ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第119話「乗っ取られたドクター」
Warhead
イントロダクション
パリスは食堂で片付けをしているニーリックスに頼みごとをしている。「なあ、頼むよ。」 「こういう言葉がある。『だまされるのは、相手が悪い。だまされ続けるのは、自分が悪い』。あんたには何度だまされたか。」 「来月は割り当ての半分しか使わないからさあ。」 「確か前に映画を何本か※1観るから、つまみ※2を作ってやった時も同じことを言ってたよな。」 「じゃあ言い返させてくれ。生きるか死ぬかの瀬戸際なんだよ!」 「今度は脅しかい。」 「脅しなもんか! 今日はベラナと初デートした記念日なんだ。」 「忘れてたのか?」 「ああ、もしロマンティックなディナーをセッティングしとかないと…。」 「わかったよ。今度だけだぞ。」 レプリケーターの前へ行く 2人。パリス:「ああ、命の恩人だ。まずはムートン・ロスチャイルド※3の 2342年もの。データベースにあるよな。あと、テレリアンのキジ※4に、茹でたアスパラガス※5、それから一輪のバラ。」 ニーリックス:「どこに用意すれば?」 「料理は、ベラナの部屋のレプリケーターに送ってくれ。ワインと花は俺がもってく。…手ぶらじゃ行けないだろ。」 キムがやってきた。「ニーリックス、コーヒーをポットに一杯作ってくれ。」 ニーリックス:「ほいきた。」 パリスが手にした物を見るキム。「花にワイン?」 パリス:「ああ、記念日なんだ。」 「ああ。」 「コーヒー?」 「ブリッジ勤務、これから 8時間だ。」 ニーリックス:「艦長席に座んのか?」 「4夜連続。」 パリス:「は、物好きなこった。」 「何が?」 「深夜勤務が好きだなあ。艦長ごっこがしたいんだろ?」 「ごっこって何だよ。これは指揮官としてのいい訓練になるんだ。君もやってみろよ。」 「冗談。俺はお前みたいに野心まんまんじゃないんでね。忠告しといてやる。トップに立ったら、それまでお前が追い抜いてきた奴らには、絶対艦長ごっこをさせるな。」 出て行くパリス。笑うキム。 ブリッジ。キムが艦長席に座っている。「操舵状況は。」 操舵席の女性、ジェンキンズ少尉※6が笑みを浮かべて応える。「20分前と変わりありませんけど。」 「もう一度頼む。」 「速度、ワープ6.3。針路 021、マーク 2。…発言してもよろしいでしょうか?」 「許可する。」 「深夜勤務でしょ。リラックスしては?」 「いつか君もブリッジを仕切ることがあるだろう。その日になれば、どんなに荷が重いかわかるよ。」 コンピューターに反応が出る。キム:「報告。」 ジェンキンズ:「自動救難信号です。」 「発信源は。」 「0.73光年先にある Mクラスの惑星。方位 261、マーク 15。」 「かなりコースを変えることになるな。」 「荷が重い決断ですね、少尉。チャコティ副長を起こしましょうか?」 「…いや。コース変更。」 ヴォイジャーはワープを解除し、惑星へ近づく。キム:「回線をつないで。こちら宇宙艦ヴォイジャー、キム少尉。救助に来た。」 ジェンキンズ:「生命反応がありません。遅かったようです。」 「生命反応を探知できない理由はほかにいくらでもある。上陸して調べてみよう。副長に知らせてくる。おっと、ジェンキンズ、ブリッジを頼む。」 ジェンキンズは少し驚いた。 廊下でチャコティに尋ねるキム。「これで良かったでしょうか?」 上着を着ながら話すチャコティ。「私を起こしたことを言ってるのか?」 「いえ、コース変更のことです…」 「冗談さ。正しい決断だ。ついでに…」 「どうも。」 「上陸班も指揮するといい。私がブリッジで監視しよう。」 「喜んで。」 装備を整えたキムはドクターと廊下を歩いている。ドクター:「自動救難信号が?」 「ああ。送り主が生きてることを祈るよ。」 「ふむ。で、リーダーは?」 「目の前にいる。」 「君が?」 「不満かい?」 「いや。ただ、状況が状況だ。新しい惑星、未知の危険。てっきり、チャコティ副長かトゥヴォックかと。」 「僕だって上級士官だし、ここへ来て 5年になる。上陸班だって指揮できるさ。」 「できないなんて一言も言ってない。」 「わかってる。」 転送室に入る。 ドクターは言う。「大丈夫。この私を上陸班に加えたことで、君の経験の乏しさは十分カバーできるさ。」 あきれるキム。保安部員を加え、3人は転送台の上に立った。 キム:「転送開始。」 実体化する 3人。辺りには岩肌しか見当たらない。ドクター:「本当にここが発信源かね?」 トリコーダーで調べるキム。「間違いない。」 「だったら、信号の送り主は救出されたらしい。」 「かもな。でも結論を出すのは調査してからだ。分かれよう。」 ドクターは何かを見つけた。「少尉。」 岩に、筒状の機械が突き刺さっている。 トリコーダーを使うキム。「救難信号の発信源だ。」 ドクター:「これは?」 「わからない。……防護シールド※7に、エネルギーマトリックス。生体神経回路※8。」 「生体神経?」 突然、音と共に機械が起動した。 キム:「下がれ! 爆発するかもしれん。」 ドクター:「待って。」 機械は音を発している。「何か話しかけてる。」 「話しかけてる?」 「デュオトロニック※9アルゴリズムだ。私の翻訳マトリックスで通訳しよう。…怪我をしたと言ってる、助けてくれと。『なぜか目が全く見えない。手足の感覚がない』、そう言ってる。」 |
※1: 原語では "monster movie marathon"、つまりモンスター映画を何本も続けて観ること ※2: 原語では "pork rinds" (豚肉の皮?) ※3: mouton rothschild シャトー・ムートン・ロートシルト (ロッチルド) ※4: テレリア雉 Terrelian pheasant テレリアンは VOY第107話 "Gravity" 「ブラックホールと共に消えた恋」などで言及された種族 ※5: asparagus ※6: Ensign Jenkins (マッケンジー・ウェストモア McKenzie Westmore スタートレックのメーキャップ担当で有名なマイケル・ウェストモアの娘。映画 "Star Trek: Insurrection" 「スター・トレック 叛乱」のバクー人女性役 (未確認)) 声:小池亜希子 ※7: 正確にはパラ・トリニックシールド (para-trinic shielding) ※8: バイオ神経回路 bio-neural circuitry データ処理に合成神経細胞を使用する、先端コンピューター技術。ヴォイジャーにもバイオ神経ジェルパックによって採用 ※9: duotronic デュートロニクス (duotronics)。連邦ではリチャード・デイストロム博士によって発明された革新的コンピューター技術。TOS第53話 "The Ultimate Computer" 「恐怖のコンピューターM-5」など |
あらすじ
その人工知能は記憶中枢が損傷しているため自分が何者かもわからず、修理のためヴォイジャーへ転送される。仲間もいたという人工知能と、ドクターを通じてコミュニケーションが取られる。惑星上で同種の金属を探したところ、巨大なクレーターが見つかった。つまり、この機械は大量殺戮兵器だったのだ。 爆弾ではあるが、知能をもっているものを破壊したり見捨てることはできないというドクター。武器と生体回路を分離する試みが始まる。医療室へ運ばれ、キムやトレスによって人工知能にホログラムの体を与えようとする。だが一時的に停止させられることを知った装置は、起爆準備を開始した。強制的にショートを起こし停止させる。だがその直前、爆弾の人工知能はドクターに入りこんでしまった。医療室は封鎖され、ドクターの姿を借りた装置は記憶を取り戻し、自分の標的である敵種族へ向かうように要求する。 人質や爆弾のためにうかつに手を出せないため、とりあえず人工知能に指定された針路へ向かう。もうただの兵器じゃない、相手を傷つけることになるというキムの説得も無駄に終わる。ニーリックスが以前取引した商人が兵器について知っていたため、意見を求める。だが彼は爆弾を欲しがり、交渉は決裂に終わった。船に戻った商人はヴォイジャーを攻撃し、兵器を転送しようとする。すると人工知能は反撃し、商人の船は爆発してしまった。セブンの案で、ナノプローブを兵器に注入して回路を止めることにする。そのためには一時的にドクターのホログラムを停止しなければならない。一方その頃、兵器と同型の大量の「仲間」が、ヴォイジャーを追ってワープに入った。 架空の地雷原に入ってセブンが火傷をしたことにし、医療室へ入る計画が進められる。人工知能は墜落前の記憶の復旧をトレスたちに手伝わせる。すると、あの惑星へ向かうように命じる味方の亜空間通信を受け取っていたことがわかる。偶然墜落したのではないのだ。さらに読み続けた結果、既に敵国との戦争は終わっており、34機だけが誤って発射されたことがわかった。認めようとしない人工知能。火傷を装ったセブンが医療室へ入り、同時にドクターのホロマトリックスを一時的に停止させる。その隙にナノプローブを注入するセブン。だが逆に放電を浴び、セブンは負傷した。計画は失敗だ。そして他の爆弾が到着し、ヴォイジャーの周りを取り囲んだ。 爆弾の仲間はヴォイジャーにいる兵器と合流し、敵国へ向かうつもりだ。キムは誤った発射だったことを確認するように説得する。人工知能は確認し、やはり自分の発射が間違いだったと知る。犠牲者の気持ちを考えてくれと訴えるキム。だが、仲間の爆弾を止めることは、もはや人工知能にもできない。すると彼は、敵ではなく仲間を破壊するために戻るといった。自らのプログラムを超えた人工知能は兵器と再統合され、船外へ転送される。ワープに入った兵器は自爆を起こし、それによって残りの全ても連鎖爆発を起こした。ドクターや下級士官に礼を言われ、キムは再び深夜勤務の席につくのだった。 |
用語解説など
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感想
邦題の通り、危険な人工知能に乗っ取られたドクターに対して活躍するキム。原題の "Warhead" は「弾頭」という意味ですが、war + head と考えると何とも深い意味だなあと感心させられます。 兵器の開発競争を皮肉った内容ということはわかります。自己の存在を否定される時の気持ちを扱ったこともわかります。ですが、何か物足りませんねぇ…。観直して見ると、商人との取引シーンあたりは全くいらないような気もします。 |
第118話 "Relativity" 「過去に仕掛けられた罪」 | 第120話 "Equinox, Part I" 「異空生命体を呼ぶ者達(前編)」 |