廊下。歩いているジェインウェイにニーリックスが挨拶する。「おはようございます。」
「おはよう。」
「今週の報告書です。」 パッドを渡すニーリックス。
「ありがとう。」 確認するジェインウェイ。
ニーリックスは突然質問する。「…中国の、万里の長城※1って知ってます?」
「何?」
「万里の長城。地球の。作ったのは?」
「中国人。」
「目的は?」
ターボリフトに乗る 2人。ジェインウェイ:「敵の侵入を防ぐためでしょ? 第1デッキ。」
「そうです。万里の長城は前からあった防御壁を、秦の始皇帝※2が改築したもんです。北方民族の襲撃を防ぐために。大きさは?」
「調べたんでしょ? 教えて。」
「長さ 2,400キロ、壁の厚み 3.8メートル。21世紀までは地球の軌道上から肉眼で見える唯一の人の手による建造物でした。」
「すごいじゃない。地球についてよくそんなに調べたものねえ。」
ブリッジに到着した。ジェインウェイ:「現状は?」
チャコティ:「Yクラスのクラスター※3へ向かっています。到着は 3日後。」
「じゃあしばらくゆっくりできるわね。」
ジェインウェイはニーリックスと話しながら、作戦室へ入る。「なぜ突然万里の長城に興味を?」
「地球のランドマークを調べたんです。ミスター・パリスと互いの星の文化について問題を出し合ってるんです。随分詳しくなりましたよ。」
「そう。じゃあ問題。『ミレニアム・ゲート※4』について知っていることを述べよ。」
「ミレニアム・ゲートは21世紀に建てられたもので、アメリカ合衆国にある。軌道上から肉眼で見ることができ、あー、底部の半径は 3.2キロ、高さ 1キロ、その表面は高反射ソーラーパネルで覆われている。自給自足のエコシステム。」
「火星の最初のコロニーのモデルにもなった。実は私の先祖が建てたのよ。」
「本当?」
「もちろん、実際に工事したわけではないけれどね。シャノン・オドンネル※5。女性宇宙飛行士だったシャノンが、プロジェクトを推進したの。」
「ご家族の英雄ですね。」
「小さい頃、よく話を聞かされたものよ。うちに探検家が多いのはきっとそのせいね。」
「聞きたいな。ミスター・パリスをアッと言わせてやりたいんスよ。」
「何から話す?」
「そもそも何でミレニアム・ゲートと関わったのか。」
「シャノンは最初は関わっていなかったの。でもプロジェクトに参加するようにって、インディアナ州知事から直々にお誘いがあったそうで。リサイクル型の生命維持システムを開発したの。マーサ※6おばさんが言うには、知事はシャノンを迎えに、専用ジェット機をよこしたそうよ。」
テープレコーダーのスイッチを入れる。車を運転する女性、シャノン・オドンネル※7。「午前5時。2000年12月27日。今走ってるのは、インディアナ州のどこか。インディアナは大きいことが自慢の州だけど、確かにステーキもトマトも大きかった。大きければいいかっていうと、それには疑問があるけど。※8とにかくクリスマスは終わり。」
自動車が揺れた。「あっ、故障?」
車内には、アポロ計画の月面着陸船のおもちゃが飾ってある。シャノンが観た外の看板には、大きな塔の絵と共に次のように書いてあった。「ミレニアム・ゲート建設予定地」。
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※1: The Great Wall
※2: The First Kin Emperor
※3: 「星団」のこと
※4: Millennium Gate
※5: Shannon O'Donnell
※6: Martha この辺りは訳出されていません。マーサおばさんは後にもう一度言及されますが、やはり訳されていません
※7: 演ずるのはジェインウェイと同じケイト・マルグルー。以下の内容もそのように想像してお楽しみ下さい(?)
※8: この辺りの原語を直訳すると次のようになります。「大きな州を通っている…インディアナだ、多分。午前中に世界最大の毛糸の玉を見て、午後に世界最大のステーキトマトを見た。フォルクスワーゲン並みだった…トマトじゃなくて毛糸だが。」
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