※1ワープ航行中のネビュラ級宇宙艦。
『大佐日誌※2、宇宙暦 51408.6。U.S.S.ホンシュウ※3に乗って 2日だが、彼とはまだ顔を合わせていない。彼が完全に回復したというドクターのお墨付きをもらってはいるが、私はそれを恐れている。あるいは彼が普通ではないと思い込みたかったが…デュカットだ。だがその方が彼と会うにはいいだろう。心のどこかで、彼が死ねばよかったとさえ思っていたのかもしれない。だが宇宙艦隊士官としては、あるまじき考え方だ。デュカットは国を失い、娘も失ったのだ。そして心も失いかけている。犯した罪は大きいが、その報いは…もう十分受けているのではないだろうか。』
シスコは拘留室に入り、担当の保安部員と入れ替わった。
デュカット※4は独房の床に座り、瞑想しているようだ。
顔を上げることなく、口を開いた。「大佐がいるとは聞いていた。」 顔を上げ、目を開けるデュカット。「だが、会いに来るのか確信はなかった。」
シスコ:「具合はどうだ。」
「いいですよう。」 立ちあがり、ため息をついてベッドに座る。「ドクターに言わせると、私はめざましい回復力を…見せたそうです。」
「私もそう聞いた。」
「そうか、敵に庇護されているとはゾッとするねえ。…私は戦争犯罪者か。」
「惑星連邦では罪の確定まで無実だ。」
「らしいな。…大佐は私が有罪だと思うか?」
「……君が犯した罪を、全て見たわけじゃない。」
「そんな風にごまかすとは、大佐らしくない。」
「公正でありたいだけだ。戦いが終わるまでは裁判にかけられない。君が特別陪審に出廷するのは、単なる形式だ。」
「そして君は、私を起訴するために証言するんだろう。」
「私はただ、事実を話す。」
「確認してやろうか?」
「いや、結構。」
「そうか。」 うつむくデュカット。
「……今まで言う機会がなかったが、ジヤルのことは本当に残念だった。」
「おかげで、改めてドクター・コックス※5の腕のよさがわかったようだ。」
「私はお悔やみを言いたいとドクターに伝えた。」
「……すまない。その気になったらいつでもジヤルのことを話すよう、ドクターは私を励ましてくれた。…娘の死で、私が一時的におかしくなってからずっとな。ドクターを疑って悪かった。」
「仕方ないさ。」
無言のデュカット。
「…さて、明日の昼には第621宇宙基地※6に到着する。では、罪状認否で。」
出ていこうとするシスコを、デュカットは呼び止めた。「なあ、大佐。…娘のことだが、君はキラ少佐と共に 1年近くジヤルを可愛がってくれたな。そのことはとても感謝している。ありがたいと思っているよ。」
シスコはデュカットに向き直る。「ジヤルは、若くて特別な才能を備えていた。一緒に過ごせて楽しかったよ。ほんのわずかな時間ではあったがね。」
「それが、娘の運命だったんだろう。」
「…何か望みがあれば言ってくれ。」
「ふーん、カナールを一本と、オリオンの使用人の女を一人…都合してもらうかなあ?」
微笑むシスコ。「わかった、手配しておこう。」
突然船が揺れ、警報が鳴り響いた。通信が入る。『戦闘配置につけ。被害対策チーム、レベル 5 の J に急行せよ。』
大きな揺れが続く。
|
※1: このエピソードは、オドー役レネ・オーバージョノーの監督作品です。担当した全8話のうち、第118話 "Ferengi Love Songs" 「愛の値段」に続いて 7番目となります。参考
※2: 「艦長日誌」と吹き替え
※3: U.S.S. Honshu ファンサイトでは登録番号は NCC-60205 とされています
※4: ガル・デュカット Gul Dukat (マーク・アレイモ Marc Alaimo) DS9第130話 "Sacrifice of Angels" 「ディープスペース・ナイン奪還作戦(後編)」以来の登場。声:幹本雄之
※5: Dr. Cox
※6: Starbase 621
|