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ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第120話「異空生命体を呼ぶ者達」(前)
Equinox, Part I

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・イントロダクション
※1※2一隻の連邦艦。シールドに異常をきたしている。
命令する艦長※3。「コースを維持しろ!」
ブリッジはあちこちの梁が落ち、蒸気が噴出している。爆発も続く。
報告する副長※4。「シールド、29%にダウン。侵入されます。」
「ほっとけ!」
「艦長!」
「シールドをリセットして、エミッターをリチャージしろ。それでフルパワーを回復できる。」
「リチャージ完了まで 45秒かかります。」
「シールドを直さなければ野垂れ死にだ! 全員、武器を持て!」
ブリッジのクルーは近くに置いてあるフェイザーライフルを手に取った。
艦長:「シールド、停止!」
何かの音が聞こえてくる。次第に大きくなる、高い音だ。
艦長:「リチャージ時間は。」
副長:「あと 30秒。」
突如ブリッジの空中に、円形の空間亀裂が発生した。
「来たぞ!」 そこに向けてフェイザーを連射する艦長。穴は消える。
他のクルーも次々と亀裂を撃っていく。
艦長:「時間は!」
副長:「あと 10秒です。」
一人のクルーが亀裂を撃っている隙に、すぐ横に発生した穴から、空中を浮遊する生命体が姿を現した。まっしぐらに男に向かって行き、体当たりする。叫び声を上げた直後、彼はその場に倒れた。
艦長は梁に隠れながら、ライフルを構える。「あ!」
奇声を上げながら、2匹の生命体が襲ってきた。

※1: 第5シーズン・フィナーレ (最終話) です

※2: この前後編エピソードはノヴェライズが発売されています

※3: (ジョン・サヴェージ John Savage Star Trek: The Magazine 第20号にインタビューが掲載されています) 声:鈴置洋孝

※4: (タイタス・ウェリバー Titus Welliver) 声:金尾哲夫

・本編
※5ヴォイジャーの天体測定ラボで、スクリーンに乱れた映像が映し出されている。 『こちら連邦宇宙艦、イクワノックス※6のランサム艦長※7だ。攻撃を受けた! 救援を要する。こちら連邦宇宙艦、イクワノックスのランサム艦長だ。攻撃を受けた! 救援を要する。』
ジェインウェイ:「ランサム。科学宇宙艦の指揮官よ。イクワノックス※8の。」
セブン:「この救難信号は約 14時間前に送信されている。」
チャコティ:「距離は。」
「3.2光年。」
ジェインウェイ:「正確な位置を特定して。」
チャコティ:「デルタ宇宙域で一体何を。」
セブン:「ヴォイジャーを探しに来たのだろう。」
ジェインウェイ:「イクワノックスはノヴァ・クラス※9の船よ。惑星調査船で、長距離戦術任務には向かない。」
「座標が判明。方位 258、マーク 12。」
ジェインウェイ:「コースセット、ワープ最大。非常警報。」
先に出て行くチャコティ。
ジェインウェイ:「艦長、今行くわ。」
セブン:「個人的な知り合いか?」
「評判を聞いてるだけ。宇宙生物学者だったのが、イリディアン※10とのファースト・コンタクトで、艦長に昇進したの。」
「生命体6291※11。絶滅したと認識していたが。」
「ええ、艦隊もよ。でもランサムは追い続けた。一度会ってみたかったの。こんなで会い方で残念だけど。」
「私もクルーたちと会うのが楽しみだ。人類への知識が深まるだろう。」
「そうあることを祈るわ。」

ブリッジ。パリス:「座標に接近中です。」
ジェインウェイ:「ワープを解除。」
キム:「いました。左舷 2,000キロ前方。低速で移動中です。」
「先回りして。状態は?」
スクリーンにイクワノックスが映し出される。
トゥヴォック:「かなり損傷しています。複合隔壁に亀裂。ワープドライブ停止。」
ニーリックス:「シールドはどうしたんだ?」
トレス※12:「何らかのエネルギーサージに破壊されたみたい。」
パリス:「痕跡は?」
トゥヴォック:「付近には一隻の船もいない。」
キム:「呼びかけられます。」
ジェインウェイ:「回線をつないで。こちらは連邦宇宙艦ヴォイジャーのキャスリン・ジェインウェイ艦長…」
ランサム:『ヴォイジャー!』
「救難信号を受けて…」
『シールドを我々の船まで広げてくれ! 周波数を調整するのだ。』
「まだ戦闘中?」
『シールド! 早く!』
「お願い。」
ヴォイジャーはイクワノックスの上部に近づく。
パリス:「接近完了。」
トゥヴォック:「現在、シールド周波数調整中。」
ふいに高音が聞こえてきた。ドクター:「今の音は?」
段々大きくなる。セブン:「位相空間に亀裂発生。第10、第6、第1デッキ。」
ジェインウェイ:「トゥヴォック!」
トゥヴォック:「スタンバイ。」
ヴォイジャーのシールドが 2隻を取り囲んだ。
トゥヴォック:「シールド、維持。」
チャコティ:「亀裂は?」
セブン:「ふさがっている。」
ジェインウェイ:「ヴォイジャーからランサム艦長。」 雑音だけで応答がない。「救援チーム編成。イクワノックスを確保。トゥヴォック、一緒に来て!」
ターボリフトに乗る 2人。

あちこちに死んだクルーが倒れている、イクワノックスの機関室。チャコティたちがやってきた。「誰か? 誰かいないか?」
トレスに命じるチャコティ。「メインパワーをチェックしてくれ。…トム。」
コンソールのそばで、ミイラ化したようなクルーがいる。トリコーダーで調べるパリス。
チャコティ:「どうだ?」
パリス:「何らかの熱にやられたようです。細胞が全て乾燥しています。」
トレス:「副長! このインジェクターマニフォルド、わけがわからない。ダイリチウムマトリックスが、完全に設計しなおされている。」
チャコティ:「機関部員を探して手を貸してもらおう。とりあえず、コアにつなぎ直してみてくれ。」
「了解。」
いまだ爆発が続く。女性のすすり泣く声が聞こえてきた。チャコティがライトで照らすと、梁の下に隠れている。「今助ける。」
梁をどけるチャコティ。「U.S.S.ヴォイジャーの、チャコティ副長だ。」
女性※13:「そんな…デルタ宇宙域に、地球人※14がいるなんて。」
「私達も驚いている。さあ。」 彼女を助け出す。

キムは階段を上がった。「こっちだ。」 倒れている男性に近づく。「今助けてやるからな。」
「知らない顔だ。」
「キム少尉だ。こっちはセブン・オブ・ナイン。プラズマトーチを取りに行ってくる。話しかけて、リラックスさせるんだ。」
セブン:「名前は?」
「レッシング、ノア※15。デルタ宇宙域なんかで何をしている。」
「一言では答えかねる。」
「教えてくれ、私の脚はまだあるか。もう 2日も何も感じない。」
ライトで脚を確認するセブン。「損なわれてはいない。」
「ありがとう。」
キム:「セブン、手を貸して。」
セブン:「怖がることはない。」
レッシング:「今更な。」

ニーリックスたちも生存者を探している。「生命反応を探知。もしもし? 誰かいるかい?」
突然、隅に隠れていたクルー※16がフェイザーを発射してきた。「来るなー!」
ニーリックス:「助けに来たんだ!」
「援護しろー! 敵が来たぞー!」
保安部員に撃たれ、倒れる男性。ニーリックスは小型機具を彼の首につける。「ニーリックスから医療室。」
ドクター:『医療室だ。』
「また生存者を発見。傷は大したことないが、精神的にかなり参ってるようだ。」
『了解した。』

ターボリフトのドアを手で開けるジェインウェイ。
死亡したクルー。またミイラ化した者もいる。副長は生きている。そして艦長席に座ったままのランサム。気を失っているだけで、目を覚ました。ジェインウェイに気づく。「クルーは。」
「かなり死傷者が出てる。生存者は治療中よ。誰にやられたの?」
「わからない。奴らとコミュニケーションが取れん。もう何週間も攻撃を受けてる。」 動こうとするランサム。
「艦長、落ちついて。」
「船を守らなければ。」
「私達に任せて。」
機械を首につけるジェインウェイ。だがランサムはそれを外す。「いや、ここで治療を。ブリッジを去るわけにはいかん。」
「あなたに命令する気はないけど、とても戦える体じゃない。」
「それで…地球は?」
「私にもわからない。」
「……我々を探しに来たのでは?」
「残念だけど、もう 5年もデルタ宇宙域をさまよってるの。意に反して異星人に引き込まれてしまったのよ。管理者…」
「管理者か。」
「データ合わせは後。ヴォイジャーに運びます。」 ジェインウェイはランサムを連れて行く。


※5: タイトル表示は "Equinox" のみですが、このサイトでは便宜上わかりやすくするため "Equinox, Part I" で全て統一しています

※6: Equinox
U.S.S.イクワノックス、NCC-72381。この船のデザインについて掲載している Star Trek: The Magazine 第14号によると、書籍 "DS9 Technical Manual" に載っている U.S.S.ディファイアントのプロトタイプのデザインを基にして作られています。Rick Sternbach によるデザイン

※7: Captain Ransom

※8: イクワノックスと吹き替え

※9: ノヴァ級 Nova-class

※10: イリディア人 Yridians
恒星間の情報商人として知られる、ヒューマノイド文明。TNG第142話 "Birthright, Part I" 「バースライト(前編)」などに登場

※11: Species 6291

※12: 髪型が変わっています

※13: (オリヴィア・バークランド Olivia Birkelund) 声:相沢恵子

※14: 「人間」と吹き替え

※15: ノア・レッシング Noah Lessing
(リック・ワーシー Rick Worthy DS9第119話 "Soldiers of the Empire" 「我らクリンゴン」のコーナン (Kornan)、VOY第29話 "Prototype" 「ユニット3947」の自動パーソナルユニット3947/クラヴィック司令官122 (Automated Personnel Unit 3947/Cravic Commander 122)、ENT第53話 "The Xindi" 「トレリウムD」などの毛長ズィンディ (Xindi-Arboreal)、映画第9作 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」のエローラ人士官その1 (Elloran officer #1) 役。ゲーム "Klingon" でも声の出演) 声:梁田清之

※16: (Steve Dennis VOY第95話 "Night" 「暗黒の汚染空間」の暗黒異星人、第114話 "Think Tank" 「頭脳集団クロスの陰謀」のフェニム (Fennim)、第119話 "Warhead" 「乗っ取られたドクター」のオンクアニ (Onquanii)、ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」などの Tholos 役) 声:田島康成

食堂。ランサムがイクワノックスとヴォイジャーのクルーの前で話す。「名誉の死を遂げたクルーを追悼しよう。ウィリアム・イエイツ中尉※17。それから、ジョン・ボーラー中尉※18。ドロシー・チャン少尉※19。エドワード・レジス少尉※20。デヴィッド・アマンタ乗組員※21。みんな優秀なクルーだった。彼らの勇気と犠牲心を忘れることはない。我々の悲しみは深いが、希望が見えてきたのも確かだ。ジェインウェイ艦長、ヴォイジャー、クルーを代表して、礼を言おう。」
ジェインウェイ:「ファミリーに新たなメンバーが加わったお祝いは、日を改めてするけど、今すべきことは一つ。イクワノックスの確保よ。主要システムは深刻なダメージを受けてる。ハリーとベラナは修理を最優先に。ランサム艦長がエイリアンの攻撃に関するデータを見せてくれたの。トゥヴォック、セブン、あなたたちはマックスウェル・バーク※22副長の手伝いを。同胞の魂が、一日も早く故国へ帰れるように。解散。」
各々食堂を出て行く。トゥヴォックはバークに話しかける。「まずはヴォイジャーの防衛法を知っていただくべきかと。」
「その前に、挨拶をしておきたい人がいるんだ。」
セブン:「天体測定ラボにいる。第8デッキ、セクション 29※23。」
「わかった。」
バークは笑みを浮かべる。「B・L・T※24。」
応えるトレス。「マックス※25。医療室に行ったんだけど、鎮静剤を打たれてたから。」
「知ってたよ。夢かと思った。」
笑うトレス。抱き合う 2人。パリスはあからさまに反応する。
バーク:「それで…僕のセーターは? 青い奴。背中に階級章のある。」
パリスは無言で質問している。トレス:「あ…アカデミーの同期生なの。」
パリス:「ああ。」
バーク:「マックスウェル・バーク。」
握手するパリス。「トム・パリス。」
キム:「ハリー・キムだ。ようこそ。」
トレス:「副長だなんて、驚きね。最後に話した時は艦隊の落ちこぼれだったくせに。」
バーク:「人のこと言えるか? マキに?」
「少しね。それから 2人に会ったの。」
笑うトレスとパリス。パリス:「会ったのが運の尽きだったよ。」
バーク:「君んとこのヴァルカン人を待たせてる。よければ後で少し話さないか。」
トレス:「じゃあみんなで夕食食べない?」
「それがいい。」
出て行くバーク。パリス:「…B・L・T。」
トレス:「『ベーコン・レタス・トマト』。私のニックネーム。」
「ニックネーム?」
「イニシャルだから。」
「なるほど…。ロマンチックだな。」
「10年以上前に別れたのよ。非常警報は必要なし。」
「警戒警報は?」
「焼きもち? かわいい。」
「焼きもち…?」
「じゃ、イクワノックスで。」 トレスは出ていった。
キム:「馬鹿まるだし。ほら、仕事しごと。」
パリス:「焼きもちだと?!」

廊下を歩いていたチャコティは、彼が助け出したイクワノックスの女性クルー、ギルモア※26少尉に話しかけられる。「副長。あの…私もイクワノックスの修理チームに配属されたんですけど、もしよかったら変えていただけませんか? ヴォイジャーの任務とか。」
「理由は?」
「心的外傷後ストレスです。」
「悪い思い出が?」
「少し。」
「君みたいに有能な機関部員が欲しかったんだ。」
「感謝します。綺麗な船でうらやましい。イクワノックスは滅茶苦茶だったから。」
「数週間で見違えるようになるはずだ。戻ったら驚くぞ。」
「ここにいたい。…私のような機関部員が欲しかったんじゃないんですか?」
「君の艦長が許すはずないさ。残りはミイラのクルーばかりだ。」
ターボリフトに入るチャコティ。だがギルモアは続かない。
チャコティ:「機関室は 5デッキ下だ。歩いて行くには遠すぎる。」
ためらいながら入るギルモア。
チャコティ:「11デッキ。」
「…ターボリフトにはもう、3ヶ月も乗ってません。」
「怖いのか?」
「ここで、空間亀裂が起きたら逃げ場がない。」
少し異音が聞こえた。チャコティ:「重力子リレーだ。心配ない。」
「心配そう?」
ターボリフトの音が反響する。ギルモアは叫んだ。「緊急停止!」
降りる 2人。ギルモア:「よければ、ジェフリーチューブを通って行きたいんですけど…。」
チャコティ:「たまには運動するか。」

天体測定ラボで説明するセブン。「シールドをサーモグラフで分析したところ、複合ストレスポイントが見つかった。エイリアンがヴォイジャー内に侵入しようとした証拠だ。」
ヴォイジャーのシールド図に次々とポイントが示される。
トゥヴォック:「亀裂が起こるたびに、シールドの 1メートル四方が 0.3%※27ずつ弱まっています。
ジェインウェイ:「この分だと 2日も経たないうちに侵入してくる。」
セブン:「バイオスキャンの結果、エイリアンはここでは 4、5秒しか生きられないとわかった。」
ランサム:「陸に上がった魚同然だ。だがその間の攻撃力は計り知れない。」
トゥヴォック:「しかし、戦闘能力には長けていません。恐らく、出しぬけるかと。」
バーク:「どういうことかね。」
セブン:「我々が捕獲できるところを見せれば、次の攻撃を見合わせるはずだ。」
ジェインウェイ:「問題はどうやって魚を捕まえるかね。」
ランサムとバークは一瞬顔を見合わせた。
バーク:「網を張ればいい。」
ジェインウェイ:「副長。」
「正確にはマルチフェイズ・フォースフィールド。我々が苦肉の策で考案した。奴らを生け捕りにできるチャンバーです。」
セブン:「その技術を応用できれば、両方の船の周りに網目状に張り巡らすことができるかもしれない。」
バーク:「ルディ※28?」
ランサム:「ジェインウェイ艦長に従おう。」
ジェインウェイ:「そのチャンバーを見せてもらえないかしら。」
「残念だが無理なんだ。研究室にはあるが、最後の攻撃で全セクションが放射線に汚染されてしまった。入れるまでしばらくかかる。」
バーク:「構造図なら予備のデータコアにあります。」
「ダウンロードしてみよう。手を貸してくれ。」
出て行くジェインウェイとランサム。

イクワノックスのブリッジ。ジェインウェイ:「あなたのクルーは上官のことを名前で呼ぶのね。」
ランサム:「長期間攻撃にさらされると、階級や規約なんて関係なくなる。艦隊司令部から離れて久しいしな。」
「気持ちはわかる。」
「君の船は厳しそうだな。」
「くつろいで話をすることもあるけど、規約を守ることで、いつの日か自分たちが戻るところを忘れずにいられると思ってるの。」
「見事うまくまとまってるようだ。」
「困難を乗り越えてきた仲間だもの。ワープコアの破壊、イオンストーム、ボーグとの遭遇。」
「ボーグ? 私はここへ来てからボーグと遭遇したことはない。」
「運がいいと思わなくちゃ。」
「クオトナン・ガード※29に行ったことは?」
「初耳よ。」
「デルタ宇宙域での最初の 1週間を過ごした場所だ。領域侵犯だと言われたが、私はそのまま前進し、クルーの 39名※30を失った。…半数だ。」
「気の毒に。」
「その痛手が元で、全てが変わった。」
「どういうこと?」
「死ぬまでデルタ宇宙域をさまよい続けることを自覚した当初は、私はクルーに…宇宙艦隊の士官として知識を広げる…義務があると言っていた。規約を守るべきだと。だが数年後には、我々は探検家だということを忘れ始めた。そして時に、人間であることさえ、忘れるようになった。」
「これはノヴァ・クラスの科学船よ。短距離調査任務用に設計されてる。最小装備で、ワープ8 以上のスピードも出ない。生き延びただけ立派。私たちより遥かに少ないエネルギーで、同じ距離の旅をした。」
「誉めて頂いて光栄だが、ワームホールに閉じ込められて、ワープエンジンを強化せざるを得なかっただけだ。……一つ聞いていいかな、艦長同士として。」
「ん?」
「艦隊の誓いを…何回ぐらい破った? クルーを守るために。」
「破る? …一度も。曲げたことはあったけど。それしか選択の余地がなかったの。あなたは?」
「1、2度、一線を越えたことがある。だが大したことはない。ここにあったか。」
ランサムは床に落ちていた、イクワノックスの記念銘版を見つけた。
ジェインウェイ:「いい前兆ね。元あったところに戻しましょう。」

食堂。ランサムがやってきた。食事をしているバークに話しかける。「やはりここだったか。」
「2年間贅沢を我慢してきましたからねえ。」
小声で話し始めるランサム。「羽を伸ばしすぎるな。ジェインウェイは堅物だ。当然クルーにもわかってもらえない。」
「見つかるのは時間の問題です。」
「研究室には近づけるな。ワープコアインジェクターにもだ。クルーと話す時も注意しろよ。昔の彼女なんか、特にだ。」
「わかりました。」
バークの料理を一口食べるランサム。「うん、悪くない。」 食堂を出て行く。


※17: Lieutenant William Yates

※18: Lieutenant John Bowler

※19: Ensign Dorothy Chang

※20: Ensign Edward Regis

※21: Crewman David Amantes

※22: Maxwell Burke
階級は大尉

※23: セクション21 と誤訳

※24: B.L.T.

※25: Max

※26: Gilmore

※27: 3%と誤訳

※28: Rudy
ランサム艦長のファーストネーム。つまりルディ・ランサム。ルドルフ (Rudolph) の愛称としている資料もあります

※29: Krowtonan Guard

※30: 人数は訳出されていません

天体測定ラボに入るレッシング。「我が慈悲深き天使よ。」
作業をしていたセブン。「レッシング乗組員※31。随分回復が早かったな。」
「君たちのドクターは素晴らしい。うちはレーザーメスを使うのがやっと。」
「ドクターは優秀だ。」
「バイオデータを提供するよう、仰せつかった。命の恩人に、せめてものお礼をさせてくれ。」
突然、あの高音が聞こえてきた。フェイザーを構える 2人。

ブリッジで異常に対処する。トゥヴォック:「側面シールド、停止。」
チャコティ:「どういうことだ!」
キム:「第1、8、11デッキで空間亀裂。」
「補助パワー。」
操作するキム。音は収まった。「何が起きたんだ。」
トゥヴォック:「エイリアンは、シングルシールドに集中して攻撃を仕掛け始めたようです。補助エミッターを起動させるまで、もちません。」
チャコティ:「戦法を変えたってわけか。思ったより時間がなさそうだ。」

会議室。「マルチフェイズチェンバーの構造図を変更した。応用可能だ。自動作動セキュリティグリッドを設置する。」 説明するセブンはコンピューターを操作し、2隻の船の構造図が表れる。
トゥヴォック:「船にエイリアンが現れた瞬間、フォースフィールドで捕まえます。」
セブン:「マルチフェイズ周波数を発するフィールドジェネレーターを改良すれば、両方の船に、グリッドを張ることができる。」 次はジェネレーターの図が出る。
ジェインウェイ:「所要時間は?」
トゥヴォック:「約 14時間かかります。」
ギルモア:「そんなにかけられない。また、いつ敵が来るか。」
チャコティ:「イクワノックスのクルーが全員ヴォイジャーに退避すれば、半分の時間で終わらせることができる。」
ランサム:「我々は地球から 35,000光年も離れているんだ。簡単に船を放棄するわけにはいかん。」
バーク:「2隻あれば燃料は節約でき、故郷へ戻れる確率は倍になる。」
ジェインウェイ:「イクワノックスは正常に航行できる状態じゃない。チャコティの言う通り、全員ヴォイジャーに移るべきかと。」
ランサム:「ここでいさかいを始める気はないが、私はクルーと共にイクワノックスに戻るつもりだ。」
ため息をつくチャコティ。
ランサム:「2隻の船を指揮する 2人の艦長の間で意見が割れた場合、最後に命令を下すのは?」
ジェインウェイ:「艦隊規約、191 の第14条※32。『一隻以上の船が関わる戦闘において、指揮権は戦略的に優位な船にあるものとする』。今朝読んできたの。」
「用意がいい。」
「この場合、私に指揮権があるということね。」
「私に船をあきらめると言うのか?」
「言いたくはないけど。」
「その規約は全て、アルファ宇宙域で決められたものだ。デルタ宇宙域で通用するとは思えん。」
「規則は規則よ。」
「確かに君の言う通りだ。ジェインウェイ艦長に全面的に協力しよう。」
バーク:「ルディ?」
「マックス、命令だ。何とか乗り越えよう。艦長、よければ一旦部屋に戻って荷物をまとめてきたいんだが。」
ジェインウェイ:「そうして下さい。」
出て行くバークとランサム。

機関室。バークが一人でトリコーダーをもち、ワープコアのそばのコンピューターの上に置いた。操作すると、画面にはフィールドジェネレーターの図と共に「ダウンロード進行中」と表示される。
トレスが 2階に上がり、冗談を言う。「侵入者警報! 相変わらず忍び込むのが上手だこと。それはコマンドステーションよ。私の許可なしに、触ることは許されないの。」
「知らなかったよ。逮捕するかい?」
「今回は大目に見てあげる。何か手伝おうか?」
「ここの推進システムを勉強しておきたいんだ。ヴォイジャーに留まることになるなら、いろいろ覚えておかないと。ディナーでも食べながら、ご教授を。」
「信じられない。仕事になんか興味なかったくせに。食事にも。」
笑うバーク。
トレス:「今も変わってないはずよ。」
「そんなことはない。僕はもう…僕のこと君、なんて言ってた?」
「プタック※33。」
「プタック。僕はもうプタックじゃない。証明してみせる。」
「ねえマックス、誤解しないで。会えたのは嬉しいの。でも 10年前にはもう戻れない。」
「トム・パリスか。」
「そう、トム・パリス。」
「わかったよ。」
トリコーダーを手にし、画面を消すバーク。「ディナーくらいいいだろう。2人だけで。」
「もう行って。拘束室へ投げ込むわよ。」
バークは出て行った。

食事をしながら話すチャコティ。「イクワノックスを放棄する前に、役立ちそうな物は回収しよう。ダイリチウム結晶とかな。」
ギルモア:「もう大して残ってません。2、3アイソグラム※34ってとこです。」
キム:「ソニックシャワーくらいにしか使えないな。」
「提案があります。」
チャコティ:「何だい?」
「主要システムはもう役に立ちません。生活用品に集中してはどうです? 利用できそうなものを挙げてみました。あー…キマサイト※35 2キロトンに、マーキュリアム※36の缶 1ダース。」
「第1貨物室を開けといてくれ。」
「シナプシス・スティミュレーター※37はどうです?」
「それは、何だい?」
「神経インターフェイスです。耳の後ろに付けるの。視覚皮質を刺激することによって、仮想の景色が観られるんです。ホロデッキの節約版ってとこかしら。」
笑うキム。「それで息抜きをしてたのか。」
「ゲームに勝って、ポニア人※38にもらったの。」
「初耳だ。」
「デルタ宇宙域一、大きな種族です。ファースト・コンタクトをパーティを開く口実に使ってる。」
笑う 3人。ギルモア:「できることなら、みんなとああいう出会い方をしたかった。……こうして笑い合えるの、何ヶ月ぶりかしら。会えて良かったわ。」
チャコティ:「お互い様だ。このプラズマインジェクターは随分精巧にできてる。なぜ改造を?」
「あー…ワープドライブを強化しようと思って。でも効果はなかった。」
キム:「一応、ベラナに見せたら…」
「その必要はないわ。もう、いいんです。」
そこへナオミ※39がやってきた。「失礼します。」
ギルモア:「こんにちは?」
「副長、お邪魔をしても?」
チャコティ:「どうぞ?」
「ギルモア少尉?」
ギルモア:「そうよ。」
握手する。「ナオミ・ワイルドマン。艦長の助手です。」
「そうなの。」
「正式に歓迎の気持ちを表しにきました。」
「どうもありがとう。」
「何でも言って下さい。レプリケーターを使いたいとか、下層デッキを見たいとか。」
「ありがとう。そうさせてもらう。」
「それでは。」
出て行くナオミ。微笑むギルモア。「子供が乗ってるとは思わなかった。」
キム:「一人ね。ここで生まれたんだ。」
「ふーん。地球に同い年くらいの、甥がいるの。いいえ、もう違うわね。ティーンエイジャーになってるはずだわ。ずっと会ってないから。」
チャコティ:「また会えるさ。」
通信が入る。『ランサムからギルモア。』
ギルモア:「はい艦長。」
『イクワノックスのブリッジへ。』
「了解。呼び出しです。」
ギルモアは出て行く。チャコティはキムに命じた。「回収チームを集めてくれ。」
「了解。」

イクワノックスのブリッジ。クルーが話している。バーク:「フィールドジェネレーターさえこっちへ転送すればいい。」
ギルモア:「ヴォイジャーはどうなるの?」
「武器もクルーも十分だ。生き残れるさ。」
レッシング:「やはり船を放棄すべきです。今までのことは全部忘れて。」
ランサム:「シャワーに温かい食事。それだけで真の目的を忘れる者がいるとはな。我々は地球へ帰るんだ。ヴォイジャーに邪魔させるわけにはいかん。あと一歩のところまできてる。計画は予定通り実行する。反対の者はいるか。……ではそれぞれ自分のベストを尽くして望んで欲しい。今まで通りにな。マックス。」
バーク:「簡単にはいきません。ジェネレーターはワーププラズママニフォルドの隣にあり、通常のやり方では転送できません。マーラ※40、君はアクセスポートを通り抜け、転送強化装置をセットアップしてくれ。」
ギルモア:「…わかったわ。」
「セクション内のセンサーも切らなければなりません。ノア、頼んだぞ。」
レッシング:「お任せ下さい。」
「私は機関室の連結器を解除します。」
ランサム:「最後のシャワーでも浴びてきたまえ。成功を祈る。」

天体測定ラボでトゥヴォックと作業をするセブン。「セキュリティグリッドに小規模のパワー変動。」 イクワノックスの図の一部が拡大される。
トゥヴォック:「許容範囲内だ。」
「簡単に直せる。変動源はイクワノックスの研究室内だ。マルチフェイズチャンバーの周波数がわかれば、こちらのフィールドジェネレーターを調整できる。」
「セブン、完璧主義は効率を妨げることもある。」
「妙だな。研究室はまだ高レベルの熱放射線に満たされている。」
「もう下がり始めてもいい頃だ。」
「容易に説明はつく。EPSコンジットが研究室につながれている。彼らが故意に放射してるのだ。」

「研究室は故意に汚染されています。」 ジェインウェイに報告するトゥヴォック。
「その理由は?」
「ただ一つ。我々が研究室に入るのを防ぐためです。」
「彼は頑強なまでに船を守ってきた。艦長のプライドからだと思ってたけど。研究室を調べてみましょう。EPSコンジットを閉じたら、どのくらいで放射線を排出できる?」
セブン:「3、4時間だ。」
「そんなに待てない。ドクターを送って。免疫があるはず。異常がないか見てくるように言ってくれない? 天体測定ラボで監視するように。」
トゥヴォック:「ランサム艦長に知らせますか。」
「まだいい。あなたの仮説を確かめてみましょう。」
作戦室を出るトゥヴォックとセブン。

イクワノックス研究室。モバイルエミッターを付けたドクターが転送されてくる。通信を始めるドクター。「入りました。」 暗い部屋の中を、ライトで照らして進む。ドクターは何かに気づいた。部屋の中に、あの生命体の死体が置いてあった。


※31: 階級は訳出されていません。階級ピンを一つ付けていることはわかるので、恐らく だと思われます

※32: Starfleet Regulation 191, Article 14
宇宙艦隊一般命令・規則 (Starfleet General Orders and Regulations) の一つ。"In a combat situation involving more than one ship command falls to the vessel with tactical superiority."

※33: パタック pahtk
クリンゴン語の侮辱の言葉。TNG第58話 "The Defector" 「亡命者」など

※34: isogram
アイソトン (isoton) という質量単位もあり、DS9第100話 "The Ship" 「神の船」などで言及

※35: kemacite
非常に不安定で危険な物質。DS9第79話 "Little Green Man" 「フェレンギ人囚わる」でも

※36: mercurium
VOY第104話 "Counterpoint" 「偽りの亡命者」でも

※37: シナプシス刺激機 synaptic stimulator

※38: Ponea

※39: ナオミ・ワイルドマン Naomi Wildman
(スカーレット・ポマーズ Scarlett Pomers) VOY第109・110話 "Dark Frontier, Part I and II" 「ボーグ暗黒フロンティア計画(前)(後)」以来の登場。声: 永迫舞

※40: Marla
ギルモア少尉のファーストネーム。つまりマーラ・ギルモア

報告するドクター。「マルチフェイズチェンバーを発見。何らかの有機体が入ってます。エイリアンの一種だと思われますが……細胞構造がガラス化している。ただの捕獲チャンバーじゃない。物質変換テクノロジーが使われてる。ここにコントロールポートがあります。ふむ…。」
天体測定ラボのトゥヴォック。「ドクター?」
『ポーラロングリッドが含まれてる。分子下レベルのシークエンサーも。エイリアンの細胞構造を、結晶性の化合物に変換するように設計されてる。』
セブン:「そんな機能は構造図にはなかった。」
「ほかにも山ほど秘密がありそうだ。」 コンピューターを操作するドクター。「研究記録にアクセスしました。暗号化されてます。だが、何度も変換が行われてることが伺えます。」
機械の上の残留物を調べる。「またエイリアン化合物だ。生化学変化を起こしてる。たんぱく質が抽出されてます。」
再びパネルを操作すると、構造が表れた。「非常に珍しい分子構造です。」
トゥヴォック:「詳しく聞かせてくれ。」
『尋常でない量の核エネルギーが蓄積されています。技術者ではないが、どうやら彼らはエイリアンを捕まえて、燃料にしているらしい。』 図にはワープコアにつながれている様子が示されていた。

ヴォイジャー廊下。微笑みかけるヴォイジャーの女性クルー。ランサムと一緒に歩くバークも笑みを返す。「離れがたくなるな。」
ランサム:「地球に戻れば女は山ほどいる。状況は。」
「全準備完了、転送装置は強化。ノアは内部センサーを遮断するサブルーチンを作りました。」
「パワー連結器は。」
「バイパスコントロールは、我々のブリッジへつないであります。いつでも開始命令を。」
「ジェインウェイは 19時にセキュリティグリッドを作動させると言っている。それまでに終わらせねば。ほかのクルーに言って、開始準備を。」
前のターボリフトから、フェイザーを構えた保安部員がやって来た。
ランサム:「マックス。転送室はここからそう遠くない。急げ。」
別の通路へ向かう 2人。だがそちらからもトゥヴォックたちが現れる。「ジェインウェイ艦長が、お会いしたいと。」

テーブルの上に化合物が置いてある。ジェインウェイ:「エイリアンの化合物、10アイソグラム。あなた流の計算をすると、どのくらいワープ係数を増やせるのかしら。1ヶ月 0.03%? この程度ではそう遠くに行けそうもない。だから補充する必要があった。あの生命体を殺して。次から次へと、地球へ戻るまでにどれぐらい殺す気? これでなぜ攻撃を受けたかわかった。彼らはあなたたちから自分を守ろうとしたのね。」
ランサム:「63体、あとそれだけ必要だ。一つの命を犠牲にするたびに、私の一部も失われていった。」
「研究内容を知らなかったら信じてたかもしれない。実験は緻密に計算され、冷酷に行われていた。良心の呵責を感じたら続けられなかったはず。」
「宇宙艦隊規約 3の 12項※41、『破滅の危機に瀕した場合、艦長はクルーを守るためいかなる正当な手段をも用いる権限がある』。」
「大量殺戮は正当な手段とは言えない。」
「私の解釈では言える。」
「認めかねます。」
「そうするしか生きる道がなかったのだ。ダイリチウムが底を尽き、スラスターで航行してた時だ。16日間食事もしてなかった。我々は辛うじて Mクラスの惑星へ向かうことができ、幸運なことに温かく出迎えてもらえた。」

『彼らはアンカラ人※42と言い、快く食事と燃料を分けてくれた。ダイリチウムの結晶まで。そして我々の旅の安全のために、幸運の精霊※44を呼び出して祈るという儀式さえ執り行ってくれた。』 異星人は取り出した機械を置くと、高音と共に空間亀裂が生じ、生命体が現れた。驚くランサムとバーク。
『だが彼らは精霊じゃなく、核で生成された生命体※45で、高濃度の反物質を放出していた。』 トリコーダーで調べるバーク。
『その夜遅く、我々はエネルギーコンバーターと交換して、その生命体を呼び出す装置を手に入れた。』 コンバーターを渡すイクワノックスのクルー。
『そして呼び出した後すぐに消えてしまわないように、抑制フィールドを張ったのだ。』 機関室に呼び出された生命体。
『しかし突然苦しみだし…』 ランサム:「戻してやれ。」
『急いで戻そうとした。』 奇声を上げて苦しむ生命体。バーク:「できません。」
『全て遅すぎた。』

話を続けるランサム。「その後死体を検査し、燃料として利用できるかもしれないことを発見した。死んでいたから利用したのだ。君ならどうする? すると 2週間もかけないで 1万光年進めた。我々は救世主を見つけたのだ。どうして無視できる。」
ジェインウェイ:「宇宙艦隊士官として、守らなければならない誓いは、生命の探求よ。殺戮じゃない!」
「傷つかない頑丈な船に乗り、飢えを知らぬクルーを指揮しているから簡単に道義心を振りかざせるのだ!」
「簡単じゃない。でも道義心を忘れたら、人間であることをやめなきゃならない。実験の停止を命じます。あなたの指揮権も剥奪する。クルー共々、一歩も部屋を出ないこと。」
「艦長、クルーに罪はない。私の命令に従っただけだ。」
「十分な罪です。」
保安部員がランサムを取り囲む。立ち上がった彼は言った。「地球は遠いぞ、艦長。」

ブリッジに戻るジェインウェイ。「ドクター、研究室へ行ってエイリアンに関する全データを回収してくるように。彼らと交信する方法を探りたいの。」
ドクター:「了解。」
続いてセブンに命じる。「機関室へ行って、ワープコアの修正を元に戻して。」
チャコティ:「艦長。」
「正しいファースト・コンタクトを見せてやるの。」

ヴォイジャー廊下。チャコティに尋ねるギルモア。保安部員もついている。「どうなるんでしょう。」
「ジェインウェイ艦長次第だ。だがしばらくは拘束されるだろう。例のエイリアンと和解できるまではね。できるかわからんが。」
「正直、ばれてほっとしてるんです。もう罪を重ねなくて済む。」
「なぜ自分でやめようとしなかった。」
「わかりません。ワープコアを修正しろと言われ、仕事に集中してました。何に使われるかは考えないで。」
「もうそうはいかん。力を貸してくれ。」 チャコティは天体測定ラボのドアを開け、その前に立った。
「副長?」
「入って。我々だけじゃ手も足も出ない。」
中にいるセブン。「構造図が暗号化されていて、アクセスできない。」
「解読コードを知っているか。」
無言のギルモア。
チャコティ:「君の艦長は解任された。私の命令に従え。コードを知ってるか。」
「…はい。」
セブン:「入力しろ。」
動こうとしないギルモアにチャコティは言う。「もっと自分を…楽にしてやったらどうだ?」
そしてギルモアがコンピューターを操作すると、詳しい内部構造がスクリーンに表示された。「あなたは人間について学んでるのに、いい見本にはなれなかったわね。ごめんなさい。」
セブン:「そんなことはない。多くのことを教わった。」
チャコティと共に出て行くギルモア。

研究室にいるドクター。「暗号は解読したはずだ。なぜファイルにアクセスできんのだ!」
コンピューターが応える。『EMH の許可が必要です。』
「まだ機能してるのか。」
『そうです。』
「起動させろ!」
もう一人のドクター、即ちイクワノックスの EMH が起動された。「緊急事態の概要を述べよ。」
「力を貸してくれ。」
「君は?」
「私はヴォイジャーにいる君だよ。」
「ランサム艦長や、クルーたちは。拘束されてる。」
「なぜ医療室から出られる。」
モバイルエミッターを指差すドクター。「この装置があれば、どこへでも行けるんだ。君のクルーは、ここで犯罪的実験を行っていた。」
「私が、考えたものだ。」
「君が? 明らかなプログラム違反だ。」
「倫理サブルーチンは削除された。」 その瞬間、ドクターはドクターのモバイルエミッターをパッドで叩いた。ドクターの姿は消え、エミッターが床に落ちる。それを手にするドクター


※42: Starfleet Regulation 3, Paragraph 12
"In the event of imminent destruction a captain is authorized to preserve the lives of his crew by any justifiable means."

※43: Ankari

※44: Spirits of Good Fortune

※45: 核遺伝子生命体 nucleogenic lifeforms

2隻を包む、ヴォイジャーのシールドが弱まっている。キム:「空間亀裂を多数感知しました。」
パリス:「攻撃を強化したようです。」
ジェインウェイ:「予備のパワーをシールドに集中して。」
チャコティ:「シールド維持。しかしもったとしても時間の問題でしょう。」
「トゥヴォック、セキュリティグリッドを準備して。」
天体測定ラボのトゥヴォック。トレスに指示する。「オンライン、準備開始。エミッター、チャージ。」
ジェインウェイ:「ブリッジよりドクター。」
ドクター:『はい艦長。』
「見つかった?」
ヴォイジャーの医療室にいるドクター。「もう少し…詳しく。」
「神経パターンや皮質スキャン、宇宙翻訳機をプログラムできそうな何かよ。」
「いえ、データは暗号化されていてアクセスできませんでした。」
「だったら手元にある情報で分析を続けて。」
「わかりました。」
ドクターはコンピューターに尋ねる。「コンピューター、ランサム艦長は。」
『ランサム艦長は第9デッキ、セクション22 の乗務員室です。』
ドクターは医療キットのケースを手に取り、そのふたを開ける。

イクワノックス機関室。チャコティの通信。『チャコティからセブン。どんな状況だ。』
セブン:「反物質インジェクターを除去。ダイリチウムマトリックスを無効にするには、あと 5分。」
「急いでくれ。」
『了解。』

ドクターは乗務員室の前に立っている保安部員たちに話しかける。「イクワノックスのクルーがウィルスに感染していた。伝染性かもしれん。摂取の許可を得て来た。」 保安部員はロックを解除し、中へ入るドクター。「ウィルスに感染しているので、治療しに来た。」
ランサム:「ウィルス?」
「ドクター命令だ。」
ドクターが医療キットを開けると、中にはトリコーダーだけではなくフェイザーも入っていた。
トリコーダーを打ちながら、ドクターはランサムに言った。「私です。」

実行するトゥヴォック。「グリッド起動。」 警告音が鳴る。「どうした。」
トレス:「わからない。問題ないはずよ。すぐにシステムの検査を。」

乗務員室の中のフェイザー音に気づき、保安部員がドアを開けた直後、彼は撃たれてしまった。

報告するキム。「第9デッキでフェイザー銃感知。乗務員室です。」
ジェインウェイ:「保安部、第9デッキ封鎖。」
チャコティ:「シールド低下、84%。」
トゥヴォック:『こちらトゥヴォック。フィールドジェネレーター停止。パワー連結器が外されています。』
トレス:「探知されないように内部センサーも改造されてます。」
ジェインウェイ:「どんなことをしてもグリッドを起動させて。」

廊下を逃げながら言うドクター。「転送コントロールを次のジャンクションのパネルにつなぎます。そうすれば…」
ヴォイジャーの保安部員が撃ってきた。応戦するランサムたち。
ドクターはモバイルエミッターを操作し、姿を消した。
逃げるランサム、レッシング、そしてギルモア。
コンピューターを操作するランサム。別方向からイクワノックスのクルーを引き連れたバークもやってきた。「デッキを封鎖されました。」
「大丈夫だ。転送で脱出する。」

チャコティ:「シールド、52%にダウン。」
キム:「艦長、無許可の転送が行われています。イクワノックスのクルーです。」
ジェインウェイ:「ブロックして。」
「できません。イクワノックスのブリッジへ。」
チャコティ:「40%。」
ジェインウェイ:「ジェインウェイからセブン。」

応答がない。『セブン、応えて。』
イクワノックス機関室でセブンは倒れていた。すぐそばで、フェイザーをもったギルモアがワープコアを起動させる。

イクワノックスのブリッジで悪態をつくバーク。「くそ!」
ランサム:「どうした。」
「ベラナがフォースフィールドを張り、ジェネレーターにロックできません。」
「すぐにコードをオーバーライドしろ。」

気づくトレス。「フォースフィールドを解除しようとしてる。マックスね。三重の二次アルゴリズム※46を使ってる。私が 10年前に教えたものよ。」

ヴォイジャーのブリッジ。チャコティ:「シールド、ダウンします。1分ももちません。」
ジェインウェイ:「回線をつないで。…すぐやめないと船もろとも全滅よ。」
スクリーンのランサム。『私はどうなる。禁固 30年か。』
「必要なら攻撃する。」
『やめる気はない。』
通信が切れた。
ジェインウェイは命じた。「パワーシステムを狙って。発射。」

爆発するイクワノックスのコンソール。ランサム:「マックス!」
バーク:「スタンバイ。B・L・T、このトリックを覚えてるかな?」

ブリッジに報告するトレス。「フィールドジェネレーターを奪われました!」
「奪われたってどういうこと?」
「ヴォイジャーから転送されてしまったんです。」

命じるランサム。「脱出しろ!」
レッシング:「無理です。ワープドライブ、ダウン!」
「マーラ、報告しろ!」
ギルモア:「セブンに反物質インジェクターを除去されてました。現在修理中です。」
「フィールドジェネレーターは。」
バーク:「現在調整中。」

ついにヴォイジャーのシールドが消滅した。チャコティ:「シールド、ダウン。」
高音が聞こえてくる。フェイザーを構えるジェインウェイ。「各自武装。」

イクワノックスのブリッジも同様だ。フェイザーを掲げるランサム。「まだ終わらんのか。」
バーク:「準備完了。グリッド、オンライン。」

キム:「全デッキで空間亀裂!」
亀裂が発生する。それを撃つクルー。

イクワノックスのブリッジにも。ランサム:「待て! 撃つな。」
生命体は亀裂から飛び出したが、すぐにフォースフィールドの中に捕まった。もだえ苦しみ、死んでしまう。
ランサム:「研究室へ。」
レッシング:「艦長、エンジン始動しました。」
「コース、アルファ宇宙域へセット。」
「完了。」
「ワープ最大。発進!」
ヴォイジャーを残し、イクワノックスは飛び去った。

ヴォイジャーのブリッジでは、次から次に発生する亀裂をフェイザーで撃っていくのに必死だ。
ジェインウェイの背後に亀裂が現れる。
チャコティ:「艦長!」
フェイザーを向ける間もなく、生命体がジェインウェイに襲いかかってきた。


※46: triquadric algorithms

・To Be Continued...
・感想
前シーズンの最終話は珍しく前編ではなかったので、2シーズンぶりのクリフハンガーとなります。
TNGやDS9に比べて以前のエピソードを引き継ぐことがほとんどないヴォイジャーにしては、そもそものストーリーの前提、つまりパイロット版の「管理者」による発端とつながっていましたね。新しい船、謎の生命体、そして艦隊の誓いの遵守問題…という要素も揃っていて、なかなか奥深いエピソードです。ありがちといえば、ありがちですが。
「また」悪いドクターが出て来ましたが、彼も含めてイクワノックスと、そのクルーに関する後編のまとめ方に期待します。


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