイクオリティなクリスタルだ。この宇宙域でこの価格は、うちだけだよ。」 足音が聞こえてきた。咳で合図するジェイク。 オドーが降りてくる。 クワーク:「5日後、第3貨物室に。じゃあな。」 通信を終えた。 オドー:「これに決めた。」 受け取ったアイソリニアロッドを見るクワーク。「ああ、『1928年、パリ※15』。いい選択だ。今の地球人※16たちがどんな奴でも、過去は確かにロマンティックだ。」 オドー:「日曜の晩の 21時スタートで予約してくれ。」 「土曜日だよな。」 「…いいや、日曜だ。」 「初デートの記念日は土曜のはずだ。」 「そうだが、初めてのデートはひどいもんだったから、記念日にしたくない。それで初めてのキスを祝うことにしたんだ。」 「初めてのキス?」 「ロマンチックだろ?」 オドーは笑い、店を出て行く。 「ああ。」 オドーが出たのを確認して、慌ててコンピューターを操作するクワーク。「嘘だろ。つながれ!」 ジェイク:「どうしたの?」 「取引相手だ。チャンネルがつながらない。ああ…通信のプロトコルを変えたんだ。」 「だってさっき話してたろ。」 「…奴は手配されてる。亜空間通信には特に気を遣ってるんだ。当局の逆探知を恐れてな。…ダメだ。土曜の晩奴がここへ来るまで、連絡を取る方法がない。」 「なら、事情を話して取引は…翌日にすれば。」 「聞いてなかったのか? 土曜の晩はオドーがいる。そこへ奴が姿を現してみろ。その途端、奴も俺も『御用』ってわけだ。ああ…。」 「…なら、どうするの?」 「考えろ、今ある最善の選択肢は…ああ…もうダメだあ。ああ…。」 ディファイアント。 個室のベッドで横になっているオブライエン。「戦争が始まった時、こう思った。『大丈夫だ、経験あるだろ。…危険を避けて、仕事に集中しろ。それで乗り切れる。前の戦争と同じだ。』 だけど違った。…多分俺も変わった。…何て言うか…孤独感がどんどん増してる。もちろん人と会って、話したり笑ったりする。…だけどどこかでいつも思ってる。『…明日はもういないかもしれない。あまり親しくなるな。』 あ…すいません。今あなたにこんな話、すべきじゃありませんね。」 リサ:『いいえ、別にいいのよ、マイルズ。気にしてない。あなたにはそれを話す相手が必要だったみたい。』 「でも聞きたくないでしょ? ほんとは元気づけなきゃ。」 『私のことはいい。あなたこそ元気出して。』 「…情けないことになりましたね。」 『ねえ、あなたは去年たくさん戦闘を見て、それが重荷になってる。』 「…本当に艦長ですか? カウンセラーじゃ。」 『まあ、ほんとよ。でも大きな声じゃ言えないけど、船にカウンセラー乗せるって考え方嫌い。』 「俺もです。そりゃあ個人的に好きな人もいますけど…」 『ただ邪魔なことも少なくはない。』 「全く同感ですよ。でもそんなこと言ったら異端者です。…近頃の考え方に従えば、資格をもってる者だけが、悩みを聞き、アドバイスを与える。」 『必要なのはいい友達かも。』 「その通りです。」 『どこにいるの?』 「何の…ことです?」 『あなたの友達よ、こんな時力になってくれないの?』 「…それはつまり、そもそも俺がこんなこと話さないからです。だって、話すようなことじゃないでしょ?」 『うーん、それじゃ…友達に話せなくて奥さんにも話せなきゃ、誰が残ってるかしら。』 2人は同時に言った。「…船のカウンセラー!」 笑うが咳をするリサ。 ベシアの通信が入る。『すまないけど、18時になった。』 オブライエン:「もうなったのか?」 医療室のベシア。「悪いね。」 オブライエン:『まだ話してるんだ。』 リサ:『ねえ、私のことで喧嘩しないで。』 苦しむ。『マイルズ、続きは明日の朝ね。言ったこと考えて。』 ベッドのオブライエン。「そうですね。考えますよ。おやすみなさい、艦長。」 リサ:『おやすみ。』 ベシアに話すリサ。『ねえ、ジュリアン。仕事の邪魔でしょ? あなた忙しいから。』 ベシア:「今夜は非番です。」 『まあ。なら貴重な時間をまた私とおしゃべりして潰すつもり? もう 3日連続よ。書類が随分溜まってるんじゃない? こんな風に仕事の邪魔するの気が引ける。』 「書類は今日の午後、全部片づけました。ご心配なく。」 『それはつまり、遺伝子改良されたあなたの脳のおかげね。自分の仕事だけじゃなくて、10人分の仕事を同時にこなしてる。』 「なるほど。フン、『気分はどうか』聞こうと思いましたが、もう答えてくれましたね。悪くなさそう、とげのある言い方は健在だ。」 『スーパーマンとはいえ、またはずれね。正直言って、気分は全然良くない。』 「話して。」 『今日の注射、効いてないみたい。胸が強く締め付けられて、息がだんだん苦しくなってるし、頭を動かすたびに洞窟がグルグル回る。』 ドアチャイムが鳴った。 シスコ:「入れ。」 作戦室に入るベシア。 シスコ:「どうした。」 ベシア:「キューザック艦長の薬が切れました。二酸化炭素中毒の症状が出てます。」 「どうしてだ。少なくとももう 1日分はあると思っていたが。」 「私もです。恐らく衝突で、最後の瓶が壊れて痛んでたんです。」 「彼女はいつまでもつ。」 「せいぜい 2日です。」 「そりゃまずいな。到着まであと 3日だ。」 |
※14: Nausicaans ヒューマノイド文明。TNG第141話 "Tapestry" 「運命の分かれ道」など ※15: Paris, 1928 ホロスイート・プログラム名。エンサイクロペディアでは "Paris in 1928" ※16: 「人間」と吹き替え |
ブリッジ。 ベシア:「もっと早く行けないか。」 オブライエン:「そんなことわかってる。ワーププラズマは 97ギガヘルツまで上がる。それで速度はワープ 9.5 に達して、ほぼ 1日短縮できる。」 ウォーフ:「問題はワープ 9 を超えて、ディファイアントの構造をどう維持するかということだ。」 「その通り。そんな速度を出せば、船は文字通りバラバラに分解です。」 シスコ:「構造維持フィールドを強化する方法はないのか。」 「ほかからパワーをしぼり取るしかありません。」 「例えば。」 「防御の予備です。」 ウォーフ:「賢明ではありません。防御の予備を使ってしまったら、ドミニオン艦に遭遇した時、極めて不利な状況に陥ります。」 ベシア:「ここは前線からずっと離れてる、ウォーフ。敵に遭遇する可能性なんかほとんどない。」 「危険を冒すべきではない。」 「もっと早く行かなきゃ、彼女は確実に死ぬんだ。」 シスコ:「…フェイザーの予備を使え、チーフ。可能な限り急げ。」 「了解、ありがとうございます。」 イエイツが入る。シスコは気づいたが、声もかけない。 イエイツ:「…どうかしたの?」 シスコ:「この船の速度を上げる。彼女の状態が悪化した。」 「そうなの。何かできることない?」 「ないと思うな。」 「…そう、ならまた後でね。」 「そうだ。」 「そうね。」 出て行くイエイツ。 作戦室。 シスコ:「あなたは本当に聞きたいんですか?」 リサ:『信じて、ベン。私は今自分のことより、あなた方の愛の問題の方が心配なの。』 咳がひどい。 「そう。夕べキャシディがブリッジに来た時、とにかく出て行ってもらいたかったんです。理由はわかりません。」 『彼女はそこにいるべきじゃないから、それが理由。彼女が立ち入っちゃいけないと、あなたは知ってる。任務を離れれば、あなたは彼女を必要としてる。でもディファイアントじゃ、彼女は秩序を乱す。…どこにも当てはまらない、パズルのピース。』 「…彼女は直前任務で、船団の連絡担当でした。しかも優秀でした。」 『これは彼女の問題じゃない。あなたの問題。彼女がディファイアントに乗ってると、あなたは仕事が上手くできない。それは二人の関係にも影響し、また別の問題を引き起こす。難しく考えないで。私生活と仕事を混同しちゃいけないってこと。誰だって同じよ。私だってそう。昔、姉と同じ宇宙基地に務めたけど、それはもう悪夢だった……。』 「あなたに会うのが楽しみです。同じように感じているのは、私だけじゃないと思います。」 『…余計だけど…その船の全員が、少し休んでもいいかも…。」 クワークは貨物を開けた。中にはいくつものクリスタルが入っている。「どうだ、綺麗だろう。」 ジェイク:「すごいね。」 触ろうとしたジェイクの手を叩くクワーク。「いくらになるはずだったと思う。延べ棒ほぼ200本だ。」 笑うジェイク。「大金だ。」 クワーク:「そうとも大金だ。ところが、今じゃ箱詰めのゴミだ。」 「…まだチャンスは残ってる。オドーに見つからないかもしれない。」 「無理だ、絶対見つかる。オドーは俺をぶち込んだら幸せだろうなあ。…いろいろしてやったのに。」 「…例えばどんな?」 「…真実の愛を見つけるのを手伝った。だってそうだろう。そもそも俺がいなかったら、オドーとキラ少佐はつき合うこともなかった。心の痛む…寂しい夜も俺がついててやった。彼女はまだシャカールとつき合ってて、奴はみじめだった。俺が行動を起こせと言った。…俺があきらめるなと励ました。俺がいてやった。…で、俺は何を得た? 何もなし。奴は未だに…俺を見張り、ちょっとした規則違反でケチをつけ、俺を刑務所にぶち込むチャンスを…楽しみにしてる。…金儲けの秘訣、285条を忘れてた。」 貨物のふたを閉めるクワーク。「『良い行いは、必ず罰せられる。※17』」 貨物室をジェイクと共に出て行くクワーク。 その直後、中の貨物の一つが変形し、オドーになった。 クワークの店。 ウェイターから渡されたグラスを、ジェイクにも渡すクワーク。「失敗に。」 ジェイク:「そんな乾杯できないよ。」 「ジェイク、あと 10分で商売相手の船が到着する。15分後、オドーがそいつを逮捕。20分後、俺の名前を吐く。25分後には、オドーが令状を持ってやってくる。せめて乾杯ぐらいしてくれえ。」 乾杯する 2人。 クワークは、ドレスを着たキラと、スーツを着たオドーが店へ入るのを見た。 オドーが近づいてくる。「クワーク。やっぱり今からホロスイートを使いたいんだが。」 クワーク:「ほんとに?」 「そうだ。少佐もお前と同じ意見だった。彼女も最初のキスじゃなく、最初のデートを祝いたいそうだ。それで来た。ホロスイートだが、まだ空いてるか?」 「それなら…ご自由にどうぞ。」 「プログラムをくれ。」 クワークはカウンターからアイソリニアロッドを渡した。「オドー。楽しんでくれ。」 オドー:「ありがとう、楽しませてもらうよ。」 「ああ。」 離れるオドー。 クワークはジェイクに言う。「信じられん!」 ジェイク:「僕もだ。」 「この勝負、俺の勝ちだ、ジェイク。しかも何が嬉しいって、俺はオドーを出し抜いた。とうとうオドーに勝った。ジェイク、やったぞ! 勝ったんだ。」 笑うジェイク。 階段を上りながら、クワークを見たキラ。 「まあ、幸せそう。」 オドー:「でしょうね、今年一番の儲けですから。」 2階へ行く二人。 キラ:「でもどうして、オドー。ほんとにデネヴァン・クリスタル※18を密輸させていいの?」 オドー:「借りがあります。今回は見逃しましょう。」 下ではクワークとジェイクが店を出て行くのが見える。「でも今回…だけです。」 抱きつくキラ。「それにしても、あなたをわかったつもりでいると、いつも驚かされるのはなぜ? …今夜だって、1ヶ月の記念日をパリで祝うなんて、どこで思いついたの。」 オドー:「さあ。秘密のままにしておくのも、いいのでは。」 二人はホロスイートへ向かった。 ディファイアントはワープを終えている。 到着した惑星の周りには、バリアが張られていた。 シスコ:「バリアをスキャンしろ。ただし使うのはパッシブセンターだけだ。アクティブスキャンを行ったため、オリンピアは破壊された。」 オブライエン:「了解。」 ウォーフ:「惑星の核の不安定な元素によって作り出された、表面的なフィールド※19のようです。」 ブリッジに入るベシア。「彼女が意識を失いました。中毒症状の最終段階です。45分以内に収容しないと、助かる見込みはありません。」 オブライエン:「艦長、ディファイアントはバリアを通過できません。エネルギー成分は亜空間メトリオン放射線です。近づいたりすれば、ワープコアのダイリチウムコアが崩壊し、オリンピアと同じように地表へ墜落します。」 |
※17: No.285 "No good deed ever goes unpunished." 現時点で最後の条文。DS9第44話 "The Collaborator" 「密告者」での訳は「人助けはしょせん報われぬもの」 ※18: Denevan crystals デネヴァは TOS第29話 "Operation - Annihilate!" 「デネバ星の怪奇生物」で登場した惑星 ※19: exogenic field |
ブリッジ。 シスコ:「選択肢は。」 ベシア:「転送できないか。」 オブライエン:「だめだ。転送範囲に入ると、バリアに近づきすぎる。」 シスコ:「シャトルではどうだろう。あの通常エンジンは、反物質を使わない。」 ウォーフ:「シャトルがバリアの中で重力場ストレスに耐えるのは難しいと思われます。」 ベシア:「難しくても、不可能じゃないわけだ。」 シスコ:「遥々ここまでやってきた。危険は承知だ。ドクター、オブライエン、一緒に来い。ウォーフ、後を頼む。」 ウォーフ:「了解。」 3人は出て行く。艦長席に座るウォーフ。 ディファイアント下部のドアが開き、シャトル※20が発進する。 バリアへ向かうシャトル。 シスコ:「シスコよりディファイアント。これよりバリアに突入する。」 ウォーフ:『了解しました。幸運を、大佐。』 「ありがとう、少佐。」 バリアを抜けていくシャトル。 オブライエン:「シールド低下、73%。」 シスコ:「メインパワーグリッド、オフライン。バックアップに切り替え。」 「シールド、50%。」 「ナビゲーションコンピューター、ダウン!」 ベシア:「補助ナビを起動。」 オブライエン:「バリアを通過。」 バリアを抜けたシャトルは、更に降下していく。 シスコ:「被害を報告しろ。」 オブライエン:「右舷の船体に、ねじれがあります。それ以外は無事です。」 「地上のスキャンだ、ドクター。」 ベシア:「生命反応は確認できません。待って。墜落地点です。洞窟があります。」 「着陸できる場所はあるか。」 「はい。」 オブライエン:「残り時間は?」 「かなり厳しい。20分でシャトルに収容して、船へ戻らなきゃ。」 激しい雨が降る地表。降りてきたシャトルは洞窟の入り口へ向かった。 ライトを持って洞窟を進むシスコたち。 雨が降り注ぐ中、トリコーダーを使うベシア。「まだ反応はありません。」 シスコ:「奥に進んだとすれば、そっちの方向しかない。」 洞窟の奥には雨が降り込んでいない。 ベシア:「ここです。」 トリコーダーで調べる。 その下に横たわっていたのは、白骨化した遺体だった。 ベシア:「地球人※16の女性です。死亡した時の年齢は、51歳。死因は…二酸化炭素中毒です。」 手にはハイポスプレーを持ち、近くには亜空間通信機がある。制服は旧式のものだ。 無言のオブライエン。 シスコ:「リサのはずはない。これは何年も前に死んでる。」 ベシア:「3年と 2ヶ月前です。でも特徴は一致します。年齢、階級、死んだ場所。」 「3年前に死んだとすると、どうして我々と会話できる。」 オブライエン:「…エネルギーバリアの影響じゃないでしょうか。彼女の亜空間通信機の信号が、バリアのメトリオン放射線を通過した時、何らかの原因で未来へタイムシフトを起こした。」 ベシア:「ならこっちから送った信号は。」 「それもバリアを通った。同じように時間をさかのぼった。」 シスコ:「…過去の人間と会話していたわけか。」 ベシア:「…これからどうします?」 オブライエン:「…埋葬します?」 シスコ:「…いや、ここじゃだめだ。洞窟で独りにはできない。一緒に連れて帰って、ちゃんとした葬儀をする。みんなで囲んで。」 DS9 に帰還したディファイアント。 上級士官室では、魚雷の容器を使った棺に、連邦の記章が入った布がかけられている。 ダックス:「アイルランド式の通夜※21。死者を偲んで心に刻み、同時に命を讃えるの。」 みな部屋に集まっている。 ウォーフ:「私たちはどうする。」 「そう、飲んで歌を唄って、泣いて笑って、故人の話をする。」 「それなら、クリンゴンと同じだ。」 イエイツに近づくシスコ。「やあ。」 イエイツ:「どうしたの?」 「これが終わったら、君に話したいことがある。ずっと思っていたことだ。」 「わかった。あ…それ、私のこと?」 「というか、私自身のことだ。」 「ああ…それならよかった。」 「…ちゃんと説明したいんだ。ああ…近頃の私の態度…」 話を止めるイエイツ。「それは楽しみね。でも食事しながらにしましょ? あなた作る?」 シスコ:「そうしよう。」 ベシアが棺の前に立った。「みんな、ちょっといいかな。一言だけ。彼女と話したのは、とても短い時間だけど、心からリサ・キューザックを…尊敬しました。これからも寂しく思うでしょう。ついでに言うと、大方の意見とは違って、僕は決して…万能の医者ではありません。傲慢で自己中心的に見えるかもしれませんが…」 笑い声が起こる。「どうして誰も反対の声を上げてくれないのかな。」 笑うダックス。 オブライエン:「ああ、どうしてもというなら僕が。」 ベシア:「どうしてもだよ。」 「なら異議あり。」 「ありがとう。マイルズ・エドワード・オブライエン。でも心はもってる。みんなを本当に心配してる。自分の仕事のことばかり、考えてるように見えてもね。…時々こんなことも言わなきゃ。そのことを僕にわからせてくれた女性、リサ・キューザックに。」 オブライエン:「リサに。」 ダックス:「リサに。」 みなグラスを掲げ、口にした。 棺に近づくオブライエン。「彼女と握手もしてないし、顔だって見てない。なのに、俺を笑わせ、泣かせた。彼女はたった独りで、俺は友達に囲まれてきた。なのに、彼女より孤独だった。俺たちみんなが、バラバラだ。誰も望まなかったのに、そうなった。戦争が、俺たちを…バラバラにした。リサ・キューザックは…友達だった。だけど俺にはみんながいるし、これからも友達でいたい。やがていつの日か目覚めると、ここにいる中からも、誰かがいなくなってる。でもその死を悼む時も、独りではなく、君たちといたい。リサに。彼女の優しい声に。」 オブライエンはベシアと乾杯した。 |
※20: 名前は言及されていませんが、「シャトルクラフト・チャフィー (Shuttlecraft Chaffee)」とされています。アポロ1号の宇宙飛行士、ロジャー・チャフィーにちなんで。デザインは Doug Drexler。このシャトルはタイプ10 とされ、シャトル格納庫の様子と共に初登場です ※21: Irish wake |
感想
シーズン・フィナーレの一つ前のエピソードは、戦争における人々の心的な面を描いた、静かなものとなりました。「声」というタイトルにふさわしく、リサ・キューザックだけではなく他の登場人物も長台詞が多いですね。こういう普通のエピソードこそ、実はスタートレックらしさを一番出していたりするものです。サブストーリーのオドーとクワークも、相変わらずでよかったですね。 再開された第6シーズンも、来週で終わり。今までの期間をもう一度繰り返すと、完結してしまいます。嬉しいのと同時に寂しいですね。 |
第148話 "Time's Orphan" 「時の迷い子」 | 第150話 "Tears of the Prophets" 「決意の代償」 |