ワープを続けるシェナンドー。 
 ジェムハダー船が追ってくる。 
 ジェイク:「僕たちどんどんドミニオンの支配域深く入り込んでるぞ。」 
 ノーグ:「ほかにどうしようもないだろ、こっちがコースを変える度に差が詰まってくる。」 
 「どうせ最後は追いつかれる。連邦の支配域に向かった方がいいよ。このまま進んだらカーデシア・プライムに突っ込む。そうなったらおしまいだ。」 
 コンピューター:『警告。敵の射程圏内に入りました。』 
 揺れるランナバウト。 
 皮肉を言うジェイク。「警告ありがとう。」 
 ノーグ:「よし、通常飛行に移る前に、シールドを張って補助パワーをフェイザーに回そう。」 
 「待てよ、ワープをやめる気か?」 
 「戦わなきゃならないなら通常飛行だ。少なくとも機動力がずっと良くなる。」 
 「お前フェレンギだろ? そんなのより取引か何かしろよ!」 
 また攻撃を受ける。 
 ノーグ:「…敵は聞く耳なんてもたないって感じだね。それじゃいくぞ。」 
 シェナンドーはワープを終え、反転した。 
 ノーグ:「よーし、来たぞう。」 
 更に攻撃を受ける。 
 反撃するシェナンドー。応戦が続く。 
 ジェイク:「シールド、30%だ。」 
 ノーグ:「わかってる。」 
 「メインパワーがダウンする。」 
 「武器を生かして、ほかのものはみんな切るんだ。生存維持装置もだ。」 
 「別の船がやってくるぞ。方位 1-7-0、マーク 2-1-5。」 
 「ジェムハダー? カーデシア?」 
 「これは…ディファイアントだよ!」 
 「何?」 
 ジェムハダー船を攻撃する連邦艦。 
 ノーグ:「違う、ディファイアントじゃない。船の番号が NCC-74210。U.S.S.ヴァリアント※7だ。」 
 ジェイクは窓からヴァリアントを見る。「ヴァリアント? いい名だ、ジェムハダーの船なんか吹き飛ばして木っ端微塵に…」 
 爆発で吹き飛ばされるジェイク。 
 近づくノーグ。「ジェイク! ジェイク…」 
 2人は転送された。
  
 ヴァリアントの転送室に実体化する 2人。 
 「大丈夫ですか?」 女性の候補生が声をかける。 
 ジェイク:「ああ…ああ。あー、平気。別に大したことない。候補生? ああ…チーフ?」 
 その候補生は階級章とは別の記章も首元につけていた。「臨時代理チーフ、ドリアン・コリンズ※8です。艦長がブリッジにお連れするようにと。よろしいですか?」
  
 戦闘が続くブリッジ。 
 女性の候補生が報告する。「メインパワー維持、補助パワー復活。シールド 84%。」 
 艦長席に座っているのも候補生だ。「操舵手コースセット、方位 2-1-5、マーク 3-1-0。」 
 もちろん、操舵のシェパード※9も。「2-1-5、マーク 3-1-0、了解。」 
 艦長:「量子魚雷用意、出力最大※10、フルスプレッド。」 
 コリンズたちがブリッジへ入る。※11 
 女性:「核出力最大、フルスプレッド了解。」 
 艦長:「操舵手、攻撃パターン・シエラ※12 4。」 
 シェパード:「シエラ 4、了解。」 
 女性:「現在シールド 78%。」 
 艦長:「補助パワーをシールドに回せ…」 
 ノーグはジェイクに言った。「これレッド・スクワッド※13だ。」 
 ジェイク:「レッド・スクワッド?」 
 「アカデミー候補生のエリートクラスだ。彼らは最高の連中だ。レッド・スクワッドは訓練も特別、部屋も特別、何もかもが違う。」 
 「船までもってるのか。」 
 「ランナバウトとかシャトルなら、指揮を執るって聞いたけど、まさか宇宙艦なんて。」 
 女性:「…9.5、1.0。」 
 ジェムハダー船を追う。 
 艦長:「撃て。」 
 攻撃を受け、敵船は爆発した。 
 歓声が起こる。「やったー!」 「よし!」 
 艦長:「元に戻れ。」 通信を行う。「こちら艦長だ、レッド・アラート※14解除。各部署は被害と負傷者の状況を、副長に報告せよ。」 席を立ち、ノーグたちに近づく。「君たちが無事でよかった。僕が指揮官のティム・ワターズ※15だ。この船にようこそ。」 
 握手するノーグ。「ありがとう。艦長?」 
 ワターズ:「その通りだよ、少尉。戦場での指揮とこの船を、亡くなったラミレス艦長※16から任された。その権限で、レッド・スクワッドのメンバーを昇進させ、必要な配置に就かせた。」 
 「…なるほど。えーと、僕はノーグ少尉、彼はジェイク・シスコ。ディープ・スペース・ナインから来た。」 
 「シスコ? ベンジャミン・シスコの息子か!」 
 ジェイク:「そうだよ。」 
 「ああ…お父さんの噂は聞いてる。同じ道を歩まなかったようだねえ。」 
 「そう、僕は記者だ。」 
 「手当てをしなきゃな。チーフ。」 
 コリンズ:「はい。」 
 「シスコ君を医療室へ案内しろ。」 
 「はい、艦長。こちらです。」 出て行く 2人。 
 女性:「被害の続報が入りました、艦長。」 パッドを渡す。 
 ワターズ:「ああ…どうもありがとう。ああ、ノーグ少尉だ。カレン・ファリス※17中佐、この船の副長だ。」 
 ノーグ:「よろしく。」 
 素っ気ないファリス。「ええ、少尉。…艦長、デューテリアムインジェクターの始動時に、相変わらずパワーの急変動が見られると、機関室から報告です。」 
 ワターズ:「解決したんじゃなかったのか。」 
 「そう思ってましたが…」 
 ノーグ:「側面インパルスコントロールシステムの再設定は?」 
 「…いいえ? …インジェクターと何の関係があるの?」 
 「ええ、インジェクターの始動時には、インパルスシステムが同じパワーリレーを共用してるんです。」 
 ワターズ:「…やってみよう。」 不服そうなファリス。「ノーグ君、待機室※18で待っててくれ。」 
 ノーグ:「はい、艦長。」
  
 ジェイクを治療するコリンズ。「訓練航海は 3ヶ月の予定で、7人の士官と 35人の候補生が乗り組んだ。候補生に操縦させ、士官が観察して評価する予定で。」 
 ジェイク:「それじゃあ、この船は訓練艦だったの? ほら、ほかにもあるだろ。そう…リパブリック※19みたいな。」 
 「いいえ。そうじゃない。リパブリックは古い船で、もう 50年もテラ系を離れてない。…ヴァリアントは最新型の戦艦よ? 私たちの任務は、連邦の全域を回って帰還すること。」 
 笑うジェイク。「連邦の全域だって? だって候補生が動かす船でしょ?」 
 コリンズ:「ただの候補生じゃない、シスコさん。レッド・スクワッドの候補生よ。」
  
 壁にレッド・スクワッドのエンブレムが貼られている。 
 ワターズ:「ケプラ星域※20を通過してた時、戦争が起こった。知ってると思うけど、ドミニオン軍は初日にその星域を制圧した。」 
 ノーグ:「前線の向こうに取り残されたんですね。」 
 「その通り。僕たちは連邦の支配域に戻ろうとしたが、その時カーデシアの巡洋艦に遭遇した。アル・ガターク※21近くだ。それが初めての戦闘だった。戦いが始まって 15分で 4人の士官が戦死…ラミレス艦長含む残りの 3人も重傷を負った。」 
 「それであなたが艦の指揮を?」 
 「違う。ブリッジに行くと、艦長はひどい怪我だったけど、意識ははっきりしてて、医療室には行かないと言った。この船はメインパワーを失い、漂流していたんだが…カーデシアの巡洋艦も似たような状況だった。だからそれは時との戦いだった。先にメインパワーを回復した方が…決定的優位に立てるわけだ。……ラミレス艦長は、気丈な方だった。肺が破裂したボロボロの体で、最期まで緊急対応の指揮を執り続けたんだ。偉大な人だったよ。」 
 「競争に勝ったんですね。」 
 「僕たちは武器と通常エンジンを、たった 3時間で復旧させた。そしてカーデシアの船を破壊した。翌日艦長が亡くなる直前に…僕にヴァリアントの指揮を執るよう命じた。」 
 笑うノーグ。「すごいな、信じられない。もう 8ヶ月も前線の敵側にいるなんて。」 
 ワターズ:「僕の手柄じゃない。クルー全員の力だ。17歳の候補生たちが、倍の年の士官たちの仕事を立派にこなしてる。しかも極端に少ない人数で。士官を増やすのもいいかなあ。」 
 立ち上がるノーグ。「できることは何でも手伝います、艦長。」 
 ワターズ:「君はクラス7※22 のワープドライブに詳しいようだなあ。」 
 「よく知ってます、艦長。ディファイアントと同じエンジンです。」 
 「それはいい。今から君を機関長に命じる。おめでとう。」 握手するワターズ。 
 「…機関長ですって?」 
 「階級は少佐に昇進だ。まずは、なぜこの船がワープ3.2 を超えられないか調べてくれ。パートン※23君の話じゃ…」 
 「あ、あのすみませんが艦長、そ、そんな大役を受ける準備はまだできて…」 
 「僕たちに、誰一人準備ができてた者なんかいないよ、少佐。各自が臨機応変に対処してるんだ。するべきことをしてる。準備がどうであれ、君は機関長だ。」 レッド・スクワッドの記章を見せるワターズ。「きっと君ならできる、自分を信じるんだ。そして仲間を信じる。全てうまくいく。」 
 記章を見つめ、受け取るノーグ。「はい、艦長。拝命します。」 
 ワターズ:「頼むぞ、よく言ってくれた。それじゃあ、ワープドライブの問題が片づき次第、任務を続けよう。」 
 「…任務を続ける? どういうことですか。」 
 「この星域で活動してる、ドミニオンの新型戦艦※24のデータ収集が我々の任務だ。彼らの通信を傍受し、この区域にいるのはわかってる。でも、ワープ3.2 を超えられないからセンサーレンジに近づくことができない。」 
 「あなたがヴァリアントを指揮してることを、宇宙艦隊は?」 
 首を振るワターズ。「知らない。戦争が始まって以来、ずっと無線を停止して、交信を絶ってる。それはラミレス艦長の任務だったが、艦長が亡くなって…僕が引き継いだ。ミスは許されない。任務は必ず遂行する。どんなことをしても。」 
 ノーグは記章を見つめた。 
 ワターズ:「以上だ。」 
 うなずき、作戦室を出て行くノーグ。
 
 
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※7: U.S.S. Valiant NCC-74210、ディファイアント級。ヴァリアントという名前は当初ディファイアントのものとして考えられていたもので、またディファイアントのクラス名とされていた時期もあります。結局ディファイアント級ということになりましたが、ディファイアントの初期の製作イラストでは「ヴァリアント級」という表記が残っているものもあります。
  
※8: Dorian Collins (Ashley Brianne McDonogh) アポロ11号の宇宙飛行士、マイケル・コリンズにちなんで。声:湯屋敦子
  
※9: ライリー・オルドリン・シェパード Riley Aldrin Shepard (David Drew Gallagher) 宇宙艦隊候補生。DS9第84話 "Paradise Lost" 「地球戒厳令(後編)」以来の登場。声:浜田賢二
  
※10: 「光子魚雷」と誤訳。「核出力最大」とも
  
※11: この付近に記念銘版があり、書かれているのはジョン・F・ケネディの次の言葉です。"We set sail on this new sea because there is new knowledge to be gained and new rights to be won."
  
※12: 「CR」と訳されているような…?
  
※13: Red Squad 宇宙艦隊アカデミー候補生のエリート集団。DS9 "Paradise Lost" より
  
※14: 吹き替えのまま。言うまでもなく「非常警報」の意味です
  
※15: Tim Watters (ポール・ポポウィッチ Paul Popowich) 声:成田剣
  
※16: Captain Ramirez
  
※17: Karen Farris (Courtney Peldon) 声:落合るみ
  
※18: これも吹き替えのまま。普通は「作戦室」と訳される、艦長がいる部屋のことです
  
※19: U.S.S.リパブリック U.S.S. Republic 連邦宇宙艦。カークが候補生の頃に乗っていた船 (NCC-1371、コンスティテューション級、TOS第15話 "Court Martial" 「宇宙軍法会議」) と同一かは不明ですが、このエピソードの脚本ロナルド・D・ムーアによれば恐らくそうであるということです
  
※20: Kepla Sector
  
※21: El Gatark
  
※22: 「Mクラス」と誤訳。一体どこから?
  
※23: Parton
  
※24: ドミニオン戦艦 Dominion battleship
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