無惨に折れたゴールデンゲート・ブリッジ。あちこちから煙が上がっている。
その映像を見ていたシスコ。「あのビルには友人が大勢いた。艦隊はブリーン軍をほとんど撃沈したそうだ。それまでに大規模な砲火を浴びたらしい。」
マートク※1:「敵が増えたというわけか。しかし宇宙艦隊本部を攻撃するとはな。我々でさえ考えたこともない。これで、ブリーンについて一つはっきりしましたなあ。…奴らは戦士の種族だ。」
「それ以外は謎だ。情報部もほとんど何もつかんではいない。」
「…大佐。どんな種族にだって弱点はある。例外はありません。」
「そうであることを祈ろう。だがその弱点が何であれ…早く見つけ出さねば。」
カーデシア・プライム。
沿岸部の情報が表示されている。
ウェイユン※2:「ほーら、ご覧下さい。地球からの報告がまた更新されました。状況が判明するにつれ、連邦の死傷者は増える一方です。」
ブリーン人のソット・ゴーは機械音で話す。「――。」
ウェイユン:「ええ、成功です。だが死傷者は単なるボーナスに過ぎません。一番の成果は、敵の心臓部を突然突き刺して、恐怖心を与え、精神的ダメージを与えられたことですよ。…将軍。我々のためにも、あなた方の勝利を喜んで下さい。素晴らしい采配でした。そうでしょ、ダマール※3?」
ダマール:「確かに。」
ソット・ゴー:「――。」
「だが大半の船は撃沈された。」
ウェイユン:「わずかな心配の種をつつくのは君に任せよう。」
ソット・ゴー:「――。」
「全く同感です。今回の成果に比べれば、取るに足らない犠牲に過ぎません。さてと、これで失礼します。創設者への報告書をまとめないと。」 出ていくウェイユン。
ダマール:「ところで、ウェイユンからは聞いていないかもしれんが、ドミニオンも以前は我々を崇めていた。」
ソット・ゴー:「――。」
「それは決まってる。戦争が予想より長引いてるからだ。責任転嫁だよ。あんたも、戦争を終わらせなければ、いずれこうなる。」
「――。」
「そうかもしれん。だが私があんただったら、ウェイユンには決して背中を見せん。」
DS9。
廊下を歩くシスコは、部屋に入った。
咳をするキャシディ※4。料理をしており、部屋の中は煙であふれている。鍋のふたを取ろうとして、熱くて床に落としてしまった。
シスコ:「おい、キャシディ。どうしたんだ。」
キャシディ:「ああ、私にもわからないのよ。」
ふたを拾おうとして、熱くて放り出すシスコ。「何やってんだよ、君に料理は無理だ。」
キャシディ:「わかってる、たった今再認識したところ!」
「私のトウガラシじゃないか…!」 真っ黒焦げだ。
「ああ、キャセロールに、焼いたトウガラシ入れるの好きでしょ?」
「育てるのに 3ヶ月もかかったんだぞ? 今まで、誰にも触らせなかったのに。」
「ほんとにごめんなさい。…地球での恐ろしいニュースを聞いたから、少しでも元気づけたかったの。でもこれからは、あなたにこのエプロンを託すわ。」
受け取るシスコ。「それは実にいいアイデアだ。」
キャシディ:「機嫌が直ってよかった。あと何日しか一緒にいられないんだもの。」
「どういうことだ、キャシディ?」
「仕事が始まるの。来週の初めに発つわ。」
「だめだ。どこにも行かせない。危険すぎる。」
「ベン、ブリーンが攻撃したのは地球よ? この近くじゃないわ。」
「次はどこを攻撃してくるかわからん。君にはずっと私のそばにいて欲しいんだ。」
「優しいのね。でも仕事は仕事よ?」
「どうしても行く気なのか。」
「わかってるはずよ?」
独りコンソールを操作しているダマール。
ドアチャイムが鳴り、ダマールは画面を消した。「入れ。」
カーデシア人のガル・ルソット※5が入り、パッドを渡す。「頼まれていた、情報だ。」
ダマール:「素晴らしい。座れ。」
「長居は避けた方がいいだろう。ヴォルタが訪ねてこないとも限らん。」
「来たらどうなる。仲間と話をしてるだけだ。疑われることはない。」
「知られたらどうする。我々の、この秘密計画を。我々は、ロミュランか?」
「カーデシア人だ。だが今は領域を占領されている。占領軍を撃退するには慎重に事を進めねばならん。」
「本当にドミニオンを倒せるのか。ブリーンと同盟を組んだ奴らは無敵だ。」
「我々は国家と自由のために戦うのだ。その大儀は何にも勝る力になる。」
「…カーデシアがドミニオンと同盟を結んだ日をよーく覚えているよ。…私もそれを支持した一人だ。これでアルファ宇宙域の統治者になれるとな。…だが結果は、統治者どころか、召使いになってしまった。」
「それもすぐに終わる。反乱軍の…指揮官は信用できるのか?」
「彼らが指揮する反乱軍もな。大した数の部隊ではないが。」
「今に増える。反乱軍の勝利で全カーデシア人が立ち上がるだろう。」
「まずは、ロンダック3号星※6にある、ドミニオンの兵器基地の正確な場所を。」
「わかってる。さあ、味方の士官に、メッセージを届けてくれ。」
うなずくルソット。
惑星ベイジョー。
ソルボー※7は頭を抱えるカイ・ウィン※8に話す。「カラシの修道院※9へ向かうお時間ですが、どうなさいますか?」
ウィン:「…キャンセルして。」
「わかりました。では、ヴェデク議会への出席はどういたしましょう。」
「それもキャンセルして。」
「ヴェデク議会の出席をキャンセルなさると?」
「いいから、そうして! 予定は全てキャンセルよ。」
「かしこまりました。それで、何をなさるおつもりですか?」
「お前が聞くことではないわ。どうしても知りたいなら、研究と瞑想の時間が必要とだけ言っておきましょう。」
そこへベイジョー人姿のガル・デュカット※10がやってきた。
ソルボー:「ああ、なるほど。」
デュカット:「ソルボー、今朝の朝食は、バルコニーに用意してくれ。」 ウィンに尋ねる。「何か、お食べになりたい物は?」
ウィン:「わたくしはいらないわ。」
「無理してでも食べなければ。このベイジョーの力強さは全てカイにかかっているのですから。」
「いらないと言っているのがわからない!?」 ソルボーに指示するウィン。「朝食を用意してあげて。それから、ヴェデクたちに書面で会議の延期とわたくしからの謝罪を伝えておいてちょうだい。」
ソルボー:「はい、すぐに取りかかります。」 デュカットを一目見て、部屋を出ていく。
デュカット:「あの老いぼれにはウンザリする。」
ウィン:「…あなたは時々自分の立場を忘れるようね、アンジョル?」
「おっと、もしも気に障ったのなら、どうか許してくれたまえ。私は、君が太陽の光に照らされて生きる、月に過ぎんのだ。」 ひざまずくデュカット。
「詩を読むより畑を耕す方が似合ってるわ。」 外の景色を見るウィン。
「どうかしたのか? 言ってくれ。何に怒っている。」
「全てによ! 祈りにも儀式にも、このローブにも。もうこれ以上預言者たちを信じる振りをするのは耐えられないの。」
「もうすぐその必要はなくなる。パー・レイスは君を抱く日を心待ちをしているんだ。」
「ずーっとそう言い続けてるけど、一体いつその日が来るの?」
「彼らを炎の洞窟※11から解放したらすぐにだ。」
「彼らを解放する? でも預言者たちが。」
「預言者たちが?」
「パー・レイスを解放することはベイジョーの終わりを意味すると言ってるわ!」
「古いベイジョーは滅びるかもしれん。だがその灰の中から、全く新しいベイジョーが誕生するんだ。そしてついに復活が、始まる。」
「誰がそれを見届けるの?」
「もちろん神に選ばれし者さ。それは、楽園の…美しい夜明けだ。そしていいか、アダミ。君がそこを支配するのだ。」
「信じていいのね?」
「疑いの余地はない。」
「あなたはどうなるの?」
「もちろん、君が私を望む限り、永遠に君のそばにいるさ。だがまずは、パー・レイスを解放しなければならん。」
「でも一体どうしたらいいの?」
「その答えは、コスト・アモージャン※12の書物に載っている。」
「…何てこと。あの書物を紐解くことは固く禁じられているのよ…」
「そうとも。カイ以外の全ての者にはね。」
「大いなる悪が隠されてると言われてるわ。」
笑うデュカット。「何も恐れることはない。私がずーっとそばにいる。」
ウィン:「誰も恐ろしいとは言ってないわ!」
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※1: Martok (J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) 前話 "Strange Bedfellows" 「決別の行方」に引き続き登場。声:大山高男
※2: Weyoun (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) 前話 "Strange Bedfellows" に引き続き登場。声:内田直哉
※3: Damar (ケイシー・ビッグス Casey Biggs) 前話 "Strange Bedfellows" に引き続き登場。声:古田信幸
※4: Kasidy (ペニー・ジョンソン Penny Johnson) 前話 "Strange Bedfellows" に引き続き登場。声:弘中くみ子
※5: Gul Rusot (ジョン・ヴィッカリー John Vickery TNG第91話 "Night Terrors" 「謎めいた狂気」のアンドレス・ヘイガン (Andrus Hagan)、ENT第45話 "Judgment" 「反逆の法廷」のオラク (Orak) 役) 名前は今回は言及されていません。声:小室正幸、エディングトンなど
※6: Rondac III
※7: Solbor (ジェームズ・オーティス James Otis) 前話 "Strange Bedfellows" に引き続き登場
※8: Kai Winn (ルイーズ・フレッチャー Louise Fletcher) 前話 "Strange Bedfellows" に引き続き登場。声:沢田敏子
※9: Calash Monastery DS9第109話 "The Darkness and the Light" 「一人、また一人、そして…」でカラシの瞑想室 (Calash Retreat) が登場
※10: Gul Dukat (マーク・アレイモ Marc Alaimo) 前話 "Strange Bedfellows" に引き続き登場。声:幹本雄之
※11: fire caves 惑星ベイジョーでパー・レイスが封印されているとされる場所。DS9第11話 "The Nagus" 「宇宙商人フェレンギ星人」など
※12: Kosst Amojan ベイジョー宗教における「邪悪な者」、つまり天空の神殿から追放されたパー・レイス。DS9第145話 "The Reckoning" 「善と悪の叫び」など
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