司令室の中央テーブルに、野球のダイヤモンドが表示されている。 
 キラ:「『第25章。インフィールドフライが適用されるのは、ランナーが 1塁、2塁にいる場合、もしくは 1塁、2塁、3塁にいる場合。』」 パッドを読んでいる。 
 ウォーフ:「ホームにはいないのか?」 
 ノーグ※4:「ホームにランナーはいません。」 
 キラ:「いい、続けるわよ? 『また 2アウト未満の場合にフライが打たれた時で…』」 
 キラとノーグに見られたウォーフは、パッドを操作した。「『フライ。空中に高く打ち上げられたボールのこと。』」 
 キラ:「ああ! そうか。んでえーっと、『2アウト未満の場合にフライが打たれた時で、内野手、ピッチャー、キャッチャーにより直ちに捕球できると審判に判断されたフェアフライのことを言う。バッターはその後ボールが取られようが取られまいが、アウトとなる。』」 
 ノーグ:「それはわかりやすいですね。」 
 「…『しかしバントを試み、失敗してフェアフライになった場合は、上記の条件を満たしていたとしても、インフィールドフライとは認められない。』 …バントって?」
  
 説明するベシア。「バント。内野を緩く転がるよう、バッターが意識的に軽くバットに当てたボールのこと。ランナーを進塁させるために、バッター自身はアウトになりにいくんだ。」 
 エズリもクワークの店にいる。「大当たり。じゃ次はグランドスラム。」 
 オブライエン:「…えーっと…満杯の時に、打たれたホームランだっけ?」 
 「そうだけど、満杯じゃなくて『満塁』。じゃあね、次は『スタンドプレー※5』。」 
 ベシア:「それも野球用語?」 
 「ちゃんと出てるわよ。」 
 パッドを確認するベシア。 
 ロム※6と共にリータ※7がやってきた。「ハーイ! ジェイクからヴァルカン人と野球をするって聞きました。何か面白そうですよね。」 
 エズリ:「見に来たら?」 
 ベシア:「『スタンドプレー。プレー中に観客の注目を浴びようとし、その守備において、派手なアクションを加えアピールする選手。』」 
 リータ:「私たち、もっと積極的に参加したいと思ってるんです。」 
 ロム:「できれば…つまり、まだチームにその…空きがあったとして、選手を募集してたり何かしたら…」 
 「テストを受けたいんです。」 
 「ああ…ノーグがよく言ってるんです。大佐とジェイクが野球で絆を深めてるって。最近なかなかノーグとゆっくり話せないもんで。僕もこのチャンスを生かそうと思って。」 
 「それに家族で楽しむイベントにはもってこいだし。」 
 エズリ:「とってもいい考えだわ。」 
 「そう?」 
 クワークが近づく。「バッカじゃねえか? 恥をさらすのが落ちだぞ。」 
 リータ:「そんなことない。」 
 「ったく。ダボ・ホイールも満足に回せないくせに、ボールが蹴れんのかよ。」 
 「恥さらしはどっちよ。誰もボールなんか蹴らないの。…でしょ?」 
 応じるエズリ。 
 クワーク:「ロム、お前には無理だ。」 
 ロム:「そんなのわかんないだろ? 兄貴はどうする?」 
 「地球人の遊びになんか興味があるか。冗談じゃねえよ。」 
 「…そりゃそうよね。野球は勇気を試すゲームらしいもの。あなたは大昔に売ってしまったでしょ? 行きましょ、ロム。」 二人は出ていった。 
 「…テストは何時です?」 
 オブライエン:「13時、ホロスイート4。」 
 うなずくクワーク。
  
 ホロスイート。 
 野球場※8に集まった士官たち。 
 シスコはボールを投げながら、ジェイクと一緒に走ってきた。「いくぞー! ほら、パス。」 笑いながら投げ合う。 
 皆の前で話すシスコ。「よーし。今日が練習初日だ。いよいよこの日がきた。しまっていこう。」 
 上着を脱いだ部下たち。 
 オブライエン:「オー、イエー。」 
 リータ:「ハーイ。」 
 シスコ:「よーし、みんなその調子だ。気合いだぞ、気合い。紹介しよう。我がチームのピッチャーであり、我々の秘密兵器、ジェイク・『ザ・スライダー』・シスコー!」 
 笑うノーグたち。「スライダー。」 「がんばれよ、ジェイク。」 
 シスコ:「そして、そのほかのポジションは全てテストで決める。ここに集まった諸君は、ホロスイートで少なくとも一試合は私と野球を見ている。恐らく、簡単なものと思ってるだろう。ボールを投げ、ボールを取り、ボールを打つ。だが、そう単純なものじゃない。もっと複雑だ。その証拠に幼い頃から練習し、やっとプロになった選手でも、その後の人生を練習に費やしてる。しかしながら我々がチームを結成し、敵と顔を合わせるまで、2週間しかない。何を考えてるかはお見通しだ。」 
 ノーグの隣にいるロム。 
 シスコ:「『どうやってロジシャンズ※9を倒せばいいんだ? 敵はヴァルカン人だ。我々の誰より強くて速い。ウォーフを抜かしてな。遺伝子操作をされているドクターもだ。』 しかし、野球には体力よりもずーっと…必要なものがある。例えば…例えばそう、勇気だ。そしてもう一つ、信頼もいる。」 
 うなずくジェイク。 
 シスコ:「最後に肝心なのが、我々の心だ。そして唯一ヴァルカン人に欠けているもの、それが心だ。我々はきっと勝てる。…勝てるに決まってる。」 
 ジェイク:「そうとも。」 
 「ああ、ヴァルカン人に勝てるな? そうだろう?」 
 一同は声を挙げた。「イエーイ!」 
 シスコ:「声が小さいぞ。」 
 一同:「イエーイ!」 
 「私たちは必ずヴァルカン人を打ち負かすな?」 
 「イエーイ!」 
 「よーし、では野球を始めるとしよう。まずは 2人1組になってくれ、間をそうだな…10メートルぐらいとってくれ。キャッチボールだ。」 
 みな散らばる。 
 シスコ:「よーし、じゃあ始めてくれ。まずは軽く、肩慣らしのつもりで。」
  
 ボールを投げるエズリ。 
 取れないクワーク。グラブもはめていない。 
 エズリ:「惜しい! リラックス、リラックス。」 
 ノーグをぼーっと見ているロム。 
 ウォーフ:「ここだって言ったろ。」 
 投げられたボールを怖がるリータ。 
 ベシア:「ほら、もっと肩の力抜いて。」 
 キラが投げたボールは、ロムの後ろに転がっていった。 
 キラ:「失礼!」 
 キラもボールとのタイミングが合わない。 
 オブライエン:「もっと力を入れろよ。」 
 ロムのグラブにボールが当たった。取り落とす。 
 様子を見ていたジェイク。「長くて辛い、2週間に…なりそうだね。」 
 シスコ:「ジェイク、私はこれがどんなに辛くて長い 2週間になろうと構わん。この野球の試合でソロックに負けるわけにはいかないんだ。必ず奴を倒す。」
 
 
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※4: Nog (エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9第151話 "Image in the Sand" 「砂漠からの呼び声」以来の登場。声:落合弘治
  
※5: Fancy Dan
  
※6: Rom (マックス・グローデンチック Max Grodenchik) DS9第147話 "Profit and Lace" 「グランド・ネーガスは永遠に」以来の登場。声:田原アルノ
  
※7: Leeta (チェイス・マスタースン Chase Masterson) DS9 "Profit and Lace" 以来の登場。声:榎本智恵子
  
※8: ロサンゼルスのロヨラ・メアリーマウント大学でロケ撮影
  
※9: Logicians
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