ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第114話「頭脳集団クロスの陰謀」
Think Tank
イントロダクション
「すいません。すいません!」 おそるおそる、一人の異星人※1が部屋の中に入った。「どなたか、いらっしゃいませんか。」 円筒状の水槽があり、中でクラゲのような生物が動いている。それをしげしげと見つめる異星人。突然、背中をつかまれた。別の種族の異星人※2が立っている。 「ミスター・クロスにお礼に来たんです。すいませんが…。」 相手はしゃべるが、その言葉は何を言っているかわからない。歩いていくその異星人を追いかける。「ミスター・クロスを呼んでいただけませんか。あっ…」 横に置いてある奇妙な機械が、電子音を発する。 「待って。」 言葉の通じない異星人は、奥へと消えた。 機械音がし、全体が揺れた。部屋の突き当たりの水槽の中には、巨大な水棲生物がゆっくりと泳いでいる。それを見つめる異星人。 声が響いた。「気にしないでくれたまえ。ベヴォックス※3は、朝に弱いのだ。わが船へようこそ。」 入口に更に別の種族の異星人、クロス※4が立っている。 「どうも。」 「緊張しているのか?」 「いえ。」 「せっかくの祝いの席だぞ。もう大地震の心配をする必要はないのだ。君らは助かった。全ては我々の援助を素直に受け入れたからにほかならない。」 「わが国の数十年来の悩みの種を、数日で解決なさるとは。」 「我々にとっても、なかなかの難問だった。抑制フィールドを起こすために必要なハーモニックを正確に割り出すのは、なかなか至難の技だったようだ。」 水槽の「クラゲ」に近づくクロス。「だが彼女※5は、見事克服した。」 「何とお礼を言ったらよいか。」 「問題解決が我々の仕事。君の…その目に映る感謝の色で、努力はほぼ報われる。」 笑うクロス。「ほぼだが。」 「悪いニュースがあります。お約束のバーニシウム※6の鉱山が、前回の大地震で破壊されました。鉱石は、600億トンの岩の下に埋まり、とても掘り出せません。代わりに、これをおもちしました。ルビジウムジオード※7です。わが国唯一の物で、値がつけられません。」 手に取るクロス。「これは珍しい。だが貴重とはいえん。我々の要求とも違う。」 それを返す。 「お渡しできる物は、これしかありません。」 「……嘘をいうな。鉱山は崩壊した。だが鉱石はそれ以前に貯蔵施設へ移してあるはずだ。聞くまでもない。既に探知している。」 「お許しを。レプリケーターの修理には、あの鉱石が必要なのです。レプリケーターがなければ、国民は飢え死にしてしまう!」 「鉱石を渡すのだ、今すぐ。でなければ抑制フィールドを停止させる。震度12※8の地震というのを味わったことがあるかね? あれは実に…不快な体験だ。」 「待ってください。……今すぐ、鉱石を輸送させます。さ、さっき…さっき申し上げたことは、なかったことに。」 「もちろんだ。もうすっかり忘れてしまったよ。またいつかビジネスをしようじゃないか。」 「ええ。」 「わが友をシャトルへ。迷子になっては気の毒だからな。不慣れな場所で。」 異星人は礼をしながら、先ほどの言語不明の異星人についていく。途中で水槽にぶつかってしまい、女性の「クラゲ」が反応する。「これは失礼。」 クロスは彼を見送った。 |
※1: 名前は Saowin ですが、セリフ中には言及されていません。(クリストファー・シー Christopher Shea DS9第126話 "Rocks and Shoals" 「洞窟の密約」などのヴォルタ人キーヴァン (Keevan)、ENT第21話 "Detained" 「テンダーの虜囚」のセイジン (Sajen)、第41話 "Cease Fire" 「戦場の絆」のテレヴ (Telev) 役) 種族名不明。声:小上裕通 ※2: (Steve Dennis VOY第95話 "Night" 「暗黒の汚染空間」の暗黒異星人、第119話 "Warhead" 「乗っ取られたドクター」のオンクアニ (Onquanii)、第120・121話 "Equinox, Part I & II" 「異空生命体を呼ぶ者たち(前)(後)」のトンプソン乗組員 (Crewman Thompson)、ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」などの Tholos 役) 種族名不明 ※3: Bevvox ※4: Kurros (Jason Alexander スタートレック・ファンの俳優で、1999年12月に UPN で放送された特別番組 "Ultimate Trek: Star Trek's Greatest Moments" で司会を務め、カーク船長を演じました) 種族名不明。声:玄田哲章、DS9 シスコなど ※5: 原語でも "she" であり、設定上も女性なのですが、なぜかクローズドキャプションでは "he" になっています (後にも同じ間違いあり) ※6: bernicium ※7: ルビジウム晶洞石 rubidium geode ルビジウムは実在する元素で、原子番号 37、記号 Rb ※8: 原語では「レベル12」。ちなみに現在の日本の指針では、震度は 7強までしかありません |
あらすじ
ヴォイジャーは大量のダイリチウムを含む小惑星を見つけたが、スキャンするとその小惑星は爆発してしまう。エンジンにダメージを負い、ハザリという「賞金稼ぎ」の種族の船が現れた。その場は抜け出したが、ハザリの船は大量に集まってきている。ジャッカルのようにヴォイジャーの周りを取り囲み、こちらがミスするのを待っているのだ。対ハザリ戦略を考えている食堂のジェインウェイの前に、突然クロスが現れた。難問を解決しにきたという。 クロスは一種のホログラムで現れており、問題を解決してまわっている「シンクタンク=頭脳集団」の一員だという。ハザリ問題の解決法を教える代わりに、ヴォイジャー独自のものをもらいたいと話すクロス。ジェインウェイはセブンと共に、亜空間から現れた頭脳集団の船を訪問した。頭脳集団は言語不明の異星人、女性のクラゲ、人口知能、最古参のメンバーである水棲生物、そしてクロスからなるグループで、互いに通信装置によってテレパシーで話している。そしてクロスが希望した最も大きな報酬は、セブン・オブ・ナイン自身だった。当然断るジェインウェイ。 だがセブンの意思も尊重しなければならない。頭脳集団に加われば、ヴォイジャーより豊かな冒険ができるかもしれないと彼女に話すジェインウェイ。セブンはクロスと話し、彼も子供の頃に報酬として頭脳集団に入ったことを知る。だが結局、セブンは頭脳集団に加わるつもりはないという。ハザリ船が襲ってきた。クロスの助言を借り、船と乗員を回避することができた。申し出をセブンに断られた頭脳集団の船は一旦消えたが、彼らはあきらめてはいなかった。 ヴォイジャーは罠をかけ、ハザリ船と乗員を捕らえた。ハザリを雇った者を調べ、それはマロン人だと偽っていた頭脳集団であったと判明した。全てはセブンを手に入れるため、ハザリをもだましていたのだ。ジェインウェイはハザリと手を組み、全員で亜空間の頭脳集団を探す方法を探し始める。考えついたその方法とは、セブンを一旦頭脳集団に渡し、彼らの相互通信装置を停止させることだった。まず、船に戻ったハザリは頭脳集団と直接取引を行った。 ハザリの攻撃を受けるヴォイジャー。クロスがこのままでは破壊されてしまうとジェインウェイを挑発する中、セブンはシャトルで離れ、亜空間に入った。頭脳集団の船に乗るセブン。クロスはハザリへ攻撃中止命令を出すが、ハザリは金が先だといい、亜空間から出てくるように要求する。罠かもしれないと疑うクロスは、セブンを彼らの通信装置と接続させる。その時、ヴォイジャーからセブンのインプラントに送られた信号により、通信装置は停止した。互いの会話ができず、混乱する頭脳集団。通常空間に引きずりだされ、ハザリ船の総攻撃を受ける。クロスの最後の説得もかなわず、ヴォイジャーはワープで去って行った。 |
用語解説など
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感想
非常にありがちなストーリー構成とはいえ、いろいろな種族からなるシンクタンクの設定は面白いものです。いつも手を合わせているクロスの不気味な印象も良い味を出しています。 ストーリー上ではあまり詳しく触れられていませんが、最初のダイリチウム小惑星の爆発や、ハザリを罠にかけた「残骸となったヴォイジャー」 (よく見るとディフレクター部が浮いている!) を一体どうやって行ったのか知りたいですね。 セブンはヴォイジャーのクルーにも、ボーグにも、他の種族にも、そしてスタッフにも人気あるんですねえ…。 |
第113話 "The Fight" 「眩惑のカオス・スペース」 | 第115話 "Juggernaut" 「憎しみはコロナの果てに」 |