「艦長日誌、宇宙暦 51978.2。アルファ宇宙域から暗号化されたメッセージが届いて 5ヵ月になる※3。宇宙艦隊から発せられたものだとはわかっているのだが、未だに解読できない。ベラナは既にあきらめたらしい。データの損傷がはげし過ぎるというのだ。しかし私はあきらめない。何らかの形で解読できることを願っている。」
食堂。独りでコンピューターを操作するジェインウェイに、入って来たチャコティが挨拶する。「おはようございます。」
「何時?」
「5時です。」
「ああ。おはよう。」
「トムとニーリックスが、商取引を終えたそうです。」
「成果は?」
「品物を詰め込み過ぎてシャトルが思うように進まないとか。地元の人間を 1名乗船させたいといってます。世話になったので、ニーリックスが次の星系まで送ってってやりたいと。」
「許可します。」
「少し眠った方がいい。身体に触ります。」
「もう少ししたらね。」
「宝捜しの続きを?」
「宝箱はあったけど鍵が開かないの。もう 50以上のアルゴリズムを試してるっていうのに全くヒットなし。一体艦隊は何を送ってよこしたのかしら。地図? ワームホールの位置? 今日解読できれば明日地球へ帰れるかもしれない。でももしかしたら、パウンドケーキのレシピかも。あまり望みを託し過ぎない方がいいのかしら。」
「解読すればはっきりしますよ。ベラナに協力を要請します。セブンにも伝えて下さい。」
「うーん、ボーグ流のアルゴリズムを教えてくれるかも。ご機嫌が良ければ。」
「喧嘩でも?」
「……原因は彼女だか私だか。とにかく最近ぶつかってばっかり。いちいち私に反論するの。」
「セブンはあなたから多くのことを学んだ。そろそろ先生から卒業したいのかも。」
「そうね。…さてと、先生はコーヒーをご所望よ。付き合ってくれる?」
「もちろん。」
ヴォイジャーにシャトルが帰艦した。貨物室で、パリスは品物を運ぶ場所を指示している。「こっちは機関室行きだ。これは医療室。こっちは倉庫。」
チャコティは部下の持っている、乾いたクラゲのような物を見ている。「食堂行きじゃないことを祈るよ。」
パリス:「こんなもん持って来たっけ? ニーリックス!」
ニーリックスはパリスを無視し、ジェインウェイに異星人を紹介する。「艦長、この男は天才です。キセノンベースの生命体※4と交渉してた時、急に宇宙翻訳機が壊れちまったんスけど、このアートゥリス※5が見事通訳してくれたんです。あたしの言葉なんか聞いたことないのにですよ。」
アートゥリスは言う。「単純な言語で。あ、気に触ったら失礼。」
笑うジェインウェイ。パリスの声が響く。「ニーリックス!」
ニーリックス:「今行くって。すいません、ちょっと失礼。」 歩いて行くニーリックス。
ジェインウェイ:「では、ヴォイジャーへようこそ。単純な言語しか理解しない者ばかりですけど、ごゆっくり。すぐ部屋を用意させます。」
アートゥリス:「ニーリックスの言う通りだ。ヴォイジャーは開かれた船だと。」
「光栄です。」
アートゥリスと話すジェインウェイ。「宇宙翻訳機の代わりを務められる人なんて、初めてよ。」
「言語に長けた種族なんです。私は 4,000語を話します。」
「私はまだ基礎クリンゴン語と格闘中。どうして話せるの? たった 2、3言聞いただけで。」
「2、3言で、文法や構文を把握するには十分です。」
「素晴らしい。」
「とんでもない。生まれつきですから。生まれつき、強い肉体の者もいれば、あなたのように寛大な心の人もいる。私の種族は生まれつき言語のパターンが読めるというだけです。」
ジェインウェイはアートゥリスを見つめている。
アートゥリス:「どうかしましたか?」
「いえ、あなた…コンピューター言語もわかるのかしら。アルゴリズムとか、シンタックスとか。」
「同じ言語ですから。」
喜ぶジェインウェイ。「あなたにお願いがあるんだけど、いいかしら。」
コンピューターに宇宙艦隊からのデータの状態が表示されている。アートゥリス:「あなたの言う通り、データはかなり破壊されてるようです。もう一度、全体を見せてくれ。」
ジェインウェイに許可を求めてから、操作するセブン。
アートゥリス:「君は、ボーグか?」
セブン:「そうだ。」
「うーん、随分美人のドローンだな。」
「もう集合体の一部ではない。」
画面を見るアートゥリス。「あ、なるほど。問題が見つかりました。いいですか?」
ジェインウェイ:「もちろん。」
アートゥリスはセブンと交代する。
ジェインウェイはセブンに尋ねる。「彼らに遭遇したことは?」
「生命体116※6。」
アートゥリス:「そう呼ばれてるのか?」
「そうだ。ボーグはまだ同化していない。だがいずれ…」
ジェインウェイ:「セブン。」
アートゥリス:「いいんですよ、艦長。ボーグは自然の脅威のようなもの。嵐に向かって怒る者はいません。避けるのみです。あ、これでしょ。単に画像の情報信号が抜け落ちて、マトリックスの三重化※7が起きてただけです。」
「気づかなかった。」
「かなりの情報量だ。スクリーンを使った方がいいかもしれません。」
天体測定ラボの大きなスクリーンに表示させる。多数の映像情報と共に、宇宙艦隊の男性の姿もある。
アートゥリス:「ほぼ完成です。68キロクワッド以上は復元できました。だがまだ完全じゃない。」
ジェインウェイ:「データブロックの、14 ベータは?」
「ああ…その部分は損傷がひどく、復元は不可能かと。」
セブン:「空間グリッドが作動している。」
スクリーンに近づくジェインウェイ。地図が表示されている。 「座標がマークされてる。ここから 10光年以内よ。」
セブン:「艦隊がそこへ行けと指示しているのかもしれん。」
「そうね。とりあえず行ってみましょう。」
ワープで向かうヴォイジャー。ブリッジに戻るジェインウェイたち。
パリス:「間もなく到着です。」
ジェインウェイ:「ワープを解除。付近をスキャンして。」
トゥヴォック:「船体を発見。」
「スクリーン、オン。」
流線形をした宇宙艦が映し出された。
チャコティ:「所属は。」
トゥヴォック:「私が正しければ、この船の所属は…宇宙艦隊です。」
微笑むキム。ジェインウェイはスクリーンを見つめていた。
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※3: VOY第83話 "Hunters" 「宇宙の闇に棲む狩人」より
※4: xenon-besed life-form
※5: Arturis (レイ・ワイズ Ray Wise TNG第52話 "Who Watch the Watchers" 「守護神伝説」のリコ (Liko)、ドラマ「ツイン・ピークス」(1990〜91) のリーランド・パーマー役) 声:野島昭生
※6: Species 116
※7: triaxilation
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