ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第95話「暗黒の汚染空間」
Night
イントロダクション
※1モノクロの地球。 「地球人よ。お前らの運命は私が握っている。」 ひげを生やした男が、望遠鏡を覗いている。 「お前らがおとなしく私に従うというのなら、悪いようにはしない。だが刃向かえば、必ず恐ろしい運命をたどることになる。私の奴隷となり、水星へ送られるのだ。答えは 1時間後に聞こう。」 全てがモノクロだ。キムが女性※2と共に、椅子に縛られている。「そう思い通りにいくかな。」 「もちろんだとも。栄華を極めたお前らの星は私にひれ伏すのだ。皮肉なもんだな、苦労して造った宇宙船が、我が軍の進攻に使われるとは。」 「あんたは何もわかってない。あんたが船に乗り込む前に自爆ボタンを押した男がいる。あと 3分で、みんな木っ端微塵だ。」 奇妙な笑い声をたてる男。そこにゴーグルをはめたパリスがやって来た。「そこまでだ、ケオティカ※3!」 「キャプテン・プロトン※4か。」 「正義の宇宙飛行士、地球の守護者、宇宙の悪を許さぬ男。好きに呼ぶがいい。」 「お前は燃えたぎる噴火口へまっさかさまに落ちたはずだ。」 「溶岩ごときでくたばるキャプテン・プロトンではない。まず、貴様の軍隊を引き上げさせろ。そして俺の船を返してもらう。」 キムと女性の縄を解くパリス。 「この宇宙にはお前でさえ打ち負かせない強敵が、たった一人存在する。」 腕に取り付けたボタンを操作するケオティカ。 女性が叫ぶ。「キャーー!」 出て来たのはドクターだ。「こっちが『キャー』だ。」 彼だけ色が付いている。 パリス:「ドクター!」 「パリス君。ホロデッキを占領してたのは君か。」 ケオティカ:「この横柄な男は何者だ。」 キム:「ああ…彼は仲間の一人だ。コンピューター、ドクターのスペクトルを調整してくれ。」 ドクターの姿が一旦消え、モノクロの姿になって現れた。「くだらん SFドラマ※5に興味はない。私はドン・カルロ※6のリハーサルに来たんだ。予定時間を 3分もオーバーしてる。」 ケオティカ:「もういい! ロボット! 攻撃開始。」 また叫ぶ女性。「キャーーー!」 耳を抑えるキム。 筒型のロボットが出て来た。命令するケオティカ。「息の根を止めろ! こいつからだ!」 そのロボットが腕を振り上げた時、ドクターは言った。「コンピューター、一時停止。」 キャラクターの動きも、音楽も止まる。ドクターはホロデッキの操作パネルに近づく。 パリス:「ドクター。これは『悪魔のロボット※7、世界を征服する』※8って話で最終回なんだ。やらせてくれよ。」 ドクター:「これがテレビ番組なら『つづく』ってとこだ。」 「オペラなんかいいじゃないか。」 パネルに割り込むパリス。 「モノクロは光子エネルギーの無駄だ。」 「ドクター。見てみろよ。これが 20世紀に考えられてた未来だ。俺たちは社会学を研究してるんだよ。」 「アカデミーで教えるがいい。『悪魔のロボット、その歴史的あらまし』をな。」 2人が競い合ってホロデッキの設定をいじくろうとしたため、火花が起こり警告音が鳴る。 ブリッジのチャコティが異常に気づいた。「ブリッジから第1ホロデッキ。どうかしたのか?」 キム:『…いいえ、何でもありません、副長。ただのパワーサージです。』 「ホログリッドが飛んだようだが。」 パリス:『今修理中です。』 「急いでくれ。ホロデッキだけは故障させられん。」 セブンがブリッジに入る。 チャコティ:「セブン。何かいい知らせはないか?」 「期待には添えない。いい知らせは皆無だ。この領域の天体スキャンを完了した。2,500光年以内に星系は一つもない。」 「一つも?」 「そうだ。」 パッドを確認するチャコティ。「その先にも星は見えん。」 「大量のシータ放射線※9が発生し、センサーを遮られている。」 「ほかの船は。」 「ない。我々だけだ。」 ため息をつくチャコティ。「まるで悪夢だな。」 「副長?」 スクリーンには何も映っていない。「風のない海に放り出されたようだ。センサーが使えなければワープの状況さえつかめない。この領域に入ってまだ 2ヵ月だというのに、クルーも疲労困憊。これが 2年も続く。」 「そのうち慣れる。」 「口で言うのは簡単だ。」 「艦長に報告した方がいいか。」 「……いや。私が行く。」 ブリッジを出るチャコティ。 ヴォイジャーは暗黒の中を進んでいく。 |
※1: このエピソードは第5シーズン・プレミア (最初のエピソード) です。シーズン間をまたぐ前後編 (クリフハンガー) でもなく、最初が 2時間エピソードというわけでもありません。宇宙暦が 52000台、西暦は 2375年になります ※2: (Kirsten Turner) ※3: ケオティカ博士 Doctor Chaotica (Martin Rayner) 後にも登場。声:小室正幸、DS9 エディングトンなど ※4: Captain Proton ※5: ホロデッキプログラム「キャプテン・プロトンの冒険」 The Adventures of Captain Proton ※6: Don Carlo ホロデッキプログラム。イタリアのオペラ作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディ (Guiseppe Verdi) (1813〜1901) による作。ほかに「リゴレット (Rigoletto)」など ※7: Satan's Robot ※8: "Satan's Robot Conquers the World" ※9: theta radiation 危険なエネルギー。VOY第89話 "The Omega Directive" 「戦慄! オメガ破壊指令」など |
本編
「副長日誌、宇宙暦 52081.2。この暗黒の領域に入って 53日が経つ。地球へ向かうにはこの領域を避けるわけにはいかなかった。食料や燃料を新たに調達する機会はない。全部署にエネルギーの節約を命じ、重水素を備蓄するためにパワーセルを使用している。」 廊下でクルーがパワーセルを運んでいる。 「報告しろといわれても新たな変化はないわ。」 会議室でチャコティに言うトレス。 窓の側に立っているチャコティは言う。「構わん。」 「わかりました。ワープコアは既に限界です。先週と同じ。先々週もそうでした。機関部員は精神的にかなり参っています。」 「わかった。少尉。」 キム:「異常なし。」 「もう少し詳しく。」 「全システム、通常のパラメーター内で作動中。」 「センサー上の発見は?」 トゥヴォック:「急激なシータ放射線の増加を探知しました。」 「発生源は?」 「不明です。」 「調べてくれ。」 パリス:「やっと変化があった。放射線か。」 笑いが起こる。 チャコティ:「次の議題は、クルーの士気だ。」 ドクター:「下がってます、明らかに。」 ニーリックス:「あ、あのー私にクルーの士気を上げる提案がいくつかあります。」 チャコティ:「続けて。」 「仕事を交換し合うんです。ルーティンにバラエティをもたすんスよ。私は保安部のトレーニングだって大歓迎だ。」 「わかった。」 「それからホロデッキのことなんスが、使用頻度が高いんで第2貨物室にエミッターを設置して、即席ホロデッキにしては?」 ドクター:「なるほど。」 チャコティ:「ハリー、頼む。」 ニーリックス:「もう一つ。これは…あるクルーに関係することなんスが……つまり艦長です。最近ずっと顔を見てません。」 「何が言いたい。」 「艦長の元気な顔こそ、クルーの活力の元なんです。」 パリス:「最近自分の部屋から一歩も出ないとか。」 チャコティ:「艦長の特権だ。必要な時にブリッジへ出てくればいい。」 トレス:「そんなことわかってるけど、最近の艦長おかしいわ。」 「彼女に構うな。どこで指揮しようと彼女が決める。わかったか?」 「ええ。……わかったわ。」 ため息をつくチャコティ。「追いつめられてるのは私も一緒だ。」 キム:「ものは考え様ですよ、副長。2年の休暇だと思えばいいんだ。」 チャコティは苦笑した。「ふーむ。解散。」 席を立ちながら話すトレスとパリス。「いいアイデアね、ハリー。」 「全くだ。お前って天才だよ。よくそんなこと思い付くな。」 キム:「本気で喜ぶなよ。」 チャコティはブリッジに戻った。自分の席に座り、スクリーンを見つめる。暗黒。 ニーリックスは暗闇の中で目を覚ました。ライトを点けベッドから降りる。「コンピューター、ライト最大。ホット・ベルガモットティー※10。」 レプリケーターからカップを取る。窓の外には、やはり暗黒が広がっている。「明日、朝一でカーテンをレプリケートしよう。」 手を震わせながら、ティーを口にするニーリックス。 駒を使ったボードゲーム。2人が交互に駒を渡しながら、盤上に置いていく。 トレス:「やっぱりね。」 パリス:「ん?」 「ノヴォカヴィック戦法※11。最初はいっつもその手。」 「君がこの手に弱いからさ。」 「さっきから同じことを繰り返してるだけ。」 「微妙な違いを楽しむのが、このデュロッダ※12だ。」 「微妙すぎるわ。」 「ふん、だろうな。」 「それどういう意味?」 「クリンゴンが槍で突き合うのとは訳が違う。」 「おやすみ。」 駒を置き、席を立つトレス。 「試合放棄か? 俺が勝ってるとは限らないだろ。」 ニーリックスも食堂へ来た。 トレス:「午前3時に私と喧嘩を始めたい?」 席を立つパリス。「午前3時と午後4時とどう違うんだ? 君は 24時間怒ってるじゃないか。」 「どうしてそう茶化すの?」 ニーリックスが 2人の間に入る。「こんばんは。それともおはようかな。眠れないのか?」 パリス:「こんなに楽しいのに、眠ったらもったいない。」 トレス:「得意の冗談よ、笑ってあげて。」 ニーリックス:「ああ、笑ってるよ。心の中で、多少はね。一緒にカードでもしないか。それともなんか作る?」 パリス:「もっといい考えがある。スケジュールを立てよう。喧嘩のローテーションだ。その方が公平にできるだろ? 俺が吹っかけたら、次は君が吹っかける。」 「おいおい。」 トレス:「あなたのジョークにはもううんざりだわ。」 パリス:「じゃあ聞くな。」 ニーリックス:「やめろ! あんたたちは上級士官だ。見本になんなきゃいけないんじゃないのか…ほかのクルーの……」 苦しむニーリックス。 トレス:「ニーリックス?」 「…息ができない…」 パリスは通信バッジを叩いた。「パリスから医療室。」 ドクターにハイポスプレーを打たれるニーリックス。「全く自分が情けないよ。」 「鎮静剤を投与した。過換気症候群にはよく効く。君の心配も和らぐだろう。」 「心配ってのは、料理を焦がしそうなときに使う言葉だ。もっと…何ていうか…」 「めまい、吐き気、ひどい恐怖感。」 「そうだ。」 「つまり無への恐怖※13だ。星のないこの闇が、原因だろう。慰めになるかわからんが、私も活動していないときは常に無の中にいる。完全な忘却の彼方だ。最初は確かに不安だった。存在が脅かされるようで…」 「フォローになってないよ。」 「すまん。つまり、すぐ慣れるさ。」 「だといいけど。」 ニーリックスはベッドを降りた。 トゥヴォックは星々を見つめている。 「少佐。邪魔になるか?」 セブンが尋ねた。 「いや。」 スクリーンを見ていたトゥヴォック。 「天体測定ラボで息抜きとは珍しいな。」 「瞑想に来たのだ。言うまでもなく、私の部屋からも星が一つも見えないからな。」 ランプの火を消す。 「星は精神を集中させるのに役立つのか。」 「そうだ。一つの星が一つの考えを象徴している。」 「瞑想はあなたの回復法か?」 「その通りだ。」 「だがボーグの再生法はもっと効率的だ。皮質のインプラントだけで済む。」 「今度試すとしよう。」 コンピューターに反応がある。 トゥヴォック:「何だ。」 「長距離スキャナーがシータ放射線を探知した。危険値に達している。」 「発生源は。」 「不明だ。」 「心配ありません。また例のシータ放射線です。誰かがいるのかもしれません。」 薄暗い部屋で報告するチャコティ。 ジェインウェイは尋ねる。「距離は?」 「25光年先です。」 「一応コースを変更して。」 「…了解。」 「以上よ、副長。」 「実は、お願いがあるんです。ホロデッキを使用できる時間が、3時間溜まってるんですが、何試合かヴェロシティの相手をして頂けませんか。気晴らしになるかと。」 「気を晴らす必要なんかない。」 「いいと言うまでこの場を去らないといったら?」 「座って待つことをお勧めするわ。」 「どうしてなんです? 今はクルーを放っておく時じゃないはずだ。艦長が必要なんです、特に今は。」 ジェインウェイは制服の上着も着ていない。「ここを出てって、クルーの報告を聞けばいいの? そんなこと何の解決にもなりゃしない。この闇を見てクルーは何て言ったかしら。」 「『空虚※14』です。」 「その通り。ああ…できることなら気晴らしにボーグ・キューブでも呼んできてあげたい気分よ。不思議なんだけど、この頃攻撃を受けてた日々が懐かしく感じる。どうしてデルタ宇宙域でさまようことになってしまったのかしら。どうしてこんな状況に……答えて。」 「難しい選択でした。無理に地球へ帰れば、多くの乗組員を危険にさらすことになる。だから我々は…」 「『我々』? 違う。私が決めたのよ。このデルタ宇宙域を探査することを。」 「我々は生きてます。この宇宙域のデータも集めました。艦隊でさえ分析に何十年もかかる量だ。ミッションは成功してるんです。」 「同じ言葉をこの 4年間、ずっと自分に言い聞かせてきた。その結果がこの空虚。今はどんな慰めも虚しく響くだけよ。」 「艦長。」 「私は間違って決断を下したの。見通しが甘く、自分勝手だった。そのせいで今クルーが苦しんでる。わかったらヴェロシティは勘弁してくれない? この船の指揮はあなたに任せるから。クルーに私のことを聞かれたら、よろしく言ってたと伝えて。」 再び奥に戻るジェインウェイ。何も言わずにジェインウェイの部屋を出ていくチャコティ。 クラリネット※15の音色。ブリッジの艦長席で、独りキムが吹いている。ターボリフトからトゥヴォックが出てきた。 キム:「少佐。」 「そのままでいい。何か報告は。」 「電子の乱れもありません。おかげで協奏曲が完成しました。題して、『空虚の響き』※16です。お時間は。」 「あり過ぎて困ってる。」 「では、感想を。」 また暗い曲を吹き始めるキム。 モノクロのホロデッキの中で、セブンに説明するパリス。「それで、さっきはどこで終わったかというと、クルーが船を取り戻すとこだ。ケオティカ皇帝は逃げたが、この高性能のロボットを残していった。俺を倒すために。」 「私の役は?」 「ああ、そうだ。君はコンスタンス・グッドハート※17。俺の…秘書だ。」 「秘書。」 「全てのミッションに同行してるんだ。君はこのロボットを倒して欲しい。俺は地球を救ってくる。コンピューター、プログラム開始。」 音楽と共に、映像が動き始める。ロボットがセブンに迫る。『地球人ヨ、降伏シロ。抵抗ハ無駄ダ。』 「私はボーグだ。」セブンはロボットの腹部のふたを開け、回路を壊した。『抵抗ハ…』悪魔のロボットは腕をだらしなくぶらさげ、動かなくなった。 セブンはパリスに尋ねる。「ロボットは停止させた。もう行ってもいいか。」 「おいおい、セブン! そう急ぐなって。銀河系の危機なんだ。」 キムはまだクラリネットを演奏している。突然船が揺れ、照明が薄暗くなる。コンピューターの表示が明滅する。すぐにオプス席で確認するキム。「ワープが解除された。パワー低下。」 トゥヴォック:「補助パワーに切り替えろ。」 「効果なし。」 ブリッジの照明が完全に消えた。食堂、各私室、廊下、医療室、そして機関室。ヴォイジャーの全ての明かりが消滅する。 |
※10: bergamot tea ※11: Novokovich gambit ※12: derada ※13: 虚無症候群 nihiliphobia ※14: Void ※15: clarinet VOY第23話 "Parturition" 「地獄の星」より ※16: "Echoes of the Void" ※17: Constance Goodheart プロローグで「キャー」と叫んでいた女性の役 |
「変化が欲しいとは思ったけど、電気が消えることになるとはね。」 パネルを開けるキム。トゥヴォックがライトで照らす。 キム:「予備のエネルギーに接続します。」 ライトを点け、暗い廊下を進むチャコティ。コンピューターの操作もできない。誰かの声が聞こえた。 機関部員が慌ただしく作業している。 「無線リレーをチェックしてくれ。」 「了解。」 「おい、そっちは全部任せたぞ。」 「ワープコアは。」 「全部停止してる。」 「コンソール全部点検しろ。」 「わかった。」 トレスはワープコアを確認する。「プラズマインジェクターを中に入れて。必要なら手動にして。」 セブン:「中尉※18。」 パリス:「ちょっと待った。どこ押しゃ点くんだよ。」 ホログラムの懐中電灯が点いた。それを自分の顔に下から照らすパリス。「キャプテン・プロトンただいま参上。艦隊じゃ教わんなかったろ。」 外部の状態をコンソールで確認する。 パリス:「船中のパワーが減少。全機能停止、メインパワー、補助パワー。」 セブン:「独立したサブシステムは動いている。環境制御装置、ホロデッキ。このホロデッキのパワーを、緊急リレーにつないでくれ。」 「…了解。」 「だめだ。ホログリッドが動かない。」 チャコティは声のする方に歩いて行く。「ニーリックス!」 座り込んだニーリックスが震えている。「大丈夫。」 チャコティ:「ただのパワー不足だ。心配ない。」 「誰が心配を?」 「行こう。深呼吸して。ゆっくりだ。いいぞ。」 ブリッジのキム。照明が少し復旧する。「やった。センサーの一部が戻った。」 持ち場でチェックする。「パワー漏れの原因を探ります。恐らく、妨害フィールドだと。発生源は左舷前方。それしかわかりません。」 トゥヴォック:「スクリーン、オン。」 何も映っていない。 トゥヴォック:「光子魚雷を発射する余力はあるか。」 キム:「1本なら。なぜです。」 「明かりがなければどうすることもできん。魚雷を調整し直し、ポリ発光体を発生させてみる。」 「ワープの閃光を?」 「その通りだ。」 パリスはホロデッキの中のハッチを開けようとしている。「ハッチを開けるてこが必要だな。」 セブンと共に探す。すると懐中電灯の明かりの中に、モノクロではない何者かがいる。その異星人は眩しがるが、すぐにパリスに襲いかかった。エネルギーを浴び、倒れるパリス。セブンはパリスの持っていた懐中電灯とビーム銃を手にした。「コンピューター、安全プロトコル解除。」 ビームを浴びる異星人。その場に倒れ込む。 チャコティと廊下を進むニーリックス。「何かいた! あそこだ。」 何も見えない。再びゆっくりと進む。「絶対何かいました。パニクッてても、目はちゃんと見えます。」 ニーリックスは言う。「息遣いが聞こえる。」 確かに息が聞こえる。チャコティがライトを向けると、異星人がいた。光に眩しがり、向かってくる。だが別の方向からフェイザーが撃たれた。それにひるみ、逃げていく異星人。フェイザーライフルを撃ったのはジェインウェイだった。「ついてきて。」 ニーリックス:「了解。」 トゥヴォックは操作を終えた。「調整完了。発射。」 魚雷が発射され、強烈な光を発しながら進んでいく。3隻の船が見えた。 ワープコアの復旧作業を続けるトレス。「インジェクターの噴射口が見えない。そっちの明かりは足りてる?」 ジェインウェイが手動で機関室のドアを開ける。「もう心配ない。このパワーセルがあれば緊急パワーを戻せるはずよ。」 トレス:「こっちへ。EPSマニフォルドに直接つなぎます。」 スクリーンに異星人の船が映っている。 キム:「緊急パワーが戻りました。全機能回復。」 トゥヴォック:「シールド、アップ。」 機関室のトレス。「ワープコア、オンライン。」 明るくなる。 ジェインウェイ:「ブリッジ、報告を。」 トゥヴォック:『妨害フィールドはブロックしました。3機のエイリアン船に囲まれています。17人の侵入者が船内に。』 「呼びかけには応えない。」 チャコティ:「武器系統、オンライン。」 「トゥヴォック、左舷側の船を狙って、警告弾を発射して。」 弱い威力のフェイザーが撃たれる。敵は反撃してきた。 トゥヴォック:『シールド、64%にダウン。』 チャコティ:「ワープできるか。」 トレス:「まだです。」 痛みに耐えるパリスを補佐し、医療室に入るセブン。「侵入者に攻撃された。」 ドクター:「ひどい火傷だ。」 「敵は麻痺させたが息はある。」 「医療室へ。」 ブリッジのトゥヴォック。「シールド、ダウン!」 キム:「妨害フィールドを張り直したようです。パワー減少中。」 暗くなる機関室。 ニーリックス:「またかよ。」 だが照明は戻った。 チャコティ:「攻撃をやめました。撤退していきます。」 キムが報告する。「別の船体が接近中。」 その巨大な船は、ヴォイジャーの後方から異星人の船に向かって何発も武器を発射している。逃げていく船団。 キム:「呼びかけています。」 トゥヴォック:「スクリーン、オン。」 相手の船内が映し出される。 「私はトゥヴォック少佐。宇宙艦隊…」 異星人の男はいう。『奴らの船を追い払うのに、13発分ものエネルギーを使った。弁償してもらうからな。』 トゥヴォックはキムと顔を見合わせ、「もちろんです」と答えた。 『でだ。あんたら、こんな暗闇で何をしてるんだ。』 |
※18: 「大尉」と訳されています。最近ずっと階級は正しく訳されていたんですけどね… |
転送室に男が転送されてくる。同時に警告音が鳴る。 トゥヴォック:「バイオフィルターに高レベルのシータ放射線を探知。」 ジェインウェイ:「了解。」 転送は終了したが、台からは降ろされない。 ジェインウェイ:「ようこそ。こんな場所からごめんなさい。シータ放射線が。」 異星人:「へ、ああ、この服のせいだ。防護スーツだよ。そう怖がるな。」 チャコティ:「安全第一ですから。ミスター…」 「エムック。エムック船長※19だ。マロン※20輸送船※21第11グラディエント。」 ジェインウェイ:「お会いできて光栄です。今回はほんとに感謝…」 「すぐにコースを変更した方がいい。前方には何千隻ものエイリアン船が待ちうけてる。あんたらに探知は不可能だ。今度は確実にやられる。」 「変更は無理よ。ここを通らないと地球へ戻れないの。」 「ならば、俺についてくるがいい。」 トゥヴォック:「というと?」 「2、3光年先に空間の渦がある。そこを通ると反対側へ出られるんだ。もう何年も利用している。」 チャコティ:「空虚から脱出できる上、旅を 2年も短縮できる。」 ジェインウェイ:「感謝します。ただ一つ聞かせて。あなたこそ私たちを助けて下さる前に、何をしていたの?」 エムック:「ああ、それはだな…輸送任務だ。この船にはまだ一人、侵入者が残っているようだが。」 チャコティ:「攻撃中に負傷したんだ。治療を施している。」 ジェインウェイ:「なぜ?」 エムック:「質問はもういい。異星人を渡せば渦の場所へ連れて行く。」 「申し訳ないけど、詳しい事情を聞かせてもらえない? 例の異星人と戦闘でも。」 「あんたらには関係ない。」 「あなたの船から大量のシータ放射線が漏れ出してるの。どんな輸送任務なのか、具体的に聞かせてもらえない?」 「俺の船は 2時間後に出発する。それまでに答えを出せ。異星人を渡さなければ二度と助ける気はない。話は以上だ!」 トゥヴォックに合図するジェインウェイ。エムックは転送されていった。 ジェインウェイ:「もう一方の言い分も聞いておきましょう。」 医療室で説明するドクター。「暗いので、足元に注意を。この患者は光に弱いんです。」 チャコティ:「だから船のパワーを奪ったのか。」 「恐らくそうでしょう。どうやらこの空虚で暮らしている生命体のようです。生理機能は暗闇に適応して発達を。」 ジェインウェイ:「容体は?」 「怪我は軽い。フェイザーがかすっただけです。だが容体はかなり悪い。死にかけています。内蔵の細胞まで侵されてます。」 「シータ放射線を浴びたのね。」 「致死量です。しかもかなり長期間浴び続けている。治療は不可能です。」 「彼と話を。」 ベッドの異星人に近づくジェインウェイ。「私はキャスリン・ジェインウェイ。この船の艦長よ。」 暗闇の生命体※22は尋ねる。「マロンの…手先か。」 「いいえ。この領域を通りがかっただけよ。マロンには今日会ったばかり。」 「俺をどうする。」 「彼らに引き渡す気はない。あなたは捕虜じゃないし。」 苦しむ生命体。 ジェインウェイ:「ドクター。マロンと戦ってるの?」 「奴らの船は毒だ。」 「シータ放射線のこと?」 「俺たちを殺す。」 「なぜ? 何を狙ってるの。」 「何も。」 ドクター:「これで痛みが和らぎます。」 ジェインウェイ:「どういうこと?」 暗闇の生命体:「何も知らず君らを攻撃した。許してくれ。」 「わかった。でも教えてくれない? マロンがあなたたちを殺すには理由があるはず。」 「奴らはこの領域を汚染してる。なぜかはわからん。」 コンピューターに反応が出る。 ドクター:「呼吸が弱くなってます。一刻も早く仲間の元に戻した方がいい。」 暗闇の生命体:「座標を教える。」 ジェインウェイ:「ワークステーションを設置して。」 取りかかるドクター。 ジェインウェイ:「座標を打ち込めば、コースをセットする。」 暗闇の生命体:「いろいろすまない。」 「副長、ブリッジをお願い。」 チャコティ:「妨害フィールドはまだ解除できていません。また攻撃されたら。」 「いいえ、それはない。これでまた日誌を書ける。」 ブリッジに戻るチャコティ。「トゥヴォック。」 2人は会議室に入る。 チャコティ:「意見を聞かせてくれ。」 トゥヴォック:「初めてだ。」 「確かに俺たちは親友ってわけじゃない。それどころか会った時から敬遠しあってた。だが君の冷静さは尊敬してる。今はその冷静な意見が必要なんだ。」 「それで?」 「艦長のことだ。知っての通り、彼女はクルーと距離を置いてる。」 「4年前に下した決断を、悔やんでいるんでしょう。デルタ宇宙域に来てしまった責任を感じているのです。」 「そう彼女が?」 「いいえ。この 4年間、彼女をずっと見てきましたから。常に罪悪感にさいなまれてる。」 「よく知ってるんだな。以前にもこんなことが?」 「一度だけ。U.S.S.ビリングス※23の艦長になった最初の年、火山性の月に上陸班を派遣した時のことです。マグマの噴火でシャトルが損壊し、3人のクルーが大怪我を負いました。翌日彼女は独りで月に行き、任務を遂行した。クルーの怪我を無駄にしたくないと考えたんですが、死ぬところでした。」 「救いを求めたのか。」 「その通りです。ジェインウェイ艦長のやり方は正攻法じゃない。頑固さは彼女の長所であり、しかし同時に、最大の欠点でもあります。」 「クリンゴンも顔負けだ。」 「それ以上でしょう。」 「今度も命をかけかねん。用心しよう。サポート、しっかり頼むぞ。」 トゥヴォックはうなずいた。 ブリッジ。 パリス:「到着しました。」 チャコティ:「停止。シールド、アップ。トゥヴォック。」 トゥヴォック:「センサー異常なし。」 「ブリッジから艦長。到着しました。」 医療室のジェインウェイ。「スタンバイ。」 暗闇の生命体:「迎えが来た。君らが友人だと早く伝えねば。彼らと交信させてくれ。」 体を起こさせるジェインウェイ。異星人はパネルを操作する。 キム:「光子サージを探知しました。囲まれてます。」 何隻もの船が姿を現した。 チャコティ:「艦長、お客さんです。8隻に加え、さらに 12隻接近中。」 ジェインウェイ:「仲間のバイオスキャンを。」 暗闇の生命体:「俺たちはもう何百年も平和に過ごしてきた。マロンの奴らが来るまでは。」 ドクター:「艦長、全員大量のシータ放射線に汚染されています。」 暗闇の生命体:「奴らに言った、俺たちは死ぬと。だが奴らは聞かない。力ずくで止めようにも、奴らは強すぎた。」 ジェインウェイ:「渦を使ったら? 彼らを追い出すことができるかも。」 「どうやればいいんだ。君らの船はとても強い。君らなら、何でもできる。力を貸してくれ。」 チャコティ:『艦長、医療室の異星人がロックされました。』 ジェインウェイ:「シールドを弱めて。」 「頼む、力を貸してくれ…」 生命体は転送されていった。 |
※19: エムック管理官 Controller Emck (Ken Magee) 声:福田信昭 ※20: マロン人 Malons ※21: Malon export vessel ※22: night being (Steven Dennis VOY第114話 "Think Tank" 「頭脳集団クロスの陰謀」のフェニム (Fennim)、第119話 "Warhead" 「乗っ取られたドクター」のオンクアニ (Onquanii)、第120・121話 "Equinox, Part I & II" 「異空生命体を呼ぶ者たち(前)(後)」のトンプソン乗組員 (Crewman Thompson)、ENT第7話 "The Andorian Incident" 「汚された聖地」などの Tholos 役) ※23: U.S.S. Billings クラス・番号不明。モンタナ中南部の都市にちなんで |
マロン輸送船に近づくヴォイジャー。天体測定ラボのスクリーンに映っている輸送船の横側から、大量の廃棄物が捨てられている。 ジェインウェイ:「毒だわ。」 セブン:「船体から汚染された反物質が大量に放出されている。」 チャコティ:「9,000万アイソトン※24以上を積載してるようです。」 ジェインウェイ:「呼んで。」 エムックが呼び出される。『艦長。腹が決まったようだな。すぐに異星人を…』 「それはできないわ。仲間の元に帰したの。引き渡しを要求したのは、私たちに隠すためだったんでしょう、輸送任務のことを。」 「あんたらには関係ないことだ。」 「いいえ、あるわ。あなたたちは反物質の廃棄物をここに捨てに来てた。どうして?」 「俺たちの文明は産業の副産物として、毎日 60億アイソトンを排出してる。この領域は処分するには最適だ。」 チャコティ:「お前にとってはそうだろう。自分の星から遠く離れた、渦の向こうの全く知らない領域。存在しないも同然だ。だがここに暮らす者もいる。」 エムック:「わずか一種族だ。」 ジェインウェイ:「十分よ。話し合うために呼んだんじゃないの。平和的解決を求めるためよ。」 『平和的解決?』 「私たちも反物質を使うの。でも反応物を浄化する方法を見つけたので、毒性の廃棄物は出ない。それを教える。」 チャコティ:「渦まで案内してくれ。君らの領域の科学者に会い、情報を交換する。」 エムック:『今教えろ。』 ジェインウェイ:「……転送スタンバイ。」 通信が終わった。ジェインウェイはチャコティに命じる。「機関室へ案内して。デモンストレーションを。」 セブンに話すジェインウェイ。「私たちは大至急、渦の分析を。詳細を知っておきたいの。交渉が決裂したときのためにね。」 「破壊する気なのか?」 ジェインウェイはセブンの顔を見たが、何も言わない。 機関室でエムックに説明するトレス。「その後残留反物質はトランスキネティックチェンバーに移し、原子未満のレベルに分解するの。」 「シータ放射線は出ないのか。」 「出ない。放射分析コンバーターで吸収するから。それをエネルギーとして再利用するわけ。生命維持装置から、レプリケータに至るまでね。」 「俺たちにこんな転換技術が使えるわけない。」 「あなたたちの船にも、プラズママニフォルドがあるじゃない。原理はそれと同じよ。」 チャコティ:「たやすくできるとは言わんが、3、4ヵ月もかければ大体の改装は終えられるはずだ。概略図は入れてある。そのほかの協力も惜しむつもりはない。コンバーターを提供することも可能だ。」 パッドを受け取るエムック。「精巧な設計だ。エンジニアもさぞ喜ぶだろう。これで、多くの問題が解決するはずだ。…それと同時に、俺の仕事もなくなっちまう。」 パッドを返した。 「エムック。」 「あんたらのテクノロジーは、俺たちの仕事をなくしちまう。この俺も、お払い箱だ。あんたらの話が、使いものにならないことを期待していたが見事に裏切られたよ。この技術は秘密にしといた方がいい。」 トレス:「この大嘘つき!」 チャコティ:「ベラナ。」 「全部見せてやったっていうのに、教わる気なんかなかったのよ。」 「余計な口を挟むな。確かに習慣を変えると、何らかの弊害が伴うかもしれん。だが進歩は新たな好機にもつながるんだ。時間をかければ、君らの利益につながるだろう。」 エムック:「利益ならもう十分ある。あの渦だ。俺と俺の部下以外、あの存在を知らん。ここに廃棄物を捨てれば、費用を半分に抑えられる。そんな宝を犠牲にはできん。」 トレス:「自分の利益のためなら、大量殺人を犯してもいいの?」 「そんなにあいつらが気に入ったなら、ここにいるがいい。」 「交渉は決裂だな。だが我々は手を引くつもりはない。」 「俺の船を調べたろう。火力も把握してるはずだ。」 笑うエムック。「俺たちと戦えば 10秒も経たんうちにあの世行きだ。」 チャコティは保安部員に命じた。「つまみ出せ。」 保安部員に「どけ!」といい、出ていくエムック。チャコティはため息をついた。 コンピューターに渦の状態が表示されている。 ジェインウェイ:「作戦は?」 チャコティ:「攻撃をかわしながら独自で渦を探し、向こうへ出たらマロンの上層部に会ってエムックを訴えます。」 「その後廃棄物処理法を教え、地球への旅に戻る。」 「そうです。」 「渦を通り抜けてもマロン側が受け入れてくれるという保証はない。あのエムックがいい例。この渦が存在する限り、この領域に棲むのは危険なの。」 「破壊できそうですか。」 「恐らく。ただ問題が一つ。渦のこちら側、つまり私たちがいる側からしか爆破できない。近道を封じるってこと。」 「2年の辛抱だ。仕方ありません。」 「私はそんなことできない。4年前、オカンパ人のために管理者のステーションを爆破したわ。その結果クルーをデルタ宇宙域に放り出してしまった。同じ命令は下せない。」 「今回は状況が違う。」 「いいえ、同じ。どちらもクルーに大きな犠牲を強いることになる。同じあやまちは繰り返せない。」 「ほかに何か方法が?」 「あなたほど、信頼できる人はいない。あなたは優秀な副長よ。この船を指揮できるわね。」 「…はい。」 「クルーを集めて。」 ドクターやニーリックスを含め、ブリッジに集まっている上級士官。ジェインウェイが入る。 トゥヴォック:「艦長がいらした。」 ジェインウェイ:「楽にして。」 全員が立ち上がり、ジェインウェイを見る。 ジェインウェイ:「ハリー、元気?」 キム:「それはもう。」 「良かった。」 ニーリックス:「会いたかったです。」 「私もよ。手短に言うけど、直ちに渦に向かうことにしたの。どんな手段を使ってでもマロンの輸送船を突破すること。私はシャトルで後ろにつき、渦を爆破する。トゥヴォック、第2級のシャトルに光子魚雷を装備すること。トム、コースをセットし…」 トレス:「嫌です。艦長を見殺しにはできません。」 「わかってくれるでしょ。十分な食料も積んであるし、死にはしない。」 パリス:「たった一人でここに? そんなの無茶です。」 「もう決めたこと。」 キム:「私たちは、まだ決めてません。」 ニーリックス:「その通りです。艦長と一緒なら、喜んでここに残りますよ。」 ジェインウェイ:「……トム、コースをセット。」 パリスは腕を組んだまま、何もしない。 「これは艦長命令なの。」 パリスは操舵席を離れ、ジェインウェイに言った。「従うことはできません。」 「ハリー、代理を。」 同じく従わないキム。ジェインウェイが見ても、動こうとしない。 キム:「お断りします。」 ジェインウェイはチャコティを見て、そしてセブンを見た。「従う気はない。」 ドクターも同様だ。「私はホログラムだ。」 トゥヴォック:「ご覧の通り、過去の経験に学んでるのは、あなただけではありません。」 ジェインウェイ:「そのようね。こういうのを何ていうか知ってる? 『反乱』。作戦を変えるしかなさそうね。」 チャコティ:「渦の中に入ったら直ちに魚雷を発射し、渦が崩壊し始めたら高速ワープで脱出します。」 「かなりの衝撃波に追いかけられるわ。」 トレス:「船尾シールドを強化します。」 「問題がもう一つ。マロンよ。」 トゥヴォック:「反物質廃棄物によって、船体の隔壁が弱っています。フェイザー攻撃が効果的かと。」 ドクター:「因果応報だな。」 「まさに。」 ジェインウェイ:「直接攻撃は突破のチャンスが減らない?」 セブン:「チャンスなど関係ない。必ず成功する。」 ドクター:「ボーグの自信に同意。反対意見は?」 ジェインウェイ:「わかった。全員直ちに配置について。」 チャコティ:「非常警報。渦に向けて出発。全員戦闘配置につけ。」 ジェインウェイは艦長席に座りながら、チャコティに言った。「あなたね、反乱の首謀者は。」 「ここであなたに従ったら、優秀な副長ではない。」 |
※24: isoton 質量の単位。VOY第69話 "Scorpion, Part II" 「生命体8472(後編)」など。この後も含め「9000万のアイソトン」と訳されていますが、物質名などではなく単位なので誤訳です |
マロン船の攻撃。その中を通っていくヴォイジャー。 ジェインウェイ:「反撃開始。総力を結集して。」 光子魚雷とフェイザーが、マロンに注がれる。 トゥヴォック:「シールドを突破できません。」 ジェインウェイ:「回線をつないで。こちらヴォイジャー。攻撃をやめ、直ちに撤退せよ。」 さらに攻撃を受ける。「答えはノーのようね。」 チャコティ:「渦は。」 パリス:「200万キロ前方です。」 ジェインウェイ:「ブリッジから機関室。渦に接近中。船尾シールド、オンライン。」 機関室のトレス。「了解。向こう側で会いましょう。」 チャコティ:「報告。」 キム:「左舷エンジン破壊。プラズマを排出中。」 ジェインウェイ:「エンジン一つで切り抜けられる?」 パリス:「そう思います。」 トゥヴォック:「魚雷装填、準備完了。」 ジェインウェイ:「いい、トゥヴォック。まずは 1本だけお見舞いして。」 セブン:「再び攻撃を開始した。」 「回避して。」 激しい攻撃の間を抜けていく。 ため息をつくパリス。セブンは言った。「さすがはキャプテン・プロトン。」 意味がわからないジェインウェイ。パリスは笑う。「あとで説明します。」 トゥヴォック:「目視領域内に渦を発見。」 ワームホール状の入口が見えている。 ジェインウェイ:「到達までは?」 パリス:「47秒。」 「コース維持。マロンへの攻撃も続けて。」 コンソールが爆発した。 キム:「右舷エンジンに直撃しました。」 パリス:「両エンジン停止。惰性で飛んでる状態です。もう一発食らったら終わりだ。」 チャコティ:「ワープできなければ衝撃波に追いつかれます。」 ジェインウェイ:「トゥヴォック、メインディフレクターで船尾シールドを強化できる?」 トゥヴォック:「そう思います。」 「お願い。衝撃波を利用して抜けるわよ。後ろから船を押してもらうの。」 「シールド、調整完了。」 セブン:「艦長。」 渦の前にマロンの船が移動している。 セブン:「前方をブロックする気だ。」 パリス:「あと 20秒。」 チャコティ:「攻撃用意。」 トゥヴォック:「その必要はありません。」 暗闇の船※25が、一斉にマロン輸送船に向かって攻撃する。マロンも反撃し、1隻が破壊された。 セブン:「異星人が輸送船を攻撃している。」 チャコティ:「マロンの気を逸らして我々に協力する気だ。」 パリス:「あと 10秒です。」 トゥヴォック:「輸送船のシールドが弱まってます。」 ジェインウェイ:「輸送船に狙いを定めて。ゴミを燃やす時間よ。」 ヴォイジャーから 5発の光子魚雷が発射された。エムックの船の横腹に全て命中、大爆発を起こす。ヴォイジャーはその横を過ぎ去り、渦へ向かう。 パリス:「間もなく渦に突入。」 ジェインウェイ:「魚雷発射!」 光子魚雷が後方にまかれ、すぐに点火される。 セブン:「衝撃波が接近中。600メートル、500メートル、400。」 トゥヴォック:「船尾シールド、出力最大!」 ジェインウェイ:「全クルー、衝撃に備えよ。」 渦を通り抜けるヴォイジャー。後ろから迫る衝撃波が、後部に衝突する。 トゥヴォック:「外壁への圧力が上昇中。シールドが弱まってます。」 大きな衝撃。その後、揺れが収まる。 パリス:「突破しました。」 セブン:「渦も全て破壊された。」 チャコティ:「闇を抜けたのか。」 キム:「まだです。思ったほど進みませんでした。境界線まで、まだ 20万キロあります。」 ジェインウェイ:「スクリーン、オン。」 何も映らない。 ジェインウェイ:「コース維持。」 ブリッジ。ドクターとトレスがやって来た。他のクルー同様、スクリーンに注目する。 パリス:「あれ?」 トレス:「何?」 「何か見えた。星だ。」 ドクター:「視力検査が必要だな。」 コンピューターに反応。チャコティは立ち上がった。 スクリーンに星が見えた。1つ、2つ。ヴォイジャーは空虚を抜けた。 パリス、トレス、ドクター、トゥヴォック、そしてジェインウェイ。「ハリー、何が見えるか言って。」 キム:「たくさんの星々がひしめいているのが、この目にはっきりと見えます。命の輝きだ。」 セブンもスクリーンを見る。 目に涙を浮かべたジェインウェイは命じた。「全速前進。」 |
※25: night ships |
感想
巨大な「空虚」の空間を通らざるをえなくなったヴォイジャー。単に近辺に星系がないだけで真っ暗になるのは変なので (地球にも遥か遠くの恒星の光は届きます)、一種の暗黒星雲なんでしょうね。これまでにない設定で面白いと思います。初めはありがちな暗い内容でしたが、シーズン・プレミアらしく明るい終わり方でした。 文章では伝わりにくいのが残念な、冒頭からのモノクロの「キャプテン・プロトンの冒険」も良いですね。ホロデッキが独立したシステムになってるのはわかりますが、「なぜ明かりだけ消えるのか」というのは謎のまま…。 ただ総合的に見ると、プレミアにしては普通のエピソードかも。 |
第94話 "Hope and Fear" 「裏切られたメッセージ」 | 第96話 "Drone" 「新生ボーグの悲劇」 |