ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第68話「生命体8472」(前)
Scorpion, Part I
イントロダクション
※12隻のボーグ・キューブ。『我々はボーグ。お前たちの存在形態は終焉する。お前たちは生物的、技術的に我々に加わる。抵抗は……』 その時、キューブに向かって何本もの光の筋が走った。爆発が起こる。ボーグ・キューブは 2隻とも、粉々に砕け散った。 |
※1: ヴォイジャー第3シーズン最終話です |
本編
※2「枢機卿殿はとんだ盗人だよ。」 男が話している。「あの人の甥子の肖像画を 2枚届けたのは、かれこれ 3月も前だ、ヘラクレスかアキレスかと見まごうばかりの姿に描いてやったのに、そういう注文だったからねえ。」 机の上には様々な道具や、描きかけの絵※3が散乱している。「約束通り、自然の摂理を曲げてまであの頭の足りん若造を英雄に仕立ててやったんだ。それこそヘラクレスやアキレスの成し遂げた偉業に勝る大仕事だったというのに。その謝礼として偉大なるレオナルド・ダ・ヴィンチ※4は何を受け取った?」 「枢機卿からの感謝状?」 ジェインウェイは答えた。ダ・ヴィンチは笑い、「その通り」と言う。「こんなことなら何ももらわなかった方がましだ。」 ジェインウェイは「だったら私のお願いは聞いてくださるでしょ」と尋ねる。 「金の問題じゃない。カタリーナ※5さんと言ったっけ?」 「ええ。お邪魔はしないわ、隅っこのテーブル一つでいいの、後は自分で勝手にやるから、絵とか彫刻とか。あなたのそばにいられるだけで幸せなの。」 「お世辞は無駄だ、カタリーナ、心は動かんよ。それに、私は独りでいるのが好きなんだ。」 ダ・ヴィンチは「失礼」といい、いじくっていた道具を動かした。からくり仕掛けで腕の形をした部分が回り始める。「どうだ、すごいだろう。」 ジェインウェイに「これは何?」と尋ねられ、「『ヘパイストスの腕』※6」と答えるダ・ヴィンチ。 「鍛治の神様ね。」 「世界中の鍛冶屋が感謝するだろう、これで仕事が楽になる。」 「誰かが言ってたわ、『あらゆる発明品は人間のからだの延長である』って。」 「勘違いしなさんな、今日あんたとのおしゃべりを楽しんだからといってね、作業場をちょくちょく見物に来られても困るんだよ。」 ふいに腕の動きが止まった。「いやあ、くそう」と悪態をつくダ・ヴィンチ。ジェインウェイは「私にやらせて」と頼む。 「ガチョウの油で手が汚れるぞ。」 「お肌にいいわ。」 「歯車がちょいと弱かったな。もっと頑丈なのと取り替えよう」といい、歯車の一つを取り外すダ・ヴィンチ。 ジェインウェイは近くに置いてある紙に気づいた。「これは空を飛ぶ機械?」 「パタパタと羽ばたけば簡単に飛べると思ったんだがね。間違っとったよ。」 ジェインウェイは天井から吊るしてある大きな羽を見上げた。「この羽。この機械のデザインは、コウモリやスズメを見て考えたんでしょう。」 「ああ、そうだ。それが何か?」 「スズメの代わりに、タカを真似たら?」 「タカ。羽を広げて、滑るように飛ぶ。」 「その通り。」 「新しい機械を設計しよう。カタリーナ、手伝っておくれ。」 「仕事場所をくれる?」 「隅でいいか? テーブル一つ。」 「それで結構。」 ダ・ヴィンチは笑い、「週に 10スクード※7、道具は自分で用意しろ」という。 だが「7スクード。場合によっては道具をお借りするわ」というジェインウェイ。 「よし、契約成立だ。」 通信が入る。『チャコティからジェインウェイ。』 「どうぞ。」 『機関室に来てください。見て頂きたいものがあります。』 「すぐ行くわ。」 ジェインウェイはダ・ヴィンチをちらりと振り返り、「コンピューター、プログラム終了」と命じた。全ての映像は消え、ジェインウェイはホロデッキを出た。 機関室に入るジェインウェイ。「どうしたの?」 チャコティが答える。「悪い知らせです。2ヶ月前に送り出した長距離探査機からの送信が途絶えました。」 トレスが引き継ぐ。「単なる通信グリッドのエラーでもないようなので、直前のテレメトリーを数秒調べたんですが、見てください。」 モニターに映されたのは、ボーグ・キューブ、キューブの内部、そしてこちらを調べるボーグの映像だった。「まずいことになりました、艦長」というチャコティ。「ここはボーグスペースです。」 会議室に集まっているクルー。ジェインウェイが話し出す。「ボーグ艦がいくつ存在するのかはわからないけど、広大なエリアを支配しているようね。何千という星系は全て、ボーグのものよ。ここが彼らの本拠地に違いないわ。回り道はできない、でも抜け道はあるかもしれない。」 チャコティが立ち上がり、コンピューター画面に地図を出す。「送信が途絶える直前、探査機はボーグの活動のみられない細長い空間を発見している。『北西航路※8』と呼ぶことにした。」 トレス:「残念ながら、その航路は小さな量子特異点※9が連なってるらしくて、そこら中が重力の歪み※10だらけなんだけど。」 パリス:「いいじゃない、ハチの巣に立ち向かうよりかはましでしょ。」 チャコティ:「その通り。砲撃体制を取りつつ、抜け道を進むことにしたい。武器の状況は?」 トゥヴォック:「フェイザーバンクを循環調整できるようにプログラムし直しました。しかしボーグに長くは通用しないでしょう。」 チャコティ:「だが役には立つ。少尉?」 キム:「トランスワープ※11のサインを少しでも早く探知できるように、長距離センサーを調整しました。」 チャコティ:「ご苦労。ドクター、医療面の問題は?」 ドクター:「3ヶ月前に発見したボーグの死体※12を隅から隅まで分析してみました。後少しで彼らの同化テクノロジーを理解できそうです、医学的な防御法がわかるかもしれない。」 チャコティ:「分析を急げ。最優先任務だ。ニーリックス、当分物資の補給はできないぞ。」 ニーリックス:「任せといてください。食料の割当量を調整して、やりくりしますから。」 ジェインウェイ:「迅速に行動して。探査機が捕えられたということは、ボーグは我々に気づいてるわ。直接衝突はできる限り避けるつもりよ、でも万が一ボーグと交戦する場合を考えて、準備しておきたいの。あなたたち一人一人を信じてるわ。始めましょう。」 機関室をはじめとするそれぞれの部署で、クルー総出で準備に取りかかる。フェイザーライフルも用意される。「デッキ封鎖にかかる時間を短縮したい」というチャコティ。「招かれざる客に備えて?」というキムに、「その通り。それから、フォースフィールドも強化するぞ」という。 ボーグの腕を手に取るドクター。「この注射チューブ※13が、ボーグの同化プロセスにおける第一歩だ。皮膚の下に入ると、血流にナノプローブ※14が発射される。」 「防御シールドみたいなものを開発したらどうかしら?」と聞くケス。 「無理だね。このチューブはどんな金属もエネルギーフィールドも貫通してしまう。つまり闘うとすれば、身体の中でということになるんだ。」 腕を置き、モニターに拡大映像を出す。「ナノプローブが最初に攻撃するのは相手の血液だ、同化はほとんど一瞬で行われる。」 ナノプローブが赤血球に取りつき、色が変わっていく様子が映し出される。 「血球の機能を奪うわけね、ウィルスみたいに。」 「だから免疫システムを強化させてみてはどうかと思うんだ、同化に対する抗体を作る。ナノプローブを破壊するのは無理でも、活動を鈍らせることはできる。これまでに集めたプローブのサブミクロン解体模型で試してみよう、同化メカニズムが発見できるかもしれない。」 パッドを操作し始めるドクター。 ケスはボーグの腕を見つめていた。騒がしい音が聞こえてくる。一瞬、ボーグたちが山のように固まった光景が見えた。死んだボーグだ。ドクターが話しかける。「ケス、どうした? ケス?」 「ボーグが見えた。」 「テレパシー現象か?」 「ボーグの死体、何十人も死んでた。」 とケスは言った。 ブリッジ。戻ってきたトゥヴォックにジェインウェイが尋ねる。「ケスはどう?」 「不安定な状態ですね。この 2時間ほど、いくつもの幻覚に悩まされているようです、ボーグの死やヴォイジャーの破壊を見たとかで。」 チャコティ:「予知現象か?」 トゥヴォック:「かもしれません。」 ジェインウェイ:「彼女の直感は無視できないけど、計画を変更する理由にはならないわ。トゥヴォック、様子を見てあげて、それから……」 キム:「艦長。長距離センサーがトランスワープのサインをキャッチしました、距離は 5.8光年、後方から接近中。」 チャコティ:「非常警報。」 ジェインウェイ:「回避行動をとって。」 船が揺れる。「どうした?」と聞くチャコティ。 パリス:「ワープから抜けました。」 ジェインウェイ:「ブリッジから機関室。何が起きたの?」 トレス:「わかりません艦長。亜空間の乱れか何かのせいで、ワープフィールドが安定しないんです。」 再び船が揺れた。「乱れが激しくなっています」と報告するトゥヴォック。 キム:「ボーグ艦を 2隻探知。いや 3隻です。4隻。いや 5隻。」 「ボーグ艦は 15隻です」とキムは言った。「距離: 2.1光年から接近中。」 ジェインウェイ:「シールド最大。全艦攻撃用意。」 トゥヴォック:「目視領域に入りました。」 ジェインウェイ:「スクリーン、オン。」 ヴォイジャーの後方から、確かに大量のボーグ・キューブが近づいてくる。「これは!」と驚くチャコティ。 次々とヴォイジャーの横を過ぎていくボーグ艦。その間で木の葉のように舞うヴォイジャー。チャコティが「艦長」と呼んだ。1隻のボーグ・キューブがヴォイジャーの前で止まった。 キムが「ポーラロンビームを探知。スキャンされます」という。緑の光がブリッジの中を通過していく。「みんな耐えて」というジェインウェイ。だがボーグ艦は離れていった。「キューブは隊列に戻りました」というトゥヴォック。 |
※2: タイトル表示は "Scorpion" のみですが、このサイトでは便宜上わかりやすくするため "Scorpion, Part I" で全て統一しています ※3: 有名なモナリザのイラストがあります
※4: Leonardo da Vinci ※5: Catarina ※6: "The Arm of Hephaestus" ※7: scudi ※8: Northwest Passage
※9: quantum singularity
※10: gravimetric fluctuation
※11: transwarp ※12: VOY第59話 "Unity" 「ボーグ・キューブ」より
※13: injection tubule ※14: nanoprobe |
「ダメージは受けた?」と尋ねるジェインウェイ。「いえ。シールドがもちました。ワープエンジンが復旧。主要システムは異常ありません」と報告するキム。 「非常警報を解除して。ハリー、長距離センサーをボーグ艦隊にロックしてちょうだい。先を急いでたようだけど。理由を知りたいわ。」 「了解。」 「今のニアミスはいい兆しだと思うの。このまま進みましょう、ミスター・パリス。」 チャコティ:「ボーグスペースに入ったということだけは間違いないですね。」 ジェインウェイ:「作戦室にいるわ。」 作戦室。機密ファイルがコンピューターに映し出されている。それを読んでいるジェインウェイ。チャイムが鳴り、「どうぞ、入って」と言う。チャコティが入ってくる。 「センサースイープの結果が出ました。順調です。北西航路にボーグの気配はありません。」 「当面の見通しはどう?」 「私の計算によれば、2人とも夕べから飯抜きです。食事に行きませんか?」 「お腹空いてないの。仕事が山積みだし。」 「そうですか」といい出ていこうとするチャコティ。ジェインウェイは「ボーグと遭遇したことのある宇宙艦隊艦長の日誌を片っ端から見てるのよ」という。「初めから全部ね、Q がエンタープライズをキューブの通り道に放り出した時※15から、ウルフ359※16の大虐殺まで。大きな戦闘も小競り合いも、ボーグについて何か教えてくれそうなものは全て。」 椅子に座るチャコティ。「それで?」 「ジャン・リュック・ピカードはこう言ってるわ、『集合状態において、ボーグは一切の容赦をしない。彼らの目的はただ一つ: 征服だ。相手への情けもなければ、理性もない。』 エンデヴァー※17のアマゾフ艦長※18はね、『思うにボーグは、今まで遭遇した種族の中で最も純粋な悪に近い。』」 笑うチャコティ。「何がおかしいの?」と聞くジェインウェイに、「いや、別に」という。 「ニヤニヤしてるわ。私へんなこと言った?」 「アマゾフにそっくりだったから。」 「え?」 「今艦長は彼の日誌を読むのに、声まで真似てました。」 「そんなことないわ。」 「いいえ、そうでした。その前はピカードにそっくりだった。」 「ほんと?」 「偉大な先輩を真似るのは、悪いことじゃない。天体物理学のヒックマン少尉※19もジェインウェイをやらせたらうまいもんですよ。」 ジェインウェイは微笑み、「それは聞き捨てならないわね、ヒックマン少尉を問い詰めなきゃ。艦長の物真似? 艦隊協定のどこかに触れるんじゃないかしら」という。立ち上がるジェインウェイ。「覚悟はしてた。こういう日が来るって、私たちはみんな来るべき試練に備えていたはずよ。でもどこまで危険を冒せばいい? どの時点で諦めて退却すればいいのかしら? クルーはデルタ宇宙域で一生送ることに耐えられる? その答えを先輩艦長たちが教えてくれないかと思ったけど、だめ。結局私は、独り。」 ジェインウェイのそばに来たチャコティは言う。「私が付いています、一緒に立ち向かって、正しい決断を下しましょう。あなたは独りじゃない、キャスリン。」 "Three years ago... I didn't even know your name. Today... I can't imagine a day without you."というジェインウェイ。 トゥヴォックの通信が入った。「ジェインウェイ艦長、ブリッジへお願いします。」 作戦室を出る 2人。 「どうしたの」と聞くジェインウェイ。 キム:「何か変なんです。」 トゥヴォック:「ボーグ艦からのパワーサインが途絶えました。」 チャコティ:「全部か?」 キム:「5.2光年先で、ピタリと動かなくなりました。」 ジェインウェイ:「原因は?」 トゥヴォック:「不明です。」 ジェインウェイ:「ミスター・パリス。」 パリス:「はい艦長?」 ジェインウェイ:「ボーグの方へ向かって。ワープ2。」 ブリッジ。「接近します」というキム。「通常スピード。スクリーン、オン」と命じるジェインウェイ。 映ったのは、一面に散らばる船の残骸だった。ジェインウェイと顔を見あわせ、「生命反応は?」と聞くチャコティ。 キム:「わずかにありますが、不安定です。」 トゥヴォック:「艦長、残骸の中から 2つの兵器反応をキャッチしました。一つはボーグ。もう一つは発生源不明です。」 パリス:「一体誰がボーグにこんな…?」 ヴォイジャーは破片の中を進む。 |
※15: TNG第42話 "Q Who" 「無限の大宇宙」より
※16: Wolf 359
※17: U.S.S. エンデヴァー U.S.S. Endeavour
※18: Captain Amasov ※19: Ensign Hickman
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「ボーグよりも強いものがいるなんて、信じられない」というジェインウェイ。 キム:「だけどいた。15隻全滅だ。これでボーグスペースを抜けられるかもしれない。強い味方ですよ。」 チャコティ:「ぬか喜びはよそう。ほかの艦がいないかスキャンしろ。」 トゥヴォック:「いません。」 キム:「待ってください。バイオ・データを探知しました。ボーグ艦の船体外部から出ています。」 ジェインウェイ:「見せて。」 茶色をした、小型の物体が映し出される。「拡大して、ミスター・キム。」 キム:「有機体であることは確かですが、センサーが中まで届きません。」 ジェインウェイ:「呼びかけてみて。」 トゥヴォック:「反応しません。」 チャコティ:「宇宙空間に生息する生物か、生物兵器かもしれません。」 ジェインウェイ:「どんな武器でボーグを破壊したか知りたいわ。転送で船からはがせる?」 キム:「ロックできません。」 チャコティ:「トラクタービームは?」 トゥヴォック:「動きません。」 キム:「我々のテクノロジーは、一切通用しないようです。」 ジェインウェイ:「トゥヴォック、キューブの中に空気はある?」 トゥヴォック:「はい艦長。」 ジェインウェイ:「チャコティ副長。中を調べて来てちょうだい。短距離スキャンで生命体を調べるの。」 トゥヴォック:「ボーグの生命反応も残っていますが、不安定です。」 ジェインウェイ:「通信リンクはオープンに、いつでも転送できるようにして何かあったらすぐ引き戻すわ。」 うなずくチャコティ。「トゥヴォック、ハリー、一緒に来てくれ。」 眠ったようになり、機械だけ動いているボーグ。倒れている者もいる。チャコティたちが転送された。「こっちだ」というチャコティ。 作業をしているボーグたちがいる。「フェイザーを下ろせ。こちらが脅かさなければ、向こうも無視するはずだ」というチャコティ。キムは「仕事に夢中って感じですね」という。 暴走し、同じ動作を繰り返す 1人のボーグ。あちこちから水蒸気が出ており、火花も上がっている。「エイリアンのバイオ・サインが強くなってきた。近いぞ」というチャコティ。キムは何かを見つけ、「副長」と呼んだ。それはボーグの死体の山だった。 トゥヴォック:「不思議だ。」 チャコティ:「のんきな感想だな。」 トゥヴォック:「あの死体の山は、ケスが見た幻覚に似ています。」 キム:「ケスは、僕らが死ぬって言いませんでした?」 チャコティ:「よし、先へ行こう。」 船体に空いた穴と、それにつながる通路のようなものを見つけた。 チャコティ:「ボーグ船体を溶かして中に入ったようだな。」 トゥヴォック:「このボーグは生命体を同化させようとしたんでしょう。」 キム:「失敗したみたいですけど。」 ボーグは同化チューブを差し込む動作を繰り返している。チャコティは通路を調べ、「この穴の向こうに部屋がある、幅 40メートルで反物質粒子の濃度がかなり高い。何らかのワープ推進システムのようだ」という。 キム:「これ船ですか?」 トゥヴォック:「宇宙艦隊は今までにも有機質の船をもつ種族と遭遇している。ブリーン人※20もそうだった。」 チャコティは「中には誰もいないようだな」といい、バッジを叩いた。「チャコティからヴォイジャー。」 ジェインウェイ:『どうぞ、副長。』 チャコティ:「艦長、生命体の入口を見つけました。船の一種のようです。中に入っていいでしょうか?」 ジェインウェイ:『許可します。』 チャコティ:「ハリー、そこからボーグのシステムにアクセスできる。戦略データベースをダウンロードしてみろ。何が起きたか記録されてるかも知れん。」 キム:「了解。」 チャコティ:「トゥヴォック。」 2人は船の中へ入っていく。トリコーダーでダウンロードを始めるキム。 船の中では、水が流れているような音が聞こえてくる。上方に白い糸状の部分がある。「有機質のコンジットのようだ。電気が流れてる」というチャコティ。「動力源かもしれません」というトゥヴォックに、「そうだな」と答える。一部が窓のように開いており、光が走っている。トリコーダーで調べるチャコティ。「2元式のマトリックスみたいだが、神経ペプチド※21で縁取られている。コンピューターの中枢かもしれないな。」 キムはダウンロード作業を続けていた。何かの声らしきものが響いてくる。そちらへ向かうキム。だが何もなく、元の場所へ戻る。 トゥヴォックが船内の黒くなった部分を調べている。「これはボーグのディスラプタービームによる損傷でしょう。しかし自己再生しているようですね。」 トゥヴォックは奥にボーグの死体があるのを見つけた。「副長」と呼ぶ。そのボーグの顔は、大部分が橙色に変色していた。さらに変色した部分は広がっている。 キムはダウンロードを終えた。近くにいた、同化作業を繰り返していたボーグが歩いていった。先ほどの声のような音が大きくなっている。フェイザーライフルを構え、進むキム。 医療室で働いているケス。ふいに、キムが苦しそうに叫んでいるのを見た。ショックで持っていた道具を落とすケス。オフィスからドクターが駆け寄る。 「ケス?」 「ハリーが危ない。」 「何を見た?」 「早く戻らせて!」 「医療室からジェインウェイ。」 キムが「副長!」と呼ぶ。船を出てキムのところに戻るチャコティとトゥヴォック。「この中に何かいます、ボーグじゃありません。場所を特定できないんですが、20メートル以内です」というキム。トゥヴォックは「パイロットが戻ったんでしょう」という。ジェインウェイから通信が入った。『ヴォイジャーから上陸班。』 チャコティ:「どうぞ。」 ジェインウェイ:「今すぐ転送するから、スタンバイして。」 チャコティ:『ありがたい。』 トレスに「転送」と命じるジェインウェイ。 「ロックできません。」 「どうして?」 「何者かが生物電気で妨害してるようなんです。」 「7メートルだ。ここを出よう」というチャコティ。2人が続く。 「ビームの幅を狭めて」と指示するジェインウェイ。だがトレスは「だめです。骨格をロックしてみます」という。 「何を?」 「骨格組織のミネラルをロックしてみるんです。たった今、思いついた方法ですけど。」 ボーグたちの後を追いかけるようにして、何者かから逃げるチャコティたち。「生命体が 5メートルまで接近」というチャコティ。「どっちから?」と尋ね、フェイザーを構えるキム。その瞬間、目の前の壁が吹き飛ばされ、巨大な生命体※22が姿を現した。前を歩いていた 2体のボーグは、その生命体に弾き飛ばされる。キムの方を振り返る生命体。唸り声と共に、その長い腕によってキムも倒された。痛みに叫ぶキム。転送ビームに包まれる 3人。生命体の攻撃がかすめたが、無事転送された。 「成功です」というトレス。感心するジェインウェイ。「骨格ロック※23ね? 転送マニュアルに付け加えておかなくちゃ。」 スクリーンを見たパリスが報告する。「艦長、バイオシップ※24がパワーアップしてます、攻撃の用意でしょうか?」 形状を変えるバイオシップ。ブリッジにいるケスはテレパシーで、生命体の顔を見る。倒れるケスをジェインウェイが支える。「ミスター・パリス、発進して。ワープ速度最大。」 逃げるヴォイジャーに向けて、バイオシップは攻撃を行う。1発は外れたが、次は命中した。姿勢制御を失うヴォイジャー。ブリッジで何とかパネルを操作するパリス。ヴォイジャーはワープに入った。 「船は追ってきません」と報告するパリス。ため息をつくジェインウェイ。ケスは副長席に座ったまま、じっとしている。「ケス?」というジェインウェイ。 「声が聞こえました。バイオシップのパイロットが私に話しかけてきたんです。テレパシーをもつ種族ですね。ちょっと前から何となく気がついていたんですけど。艦長、ボーグより彼らの存在の方が怖いわ。」 「何て言ってきたの?」 「こう言いました、『弱いものは滅びるのだ』※25と。」 |
※20: Breen 全身スーツに覆われており、寒い星に住む種族。TNG第111話 "Hero Worship" 「暗黒星団の謎」など ※21: neuropeptide ※22: さらに 3本足です。これは全て CG 製です ※23: skeletal lock ※24: bioship ※25: "The weak will perish." |
『艦長日誌、宇宙暦 50984.3。エイリアン生命体との遭遇から 12時間経った。追いかけられている気配はなく、その後新たなボーグとも遭遇していないので、針路を維持することに決めた。明日には北西航路の入口に着く、恐怖のせいでクルーの目的意識を低下させたくない。怯えるのは無理もないことだが。』 医療室に入るジェインウェイ。キムの顔は、変質していた。治療を行っていたドクターが、フォースフィールドを通り抜けて出てくる。「悪化する一方です。胸の傷に二、三の漂流細胞が入り込んだようなのですが、それが今や全身に広がっています。」 「何かに変身していってるように見えるわね。」 「というわけでもない。エイリアン細胞が彼の身体を内側から侵蝕しているんです。ミスター・キムは生きたまま、食べられているようなものです。」 「意識はあるんでしょ、ドクター。」 「鎮静剤を投与しましたが、効果がありません。どんな治療を試みても、一瞬で跳ね除けられてしまうんです。」 モニターを起動し、「これがエイリアンの細胞です」と説明するドクター。「一つ一つが人間の 100倍以上の DNA をもっています。こんなに複雑な遺伝子は初めてだ。分析には数年はかかるでしょう。」 「驚異的な免疫反応だわ。細胞膜を貫けないのね。薬も、生物的にも、テクノロジーも、通用しない。全て一瞬で破壊される。だからボーグも同化できなかった。」 「この場合、抵抗は無駄どころではなかった。しかしながら、ボーグのテクノロジーがミスター・キムを救う鍵になると思うんです。」 「どういうこと?」 「エイリアン細胞を撲滅できるようなプログラムをボーグのナノプローブにインプットして、キムの血液中に送り込むんです。」 ドクターは自慢げに話し始める。「分析は以前からやってきました。ナノプローブの同化能力には、全く目を見張るものがありますが、エイリアン細胞にはかなわない。そこで、遺伝子行動同化の仕組みを調べるべく、ナノプローブを分解してみました。そして改良したんです、エイリアン細胞と同じ機械信号を発信するようにね。これで、プローブは密かに務めを果たせます。見てください。エイリアン細胞はプローブに捕えられるまで、全く気がつかない。」 画面上には、確かに細胞に取りつくナノプローブが映っている。「しかしまだ、プロトタイプはわずかしかできてません。キム少尉を治療するのに十分な量を作るにはまだ数日かかる。」 ジェインウェイは尋ねた。「その数日は、ハリーはもつの?」 「わかりません。」 ジェインウェイはキムに向かって言った。「死んじゃだめ、ハリー。命令よ。」 キムの目からは、涙がこぼれた。 「ボーグのデータベースを分析しました。あの生命体のことは『生命体8472※26』と呼んでいます」と言うトレス。 トゥヴォック:「この 5ヶ月に、ボーグは少なくとも 10回以上は攻撃されていますが、あっという間に敗北を喫している。」 トレス:「エイリアンについては情報はほとんどないようです。」 チャコティ:「どこから来たかもわからないのか?」 トレスはトゥヴォックと顔を見合わせ、「ええ、そのようです」と言った。コンピューターを操作する。モニターを見て、「艦長を呼べ」というチャコティ。 スクリーンを見ながら、「これが北西航路」というジェインウェイ。大量のバイオシップが映し出されている。「どおりでボーグが活動してないわけだ」というチャコティ。 トゥヴォック:「133 のバイオシップを探知。さらに増えて来ています。」 ジェインウェイ:「どこから来るの?」 トゥヴォック:「量子特異点からのようですが……。」 トレス:「重力の歪みの位置を特定しました。」 チャコティ:「スクリーンへ。」 明るく輝く地点から、次々にバイオシップが出て来ている。「ケス? どう?」と尋ねるジェインウェイ。「ええ、聞こえます」と答えるケス。バイオシップ、そしてパネルを操作する生命体8472 を見る。「彼らしかいない場所から来たそうです。」 チャコティ:「パラレル宇宙か何かか?」 ケス:「わかりません。とても冷たい……悪意を感じます。『弱いものは滅びる。』 これは侵略です。彼らは全てを破壊しようとしています。」 ジェインウェイ:「トム、コース反転、ワープ速度最大。5光年後ろまで下がって。」 パリス:「了解。」 ジェインウェイ:「非常警報維持。副長。」 2人は作戦室へ入った。スクリーンを見つめたままのケス。 「決断の時が来たわ。あなたの意見は?」と尋ねるジェインウェイ。「ただ一つ。このまま進むのは自殺行為です」というチャコティ。 「確かに。北西航路は選択肢から外すわ。残る道は 2つ、ボーグに立ち向かうか、デルタ宇宙域の中で安全な惑星を見つけて、一生そこで暮らすか。」 「地球へ帰るのを諦める必要はありません。ほかの道があるかもしれない。」 「今ここでクルーに向かって、諦めましょうとは言えないわ、チャコティ。何か方法があるはずよ。」 「キャスリン、もう 2日も寝てないでしょう。少し休んで頭をすっきりさせた方がいい。今はまだ安全です。クルーに伝えるのは明日でもいい。」 「それじゃ明日。」 チャコティは出ていった。 ベッドの上で考えていたジェインウェイは、ふと思い立って部屋を出た。向かったのはホロデッキだった。 「マエストロ? レオナルド。」 返事がない。ジェインウェイは階段を上がる。「こんばんは、カタリーナ」というダ・ヴィンチ。 「お邪魔だったかしら?」 「何が見える?」 「壁、ろうそくに照らされてる。」 ダ・ヴィンチが見ている壁には、ろうそくの火でできた様々な影が、複雑な模様をつくっていた。「あなたには何に見えるの?」と尋ねるジェインウェイ。 「ムクドリの群れ、カシの木の葉、馬の尻尾、首に縄をかけられた盗人、それから壁だ、ろうそくに照らされている。 There are times, Catarina, when I find myself transfixed by a shadow on the wall, or the splashing of water against a stone.... I stare at it, the hours pass.... The world around me drops away, replaced by worlds being created and destroyed by my imagination.... A way to focus the mind.お座り、なぜここに来たのか話してごらん。」 「目の前に道があります、家に帰るための唯一の道。その両側で、2つの恐ろしい敵が殺し合っています。その間を通り抜けようとすれば、私たちも滅びるでしょう。でも向きを変えれば、故郷に帰る望みは完全になくなってしまう。どんなに一生懸命考えてみても、ほかの道が見つからないんです。」 「 "When one's imagination cannot provide an answer... one must seek out a greater imagination. There are times, when even I find myself kneeling in prayer.サンタ・クローチェ※27の修道院に手紙を届けねばならんのだ。一緒においで、カタリーナ。さあ、修道院長を起こして、礼拝堂に行こう。神に問いなさい。」 「そんなことをしても無駄だと思うわ。」 ジェインウェイは再び、壁に映った影を見つめた。「だけどいい手段を思い付いた。神様じゃなくて、悪魔にすがったら?」 |
※26: 宇宙種8472 Species 8472 ※27: Santa Croce |
「ボーグと同盟を結ぶ?」と驚くパリス。「同盟というか取り引きね。新しい敵を倒す方法を教えてやるのよ、それと引き換えに、領域を無事に通過させてもらう。ハリーの治療法を探っているうちに、ドクターが細胞レベルでエイリアンに勝つ方法を発見したの。」 ドクター:「しかしまだ実験段階です、艦長。プロトタイプをいくつか作っただけですし。」 ジェインウェイ:「ナノプローブの改造法をボーグに教えるだけでいいのよ、そうすれば彼らはエイリアンと戦う武器を作れるわ。」 ドクター:「理屈では、そうですが。」 ジェインウェイ:「ベラナ、ボーグは生命体8472 について、ほとんど何の情報をもっていないんでしょ?」 トレス:「そうです、ボーグは同化によって知識を得るので、同化できないものは理解できません。」 ジェインウェイ:「でも我々は同化しない。調べて情報を得る。それが幸いしたわ。こっちの情報が必要なはずよ。」 ニーリックス:「だけどボーグの連中が取り引きになんか応じますかね。誰かに協力したなんて聞いたこともない。」 ケス:「今まではそうだったけれど、エイリアンが言ってたことが本当なら、ボーグはかなり追いつめられてるわ。」 ジェインウェイ:「ある面、ボーグも私たちと同じよ。生き延びたいはず。そのための情報なら欲しがらないわけがないわ。」 トゥヴォック:「しかしボーグが情報を手に入れるために、ヴォイジャーとクルーを同化させるという恐れはありませんか?」 ジェインウェイ:「そんなことしても意味がないわ。ドクター、ナノプローブの改造法を完全に把握しているのは、この船であなただけよ。研究の結果を全てホロマトリックスに移して。」 ドクター:「わかりました。」 ジェインウェイ:「あなたが私の保険よ。ボーグが下手な真似をすれば、あなたのプログラムを消せばいい。でもそうはならないわ、ドクター。協力するのは集合体の利益になるんですもの。ヴォイジャー一隻を通すことくらい、彼らが今抱えている問題からすれば小さな代償のはずだわ。ベラナ、ドクターを手伝って。」 トレス:「わかりました。」 ジェインウェイ:「ミスター・パリス、一番近いボーグ艦を探して針路を修正して。簡単に見つかるはずよ。」 パリス:「わかりました。」 ジェインウェイ:「解散。」 クルーたちは会議室を出ていった。チャコティが残っている。「静かだったわね」というジェインウェイ。 「みんなの前では言いたくなかったんですが、この作戦はリスクが大きすぎると思います。」 「そう?」 「子供の頃に、あるたとえ話を聞いたんですが、それを思い出しました。一匹のサソリ※28が川べりを歩きながら向こう岸に渡りたいと考えていました。すると、キツネがいたので、サソリは自分を乗せて川を渡ってくれと頼みました。キツネは断りました、『お前を乗せて刺されでもしたら、溺れてしまう』と。サソリは言いました、『そんなことをしたら、私も溺れます。』 これを聞いてキツネは、承諾しました。そして背中にサソリを乗せて、泳ぎ始めたんです。でも川の真ん中でサソリは、キツネを刺しました。毒が身体に回る中、キツネはサソリに尋ねました、『どうして刺した? 君も溺れてしまうのに。』 サソリは答えました、『本能なんです』と。」 「リスクは私もよくわかってるわ。彼らの凶暴性を変えようといってるわけじゃないの。ただ滅多にないチャンスでしょ。私たちの知る限り、ボーグがこれほど追いつめられてるのは初めてよ。そこに付け込めるわ。」 「仮に取引が成立したとしても、いつまで彼らを抑えておきます? ボーグの領域を通過するには何ヶ月もかかる。その間には数え切れない数の星系や、船に出会うんですよ。」 「でも集合体は一つ、しかも窮地に立っている。こちらの安全が確認されるまでは、情報を与える必要もないわ。 We just need the courage to see this through to the end...."すぐには解決できない問題もあるんです。」 「引き返そうといいたいの?」 「そうです。他人の戦いに首を突っ込むべきじゃない。デルタ宇宙域には、まだ探検していない場所が山ほどあります。別の道があるかもしれない。」 「半年先や一年先はどうなってるかわからないでしょう? 生命体8472 はボーグを全滅させた後で、私たちに襲いかかるかもしれない、今目の前にあるようなチャンスは二度とないかもしれないのよ。」 「どちらに価値があります?」 「何が?」 「おびただしい数の命を奪ってきた種族を助けるなんて。ボーグを助ければまた誰かが同化される、地球へ帰るためだとしても、間違ってる!」 「ハリー・キムをご覧なさい。生命体のおかげで死にかかってるのよ。彼らを同化することに協力するのは、デルタ宇宙域を救うことになるかもしれないでしょう。」 「本気で言ってるんですか。あなたは自分を正当化しようとしてるだけだ、クルーを故郷に帰らせたいあまりに、ほかの方法が見えなくなっているんです。俺にはわかる、キャスリン。あなたは時々意固地になるから。」 「私を信じられないの、チャコティ?」 「そういう問題じゃない。」 「そういう問題よ。昨日は一緒に立ち向かおうっていったじゃないの、あなたは独りじゃないって。」 「だからって嘘はつけません。それが私の務めでしょう。」 「意見はありがたく聞いとくけど、討論はここまでよ。決断は変わらないわ。力になってもらえる?」 「あなたは艦長だ。副長の私は命令に従うまでです。しかしこれが過ちだという考えは変わりません。」 「私は独りなのね、結局。下がって。」 チャコティは部屋を出ていった。 ヴォイジャーはボーグ・キューブが辺りを飛んでいる惑星に近づいた。報告するトゥヴォック。「この星系には惑星が 3つあります。生息しているのは全てボーグ。艦が接近。」 「全艦停止。シールドアップ」と命じるジェインウェイ。 巨大なキューブがヴォイジャーに近づく。「呼びかけてきました」というトゥヴォック。ジェインウェイは「チャンネルオープン」と命じた。ボーグの声が聞こえる。『我々はボーグ。お前たちを同化する。抵抗は無駄だ。』 緑色の光線がこちらへ発射された。「トラクタービームにロックされました」というトゥヴォック。臆せずに話し始めるジェインウェイ。 「ボーグ艦に告ぐ、私は宇宙艦ヴォイジャーのジェインウェイ艦長。生命体8472 を倒すための戦略情報をもっています。取り引きをしましょう。」 『取り引きなどしない。お前たちを同化する。』 ジェインウェイはトレスに合図を送った。トレスのモニターには、改良したナノプローブの映像が映っている。続けて話し始めるジェインウェイ。「ボーグ艦、私たちのもっている情報のサンプルを送るわ。今すぐトラクタービームを解除しなさい。さもないとデータを破壊します。あと 10秒だけ待ってあげるわ。あなたたち負けそうなんでしょう。この情報を無視する余裕はないはずよ。今すぐトラクタービームを……」 ジェインウェイの姿はヴォイジャーから消え、ボーグ・キューブの中に現れた。 ボーグの声が響く。『要求を述べろ。』 「あなた方の領域を安全に通して欲しいの。私の船がボーグの領域を通り抜けさえすれば、情報を渡すわ。」 『受け入れられない。我々の領域は広大だ。お前たちが通り抜けるには時間がかかる。情報は今すぐ必要なんだ。』 「今渡したりしたら、私たちを同化するでしょう。」 『生命体8472 の侵略は止めねばならん。我々が死ねばお前たちも死ぬ。情報を渡せ。』 「だめ。安全な航路を確保して、それが条件よ。」 『ではどうすればいい。』 「手を組みましょう、お互いの力を合わせるの。今すぐ情報をあげたとしても、武器の開発には時間がかかるはずよ。だけど一緒にやれば、もっと早く武器が完成する。あなたたちに守られて領域を通る間に、武器を完成させて…」 キューブが揺れた。バイオシップが攻撃している。 トラクタービームでつながれたままのヴォイジャーも一緒に揺れている。「あの船はどこから来た?」と尋ねるチャコティ。「20,000キロメートル先にある、量子特異点からです。バイオシップは惑星に向かってまっすぐに飛んでいます。」と答えるトゥヴォック。 トレス:「ボーグのシールドが弱まってます。今ならトラクタービームを解除できます。」 チャコティ:「艦長をロックできたか?」 トゥヴォック:「まだです。」 パリス:「副長、バイオシップが特異点から新たに 9隻現れました。」 9隻のバイオシップは惑星に近づいた。そして 1隻を取り囲むように、他の 8隻が均等に並ぶ。ビームが中央の船に向けて順に発射されていく。最後に中央のバイオシップから強力なビームが惑星に向かって発射された。赤くなっていく惑星。爆発物の衝撃を浴びる、ヴォイジャーを連れたボーグ・キューブ。「どうなってるの?」というジェインウェイ。 ついに惑星は大爆発を起こした。巻き込まれたボーグ艦も爆発する。残ったキューブは、ヴォイジャーと共に飛び去った。 |
※28: scorpion 原題 |
To Be Continued...
感想
第3シーズン後半で触れられてきた、ボーグ関連の伏線がこのエピソードでついに、ヴォイジャーのシリーズとしての大きな転換点となって受け継がれます。これまで映画でさえも 2隻以上のボーグ・キューブが同時に出てきたことはありませんでした。それが オープニングで2隻、その後 15隻同時に、しかも全て破壊されてしまうという驚異の展開。そして既にご存知の方も多いでしょうが、ボーグを超える力をもつ「生命体8472 (この訳は、まあまあですが…)」の登場。惑星ごと破壊してしまうとは、恐ろしいの一言。あまり次から次に強い種族を出してしまうのは陳腐なストーリーになる恐れがありますが、衝撃的という点では十二分に成功していると思います。 このエピソードを、何の前情報もなく観られる (観られた) 方をうらやましく思います。 余談:セリフは一部、原語の意味に合わせて変えてあります。 |
第67話 "Worst Case Scenario" 「反乱」 | 第69話 "Scorpion, Part II" 「生命体8472(後編)」 |