USS Kyushuトップに戻る

ヴォイジャー 特別エピソードガイド
第147話「聖域ユニマトリックス・ゼロ」(後)
Unimatrix Zero, Part II

dot

・イントロダクション
※1ボーグ戦略キューブ。
多数のドローンが活動している。
ボーグとなったトゥヴォックも歩いている。ふと目の前の光景が乱れ、緑色に包まれた。立ち止まるトゥヴォック。次の瞬間には元に戻った。また歩き出す。

同化されたトレスはコンピューターの前で作業している。
隣にトゥヴォックがやって来た。「中尉。」
「大丈夫よ。」 機械的な声だ。
「音声が加工されている。」
「心配ない。艦長は?」
「ここにはいない。引き離されたようだ。中枢部へ急いだ方がよさそうだ。」
2人は共に行動を始めた。

ドローン化したジェインウェイのこめかみに管状の機械があてられ、部品が装着される。目の横に取りつけられたライトが、青く光り出した。


※1: このエピソードは第7 (最終) シーズン・プレミアです。宇宙暦は 54000台、西暦は 2377年になります。次シリーズの「エンタープライズ」は 22世紀が舞台なので、現時点ではこの年がスタートレック本編で描かれた最後の年になります

・本編
チャコティはパリスに尋ねた。「時間は。」
「17分経過。もう連絡があってもいい頃だ。」
「ドクター。」
ドクター:「脳機能は安定しています。」 モニターに脳波が表示されている。
キム:「キューブがコースを変えました。コース 1-2-1、マーク 6。」
パリス:「コースと速度を合わせています。※2

天体測定ラボ。
スクリーンには戦略キューブが映っている。
セブン:「推進システムに与えたダメージは回復している。2時間以内にはトランスワープが可能になるはずだ。」
チャコティ:「ユニマトリックス・ゼロへ行ってくれ。ウィルスがまかれたか、君の友人に聞いて欲しい。」
ため息をつくセブン。
チャコティ:「問題でも?」
「いや。ただ彼は友人ではない。」
「では知人にしておこう。何があったか知らんが、今は任務に集中するんだ。」
「……わかっている。」 出て行くセブン。

第2貨物室に入ったセブンは、そのままアルコーヴへ向い、再生に入った。

ユニマトリックス・ゼロでは、クリンゴン人のコロックがヒロージェンに指示を出している。「仲間に北東部周辺をパトロールさせてくれ。まだドローンがいるかもしれん。」
「了解。」 ヒロージェンは向かった。
戻ってきたアニカに尋ねるコロック。「約束のウィルスはどうなった。」
「今艦長が準備している。」
「よーし。ボーグはここへの攻撃を強め、我々の身元を割り出している。」
辺りを見渡すアニカ。
コロック:「お前の恋人なら、ここにはいないぞ。」
「恋人なんかじゃない。再生中ではないのだろう。」
「もしくは死んだかだ。とっくに戻っていい頃だが、誰も見かけていない。」 アニカの肩を荒々しくつかむ。「戦闘中に死んだのなら、名誉なことだ。手を貸してくれ。」
2人で近くに倒れていた木を担ぐ。
コロック:「心の中で何かが葛藤しているようだなあ。」
「私の心は正常に機能している。」
木を運び終わった。
コロック:「戦いを前にした戦士として、一つお前に忠告しといてやろう。時には自分の心を敵とみなして扱う必要がある。戦闘に集中するためにな。」
「…心に留めておこう。」
近くで音がした。ユニマトリックス・ゼロに帰ってきた者だ。
セブン:「ウィルスはまかれたか。」
異星人※3:「よくわからない。」
「何か覚えているか。どの船に乗っていたとか。」
「いや、何も。」

戦略キューブ。
トゥヴォックとトレスは、他のドローンに紛れて通路を歩いている。
トレス:「中枢部はこの向こうよ。」
歩いてきたドローンは、フォースフィールドを抜けて奥へ行った。
トレス:「これがセブンが言ってたシールドエミッターだわ。」
うなずくトゥヴォック。フィールドに手を当てると、反応する。だがボーグである 2人は、そのまま突き抜けることができた。
奥に独りで作業をしているドローンがいる。
トレス:「あのハッチを通らなければ。」
トゥヴォック:「あのドローンを停止させよう。」 背後から近づき、肩に手を触れようとする。
気配に気づいたボーグが振り返った。それはジェインウェイだった。
トゥヴォック:「艦長!」
ジェインウェイ:「もうドローンよ。2人とも大丈夫?」
トレス:「はい。」
「ここのパワーグリッドを閉じなければ、中枢部にアクセスできないの。クイーンに気づかれる。ほかに方法は?」
「1次アクセスポートは、メインパワーグリッドとつながってなかったと思います。」
「どこに?」
「ここから 30メートルのところです。」
トゥヴォックに、無数のボーグの声が聞こえてきた。呆然とする。
ジェインウェイ:「トゥヴォック? 少佐?」
声は小さくなった。
トゥヴォック:「集合体の声が。」
ジェインウェイ:「神経の抑制が弱まってるのね。」
トゥヴォック:「大丈夫です。」
歩き始める。

ユニマトリックス・ワン。
ボーグ・クイーンが言う。「ヴァルカン人の声が、確かに聞こえた。だが消えた。なぜだ。ほかの声も聞こえない。」


※2: 「コースと速度を合わせろ」と訳されています。自分が操舵士なのに…

※3: 異星人男性 Alien Man
(Clay Storseth) 種族名不明

ユニマトリックス・ゼロをボーグが捜索している。一人のドローンが物音に気づいた。逃げる異星人を追いかける。
地面すれすれに縄が張ってある。やって来たドローンは、それに引っかかった。罠が作動し、大木が体にぶつかる。倒れたボーグは消えた。
近くにはアクサムが隠れていた。別の場所で罠が動く音がした。向かうアクサム。
吊り下がった網にかかっていたのは、アニカだった。
アクサム:「ここは任せてくれ。」
部下は歩いて行く。アニカに近づくアクサム。「居心地は?」
「早く降ろせ。」
「簡単に言ってくれる。我ながら、うまく作り過ぎたようだな。ここで何してた。」 網を切り始める。
「お前を探してた。…コロックが心配してる。」
「コロックの柄じゃないなあ。」
「お前が行方不明だと。」
「ご覧の通り、罠を仕掛けてたんだ。」
「高度な技術を要するとは思えんな。」
「効果はある。待ってろ。」
網が切られ、アニカは地面へ降りた。体を支えるアクサムと、顔が近づく。
アニカ:「キャンプに戻らなくては。ウィルスの報告を待つ。」
「一緒に行くよ。また罠に…かかっちゃ困るから。」
「好きにすればいい。」
武器を拾うアクサム。「僕が戻れば、コロックも喜ぶだろうし。」

戦略キューブ。
ジェインウェイが見張り、トレスが作業している。
トゥヴォックにボーグ・クイーンの声が聞こえる。『トゥヴォック。どこにいるのだ、トゥヴォック。』
気づくジェインウェイ。「少佐。」
トゥヴォック:「宇宙暦 38774※4。ヴァルカニス・ルナコロニー※5。出生日時と場所です。個人データを思い出すことで、集中力を持続できる。艦長、私が集合体に屈したら、危険な行為をとるはずです。その時は停止させて下さい。」
「そんなことをすればあなたは死んでしまう。集中しなさい。いいわね、トゥヴォック。これは命令です。」
トゥヴォックはうなずいた。
トレス:「艦長。アクセスポートにバイパスしました。」
操作すると、扉が開いた。
トレス:「中枢部へようこそ。」
中に入る 3人。最後尾を歩くトゥヴォックは、またもクイーンの声を聞く。『トゥヴォック。どこにいるのだ、トゥヴォック。』
近くの壁に映った自分を見て、自制を取り戻すトゥヴォック。

ヴォイジャーの作戦室。
チャコティが座っている部屋へ、パリスが入った。「いいですか。」
「何か用か?」
「派遣チームのことです。予定では 2時間のはずが、もう 2時間半です。」
「ドクターがモニターしてる。心配はないだろう。全てが…計画通りにいくとは限らん。」
「今ふと思ったんですが、今はあなたが艦長役。トゥヴォックはここにいない。となると順番から言って、僕は副長だ。」
「何が言いたい。」
「あなたに意見するのは僕の務めだ。手遅れになる前に 3人を撤退させるべきだ。」
「忠告は感謝するが、結論は私が下す。待つべきだ。」
「どのくらい。1日? 1週間?」
「もちろん任務が完了するまでだ。」
「彼らが命を落としてもいいのか。」
「言いたいことはわかった。」
「そうは思えない。」
出て行こうとするパリスを呼びとめるチャコティ。「中尉。艦長への忠告は時に命取りになる。わかってるのか?」
「お手本が目の前にいるから。」
「君の心配はよくわかる。だが私を支えて欲しい。」
「わかりました。」

中枢部の中央に、箱状のコンピューターがある。開けると、一面緑色の中に無数の針のような物が見える。
ジェインウェイ:「ウィルス、ダウンロード。」
トレスは腕を近づけ、同化チューブを突き刺した。
トゥヴォックは再びボーグ集合体の声を聞いていた。
ボーグ・クイーンの声。『トゥヴォック。』
トゥヴォック:「私の娘の名は、アシル※6。出生地は…出生地はトゥパール※7。」

その声に同調して、クイーンも話す。『出生地はトゥパール。記憶を分かち合った。お前は我々の一部。抵抗は無意味だ。』

トゥヴォックも声を合わせた。『抵抗は無意味だ。』

ヴォイジャーではドクターが異状を報告する。「トゥヴォック少佐に問題発生。シナプシスの経路が不安定になってます。」
チャコティ:「もっと接近しろと言ったら、我が副長は同意してくれるかね?」
パリス:「もちろんです、艦長。」
ヴォイジャーはワープに入った。

チューブを戻すトレス。コンピューターのパネルを元通りにする。
ジェインウェイ:「早くここから出て、ヴォイジャーに連絡を。」
だが 2人の前にトゥヴォックが立ちふさがった。
ジェインウェイ:「あなたはトゥヴォック少佐よ。連邦宇宙艦ヴォイジャーの戦略士官なの。私は艦長よ、どきなさい。これは命令です。」

クイーンは言った。「彼女は必要ない。」

トゥヴォック:「……艦長、私を…停止させて下さい。」
ジェインウェイは手を差し出そうとしたが、フォースフィールドに跳ね返された。
トゥヴォック:「私は、スリー・オブ・トゥウェルブ。」

尋ねるクイーン。「どこにいるトゥヴォック。」

トゥヴォックは辺りを見る。

映像がクイーンの前に映される。「中枢部か。」

すぐに何人ものボーグがトゥヴォックの後ろにやってきた。逃げるジェインウェイとトレス。

操縦するパリス。「距離、4万キロメートル。」
チャコティ:「ハリー。」
キム:「中枢部にはシールドが張られており、ロックできません。」
「続けてくれ。更に接近。」

トレスはジェインウェイを先導する。「こっちです。」
だがトゥヴォックが前に立った。抵抗しようとするトレスを殴り倒す。
逃げるジェインウェイを、トゥヴォックは執拗に追う。どの道もボーグにふさがれた。ついに捕まったジェインウェイは、連れて行かれる。

ヴォイジャーの映像を見つめるクイーン。「帰るのはまだ早い。」

戦略キューブを追うヴォイジャー。
チャコティ:「シールドジェネレーターを狙え。フェイザー砲、用意!」
パリス:「副長。」
戦略キューブから武器が発射され、向かってきている。
チャコティ:「全シールド装備。衝撃に備えろ。」
キム:「誰か戦略コントロールにアクセスしています。シールド、ダウン!」
「回避行動を取れ!」
ボーグの武器はヴォイジャーを直撃し、外殻を破る。
爆発はブリッジにも起こった。
ドクター:「センサーが切れた。3人を見失いました。」
キム:「船体に亀裂。第5、6、7デッキ。」 爆発は収まらない。
チャコティ:「撤退だ。」
パリス:「3人を置き去りにはできない!」
「アクセスコードを読まれてるんだ。脱出するしかない。」
悔しがるパリス。

「ありがとう、トゥヴォック。」 クイーンはゆっくりと歩き出したが、ふと立ち止まった。「声が聞こえない。空間グリッド、96 の 5。空間グリッド、1-8-2 の 12。何百もの声が、何千もの声が。」
クイーンの指示で、前方のパネルが開く。中にある中枢部と同じ無数の針。だが緑色の針が、次々と黒くなっていく。
すぐ近くで作業をしているボーグに、クイーンは話しかけた。「お前の声が聞こえん。なぜ聞こえんのだ。」
ドローンはクイーンに向き直った。
クイーン:「集合体から離れたのか? 説明しろ。」
無言のボーグ。
クイーン:「答えるのだ!」
「嫌だ!」 ドローン※8はクイーンに襲いかかろうとしたが、フォースフィールドに阻まれた。
他のボーグに連れて行かれながらも、ドローンはクイーンに向かって叫んだ。「俺は独りじゃない。お前に俺たちは止められない!」


※4: これをそのまま採用すると 2361年。今は 2377年ですから、16歳?! 本来は 2294年生まれの 113歳のはずです。仮に一桁ずらして 3877.4 でも一致しません。トゥヴォックはかなり混乱していたようです

※5: Vulcanis Lunar Colony
ルナ=月ということですから、ヴァルカン星の衛星上にあるコロニー生まれということでしょうか?

※6: Asil

※7: T'Paal

※8: 隔離ドローン Errant Drone
(Andrew Palmer 映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」のボーグ役。DS9第129話 "Favor the Bold" 「ディープ・スペース・ナイン奪還作戦(前編)」にも出演) 声:大場真人

戦略キューブ。
トゥヴォックたちドローンに連れて行かれたジェインウェイは、アルコーヴの中へ入れられる。フォースフィールドが張られ、体全体がスキャンされた。

ユニマトリックス・ゼロ。
筒状の機械の中に、ジェインウェイの姿が現れた。ボーグとしてではなく、宇宙艦隊の制服を着ている。
クイーンが話しかけた。「転送波を調節し、元の姿を復元してやった。人間は虚栄心の固まりだ。」
「なぜ私がここに?」
「お前は甚大な被害を起こしている。自分の目で確かめろ。」 クイーンの視線の先には、倒れたままのボーグがいる。「彼が死んだのはお前のせいだ。お前が集合体から引き離した。」
「殺す必要はないはずよ。」
「彼は混乱して、怒っていた。仕方なかった。死ぬのは彼だけじゃない。嫌ならウィルスの中和方法を教えろ。」
「悪いけど、中和方法はまだ見つかってないの。」
「ならばヴォイジャーを同化する。病原体を作ったのなら、治療法もだ。」
「あなたがヴォイジャーに近づいたら、ドクターのプログラムを削除しろと副長に…」

「…命じた。レジスタンスは既に進行中よ。何千人ものドローンが立ち上がるのも、時間の問題。」 戦略キューブではボーグの姿のままのジェインウェイが、ドローンに向かって言葉を発している。トゥヴォックが見ている。

クイーン:「成功するはずはない。」
「そうね。そうかもしれない。でもかなりのダメージは与えられるはず。」
「そうだ、かなりのダメージをな。」
2人の間にスクリーンが表示された。一隻のボーグ・キューブが映っている。
クイーン:「空間グリッド 9 の 4。キューブ 6-3-0。乗組員 6万4千ドローンだが、既に 3人の声が聞こえん。お前のレジスタンスに加わったに違いない。彼らは船を破壊し、ほかのドローンを解放する気だろうか。私にはわからん。既に声が聞こえないからだ。…自爆装置、始動。」
映像のキューブは光を発し、爆発していく。
クイーン:「効果的な解決法だろ?」
ジェインウェイはクイーンを見た。
クイーン:「空間グリッド 0-9-1、スフィア 8-7-8。乗組員 1万1千ドローン。既に…1人だけ声が聞こえん。選択の余地はない。全員を黙らせるしかない。」
映っていたボーグ・スフィアは、またも爆発し木っ端微塵になった。ジェインウェイはスクリーンから目を離した。
クイーン:「さぞ動揺していることだろう。宇宙艦隊士官※9として、お前は命に重きを置く。ドローンでもな。一体あと何人犠牲にしたいのだ? 何千、何万。止めることもできるぞ。お前に外交官としての役目を果たして欲しい。得意分野の一つのはずだ、交渉はな。」
「続けて。」
「ドローンを集合体に戻すのだ、そうすれば破壊を止める。」
「誰一人同意するはずはない。」
「彼らはもはや個人。選択することができる。何を恐れているのだ、艦長。彼らが同意するのをか? 無理もない。やっとボーグにダメージを与える方法を発見したのだ。そのためにドローンを利用した。」
「本気で彼らと交渉したいのなら、ユニマトリックス・ゼロへ行くべきね。ドローンを送れるのなら、自分だって行けるはずでしょ? それとも彼らが必死で守ろうとしている、集合体から離れる心地よさを知ってしまうのが怖いのかしら。」
次のキューブが映し出された。
クイーン:「答えろ! 交渉するか、もっと多くの犠牲者を出すか!」
「…最後には集合体全体を破壊することになるでしょうね。」
クイーンは何も言わない。

損害を負ったヴォイジャー。
ブリッジには蒸気が噴き出している。セブンが戻ってきた。「何人かのドローンが、再生後もユニマトリックス・ゼロの記憶を保持したままと報告を。ウィルスが広まったらしい。」
チャコティ:「よし、彼らにも協力を頼もう。派遣チームは、まだ捕らわれたままだ。」
キム:「見ての通り救出するめどは一向に立っていない。」
パリス:「一眠りして、キューブに仲間が乗ってるか、探ってくれ。」
チャコティ:「もし乗ってるなら、手を貸して欲しい。我々の唯一の味方だ。」
ドクター:「寝る前にちょっと、アルコーヴを調整させて欲しい。」
セブンと共にターボリフトに乗る。

コンピューターを調整するドクター。「この危機を乗り越えたら、もっと持続性のある改良を図ろう。より長く、ユニマトリックス・ゼロにいられるように。君は恵まれているぞ。2つの人生を送れる人間など、そうはいない。」
セブン:「この危機を乗り越えたら、私はユニマトリックス・ゼロとのリンクを絶つ。」
「どうしてだね?」
「……ある人物との間に問題を抱えているからだ。」
「アクサムか。……彼の名を呼ぶと、瞳孔が 1ミリ近く広がり、顔の毛細血管の血流が増す。両方とも、感情的な反応に関係がある。」
「……アクサムと私には、明らかに関係があった。」
「そうか。恋愛関係?」
ため息をつくセブン。
ドクター:「また瞳孔が拡張したぞ。」
「…お前の診断は正しい。」
「…そうか。皮肉だな。ずっと君に人を愛するという感情を教えてきたのに、既にもっていたとはな。」
「もうない。」
「機械にはちゃんと現れてる。……君は人の好みが非常にうるさい方だ。だからこそ、我々は友人になれた。もし君がアクサムを愛していたとしたら、彼は相当価値のあるという男にならないか?」
「確かに彼は…誉めるに値する。」
「君にしては、すごい誉め言葉だ。相反する感情をもつのは無理もない。君は内戦の真っ只中にいるんだ。だがいつか、このロマンスを復活させたいと、願う日がくるかもしれん。そうだろ? 現実の世界で会うことだってありうる。」
コンピューターを操作するドクター。セブンはアルコーヴに入る。
ドクター:「これだけはアクサムに伝えたい。非常にラッキーな男だ。」
目を閉じるセブンを、ドクターは見つめていた。

ユニマトリックス・ゼロの住人の前で話すアクサム。「集合体は新たな方法で攻撃し始めた。この 3時間で、ボーグ艦 11隻が自爆に追いこまれている。」
コロック:「戦略を立てる必要がある。集合体の心臓部を攻撃するのだ。」
「ターゲットは 1次ユニコンプレックス。クイーンの集合体へのコントロールを絶ち切れれば、僕らにも戦闘体制を整えるチャンスはある。」
アニカ:「もう一つ目的がある。派遣チームの救出だ。」
コロック:「助ける必要はない。彼らのために死んでいった者がいる。」
「だが見殺しにはできない。」
アクサム:「その通りだ。彼らは僕らのために、命を懸けた。」
コロック:「我々には時間がない。」
「これは名誉の問題だ、コロック。君らの種族になら、理解できるはずだ。」
うなるコロック。「付近にいる船に仲間が乗っているか、確認してやる。」
歩いて行くコロックとローラたち。
アニカはアクサムに近づいた。「ありがとう。」
「せめてこれくらいしないと。」 無言のまま、歩き出すアクサム。
「どうした?」
「僕は流動空間※10の境界をパトロールする、偵察船に乗っていた。銀河の反対側にいる船だ。」
アニカは立ち止まった。「……そうか。会えることを望んでいたのにな。現実の世界で。」
「……僕もだ。…現実の世界でできることを見つけたよ。生命体8472 とコンタクトを取って、戦闘に加わるよう説得してみる。」
「ボーグの名を聞けば、きっとのってくるだろう。……ヴォロソン峡谷※11の約束は守れないな。」
「ヴォロソン?」
「集合体から解放されたら見たいものリストの 1番に挙げた峡谷だ。忘れたのか。」
「流動空間をその上に加えるとしよう。……ここで会えることに変わりはない。」
「……以前はそれでよかった。」
「今は?」
アニカはアクサムの手を握った。そして、二人は口付けを交わす。


※9: 「宇宙連邦士官」と吹き替え

※10: fluidic space
有機流動物質で満たされた空間連続体で、我々の宇宙とは違った次元。生命体8472 の本拠地。VOY第69話 "Scoripion, Part II" 「生命体8472(後編)」に登場

※11: Vorothon Gorge

ユニマトリックス・ゼロで、異星人の男の子たちが遊んでいる。「どこなの?」 「ここだよ!」
走っていった子供。男の子は茂みの中を這って進む。
その前に立っている者がいる。ボーグ・クイーンだ。「怖がらなくていい。立って顔をよく見せろ。従うのだ。」
立ちあがる男の子。「あなたも機械人間だ。またいじめに来たの?」
「…そんなことはしない。助けに来たのだ。お前たちを。」
「でもあなたたちは、僕らを…何だっけ。」
「同化すると? そうだ。だが恐れることはない。友達を作るのは好きだろ?」
うなずく男の子。
クイーン:「同化された者は全て友達になれる。お互いが考えていることが全員にわかるのだ。」
「それって楽しい?」
「…ああ。とてもな。」 近づくクイーン。「私もお前と同じ年頃の時同化され、最初は不安だったが、仲間の声が聞こえ始め、考えがわかると、何も怖くなくなった。」
「パパやママは恋しくない?」
「ここにいる。私のそばに。我々の一部だ。彼らの声が聞こえる。両親と一体になりたくないか、寂しがっているぞ。会いたいと言っている。」
「僕も話せるの?」
「すぐにな。だがその前に、もっとここを知っておきたい。」
「僕、森中を見渡せる場所を知ってるよ。」
クイーンは手を差し出した。「案内してくれ。」
手を握る男の子。

眼下に森が広がっている。
男の子:「すごく綺麗でしょ。」
クイーンは何も言わなかった。

ユニマトリックス・ワン。
ボーグ・クイーンはジェインウェイに話しかけた。「お前の忠告を聞いたぞ。ユニマトリックス・ゼロへ行ってきた。予想より遥かに原始的だった。ボーグの完璧な世界よりあんな未開の地を好むとはな。」
ジェインウェイの映像が乱れる。「もう少し長くいれば、わかったかもしれない。」
「あそこはただの…幻想に過ぎん。」
「あそこに行く者にとっては現実なの。彼らはだまってあきらめたりしない。」
「それはどうかな。」
クイーンの近くに、コンピューターの画面が表示された。
クイーン:「我々の最新の発明品だ。何かわかるか?」
首を振るジェインウェイ。「いいえ。」
「わかるはずだ。お前のナノウィルスを少々改造した。突然変異のドローンを攻撃するようにしたのだ。一度放出されれば、彼らの自動機能を侵食する。全員数分のうちに死ぬ。」
「どうやって感染させるの? 彼らは集合体からもう解放されている。中枢部とリンクしていなければ、感染させられない。」
「わかっている。だが別の方法がある。ユニマトリックス・ゼロへ行き、私がこの手でまいてくる。考え直すなら時間をやろう。全てはお前にかかっている。」
「私に?」
「彼らが集合体に戻るのなら、命は助けてやる。説得するのだ。もううちに帰る時間だと。お前には多くの死を償ってもらう。何千の命を救うのだ。決断しろ。」

ヴォイジャーのブリッジ。
チャコティ:「もう一度やってみよう。少尉。」
照明が戻る。
キム:「ワープコア、オンライン。ナビゲーションアレイ、シールド、20%。」
ニーリックスもブリッジにいる。「センサー戻りました。短距離オンリーです。」
チャコティ:「上出来だ。派遣チームの位置を確認。」
また照明が暗くなった。
パリス:「今度は何だよ。」
キム:「誰かがホロシステムにアクセスしてます。」
チャコティ:「発信源は。」
「ボーグです。」
ドクターの通信。『ドクターからブリッジ。』
チャコティ:「どうした。」
『あなたとセブンに会いたがっている人がいます。すぐにこちらへ来て下さい。』

医療室に入るチャコティとセブン。中には、ジェインウェイが立っていた。ホログラム映像だ。
チャコティ:「艦長。」
ジェインウェイ:『ボーグが私に妥協案を提示させるためにこのリンクを確立したの。』
「どういう案です?」
『彼らは突然変異したボーグを殺す、ナノウィルスを…』

「…開発した。」 ボーグの姿のジェインウェイが話している。「それをユニマトリックス・ゼロにまき散らす準備を整えてる。全てのドローンが集合体に戻り…」

『…再び同化されなければまくと言っている。』
セブン:「それは妥協ではない。降伏だ。」
『これ以上の命を犠牲にすることはできない。少なくとも、彼らはドローンとして生きられる。ユニマトリックス・ゼロは、もう存在できないと伝えて。これは命令よ。……私の言うことがわかった? 副長。』
チャコティ:「…はい、艦長。」
映像は消え、照明が明るくなった。
ドクター:「最善は尽くしました。」
「まだ終わってはいない。」 セブンに尋ねるチャコティ。「ユニマトリックス・ゼロのリンク周波を絶ち切れるか。」
ドクター:「副長。さっきの艦長命令は。」
「わかってる。これから実行する。セブン。」
セブン:「できると思うが、なぜだ。」
「聞こえたろ。ユニマトリックス・ゼロは存在できない。」
船が揺れ出した。
チャコティ:「チャコティからブリッジ。報告。」

報告するパリス。「左舷前方にトランスワープコンジット。」
スクリーンを見るニーリックス。「中尉。」
ボーグ・スフィアだ。
キム:「ボーグ艦が針路を妨害。」
パリス:「回避行動を取る。戦闘配置につけ。」
ニーリックス:「呼びかけてます。」
「チャンネルをつないで。」
スクリーンに、クリンゴン人のボーグが映った。『宇宙船ヴォイジャー。俺はコロック将軍だ。この船は私の指揮下にある。お前たちの戦闘に加勢に来た。』



モニターにヴォイジャーが映っている。
ボーグ・クイーン:「部下がお前を救出に来たようだ。うまく説得したようだな。」

連絡するチャコティ。「チャコティからセブン。領域に突入。」

セブン:「スタンバイ。」
天体測定ラボのスクリーンに、周波数が表示されている。
「周波数を切り離した。」

キムに尋ねるチャコティ。「コロックは?」

星雲内にいるボーグ・スフィア。
コロック:「エミッター、準備 OK。」
チャコティ:『インターリンクの周波数を送った。』
周波数が表示される。
コロック:「届いてる。」

チャコティ:「合図を待て。」

ユニマトリックス・ゼロで説明するアクサム。「再生サイクルを終えなければならない。もうここにはいられないのだ。」
ローラ:「ここはどうなってしまうの?」
「この聖域を離れて、それぞれ戦うのだ。今はこうするしかないんだ。」

報告するパリス。「領域突入。」
チャコティ:「シールドにフルパワー。全兵器、オンライン。ヴォイジャーからコロック。時間だ。」

操作するコロック。
ボーグ・スフィアの円形のエミッターが稼動する。

セブンの操作により、ヴォイジャーのディフレクターも動き出した。

そしてユニマトリックス・ゼロでは、森のところどころが裂け、光が溢れ出した。
アクサム:「早くここを去るんだ。」
消える住人たち。アクサムは独り、周りを見渡す。

周波数をチェックするセブン。「ブリッジ。成功だ。ユニマトリックス・ゼロは消滅した。」

チャコティ:「了解。ヴォイジャーからコロック。今だ。」

クイーンは振り向いた。「奴らは何をしている。」
ジェインウェイ:「ユニマトリックス・ゼロを破壊したかったんでしょ? 私たちが協力してあげたわ。」
モニターの周波数に、同じく乱れが生じている。
クイーン:「ウィルスをよこせ!」
「もう遅い。あそこには誰もいない。」
「これがお前の言う妥協か。」
「私はボーグに妥協する気なんかない。」
ジェインウェイのあごに手を突き出すクイーン。しかし、その手を下ろした。

星雲を出たボーグ・スフィアは、戦略キューブへ近づく。
コロック:「キューブのシールドを探って攻撃しろ。」
操作する部下。
スフィアが戦略キューブへの攻撃を始めた。

ジェインウェイの映像が乱れ始める。それを見るクイーン。

ヴォイジャーも光子魚雷を命中させる。ボーグ・スフィアとヴォイジャーを攻撃する戦略キューブ。
中ではトレスが一人で行動していた。爆発が起こる。
コンピューターを操作し、ヴォイジャーの映像を見る。

セブンは天体測定ラボを急いで後にした。

ヴォイジャーのブリッジでも爆発が続く。
ニーリックス:「派遣チームが見つかりました!」
キム:「生体信号をキャッチ。」
チャコティ:「ロックしろ。」
「内部シールドを破れません!」
「ヴォイジャーよりコロック。状況は。」

爆発が起こるボーグ・スフィア内。
コロック:「辛抱しろ、副長。奴らは補助シールドグリッドを調整中だ。こちらもそれに合わせて対抗してる。」

貨物室に駆け込んできたセブンは、すぐにアルコーヴに入る。

破壊されゆくユニマトリックス・ゼロにアニカが現れた。辺りを探す。
そして、下に広がる聖域を見つめているアクサムに近づいた。
アクサム:「ここにいてはいけない。」
「お前もだ。」
抱き合う二人。
アニカ:「ああ…私のせいでもう会えない。」
「違う。そんなことない。現実の世界で出会うチャンスを作ったんだ。」
「もう会えるわけはない。」
「いや。必ず見つける。」
もはや全ての森が消えつつある。
アニカ:「アクサム!」
離れるアクサム。「必ず見つける。」
消えた。セブンも去る。

作業をしているボーグ。突然トレスに棒で殴られた。
そのコンソールを使うトレス。

戦略キューブの攻撃が、ボーグ・スフィアに注がれる。
コロック:「サブグリッド 40 の 2 のシールドが不安定だ。集中攻撃しろ!」
波状攻撃をかけるヴォイジャーとスフィア。

クイーンが見ている前で、ジェインウェイの映像が消えた。
ヴォイジャーとボーグ・スフィアの映像を見るクイーン。
目を閉じた後、命じた。「自爆装置、作動開始。」

ヴォイジャーのスクリーンに、爆発を始める戦略キューブが映る。
パリス:「敵のシールド、ダウン。」
チャコティ:「脱出だ!」
大爆発を起こす戦略キューブ。その衝撃波に、ボーグ・スフィアやヴォイジャーも飲み込まれる。
ブリッジではコンソールの爆発が起こる。

大きく揺れる転送室。台の上には 3人立っている。すぐに控えていたドクターたちが近づく。

ヴォイジャーと並行して飛行するボーグ・スフィア。
『医療主任日誌、宇宙暦 54014.4。派遣チームがヴォイジャーに戻ってから、48時間が経った。神経抑制剤を使用していたため、ボーグ・テクノロジーはほぼ完全に摘出でき、艦長とベラナは快方に向かっている。だがトゥヴォックは、回復にもう少し時間がかかるだろう。』
医療室。
ドクターはトゥヴォックを診察している。
元の姿に戻ったジェインウェイは、ベッドの上にいる。入ってきたセブンがパッドを渡した。「コロック将軍は船の修理を終えて、集合体から解放されたドローンが指揮する、数隻のボーグ艦と接触を図っている。」
痛みに声をあげるジェインウェイ。「ああ…。背骨のクランプは取り除いてもらったけど、まだホヴァーボールはできそうもないわ。今後私があなたに手加減しそうになったら、今日のことを思い出させてね。」
「了解した。」
「よかった。聖域が消えても、レジスタンスの活動は続いてるようね。集合体が生まれ変わることを祈るわ。」
「コロックは定期的にヴォイジャーに…情報を送ると言ってる。」
「お友達から連絡は?」
「ない。だが期待もしていない。アクサムの船は、ベータ宇宙域の僻地にある。」
うなずくジェインウェイ。
セブンは言った。「……もし今後私が、彼を友達以上でないと言ったら、今日を思い出させて欲しい。」
ジェインウェイは少し微笑んだ。



・感想
ついにヴォイジャーも最終シーズンとなりました。その最初の話となる後編ですが…至って普通の話に終わっています。
何といっても、冒頭でいきなりジェインウェイたちが完全に同化されたのではないことがわかってしまいます (ほとんど前編の最後でわかってたようなものですが…)。あとはセブンの恋人ネタが続き、最後の戦闘シーンは迫力があったものの、印象が薄い感じがします。前シーズンの "Equinox" 「異空生命体を呼ぶ者達」は後編が良かったのですが、今回はそれより前の「なし崩し的な後編」に戻ってしまったようです。


dot

previous第146話 "Unimatrix Zero, Part I" 「聖域ユニマトリックス・ゼロ(前編)」 第148話 "Imperfection" 「セブンの涙」previous
USS Kyushuトップ | ヴォイジャー エピソードガイド