USS Kyushuトップに戻る

ヴォイジャー 特別完全エピソードガイド
第171話「道は星雲の彼方へ」(前)
Endgame, Part I

dot

・イントロダクション
※1※2※3サンフランシスコ上空に、色とりどりの花火が打ち上げられる。
そこにヴォイジャーが降下してきた。
歓声を上げて見守る人々。
ヴォイジャーはゴールデンゲートブリッジの上を通り、更に上昇する。
観衆からは、一段と大きな声。

それは、部屋の中で表示されているものだった。ナレーターの声が続く。『ご覧の映像は、連邦宇宙艦ヴォイジャーがデルタ宇宙域での 23年間※4の航行を経て、地球へ勝利の帰還を果たした時の映像です。』
暗い部屋の中で、形がゆがんだカップを手に取る者がいる。
ナレーター:『…当時連邦中の人々がこのヴォイジャーの帰還に湧きました。あの日から今日で 10年※5。我々はもう一度、クルーが払った犠牲について思い起こしてみるべきではないでしょうか。次に今日…』
窓から橋が見える。「コンピューター、ディスプレイ※6を消して。」
白髪となったジェインウェイは、外を見つめた。


※1: このエピソードは、ヴォイジャー最終話 (シリーズ・フィナーレ) の前編です。アメリカ本国では基本的に 2時間エピソードとして放送されたため、前後編に分けられた際に一部カットがあります。このエピソードガイドでは色を変えた上で、簡単な画像つきで紹介しています

※2: 小説版が発売されています Amazon.com / スカイソフト / Amazon.co.jp

※3: 最終話は 2001年度エミー賞の特殊映像効果賞、および音楽作曲賞をダブル受賞しています

※4: ヴォイジャーが遭難した (VOY第1シーズン) のが 2371年なので、2394年

※5: 2394+10=2404年。25世紀

※6: テレビと訳していますが、21世紀までに廃れたことになっています

・本編
連邦の施設。
多数の宇宙艦隊士官たち※7が集まって、楽しく会話している。「久しぶり。」「来週です。」「ぜひ。」
一人の少女が、赤い制服を着た男性のところへやってきた。
男性:「やあ。」
少女:「あなたは?」
「ハリーだ。君は?」
「サブリナ※8。」
キム:「ナオミの子?」
サブリナ:「うん、そう。」 その額には、母親と同じ角が生えている。
「大きくなったねえ。」
「私おじさん知らない。」
「こういう集まりに出るのは 4年ぶりだからねえ。」
「どうして?」
「ディープスペースで仕事してたんだ。」
「4年間も?」
「ヴォイジャーにいた頃と比べれば、長い週末みたいなもんだよ。」
「ママを探してきてくれ。」
「わかった。」
「挨拶をしたい。」
サブリナは歩いていった。グラスを持ってきたジェインウェイとぶつかりそうになる。
ジェインウェイ:「おおっと。どうぞ、大佐。」
キム:「すみません、提督。前会った時は赤ん坊でした。」
「全くみんなあっという間に立派になって。」
笑うキム。「…トゥヴォックは。」
ジェインウェイ:「良くないわ。」
「明日見舞いに行こうと思ってるんです。」
「そうしてあげて。」
「葬式の時はすみません、出られなくて。」
「任務中だもの、仕方ないわ。また会えて良かった、ハリー。」

新たなゲストがやってきた。
パリスが声をかける。「ドクター。」
全く姿の変わっていないドクター。「ミスター・パリス。ヴォイジャーのパイロット兼医療助手で、私の頭痛の種だった。」 一緒に来た女性に紹介し、笑う女性。「どこに雲隠れしてたんだ?」
ドクターと抱き合うパリス。「執筆に忙しくてねえ。」
ドクター:「また新作を?」
「出版社に送る前に、君の意見を聞かせてもらうよ。…連れのご婦人を紹介してくれよ。」
「ミスター・パリス、ラナ※9だ。私の新妻。」
「結婚したのか。」
ラナ:「明日は結婚 2周目の記念日。」
「そうか、そりゃおめでとう。」 乾杯する 3人。「でも結婚式の招待状、受け取ってないぞ。」
ドクター:「送ってないからさ。君の小説に習って、駆け落ちした。」
ラナ:「ジョー※10って何をするにもロマンチックなの。」
パリス:「『ジョー』?」
ドクター:「あ…結婚するには名前が必要だと思ってね。」
「33年間迷いに迷ってつけた名前が、ジョー。」
「ああ、ラナのお爺さんの名前なんだ。」
「そうか。あ、ってことは君は違うのか。」
ラナ:「ホログラム? 違うわ。」
ドクター:「君がそんなことを聞くとは、驚きだなあ。まだそんな区別にこだわってるのかね?」
パリス:「とんでもない、嬉しいんだ。うちの奥さんだって異人種だからな。」
「そういえば、奥さんはどうしてる?」

トレスはジェインウェイと話していた。「最高評議会に問い詰められました。」
ジェインウェイ:「どう答えたの?」
「真実のまま。ただしクリンゴン流に。名誉ある戦いにおいて、何度も命を救ってくれた私の敬愛する前艦長が、コラス※11の一族を評議会の一員にすることを希望してると。」
「手応えはあった?」
「私は単なる連絡係※12です。役に立てたと思いたいですが。…まだコラスを推薦する理由を聞いてませんけど?」
「古い友達だからよ。」
「それで? その提督の古いお友達と、娘の任務には関係が?」
「悪いけどそれについて話すことはできないの。」
「あの子今日を楽しみにしてたんです。出させてあげたかった。」
「任務はすぐ終わる。約束します。」
グラスを叩く音が響いた。「皆さん、ちょっとよろしいでしょうか。お静かに。」
前でバークレイ※13が話し始めた。「10年前のこの夜、ここにいるクルーは宇宙艦隊史上最長の探査任務から帰還しました。」 みな笑う。「23年の航海は皆さんを家族にし、私もその一員になれたことを誇りに思います。それではグラスを掲げて下さい。我が航海に。」
一同:「我が航海に!」
ジェインウェイ:「そしてここで共に祝えなかったクルーに。」
複雑な顔をする元クルー。

通信研究センター※14
バークレイ:「諸君、紹介しよう。これがボーグだ。」 立体映像が表示される。「この授業を通して、少しずつ集合体を知っていってもらう。君らが学ぶのは同化のプロセスにボーグのヒエラルキー、そしてドローンの集団心理だ。くれぐれも君たちに言っておく。このクラスでは、落第は許さない。目指すはボーグ・クイーン同様、完璧だ。」
集まった候補生は笑った。
バークレイ:「そして、今回は幸運にも特別な客員講師を招くことができた。ほかでもない、ボーグについての本を執筆された御本人、キャスリン・ジェインウェイ提督だ。」
拍手が起こり、制服※15を着たジェインウェイは立った。「ありがとう、中佐。お招き感謝します。あら、もう何か質問?」
候補生※16:「別に授業が終わってからでもいいんですけど。」
「時空工学の教えに従うわ。『今は二度と訪れない』。」
「2377年、提督はユニマトリックス・ゼロ※17のレジスタンスに加勢しました。」
バークレイ:「随分と予習をしているようだ。」
ジェインウェイ:「それについて何か質問が?」
候補生:「はい、提督。あなたがボーグ・クイーンに多くのドローンを解放すると告げた時、彼女どんな顔してました?」
笑いが起こり、あきれるジェインウェイたち。
別の候補生※18が質問する。「提督。授業の前に友人とも話してたんですが、セブンはユニマトリックス・ゼロにどのくらい関わってたんでしょう。」
ジェインウェイ:「…悪いけど、セブンの話は避けてもらえない?」
「はい、提督。すみません。」 座る候補生。
士官がやってきた。「パリス少尉が、至急話したいそうです。」
ジェインウェイ:「失礼。」 共に出て行く。
バークレイ:「…では、ああ…ナノテクノロジーについて説明できる者。」

コンソールに触れるジェインウェイ。ミラル・パリス※19少尉の姿が映る。『授業中すみません、提督。』
ジェインウェイ:「確認した?」
『はい、提督。』
「それで?」
『成功です。』
「コラスは交換に応じたのね。」
『ええ、ですが…』
「何なの?」
『提督に直接渡したいと言ってるんです。』
「……できるだけ早く向かいます。ご苦労、パリス少尉。」 通信を終え、考えるジェインウェイ。

カット1ろうそくと、床に散らばった紙。丸めた紙を広げる男がいる。一心に何かを書いているのは、トゥヴォックだった。
その部屋へジェインウェイがやってきた。「元気? トゥヴォック。」
トゥヴォック:「まぶしい。」
「ああ、ごめんなさい。」 中に入るジェインウェイ。
トゥヴォックはジェインウェイを見つめる。「…知った顔だ。」
ジェインウェイ:「その通り、あなたの友達。キャスリン・ジェインウェイよ。覚えてない?」
「…お前は嘘つきだ。」
「いいえ、トゥヴォック。私よ。」
「ジェインウェイ提督は日曜にしか来ない。今日は木曜だ。論理的に言って、お前が提督であるはずがない。」 再びペンを走らせるトゥヴォック。
「調子どう?」
「もうすぐ仕事が完了する。」
「それはよかったわ。」
「しかしながら、たびたび邪魔が入って進まない。」
「ごめんなさい。私に帰って欲しい?」
「……別に構わん。」
悲痛な表情を浮かべるジェインウェイ。「……トゥヴォック。あなたに話があるの。とても大切な話よ。」 反応のないトゥヴォックに、ジェインウェイは近づいた。「私は地球を発つ。もう二度と会えないかもしれない。」
トゥヴォックは顔を上げた。
ジェインウェイ:「バークレイ中佐とドクターが訪ねてくれるわ。何かあったら 2人に言って。」
トゥヴォック:「ドクターは水曜日に来る。だがバークレイ中佐は…うう…不規則だ。」
「仕事」に戻るトゥヴォック。
ジェインウェイはトゥヴォックの頭を優しくなで、キスした。
鏡の前に、リボンで飾った写真立てを置くジェインウェイ。「さよなら、トゥヴォック。」
その写真は、ヴォイジャーの仲間 9人のものだった。
外に出るジェインウェイ。連絡が流れる。『…ドクター・ブラウン、お客様です。』
トゥヴォックは書き続ける。

ジェインウェイの部屋。
カット2ジェインウェイは階段を上がり、ドアを開けた。「今時往診してくれるドクターなんて、あなたくらいね。」
制服姿のドクターが入る。「緊急事態の概要を。」
ジェインウェイ:「どこも悪くない。」
「この 33年間ずっと医者嫌いで通してきたあなたが、どこも悪くないのに私を呼んだんですか?」 トリコーダーを使うドクター。
「旅に出るから発つ前に予約を消化しておこうと思ったの。」
「それだけで?」
「それだけよ。」
「うーん、異常なしだ。初めて診た時と全く変わってません。」
「さあ、用は済んだわ。かけて。パーティじゃ話せなかったし。」
「ええ、そうでしたね。」
「それで? 結婚生活は?」
「最高です。試しては?」
「試すには遅すぎるわ。もう若くないもの。あなたの奥さんのように。」
「…あなたのように品良く年を重ねてって欲しい。私は 20年後も今と変わらず、ハンサムでしょうからねえ。」
荷造りをしながら、ジェインウェイは尋ねた。「聞きたいことがあるの。あなた、クロネクサリン※20っていう薬を知ってるかしら。」
ドクター:「タキオン放射線から生体物質を保護できるか、艦隊医療部でテスト中です。」
「結果は?」
「可能性は高い。なぜそんなことが。」
「明日の午後までに 2,000ミリグラム分けて欲しいの。」
「なぜです。」
「機密事項です。手に入れてもらえる?」
ため息をつくドクター。「わかりました。9時までにお届けします。」
ジェインウェイ:「ありがとう。」

カット3通信研究センター。
コンピューターにボーグの情報が表示されている。『ダウンロード完了。』
バークレイ:「これで、全て整いました。」 パッドをジェインウェイに渡す。
ジェインウェイ:「シャトルは?」
「オークランド・シップヤード※21に用意してあります。私もお供させて下さい。」
「残念だけど、私の任務なの。それにあなたまでいなくなったら、誰が訓練生にボーグの生態を教えるの?」
「ああ…。出発のはなむけに、お茶を入れました。レプリケートじゃありません。」
「ありがとう。何もかも、あなたのおかげだと思っています。」
「ああ、何をおっしゃいます。」
ジェインウェイはバークレイの肩に手を触れ、出て行った。

屋外の木の下で、ジェインウェイは顔を下に向けて話している。「あなたの元艦長に最後の忠告は? 待った、わかってる。衝動的すぎる。どんな結果になるか考えていない。危険すぎる。」
ジェインウェイは腰を下ろし、落ち葉を手で払った。「忠告ありがとう。でも私は自分の信念に従うわ。」
それは「チャコティ」と書かれた墓碑※22だった。
ジェインウェイ:「彼女なしに生きることはさぞ辛かったでしょうね、チャコティ。でもこの任務で、全ては変わるかもしれない。……私を信じて。」
墓に手を触れるジェインウェイ。


※7: 制服とコミュニケーターは、TNG最終話 "All Good Things..." 「永遠への旅」などで使われた未来の時間軸のものです

※8: Sabrina
(Ashley Sierra Hughes) 声:小暮英麻

※9: Lana
(Amy Lindsay) 声:小池亜希子

※10: Joe

※11: Korath

※12: 連邦連絡係 Federation Liaison

※13: レジナルド・バークレイ Reginald Barclay
(ドワイト・シュルツ Dwight Schultz) VOY第166話 "Author, Author" 「夢みるホログラム」以来の登場。声:岩崎ひろし

※14: Communications Research Center
VOY第130話 "Pathfinder" 「遥か彼方からの声」など

※15: 階級章は三つ星 (当てはめるとすれば中将)

※16: Cadet
(Grant Garrison)

※17: Unimatrix Zero
一部のボーグ・ドローンが再生中に訪れることができた、仮想現実世界。VOY第146・147話 "Unimatrix Zero, Part I and II" 「聖域ユニマトリックス・ゼロ(前)(後)」より

※18: 女性候補生 Female Cadet
(Iris Bahr ゲーム "Voyager: Elite Force" と "Away Team" に声の出演) 声:戸田亜紀子

※19: Miral Paris
(Lisa Locicero) VOY "Author, Author" でトレスが父親のジョンに話していたように、VOY第123話 "Barge of the Dead" 「さまよえるクリンゴンの魂」に登場した、母親のミラルの名を取っています。声:川先宏美

※20: Chronexaline

※21: Oakland shipyard

※22: 生没年は「2329〜2394」となっています。生年はクロノロジーでは 2350年とされていました。また、この時間枠は前述の通り 2404年ですから、4年間の任務に出ていて葬式に出られなかったというキム艦長のセリフとは矛盾するのですが…。なおチャムジ (CHAH-mooz-ee) の図案が描かれています (VOY第25話 "Tattoo" 「天の精霊」など)

ヴォイジャー。
暗い部屋で、トレスは夫を呼んだ。「トム。」
寝ぼけているパリス。「ああ…。」
トレス:「トム!」
「ああ。眠いんだよ。」
「始まった。」
「…何が。」
「こっち向いてみて…。」 トレスはライトをつけた。ベッドから立ち上がる。
事態に気づくパリス。「パリスか…」 コミュニケーターをつけていないことに気づき、すぐに手にする。「パリスから医療室。始まった。」
ドクター:『落ち着いて、ミスター・パリス。ベラナは立てるか?』
「…もう立ってる。」
『ではすぐに医療室へ来たまえ。』
「…ベラナは?」
『一緒にだ。』
「ああ、そうか。だよな。転送装置で行った方がいい?」 先にトレスが出て行く。「おい、待ってくれ!」 裸足で追いかけるパリス。

トリコーダーで調べるドクター。「ふーん。」
パリス:「何だよ、『ふーん』…って。」
「非常に健康な子供が産まれてくるようだな。だが今夜じゃない。」
トレス:「ああ…ちょっと冗談でしょう。」
「これは仮性陣痛だよ、中尉。」
パリス:「また!」
「前回説明したとおり、よくある現象だ。特にクリンゴンにはね。」
トレス:「お願い、今すぐ引っ張り出して。早く!」
「これは八つ当たり。やはりクリンゴン人の特性だ。」
パリス:「早められないのか。」
「それは勧められん。」
「…毎晩のように、これじゃ眠れやしない。」
「産まれたらもっと眠れん。」

ジェインウェイはチャコティに尋ねた。「いつ?」
チャコティ:「朝の 4時です。」
「仮性陣痛は何回目?」
「3回目です。」
「母親に似て、頑固な子ね。」
「ハリーは何日の何時に産まれるか、賭けを始めてますよ。」
「…私も乗るわ。次の…金曜日。時間は 23時よ。ほかに報告は?」
「チェル※23が食堂勤務をしたいと申し出てます。フルタイムで。」
「ニーリックスが残していった鍋はかなり大きいわ。チェルはその挑戦を受けて立てそう?」
「心配ないでしょう。彼のサンプルメニューです。」 パッドを渡すチャコティ。
「『プラズマ漏れスープ※24』。『チキン・ワープコア・ドン・ブルー※25』。」 笑う 2人。
「料理もそのセンスでされちゃ、かないませんが。」
「そうでもないわよ。『非常警報チリ※26』なんかちょっと食べてみたい。一緒にランチどう?」
「すみません、先約があるんです。また後日。」
「ええ、喜んで。」
作戦室を出て行くチャコティ。パッドを見て、また笑うジェインウェイ。

チャコティは貨物室に入り、微笑んだ。
シートの上に座り、セブンがワインをついでいる。
チャコティ:「どういうこと?」
セブン:「ピクニックだ。調査によれば、3度目のデートには最適らしい。」
グラスを受け取るチャコティ。「こんなことしなくていいのに。」
セブン:「気に入らないのなら、すぐに普通の食事を用意するが。」
「いや。このままでいい。…完璧な昼食だ。」 乾杯する二人。

カル・トー※27をするイチェブ※28
キムが咳払いした。イチェブと対戦しているトゥヴォックは、キムを見た。
別の場所にタンを置こうとして、キムを見るイチェブ。うなずくキム。
トゥヴォック:「公平を期するために言う。ミスター・キムは、カル・トーで私を負かしたことは、一度もない。」
イチェブは元の場所に置いた。何も反応がない。
キム:「言うこと聞かないからだ。」
次のタンを置くトゥヴォック。パズルの形状が変わる。「カル・トーは論理的思考並びに忍耐を要する。経験豊富なプレイヤーは、次の動きを決めるまでに数時間。時として数日間かけることも珍しくない。」
トゥヴォックが話しているうちにイチェブが次の手を置くと、形状が均整のとれた形になり、音を発した。
喜ぶイチェブ。「カル・トー。」
キム:「勝っちゃった!」
トゥヴォック:「……おめでとう。」
イチェブ:「ただのビギナーズラックですよ。もう一試合と言いたいところですが、仕事があるので。」
「では次の機会に。」
キムはトゥヴォックの前に座った。「イチェブがダメなら僕が相手になるよ。今なら勝てそうな気がする。」
トゥヴォック:「失礼する、少尉。」 食堂を出て行く。
キム:「ああ…ただのゲームじゃないか。」

トゥヴォックを診察するドクター。「イチェブは稀にみる優秀な青年だ。単に彼の力が勝っていたのではないかね?」
トゥヴォック:「負けたのは、また集中力が途切れたせいだ。」
「ニューロ・ペプチドが、確かに低下しているな。」
「思っていたとおりだ。病気の影響が出始めている。」
「…ほんの少しじゃないか。わかっていたことだろ? 薬の処方を増やせばいいだけだ。」
「……ありがとう。」
「少佐。…プライバシーを重んじるのもいいがね、そろそろ艦長に言った方がいいのでは?」
「この病気が私の職務に支障をきたし始めたら、すぐにでも言うつもりだ。」
「わかった。」
トゥヴォックは医療室を出た。

カット4セブンは言った。「お前の番だ。」
天体測定ラボのスクリーンに映っているニーリックスが、カディス・コット※29の相手だ。『グリーン、グリッド 12-10。』

セブン:「レッド、グリッド 3-13。」
『やるじゃない。』
セブン:「ブラックス※30は?」
『元気だよ。どうもありがとう。父親の代わりにはなれないけど。』
「あの子はお前を尊敬している。」
『…オレンジ、グリッド 10-12。誰にも言ってないんだが、デクサ※31にプロポーズしようと思ってんだ。』
「きっと承諾するだろう。」
『そっちはどうなんだよ。うまくいってんの?』
「そんな相手などいない。」
『ホー? じゃあチャコティ副長との仲は何なんだよ。』
「お前の番だ。」
『君の番だろ? ピクニックの感想ぐらい、聞かせてよ。』
微笑むセブン。「お互い、非常に楽しい時間を過ごせた。提案感謝する。」
ニーリックス:『いえいえ。』
警告音が鳴る。
ニーリックス:『どうした。』
セブン:「長距離センサーが、非常に強いニュートリノ放射を探知した。断続的に、重力子フラックスを伴っている。約3光年離れたところだ。」
『ワームホールか?』
「よくわからない。スキャンを続けてみる。」
『じゃあ続きは明日にしよう。』
「いつもの時間に連絡する。」
カット5うなずくニーリックス。映像が消えた。

モニターに星雲の姿が写されている。
セブン:「この星雲の中央から放射が起きてる。数百個に及ぶ発生源が見つかった。」
キム:「その一つ一つがワームホールだとも考えられます!」
「放射の干渉でまだ未確認だが、もしキム少尉の喜ばしい仮説が証明されれば、かつてないほど…ワームホールが密集していることになる。」
ジェインウェイ:「どこへつながってるかわかる?」
キム:「わかりません。ですがアルファ宇宙域へつながってたとしたら!」
パリス:「そうだな、ハリー。お前んちのリビングにつながってるかも。」
ジェインウェイ:「コースを変えて、ミスター・パリス。少尉、お母さんに連絡。ソファーをどかせておいてもらって。」
笑うキム。


※23: チェル乗組員 Crewman Chell
ボリアンのクルー。VOY第150話 "Repression" 「狙われたマキ」などに登場

※24: Plasma Leak Soup

※25: Chicken Warp Core du Bleu

※26: Red Alert Chili

※27: kal-toh
ヴァルカンのパズルで、均衡と集中のテスト。VOY第56話 "Alter Ego" 「ホログラムの反乱」など

※28: Icheb
(Manu Intiraymi) VOY第165話 "Q2" 「断絶するQ」以来の登場

※29: Kadis-Kot
盤上ゲーム。VOY第169話 "Homestead" 「帰り行く処」など

※30: Brax

※31: Dexa
共にタラクシア人。VOY "Homestead" に登場

カット6宇宙艦隊医療部。
トゥヴォックは暴れていた。「7153…5331…7153…5331…7153…」
ドクターが部屋に入り、説明する医師※32。「お忙しいところすみません。誰も寄せ付けないものですから、あなただったらと。」
ドクター:「よく呼んでくれた。こんなに凶暴になった彼を見るのは初めてだ。」
「何かにいらだっているようなんです。」
トゥヴォック:「長距離センサーでは、探知不能。彼女の失踪は、謎だ。心配でたまらない。」
ドクター:「何が心配なんだ、トゥヴォック。」
「失踪した!」
「誰が。」
「5331…7153…。」
医師:「この数字を何度も繰り返しています。5331…71。宇宙暦でしょうか。」
ドクター:「宇宙暦 53317…記憶が正しければ、ジェインウェイ艦長がケリディアン※33に誘拐された日だ。そうかね、トゥヴォック。ジェインウェイ艦長のことか。」
トゥヴォック:「彼女の失踪は、謎だ!」
「君がその謎を解いたんじゃないか。君が艦長を救い、無事にヴォイジャーまで連れ戻した。覚えてないのか!」
「心配でたまらない、心配だ…」
医師:「提督にお越し頂いて、無事な姿を見せては。」
ドクター:「残念ながら遠出をされているんだ。いつ戻られるかもわからん。」
トゥヴォック:「もう二度と戻らない! 失踪は謎のままだ。心配でたまらない。…心配だ…。」

作業をしているバークレイに、ドクターが声をかけた。「ヴォイジャーからパスファインダー。パスファインダー、どうぞ。」
バークレイ:「ドクター! 突然どう…ああ、またゴルフの約束を忘れたか。」
「違うよ、レッジ。約束は来週だ。実は、ジェインウェイ提督と連絡を取りたくてね。」
「提督は出かけてる。」
「わかってる。どこに行くか、聞いてないか。」
「ああ、残念ながら私は何も…何かあったのか。」
「よくわからない。今朝トゥヴォックを見舞ったんだが、提督に危険が迫ってると思い込んでる。」
「トゥヴォックの精神状態は誰よりもよく知っているはずだろう。」
「そうだ。私も提督が心配なんだ。」
「どうして。」
「2日前、提督は私に大量の…試験薬を要求してきた。必要な理由を尋ねると、機密事項だという。」
「では私に言ってはまずいだろう。」 笑うバークレイ。
「艦隊情報部のオカラ長官※34に聞いてみたんだが、提督はいかなる機密任務にも関わっていないと明言された。アカデミーで教え始めてからはね。」
「情報部の連中が言うことなんか信用できるものか。君をだましたのかもしれん。」
「かもな。だが提督は君とアカデミーで教えることを実に楽しみにしていたんだ。なのに、新学期が始まった矢先に、姿を消した。君にさえ行き先を告げずに。いくら何でも、おかしすぎないか。」
「ああ…ああ、恐らく…提督なりに筋の通った理由があるんだろう。ドクター。悪いんだが私はその…テストの採点を…」
「動揺しているぞ、レッジ。」
「だから!」
「そんな君は何年も見たことがない。提督の居場所を知っているんじゃないか。」
「あの方は艦隊史上、最も多くの勲章を授けられた士官だ。きっと…自分の身は自分で守れる。」
「それはつまり、提督の身に危険が及ぶかもしれないということか!」
「だれもそんなことは言っていない。」
「提督はどこにいるんだ、レッジ。」

惑星軌道上の宇宙艦隊シャトル※35
洞窟の中に、ジェインウェイ提督が転送された。
ミラルがやってきた。「コラスの家へようこそ、提督。」 後ろにクリンゴン人が続く。
ジェインウェイ:「いいところね。気に入ったわ。」
クリンゴン※36が彼らの言葉で叫んだ。
向き直るミラル。「プタック!」 同じくクリンゴン語で激しく話す。
引き下がるクリンゴン人。
ジェインウェイ:「彼、何ですって?」
ミラル:「提督の振る舞いが無礼だと言ってるんです。」
「そんなつもりはないの。そう伝えてくれない?」
「そっちこそ礼儀をわきまえなければ腕を折ると言っておきました。」
「そういうところ、お母さんそっくり。」
「コラスが待っています。行きましょう。」
「あなたとはここでお別れよ。」
「提督?」
「もう帰ってよし。」
「そんな、いくらなんでも…」
「後は独りで大丈夫。」
「…お言葉ですが、6ヶ月かけてやっとここまでこぎ着け…」
「あなたは立派に任務を果たした。これで終了です。いいわね。」
「……はい、提督。」
「ご両親があなたの帰りを首を長くして待ってる。少し休暇を取って。会ってらっしゃい。」
カット7ジェインウェイは奥へ行った。ミラルはジェインウェイを振り返ったが、そのまま立ち去った。

ディスラプターに小型機体を使っている老クリンゴン人、コラス※37
ジェインウェイが連れられてきた。
コラス:「カーデシアのディスラプターだ。ナディオン・パルスを発射できるように改造した。」
ジェインウェイ:「素晴らしいわ。でも私が欲しいのはそれじゃない。」
「そうだな。」 笑うコラス。「これより遥かに物騒なもんだ。」
「どこにあるの?」
「保管してある。」
「…大変な苦労をして、あなたを最高評議会の一員にしたの。今度はあなたが約束を果たす番よ。」
コラスは無言でコンピューターを操作し始めた。「お前のシャトルをスキャンした。」 画面上にシャトルの分析が表示される。「画期的な改造法だ。…実に興味をそそられる。…シールドジェネレーターはとりわけ興味深い。」
ジェインウェイ:「手放す気はないの。」
「……だったらこちらも手放すわけにはいかん。」
「…事前に同意したはずでしょ。」
「提督のお帰りだ。」
コラスをにらみ、出て行くジェインウェイ。

ヴォイジャーは星雲に入っていく。
パリス:「チェルは『星雲スープ』もメニューに加えるべきですねえ。」
揺れが始まる。
ジェインウェイ:「シールドは?」
トゥヴォック:「維持。」
「ブリッジからセブンへ。」
セブン:『どうぞ。』
「ニュートリノ放射について、ほかにデータは?」

天体測定ラボのセブン。「まだない。スキャンがままならないのだ。」
ジェインウェイ:『中央までの距離は?』
「600万キロメートル。」

揺れが大きくなる。
ジェインウェイ:「今のは?」
トゥヴォック:「トリタニアム※38サインを探知しました。方位 342、マーク 55。」
パリス:「何だかわかりませんが、近すぎます。」 濃い雲の影響で、前は見えない。
ジェインウェイ:「回避行動を取って。」
チャコティ:「…船か?」
トゥヴォック:「恐らく。」 揺れが激しくなる。
キム:「またトリタニアムサインを探知。真上です!」
ヴォイジャーのすぐ前に、ボーグ・キューブが姿を現した。
ジェインウェイ:「トム!」
急速に移動するヴォイジャー。
キューブの真下を、ギリギリで通過した。
ジェインウェイ:「早くここから脱出して。」

ヴォイジャーの姿が、モニターに映されていた。
『船籍を確認。連邦宇宙艦ヴォイジャー。追跡し、同化する。』 ボーグ集合体の声。
「だめだ。まだ我々の脅威ではない。」 上からボーグ・クイーン※39が降りてきた。「放っておくのだ。今はな。私が監視しよう。」


※32: Physician
(Miguel Perez) 声:長克己

※33: Kellidians
宇宙暦からすると第6シーズン半ば、VOY第129話 "The Voyager Conspiracy" 「果てしなき疑惑」と VOY第135話 "Tsunkatse" 「囚われのファイター」の間の時期に当たります。エピソードとしては描かれていません

※34: Director Okaro

※35: "SC-4" と書かれており、宇宙艦隊司令部 (Starfleet Command) の略だと思われます。タイプは 9型に似ていますが初登場

※36: Klingon
(Matt Williamson VOY第162・163話 "Workforce, Part I and II" 「人間改造惑星クアラ(前)(後)」の警備員その2、ENT第2話 "Broken Bow, Part II" 「夢への旅立ち(後編)」のクリンゴン評議会メンバー役)

※37: Korath
(ヴォーン・アームストロング Vaughn Armstrong TNG第20話 "Heart of Glory" 「さまよえるクリンゴン戦士」のコリス司令官 (Commander Korris)、DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」のガル・ダナー (Gul Danar)、第171話 "When It Rains..." 「嵐の予兆」などのカーデシア人セスカル (Seskal)、VOY第7話 "Eye of the Needle" 「ワームホールの崩壊」のテレク・ルモール (Telek R'Mor)、第122話 "Survival Instinct" 「ボーグの絆を求めて」のトゥー・オブ・ナイン (Two of Nine)=ランサー (Lansor)、第143話 "Fury" 「帰ってきたケス」のヴィディア人船長 (Vidiian Captain)、第155話 "Flesh and Blood, Part I" 「裏切られたホログラム革命(前編)」のアルファ・ヒロージェン (Alpha Hirogen)、ENT第1話 "Broken Bow, Part I" 「夢への旅立ち(前編)」などのアーチャーの上司フォレスト提督 (Admiral Forrest)、第14話 "Sleeping Dogs" 「名誉に生きる者」のクリンゴン船長 (Klingon Captain)、第22話 "Vox Sola" 「漂流生命体の叫び」などのクリタサン船長 (Kreetassan Captain) 役。ゲーム "Armada II"、"Bridge Commander"、"Starfleet Command III"、"Elite Force II" でも声の出演) 声:手塚秀彰

※38: tritanium
貴金属合金。VOY第159話 "Repentance" 「宿命の殺人星人」など

※39: Borg Queen
(アリス・クリーガ Alice Krige) クイーンとしては VOY "Unimatrix Zero, Part I and II" 以来の登場。興味深いことに、これまでヴォイジャーでクイーンを演じたスザンナ・トンプソンから、最初に登場した映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」のクリーガに戻っています。ボーグ・クイーンの設定についてはいろいろな解釈がありますが、結局同一人物を別の女優が演じたということなんでしょうか…? なお声優は、これまでのヴォイジャーと同じく榊原良子さんのようです

ヴォイジャーのモニターに表示された、ボーグ・キューブ。
トゥヴォック:「我々に気づいたとは限りません。」
チャコティ:「今はどこにいる。」
セブン:「約3光年離れたところだ。」
パリス:「気づかないわけがない。奴らの鼻先をかすめたんだぞ。」
トゥヴォック:「ボーグは衝突の危険は冒さん。彼らも放射線の干渉は受けていたはずだ。」
キム:「気づかれてないなら、星雲に戻るべきです!」
セブン:「それは勧めない。トリタニアムサインを分析したところ、星雲の中にはボーグ艦 47隻が存在した。」
「ワームホールをあきらめるんですか!」
ジェインウェイ:「仕方ありません。」
「フライヤーを改造して…」
「ミスター・キム。いつか艦長になれるわ。でも今は違う。

廊下。
歩いていたパリスに、キムが追いつく。「トム、仕事終わった後、予定は?」
パリス:「別に。何で。」
「もしよかったら…もう一冒険しないか。パパ業で忙しくなったら、できなくなるだろう。」
「ホロデッキを予約したのか?」
「もっと本格的。」 パッドを手渡す。
「これがお前のいう冒険かよ。」
「きっと成功する。フライヤーをちょっと改造すればいいだけだ。」
「わざわざボーグに捧げるためにか?」
「こっちには宇宙域一のベストパイロットがついてるんだぞう?」
パリスは笑い、パッドを返した。「いい表現だ。」
キム:「2人で艦長に直談判すれば、賛成してくれるかもしれない!」
「俺は賛成してもらっちゃ困るよ。」
「冒険スピリットは!」
「あの星雲においてきた。もう取りに戻る気はない。」
「うちに帰りたくないのか。」
「今は俺がうちなんだ。」
カット8パリスを追うキム。
パリスはターボリフトのボタンを押し、中に入った。
ドアが閉まる直前、キムはボタンを再度押して止めた。「キャプテン・プロトンならこんな任務から逃げたりしないぞ!」
パリス:「キャプテン・プロトンには妻もいないし、産まれてくる子供もいない。」 ドアを閉める。
残されるキム。


セブンが作業する天体測定ラボへ、チャコティが入った。
セブン:「日報なら、まだ記録し終えていない。」
チャコティ:「そうじゃない。仕事の用事で来たわけじゃないんだ。また二人で過ごしたいと思ってね。」
「…何をして?」
「……それは君の調査によるな。4回目のデートに、静かなディナーは適してる?」
「…うーん。ディナーが適するのは 5回目のデートだ。」
「君がよければ、4回目は飛ばそう。」

トリコーダーを使うドクター。「異常なし。二放射状クランプの周囲に、小規模な炎症があるだけだ。今のところは心配ない。」
セブンはバイオベッドから降りようとしない。
ドクター:「ほかに問題でも?」
セブン:「皮質ノードが閉じた時のことを覚えているか。※40
「忘れるものか。」
「機能不全の原因になっている、安全装置を取り除けるかもしれないと言っていたな。」
「またトラブルが起きているのか。」
「いや。だが取り除いてもいいと思えてきた。」
「その言葉を待っていた。」
「何度か手術が必要だと言っていたが。」
「それだが、君の『気が変わる』のを期待して、更に研究を進めてたところ、一度の手術でマイクロ回路構成を変更する方法を発見したんだ。これによっていかなる感情も味わえるようになる。腹の底から笑ったり、思いっきり泣いたり。」
「いつならできる?」
「そりゃあ今日にでも。」
「シフトは 18時に終わる。」
「ではデートを。…デートといえば、安全装置をなくせば、君は自由に…相手と関係を深めることができる。」
「自覚している。」
「その点において何か…練習が必要であれば、いつでも力になろう。」
「…嬉しい申し出だ。」
「ほんとに。」
「ああ。だが既に力を貸してくれる人がいる。」
「ああ…。そうだな。チャコティのホログラムを相手に、何度もシミュレーションしてみるといい。」
「いや、それはしない。では 18時に頼む。」 医療室を出て行くセブン。

コラスの家。
コラスにクリンゴン人が告げた。「マク・ター フーン、ジェインウェイ、ガウチャ。」
ジェインウェイが戻ってきた。「申し出を考え直しました。」
コラス:「戻ると思っていた。」
「シールドエミッターを渡します。ただしこちらの希望する装置を確認してからよ。本物かどうか調べさせて。」
「私の名誉を疑う気か。」
「名誉ある人物なら、最初に同意した条件を変えたりしないはずです。……先に見せないのなら帰ります。」
コラスは部下に命じた。コンピューターを操作すると、洞窟の壁をなしていたホログラム映像が消え、装置が姿を見せた。
トリコーダーを取り出すジェインウェイ。「確かに本物のようね。」 その瞬間、小型機械を装置に取り付けた。トリコーダーを操作する。
慌てるコラス。「女を止めろ!」
転送されていくジェインウェイと装置。
コラスたちは銃を撃つが、既に遅かった。

シャトルに戻ったジェインウェイは命じた。「コンピューター、装甲※41装備。」
シャトルの周りに、厚い金属の装甲が張られる。

操舵席のジェインウェイ。「以下の座標に従い、針路をとれ。」 入力する。
シャトルの背後からクリンゴン艦※42が攻撃する。
だがダメージは全くない。
呼び出し音がなり、ため息をつくジェインウェイ。応答する。「何の用かしら。」
コラス:『このまま逃がしはしない! ガチャ。我が一族は、貴様が己の血で溺れ死ぬまで戦い続けるだろう。』
「もっとおしゃべりしていたいけど、忙しいの。」 通信を切るジェインウェイ。「コンピューター、ワープ6。」
攻撃を続けるクリンゴン。だがシャトルはそのままワープに入った。

報告するコンピューター。『目的の座標に接近。』
ジェインウェイ:「エンジン停止。」
『警告、船体接近中。方位 1-2-1、マーク 6。』
ワープを終えて通常空間に出てきたのは、連邦の宇宙艦、U.S.S.ロードアイランド※43だった。
通信に応えるジェインウェイ。「ハリー。宇宙も人が言うほど広くはないみたいね。」
キム:『シールドを弱めて。直ちにこちらへ転送し、あなたを拘束します。』


※40: VOY第164話 "Human Error" 「人への歩み」より

※41: アブレーティブ装甲 ablative armor
武器の発射を受けた際、蒸発させるように設計された防御膜。ディファイアントやプロメテウスにも装備されていますが、もちろん可変型ではありませんし、ここまで強力でもないでしょう

※42: DS9第73・74話 "The Way of the Warrior, Part I and II" 「クリンゴンの暴挙」などに登場したネグヴァール級戦艦に似ていますが、少し形状が違います。TNG最終話 "All Good Things..." 「永遠への旅」にも更に別の形の似たタイプが登場

※43: U.S.S. Rhode Island
NCC-72701。VOY第120・121話 "Equinox, Part I and II" 「異空生命体を呼ぶ者達(前)(後)」で登場したイクワノックスと同じノヴァ級に似ていますが、少し形状が違います

ジェインウェイは尋ねた。「私を拘束する理由は何かしら、大佐。」
キム:『ドクターを通してレッジから全て聞きました。お願いです、提督。シールドを弱めて下さい。』
「条件があります。こうすることの理由を説明させて。」

キムは自分の船で、ジェインウェイに言った。「どういう結果になるかわからないじゃないですか。」
ジェインウェイ:「何もしなければ、どうなるかはわかっています。あなたもね。これは全てを変えるチャンスなの。」
「艦隊司令部があなたのしようとしていることを知ったら…」
「言ってないでしょうね。」
「『ファミリー内に留めよう』と、ドクターと決めました。」
「あなたのクルーには?」
「提督が奇病に冒されたので、艦隊医療部に連れ帰る必要があるといってあります。」
「命は助かるかしら。」
「何とか。だが判断力を失う恐れが。」
「私は正気よ、ハリー。」
「そうでしょうか。必ず成功すると言えますか。なぜならもし失敗すれば…仮にこれがいかなる規則違反に当たらないとしても、とにかく危険すぎます。」
微笑むジェインウェイ。
キム:「何です。」
ジェインウェイ:「ある少尉のことを思い出したの。彼は無謀にもボーグがはびこる星雲に乗り込もうとした。故郷へ戻るというわずかな可能性を探るために。」
「私の記憶によれば、あなたは止めた。」
「未来を予測できなかったからよ。」
「…技術は進歩したかもしれません、しかし…」
「技術の話じゃない、人間の話をしているの。帰還できなかったクルーの話を。この件はファミリーだけに留めるって言ってたけど……私たちのファミリーはもう完全じゃない。私の決断を信じて欲しいの、ハリー。もう一度だけ。」

チャコティの部屋。
ディナーの準備をするチャコティの前に、セブンが転送されてきた。花束を持っている。「早すぎたか?」
チャコティ:「いや、ピッタリだ。ドア…壊れてた?」
「花を持って副長の部屋に入るところを見られては、慎重さに欠ける。」
「これも調査?」
笑うセブン。
チャコティ:「……水に入れておこう。」
奥へ行こうとしたチャコティをセブンは引き寄せ、口づけした。
セブン:「ああ…ファーストキスを待つのは、しばしば苦痛を伴うと聞いていたので。その緊張を緩めたかった。」
チャコティ:「…賢明な選択だな。……セカンドキスは。」
「それについてはまだデータベースをチェックして…」
再びキスをする二人。
その最中、ジェインウェイの通信が入った。『上級士官はブリッジへ出頭せよ。』
セブン:「ああ…。」
チャコティ:「……この次は通信機を止めておくとしよう。」
二人は部屋を出る。

スクリーンに星間現象が映し出されている。
ブリッジにセブンに続いて入るチャコティ。「何です?」
ジェインウェイ:「タキオン放射から判断すると、時空の裂け目のようね。」
セブン:「どうやって起こったのだ。」
「それを今探ってるところです。」

キム艦長の船と共にいるシャトル。
キムもシャトルにいる。「私が関わっていることが艦隊司令部に知られれば、また少尉に逆戻りです。」
ジェインウェイ:「相変わらず心配性ね。白髪が増えるわよ。」
「推進エンジン、オンライン。プラズマフロー安定。」 別のモニターを見るキム。「このコラスの装置は、タキオンエネルギーの放出が多すぎます。目的地に着く前に燃え出す恐れがある。…戻れないかもしれません。」
「いつだって片道切符しかもってないわ。」
ため息をつくキム。「…本当にあなたを止められないんでしょうか。」
ジェインウェイはキムに近づいた。
キム:「はい、愚問でした。」
ジェインウェイはキムの顔に触れた後、抱き合った。目を閉じるキム。
離れたキムは命じた。「キムからロードアイランド。1名帰還。」
転送されるキム。

操舵席のジェインウェイ提督。「コンピューター、クロノ・ディフレクター※44起動。」
装置が起動する。
そこへ 2隻のクリンゴン艦が遮蔽を解いて姿を見せた。攻撃してくる。
シャトル内で爆発が起こる。
ジェインウェイ:「装甲装備。」
コンピューター:『応答不能。アブレーティブジェネレーター、オフライン。』
「回避パターン、ベータ 6。ロードアイランドへつないで。」 キムの姿が映し出される。「攻撃を受けてるの。どのくらいで戻れる?」

ヴォイジャーのトゥヴォック。「裂け目の向こう側に、ナディオン放射を探知しました。」
チャコティ:「武器サインか。」
「そのようです。放射はクリンゴンのものと判明。」
ジェインウェイ:「非常警報。」

シャトルを追うクリンゴン戦艦。その戦艦を背後から攻撃する船が到着した。ロードアイランドだ。
爆発が続くシャトル内。
キム:『転送に備えて下さい。』
ジェインウェイ:「私の行き先を知ってるでしょ。あなたの船じゃないわ。」
『構造維持力が低下しています。』
「いいからすぐにクリンゴンを追い払って!」
クリンゴンへの攻撃を続けるロードアイランド。
指示するジェインウェイ。「コンピューター、タキオンパルスを起こし、直ちに以下に入力する時空座標へ直行せよ。」
クロノ・ディフレクターからタキオンが発射され、前方に時空の裂け目が出現した。

報告するトゥヴォック。「船体が裂け目の向こうからやってきます。」
チャコティ:「クリンゴンか!」
「いえ…連邦船です。」
裂け目から出てきたシャトルは、先のヴォイジャーへ近づいていく。
キム:「呼びかけてます。」
ジェインウェイ:「スクリーンへ。」
ジェインウェイ提督の姿が映される。『反タキオンパルスを放射するようディフレクターを調整し、すぐに裂け目を閉じて下さい。』
ジェインウェイ:「…人に命令する前に、まず何者か名乗るのが礼儀ってものじゃないですか?」
トゥヴォック:「艦長。クリンゴン船が、こちらに向かってきます。」
提督:『早く裂け目を閉じなさい! …私は提督です、あなたの上官です。閉じなさい。』
クリンゴン戦艦の姿が見えてきた。そこへディフレクターから反タキオンが発射される。
時空の裂け目は消滅した。
ジェインウェイ:「言うとおりにしました。どういうことか説明して下さい。」

ジェインウェイ提督は言う。『ヴォイジャーを故郷へ戻すために来たの。』
その通信の様子を、ボーグ・クイーンが見つめていた。


※44: chrono-deflector

・感想
ついに最終話です。本国では 2時間ものとして放送されたものなので、ストーリー全体に対する感想は来週に譲るとして…。
いきなりヴォイジャーが帰還するシーンから始まるという、視聴者の予想を逆手に取った手法はうまいですね。未来のクルーの様子、クリンゴン、タイムトラベル、そしてボーグ・クイーン。最終話らしく、豊富な要素が満載となっています。いくらかの伏線はあったとはいえ、チャコティとセブンの急な進展は無理があるように感じますが…。
何はともあれ来週で全172話が終了となります。じっくり鑑賞したいと思います。


dot

previous第170話 "Renaissance Man" 「偽りのクルー」 第172話 "Endgame, Part II" 「道は星雲の彼方へ(後編)」previous
USS Kyushuトップ | ヴォイジャー エピソードガイド