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ヴォイジャー 簡易エピソードガイド
第118話「過去に仕掛けられた罪」
Relativity

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・イントロダクション
火星、ユートピア・プラニシア艦隊造船所※1。ドライドック※2で建造中の船が多数待機している※3。ドックから出て行く船もある。そのドライドックの一つに、ヴォイジャーがあった。

転送室で実体化するジェインウェイ※4。提督が出迎える。「遅いぞ。」
「パターソン提督※5。」
「水素分子※6の限界は?」
「14.7電子ボルトです。」
「オリオンで 3番目に明るい星。」
「観測地は?」
「地球だ。」
「ガンマ・オリオニス※7、原語のアラビア語で言いますと、ベラトリックス※8です。」
「さすがだな、さあこっちにおいで、キャスリン。命令だ。」
抱き合う 2人。ジェインウェイ:「抜き打ちテストとは参りました。」
「艦長たるもの、科学者であることを常に忘れてはならん。」
「忘れません。今でも提督のフラクタル計算法にうなされてます。」

廊下のあちこちで作業をする士官たち。
パターソン:「まだ作業は完了しておらんが、掃除をしたら見違えるように綺麗になる。ヴォイジャーは大きさではギャラクシー・クラスとはいかないが、姿は優美で速度が出る。君のようだ。」
ジェインウェイ:「総重量 70万トン。15のデッキにバイオ神経回路で増設したコンピューターシステム。最高巡航速度はワープ9.975。」
ターボリフトに乗る。パターソン:「第1デッキ。」
「速度はもっと出せると思います。」
「実によくヴォイジャーを把握しておる。」
「この 3ヶ月間、船の図面ばかり眺めてました。目隠しされたって歩けますわ。」
「今しばらく目を開けていてくれよ。ジェインウェイ艦長だ。」 ブリッジに入った。
士官たちが立ちあがり、出迎える。ジェインウェイ:「そのままにして。」 作業に戻る士官。
ジェインウェイ:「思ったよりずっと広い。」
「図面だけでは実物の大きさはわからない。」
ジェインウェイは中央の艦長席の前に立った。
パターソン:「君の席だ。」
そこに座るジェインウェイ。
パターソン:「くつろぐのはまだ早いぞ。見せたい部屋がある。」 パターソンは作戦室を案内する。

パターソン:「自宅のようにリラックスできる。」
ジェインウェイ:「お茶はいかが?」
「私は結構。」
「コーヒー、ブラックで。」 レプリケーターから手にするジェインウェイ。「トゥヴォックから報告は?」
「まだない。」
「連絡があってもいい頃ですね。」
「チャコティの船に乗ったことはわかっておる。ぎりぎりまで連絡はしないのかもしれん。」
「このヴォイジャーのように最新型の船でも、バッドランドでトゥヴォックに追いつくのは至難の技です。腕のいいパイロットがいるという噂を聞きました。」
「誰だね。」
「トム・パリス。」
「パリス提督の息子か。確か服役中と聞いておるが?」
「罪を犯したとしても、やり直すチャンスはあるはずです。」
「調べておこう。」

ブリッジに戻る。ジェインウェイ:「間に合うようなら、今から航行センサーを調整させてください。範囲を広げられると思います。」
パターソン:「コーヒーも冷めぬうちにやる気まんまんだな。」
「ちょっと代わって。」
操舵席のそばで作業をしていた女性士官が場所を空けた。彼女に構わず、パターソンと話を続けるジェインウェイ。「目的地がはっきりしてる船がいいの。」
「ヴォイジャーには最高のセンサーがついてるから心配ない。」
「それはもちろん承知しています。」
その場を離れる女性少尉は、ボーグ・インプラントの見当たらない、セブンだった。

※1: Utopia Planitia Fleet Yards
火星の軌道上および地表にある宇宙艦隊造船所。エンタープライズ-D もここで建造されました。TNG第54話 "Booby Trap" 「メンサー星人の罠」など。ユートピア・プラニシア (平原) は実在する場所で、1976年に火星探査機ヴァイキング 2号が着陸。参考ページ

※2: drydock
巨大な軌道上の設備構造物。宇宙艦や他の宇宙船の建造や、重要な整備に使用されます。映画第1作 "Star Trek: The Motion Picture" 「スター・トレック」など

※3: エクセルシオ級 (NCC-4281?)、アキラ級、ギャラクシー級などの姿のほか、ワーク・ビー (Work Bee=働きバチ) と呼ばれる小型艇も多数見られます

※4: 俗に言う (?) タマネギ髪型です

※5: Admiral Patterson
(Dakin Matthews) 階級章は三つ星。声:川久保潔

※6: 「重水素分子」と誤訳。H2なので単なる水素です

※7: オリオン座ガンマ星 Gamma Orionis
オリオン座を形成する主な星のうち、西北 (右上) に位置する二等星。三番目に大きな星と誤訳 (そもそも観測地で大きさが変わるわけがありません)

※8: Bellatrix
オリオン座アルファ星=ベテルギウスといったように、明るい星には固有名詞がついているものがあります

・あらすじ
セブンは過去のヴォイジャーの各所を「爆弾」がないか検査し、通信で報告しながら移動している。その最中ジェインウェイに話しかけられるが、別の人物の振りをして切りぬける。セブンはジェフリーチューブの中に爆弾を見つけるが、時間枠が違うために取り除くことはできない。ヴォイジャーではその場所にクロノトンの異常が感知され、ジェインウェイが駆けつける前にセブンは時間転送される。29世紀の船で実体化したセブンは、強硬な転送に体が耐えられず、死んでしまった。
艦長の命令により、再びセブンを起用するために、現在つまり 2375年時点のヴォイジャーへ向かう。ヴォイジャーのクルーには宇宙酔いが頻発し、時間が歪む現象も現れる。セブンしか見えない爆弾は取り除けず、一方 29世紀のクルーが密かにヴォイジャーへ転送される。5年前と同じクロノトンの異常に気づくジェインウェイ。セブンは連れ去られ、その直後ヴォイジャーは時間の歪みによって大破した。
セブンは 29世紀の船、レラティヴィティーでブラクストン艦長に説明を受ける。何者かによって仕掛けられた時間分裂爆弾を、設置される前に阻止しなければならない。セブンを使うのは 3度目であり、問題は仕掛けられた時間だ。2年前のケイゾンとの戦闘中、シールドが弱い時を狙ったらしい。ブラクストンは以前にジェインウェイと関わって 20世紀に取り残されたことから、彼女に気をつけるようにセブンに忠告する。
過去に戻ったセブンは爆弾がまだないことを確認する。ジェインウェイは再び 2年前と同じクロノトンの異常があることに気づき、該当デッキを封鎖する。フォースフィールドに囚われ、ジェインウェイの質問を受けるセブン。セブンは全てを話し、共に犯人を探すことにする。爆弾を仕掛けようとしていた人物、それはブラクストンだった。
彼は今のブラクストンの数年後であり、時間精神病にかかって職務を失っていた。ヴォイジャーを消せば、自分も元の地位に戻れると考えているのだ。セブンは時間をまたにかけ逃げるブラクストンを追いかけ、もう一人の自分と共に 2375年で逮捕できた。だが全てを解決するには、事件の出発点、つまりブラクストンが爆弾を仕掛ける前の時点で逮捕し、全てのブラクストンを再統合する必要がある。セブンはこれ以上の時間転送に耐えられないため、代わりにジェインウェイが無事彼を捕まえることができた。全てのパラドックスは修正され、セブンも一人に再統合される。ジェインウェイとセブンは、レラティヴィティーからヴォイジャーへ転送された。


・用語解説など
パターソンなどのセリフで "Briefing Room" を「作戦室」と訳していますが、通常は艦長がいる狭い部屋 (Ready Room) を作戦室と訳し、この部屋は会議室と訳されます

29世紀で使われているフェイザーやコミュニケーター (記章) は、VOY第50・51話 "Future's End, Part I and II" 「29世紀からの警告(前)(後)」に登場したものと同じ (記章はクロノワークス社のマークにもなりました)

最後のデュケインのセリフ:「ヴォイジャーは我々のセンサーにほとんど感知されなかった」は「ヴォイジャーは我々のセンサーに本当に何度も現れた」の誤訳。逆の意味になっているため、笑えるところが笑えなくなっていますね

ブラクストン艦長
Captain Braxton
(Bruce McGill) VOY第50・51話 "Future's End, Part I and II" 「29世紀からの警告(前)(後)」以来の登場。ただし俳優はその時の Allan G. Royal から代わっています (ついでに声優も宝亀克寿さんに変更)
デュケイン (大尉)
Lieutenant Ducane
(Jay Karnes) ブラクストンの部下。階級は「中尉」と訳されていますが、階級章や役割から考えて大尉の方が適切だと思われます。声:中村秀利
カレイ中尉
Lieutenant Carey
(ジョッシュ・クラーク) ジョセフ・ケアリー (Joseph Carey) 大尉。セブンに話しかけてきた機関部員で、第1シーズンに 4回登場した宇宙艦隊士官。実に第11話 "State of Flux" 「裏切り者」以来の登場。階級は大尉でしたが、この時点のものは確認できません。声優は当時の坂東尚樹さんから変更され、2代目の河相智哉さん

アンナ・ジェイムソン
Anna Jameson
セブンが偽名として使った名前
「光陰矢のごとし」
"Tempus fugit"
英語でいうと "Time flies." という意味のラテン語。ブラクストンのセリフでは「さっさとかかれ」と訳されています
オルブライト・ザルツマン症候群
Albright-Salzman syndrome
卓球
ping-pong
どこの物好きがレプリケートしたんでしょうか? (しかも現代のデザインのまんま)
チャップマン
Chapman
ウィリアム・チャップマン中尉 (Lieutenant William Chapman)。セブンとデートしたクルー。VOY第116話 "Someone to Watch Over Me" 「誰かが君に恋してる」に登場
宇宙酔い
宇宙病 space sickness
イナプロヴァリン
inaprovaline
心臓刺激剤。VOY第35話 "Lifesigns" 「ドクターの恋」など
マンナス少尉
Ensign Mannus
エキストラ
ローストポーク
鍋焼き牛肉 pot roast
タイムシップ
時間艦 timeship
ヴォイジャーは宇宙艦 (starship)。VOY第50・51話 "Future's End, Part I and II" 「29世紀からの警告(前)(後)」に登場したタイムシップ・イーオン (Aeon) は一人乗りでした
レラティヴィティー
Relativity
U.S.S. Relativity
ブラクストンなどを含めて特集している Star Trek: The Magazine 第20号によると、NCV-474439-G、ウェルズ級 (Wells-class、「タイムマシン」作者 H・G・ウェルズにちなんで?)。記念銘版に書かれている標語は "The only reason for time is to stop everything from happening at once." 「時間の唯一の存在理由は、全てが同時に起こるのを防ぐためである。」
フォース3 時間分裂爆弾
force 3 temporal disrupter
知覚失語症
sensory aphasia
時間病
時間精神病 temporal psychosis
ホロ・マトリックス
holo-matrix
29世紀の船におけるホロデッキにあたるらしい
ダリ・パラドックス
Dali paradox
サルヴァドール・ダリの「記憶の固執」などの「柔らかい時計」にちなんでいるものと思われます
ポゴ・パラドックス
Pogo paradox
ゼフレム・コクレイン
Zefram Cochrane
セブンたちが話すエンタープライズのことは、もちろん映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」での出来事
時間 (の) 規則
時間基本指令 Temporal Prime Directive
29世紀の連邦で使用される一般命令で、歴史の正常発展への干渉を禁ずる。いわば「艦隊の誓い (Prime Directive)」の未来・時間版。VOY第50・51話 "Future's End, Part I and II" 「29世紀からの警告(前)(後)」など
タカラ・セクター
タカラ星域 Takara sector
別のタイムラインにおいて、ヴォイジャーが墜落した氷の惑星がある星域。VOY第100話 "Timeless" 「過去を救いに来た男」より。ブラクストンはこの事件の後始末もしていたようです

・感想
ヴォイジャーにしては珍しく、パイロット版や第3シーズンの前後編エピソードを踏まえており、ケアリー (カレイ) やケイゾンなどの懐かしい面々に出会うことができます。
タイムパラドックスものらしく、面白いのは面白いのですが…いかにも設定が複雑怪奇です。一体何回が限度なのかいまいちわからない時間転送の回数制限 (最初の死んだセブンの回数も含まれている? それならなぜ彼女は死んだ?) や、時間を超越して影響を及ぼす時間爆弾 (ケイゾンとの戦闘中に取りつけられたのに、ドライドックでのヴォイジャーにもついている…。一体どの時間枠まで影響が?)、何人も捕まえないといけないブラクストン (どうやら各時間枠ごとに捕まえる必要がある模様)、そして「再統合」。吹き替えの不注意さもあいまって、まさに混乱の極みとなっています。
…でも、その混沌さがヴォイジャーらしいとも言えます。そもそも元になった「29世紀からの警告」も謎だらけでしたねぇ。


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