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ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第94話「裏切られたメッセージ」
Hope and Fear

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・イントロダクション
※1ホロデッキの中に円盤が浮かんでいる。縦横無尽に飛び回るそれを、ジェインウェイとセブン・オブ・ナインがフェイザーで交互に撃っていく。2人とも動きやすい服装だ。命中する度に色の変わる円盤。ジェインウェイは壁にぶつかってしまい、転んだ。円盤が向かってくる。だがジェインウェイは振り向きざまにフェイザーを発射した。セブンは円盤を避けられず、体に当たった。同時に円盤は消え、コンピューターの音声が流れる。
『勝負あり。ジェインウェイ。勝者、ジェインウェイ。』
ジェインウェイは「やるわね」とセブンに言う。
「そっちがな。」
立ち上がり、タオルを手に取るジェインウェイ。「10ゲーム中 4ゲームはあなたが取ったのよ。いい勝負じゃない?」
「それがおかしいのだ。視力とスタミナは、私の方が圧倒的に上だからな。」
「ヴェロシティ※2に大切なのはスタミナじゃなくて機転よ。」 疲れているジェインウェイ。
「あなたは腹の立つ敵だ。ファイナルラウンドでフェイザーを落とした後、ディスクを見ていなかったにも関わらずターゲットにヒットさせた。」
「直感よ。」
「直感は単なる思い込みだ。予知能力など、あるわけがない。」
「予知してるわけじゃない。心のどこかで気づいてるの、いくつかの要因にね。壁に当てた後のディスクの軌跡や、戻ってくる時の音。ホログリッドに映る影。」
「とても信じがたい考えだ。」
「とにかく、私の勝ちよ。」
「もう一勝負だ。」
「今度ね。」 ホロデッキを出ていくジェインウェイ。
「あなたは疲れている。負けるのが怖いのか?」
「疲れてるけど負けはしない。」
「コンピューター、試合開始。」
「今のは取り消しよ。」 ジェインウェイはコンピューターに命じ、セブンに向かって言った。「あなたの負けよ。ゲームオーバー。」
ホロデッキのドアが閉まった。残されるセブン。

※1: このエピソードは第4シーズン最終話 (フィナーレ) です。最近では珍しく、シーズン間をまたぐ前後編 (クリフハンガー) でもなく、第5シーズンの最初が 2時間エピソードというわけでもありません

※2: velocity
ホロデッキプログラム

・本編
「艦長日誌、宇宙暦 51978.2。アルファ宇宙域から暗号化されたメッセージが届いて 5ヵ月になる※3。宇宙艦隊から発せられたものだとはわかっているのだが、未だに解読できない。ベラナは既にあきらめたらしい。データの損傷がはげし過ぎるというのだ。しかし私はあきらめない。何らかの形で解読できることを願っている。」
食堂。独りでコンピューターを操作するジェインウェイに、入って来たチャコティが挨拶する。「おはようございます。」
「何時?」
「5時です。」
「ああ。おはよう。」
「トムとニーリックスが、商取引を終えたそうです。」
「成果は?」
「品物を詰め込み過ぎてシャトルが思うように進まないとか。地元の人間を 1名乗船させたいといってます。世話になったので、ニーリックスが次の星系まで送ってってやりたいと。」
「許可します。」
「少し眠った方がいい。身体に触ります。」
「もう少ししたらね。」
「宝捜しの続きを?」
「宝箱はあったけど鍵が開かないの。もう 50以上のアルゴリズムを試してるっていうのに全くヒットなし。一体艦隊は何を送ってよこしたのかしら。地図? ワームホールの位置? 今日解読できれば明日地球へ帰れるかもしれない。でももしかしたら、パウンドケーキのレシピかも。あまり望みを託し過ぎない方がいいのかしら。」
「解読すればはっきりしますよ。ベラナに協力を要請します。セブンにも伝えて下さい。」
「うーん、ボーグ流のアルゴリズムを教えてくれるかも。ご機嫌が良ければ。」
「喧嘩でも?」
「……原因は彼女だか私だか。とにかく最近ぶつかってばっかり。いちいち私に反論するの。」
「セブンはあなたから多くのことを学んだ。そろそろ先生から卒業したいのかも。」
「そうね。…さてと、先生はコーヒーをご所望よ。付き合ってくれる?」
「もちろん。」

ヴォイジャーにシャトルが帰艦した。貨物室で、パリスは品物を運ぶ場所を指示している。「こっちは機関室行きだ。これは医療室。こっちは倉庫。」
チャコティは部下の持っている、乾いたクラゲのような物を見ている。「食堂行きじゃないことを祈るよ。」
パリス:「こんなもん持って来たっけ? ニーリックス!」
ニーリックスはパリスを無視し、ジェインウェイに異星人を紹介する。「艦長、この男は天才です。キセノンベースの生命体※4と交渉してた時、急に宇宙翻訳機が壊れちまったんスけど、このアートゥリス※5が見事通訳してくれたんです。あたしの言葉なんか聞いたことないのにですよ。」
アートゥリスは言う。「単純な言語で。あ、気に触ったら失礼。」
笑うジェインウェイ。パリスの声が響く。「ニーリックス!」
ニーリックス:「今行くって。すいません、ちょっと失礼。」 歩いて行くニーリックス。
ジェインウェイ:「では、ヴォイジャーへようこそ。単純な言語しか理解しない者ばかりですけど、ごゆっくり。すぐ部屋を用意させます。」
アートゥリス:「ニーリックスの言う通りだ。ヴォイジャーは開かれた船だと。」
「光栄です。」

アートゥリスと話すジェインウェイ。「宇宙翻訳機の代わりを務められる人なんて、初めてよ。」
「言語に長けた種族なんです。私は 4,000語を話します。」
「私はまだ基礎クリンゴン語と格闘中。どうして話せるの? たった 2、3言聞いただけで。」
「2、3言で、文法や構文を把握するには十分です。」
「素晴らしい。」
「とんでもない。生まれつきですから。生まれつき、強い肉体の者もいれば、あなたのように寛大な心の人もいる。私の種族は生まれつき言語のパターンが読めるというだけです。」
ジェインウェイはアートゥリスを見つめている。
アートゥリス:「どうかしましたか?」
「いえ、あなた…コンピューター言語もわかるのかしら。アルゴリズムとか、シンタックスとか。」
「同じ言語ですから。」
喜ぶジェインウェイ。「あなたにお願いがあるんだけど、いいかしら。」

コンピューターに宇宙艦隊からのデータの状態が表示されている。アートゥリス:「あなたの言う通り、データはかなり破壊されてるようです。もう一度、全体を見せてくれ。」
ジェインウェイに許可を求めてから、操作するセブン。
アートゥリス:「君は、ボーグか?」
セブン:「そうだ。」
「うーん、随分美人のドローンだな。」
「もう集合体の一部ではない。」
画面を見るアートゥリス。「あ、なるほど。問題が見つかりました。いいですか?」
ジェインウェイ:「もちろん。」
アートゥリスはセブンと交代する。
ジェインウェイはセブンに尋ねる。「彼らに遭遇したことは?」
「生命体116※6。」
アートゥリス:「そう呼ばれてるのか?」
「そうだ。ボーグはまだ同化していない。だがいずれ…」
ジェインウェイ:「セブン。」
アートゥリス:「いいんですよ、艦長。ボーグは自然の脅威のようなもの。嵐に向かって怒る者はいません。避けるのみです。あ、これでしょ。単に画像の情報信号が抜け落ちて、マトリックスの三重化※7が起きてただけです。」
「気づかなかった。」
「かなりの情報量だ。スクリーンを使った方がいいかもしれません。」
天体測定ラボの大きなスクリーンに表示させる。多数の映像情報と共に、宇宙艦隊の男性の姿もある。
アートゥリス:「ほぼ完成です。68キロクワッド以上は復元できました。だがまだ完全じゃない。」
ジェインウェイ:「データブロックの、14 ベータは?」
「ああ…その部分は損傷がひどく、復元は不可能かと。」
セブン:「空間グリッドが作動している。」
スクリーンに近づくジェインウェイ。地図が表示されている。 「座標がマークされてる。ここから 10光年以内よ。」
セブン:「艦隊がそこへ行けと指示しているのかもしれん。」
「そうね。とりあえず行ってみましょう。」

ワープで向かうヴォイジャー。ブリッジに戻るジェインウェイたち。
パリス:「間もなく到着です。」
ジェインウェイ:「ワープを解除。付近をスキャンして。」
トゥヴォック:「船体を発見。」
「スクリーン、オン。」
流線形をした宇宙艦が映し出された。
チャコティ:「所属は。」
トゥヴォック:「私が正しければ、この船の所属は…宇宙艦隊です。」
微笑むキム。ジェインウェイはスクリーンを見つめていた。


※3: VOY第83話 "Hunters" 「宇宙の闇に棲む狩人」より

※4: xenon-besed life-form

※5: Arturis (レイ・ワイズ Ray Wise TNG第52話 "Who Watch the Watchers" 「守護神伝説」のリコ (Liko)、ドラマ「ツイン・ピークス」(1990〜91) のリーランド・パーマー役) 声:野島昭生

※6: Species 116

※7: triaxilation

スクリーンに大きく映し出される船。パリス:「信じられない。よくここまで。」
ジェインウェイ:「トゥヴォック。」
トゥヴォック:「呼びかけます。……応答なし。」
チャコティ:「生命反応。」
セブン:「いかなる有機体反応もなし。」
キム:「船体外部、ダメージなし。生命維持装置も異常なし。クルーはどうしたんでしょう。」
ジェインウェイ:「答えは艦隊からのメッセージにあるはずよ。早く解読を終えなければ。もう少し力を貸してくれる?」
アートゥリス:「もちろんです。」
「上陸班、船体を確保。」
チャコティ:「トム、トゥヴォック。」
ブリッジを出ていく 3人。
アートゥリスはジェインウェイに近づく。「艦長、あなたのことはよく知りませんが、もっとこの発見を…喜んでいいんじゃないですか?」
「常に警戒を怠らないようになってしまったの。いろいろと痛い目にあってきたもので。でも今回は、素直に喜んでも良さそうね。」 アートゥリスと共に、ブリッジを出る。

宇宙艦のブリッジに転送されるチャコティたち。すぐにトリコーダーで調査する。
パリス:「ワーオ。」
トゥヴォック:「確かに、ワオだな。」
コンピューターのチェックを始める。船体図を見るチャコティ。「こんな船体構造は初めてだ。全く新しい設計を試みたようだな。」
トゥヴォック:「U.S.S.ドーントレス※8。船籍 NX-01A。打ち上げ日時※9、51742。」
「3ヵ月で 6万光年を?」
「クルー日誌を探しましたが、見当たりません。」
パリス:「クルーはいないらしい。自動航行で、この座標まで来るようにセットされてる。」
「我々に、新しい船を用意したということか。」
チャコティ:「荷造りするのはまだ早い、真意がわかるまで。」
急に、音と揺れが起こり始めた。
パリス:「ワープコアに、パワー変動がみられます。…多分ワープコアだと。こんなエンジン形態は初めてだ。」
揺れは大きくなる。
チャコティ:「機関室へ。」 向かう 3人。

機関室には、見慣れたワープコアのようなものは存在せず、中央に小さな機械が設置してあるだけだ。
パリス:「これがエンジンコアらしい。」
台座に乗り、調べる 3人。
チャコティ:「新型のワープドライブか。」
パリス:「反物質じゃありません、これは。正体不明です。」
音が大きくなり、ライトが明滅している。
コンピューターを操作するパリス。「量子スリップストリームドライブ※10っていうものらしい。」
トゥヴォック:「量子スリップストリーム。」
チャコティ:「マニュアルでは見かけたことないな。」
パリス:「パワーアップしてます。自動航行システム始動。」
動き始めるドーントレス。

艦長席に座っているキムが報告する。「艦長、例の船体が高速で移動中。3人とは交信不能です。」
ジェインウェイは「直ちに追跡」と命じ、セブンと天体測定ラボを後にする。

パリス:「ドライブを止められません。」
チャコティ:「コンピューター、エンジンを止めろ。」
『応答不能。』
パリス:「つかまって!」

ドーントレスの周囲に、青色のフィールドが形成される。そして一気に加速し、彼方へと消えた。
キム:「艦長、船体が消えました。」

筒状の空間の中を進み続けるドーントレス。機関室のエンジンが稼動している。
パリス:「見て下さい。量子ドライブから発生するエネルギーは、メインディフレクターを囲ってます。」
チャコティ:「それがスリップストリームを可能に?」
「そのようです。」
トゥヴォック:「興味深い。止められそうか?」
「操舵制御にアクセスしてみます。」

ドーントレスはスリップストリームを終えた。パリス:「通常の空間に戻った。」
チャコティ:「ヴォイジャーをスキャン。」
トゥヴォック:「見当たりません。副長、一瞬にして 15光年移動したようです。」

「艦長日誌、補足。高速ワープで 2日をかけ、ドーントレスと合流。アートゥリスは艦隊のメッセージをほぼ復元してくれた。バラバラになったパズルが、ついに完成したのだ。」
会議室。メッセージを聞くクルー。『スリップストリーム技術は、一種の賭けだった。しかし長い年月をかけ、47回のテスト飛行の末、遂に完成にこぎつけたのだ。とはいえ、テスト飛行は 5日のみ。地球へ戻るには、スリップストリーム技術をもってしても 3ヵ月はかかる。不安は免れん。だが我々を信じ、是非とも試してみて欲しい。必要なものは全て揃っている。パワーセルに、食料に、各人の部屋。成功を祈る。3ヶ月後に会おう。』 映像が終わった。
言葉の出ないクルーに、ジェインウェイは言った。「ヘイズ提督※11は信頼できる士官よ。おしゃべりだけど。」
笑いが起こる。ジェインウェイ:「リスクを挙げて、ドクター。」
ドクター:「上陸班の細胞損傷と、生理的ストレスについて調べてみました。皆無です。わずかの異常もみられませんでした。」
「長期的影響は?」
「現在予測中ですが、今のところ心配はないようですね。」
「船の方はどう?」
チャコティ:「かなりいい状態だと思われます。」
トレス:「主要システムを調べましたが、操舵装置を始め、全てヴォイジャーに匹敵します。しかし転送装置は 1台で、シャトルもホロデッキもありません。レプリケーターも。」
ジェインウェイ:「腕を振るってもらうわね、ニーリックス。」
ニーリックス:「願ってもないことです。」
キム:「早く引っ越しましょうよ。」
セブン:「子供じみた焦りは禁物だ。ヴォイジャーは実績のある船だ。簡単に去るのは無謀すぎる。」
「ボーグ・スピリットはどうした。すぐに慣れるさ。」
「ボーグ・スピリットがあるから、客観的になれるのだ。」
トゥヴォック:「一理あるな。ヴォイジャーを乗り捨てることになる。」
チャコティ:「ヴォイジャーも改良次第では、スリップストリームを起こせるんじゃないか?」
パリス:「まあ、理屈では。しかし量子の圧迫に長時間もつとは考えられません。」
ジェインウェイ:「とりあえず試してみて。ヴォイジャーと帰還できるなら何だってやる。ハリー、ベラナ、機関チームを連れて、ドーントレスに行って。スリップストリームドライブを自在に止められるようにして欲しいの。」
トレス:「はい、艦長。」
「その作業が終わり次第、直ちにテスト飛行を開始します。各自十分新しい船に慣れておくように。頼んだわよ。解散。」
ジェインウェイは呼び止めた。「トゥヴォック。いよいよね。」
「本当に。」
「家に帰れる。なのになぜもっと手放しで喜べないのかしら。」
「私の精神鍛練に、感化されたんでしょう。」
笑うジェインウェイ。「そうかもね。あなたはこの奇跡についてどう思う?」
「クルーの安全に関しては、やはり用心するに越したことはありません。」
「私の不安は、いくら安全規約を徹底させたところで、なくなりそうもない。」
「艦長。」
「……あまりにも完璧すぎないかしら。天才エイリアンが何もかも解決してくれた。艦隊からのメッセージは、希望通りのものだった。新しい宇宙船は目の前に用意され、ほかに望みようがない。ベッドさえ用意されてる。ないのは枕元のチョコレートくらい。」
「確かに非常に、いき届いている。」
「…はっきり言えないけど、最初から何かが違ってるような気がして、しょうがないの。」
「アートゥリスが、ヴォイジャーに乗船した時から。」
「その通り。引越しを前提に、ドーントレスを細部に渡って調べて欲しいの。アートゥリスからも、目を離さないで。いいわね。」
「了解。」
「お互い取り越し苦労であることを祈ってましょう。逐一報告を。」


※8: U.S.S. Dauntless
NX-01A ※9: 「データ」と吹き替えしてるような…。date (デイト) のはず

※10: quantum slipstream drive

※11: Admiral Hayes
(ジャック・シアラー Jack Shearer DS9第17話 "The Forsaken" 「機械じかけの命」の Vasodia、第63話 "Visionary" 「DS9破壊工作」のルワン (Ruwon)、VOY第21話 "Non Sequitur" 「現実への脱出」のストリクラー提督 (Admiral Strickler) 役) ヘイズ提督は映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」にも登場。冒頭でボーグの侵攻をピカードに伝えました。ヘイズが乗っていた旗艦はボーグに破壊されたはずですが…生き残っていたんですね。後にも登場。声:村松康雄

「艦長日誌、補足。今のところ、私の懸念を裏づけるような証拠は発見されていない。しかしクルーには、なおも厳密な調査を義務づけ、楽観視を禁じている。この命令に関しては無駄になってくれることを…」
天体測定ラボのセブン。「セブン・オブ・ナイン私的記録、宇宙暦 51981.6。ドーントレスの量子スリップストリーム技術を分析中。ボーグのトランスワープ※12ドライブに似ているようだ。となると、この任務は困難なものになるだろう。クルーは一心に成功を願っている。しかし、私はその反対だ。従って今後は、私は…」
作戦室のジェインウェイ。「…この疑念をよそに、3ヶ月後の自分のことを考えずにはいられない。やはりヴォイジャーでデルタ宇宙域をさまよい、帰路を探しているだろうか。それとも、インディアナの友人を訪ねているだろうか…」
貨物室のセブン。「…セクター001 に戻れたとして、私は人類の文明に適応できるのだろうか。何十億の個体の世界に。」

ドーントレスの機関室で、キムとセブンに指示するトレス。「それじゃ、緊急停止できるか試すわよ。始め。」
キム:「量子フィールドが 90%にダウン。80%。75まで下がってきてる。」
セブン:「50%まで下げる必要がある。」
トレス:「量子フィールドの極性を反対にして。」
段々と音が小さくなっていく。キム:「70%。55%。49%。」
トレス:「やったわ。安全圏に到達ね。」
キム:「故郷に一歩近づいたな。」
セブン:「トゥヴォックが艦首部分に異常がないか、金属分析をしろといっていた。」
トレス:「わかった。あなたたちに任せる。私はブリッジへ。アートゥリスにコントロールシークエンサーの使い方を教えてもらうの。」
「中尉もよほど地球へ帰りたいようだな。」
「よほど? そこまではどうかしら。」
「あなたはマキのメンバーだった。艦隊司令部はあなたに多くの罪の責任を問うに違いない。地球へ戻る利点などないはずだ。」
「もっと明るく考えられない? あたしは帰りたい。死ぬまで宇宙をさまようより、故郷で罪を償いたい。」
セブンは何も言わない。
トレス:「あなたはどう? 早く地球へ帰りたい? 嫌? そりゃそうよね。私がマキの元メンバーなら、あなたは元ボーグだもの。仲良く追放されましょ。…冗談よ、セブン。ただの冗談。ユーモアの勉強でもしたら? 友達を作るのに役立つわ。」 トレスは去った。
キムが呼ぶ。「セブン、ちょっと来てくれないか。」
下に降りるセブン。キム:「この辺で異常なエネルギーサージを探知したんだ。」
「このセクションにパワーコンジットはないはずだ。」
調べ続ける 2人。キムは言う。「君もあの青く輝く星を見れば、一目で好きになると思うよ。思いつく限りの生態系に満ち溢れ、何百という人種が共生してる。ヴァルカン、ボリアン※13、クタリアン※14。」
セブンはキムをにらみつけた。
キム:「…何か気に触ったかな。もちろん、ほかにも選べる惑星はある。」
「悪いが、艦長に話があるので失礼する。」 歩いて行くセブン。
「セブン! ……君と帰れるの、楽しみにしてるよ。」
セブンは、微笑んだ。照れるキム。
依然としてトリコーダーに反応がある。その出所に近づけていく。扉を開け調べていると、突然コンピューターが火花を発し、壁面のモニター表示が揺らいだ。通信を行う。「キムからトゥヴォック。」
『トゥヴォックだ。』
「今ドーントレスにいる。機関室だ。異常と思われる現象を探知した。」
「すぐに向かう。」 ブリッジを出るトゥヴォック。

ため息をつくジェインウェイ。天体測定ラボのスクリーンに、地球が映し出されている。「コンピューター、データブロック 14 ベータを出して。補助ディスプレイ。」
セブンがやって来た。
ジェインウェイ:「セブン、手を貸して。艦隊からのメッセージの最後の部分を復元したいの。」
「アートゥリスは不可能だといっていた。」
「まだあきらめるのは早すぎる。」
「直感か?」
「私が正しければね。新しいアルゴリズムを作ったの。試してみましょう。」
「艦長、私はアルファ宇宙域へ行くつもりはない。」
「……気が進まないのはわかる。150人のクルーに馴染むのも容易じゃなかったんだもの。惑星全体の人間を思えば戸惑うのは当然よ。」
「戸惑っているのではない。人間の中で生きていきたくないだけだ。」
「どう思おうと、あなたはクルーの一員よ。9ヶ月前、ボーグのアルコーヴを出た頃に比べたら、遥かに人間らしくなった。今更後戻りしないで。大きな一歩を踏み出さなきゃいけないこの時に、地球へ、帰りましょう。」
「人間には近づいたが、あなたの思い通りではない。あなたは私を操作しようとした。あなたの文化や、理想にさらし、イメージ通りの人間にしようとしたのだ。だが失敗した。私たちの考えは正反対だ。」
「それはそうね。」
「では私たちの価値観が違うことも認めるべきだ。あなたの宇宙探検へのこだわりは無駄だし、家族的団結など馬鹿げている。この惑星への陶酔ぶりも非合理的だ。」
「あなたが私の期待通りにならなかったことは仕方ない。往々にして意見の相違をみることも。でも今は、言うことを聞いて。あなたの専門知識が必要なの。クルーが故郷へ帰れる可能性を遠ざけないで。」
「関係ない。」
「クルーはあなたに、多くのものを与えてきたでしょ? 今こそお返しをすべき時よ。」
「既に返してる。多くの場面でな。だが今回は断る。」
ジェインウェイは座って、尋ねた。「また集合体に戻る気?」
「わからない。」
「ほかに何か考えが?」
「わからないと言ってる。」
「あなたは私にたった一人でデルタ宇宙域へ放り出してくれと言ってるの。誰に頼まれてもそんな申し出を認めるわけにはいかない。なぜかわかる? 危険だからよ。」
「私は生き抜ける。」
「なぜ? ボーグは完全だから?」
「…その通りだ。」
「いいえ、違う。独立心や優越感からそんなこといってるんじゃない。恐怖が言わせてるの。人間性を超越したからここに留まりたいんじゃなくて、あなたは地球へ戻るのが怖いのよ。」
コンピューターに反応がある。操作するジェインウェイ。「成功したようだわ。データブロックが復元してる。」
モニターに映す。音声はまだ乱れている。「変ね。この部分は既に復元済みのはずよ。」
ヘイズ提督が何かをしゃべっている。
セブン:「追加メッセージがあるのかもしれない。おしゃべりな提督らしいからな。」
ジェインウェイ:「違うわ。インデックスがマッチしない。全く違うメッセージみたいね。」
音声が調整され、ヘイズの声が明瞭になった。『艦隊司令部一同から謝罪を。我々は一丸となって、ワームホールの発見に努め、ひいては君らを、地球へ戻すいかなる方法も試みたのだが、期待には添えなかった。だが、我々が収集した全データを送信する。少しでも君らの役に立てれば幸いだ。わずかでも旅を縮められるよう、安全を祈る。いつの日か会おう。』
セブン:「直感は正しかったようだな。」
ジェインウェイ:「残念ながらね。」
「アートゥリスがメッセージをすりかえたに違いない。」
「してはいけないことをしたようね。ジェインウェイからトゥヴォック。」
トゥヴォック:『はい艦長。』
「私の疑いが、確信に変わったわ。」

そのまま天体測定ラボを出るジェインウェイ。「アートゥリスがメッセージをすりかえてたの。ドーントレスは連邦の船じゃない。」
キムとドーントレスにいるトゥヴォック。「同感です。機関室の隔壁に、異星人の技術が施されていました。特定はできません。」
「アートゥリスはどこ?」
「トレス中尉と、ドーントレスのブリッジにいます。」
『気づかれないよう急行して。私も保安チームを連れてすぐに向かいます。』
「了解。」
「武器の用意を。」


※12: transwarp
革新的な推進技術。VOY第71話 "Day of Honor" 「名誉の日」など

※13: Bolians
文明。TNG第25話 "Conspiracy" 「恐るべき陰謀」など

※14: Ktarians
アルファ宇宙域の文明。TNG第106話 "The Game" 「エイリアン・ゲーム」など

ドーントレスのブリッジで、アートゥリスはおもむろに操舵席に近づいた。ボタンに触ろうとする。「触らないで!」 トレスの声が飛ぶ。「スリップストリームに投げ込まれるとこだわ。」
「ああ、それはごめんだ。クチャ、ミロック。」
「すまなかった? クリンゴン語?」
「覚えたてだ。艦長があなたの言葉のデータベースを見せてくれた。」
トゥヴォックが到着した。
トレス:「私は片言しか話せないの。」
アートゥリス:「もったいない。素晴らしい言語なのに。」
「私には素晴らしすぎて。」
転送音。ジェインウェイ、セブン、そして保安部員たちがブリッジに現れる。
命じるジェインウェイ。「中尉、クルーを退避させて。」
トレス:「艦長。」
「急いで。」 アートゥリスに尋ねる。「説明して。」
「何のことをおっしゃってるのか。」
「艦隊からのメッセージをすりかえたことよ。本物のメッセージを復元したの。あなたが不可能だといってた部分をね。」
「そんな馬鹿な。」
「この船は宇宙艦隊が用意したものじゃない。あなたの船なの?」
「艦長、落ち着いて。私には何のことか。」
「あなたを信じてきたのに。最後まで地球への帰還を夢見てた。あなたはそんな私たちの思いを逆手にとり、私たちの希望を利用したのよ。どうして?」
「確かに何らかの工作が、あったかもしれません。でも私じゃない。この私を責めるのはお門違いです。犯人は彼女だ!」 セブンを指差す。「彼女がアルゴリズムを組み替えていました。2日前に、天体観測室で。間違いありません。彼女がメッセージをすりかえたんです。」
セブン:「嘘をつくな。」
「彼女はあなた方の努力を無にしようとしたんです。私が信じられないなら、証拠を見ればいい。彼女の記録に全て書いてあります。」
ジェインウェイ:「捕まった時のためにあらかじめ用意してたのはお見通しよ。ヴォイジャーの拘束室へ。」
保安部員がアートゥリスに近づく。すると彼は突然、操舵席のパネルの一つを外した。保安部員を殴り飛ばすアートゥリス。もう一人の保安部員が取り押さえようとする。ジェインウェイの合図で、トゥヴォックはフェイザーを撃った。直撃するが、それでもアートゥリスはパネルの中のレバーに手をかけようとしている。必死に押さえる保安部員。だがレバーが引き降ろされてしまった。するとドーントレスのブリッジの内装が見る見るうちに変わっていき、異星人のものとなった。アートゥリスは更にコンピューターを操作し、ジェインウェイたちにフォースフィールドを張る。通信を行うジェインウェイ。「こちらジェインウェイ。至急転送して。」
ヴォイジャーのキム。「転送を妨害しようとしています。スタンバイ。」
転送されるトゥヴォックと保安部員。アートゥリスは操作を続けている。ジェインウェイとセブンも非実体化する。しかし、またドーントレスに戻ってしまった。
キム:「セブンと艦長を転送できなかった。アートゥリスが妨害したらしい。」
パリス:「スリップストリームモードに入ります。」
チャコティ:「追跡しろ。」
無言で操作するアートゥリス。そしてドーントレスは量子スリップストリームに入った。
パリス:「見失いました。」
ブリッジに戻るトゥヴォック。
チャコティ:「トム、改造後のワープコアを使え。追いかけるんだ。」
パリス:「まだテストランも済んでないのに。」
「ぶっつけ本番だ。」

ドーントレスのブリッジ。フォースフィールドの中から、セブンはアートゥリスに尋ねる。「どこへ連れて行く気だ。」
「故郷だよ。」
ジェインウェイ:「どうやってブリッジの内装を作り上げたの?」
「粒子合成※15だ。君らには理解できん。」
「いつもそうやって、罪のない船を食い物に?」
「罪のない? 独善的なセリフだ。艦長らしい。」
「私があなたたちの気に触ることをしたなら言って欲しい。」
「得意の外交術か? その外交術が、我々の世界を破壊した。」
「何のことを言ってるの?」
「お前はボーグの集合体と、取り引きをしたじゃないか。彼らの領域を通過する。その見返りに、奴らの敵を討つ手助けをした。」
セブン:「生命体8472 か。」
「お前の言葉で言えば、そう生命体8472 だ。デルタ宇宙域には、ボーグに苦しめられている種族がいることを考えなかったのか。我々はボーグの全滅を望んだ。なのにお前はそのチャンスをふいにした!」
ジェインウェイ:「私が見た限り、生命体8472 はボーグより脅威的な存在だった。」
「お前に決める権利はない! よそ者のお前なんかに。」
「そんな権利を論じ合っていたら、殺されてしまっていた。」
「我々は、何世紀もの間ボーグを回避し続けてきた。奴らを出し抜き、すんでのところでかわしてきたんだ。だがここ数年ボーグは、我々の防護を崩し始めた。だから生命体8472 が、我々の最期の望みだった。お前らはその望みを奪った! 23の植民地が、わずか数時間で陥落し、監視船は蹴散らされ、嵐になす術はなかった。間もなく何百ものボーグ艦に星系を包囲され、我々は奴らに降伏した。私のように生き残ったのは、わずか 2,000人。私は独り船に乗り、脱出した。幸運にも、生き残って。ボーグは責めやしない。彼らはドローンだ。集合体に従って生きてるに過ぎん。お前が! お前が我々を滅ぼしたんだ。」
「申し訳ないことをしたと思う。でもわかって。何も知らなかったの。」
「何ヵ月もかけてお前を探した。そして監視し、お前に罪を償わせる機会をうかがっていたんだ。そんな時メッセージが届いた。それが、お前の故郷へ帰りたいという欲望をかきたてることは明白だった。だから囮にしてここへ呼び、クルーごとボーグ・スペースへ送って、お前らがボーグに同化されていく様を見る気だったんだ。残念ながら、残ったのは君らだけだが、予定通り出発しよう。数時間もすれば、この船は私の故郷に戻る。ボーグ・スペースの中のな。」
セブン:「そうなれば、お前も同化されることになる。」
「無駄な、心配だ。お前にはこの上ない機会のはずだ。集合体に戻れるんだからな。感謝したまえ。」 アートゥリスは操縦を続ける。ジェインウェイはセブンを見た。


※15: particle synthesis

ヴォイジャーは青い量子フィールドに包まれている。チャコティ:「報告。」
パリス:「全速で追跡。しかし量子バリアを突破できません。」
トゥヴォック:「フィールドパラメーターがコントロール不能。ディフレクターにエネルギーの補充を。」
チャコティ:「ブリッジからトレス。」
機関室のトレス。『わかってる、チャコティ。スタンバイする。補助パワーをディフレクターコントロールに。量子ワープフィールドを安定させて。』
機関部員:「了解。」
揺れが大きくなる。トゥヴォック:「ディフレクター最大。量子フィールドに集中。」
キム:「急いでくれ。船体温度、急上昇。」
スクリーンの映像が、トンネル状の内部に変化した。
パリス:「スリップストリームに突入。」
キム:「構造維持、9%にダウン。1時間以内に船体が歪み始めます。」
「敵船体を発見。現在、接近中です。後ろにつきました。」
チャコティ:「追いつくまでには?」
「2、3分です。」
トゥヴォック:「もっと速度を上げられるか。」
「無理だ。最大です。」
チャコティ:「コース維持。艦長のことだ。もう策を練ってるだろう。」

ジェインウェイは拘束室のフォースフィールドに手を触れた。激しく反応する。「何か案は?」
セブン:「今のところない。」
「何か考えなきゃ。1時間後にはあなたの元家族とご対面よ。それだけは勘弁だわ。もちろんあなたが戻りたいっていうなら別だけど。」
「…その気はないと思う。」
「思ったより頼りない反論だけど、まあいいでしょう。ドローンならこのフォースフィールドを通り抜けられる。あなたにその部分のボーグ・テクノロジーが残ってないかしら。」
「適合するナノプローブを起動させれば、生物電気フィールドを変えられる。頭部インプラントの調節が必要だがな。」
「マイクロフィラメントでできる?」
「恐らく。」
「だったらある。」 ジェインウェイはコミュニケーターを外した。「外に出たら、あのパネルにアクセスしてフォースフィールドを停止させて。その後、機関室に向かいましょう。」
「そしてエンジンを緊急停止させる。」
コミュニケーターから外した、針状の部品を見せるジェインウェイ。
セブン:「十分だ。第3小節と第6小節をつないでくれ。」
セブンは左目の上のインプラントを調節されることを少し嫌がったが、ジェインウェイは調節を始める。「デジャヴーだわ。」
「艦長?」
「この作業から私たちの関係が始まった。9ヶ月前に拘束室で、嫌がるあなたを無理矢理集合体から切り離した。」
「その通りだ。」
「これだけは言っておくけど、あなたに辛く当たってきたのは、怒りからではないの。あなたを乗せた後悔からでもない。艦長だから、常に友達ではいられない。わかる?」
「いや。だがボーグに同化されれば意識は一つになる。その時になったら理解できるだろう。」
手を止めるジェインウェイに、セブンは言う。
「冗談だ、艦長。以前、ユーモアのセンスを学べといっていた。」
ジェインウェイは微笑んだ。「アドバイスを生かしてくれて嬉しいわ。」 また作業に戻る。
「あなたの言う通りだ。」
「ん?」
「ここに留まりたいと願ったのは、恐怖に起因している。私はもはやボーグではないが、まだ人間になりきってもいない。不安だ。私は何者だ。」
「私たちの家族よ。」
「調節は完了した。」
セブンは手をフォースフィールドに当て、通過した。アクセスパネルを操作する。ブリッジではアートゥリスがそれに気づいた。セブンはフォースフィールドを解除する。ジェインウェイは「機関室へ」といい、外に出た。

ドーントレスの機関室。セブンはコンピューターを操作するが、反応しない。「緊急停止装置が、作動しない。」
「ブリッジで妨害されてる。気づかれたのよ。」
「船が速度を上げ始めた。この速度では、あと 12分でボーグ・スペースに到達してしまう。」
「動力配電グリッドにはアクセスできそう?」
「可能だ。」
「止められないなら方向転換よ。右舷スラスターにパワーサージ。」
「この速度で方向を変えれば、船は崩壊する。」
「ボーグに戻りたくないならやって。成功したら航行制御を立て直して。私はブリッジにいる。明日は第1ホロデッキでヴェロシティの再試合よ。忘れないようにね。」
「了解。」

向きを変えるドーントレス。ブリッジで椅子から振り落とされるアートゥリス。はいつくばるようにして椅子に戻り、姿勢を立て直す。元の方向に戻るドーントレス。ブリッジにジェインウェイが入る。「乱暴な運転で失礼。」
「船の速度は落とせても、止めることはできない。あと 4分でジェインウェイ艦長は消え、新たなドローンが誕生する。」
「そうはさせない。」
船が再び揺れ、2人ともよろめく。
ジェインウェイ:「セブンが航行システムにアクセス中よ。操縦法を詳しく説明し過ぎたようね。あなたの悲しみは計り知れないけど、どうかその憎しみを乗り越えて欲しいの。」
「私にあるのは憎しみだけだ。」
「いいえ、生きている限り希望がある。あなたたちの文明や知識、そして誇りは、あなたの中に残っているはずよ。もうやめて。」
しばらく考えているアートゥリス。ボタンの一つを押した。
機関室で作業しているセブンのコンソールが電気を帯び、そして背後の隔壁が爆発した。
アートゥリス:「航行制御を破壊した。もう誰にも止められない、私でさえも。あと 2分でボーグ・スペースだ。」
大音響と共に、激しく揺れるドーントレス。ヴォイジャーが何発もの光子魚雷を発射している。
トゥヴォックは報告する。「命中です。シールドを破壊しました。転送スタンバイ。」
チャコティ:「2人をロックしろ。」
爆発の続くドーントレスのブリッジ。アートゥリスはコンピューターで確認する。「ヴォイジャー。」
ジェインウェイは言う。「一緒に来て。まだ間に合うから。」 転送されていく。
「これを食らえ!」 武器を発射するアートゥリス。だが既にジェインウェイの身体は消え、ビームは通過した。
キム:「転送完了。第2転送室です。」
チャコティ:「スリップストリーム解除。右旋回しろ。引き上げるとしよう。」
ドーントレスの後ろを航行するヴォイジャーは右に曲がり、新たなスリップストリームを作りながら去って行く。

ドーントレスは通常空間へ出た。すぐに多数のボーグ・キューブに取り囲まれる。ブリッジの席に独り座っているアートゥリス。そして通信。『我々はボーグ。お前を同化する。抵抗は無意味だ。』

「艦長日誌、補足。量子スリップストリームは、1時間の後完全に消滅した。我々は今後、二度とこの危険な技術に頼るつもりはない。だが、地球への距離は 300光年縮めることができた。」
ホロデッキ。浮遊する円盤がセブンに当たった。『勝負あり、ジェインウェイ。勝者、ジェインウェイ。』
ジェインウェイ:「もう少しで負けるとこだった。」
「その通りだ。」
「もう一度?」
「天体測定ラボに行かねばならない。仕事だ。」
「仕事? クルーには 2、3日休むように言ってあるはずよ。あなたも含めてね。」
「緊急を要するのだ。ヴォイジャーに害を及ぼさずにスリップストリーム技術が使える方法を探っている。」
「不可能なはずよ。」
「人間は不可能という言葉を使い過ぎる。私はあきらめはしない。」
「2、3日前はこの船を去るって言ってた人が、今じゃ人一倍地球に惹かれてる。」
「ボーグ・スペースに近づいた時、将来を改めて考えてみたのだ。ドローンに戻ることは、避けたかった。」
「後ろを振り返ることも必要よ。自分の中の人間性を認め始めたようね。」
「まだだ。だが、さっきも言った。不可能なことなどない。」
「コンピューター、もう一試合よ。」
カウントダウンと共に、向き合った 2人の間にホログラムのディスクが現れた。それを撃ちぬくセブン。



・感想
第4シーズンをしめくくるにふさわしいエピソード。たまには前後編じゃないのもいいですね。だいぶ前の宇宙艦隊からのメッセージという設定が使われ、「帰還のために新しい船を用意する」というのは、なるほどと感心させられました。ただ、それだと「スタートレック ヴォイジャー」じゃなくなっちゃう?
今回は映像的に楽しめるところも多いです。量子スリップストリームは見栄えが良いし、ホロデッキでのヴェロシティ、ジェインウェイとセブンによる交互の日誌、最後のセブンのアップなどなど。

艦隊の誓いを (できるだけ) 遵守しつつも、ヴォイジャーは既にデルタ宇宙域に大きな影響を残していますね。


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