ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第124話「幻の指揮官」
Tinker Tenor Doctor Spy
イントロダクション
ドクターが話している。 「どこか、この完全無欠の宇宙に、天の川という銀河がある。この銀河の端に、プカリと浮かぶ地球。その星に、マントヴァ※1という街がある。泉を越え、まっすぐ行き、右へ左へ、また右へ。するとそこでは、せせらぎのそばで、男が歌を唄っている。愛する人の心変わりを。魚さえ涙する歌です。ヴェルディ、『女心の歌』※2です。」 食堂に並べられた椅子にはクルーが座っており、ニーリックスは目をつぶっている。曲に合わせて歌い出すドクター。 「ラ ドンナ エ モビレー クア ピュアマール ヴェントー ムーター ダチェントー」 聞き入るジェインウェイ。 「エ ディ ペンシエロー センプレ ウ ナ モビレー」 笑うチャコティ。 「レジアドロ ヴィーゾ」 微笑むセブン。 「イン ピアントゥ インリーゾ エー メンゾー ニエーロ」 退屈そうなキム。 「ラー ドンナー エ モッビール」 椅子に片足を上げるドクター。 「クア ピュアマール ヴェントー ムター ダーチェーントー…」 トゥヴォックが…泣いている。 「エ ディー ペンシェール エ ディー ペンシェール」 トゥヴォックの様子に気づくパリス。 「エーー…」 パリス:「トゥヴォック?」 「エ ディー ペンシェール」 今度は大声で笑い出すトゥヴォック。苦しみ、倒れこむ。 「トゥヴォック!」 近づくパリスを押し飛ばす。 ジェインウェイ:「ジェインウェイより保安部。すぐ食堂へ来て。」 ドクターは言う。「下がって。ポンファーの季節なんだよ。ホルモンの変化で発情期に入ったんだ。今は口で言っても無駄だ。」 トゥヴォックは静止させようとするチャコティやキムをはねつけ、保安部員からフェイザーを奪った。ドクターの歌が続く。 「トゥヴォックわかるよ 君はヴァルカン もう七年も なしできてる」 フェイザーを構え、うろたえるトゥヴォック。 「パリス頼むよ ハイポスプレー 合図するから 後ろへ回れ」 医療キットを取り出すパリス。 「ホルモンのせいだ 気が高ぶって とにかくとーてーー…」 設定したハイポスプレーを投げるパリス。宙を舞うハイポスプレー。受け取るドクター。 「…もー…非論理的」 注射を受けたトゥヴォックは倒れこんだ。ハイポスプレーを落とすドクター。 「非論理的 非ーー…」 テーブルに座り、足を組むドクター。「…非論理的」 一斉に拍手。ニーリックス:「ブラボー!」 立ちあがり、手を挙げるドクター。 ジェインウェイ:「ブラボー、ドクター!」 キムとチャコティ:「ブラボー!」 「ブラボー!」 たくさん花が降ってくる。その一本を手にし、匂いをかぐドクター。投げキッスをするジェインウェイ。 「ドクター? ドクター! ちょっと。」 トレスの声。 医療室で満足そうな顔をしていたドクターは、我に返り、コンピューターを操作する。 トレス:「聴覚サブルーチンの検査した方がいいかもね。」 ドクターは言った。「耳は大丈夫だ。ただちょっと、空想にふけってただけだよ。」 |
※1: Mantua 北イタリアの都市。「マンチュラ」と吹き替え ※2: "Quando la Donna e Mobile" ジュゼッペ・ヴェルディ (Giuseppe Verdi、1813〜1901年) 作曲、「リゴレット」より。邦題は冒頭の訳詞の「風の中の羽のように」とも。タイトルは "quando" をつけない場合が多いようです。なお「ヴェルディ」は原語にはありません。また、ここで歌をわざとカタカナで書いてるのは、吹き替えの中博史さんご本人が歌ってるからです。参考 |
あらすじ
ドクターは上陸班に加えてもらえなかったことに不満をもち、クルーの自分に対する扱いが悪いことをジェインウェイに文書で申し立てた。一方近くの星雲では、異星人がヴォイジャーを監視している。会議中にトレスとセブンとジェインウェイが誘惑し、自分を取り合う空想をみるドクター。ECH すなわち「緊急司令ホログラム」として活躍できるように求めたが、ジェインウェイに却下されてしまった。ドクターは ECH として認められた妄想にふけるが、スパイしている異星人はそれが本当の出来事だと勘違いしていた。 ドクターを通じて情報を仕入れる異星人。ヴォイジャーは突然ボーグ艦に襲われ、クルーが同化されていく。ECH となったドクターは「光子砲」なる強力な武器を使い、ボーグを撃破する……もちろん空想だ。異星人はヴォイジャーを密かに攻撃する計画を進めていく。ドクターは所構わず白昼夢を見るようになってしまった。 空想を見る機能を勝手に付け加えたことをクルーに明かすが、その最中にも妄想が始まり、ワープコアの暴走を止めようとするドクター。ついに空想アルゴリズムに完全にとらわれ、ドクターは医療室に隔離される。ドクターの夢……セブンのヌード画のデッサンや、トレスとのロマンスをホロデッキで目の当たりにするクルー。ヴォイジャーを調べていた異星人は、やっとでそれがドクターの空想だったと気づいた。もはや上司に間違いだったと言うことはできない。 アルゴリズムを分離し、ドクターは安定した。だがまた白昼夢が始まり、そこに異星人の映像も現れた。彼はドクターに警告するためにアルゴリズムを再起動し、攻撃から回避する方法を教えに来たのだ。事実、教わった位置に船が潜んでおり、ヴォイジャーに向かってきていた。 異星人が彼らの武器の情報を教える代わりに、彼が間違いだったと上司にばれて職を失わないよう、ドクターがヴォイジャーの指揮を取っているように見せかけなければならない。迫る重圧にうろたえるドクター。一方異星人の上司は攻撃方法を強いものに変えてしまった。赤制服となったドクターが艦長席に座り、ジェインウェイは別室から緊張するドクターに指示を与える。攻撃が始まるが、方法が変わったために避けることができない。ドクターはジェインウェイの指示を無視し、トゥヴォックに架空の「光子砲」を起動するように命じた。その武器でボーグを撃墜したことを知っていた彼らは、撤退した。ジェインウェイは功績を称え、ドクターに褒賞を与えるのだった。 |
用語解説など
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感想
ドクターお得意のコメディ。ホログラムならではなのかもしれませんが、描かれる夢がいかにも典型的なもので笑ってしまいます。それをドクターの権利問題と同時に扱うのは、やはりうまいところですね。 名作として残るとは限りませんが、文字通り「面白い」エピソードでした。 |
第123話 "Barge of the Dead" 「さまよえるクリンゴンの魂」 | 第125話 "Alice" 「アリスの誘惑」 |