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ディープスペースナイン エピソードガイド
第140話「至高の絆」
Change of Heart

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・イントロダクション
クワークの店。
ダックスがフェレンギ人たちと、トンゴを楽しんでいる。「20 で売り。」
クワーク:「おい、冗談だろ?」
「冗談言ってるように見える?」
「ああ…パス。」
笑うフェレンギ。「何とかかわしたなあ。」

その様子を、ウォーフとオブライエンが 2階から見ていた。
ウォーフ:「彼女の勝ちだ。」
オブライエン:「50チップも負けてるぞ。」
「すぐ挽回する。」
「何で断言できる。」
「ジャッジアはディープなゲームをしてるんだ。今に彼女の作戦がはっきりしてくる。」
「へえ。…本当は、今どういう展開か全然わかってないだろ。」
「……ああ。」
笑うオブライエン。
ウォーフ:「だが多少は理解できるようになってきている。」
オブライエン:「いつから?」
「トンゴ・プレイヤーと結婚してから。一つはっきりわかることがある。ジャッジアは必ずあのバーテンダーに勝つ。」
「いや、どうだろうなあ。クワークはノッてる。先月なんか、206ゲーム連続で勝ち続けだ。」
「…じゃ、どっちが勝つか賭けてみるか?」
「いやあ、嫁さんが負ける方に賭けるのは気が引ける。」
「フン、度胸がないな。」
「何を賭けるんだ?」
「そっちが負けたらブラッドワイン、逆ならスコッチ一瓶。」
「乗った!」
握手する 2人。

トンゴを続けるダックス。「50 で売りに 100 で買いよ。」
フェレンギ人:「あー、だめだー!」
クワーク:「50チップも負けてるにしちゃあ、こりゃまた大きく出たなあ。」
ダックス:「払えないと思ってるのう?」
「そんなんじゃないさ。これ以上地獄に落とすのが嫌でね。俺は 100 で買いだ。これで、勝負だ。」
「そっちがそうくるなら、こっちもやり返さなきゃね。」 カードを出すダックス。
「すごい手じゃないか。」

喜ぶウォーフ。「エシュタ・パーマクカイ※1! ブラッドワインは熟成し過ぎない甘口がいい。」
オブライエン:「フン。」

クワークは尋ねた。「あんたの友達かい?」
ダックス:「ただのファン。」
「ファンの皆さんをガッカリさせることになるな。」 クワークもカードを出した。
「…フル・コンソーシアム※2?」
「フフン。」

オブライエンは言った。「207勝目だ。スコッチはシングルモルト、ハイランド産がいいな。」
ウォーフ:「ちょっと時間をくれ。」
「ああ、待ってるよう。」
ウォーフは下へ降りていく。
微笑むオブライエン。「うーん、207連勝か。」

クワークが話している。「ラチナムの延べ棒、36本頂きだ。」
降りてきたウォーフに言うダックス。「賭けに負けたの。」
ウォーフ:「まあ、どうでもいいことだ。」
「期待を裏切ってごめん。」
歩いていくクワーク。
ウォーフ:「他人に賭けて勝つよりも、君で負けた方がいい。」
抱きつくダックス。「うーん、何て優しいの。」
口づけする二人。

自室のウォーフとダックス。寝る準備をしている。
ダックス:「明日も例の訓練やるつもり?」
ウォーフ:「そのつもりだが、どうして?」
「夜のシフトのクルーが来る前に、外部センサーを調整しておきたいのよねえ。」
「16時までに、終わる予定だ。」 箱の前に座るウォーフ。
「ああ、じゃあ大丈夫ね。」
ウォーフは箱のふたを開け、腕を組む。
ダックス:「そうだ、サザーランド※3が明後日到着するんだけど、そしたら……。」
ウォーフがカーレスの像の前で、瞑想していることに気づいた。
祈りを終え、ろうそくを吹き消すウォーフ。「そしたら?」
「何でもない。」 ダックスはウォーフに着ていた服を投げつけた。「お話はもうおしまい。」
ウォーフもベッドに入り、抱き合ってキスをする。

ウォーフとダックスの、結婚式の写真が飾られている。
まだ二人が寝ているところへ、通信が入った。『キラよりウォーフ。』
起きるウォーフ。「…ウォーフだ。」
キラ:『休んでるとこ失礼。でもジャッジアと 2人で、すぐ司令官のオフィスへ来て欲しいの。』
「すぐに向かう。」 明かりをつけるウォーフ。
だがダックスは起きようとしない。
ウォーフ:「ジャッジア。起きろ。」
ダックス:「今起きる。」
ウォーフはダックスの毛布をひきはがした。
ダックス:「やだ!」

2人に話すキラ。「時間がないから本題に入るわね。この 2ヶ月間、艦隊はカーデシア人のスパイから定期的に軍事情報を受け取ってるの。その情報員が緊急連絡を送ってきて、至急艦隊側の人間と直接話したいって言ってる。13時間後に、彼が暗号化した亜空間通信をバッドランド付近のこの座標に送るって。」 パッドを渡す。
ダックス:「スパイの名前は?」
「情報部からの報告によると、名前はラサラン※4。でも、それしか教えてくれないの。だけど何度もしつこく念を押されたわ。彼は重要な情報源だから、すぐ誰かバッドランドに送るようにってね。それで…ディファイアントは留守だし、ランナバウトもほとんど第9艦隊との演習で出払ってるし。」
「で、私たちがバッドランド行きを志願する。」
「悪いわね。シェナンドー※5が着陸パッド『A』でスタンバイしてる。よろしく。」
司令官室を出ていく 2人。

着陸パッドから、ランナバウトが出発した。


※1: par'machkai
愛情を意味するクリンゴン語。DS9第105話 "Let He Who Is Without Sin..." 「享楽の星・ライサ」など

※2: full consortium

※3: U.S.S.サザーランド U.S.S. Sutherland
ネビュラ級、NCC-72015。DS9第131話 "You Are Cordially Invited" 「花嫁の試練」など

※4: Lasaran

※5: U.S.S.シェナンドー U.S.S. Shenandoah
ダニューブ (ドナウ) 級、NCC-73024。ヴァージニア州の川の名前

・本編
ワープ中のシェナンドー。
パッドを渡すウォーフ。ダックスはすぐに返した。「いや。」
ウォーフ:「いや?」
「いや。真夏のヴァルカンへ行って、フォージの山※6で 2週間もハイキングなんてね。」
「ずっと行きたがってたじゃないか。」
「それはそうだけど、ハネムーンは別よ。」
「候補としては、アンドア星※7の登山というのもあるが…」
「ウォーフ。あのねえ、ここで一つはっきりさせておきたいんだけど、ハネムーンでは一切、登山みたいに汗かくこと、それから血を流すようなことはいや。」
「それじゃあ、何がいいんだ?」
「ルームサービス。」
「ルームサービス?」
「思いきり怠惰に過ごしたいの。呼べばすぐ食事持ってきてくれて、困っちゃうぐらいに大きな部屋がいいの。バルコニーがあって、そこからの眺めのあまりの美しさに思わず涙が出るくらい。ハネムーンに行ったらねえ、一秒たりとも苦痛に耐えたりしないわよ。罪悪感だったら耐えるけど。贅沢のし過ぎで感じる罪悪感だけど?」 あきれるウォーフ。
「ライサか。」
「それじゃマンネリ。今行くなら、断然カスペリア・プライム※8。ホーヴィアン星団※9一のバケーションの星よ。」
パッドを見るウォーフ。「前からずっと狙っていたんだろ。」
ダックス:「結婚式はあなたの好きにさせたわよねえ。」
「いいだろう。ルームサービスだな。」
「ほんとに?」
「ほんとだ。」
「何だか拍子抜け。」 笑うダックス。
「もっと揉めたかったのか?」
「まさか、そうじゃないけど…簡単に降参するとは思わなかったから。」
「降参?」
「言い替えます。」
「そうだな。」
「そうね。でも事実よ、この頃不自然なくらい…寛大になってない?」
「それのどこがいけないんだ。」
「別に、ただ…不自然なの。具合でも悪いんじゃない?」
「俺は結婚したんだ。これまでの生き方を、多少は変えて当然だろ。」
「多少じゃないわあ。協調性の塊。次はユーモアのセンスでも身につける気?」
「もともとユーモアはある。エンタープライズでは面白い男で通ってたんだ。」
「相当つまんない船だったのね。」
ダックスを指差すウォーフ。「今のはジョークだな。そうだろ! 面白くはないが、ちゃんとわかったぞ。」
ダックス:「生まれ変わったあなたには、どうもなじめないわ。何だか不気味。」
「お前の良くないのは、変化を受け入れないところだな。」
「変化を受け入れないですって?」
「ああ、その通り。」
「冗談でしょ、私はこれまで 6回も体を変えてるのよ、ウォーフ。」
「ああ、なのに自分の枠に縛られてる。」
「それはこっちのセリフ。」
「毎晩、ベッドの同じ側で寝ないと気が済まないのは誰だ? 毎晩必ずきっちり 50回髪を解かすのは? 毎日朝食に同じ物を食べるのは。本はまず最後のページから読まなきゃいられないのは? それから…」
「ええ、わかったわよ! そんな退屈な女と、あなたよく一緒に暮らせるわねえ。」
「なかなか大変だよ。」
ウォーフを睨むダックス。
ウォーフ:「…今のは、ジョークだ。」
ダックス:「…今回の任務は、とっても長ーく…なりそうだわね。」
微笑むウォーフ。

DS9。
オブライエンの部屋のチャイムが鳴った。「どうぞ。」
タキシードを着たベシアが入る。「着替えてないのか。」
オブライエン:「そんな時間か?」
「17時って言ったろう。おい、ホロスイートへ急ごう。イギリスの諜報員 3人が、西ベルリンで消えたんだ。当然、MI5 はソヴィエトが絡んでると見てる。そこにアメリカが乗り出して…トンゴ・テーブルで何してる。」
「腕を磨いてる。」
「トンゴやるのか?」
「ああ。…昔な。…というか、一度やったことがある。ずっと前なんだが。フェレンギの海賊と、ロミュランの傭兵とな。」
「なるほど。それより、アメリカがイスタンブールから南太平洋への一連の通信を傍受しているということは、つまり…」
「一回やろうぜ。」
「マイルズ。」
「一回だけだ。」
「何で!」
「練習したいんだよ。」
ため息をつくベシア。
オブライエン:「クワークに勝ちたいんだ。」
ベシア:「がんばれ。」
「応援されてもしょうがない。緻密な戦略と、リスクの計算がトンゴの全てだ。」
「ルールも知らないよ。」
「これだ。」 パッドを渡すオブライエン。
「やればいいんだろ?」
「俺が親だ。」

停止しているシェナンドー。
ウォーフ:『シェナンドー日誌、宇宙暦 51597.2。バッドランド付近の指定座標へ到着。現在、ラサランからの通信を待っている。』
モニターに幾何学図形が表示されている。
ダックス:「これだわ。」
ウォーフ:「非常に高度な暗号マトリックスだ。」
「とにかく切れ者ね。」
ダックスが操作すると映像が切り替わり、カーデシア人が映し出された。ラサラン※10だ。『誰だ?』
ウォーフ:「私はウォーフ少佐、それにダックス少佐だ。艦隊情報部からメッセージを受け取るよういわれて来た。」
『クリンゴンか。なぜクリンゴンを送ってよこしたんだ。』
ダックス:「私はトリルよ? 少しはましなのかしら。」
『冗談のつもりか?』
「まさか、それは彼の専門よ。」
ウォーフ:「要求は何なんだ。」
ラサラン:『艦隊が喉から手が出るほど欲しい情報をつかんだ。創設者に関するものだ。連中がアルファ宇宙域のどこに何人いて、何をしてるか、全部わかってる。』
ダックス:「続けて。」
『聞きたいだろうな。そこでこっちの要求だ。今すぐここを脱出したい。』
「亡命したいの?」
『ここのヴォルタが俺を疑い始めてる。しつこくいろいろ聞いたり、俺の部署のセキュリティチェックを増やしたりしてな。これ以上ここにはいられない。』
ウォーフ:「わかった。そちらの要求を艦隊情報部に伝えて、脱出の手配をさせよう。」
『そんな悠長に待っていられないんだよ。15分後に俺はここを出て、スカーラ星※11のドミニオン基地へ向かう。カーデシアの母星を離れられるのは、恐らくこれが最後になるだろう。つまり、このチャンスを逃したら後はないってことだ。』
「スカーラはドミニオンが支配している領域だ。探知されずにその星で落ち合うというのは、容易なことではない。」
『クリンゴンは頭を使わなくていい。全部段取りはつけた。今日から 3日後の現地時間丁度 17時30分に俺は基地を出て、そのまま歩いてジャングルに入る。基地で俺がいないのに気づくまで、2日はかかるだろう。お前たちはただ俺を迎えに来るだけでいい。ただし、スカーラでは転送妨害装置が作動してて、俺をそっちの船に転送することはできない。着陸して、徒歩でランデブーポイントまで来い。地上でドミニオンのセンサーを回避するのに必要な情報を、今全て送る。俺の指示に従え。船を付近に待機させて、ランデブーポイントへ来い。』
ダックス:「情報は届いたわ。これで全部みたい。」
ウォーフ:「計画を検討する時間がいる。」
ラサラン:『聞いてなかったのか、時間がないと言ってるだろ。一旦ここを出たら、もうお前たちに連絡をとることはできない。迎えに来るかどうか、今この場で決めろ。』
ダックスはウォーフにうなずいた。
ウォーフ:「迎えに行こう。」
ラサラン:『俺も落ちたもんだな。クリンゴンに命を預けるとはな。3日後だ、遅れるな。』
通信が終わった。


※6: Vulcan's Forge

※7: アンドア Andor
アンドリア人の故郷

※8: Casperia Prime

※9: Horvian Cluster

※10: グリン・ラサラン Glinn Lasaran (トッド・ウォーリング Todd Waring DS9第34話 "Whispers" 「オブライエンの孤立」のデカーティス准尉 (Ensign DeCurtis) 役) 階級は台本より。声:小室正幸

※11: スカーラ Soukara

DS9。
トンゴをプレイしているオブライエンとベシア。
オブライエン:「いいぞ、30 で買いだ。それで 35 で売る。」
ベシア:「35 で買って、150で売る。差額をインデックス。」
「差額をインデックス?」
「マイルズ、あきらめろよ。君には向いてないって。」
「いや、見てろ。パスだ。……クワークはなあ、トンゴで 207連勝してるんだぞ。お前知ってるか?」
「で?」
「誰かが負かさなきゃ。」
「それが君か。」
「悪いか?」
「悪くはないけど、君には無理だ。勝負。」
負けたオブライエン。「ああ、クソ!」
ベシア:「もういい?」
「いや、まだまだ。」
「この調子だとさあ、クワークに挑戦するまで、あと 20年はかかりそうだなあ。」
「もう一回。」
「何でそんなに負かしたい。」
「チャレンジだ。」
「チャレンジ?」
「それで十分だろう。何で俺がエンジニアになったか、チャレンジさ。同じ川を、カヤックで毎週毎週 7年も下り続けてるのは何でだと思う? チャレンジだ。」
ため息をつくベシア。
オブライエン:「遺伝子操作で、視覚と腕の神経が連動してる誰かさんとダーツをやり続けてるのは?」
「チャレンジ。」
「ご名答。…気を紛らせるものが欲しいんだよう、この半年ケイコと離れ離れだろ。…待てよ。俺じゃクワークに勝てないが、お前なら勝てる! その遺伝子操作された脳味噌があれば。」
「僕? ルール覚えたばかりだぞ。」
「ああ、きっかり 10秒でな! やれるよ、ジュリアン。俺たち勝てるぞ。」
「『俺たち』? 僕にやらせるんだろ?」
「お前は計算には強いが、戦略的にまだまだ甘いからな。俺がコーチするよ。」
「遠慮しとく。」
「チャレンジだと思ってみろよ。」
「別にチャレンジなんてしたくない。」
「ラチナムだぞ。」
「金できたか。」
「買ったら、クワークの悔しがる顔を見られるんだぞ? 奴が馬鹿にしてる『地球人ども※12』に、トンゴで負けるところをな。」
「特訓だ。」

シェナンドー。
ウォーフ:「スカーラ星系へ接近。」
ダックス:「ワープエンジン停止、スタンバイ。停止。」
「真正面に小惑星帯がある。」
「そこを狙うの。ドミニオンのセンサー内に 3つ穴があるんだけど、全部小惑星帯の中にある。」
小惑星を避けながら進むシェナンドー。
窓からも迫る小惑星が見える。
ダックス:「速度落とす?」
ウォーフ:「いや、必要がなければ。」
「全然。もっと速く飛べるわよ。」
「楽しみだ。」
「さすが、私の旦那様。」
無事に小惑星帯を抜け、惑星へ近づく。
ウォーフ:「さすがだな。」
ダックス:「300歳のパイロットに不可能はないの。」
「地表からスキャンされているぞ。」
「回避行動を取るわ。向こうに探知された?」
「いや、大丈夫だ。」
「ここまで来て撃ち落されたら最悪だものねえ。操縦代わって、着陸地点をスキャンするわ。」 地図が表示される。「ここが基地ね。ランデブーポイントと、ドミニオンセンサーの有効範囲。ランデブーポイントの北 20キロ辺りに、谷があるわ。かなりの距離だけど、センサー網にかからないためには船をそこに降ろすしかないわ。」
「了解。」

スカーラへ着陸するシェナンドー。
フェイザーを準備するウォーフ。「奴と落ち合うまで 2日もないことになる。」
ダックス:「一日およそ 10キロ。無理な距離じゃない。」
「どんな任務も甘くみるな。センサーグリッドを抜けなきゃならないし、ドミニオンのパトロールもいる。」
「…わかってる。敵地のジャングルで人一人見つけ、捕まらずに歩いて帰ってくる。朝飯前よ。」
「行くぞ。」
「どうぞ。」 フェイザーライフルを準備するダックス。
2人はシェナンドーから出た。


※12: 「人間ども」と訳されています

夜が明けたジャングルで、うつ伏せになっているウォーフとダックス。
ダックス:「OK。25ジュールにして。」 トリコーダーを使う目の前を、トカゲが通り過ぎていった。息を吹きかけても効果がない。
ウォーフ:「25ジュールだな。」 小さな機械へ向けて、ビームを発射する。「よし。」
ダックス:「リンク完了よ。これも、済ませたわ。」 トリコーダーを投げ渡す。
チェックするウォーフ。「…ドミニオンの暗号ロックは回避して、トリコーダーを敵センサーにリンク。生命反応、消去。お見事だ。」 上着を脱いだダックスに、トリコーダーを返す。
ダックス:「ありがとう。」
「わかってるな、ここから先トリコーダーは使えないぞ。」
「あなたって、どんな時でも用心深いのねえ。」 笑うダックス。
「念を押しただけだ。逆にジャングルを地図も予備知識もなしで歩くのが楽しみなくらいだよ。」
「本心なのが怖いわよね。」
歩き続ける 2人。

DS9。
トンゴのテーブルについている、クワークたちフェレンギ。「これはフェレンギ人だけのゲームなんでね。」
オブライエン:「ダックスはやってる。」
クワーク:「彼女は例外だ。唯一の例外だ。」
ベシア:「負けるのが怖いのか。」
「恥をかかせたくないんだよう。ゲームの質も落ちる。」
「対等にやれるよ。君こそ、僕と対等にやれるかな?」
「遺伝子操作で改良された脳だろうと何だろうと、関係ない。トンゴは計算できりゃいいってもんじゃないんだ。このゲームができるコンピューターはまだない。」
「じゃあ心配することはないだろう。」
「おわかりかなあ? 酒を賭けてるわけじゃない。掛け金の高いゲームだ。」
オブライエン:「わかってるとも。」 持っているケースを見せる。
クワークはフェレンギ人たちに聞いた。「どうする? …いいだろう。手持ちは 5チップから。あんたが親だ。」
ケースからチップを手に取るベシア。
オブライエン:「最初から飛ばしてくれよ。」
ベシア:「すぐ片付ける。」

ゲームは続いている。
ベシア:「300 買い、350 売り。」
あきらめたフェレンギ人がテーブルを去る。
まだ残っているクワーク。「確かに飲み込みは早い。誉めてやろう。」
ベシア:「『地球人ども※12』にしちゃ、早いってことだろ。」
「ゲームの間は品の悪いことは言うなよ。」
「終わるまでは待てか。」
「たしなみだ。パス。…ダックスも早かったよ。たった 2週間で初勝利だ、聞いた中では記録だな。」
「ダックスは予測不可能だからね。また 300 買う。売りは 400。差額に 20パーのインデックス。」
「面白い手だな。ダックスもあんなミスター退屈と結婚するとはねえ。」
「ほんとだな。」
「付き合い出した頃、思ったね。『続くわけがない、もって 2ヶ月だ』ってね。じゃ、俺は 400 で買いだ。500 で売り。」
「同じこと思ったね。正直言うと、1ヶ月だと思ったけど。勝負。」
「ダックスも罪作りな女だ。」
「…ほんとに。」
「借り入れ金で購入。550 で売りだ。いやさ、こんな商売じゃ俺も浮き沈みが激しいわけだ。」 台を離れ、カウンターへ行くクワーク。「客足がさっぱり伸びずに売り上げのない日が続いたりする。そうすると、もう二度とラチナムを拝むこともないと思えてくる。そんな時ジャッジアが店に来て、あの笑顔を振りまいていくわけだ。すると急に何とかなるように思える。」 酒を注ぎ、ベシアに渡す。
「それ、すごくよくわかるよ。たまに…彼女が医療室の前を通る。それでウィンクでもされるとそれだけで、一日気分が良かったりするんだ。」
見守っているオブライエン。「ジュリアン、集中するんだ。集中だ!」
クワーク:「シーッ!」
ベシア:「えーと、550 で買って、それから…インデックスは 10※13。」
「なのに人妻だ。」
「そうなんだ。」
「手が届かない。予備費用換金するか。で、600 で売りだ。…何が悲しいって、夜も眠れなくなるのは、手出しも何もせず行かせちまったことだ。」
「そう、その通りだ。これが運命だったんじゃないかな。パス。」
オブライエン:「ジュリアン、待てよ、ほんとにそれでいいのか…」
クワーク:「チーフ! 頼むよ。ルールは知ってるだろ、助言はなしだ。」
考え込むベシア。
クワーク:「運命かもな。ま、それも都合のいい言い訳だ。俺たちにとって、ダックスはかけがえのない存在だった。もう二度と手に入らない、幸せへの切符だった。なのに指の間をすり抜けてった。50年後、お互いこういうんだろうな。『俺は馬鹿だった』って。…勝負。ドクター?」
ベシア:「あ?」
「勝負だ。」
「ああ。ごめん。えーと…フル・コンソーシアム。」
クワークは立ち上がり、カードを見せた。「トータル・モノポリー※14。」
「え?」
笑うフェレンギ人たち。
クワークは全ての金を手に取った。「金が尽きたようだな。」
ベシア:「マイルズ。」
オブライエン:「やられた。」
クワーク:「楽しかったよ。またいつでも来てくれ。」
ベシア:「待てよ。クワーク、さっき言ったのは本心か? ダックスのこと。幸せを手に入れる、最後の切符って。」
「ドクター。俺が自分のカードを全部見せると思うか? まさか。」 台を離れるクワーク。
オブライエン:「ああ、お前の負けだ。」
ベシア:「『俺たち』だろ。」
「俺は、トータル・モノポリーを仕掛けられてる時、失恋の痛手に浸ったりしないな。」
「じゃあ、あの話気をそらすためだったのか。」
「みえみえだろ。」
「そんな手に乗るなんて。」
「ああ、引っかかったんだ。遺伝子操作されてても、やっぱり『地球人ども※12』だ。」
「…そうらしい。」
「飲みに行こう。」
「ああ。」

ジャングルを進むウォーフとダックス。

パッドで方向を確認する。

大きなヘビのそばを歩いて行く。

ダックスはウォーフに言った。「痛い!」
ダックスの怪我を治療するウォーフ。

何かの気配に銃を向けるダックスだが、それは爬虫類だった。

暗くなってきた。ダックスはウォーフにうなずき、荷物を降ろす。

夜になり、明かりを置く。
寒さに耐えるウォーフに、ダックスは布をかけてあげた。「こんな時ぐらい、プライドは捨てましょ。トリルは暑さが苦手、クリンゴンは寒さが苦手。それだけのこと。」
ウォーフ:「すまない。」
「いいのよ。あなたにはこれがハネムーンかしら。辛くて楽しい?」
「まだまだ。」
「私にできることある?」
「もっと苦しく、暖かくしてくれ。」
笑うダックス。「どうしてかわからないけど、おかしいわ。」
獣の声が響いた。
ダックス:「求愛の声?」
ウォーフ:「距離は 500メートル。そっちだ。」
「うまくいったのかしら。」
「300メートル以内なら。」
「…カップルがもう一組ね。」
「……子供の頃よく、養父※15が俺と兄をウラル山脈※16へキャンプに連れて行ってくれた。毎晩遠くでオオカミが吠えるのを聞いたものだ。ニコライ※17は怖がっていたが、俺はテントで横になり、何時間も聞いていた。フン、服を引き裂いて夜の闇に駆け出したい衝動に何度も駆られたのを、覚えている。森で暮らす野生の獣に、なりたかった。」
「……ふられちゃったみたいね、離れてくわ。…彼女、気が立ってる。」 ウォーフは別の方向を向いた。「二匹とも逃げて行ったんじゃない?」
「ああ。何かが近づいてるからだ。近くにいる!」
すぐに立ちあがり、明かりを消す。フェイザーを手に取る 2人。
物音が近づいてきた。
ライフルを構える。
そこへ来たのは、スキャンを行っているジェムハダーたちだった。
合図するダックス。フェイザーを撃つ。
だが反撃された。そのジェムハダーにメクレスを投げつけ、倒すウォーフ。
ダックスは腹部を押さえ、苦しんでいる。出血していた。
ウォーフ:「ジャッジア!」 ハイポスプレーを使う。「動くな!」
ダックス:「それぐらいならできる。先にいいニュースね。」
トリコーダーを使うウォーフ。「致命的な傷はない。」
ダックス:「悪いニュースは?」
「ディスラプターで体内に抗凝血剤※18が入った。」
「血が止まらないのね。」
「ああ。」
「でも…まともに食らったわけじゃないみたい。それほど出血してないわ。痛み止めを打ってくれる? 先へ進みましょう。」
「動くと出血がひどくなるぞ。」
「ここにはいられないでしょ? 彼らが戻らなかったら、仲間が探しに来るわ。だったら、歩いた方がましよ。それでいい? …いいわね。」
「ああ。」
「行きましょう。」
立ち去る 2人。


※13: 「インデックスは 6」と誤訳

※14: total monopoly

※15: セルゲイ・ロジェンコ (Sergey Rozhenko) のこと。TNG第76話 "Family" 「戦士の休息」に登場

※16: Ural Mountains

※17: ニコライ・ロジェンコ Nikolai Rozhenko
セルゲイ&ヘレナ・ロジェンコの息子。TNG第165話 "Homeward" 「滅びゆく惑星」に登場

※18: anticoagulant

パッドと太陽の位置を照らし合わせるウォーフ。座っているダックスに近づく。
「ランデブーポイントまで、まだ 12キロ以上だ。」
ダックス:「時間は 20時間しかない。じゃあ、もうそろそろハネムーン気分はやめてペースを上げなきゃね。…またプラズマ? もうお腹いっぱいよ。」
トリコーダーで容態を調べたウォーフは、ダックスの首元に注射した。「血圧がまた 20%下がってる。」
ダックス:「あなた患者に優しいのね。医者になるべきだったわ。」
ダックスの腹部に当てた布が、血で赤く染まっている。
ウォーフ:「その様子じゃ、当て布を取り替えないと。」
ダックス:「そうね、じゃあ…今度はブルーのレースにしてくれない? ラインストーンつきのね。華やかなのがいいわ。」
「茶化してる場合じゃない。傷は深いし、まだかなりの距離行かなきゃならない。」
「気持ちだけでも盛り上げたいの。」
「今はそんなことしてる時じゃない。」
「生まれ変わったんじゃなかったの? ユーモアのセンスにあふれてるんでしょ?」
「私が間違ってた。」
「何よ、どういう意味?」
「君とふざけていなかったら、ジェムハダーがあそこまで近づく前に気づいていた。」
「…私のせいだって言うの?」
「違う。…私のせいだ。本来の自分を見失っていた。警戒を怠って、任務を怠って妻に怪我を負わせてしまった。そして任務自体を危険にさらしている。二度と繰り返さない。」
「あなたのせいじゃないわ。トリコーダーなしじゃ察知できなかった…」
「その件で言い争う気はない。…ランデブーポイントまで、まだかなりある。」
「いいわ、行きましょう。」
ウォーフの手を払い、歩き始める。

倒れそうになりながらも、ウォーフの助けは拒むダックス。

位置を確認するウォーフ。
休んでいるダックスに言う。「いいか。」
ダックス:「ええ。」
ダックスが立ち去った後の岩には、血の跡がついていた。

倒れた木の上を、ウォーフの助けで進むダックス。だが歩けなくなった。
ダックス:「注射を…」 ハイポスプレーを打つウォーフ。「うーん、これよ。もう元気。」
ダックスが押さえている布が、また赤くなっている。
ウォーフ:「当て布を代えよう。」
ダックス:「この 2時間で、4度目よ。記録作れるんじゃない? ごめん。ジョークは、禁止よね。真面目にね。命がけ。任務があるわ。」
「ジャッジア、苦しいのはわかる。だが日暮れ前に、あと 3キロ進まなきゃならない。歩けるか。」
「…痛み止め打ってくれれば、地獄の門だってくぐるわ。イエッサー。」 敬礼する。「今…笑ったんじゃない?」
ウォーフは微笑む。「この任務が終わったら、何度でも笑ってやるよ。」
ダックス:「約束する?」
「約束だ。」
「じゃ早く終わらせて、帰りましょう。」
共に立ち上がる 2人。
ダックス:「平気、大丈夫。手を貸してくれれば、行けるわ。ああ…だめかも…。」
やはり座り込んでしまった。痛みに耐えるダックス。



容態を調べるウォーフ。
ダックス:「どうなの? 良くなってるでしょ。」
「血圧がまたかなり下がってる。それに神経反応が、不安定だ。」
「ドクター、治療方針は?」
「手術だ。基地に戻って。」
「ほかの先生いないの?」
何も言わないウォーフ。
ダックス:「……ウォーフ。私をここに置いていって。覚悟してたわ、しょうがないわよ。」
ウォーフ:「個人的な感情よりも、任務の遂行を優先しなきゃならないんだ。」
「当然よ、艦隊士官だもの。私もね。わかってるわ。」
「ラサランの情報は、この戦争の雌雄を決するものになるかもしれない。」
「大丈夫よ、私もわかってるから。私は怪我してるし、任務が優先よ。」
「明日の夜には戻ってくる。」
「どこへも行かないから、大丈夫。」
「戻ったらすぐに、シェナンドーの医療カプセルに入れてやるからな。」
「お願いね。」
「医療キットを置いて行く。30分ごとに体調をスキャンしろ。プラズマ・ハイポスプレーはセットしてある。」
「私も応急処置は習ってるから、わかってるわ。……ウォーフ。この 2ヶ月、楽しかったわよね。」
「…ああ。」
ウォーフを見つめるダックス。
ウォーフ:「ジャッジア、今のうちに言っておく…」
ダックスはウォーフの顔に触れた。「キスして行って。」
口付けする二人。ダックスは涙を流す。
ダックスにフェイザーライフルを渡し、ウォーフは歩いて行った。

ジャングルを急いで進むウォーフ。

鼓動が聞こえてきた。心臓の音だ。だんだんとその音は大きくなってくる。
立ち止まるウォーフ。周りを見渡す。鼓動は止まらない。
ウォーフは持っていたメクレスを、木に投げ刺した。

意識を失っているダックス。ウォーフは脈を取り、安心する。
ダックスを背中に担ぎ、道を引き返すウォーフ。

DS9。
医療室に入り、ウォーフに尋ねるシスコ。「容態は。」
ウォーフ:「…まだ手術中です。ドクターは、完全に回復するだろうと言っています。」
「ラサランは死んだ。彼がスカーラの基地に戻ろうとして殺されたという通信を、艦隊情報部が傍受している。落ち合うことはできなかったのか。」
「いいえ。」
「だがジャッジアを助けに戻った。」
「はい。」
「あの情報で、数百万人の命を救えたかもしれないのは、わかっているのか。」
「…はい。」
「なら、どうしてだ。」
「わかっては頂けないでしょう。」
「言ってみろ!」
「結婚式での、クリンゴンの二つの心臓の神話を覚えていらっしゃいますか。二つの心臓にかなうものは何もない。子供の頃から聞いていた神話です。でもわかってはいなかった。本当にはわかってはいなかった。あのジャングルでただ独り、心臓の鼓動を聞いた時、私自身ですら自分の心臓にあらがえなかった。戻るしかなかったんです。艦隊が、私がどうなるか、そんなことはどうでもよかった。私の妻なんです。置いては行けませんでした。」
「上官として、君の判断は間違っていたといわざるを得ない。艦隊は、正式な裁判にかけることはないだろう。たとえ極秘に開いたとしても、情報部の活動が漏れる危険を侵すわけにはいかないからな。だがこの件は君の記録に残るぞ。…そして更にはっきり言えば、今後君に単独で指揮を執らせることはないと思ってくれ。」
「わかりました。」
「ほかの士官にも命じておいた、この先君とジャッジア二人だけで任務に出すことは、二度とないだろう。……最後にもう一つ。妻をもった男として、もしジェニファーがジャングルで倒れたとしたら、…私も置いては行けなかっただろう。」
出て行くシスコ。

眠っているダックスの手を握るウォーフ。
ダックスの指が動き、目を開けた。微笑む。「あら? 見た顔ね。」
ウォーフ:「会ったことがある。」
「またジョーク言ってる。いい印だわ。彼とは、会えたの?」
「いや。君を置いて行けなかった。ラサラン何かよりも、任務よりも大切だから。」
ダックスの顔色が変わった。「ラサランは?」
ウォーフ:「…死んだ。」
「大変な状況?」
「そんなことは前にもあったよ。」
「ああ、ごめんなさい。私が歩けてたら。」
「君が謝ることは何もない。」
「あんなにキャリアを大事にしてたのに。」
「君が一番だ。キャリアよりも、任務より何よりも大事だ。私は何も後悔はしていない。次も同じことをするよ。」
「何て言ったらいいのか。」
「これはどうだ? 『ありがとう、命の恩人よ』。」
「ありがとう、命の恩人よ。」
「これもいいな。『私も同じことをした』。」
「でも、それはちょっと考えるわね。キャリアが大事なの。知ってるでしょ?」
「……『愛してる』でもいいぞ。」
「…愛してるわ。」
「私もだ。」
ウォーフは顔を近づけ、ダックスの額にキスした。



・感想
ウォーフ&ダックスの夫婦としての関係を、初めて前面に押し出して描いたエピソードです。一見すると展開の遅い部分もありますが、そこはさすがムーア脚本ならではの会話劇を見せてくれます。今回もラサランの死をあえて描かず、さらりとセリフで流しているのが「らしい」ですね。言うまでもなくシスコらしいセリフも最高でした。
ちょっとしたサブストーリーはトンゴでクワークに挑戦する、オブライエンとベシアの話。この時代のコンピューターをもってしてもマスターできないとは…。


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