ユニマトリックス・ゼロをボーグが捜索している。一人のドローンが物音に気づいた。逃げる異星人を追いかける。
地面すれすれに縄が張ってある。やって来たドローンは、それに引っかかった。罠が作動し、大木が体にぶつかる。倒れたボーグは消えた。
近くにはアクサムが隠れていた。別の場所で罠が動く音がした。向かうアクサム。
吊り下がった網にかかっていたのは、アニカだった。
アクサム:「ここは任せてくれ。」
部下は歩いて行く。アニカに近づくアクサム。「居心地は?」
「早く降ろせ。」
「簡単に言ってくれる。我ながら、うまく作り過ぎたようだな。ここで何してた。」 網を切り始める。
「お前を探してた。…コロックが心配してる。」
「コロックの柄じゃないなあ。」
「お前が行方不明だと。」
「ご覧の通り、罠を仕掛けてたんだ。」
「高度な技術を要するとは思えんな。」
「効果はある。待ってろ。」
網が切られ、アニカは地面へ降りた。体を支えるアクサムと、顔が近づく。
アニカ:「キャンプに戻らなくては。ウィルスの報告を待つ。」
「一緒に行くよ。また罠に…かかっちゃ困るから。」
「好きにすればいい。」
武器を拾うアクサム。「僕が戻れば、コロックも喜ぶだろうし。」
戦略キューブ。
ジェインウェイが見張り、トレスが作業している。
トゥヴォックにボーグ・クイーンの声が聞こえる。『トゥヴォック。どこにいるのだ、トゥヴォック。』
気づくジェインウェイ。「少佐。」
トゥヴォック:「宇宙暦 38774※4。ヴァルカニス・ルナコロニー※5。出生日時と場所です。個人データを思い出すことで、集中力を持続できる。艦長、私が集合体に屈したら、危険な行為をとるはずです。その時は停止させて下さい。」
「そんなことをすればあなたは死んでしまう。集中しなさい。いいわね、トゥヴォック。これは命令です。」
トゥヴォックはうなずいた。
トレス:「艦長。アクセスポートにバイパスしました。」
操作すると、扉が開いた。
トレス:「中枢部へようこそ。」
中に入る 3人。最後尾を歩くトゥヴォックは、またもクイーンの声を聞く。『トゥヴォック。どこにいるのだ、トゥヴォック。』
近くの壁に映った自分を見て、自制を取り戻すトゥヴォック。
ヴォイジャーの作戦室。
チャコティが座っている部屋へ、パリスが入った。「いいですか。」
「何か用か?」
「派遣チームのことです。予定では 2時間のはずが、もう 2時間半です。」
「ドクターがモニターしてる。心配はないだろう。全てが…計画通りにいくとは限らん。」
「今ふと思ったんですが、今はあなたが艦長役。トゥヴォックはここにいない。となると順番から言って、僕は副長だ。」
「何が言いたい。」
「あなたに意見するのは僕の務めだ。手遅れになる前に 3人を撤退させるべきだ。」
「忠告は感謝するが、結論は私が下す。待つべきだ。」
「どのくらい。1日? 1週間?」
「もちろん任務が完了するまでだ。」
「彼らが命を落としてもいいのか。」
「言いたいことはわかった。」
「そうは思えない。」
出て行こうとするパリスを呼びとめるチャコティ。「中尉。艦長への忠告は時に命取りになる。わかってるのか?」
「お手本が目の前にいるから。」
「君の心配はよくわかる。だが私を支えて欲しい。」
「わかりました。」
中枢部の中央に、箱状のコンピューターがある。開けると、一面緑色の中に無数の針のような物が見える。
ジェインウェイ:「ウィルス、ダウンロード。」
トレスは腕を近づけ、同化チューブを突き刺した。
トゥヴォックは再びボーグ集合体の声を聞いていた。
ボーグ・クイーンの声。『トゥヴォック。』
トゥヴォック:「私の娘の名は、アシル※6。出生地は…出生地はトゥパール※7。」
その声に同調して、クイーンも話す。『出生地はトゥパール。記憶を分かち合った。お前は我々の一部。抵抗は無意味だ。』
トゥヴォックも声を合わせた。『抵抗は無意味だ。』
ヴォイジャーではドクターが異状を報告する。「トゥヴォック少佐に問題発生。シナプシスの経路が不安定になってます。」
チャコティ:「もっと接近しろと言ったら、我が副長は同意してくれるかね?」
パリス:「もちろんです、艦長。」
ヴォイジャーはワープに入った。
チューブを戻すトレス。コンピューターのパネルを元通りにする。
ジェインウェイ:「早くここから出て、ヴォイジャーに連絡を。」
だが 2人の前にトゥヴォックが立ちふさがった。
ジェインウェイ:「あなたはトゥヴォック少佐よ。連邦宇宙艦ヴォイジャーの戦略士官なの。私は艦長よ、どきなさい。これは命令です。」
クイーンは言った。「彼女は必要ない。」
トゥヴォック:「……艦長、私を…停止させて下さい。」
ジェインウェイは手を差し出そうとしたが、フォースフィールドに跳ね返された。
トゥヴォック:「私は、スリー・オブ・トゥウェルブ。」
尋ねるクイーン。「どこにいるトゥヴォック。」
トゥヴォックは辺りを見る。
映像がクイーンの前に映される。「中枢部か。」
すぐに何人ものボーグがトゥヴォックの後ろにやってきた。逃げるジェインウェイとトレス。
操縦するパリス。「距離、4万キロメートル。」
チャコティ:「ハリー。」
キム:「中枢部にはシールドが張られており、ロックできません。」
「続けてくれ。更に接近。」
トレスはジェインウェイを先導する。「こっちです。」
だがトゥヴォックが前に立った。抵抗しようとするトレスを殴り倒す。
逃げるジェインウェイを、トゥヴォックは執拗に追う。どの道もボーグにふさがれた。ついに捕まったジェインウェイは、連れて行かれる。
ヴォイジャーの映像を見つめるクイーン。「帰るのはまだ早い。」
戦略キューブを追うヴォイジャー。
チャコティ:「シールドジェネレーターを狙え。フェイザー砲、用意!」
パリス:「副長。」
戦略キューブから武器が発射され、向かってきている。
チャコティ:「全シールド装備。衝撃に備えろ。」
キム:「誰か戦略コントロールにアクセスしています。シールド、ダウン!」
「回避行動を取れ!」
ボーグの武器はヴォイジャーを直撃し、外殻を破る。
爆発はブリッジにも起こった。
ドクター:「センサーが切れた。3人を見失いました。」
キム:「船体に亀裂。第5、6、7デッキ。」 爆発は収まらない。
チャコティ:「撤退だ。」
パリス:「3人を置き去りにはできない!」
「アクセスコードを読まれてるんだ。脱出するしかない。」
悔しがるパリス。
「ありがとう、トゥヴォック。」 クイーンはゆっくりと歩き出したが、ふと立ち止まった。「声が聞こえない。空間グリッド、96 の 5。空間グリッド、1-8-2 の 12。何百もの声が、何千もの声が。」
クイーンの指示で、前方のパネルが開く。中にある中枢部と同じ無数の針。だが緑色の針が、次々と黒くなっていく。
すぐ近くで作業をしているボーグに、クイーンは話しかけた。「お前の声が聞こえん。なぜ聞こえんのだ。」
ドローンはクイーンに向き直った。
クイーン:「集合体から離れたのか? 説明しろ。」
無言のボーグ。
クイーン:「答えるのだ!」
「嫌だ!」 ドローン※8はクイーンに襲いかかろうとしたが、フォースフィールドに阻まれた。
他のボーグに連れて行かれながらも、ドローンはクイーンに向かって叫んだ。「俺は独りじゃない。お前に俺たちは止められない!」
|
※4: これをそのまま採用すると 2361年。今は 2377年ですから、16歳?! 本来は 2294年生まれの 113歳のはずです。仮に一桁ずらして 3877.4 でも一致しません。トゥヴォックはかなり混乱していたようです
※5: Vulcanis Lunar Colony ルナ=月ということですから、ヴァルカン星の衛星上にあるコロニー生まれということでしょうか?
※6: Asil
※7: T'Paal
※8: 隔離ドローン Errant Drone (Andrew Palmer 映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」のボーグ役。DS9第129話 "Favor the Bold" 「ディープ・スペース・ナイン奪還作戦(前編)」にも出演) 声:大場真人
|