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ディープスペースナイン エピソードガイド
第169話「決別の行方」
Strange Bedfellows

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・イントロダクション
※1ウェイユン※2は指示した。「この二人を捕虜として監禁します、一緒にね? カーデシアは遠い。互いに慰め合うのもよろしいでしょう、ご自由にどうぞ? 異種間の交尾を見物する機会はそうそうない。いい余興になります。」
動こうとしたウォーフに、ブリーンの武器が当てられた。
ジェムハダーがやってきて、エズリを連れていく。
苦しみながら、ウォーフも同様に連れて行かれた。
ダマール※3:「面白い武器だなあ。」
ウェイユン:「ああ、失礼。紹介が遅くなりました。レガート・ダマールを御紹介いたします。カーデシア連合※4のリーダーです。こちら、ソット・ゴー※5。」 ブリーン人のリーダーを示す。
「ソット? レガートに相当する地位か。」
ソット・ゴーは機械音で何か話し、その場を離れた。笑うウェイユン。
ダマール:「何と言った。」
ウェイユン:「『言葉がわかるよう、言語調整すべき』との指摘です。」
「ブリーンに会うとわかっていたらそうしたさ。」

ジェムハダーに付き添われた女性可変種※6が廊下を歩く。
立ち止まって大きく息を吸い、荒れ果てた皮膚や服を元に戻した。
ブリッジに入る女性可変種。「ようこそ、お目にかかれて大変嬉しく存じます。」
ソット・ゴー:「――。」
「感謝します。これまでの亜空間通信同様、お互いに生産的な話し合いが進めば…2、3日中には条約文書に調印できるでしょう。」
ダマール:「そんな文書、聞いていない。」
ウェイユン:「後で話す。」
女性可変種:「ドミニオンとブリーン連合※7の同盟は、宇宙域を分裂させている破壊的戦争を終結に導くでしょう。ブリーンが味方なら、惑星連邦は我々に対抗できなくなる。銀河から消え去るのも時間の問題です。」


※1: このエピソードは、オドー役のレネ・オーバージョノー監督作品です。担当した 8話のうち最後で、第135話 "Waltz" 「不滅の悪意」以来

※2: Weyoun
(ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs) 前話 "'Til Death Do Us Part" 「偽りの契り」に引き続き登場。声:内田直哉

※3: Damar
(ケイシー・ビッグス Casey Biggs) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:古田信幸

※4: Cardassian Union
カーデシアの正式国家名ですが、使われるのは稀

※5: Thot Gor

※6: 女性流動体生物 Female Shapeshifter
(サロメ・ジェンス Salome Jens) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:宮寺智子

※7: Breen Confederacy

・本編
ブリーン船と並行して飛行している、ジェムハダー船。
ダマールはパッドを読み終えた。「これは論外だ。この条約を読んだか?」
ウェイユン:「ざっとは。」
「カーデシア連合が領土の割譲をしなければならないとあるが、具体的な説明がない!」
「ああ、それなら御心配なく。詳細は全てドミニオンとブリーンの極秘協定に記されています。あなたのやるべき仕事は、カーデシア連合の正式なリーダーとして文書に署名することですよ?」
「協定を確認したい。」
「それじゃ極秘になりません。」
「詳細も見ずに私が領土の割譲に同意すると思うのか?!」
「ダマール、肝心なことをお忘れなく。この戦いに勝つためには、ブリーンが必要です。戦争が終われば、カーデシア連合が割譲する弱小惑星を補うだけの領土が、たっぷり我が軍のものになるでしょう。」
「カーデシア連合に弱小惑星などない。」
「…信用できないならソット・ゴーと会い、胸の内を伝えなさい。彼が道理をわきまえた人物だとわかります。」
「ブリーンなど信じられるか。」
笑うウェイユン。
ダマール:「創設者は私に無断で割譲に同意すべきではなかったんだ!」
ウェイユン:「残念ですがあなたを誤解していたようです。まるでカーデシア領は創設者のものではないと、暗にほのめかしてるように聞こえますねえ? 誤解されるのは不本意でしょうが?」
ジェムハダーたちが見ている。
ダマール:「…もちろんだ。」
ウェイユン:「よろしい。では 1時間以内に署名済みの文書をお願いしますよ? ……まだ何か。」
「クリンゴンがセプティマスを攻撃した。」
「聞いています。」
「彼らは 15師団も上陸させているぞ。援軍が来なければカーデシア軍は全滅だ。」
「セプティマス3号星※8のことは我々に任せておけば大丈夫ですよ。勇敢なカーデシア兵を無駄死にさせたりしませんから、ご安心を。約束しましょう。」

DS9。
笑うマートク※9。「セプティマス3号星は 1週間で落ちます。ヘ、カーデシアの第11部隊は…予備兵ばかりで老人や病人の寄せ集め、とても勝ち目はない。」
シスコ:「期待している。」
「フン、だがドミニオンとの戦いはもうウンザリだ。家に帰りたいよ。大佐は例の船長と、ご結婚されたとか?」
「ええ。」
「今に闘いが始まる。必ずね。長く厳しい…果てしない戦争が。我が女房シレラ※10が、私の家にやってきた日を思い出す。…私は子供の頃からペットを飼っていた。清潔とは無縁のターグだ。だが小さな体に似合わず、なかなか勇ましい生き物だった。当然シレラには嫌われた。…ま、長いので簡単に言うと、あれはシレラの荷物を運び込んでいる時だった。なぜか、彼女が表の扉を開けっ放しにしていたんだ。この女性の強さを本能的に悟った私の忠実なるターグは、表に飛び出しそのまま…森の中に消えてしまった。…以来その姿は見ていない。」
「闘いのきっかけを作ったのは奥さんの方?」
「飲み込みが早いな。ハハ…誤解しないでくれ? クロノス中のターグと交換でもシレラを渡すつもりはない。それに長い結婚生活で、私は女房との闘いに何度も勝って自分を通してきた。だがな、最後には女房が勝つのさ。」
「よく覚えておきます。」

果物が切られる。
デュカット※11:「うーん。」
ウィン※12:「ミラベリー※13はこれでおしまいよ?」 ベッドの上で寝間着姿でいる。
ウィンの手からミラベリーを食べたデュカット。「うーん。それじゃあ、ソルボーにもっと持ってこさせよう。」
ウィン:「…わたくしたちの姿を見たら、また眉をひそめるわ。」
笑う二人。
デュカット:「優れたランジェンなら私を疎ましく感じる。」
ウィン:「でもカイが幸せそうなら、彼も喜ぶんじゃないかしら。」
ウィンの顔に触れるデュカット。「幸せですか、アダミ?」
ウィン:「今までの人生で一番。預言者たちも祝福してくれます。」
「ふむ。」
「彼らはわたくしたちを結びつけ、大いなる試練を与えた。ベイジョーの復活です。」
「我々の世界は生まれ変わるのです。そしてリーダーになるのがあなただ。」
「聖なる責務ですね?」
「ええ。」
鏡の前に座るウィン。「預言者たちに託された使命を果たすため、力を授かるよう祈りました。」
デュカットも後ろに座る。「私もおそばにお仕えしますから御安心を。ですが復活というのはそう簡単には成しえないものです。我々を邪魔しようとする輩もいます。」
ウィン:「預言者たちの意思を邪魔するなど許されません。」
「たとえ彼らを代弁していると、言い張る者でもねえ。」
「選ばれし者。」
「フーン。預言者たちは、シスコが迷っているとビジョンで警告した。」
「わたくしの望みは、選ばれし者が預言者に従ってくれること。彼らの愛は強く、怒りもまた激しい。」
キスするデュカット。

ワープ航行中のジェムハダー船。
エズリは宙吊りになっている。「認めたくないけど、背骨が伸びて姿勢が良くなりそう。」
ウォーフも同じだ。「本来の目的から外れるけどな。」
エズリ:「でしょうね。」
「ステーションに戻ってブリーンのことを艦隊に知らせねば。」
「そうね。でもお手上げ。私たちはジェムハダー船で、逆方向に進んでる。逆さ吊りにされてね。それに…」
「それに?」
「宇宙酔いになってきちゃったみたい。」


※8: Septimus III
TNG第50話 "The Ensigns of Command" 「移民の歌」でセプティマス・マイナー (Septimus Minor) が言及

※9: Martok
(J・G・ハーツラー J.G. Hertzler) DS9第162話 "The Emperor's New Cloak" 「平行世界に消えたゼク」以来の登場。声:大山高男

※10: Sirella
マートク家の女主人。DS9第131話 "You Are Cordially Invited" 「花嫁の試練」で登場

※11: ガル・デュカット Gul Dukat
(マーク・アレイモ Marc Alaimo) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:幹本雄之

※12: カイ・ウィン Kai Winn
(ルイーズ・フレッチャー Louise Fletcher) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。声:沢田敏子

※13: milaberry

料理しているシスコ。
キャシディ※14が帰ってきた。「ああ。」
シスコ:「おや。おかえりなさい、シスコ夫人?」
「ええ、ただいま。あなた?」 口づけするキャシディ。「うーん。」
「それで、仕事は順調かい?」
「面白かったわ。ベイジョー人クルーたちは、選ばれし者の妻に仕えるのと、ただの彼女に仕えるのとは別で、接する態度を変えようと決めたみたいね。勤続 10年以上のよく知ってる部下たちの態度が一変! みんなこの私に助言を求めてくるのよ? 子供たちや連れ添った奥さん、ご主人、預言者たちとの心のつながりまで。」
「我がクラブにようこそ。ああ、そうそう。毎年春に、選ばれし者は母になりたい女性たちを祝福する儀式を行ってる。」
「私とは関係ないわよねえ?」
「要望が寄せられたんだよ。みんなからね。今年は選ばれし者の新妻に儀式を行って欲しいって。ああ、今週だ。」
「いや。」
「…キャシディ。」
「ダメ! どこかでけじめをつけなきゃ。結婚したけど改宗したわけじゃない。無理よ。預言者たちを信じてる振りをするなんて。」
「君が嫌なら、無理強いする気はない。」
「よかった、話はおしまい! ソニックシャワーでも浴びてくる。」 別の部屋へ向かうキャシディ。
「ゆっくりでいいよ。完成まで、15分はかかりそうだ。……こうして、闘いは始まるか。」

カーデシア・プライム。
ウォーフは金属の棒に触れている。
エズリ:「私にやらせて?」
ウォーフ:「いや、君の力じゃ無理だ。」
「あなたの指じゃ太すぎる。どけて。」
構わず作業を続けるウォーフ。
エズリ:「ちょっと。」
ウォーフ:「待て、もう少しだ!」
「ああ! ああ!」
「静かに!」
「イタ!」
「大丈夫か。」
「大丈夫じゃないわ! 指を切って頭をぶつけちゃった!」
2人が格闘していたのは、粗末なベッドの脚だった。
ウォーフ:「わざとじゃないよ。」
エズリ:「ああ…ベッドからピンを外すことが何で逃亡に役立つの?」
「君がおとなしく下がっててくれるなら、目的を教えてやろう。…どれ、見せてごらん。」
「結構よ。……この前体に触れられて自制心を失っちゃった。」
「そうだったなあ。私は誘惑され、裏切られたんだ。」
「誘惑? 私が誘惑した?」
「それは否定できないだろう。」
「え?!」
「君が最初から私と肉体関係を求めていたのははっきりしている。」
「知ってる男の中で一番のうぬぼれ屋ね。」
「知ってる男の数を考えると光栄だな。」
「自分の前にジャッジアに恋人が 2、3人いたからって何よ!」
「2、3人?」
「ちょっと少なすぎたわ。数十人、数百人、基地で彼女の恋人以外の人を探す方が難しいわ!」
そこへダマールたちを連れたウェイユンがやってきた。「今回はお前たちをカーデシア・プライムに迎えるいい機会です。さぞ快適に過ごされたでしょうねえ? …尋問でお前たちがこれまでブリーンに提供した情報に、ざっと目を通していたんですがね? 情報がかなり錯綜していました。精神面での調査ですからね。…データを手直しして、我々のために特定の問題を明らかにして頂くよう、ご協力願えますね?」
エズリ:「…冗談でしょ?」
「いえ、真剣です。よろしいか? 私に従えないなら、お前たちはレガート・ダマールに委ねられる。カーデシア人というのがどれほど冷酷か御存じでしょ。」
パッドを読むダマール。「『ここに通告する。お前たちはカーデシア法廷に引き渡され、戦犯として裁かれる。』」
エズリ:「戦犯? 罪名は何?」
「教える必要はない。処刑されることだけ覚悟してろ。」
ウェイユン:「ですが、お前たちがこの悲惨な戦争を早く終わらせるため、協力を惜しまないと言うなら、終身刑に減刑するのもやぶさかではない。」
エズリ:「本気で終わらせたいなら、創設者たちに降伏を促すのね。」
ウェイユンは笑い、エズリに近づく。「…強気だ。今死んでしまったら、さぞ心残りだと思いますがねえ? 愛しいドクター・ベシアに思いを告げられないままでは。」
その瞬間、黙っていたウォーフはウェイユンの首に手をかけ、捻りあげた。倒れるウェイユン。
カーデシア人の護衛はウォーフを殴り、銃を向ける。
ダマール:「待て!」
倒れたウェイユンに触れるダマール。笑い出した。大きく、心の底から。「ああ、自信過剰だな。…ウェイユンの最大の特徴。遺伝子配列から取り除くよう、創設者に進言しよう。すぐ次のクローンが現れる。私をやるべきだった、クローンはいない。」
ウォーフ:「よく覚えておこう。」
「もうチャンスはない。協力した方が身のためだぞ? 処刑は 2日以内だ。片づけとけ、行くぞ。」
取りかかる部下。

DS9。
ワインを注いだデュカット。「ああ…ああ。…ああ…さあ、乾杯です。」
ウィンと笑う。
ウィン:「何者なの?」
デュカット:「……どういう意味でしょう。」
「あなたのこと知りたいのよ、アンジョル・テナン。…故郷にいる家族についていろいろ聞かせて? 子供時代も含めて。」
「フン…退屈ですよ。」
「まさか。どんな些細に思えることでも、わたくしには重要なんです。…詳しく知りたいの。私に遣わされた男の全てを。一人の農夫の人生を。」
「ふーん。」
「愛を確かめ合った人の全てを。」

ウィンは聖堂の前にいた。心臓の鼓動。
シスコ:「我らはベイジョー人。」
キラ:「復活を待ち望む。」
ウィン:「ご安心を。ガイドが現れました。具体的な御指示をお願いします。預言者たちにこの身の全てを捧げる覚悟です。」
ソルボー※15:「まるでわかっていない。」
オドー:「女は恐れている。」
シスコ:「ほかに道はない。女は選ばれた。それが女の使命。」
ウィン:「もちろん、わかっています。チャンスを授けて下さい。」
「忠誠を誓いなさい、カイ・ウィン…アダミ。」
ソルボー:「天空の神殿に我々にふさわしい場所を復活させるのです。」
オドー:「偽りの預言者を排除しろ!」
キラ:「我らの道、お前の運命を進むのです。」
シスコ:「我らの愛と、パー・レイスの愛を、感じるのだ。」
見開いたパー・レイス・シスコの目は赤く光っていた。その手には赤いイヤリングが握られている。
ウィン:「いいえ! やめてー!」

現実に戻り、うろたえるウィン。
デュカット:「どうしました、アダミ? 大丈夫ですか?」
ウィン:「神が、現れました。…ビジョンで。」
「それは素晴らしいことだ!」
「いいえ、彼らは偽者です。あれは…ああ…」
「あれは、何ですか?」
「パー・レイス。ソルボーを探して。急いで聖堂から発光体を持ってくるよう伝えて。預言者に心を開いて許しを請わなければなりません。」
「カイ・ウィン、本気ですか。預言者たちはきっと…」
「早く! さっさと行きなさい!」
外に向かうデュカット。
祭壇に祈るウィンを見てから、出ていった。

廊下を歩くデュカットは、微笑んでいる。


※14: Kasidy
(ペニー・ジョンソン Penny Johnson) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。セリフでは「シスコ夫人 (Mrs. Sisko)」と言っているのですが、クレジット表記は "Kasidy Yates" のままです。姓を変えないことにしたのかどうかは不明。声:弘中くみ子

※15: Solbor
(ジェームズ・オーティス James Otis) 前話 "'Til Death Do Us Part" に引き続き登場。今回は名前を訳されています

カーデシア。
カナールを注ぐダマール。
ウェイユンが部屋に入る。
ダマール:「やあ、はじめまして。ハハ…」
ウェイユン:「私の前任者が死んで喜んでいらっしゃるようですねえ。」
「誤解だよ。…大変悲しい。」
「フン。」
「さあ、ウェイユン7 を忍んで乾杯を。」
「捕虜たちの処刑はいつです。」
「裁判が終わり次第。法的手順を踏まねばならん。」
「いつ。」
「処刑は明日午後、14時に予定されている。」
「2人は協力すると?」
「いいや? またあんたに説得を頼むか、ハハ…」
そこへソット・ゴーたちブリーン人がやってきた。
ウェイユン:「ああ! 我が司令室にようこそ。」
ソット・ゴー:「――。」
「もちろん、あちらです。」
「――。」
笑うウェイユン。ソット・ゴーはコンソールについていたカーデシア人をどけさせた。「――。」
ダマール:「何をする。データベースは機密扱いだ…!」
ウェイユン:「レガートは全てのデータベースを御覧頂けると言ったまで。存分にお調べ下さい。」
ソット・ゴー:「――。」 コンピューターを操作する。
ダマール:「本気じゃないだろ?」
ウェイユン:「私は表裏のないクローンです。」
「軍事作戦をブリーンに全て知らせることはない!」
「創設者自身が決定されたことですよ。ほかにも決まったことがあります。今後あなたの軍事提案は、ソット・ゴーから創設者に伝えられることになった。」
「…そうはさせんぞ!」
ソット・ゴー:「――。」
ウェイユンはダマールに言った。「今のは単なる軽はずみな感情の爆発でしょうから許しましょう。今回はね! これからは、全てにおいて創設者の指示通りに動くよう、行動を慎んで頂く。でなければ自分が処刑されるはめになります。」

ウォーフはベッドの脚を外した。
壁の回路に向かって、ピンで作業していたエズリ。「いいわ。」
ウォーフは拘留室のドアを開け、外にいたカーデシア人を殴り倒した。
銃を奪う 2人。

廊下を進む。
現れるカーデシア人たちを打ち倒していく 2人。
だが倒れぎわに発射された武器を、ウォーフは足に受けてしまった。
エズリ:「ああ!」
ウォーフ:「先に行け!」
「黙って!」
「強情だなあ。」
「自分こそ!」
だがカーデシア人に囲まれてしまう。
エズリ:「ああ…。」

グラスに注がれる飲み物。
オブライエン:「いつまでやるんだ?」
クワーク:「戻るまで毎日やる。」
「気持ちはわかるが、故人を偲ぶみたいだ。」
「故人! 彼女がもう戻ってこないとでも?」
「そんなつもりで言ったわけじゃないが。」
「今にエズリはあのドアの前に笑顔で現れるさ。その時のためにこうして毎日この時間に飲み物を出してるんだ。」
「主のないグラスを見ると、かえって彼女がいないことを思い出す。」
「…だったらカウンターに座るな。」
ベシア:「バッドランドだ…。」
オブライエン:「何?」
「何が?」
「今バッドランドがどうとかって。」
「ああ、ウォーフさ。ウォーフがあそこに入り込まなかったら、エズリがランナバウトで飛び出すこともなかった。」
クワーク:「そんなこと考えもしなかったが、ディファイアントがあのクリンゴンの大バカを見つけてくれていたら。」
オブライエン:「今更過去を嘆いてもしょうがないだろ。無事を祈るだけ。」
ベシア:「ああ。感じてたんだ。」
「…感じるって何を。」
「…わからない。でも感じてた。彼女のもつ力を。いつも楽しくさせてくれた。エズリの魂は古いが、気持ちは…とても若かった。それに…頭が混乱してるな。ん?」 去るベシア。

ウィンの部屋。
ウィン:「ソルボーはまだ?」
デュカット:「今参ります。聖堂から発光体を持ち出すには、いろいろ手続きがあるそうで。チェックすべき安全措置があって、手間取っているんです。私にも事情をお聞かせ下さい。」
「それはできません。……お前には、とても理解の及ばないことなんです、アンジョル。」
ドアチャイムが鳴った。
ウィン:「お入り!」
ソルボーに続いて、保安部員が発光体の箱を運んできた。
ソルボー:「預言の発光体※16です。」
ウィン:「そこの台に置いて。下がりなさい。」
出て行く保安部員。ドアの前に立つ。
箱を置くソルボー。「お手伝い致します。」
ウィン:「いえ、結構ですよ? ご苦労様。」
礼をするソルボー。デュカットも出ていくよう手振りで促す。ソルボーは部屋を後にした。
ウィンは箱の前に立った。
デュカット:「恐れることはありません。」
ウィン:「…もちろん。わたくしはカイですよ? 預言者たちは全てを明らかにしてくれます。」 デュカットを気にする。
横を向くデュカット。
ウィンは箱を開けた。明るい光が注がれる。
ウィン:「…おかしいわ。」
デュカット:「何が。」
「何もない。…預言者たちは何も示されない。お言葉がありません。」 箱を閉めるウィン。「わたくしは見放された。」 泣き始める。「きっとわたくしが悪と通じたからでしょう。」
抱きかかえるデュカット。「アダミ。あなたには辛いことかもしれませんが、よく聞いて下さい。…あなたに、隠していたことがあります。私は偶然ここに来たのではありません。」
ウィン:「ああ…」
「ビジョンを見たのです。ベイジョーの真の神々が、目の前に現れ、彼らに仕えるよう啓示があったのです。」
「真の神々?」
「パー・レイスです。彼らに導かれました。」
「いいえ!」
「パー・レイスは悪ではなく、ベイジョーを気にかけています。」
「やめて!」
「ベイジョーを強くしようとね!」
「異端者め!」 ウィンはデュカットの頬を叩いた。
「聞いて下さい。」
デュカットの体を叩き続けるウィン。「出てお行き!」
デュカットはウィンをつかんだ。「もういい! 預言者たちが、何をしてくれたと言うのです。」 泣くウィンに話し続ける。「彼らは占領時代から民衆の苦しみに背を向けてきました。」
ウィン:「離して…」
「あなたが全てを捧げた代償に、何をしてくれたんでしょう。預言者たちは異星人を選ばれし者とし、ベイジョー人のカイを無視し続け、今も…何も語ってくれない。」
「ソルボー!」
ウィンの口をふさぐデュカット。「シーッ! 話を聞いて下さい。パー・レイスは、あなたが夢みていたもの全てを与えてくれます。権力…民衆たちの尊敬、強い抗議はせずともこの私にはよーくわかりますよ。あなたが求めているのはそういうものなんです。ご自分をごまかしてはいけませんよ…! パー・レイスの贈り物を受け取るのです。」
デュカットはウィンを離した。
向き直るウィン。「出てお行き!」
デュカットはドアのところで言った。「どうぞ。いつまでも預言者にしがみつきなさい。許しを請うといい。永遠にそうやって生き続けなさい! シスコの陰に隠れながら!」 出ていく。
ウィンは泣き崩れた。


※16: Orb of Prophecy
9つの発光体のうちの一つ。「変化の発光体」、「預言と変化の発光体」とも。DS9第61話 "Destiny" 「三匹の毒蛇」など。「預言者たちの発光体」と吹き替え

呆然と話すウィン。「何でもいたしますから。どうかお言葉を下さい。……なぜ黙っておられるのですか? わたくしは、声をかける価値もないほど無礼な存在だということですか。……自分が預言者にとってまだ価値があると証明するために何かをしなくては、何かできるはず……。」

寝ているキラに、通信の呼び出しが入った。「どうぞ?」
ウィン:『カイ・ウィンです。大事なお話があります。今すぐ部屋に来るように。』
起き上がるキラ。「…すぐに。」

寝間着姿のソルボー。「キラ中佐がおいでです。」
部屋に入るキラ。
ウィンは正装している。「よく来てくれました。どうぞかけて。こんな夜遅くに御苦労様です。」
キラ:「…何でしょう。」
「…以前から感じていました。カイとしてのわたくしの振る舞いに中佐が疑問をもっていると。あなたは、わたくしがベイジョー人の心の幸福より、政治的利益を優先させていると感じている。それを強く否定できればいいのですが。」 泣き始めるウィン。「預言者たちが示された道で、迷ってしまいました…。」
「カイ・ウィン。」
「どうすればいいか、わからないのです…。」
近づくキラ。「大丈夫ですか? …預言者たちの啓示を受けたとうかがって、カイの心が…開かれ、変わってくれることを祈りました。」
ウィン:「ああ、変われたらどんなにいいか。わたくしは、許しを得るためなら何でもするつもりですが、もう手遅れかもしれません…」
「それはありません。必ずや、修復できます。」
「どうやって。」
「私はヴェデクじゃない。…でもこれだけはわかります。カイを迷わせていることを排除しなければならないと。野心や、嫉妬を。」
「ええ、そうね。わたくしは権力の誘惑に屈してしまいました。」
「誘惑をかわして下さい。」
「ええ。」
「預言者に身を捧げるのです。」
「彼らの望む人物になるためなら何でもする覚悟です。」
「……カイの職を降りたら、きっと全てが変わります。そうですよ!」 微笑むキラ。
「降りる? …わかりません、なぜ降りろと? わたくしは必要とされている。」
「カ、カイ…権力に留まれば、道を誤ることになります。」
「しかしわたくしは変わる決意をした。そうでしょう? …再び預言者たちの信用を回復すれば、カイの地位に留まっても立派にお仕えできるはず。預言者たちがカイの辞任を望むなら、そのような啓示があるでしょう。」
「…いつも具体的な啓示があるわけではありません。私たちに直接語りかけることもある、心に。でも、それは本人にしかわからない。」
「でも、わたくしは必要とされています。」
「…おやすみなさい。」 キラは出ていった。

大きく笑うウェイユン。隣にソット・ゴーがいる。
ウェイユン:「ああ、ダマール。来ましたね? ああ、いい知らせですよ? ソット・ゴーがロミュランとの境界沿いの軍事力に関して、面白い調査をしました。彼によると、ロミュランの守りの弱点を我々は見逃しているようですよ。」
ダマール:「そうですか。」
「例えば、ウンロス星系※17にあるロミュランのコロニーは、今攻め込む絶好のチャンスとか。長距離センサーアレイの修理が、完了すれば…」
コンソールを操作したダマール。「セプティマスが敵の手に!」
ウェイユン:「何です?」
「セプティマス3号星だ! カーデシア部隊全員が殺された! 50万人もだ!」
「ええ、ほんとに。大いなる悲劇。」
「援軍を約束した!」
「そのような約束をした覚えはない。無駄死にさせないと、言っただけです。」
「兵士はクリンゴンに殺されたんだぞ!」
「冷静に聞く気がおありなら、じっくり御説明致しましょう? 今回の第11部隊の犠牲は、無駄になったわけではありません。クリンゴンに戦略的価値のない惑星を占領させることで、彼らの貴重な軍事力と資源を、かなり…浪費させることに成功しました。」
ソット・ゴー:「――。」
「ご同意どうも。」
ダマール:「納得できん。忠実なる兵士を 50万人も見殺しに…」
「彼らが真の忠実なる兵士なら喜んでドミニオンに命を捧げていったはずです。」
「我が兵士に後どれぐらい死ねというのだ。」
「…我が兵士ですか? …我々は一つですよ。ドミニオンと、ヴォルタ、カーデシア、ジェムハダー、ブリーン。」
ソット・ゴー:「――。」
「我らは、等しく創設者のしもべです。求められればどんな犠牲も払わなければなりません、いつでも、どんな時も!」
反論しようとするダマール。
ウェイユン:「ソット・ゴー。もう一度ウンロス星系の計画をお聞かせ願いたい。詳しいことを忘れてしまった。」
ソット・ゴー:「――。」
出ていくダマール。
ソット・ゴー:「――。」
ウェイユン:「わかっています。気分で動かれては仕事になりません。困ったものです。」
説明するソット・ゴー。

またカナールを飲み干すダマール。
鏡を見る。
注いだ酒を鏡に投げかけた。
自分を見つめる。

拘留室のエズリ。「ダックスの共生体は 300年以上生き続け、8度の人生を体験した。でもついに、カーデシアによって命の火が消されようとしている。ダックスの遺産を受け継ぎ生まれ変わったエズリ・ティーガンも、終わりを告げる。」
ウォーフ:「…自己憐憫は、名誉に反する。」
「…ウォーフ? 今更そういうクリンゴンの考え方を、押しつけないでくれる? 私はあなたの可哀想な命を救うためだけにここまで来る羽目になったのよ? そういう独善的な言い方だけはやめてくれない?!」
「私を救うという君の動機は、不純なものだ。」
「命令に背き、命を懸けたのはあなたを誘惑するためだったと本気で信じてるの? あなたの夢を壊したくないけど、そんな価値ない。」
「いつも辛辣で、冗談ばかりだった。」
「ユーモアのセンスが私の魅力の一つだって、気づく時がくるわ。」
「ジャッジアのことだ。君じゃない。」
「ウォーフ、私に恨みでもあるの? 私がジャッジアじゃないから?」
答えないウォーフ。
エズリ:「じゃあズバリ聞くわね。私を愛してる? 私エズリよ。」
ウォーフ:「君は矛先を私に向けて判断を避けている。」
「質問に答えて。私を愛してる?」
「ゴラリス星で自分の気持ちがはっきりした。」
「……どういう風に? あなたは私に対して…罪の意識を感じてる。それは私にジャッジアと同じ気持ちをもてないからでしょ? もしそうなら、私たちゴラリスで過ちを犯したってことね。だったら 2人とも許されるんじゃない?」
「…今夜はあの時の過ちを蒸し返すより、互いの来世に備えて心の準備をしよう。」


※17: Unroth System

拘留室。
寝ているエズリ。
ウォーフは起きている。「わかってるんだ。」
エズリ:「……え?」
「だから、君の言う通りだ。…私はジャッジアを愛するようには君を愛せない。」
起きあがるエズリ。「あ…別に罪じゃないわ。」
ウォーフ:「私は自分の名誉を汚した。ああ…私が名誉という言葉を使いすぎるのはわかってるが、今回はほかに言いようがない。」
「聞かせて?」
「ステーションに来た瞬間から君がジャッジアとは違うとわかっていた。それでも、ジャッジアの一部が君の中に生き続けていることを知った。ゴラリスで、私は…ジャッジアと会っていたんだ。君の代わりにね。」
「私もそうよ。私の一部が、ジャッジアの部分が、あなたに近づきたがっていたの。」
「…肉体的結びつきについて、違う考え方をもっていた。ジャッジアには、それは多くのことを意味したが、私には深い精神的行為だった。だが君と愛し合った時、その動機は精神的なものではなかった。恥ずべき衝動だった。」
「ウォーフ。私たちは神でも預言者でもない。ただの人よ? 間違いを犯すわ。……これだけは、あなたに信じて欲しいの。ジュリアンへの気持ちはほんとに自分でも気づいていなかった。だからあなたに託していたわけじゃないわ。」
「信じるよ。今後君やドクター・ベシアに根をもつことはないさ。」
「よかった。…仲直り。」 手を差し出すエズリ。
握手するウォーフ。「友達だ。」
エズリ:「よろしく。」
「……後は処刑を待つばかりになってしまったな。」
「何だか退屈ね?」
ドアが開いた。
ジェムハダーたちを連れたダマール。「時間だ。」
2人は立ち上がり、外に出る。ウォーフを支えるエズリ。
その時、ダマールは後ろからジェムハダー 2人を撃ち殺した。
武器を奪うダマール。「ランチ・ベイ 3-A にカーデシアの警備船が待機している。セキュリティポイントを通り抜けるために必要な情報はこの中だ。」
エズリ:「助けてくれるの?」
「惑星連邦に伝言を頼みたい。カーデシアは連邦と同盟を結ぶ。」
ウォーフ:「信用できない。」
「だったらこのまま…処刑されるがいい。」
エズリ:「…私は信じるわ。」
武器を渡すダマール。
歩いていく 2人を見つめる。

ウェイユンは台のパッドに手を置いた。
ソット・ゴー:「――。」
ウェイユン:「逃げたですと!? なぜそんな事態に!」
ダマール:「拘束エリアをジェムハダーに任せたのはあんただ。」
「わざわざ御指摘どうも。」
ソット・ゴー:「――。」
「いいえ、我々の警備態勢は通常こんな甘くはない。」 コンピューターに反応がある。「…創設者が、早速お呼びだ…。このことも報告しなければ。」
ダマール:「ああ、許してくれるさ。だめでも、ウェイユン9 に生まれ変わればいい。」
部屋を出るウェイユン。
ダマールは微笑んだ。「フン。」

DS9。
ウィンが待っている。
ソルボー:「カイ・ウィン。アンジョルが御面会です。カイに呼ばれたと申しておりますが?」 隣にデュカットがいる。
ウィン:「通しなさい。」
「仰せのままに。」 デュカットに入るように指示し、出ていくソルボー。
ウィン:「初めて天空の神殿を見た時のことでした。プロムナードにいた時です。突然神殿が目に飛び込んできました。光と色の渦を前に、周囲にいた人々は恐れを抱き、預言者の愛が波のように押し寄せてきたと叫んだのです。……わたくしが何を感じたかおわかりか? 何も。全く何も感じなかった。でも笑みを浮かべ感じた振りをしました。そう期待されたからです。…今初めて真実を明かしました。」
デュカット:「お気持ち、お察しします。」
「預言者たちの言葉はなく、導きもなかった。信用され報われることもなかった。そして今、預言者に祝福されるためにわたくしはカイを辞めるべきだという。いいえ? 懸命に尽くして、ここで全てをあきらめるわけにはまいりません。」
「ええ、そうですとも。慈悲深い神々は、そのような無理な犠牲を信者に求めたりしないものです。」
「わたくしは、預言者に見捨てられたのです。今までどれほど尽くし、痛みに耐え忍んできたことか。」
「ご自分を大切になさらなければ。」
「わたくしの忍耐も、もう我慢の限界です。何も応えてくれない神に、これ以上仕えることはできません。目の前に差し出された、パー・レイスの道を歩もうと決めました。」
「お供致します。…誰にも、我々を止めることはできません。」
「わたくしたちを邪魔する者。惑星連邦と操り人形のヴェデク。偽りの神々と無能なる選ばれし者は、激しく荒れ狂う風に舞う枯れ葉のように、いずれ消え去る運命です。」



・感想
最終章 3話目となり、大きく話が動き始めました。まずカイ・ウィンはパー・レイスに抵抗を示すところ、キラに相談するところまでは良かったのですが、その後がデュカットの思う壺でしたね。ウィンの預言者に対する疑問は、前シーズンの「善と悪の叫び」でも少しその一部が見られました。
そしてついにドミニオンへの反抗を見せたダマール。実質的には来週以降で描かれるのでしょうが、とにかくダマールというキャラクターの成長を考えると感慨深くさえあります。
セリフ的には会話しているものの、機械音で話すブリーン人の表記には困りました。会話させつつエキストラで済ませるという、上手い(?)手法ですね。


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