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ディープスペースナイン エピソードガイド
第136話「モーンの遺産」
Who Mourns for Morn?

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・イントロダクション
※1クワークの店にオドーがやってきた。いつものように座っているモーンに話しかける。
「モーン。もし手が空いてなら、第3貨物室に置いてあるリヴァニアン・ビーツ※2を…何とかしてもらえると本当にありがたいんだがな。2週間以上も置きっぱなしだ。そろそろ腐り始めてる。」 応えないモーン。「…モーン。」
オドーが手を触れようとすると、モーンの体を突き抜けた。映像が揺らめく。
クワーク:「そいつはホログラムだよ。モーンはビジネスで 2週間前から出かけてる。うっかりしてたな、オドー。それぐらい、とっくに気づいてなきゃな。」
オドー:「それでモーンの代わりにホログラムを座らせたのか。なぜだ。」
オブライエンたちがやってきた。「こんばんは。」
ベシア:「やあ、モーン。」
クワーク:「ほらね、愛されてんだ。あいつはうちのマスコットだ。客はみんなモーンがいるもんだと思ってるのさ。いなきゃ何となく落ちつかない。」
オドー:「いないと商売上がったりか。」
「前回あいつがいない時、うちの売上は 5%近くも落ちこんでねえ。」
「ああ…。なら何で話をさせない。」
「おい、対話型のホログラムプロジェクターが、いくらするか考えたことあるのか? それに…これならモーンがしゃべるのを聞かずに済むだろ。モーンはな、しゃべると止まらない。何ならこいつにいてもらおうか。」
「今の話をモーンが聞いたら、さぞ傷つくだろうな。」
やってきたダックスが驚く。「…モーン!」
オドー:「いや、ただのホログラムだ。」
クワーク:「幽霊でも見たようっすね。」
シスコも入る。「消すんだ。」
「何で?」
「今連絡があった。モーンの貨物船がイオンストームに巻き込まれた。」
ベシア:「大丈夫か?」
オブライエン:「救助されたのか?」
ダックス:「…死んだの。」
うろたえるクワーク。


※1: このエピソードは、1998年度エミー賞のメーキャップ賞にノミネートされました

※2: Livanian beet

・本編
ボトルを持っているベシア。「何か持ってきた?」
オブライエン:「ん?」
「モーンの葬式にだ。」
「持ってこなきゃまずいか。」
「ルリアン※3の習慣じゃ、食べ物や飲み物を持ってくる。死後の世界で腹を空かせないようにだ。」
「ああ…それじゃクワークのバーで買おう。あの体で腹が減っちゃ辛い。」
ダックスと歩いているウォーフ。「モーンはいいスパーリングの相手だった。これからホロスイートの戦闘が寂しくなる。」
ダックス:「ほんとに死んだなんて信じられない。」
「こんなに大事だった友達とは。」
「昔、あの人好きだったことがある。」
「モーンをか?」
「あなたに会う前よ! それにモーンは気にしてなかった。」
「気にしてなかったってどういうことだ。」
「ねえ、この話やめましょう…」
キラはオドーと一緒にいる。「栓抜き持ってきたの?」
オドー:「ええ…モーンにね。いるんじゃないでしょうか。」
「さすがね。」

カウンターに、たくさんの食べ物などが並べられている。モーンの絵も飾られている。
部下のフェレンギ人たちに話しているクワーク。「こりゃほんとに驚いたな。こんなに大勢やって来た。もし手ぶらの奴を見かけたら、イリディアン・エール※4を売りつけろ。モーンが大好きだったって言うんだ。」
その場を離れるフェレンギたち。
ベシアたちがやってくる。「あんた、ほんとにいい人だな。」
オブライエン:「きっとモーンも喜んでると思うよ。」
クワーク:「ああ…せめて葬式ぐらい。寂しいよ…全く。」
「何かおごらせてくれ。」
「普段だったら…仕事中は飲まないけど、イリディアン・エールでもね。モーンが好きだった。」
「ああ。それはいい。」 クワークが差し出すパッドに触れるオブライエン。「うん。」
2人は歩いて行く。
会話を聞いていたオドーに言うクワーク。「何見てるんだよ。」
オドー:「大したもんだ、心温まる死者への手向けだな。」
「何言ってんだ。モーンは今月の支払いを残して死んじまったんだぞ。」
「ああ…全くモーンも仕方のない奴だな。」
「それがまたかなりの額ときてるんだ。あいつはよく食ったからな。胃袋が 2つあったろ※5。食ってるとこ見たか? 痛快だったな。」
「まあ、失って初めて…そのありがたさを知るってこともよくあるからな。」
「いろいろ余計な心配してくれてすまないねえ。」
「自分でも心配しろ。マスコットがいなくなったんだ。ビジネスの痛手だろ?」
「どうかな。何とかしてみせるさ。」
ウォーフたちも入る。「ジャッジア。」
ダックス:「やめてって言ってるでしょ?」
クワークは話し始めた。「皆さん! よく集まって下さいました。……モーンはこんなにも大勢の方から愛されていたのです。私も好きでした。…モーンが初めて来た日のことは忘れない。座ったのはそう…その椅子だ。……あれは確か…10年近く前だ。まだ髪もあったよ。…私は単に、客がやって来た。そう思ってた。まさかみんなにとって、これほど大事な存在になるとは…思ってもみなかったがね。モーンの明るい笑顔や楽しい会話を、みんないつも…楽しみにしていたよな。ここがもう同じ店に思えないかもしれない。だろ? …その通りだ! でもここはモーンの家なんだ。あいつはどこにいようと、自分の大好きだったバーの中に今も…みんなの笑い声が響くことを望んでいるよ、きっと。これはモーンの椅子だ。私たちが彼のためにできるのは、この椅子を決して空けておかないことなんだ。」
クワークは近くに立っていたベイジョー人※6を、椅子に座らせた。「頼むよ、あっためてくれ。」
手を叩くクワーク。観衆も拍手する。
キラ:「彼には時々…本当に驚かされる。」
オドー:「私もです。」

ダボガールに抱かれて涙をふいているクワークのところに、シスコがやってきた。「悪いんだが、クワーク。」
クワーク:「今はちょっと。」
「邪魔をしてすまない。モーンの遺言を開いてね。そのことなんだ。…全てを君に残した。」
「俺に? モーンが全ての遺産を…俺に?」
「その通りだ。」
「モーン…。何て奴だ、モーン! おお…。」
出ていくシスコ。

保安室。
パッドをもつオドー。「モーンの奴、お前がほんとに気遣ってると信じてた。」
クワーク:「してたよ。夕べ何時間もあいつのこと考えた。」
「遺産の額でも勘定してたんだろ?」
「俺はあいつとはずーっと一緒にいた。だから知らないうちに心が通ってたのさ。」
「…これがモーンの資産の記録だ。」 パッドを渡す。
確認するクワーク。「…おい、冗談だろ!」
「どうしてだ。」
「こりゃ破産してるよ。」
「そうか。」
「何かの間違いだ! 毎月きっちり支払いはしてた。どっかに財産を隠してるんだよ。」
「奴は物を仕入れるのが仕事だったんじゃないか? ひょっとしたら全財産は買い付けに使って…商品になってる。」
「そりゃ言えてるな。商品だな。」

クワークはオドーと共に貨物室に入った。「荷は全部引き取るぞ。そいつを売っ払って…プー、何の臭いだ?」
オドーは貨物のふたを開けた。「モーンの遺産だ。リヴァニアン・ビーツ。熟成してる。」 中から臭気が立ち上る。
クワーク:「ほかの荷はどうなってる。」
「ほかの荷もビーツだ。」
全部見て回るクワーク。「これだけか? これで全部か?」
「そのようだな。」
「アーッ!」
笑うオドー。
「あー。」
「ただしモーンの部屋にある物は別だ。もしかしたらありったけのカネを注ぎ込んで…家具とか美術品を買ってるかもしれない。」
「美術品か。」 指を鳴らす。「そうだよ!」 出ていくクワーク。
「美術品か。そうだな。」 あきれるオドー。後を追う。

廊下を歩くクワーク。「オークションを開く。モーンの遺品だったらプレミアがつくぞ。」
オドーは部屋のボタンを押した。中に入るクワーク。部屋の中央に、あぶくを出す液体が入った大きな器がある。
クワーク:「ほんとにこの部屋かよ。」
オドー:「間違いない。」
「美術品ねえ。」
「何だ、ありゃ。」
「あれはマタドールの絵じゃないかな。」 壁に絵が飾られている。
「違う、これだ。」
「モーンのベッドだよ。」
「モーンのベッド? 泥?」
「うん。肌がスベスベになるそうだ。」 オドーは部屋を後にした。
「ありがとよ、モーン。嬉しくて涙が出るよ。」
突然、泥のベッドの中から女性が出てきた。「ああ…。」
「俺の泥の中で何してるんだ?」
「あ、あの…我慢できなくて。モーニーとここで楽しく過ごしたもんだから、忍びこんじゃった。ごめんね、びっくりさせたでしょ。急に人が入ってきたから、慌てて隠れたの。」
「あんた誰だ?」
「ああ、ラレル※7…モーンの妻。元妻ね。」
「モーンが結婚してた? あんたと?」
「とても素敵な 2年だった。きっと…あなたはクワークね。モーニーとは別れてからも時々会ってたの。あの人、しょっちゅうあなたのこと話してた。」
「嬉しいね。」
「こうも言ってた。もしあの人に何かあったら、自分のものは何もかもあなたに譲りたいって。」
「何もかも?」
ベッドから上半身を出すラレル。「何もかも。」
「あんたが来てくれて良かった。何しろモーニーは、ほかに何も残してくれなかった。」
「そんな話信じられない。」
「ああ…俺だって同じだよ、がっかりさ。」
「確かあの人、老後に備えてかなりのものを蓄えてるはずだけど。2人なら…十分楽しくやっていける。」
「あんた込みでこの泥をもらえるなら、そりゃ楽しいだろうねえ。」
「あの人がリセピアン※8の宝くじで当てた、ラチナム入りの金の塊 1,000個のことなんだけど。」
「ラチナムが? 1,000個だって?」
ベッドから足を出すラレル。「ええ、あの人が死んだから、全て私たちのものよ。」
足を触り、笑うクワーク。ラレルも笑う。


※3: Lurian
モーンの種族は設定上はルリアン (ルリア人) とされていましたが、実際に言及されるのは初めて

※4: Yridian ale
イリディアン (イリディア人) は TNG第142・143話 "Birthright, Part I and II" 「バースライト(前後編)」などに登場

※5: ちなみに心臓も、少なくとも 2つあります (DS9第65話 "Through the Looking Glass" 「鏡の裏のシスコ」より)

※6: この男性は、モーンを演じているマーク・シェパード (Mark Shepherd) 本人です

※7: Larell
(Bridget Ann White) 種族名不明

※8: リセピアン (リセピア人) は DS9第15話 "Progress" 「第五の月“ジェラドー”」に登場

クワークは泥ベッドの中にホースを入れ、つながれた機械を作動させた。泥が吸い取られていく。
ラレル:「何してんの?」
クワーク:「決まってんだろ、ラチナムさ。」
「…どこにあるか知ってるんじゃないの?」
「あんたから話を聞くまで、あることも知らなかったよ。」
「……それじゃきっとこのステーションのどこかよ。」
「もう使い切ったかもな。」
「老後の蓄えって言ったでしょ。かわいそうに。きっと使わずじまいよ。だけど私たちは違う。」 クワークの耳を触るラレル。
「魂胆はわかってるぞ。」
「何? 魂胆って。」
「わかってるじゃないか。ラチナムは俺のもんだ。」
「ああ…あの人は全てあなたに残したけど、私は妻だった。もし遺書に意義を申し立てたら、何年も裁判することになるのよ。」 ウー・マックスを続けるラレル。
「かもなあ…。」
「だけど…そんな必要全然ないのよ。ラチナム入りの塊 1,000個、2人にとって十分な量よ。」
「莫大な金額だな。」
「見つけたら 2人で、素敵なバケーションを思う存分楽しみましょ?」 笑うラレル
「モーンもそうしたかったろうな。」 ラレルに顔をうずめるクワーク。
「もちろんそうに決まってる。」

クワークの店。
クワークはダックスとトンゴを楽しんでいる。「ステーション中探したけどラチナムはない。逃げる。弟に内部センサーでスキャンまでさせた。」
ダックス:「だけど絵があったんでしょ?」
「欲しいのは絵じゃない。ラチナムだ。」
「それで幸せになれる? 勝負。」
「もちろんなれるさ。チャンスなんだよ。運が巡ってきた。俺はずーっと待ってたんだ。モーンのカネが欲しいね。モーンのカネがいるんだ。俺にはもらう権利があるからね。」
「あなたの番よ。」
ラチナム 2本を叩き合わせるクワーク。「美しい音だ。それにこの輝き、たまらんねえ。液体のラチナムを価値のない金に染み込ませるなんて※9、一体誰が思いついたのかねえ。」
「きっとお釣りは液体で返すの面倒になった人じゃない? ゲームする気あるの?」
続けるクワーク。「モーンどこに置いたと思う?」
「見つけたらその女と本当に分けるの?」
「裁判にしなければ、10%やることにした。」
「塊 100個よ?」
「ほかにどうすんだよ! 撤退。」
「何となくこの話、何か怪しいと思わない? その女、信じられない。」
「…俺もだ。だけど、俺の耳たぶは気にしないのさ。」
「とにかく気をつけることね。可愛い顔にだまされないで。」
「俺は平気さ。」
「あらそう。私の勝ち。」
ため息をつくクワーク。ダックスは笑い、ラチナムを集める。

モーンの絵を持って部屋に入るクワーク。暗い中に誰かがいる。
クワーク:「ああ…こりゃ嬉しい驚きって奴だ。」
そこにいたのは、異星人の男だった。
クワーク:「コンピューター、明かりだ。」
その男、クリット※10は尋ねた。「なるほど。驚くのは好きか? クワーク。」
「嬉しい時だけな。」 クワークの後ろには、もう一人同じ種族の男がいる。
「俺もそうだが、俺の登場は嬉しいかなあ。」
もう一人のナースク※11が答えた。「ああ、もちろんだとも。」 驚くクワーク。
「よかったよ、これはまさしく…正真正銘の嬉しい驚きだ。」
クワーク:「俺の部屋で何してる。」
ナースク:「お前を待ってた。」
クリット:「俺たちは兄弟でな。昔モーンの仕事仲間だったんだ。」
クワーク:「モーンの葬式に来たんだったら、昨日だったよ。」
ナースク:「いい式だったか?」
「そりゃもう最高さ!」
クリット:「聞くとこじゃ、あんたがモーンの遺産を相続したそうだな。」
「そうだ。」
ナースク:「俺たちはモーンの仕事仲間だったんだ。」
「あちらから聞いたよ。」
クリット:「あいつは…俺たちからカネを借りたまま死んじまったもんで、残った財産から借金を…返してもらいたい。」
「ああ。その借金っていくらなんだ?」
「ああ…金に染み込ませたラチナムの塊で、1,000個ってとこだ。」
「そういうんじゃないかって気がしたよ。」
笑うクリットたち。
クワーク:「借用書を見せろ。じゃなきゃ信用できん。」
クリット:「握手一つで貸した。」
ナースク:「モーンを信用してな。」
「残した借金を綺麗にして欲しい。モーンもきっとそう思ってるはずだ。」
「うん。」
クワーク:「そうかもしれんがな、だけど…どうしようもないこともある。モーンの財産は全部ビジネスに投資されちまってるんだよ。」
クリット:「ちょっと待てよ、それはひょっとして…カネは手元にないってことか?」
ナースク:「そうだとしたらまずいぞう。」
クワーク:「つまり、俺が言いたいのはしばらく時間がかかるってことさ。」
クリット:「ならカネはあるんだな?」
「もちろん。でも権利を主張してるのはあんたたちだけじゃない。」
「何だって?」
「モーンは死んだ時、ビジネスを大きく広げようとしてたんだ。資金的にもちょっと無理してやりくりしてた。その結果残した遺産より、借金が多くてなあ。債務超過ってわけさ。…全部返ってくると思ったら、甘いねえ。」
「どのくらい期待できる。」
「何%か。」
「数字で示してみろ。」
「20パー。」
「80パーは譲れねえ。」
「なら 30パー、それにモーンが仕入れたリヴァニアン・ビーツをつけよう。」
ナースク:「ビーツは嫌いだ。」
クリット:「70%。」
クワーク:「40、それにあんたたち 2人は、とても趣味がいいようだからなあ。こいつを代わりにやろう。モーン秘蔵の最も価値ある一品だ。」 絵を見せる。「見事だろ?」
受け取るナースク。「こいつは大したもんだ!」
クリット:「60以下じゃ話にならねえ。」
クワーク:「40 がギリギリ。」
「50!」
「悪いな。」
ナースクは絵をクワークの頭に叩きつけた。絵は破れ、クワークに額が引っかかる。
クワーク:「…50 にしよう。」
クリット:「いやあ、本当によかった。お互い理解しあえて嬉しいよ。」
「俺もだ。」
笑うクリット。「俺たちはしっかり見てるからな、クワーク。妙な真似するなよ。」
「俺が? するわけないだろ。」
2人は笑う。クリット兄弟は出ていった。
額を取るクワーク。すると絵の中に、小さなチップが入っているのに気づいた。「何だ、こりゃ。」
チップをコンピューターに差す。「コンピューター、こいつは何だ?」
『保管ロッカー 137 の預り証です。ステーションの貨幣検査室にあります。』
「保管ロッカーの預り証だって? ありがとよ、コンピューター。いつも世話になるねえ。」
チップにキスし、飛び上がって喜ぶクワーク。「モーン! 死んじまってもお前を愛してるぜえ!」


※9: この "gold-pressed latinum" (直訳すれば「金封入ラチナム) という言葉は過去のエピソードでも使われていましたが、具体的にどのような構造になっているかは初めて言及されました。gold-pressed latinum は、このエピソードでは「ラチナム入りの金」「金に染み込ませたラチナム」などと訳されています

※10: Krit
(ブラッド・グリーンクイスト Brad Greenquist VOY第52話 "Warlord" 「暴君の星」のデマス (Demmas)、ENT第39話 "Dawn" 「熱き夜明け」のカターン・シャー (Khata'n Zshaar)、第91話 "Affliction" 「クリンゴンの苦境」の異星人その1 (Alien #1) 役) 名前は後に言及されますが、訳出されていません

※11: Nahsk
(Cyril O'Reilly) クリットと同様、種族名不明

オドーと話しているクワーク。「ここで開けなきゃならないって、どういうことだよ。」
オドー:「規則だよ。死亡した者の保管ロッカーを開ける時はステーションの保安部の立ち会いが必要だ。」
「そんな規則あるもんか! お前が中を見たいだけだろ、見えみえだ。なら教えてやるよ。台車にてんこもりのラチナムの塊、1,000個さ。どうだ、驚いたか?」
笑うオドー。保安部員が、小さな箱を持ってきた。
オドー:「ほら、来たぞ。ありがとう。」
クワーク:「間違いだろ?」
「これが保管ロッカー 137 だ。」
「…まあ…小さいほど喜びはでかいのかもな。」
中を開けると、金色のラチナムの塊が一つだけ入っていた。
オドー:「ふーん。モーンが残したお前んとこのツケには足りるか?」
クワーク:「……足りるよ…こりゃ見本だ、ほかにもある。」
「なぜそんなことわかる。」
「見てみろ。」 塊をオドーに渡すクワーク。「裏っ側だ! モーンの筆跡だろ?」
「『残りはボリアス銀行※12にある。』」
「口座番号、CJ 5-7-4-3-6。」
「フン、そんなものモーンの資産記録になかったぞ。」
「知らんね。」 ラチナムを受け取るクワーク。「じゃ、失礼するよ。早速銀行に連絡して、受け取ろう。モーンの遺産のラチナムを、相続人に渡してくれってな。」 保安室を出ていく。

廊下を歩くクワーク。懐に入れているラチナムを確認する。
「ラレル。」
通路を曲がったところに、ラレルがいた。「あちこち探し回ったのよ。」
「ちょっと忙しくてな。」
「忙しくても探し物をする時間はあるでしょ?」
「実はな、今のとこあんまり芳しくない。」
「じゃ、もっと意欲を高めてあげる。」 クワークに近づくラレル。
「うう、俺は意欲満々さ、ただ場所を探すのに…ちょっとばかし時間がかかってる、それだけだよ。ああ…いい考えがある。とりあえずうちに帰って、待ってたらどうかな。例の物を見つけたら、真っ先に連絡するよ。」
「待つんならここで待つわ。あなたと。」 ラレルはクワークの耳を触り始める。
「ああ…今、ウー・マックスしてる時じゃない。」
「なぜ? 嫌いなの?」
「ああ、そうじゃないんだが…つまりその…もし、例の物を早く見つければ、それだけ早く……二人でバケーションに出かけられる。」
「うーん、あなたって働き者。男は楽しみを後回しにしないものよ。」
「特にあんたが相手じゃな。」
ラレルの手にキスするクワーク。2人は別れた。
微笑むラレル。

上機嫌のクワークは、廊下ですれ違う者に挨拶する。「やあ、おはよう!」
ターボリフトに乗る。「レベル17 だ。」
ため息をつく。ふと懐を触ると、ラチナムがないことに気づいた。「やられた! まあいい。銀行からカネを受け取れるのは俺だけだ。ああ。CJ 5-7-4-3-6。CJ 5-7-4…」
ターボリフトから降りようとすると、クリットとナースクが中に連れ戻した。
クワーク:「ああ…降ろしてくれよ!」
クリット:「何急いでる?」
「ああ…」
「俺の兄弟がお前に話があるそうだ。」
ナースク:「…悪かったな。……絵のことだ。」
「ひどく落ちこんでる。」
クワーク:「気にするなって!」
逃げようとするクワークを押さえるクリット。「快く許してくれたのはありがたいがね。」
「いいんだよ。」
「あいつは自分を抑えることが下手でね。」
ナースク:「ついカッとしちまって。」
「思い通りにならないとやっちまうんだ。」
クワーク:「そうみたいだな。」
「でもまだ、ことが俺たちの思い通りになってないってことは、わかってるな…クワーク。」
「ああ、わかってるとも。」
ナースク:「抑えられない自分が怖い。」
「大丈夫だ。すぐあんたたちの思い通りになるって。」
クリット:「そうなると思ってたよ。」
解放されるクワーク。「連絡するよ。」
出ていくクワークの腕をつかむナースク。「絵のことは本当に悪かったな。」

クワークは自室に戻った。リズムをつけて口ずさむ。「CJ 5-7-4-3-6。CJ 5-7-4-3-6。」
コンピューターにアクセスする。「ボリアス銀行を。」
クワークの背中に銃が突きつけられた。「引き出しか? クワーク。当ててみよう。ラチナム入りの塊、1,000個。」
後ろに立っていた男、ヘイン※13は言った。


※12: Bank of Bolias

※13: Hain
(グレゴリー・イッツェン Gregory Itzin DS9第8話 "Dax" 「共生結合体生物“トリル族”」のアイロン・タンドロ (Ilon Tandro)、VOY第151話 "Critical Care" 「正義のドクター・スピリット」のドクター・ダイセク (Dr. Dysek)、ENT第15話 "Shadows of P'Jem" 「恩讐を越えて」のソペク船長 (Captain Sopek)、第95話 "In a Mirror, Darkly, Part II" 「暗黒の地球帝国(後編)」のブラック提督 (Admiral Black) 役)

へインは命じた。「手を頭につけろ。」
言われた通りにするクワーク。
「こっちを向け。」
クワーク:「わかった、いくら欲しいんだ? 1,000個全部よこせなんて言うな、もう半分以上もってかれるんだ。」
「贈賄未遂だぞ、2年余計にぶち込まれる。」
「何言ってんだ?」
「行くぞ!」
「行く? どこ。あんた誰だ。」
「ルリアンの保安部だ。命令によりお前を逮捕して連行する。」
「ああ。」
「このステーションの保安部の許可が下り次第、すぐに出発だ。」
「容疑は? 俺が何したってんだ?」
「政府の財産を奪おうとした。」
「政府の財産?」
「ラチナム入りの塊 1,000個だ。」
「ちょっと待て! あの塊はモーンが、宝くじで当てたんだ。」
首を振るヘイン。
「だろ?」
「あれはルリアン王室から贈られた遺産だよ。」
「ああ…何でルリアン王室がモーンにあんなカネ贈ったんだよ。」
「あの方は王子だった。」
「モーンが? 王子だって?」
「知らなかったのか?」
「モーンが王子?」
「そうだ、その通り。」
「モーンが王子だって…」
「ああ。だが即位を前に王位を放棄した。」
「やっぱりあいつは馬鹿だな。」
「あのラチナムは王室を去るときに贈られた物だ。あの方が亡くなられたからには、王室に戻される。」
「いや待て。あいつは俺に残したんだ。」
「その遺書は既に無効になってる。死亡したら返還するという書類にサインしてある。」
「ああ。」 ため息をつくクワーク。「モーンの元妻に、黙っててくれないか。せめてウー・マックスを楽しみたい。」
「元妻って?」
「ラレル。」
「来てるのか。」
「うん、さっき会った。」
後ろを向くヘイン。
「どうかしたのか?」
「黙ってろ、考えてる。……いいか、よーく聞けよ。ラレルは何年も王子のラチナムを狙ってきた。あの女は脅迫したり、揺すったりした。王子の死に関わってるかもしれん。」
「俺には優しかったよ。」
「あの女を投獄することを、王室は望んでいらっしゃる。お前があの女の逮捕に協力するなら、褒美も考えられる。」
「何をすりゃいいんだ?」
「今度会うのはいつだ。」
「どうせ直に現れる。ラレルじゃなきゃ、怪しい兄弟。」
「兄弟?」
「モーンの仕事仲間だって。モーンに借したカネを返せって言ってたが、どうも怪しいもんだ。」
「…誰かは知らないが心配するな。決して王室にもラチナムにも手出しはさせない。」
「俺にも、俺がもらう褒美にも手出しはさせん。」
「話は決まりだな。」
「ああ。」
「そいつらを捕まえるには、ラチナムに手を出した現行犯じゃなきゃ。…銀行に言え、ラチナムをここへ届けさせろ。」
「それから?」
「離れてろ、後は私がやる。」
部屋を出ていくヘイン。クワークは再びコンピューターでアクセスする。

モーンの絵が飾られたままのカウンターにつき、オブライエンが作業をしている。
ベシアがやってきた。「何してる。」
「光電子リレーを修理してんだ。」
「ラボでやればいいだろ。」
「モーンの椅子を温めてるんだ。」
「ああ、いい奴だ。…クワークは? あいつのテラミン・ビール※14でも飲みたいのにな。」
「ああ、ほかのもので我慢しろ。奥にいる。ブロイク※15が言ってたけど、店へ出て来ないそうだ。」
「ああ、モーンが死んでほんとにショックだったんだろう。」
「ああ、好きだったんだな。さて…こいつのテストしなきゃ。」 立ちあがるオブライエン。
「僕が座ろう。」
「ああ、よろしく。」
椅子に座り、ため息をつくベシア。

クワークの部屋。
戻ってきたクワークは、とりあえず尋ねてみた。「誰かいるか?」
ラレルが奥から出てくる。「ハイ。」
「やっぱりあんたか。」
「助けて欲しいの、クワーク。誰かにつけられてる。」
「誰だ。」
「あの…2人の男。」
「兄弟か?」
「…そんなのわからない。」
ドアチャイムが鳴った。
クワーク:「そいつらかな?」
ラレル:「だめ、出ないで!」
「心配するな、出る気はない。」
機械の音が響く。
クワーク:「ロックを解除しようとしてるな、ありゃ。こっちだ。」 ラレルを隠す。「コンピューター、部屋を暗くしろ。」 解除される音。「やっぱもっといいロック買わなきゃな。」
クリットたちが入る。クワークはラレルにその場へいるように指示し、姿を見せた。「お二人さん。」
クリット:「クワーク、あちこちお前のことを探したんだぞう。」
クワーク:「ラチナムなら明日到着する。」
出ていこうとするクワークを止めるクリット。「そいつはいい知らせだな。心配してたんだ。」 またチャイムが鳴った。「誰か来るのか?」
クワーク:「ふいの客じゃないか?」
「出るんじゃない。」
また機械音。
クワーク:「どっちみち入ってくると思うけど?」
ナースク:「もっといいロックを買うんだな。」
クリット:「誰だろうと、追い返すんだ。俺たちはそこにいる。」 ラレルがいる所を指す。
クワーク:「ああ…そっちの方がいいかな。落ちつくよ。」
うなずくナースクたち。「なら奥にいるぞ。」
ヘインがドアを開けた。「どうして出ない。」
背伸びするクワーク。「うーん。ああ…疲れてちょっと眠っちまってねえ。」
「話がある。」
「話って何だよ。どんなことだ?」
「大丈夫か?」
「ああ…なぜそんなことを聞く?」
「さっきから首を動かしてるから。」
クリットたちが出てきた。「見てみろ、とんだ客が来たもんだ。」
クワーク:「あんたのおかげで王室も枕を高くして眠れるなあ。」
「王室だとお?」 笑うクリットたち。「こいつにどんなでたらめを吹き込んだんだ? ヘイン。」
ヘイン:「いつものな。」
クワーク:「知り合いなのか?」
「かなりのな。」
クリット:「もう 9年になるかなあ。」
ナースク:「ハハ、そうだ。きっと 9年になるなあ。」
ヘイン:「相変わらずトロいところは変わらんな。」
ヘインに向かってくるナースク。ヘインも武器を取り出す。
ラレルが出てきた。「やめなさい、ヘイン。」
ナースク:「おい! ラレルだよ。」
クリット:「確かにそのようだ。」
クワーク:「どうなってんだ、これ?」
ラレル:「つまり…ちょっとした同窓会ね。昔の仕事仲間の。モーンもね。」
「なるほど、そうか。モーンは王子じゃないんだな?」
笑うヘイン。
ラレル:「そ。」
クワーク:「そしてあんたも保安部じゃない。」
首を振るヘイン。笑うナースクたち。
クワーク:「で、あんたも元妻じゃない。」
首を振るラレル。
クワーク:「頼む、ラチナムもなかったなんて言うなよ。」
ヘイン:「いや、モーンはラチナムをもってた。」
「それだけはほんとか。」
「リセピアンの母の日強盗※16って聞いたことは?」
「知ってるとも。世間のみんなが祝ってる隙に、誰かが中央銀行※17に押し入って……ラチナム入り金の塊 1,000個を強奪した。フン。」
笑うナースク。
クワーク:「ちょっと待てよ。あんたたち 4人がその強盗働いたって言うのかよう。」
ナースク:「俺たち 5人だ。」
ヘイン:「モーンも手伝った。」
クリット:「だがあいつはラチナムを持ち逃げしやがった。」
クワーク:「何で今までほっといたんだ?」
ヘイン:「あいつが隠してるのはわかってたから、ゆっくり時効がくるのを待つことにした。」
ラレル:「それが 2週間前に過ぎた。」
ナースク:「俺たちはもう逮捕されないわけさ。」
「で、ここに来たの。ラチナムが届いたら、多分…私たちみんなでそれを分けることにして、後はさよならね。」
クワーク:「みんなで山分けか。」
銃を向けるクリット。「お前は違う。俺たちだ。」
ヘイン:「確かにこいつはもういらない。」 クワークをつかむ。


※14: Til'amin froth
TNG第170話 "Eye of the Beholder" 「謎の幻覚テレパシー」でも言及

※15: Broik

※16: Lissepian Mother's Day Heist

※17: リセピア中央銀行 Cantral Bank of Lissepia

ラレルは尋ねた。「ならこの人どうする?」
クリット:「事故に見せかけて始末しよう。あれこれ人に聞かれると面倒だ。」
ナースク:「うん。」
クワーク:「ちょっと待ってくれよ! 俺を殺しちゃまずいだろ。ラチナムを受け取れるのは俺だけだ。親指の指紋がいる。」
「じっとしてろよ、大して痛かねえ。」 ナイフを取り出すナースク。
おびえるクワーク。「アー! アー!」
ヘイン:「おいおい、ちょっと待て!」
「アー! アー!」
「どうするつもりだ、ナースク。血だらけの親指ぶら下げて、ラチナム受け取りに来たって言うのか? 連れて行こう。」
ナースクはクリットになだめられ、ナイフを収めた。
ヘイン:「…残る問題は一つ。ラチナムを受け取ったらどうする?」
クワーク:「…ラチナムを、仲良く分けて、5等分はどう? 元々モーンが生きてりゃ、その予定だったろ?」
ラレル:「言えてる。」
「俺をモーンと思ってくれ、自分でもゾッとするがな。」
ナースク:「そんなのあるか、俺たちが奪った。こいつは関係ない。」
「そりゃそうだが、今は俺が必要だろ?」
ヘイン:「ラチナム入りの塊 1,000個を 5等分か…。…どう思う。」
クリット:「それでもまだ大した額だ。」
ナースク:「一人あたま…250個ずつってことだ。」
いちいち訂正しないヘインやラレル。
クワーク:「なら、決まりだな。」
ヘイン:「……いいだろう。」
「よし。ボリアンの船は、明日の 16時に到着する。貨物室で会おう。」
「到着まで一緒にいるんだ。」
「俺も?」
「信用はしてない。ほかの連中もみんなだ。」
「気持ちはわかる。でも、俺には店があるんだ。」
「……わかった。」

乾杯するヘインたち。「あんたのもてなしに。」
クワーク:「いや、いいってことよ。」
ラレル:「モーンは、このバーが好きだったの?」
「あそこが指定席だ。」
ナースク:「あまり利口とは言えないな。ドアに背中を向けてるぞ。」
「人を信用するタイプさ。」
ヘイン:「ところで誰が殺した。」
クリット:「俺たちじゃねえ。」
ラレル:「私も違う。」
クワーク:「俺を見るなよ。」
ヘイン:「ならほんとの事故か。」 笑う。
ラレル:「可哀想なモーニー。昔からついてない。」
オドーが入る。
ヘインはクワークにささやいた。「追い返せ。」
オドーに近づくクワーク。「閉店した。」
オドー:「こんなに早くか。」
「…モーンの友達だ。みんなで、あいつを偲んでる。」
「なるほどね。…で、いつまで店を閉めとくつもりだ。」
「店を開けるのは明日の 16時頃になるかなあ。…いろいろ偲ぶことがあってね。」
「なるほどね。」 クワークの店を出ていくオドー。
「何だったっけ?」

貨物室。
クワークたちが中央の貨物に気づいた。「ついてるぞ、時間通りだ。ああ…俺宛てだと思うけど。」
ベイジョー人のパッドに指紋を押すクワーク。彼らは出ていった。
ヘイン:「早く開けろ。」
クワークは貨物のボタンを押す。中を見て驚くクワークとラレル。他の者も覗き込む。
そこにはラチナムの塊が、山のように積まれていた。
クワーク:「ああ…俺が数えよう。」 中に入るようにして覗く。
その時クワークの後ろでは、4人が互いに銃を向け合っていた。
起き上がったクワークは、その真ん中に立ってしまう。「わかった。お前らが数えろ。」
クリット:「銃を下ろせ、ヘイン。俺の兄弟はトロくても、その引き金を引いたら、お前を殺すぞ。」
ナースク:「俺はトロくなんかねえ。」 クリットに武器を向ける。
「ナースク。…何をやってるんだ。」 慌ててヘインとラレルが銃を向け合う。「俺たちは家族だ、よせ。銃を下ろすんだ。」
ついに撃ち合いが始まった。クワークはラチナムの貨物の中に逃げ込む。ふたが閉まった。発射音が響く。
クワーク:「やれやれ、みんなで殺し合ってくれ。」
ラチナムに手を触れようとした時、クワークの目の前を武器が突き抜けた。「ああ!」
オドーの声が聞こえる。「保安部だ、銃を捨てろ! これが最後の警告だ、銃を捨てるんだ。」
ラレル:「わかったわよ!」
銃を拾うオドー。部下に指示する。「女は拘留室へ連れてけ。ほかの者は医療室へ運べ。」
オドーは貨物を開け、クワークが縮こまっているのを見た。「ああ、ここにいたか。」
クワーク:「みんな消えた?」
「これから先は、独りでモーンを偲ぶんだな。お友達は全員刑務所行きだ。」
「どれぐらい入る?」
「暴行と、殺人未遂だ。長いだろうな。」
「なら、こりゃ俺のもんだ。全部俺のだ! 今からいいものを聴かせてやろう。この銀河中で何より美しい、妙なる響きだ。」 2つのラチナムを叩き合わせるクワーク。だが鈍った音が響いた。そして塊は、もろくも崩れた。「何だ、どうなってんだ? こいつにはラチナムが入ってないぞ!」
「何?」
「もう誰かがラチナムを抽出したカスじゃねーか! こいつは価値のない、ただの金だ!」
「よかったな、全部お前のだ。」 笑い、去るオドー。
クワークは単なる金の塊を壊していく。「ああ…そんな! 嘘だー! クソー!」

クワークの店。
店の掃除をしているクワークは、モーンの椅子におもむろに近づいた。それを無理やり取ろうと奮闘する。
オドーが入る。「クワーク。クワーク!」
クワーク:「何だい! …何の用だい。」
「お前に会いたいって奴がいる。」
「…全員刑務所にぶち込んだんじゃないのか?」
「まあいいから座れ。」
オドーに続いてやってきたのは、モーンだった。
クワーク:「モーン。」
オドー:「元気でピンピンしてる。死んだというのは狂言だったようだが、事情は本人の口から聞いてくれ。」 店を出ていく。
クワークはモーンに言う。「それで?」 口を開こうとしたモーンを制した。「待て! 俺は何も聞きたかない。いいか、一言もだ! 俺をハメやがって。…俺にラチナムを残したのは、どんなことをしても手に入れると思ったからだな。俺なら 4人が仲間割れを起こすまで、適当にごまかせると考えたんだろう。何もかもお前が仕組んだことで、俺にあいつらを追っ払わせようとした。」
うなずくモーン。
「俺は殺されかけた。」
目をそらすモーン。
「…俺たちはずっと友達だと思ってた。そうだとも、片時も疑わなかった。それなのに、こんなことをやってのけるとはビックリだよう。ただ一つだけ教えてくれ。ラチナムはどうした。」
モーンは周りの様子をうかがい、グラスを手に取った。それを口のところにもっていく。モーンの体から変な音がしたかと思うと、口から液体が出てきた。
指を鳴らすクワーク。「そうだったか! 第2 の胃があったな。…2つ目の胃袋にこの何年もずーっと隠してきたのか。」
モーンはうなずいた。
「大量のラチナムだ、髪が抜け落ちるわけだ。」
グラスを差し出すモーン。
「俺にか? これならきっとあの塊で 100個分はあるぞ。何て言ったらいいか、ありがとよ、遠慮なくもらうぞ、あんな目に遭ったんだ。ハ、また俺をハメたくなったら好きにしてくれ。」 笑うクワーク。「そうだ、2人で新しいビジネスを始めないか? 俺たちみたいな実業家が組めば、大成功は間違いなしだ。」
モーンに酒を注ぐクワーク。「まずあの金のクズはどうかな? ただ無駄にしちゃもったいない。金をありがたがってる原始的な文化もあるって聞いたぞ……」



・感想
掛詞でもあり、TOS の "Who Mourns for Adonais?" 「神との対決」にも似た原題をもつエピソードです。邦題も意図に沿っていて、とても興味をそそられる上手いタイトルですね。
エキストラであるモーンを中心に、しかも彼自身は登場せずに進むというコメディタッチの作品で、意外に多いかもしれない「モーニー」のファンにはたまりません。愚鈍そうなモーンが、実は銀行強盗の一味で、しかも今回の作戦を思いついて見事に成功させたとは…。まさに痛快です。
うまいなあと思うのが、やはりセリフ回しですね (ナースクが特に)。複数の胃袋や液体ラチナムといった前振りが、しっかり後で効果的に使われてるのも良いです。


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