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ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第123話「さまよえるクリンゴンの魂」
Barge of the Dead

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・イントロダクション
シャトル内のトレス。「トレスよりヴォイジャー。ちょっと手を貸してくれる?」
中では蒸気が噴出し、爆発が続いている。チャコティの通信。『そっちの状況は。』
「ヴォイジャーに接近中。イオンストームで、ディフレクターフィールドが破損。コントロール不能。左舷ナセルから、プラズマが流出中。」
『トラクターパルスでスピードを抑えよう。』
「わかったわ※1。」
『フィールドの準備はできてる。着艦してくれ。』
ヴォイジャーの後部にある、シャトル格納庫が近づいてくる。トラクタービームが消え、中へ向かう。
ジェインウェイ:『気をつけて。相当揺れるはずよ。』
バウンドしながら突っ込むシャトル。衝撃に耐えるトレス。「ああっ!」
フォースフィールドに当たり、シャトルは停止した。
ハッチが開き、医療キットを持ったパリスが入る。「ベラナ。」
「ああ…。」
「生きてるかい?」
「どうかしら。」
トリコーダーで調べるパリス。「軽い脳震盪のようだ。」
「今日一番ラッキーな出来事ね。」
笑うパリス。

トレスに話すジェインウェイ。「命令は守ってもらうためにしてるの。探査機を追ってイオンストームに突っ込んだりせずに、ヴォイジャーに戻るようにと言ったでしょ。」
「一機しかない多空間探査機をなくしたくなかったので。」
「ベラナ・トレスも一人しかいない。失いたくないのよ。」
「わかりました。」
「ラナ※2? 無事に戻ってきて良かった。」
「今ラナと呼びましたか?」
「ええ、そのようね。」
「……母にそう呼ばれていたんです。」
「お母様と気が合いそう。」
作戦室を出て行くトレス。

トレスは暗い部屋でパッドを読んでいる。チャイムが鳴った。「どうぞ。」
中へ入るチャコティ。「気分は?」
「ひどくなった。」
「君のシャトルを調べたら、これが左舷ナセルに引っかかっていた。昔モンキーレンチと呼ばれた物だ。」 金属の板を持っている。
「どうしてかしらね。」
「センサー記録によれば、ディフレクターフィールドが破損した後で引っかかったようだ。だがなぜこれが…この辺りにあるかがわからない。」
「どういう意味?」 その遺物を受け取り、トレスはそこに描かれている記章を目にした。「そんな…。クリンゴンのだわ。」
「しかも古い。わかるのはそれだけだ。デルタ宇宙域には、艦隊よりクリンゴンが数百年早く来たらしいな。クリンゴン史上、最も貴重な考古学的発見かもしれない。」
それを返すトレス。「じゃあ、帝国のために旗でも立てようかしら。説明は簡単につく。ボーグがアルファ宇宙域で、バード・オブ・プレイ※3を同化して戻る途中、それがエアロックから飛び出した。」
「かもしれん。まあとにかく、いい土産になったな。」
トレスに金属を渡し、チャコティは出ていった。
それをテーブルの上に置き、トレスはレプリケーターを操作する。
すると遺物のクリンゴンの記章から、赤い血がみるみる湧き出てきた。マークを満たし、更にテーブルの上にも広がっていく。
血に気づくトレス。そして多数の人物の叫び声が聞こえてきた。血はテーブルからこぼれんばかりに広がっている。
だが次の瞬間、叫び声も血も消え、遺物は元通りになった。驚くトレス。

※1: "Acknowledged." を「やってみるわ」と訳しているため、意味不明です

※2: Lanna

※3: 「クリンゴンの船」と吹き替え

・あらすじ
血やクリンゴン語の声が聞こえた理由はわからない。ニーリックスは遺物を見つけた記念にパーティを開くことにする。トゥヴォックの部屋を訪れたトレスは、バトラフを見事に操る彼に、クリンゴンとしての魂がないと罵られる。クリンゴン式のパーティが始まるが、伝統や神話を押し付けた母親のことを思いだし、トレスは乗り気ではなかった。だがその最中、食堂にクリンゴン人が何人も現れ、クルーを殺していく。そしてトレスに向かってバトラフが振り下ろされる。次の瞬間、トレスは「死者」となり、水の上を浮かぶクリンゴンの古い船の上にいた。
トレスの頬に焼印がつけられるが、跡が残らない。そこはクリンゴンの地獄、グレトールへと不名誉な者が向かう「死者の船」だった。船を操っている神話のクリンゴン人、コーターによればトレスが死ぬ時はまだ来ていないという。彼に攻撃しようとしたとき、トレスは逆に手に傷を負ってしまう。また船に新たな不名誉な者が送られてきた。それはトレスの母、ミラルだった。だが次の瞬間、トレスはヴォイジャーのベッドの上で目を覚ます。
実はトレスはシャトルで漂っているところをヴォイジャーに助けられており、あの遺物もパーティもなかった。死者の船で負ったのと同じ傷を見て驚くトレス。あの死後の世界が事実なら、ミラルは死んだことになる。トレスは古文書を調べ、ミラルは娘の不名誉のためにグレトールへ送られるのだと確信する。自分が不名誉の責任を取れば、ミラルは天国=スト・ヴォ・コーへ行けるのだというトレス。死者の船へ戻るため、再び臨死状態になる許可をジェインウェイから何とか受けることができた。いつでも蘇生できるようにしておく。再び訪れた死者の船の上で、トレスはクリンゴンの服を着ていた。
ミラルと話すトレス。死者の船から出ようとするが、ミラルはずるい方法でスト・ヴォ・コーへ行く気はないという。2人はコーターの前に連れ出され、トレスはミラルの代わりに自分がグレトールへ行くことを申し出た。蘇生することもできないというコーターだが、トレスはクリンゴンらしく死ぬという。ミラルの焼印がトレスに移され、ミラルは消えた。グレトールの門に到着する。ヴォイジャーではトレスが危険な状態になっており、蘇生できない。門の前では突然バトラフを持ったトゥヴォックが現れ、トレスをグレトールへと突き落とした。目を開けるトレス。そこはヴォイジャーそっくりの「グレトール」だった。
ジェインウェイをはじめとするクルーもいる。現実では未だドクターたちが蘇生させようと奮闘していた。トレスは更に死者の船に戻り、そこにはスト・ヴォ・コーへ行ったはずのミラルがいた。自分はどうすればいいのか尋ねるトレスに、ミラルは生きる道を選んでという。クルーやミラルに取り囲まれ、バトラフを渡されるトレス。戦うのには疲れたといい、バトラフを彼方へと放り投げた。ミラルは優しくトレスに話す。いつかスト・ヴォ・コーで、あるいは帰った時に会えると。そして医療室で目を覚ましたトレスは、生きていることを喜ぶのだった。


・用語解説など
パリスのセリフ:「一難去ってまた一難」→原語では "Out of the plasma cooker into the fire." (プラズマ調理器からやっと脱出できたと思ったら、今度は火の中に飛び込んでしまった。) "out of the frying pan into the fire" で「一難去ってまた一難の事態になる」という意味の成句があります

コーター
Kotar
(エリック・ピアーポイント Eric Pierpoint TNG第154話 "Liaisons" 「イヤール星の死者」のヴォヴァル大使 (Ambassador Voval)、DS9第111話 "For the Uniform" 「エディングトンの逆襲」のサンダース艦長 (Captain Sanders)、ENT第18話 "Rogue Planet" 「幻を狩る惑星」の Shiraht、第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」などのハリス (Harris) 役) 声:小川真司
Hij'Qa
(シャーマン・オーガスタス Sherman Augustus) コーターの部下のクリンゴン人。名前はセリフ中には言及されていません。声:楠見尚己、DS9 アレキサンダー役
ミラル
Miral
(カレン・オースティン Karen Austin DS9第102話 "Nor the Battle to the Strong" 「戦う勇気」のドクター・カランドラ (Dr. Kalandra) 役) 声:磯辺万沙子
Brok'Tan
(ジョン・ケントン・シャル John Kenton Shull TNG第173話 "Firstborn" 「クリンゴン戦士への道」のモロー (Molor)、DS9第70話 "Shakaar" 「シャカールの乱」の保安部員、第86話 "Return to Grace" 「新たなる戦線」の K'Termang、VOY第43話 "Basics, Part II" 「ケイゾン総攻撃(後編)」のケイゾン、第169話 "Homestead" 「帰り行く処」のノコナ (Nocona) 役) 死者の船に乗っていたクリンゴン人。名前はセリフ中には言及されていません。声:秋元羊介

勇者サーペク
Sarpek the Fearless
キロモのナイフ
Knife of Kirom
ターグ
targ
毛皮で覆われた、ブタのようなクリンゴンの動物。TNG第6話 "Where No One Has Gone Before" 「宇宙の果てから来た男」など。「なくしたターグ」と訳されていますが、動物なので「迷子の (行方不明の)」の方が適切ですね
(ブラッドワイン)
クリンゴン・ブラッドワイン Klingon bloodwine
赤いクリンゴンのワインの一種。パーティで飲んでいたワインです。TNG第157話 "Gambit, Part II" 「謎のエイリアン部隊(後編)」など。単に「ワイン」と吹き替え
プタック
pahtk
クリンゴン語の侮辱。TNG第65話 "Sins of the Father" 「クリンゴン戦士として」など
スクラル川
River Skral
ガーグ
ガー、ガガ gagh
クリンゴンの料理で、ヘビムシ。TNG第34話 "A Matter of Honor" 「錯綜した美学」など
カーレス
Kahless
忘れ得ぬ者カーレス (Kahless the Unforgettable)。クリンゴンの神話的人物。TOS第77話 "The Savage Curtain" 「未確認惑星の岩石人間」、TNG第149話 "Rightful Heir" 「クリンゴン神カーレスの復活」など
グレトール
Gre'thor
クリンゴンの神話で、不名誉な死者が行く場所。TNG第87話 "Devil's Due" 「悪魔の契約」で言及
死者の船
Barge of the Dead
原題
ナージ
naj
コスカリー
kos'karii
ガタンの海
Sea of Gatan
パクバトラ
paq'batlh
クラヴェックの第11巻
11th Tome of Klavek
スト・ヴォ・コー
Sto-Vo-Kor
名誉の死を遂げた者が死後に向かう、クリンゴンの神話的な場所。TNG第149話 "Rightful Heir" 「クリンゴン神カーレスの復活」など
ベルリオーズ
Berlioz
エクトール・ベルリオーズ (Hector Berlioz)。1803〜1869年。フランスの作曲家。映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」でも
ファウスト
Faust
ファウストからの八つの情景 (Huit Scenes de Faust、1829年)/ファウストの劫罰 (La Damnation de Faust、1846年)
フェックラー
Fek'lhr
グレトールの守護者。TNG第87話 "Devil's Due" 「悪魔の契約」で登場。「フェックラーはないの?」と訳されていますが、人物なので「いないの?」が適切
絶望の洞窟
Cavern of Despair

・感想
シーズン・プレミア、ボーグ (+セブン)、そして 3話目はトレスの話。この展開、前シーズンと全く同じですね。
それはさておき、ヴォイジャーでは結構多い心的・霊的な話です。これまでと違うのは、トレスを TNG や DS9 のウォーフのようにクリンゴンとして前面に押し出していることでしょうね。これも前話同様、ロン・ムーア脚本の影響だと思われます。ただ不思議なことに、ムーアは VOY で 2話だけ担当して、以降は一切関わってないのですが…。
最後でクルーに取り囲まれるのは以前も観たことがあるような感じで、「バトラフを投げ捨てる」というわかりやすい描写は良いのですが、いまいちな締めくくりに終わっています。とはいえトレスの母親ミラルが初登場し、父親を含めた親子関係が語られるなど、ファンには必須のエピソードです。


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