ロムは尋ねる。「それで、どうやって助けるの?」
先にアクセストンネルに入ろうとしたロムを止め、自分が入るクワーク。「どうやって、俺たちがマミーを救出するってか?」
「兄貴、僕は誰にも頼まれてないよう。」
「俺が指名した、お前をな。イシュカは、お前のおふくろでもある。」
「大好きだけど、僕は力になれない。僕には家族がいる。妻のためにも、まだ死ぬわけにはいかないよう。」
「俺だって死にたかない。だがグランド・ネーガスが提示した報酬額を聞いたら気が変わるさ。」
「報酬?」
「ラチナムの延べ棒、50本だぞ。」
「50本!」 驚いて頭を打つロム。「ああ…。」
「2人で山分けするんだ。」
「五分五分でかい?」
「もちろんさ! 俺が 30本で、お前が 20本。」
「そりゃあ五分五分じゃない。」
「仕事の話をもってきたのは俺だ。」
「ああ、そうだねえ…。」 頭をさするロム。
まだトンネルを進んでいる。
ロム:「でもよくわからない。ドミニオンは、どうやってマミーを捕まえたの?」
クワーク:「輸送船に乗ってる時に捕まった。」
「ネーガスはフェレンギ女性の旅を禁じてるよ。」
「おふくろは例外だ。ある手術のために、ヴァルカンに行くことを特別に許されたんだよ。」
「何の手術だい?」
「…耳を上げる手術だ。」
「何でまたそんなことを。」
「耳が自慢だからさ。」
「ネーガスってすごく寛大だねえ。」
「全くだな。」
「でも何でマミーに親切なの?」
「お前にまだ話していないことがある。」
「兄貴がラチナム 10本多くもらうのは取り過ぎだってこと? 僕もそう思ってたよ。」
「おふくろとネーガスの関係だよ。」
「どうかした?」
「恋人同士だ。」
「…そんなあ!」
「関係は一年以上続いてる。」
「そんなあ…!」
「おふくろは影の金融アドバイザーで、フェレンギの同盟を左右してるんだ。」
「そんなあ……!」
「うるさいぞ、ロム! ああ…。」
出口のパネルを開けるクワーク。ロムも顔を出す。
だが、そこは司令官室だった。
シスコ:「何か手伝うことがあるかね?」
ロム:「…お供です。」
クワーク:「…道を間違えました。」
シスコ:「そのようだな。」
またパネルを閉めるクワーク。
廊下の途中にあるパネルが飛ばされ、クワークが出てきた。「ここならいいか? ああ…。」
パネルを閉じるロム。「ねえ、兄貴。いろいろ考えたけど、…僕たちでマミーをドミニオンから助け出すなんて絶対無理。僕らだけじゃとても…」
「わかってる。人手が必要だ。」
「人を集めてチームを結成しよう。屈強な傭兵たちを大勢集めるんだよ。ノーシカンやブリーン、クリンゴン…」
「シッ! 今回、そんな連中は必要ない。」
「じゃあ誰?」
「フェレンギだけで行くんだよ。」
大声を上げるロム。「やられちゃうよ!」
「何言ってる! フェレンギだってクリンゴンに負けないさ。」
「ほんと?」
「もちろんさ! 今までその機会がなかったんだ。ラチナムの 2、3本でも見せて訓練すりゃいい。」
「僕の取り分が減っちゃうよ!」
「いや。今後メンバーが増えても、報酬は分け合うことになるが、20本をな。」
「ネーガスの提示は 50本だろ?」
「だが黙ってりゃわからん。20本だ。」
「20本ね、そういうことか。」
「さーてと、問題はだな。最初に誰を誘うかだ。」
ノーグ※9は手を挙げた。「僕は結構。」
ロム:「でもノーグ、マミーはお前を待ってる。」
クワーク:「ネーガスも期待してる。」
「お前が必要だ。頼むよ、メンバーになってくれ。頼むよう。」
ノーグ:「僕は宇宙艦隊の士官だ。そんないい加減な救出任務に行けるわけがないだろう。僕には職務があるんだ。」
「でもお前はフェイザーの使い方を知って…」
クワーク:「もういい、ロム。仕方ない。でも残念だ。お前を戦略士官にしようと考えてたのに。」
ノーグ:「それってウォーフ少佐みたいな?」
「まさにウォーフ少佐だ。想像してみろ。お前自身が作戦を考え、計画を練るんだ。」
ロム:「訓練リーダーだぞ、僕らの能力を試し、鍛えるんだ。」
「戦士に仕立てる。」
ノーグ:「大変な仕事だ。」
「お前が必要なんだ。」
「…チームの規模は。」
「今の時点でか?」 クワークは 2本の指を立てた。
ノーグは首を振って 3本の指を立て、笑った。
クワークはコンピューターを操作している。「いいか、ロム。レック※10は一般のフェレンギとは違う。俺らの常識は通じない。」
ロム:「わかったよ、兄貴。」
「ま、いずれわかる。」
画面にナイフを研いでいるフェレンギ人が映し出された。『安全なチャンネルなんだろうな。』
クワーク:「あなたの指示通りやりました。」
『そりゃあよかった。それで消して欲しい標的は。』
「そういう仕事じゃない。」
『じゃあ片付け屋※11に何の用だ。』
ロム:「片付け屋!」
クワーク:「シーッ! 救出チームを編成しているんだが、あなたにも加わって欲しい。」
レック:『俺は一匹狼だ。』
「報酬はラチナムだ。」
『そんな物に興味はない。』
ロム:「ほんとだ、僕らとは価値観が違う。」
クワーク:「…わかった。そりゃ忘れてくれ。だが今回の任務はあなたにピッタリだ。」
レック:『…挑戦するのは好きだ。』
「では教えましょう。その人物は、ドミニオンに捕らわれているんです。」
『ドミニオンだと?!』
「挑戦しがいのある仕事でしょう?」
『うーん。』
通信が終わった。ロムは指を立てる。これで 4人。
連邦の宇宙基地。
クワーク:「ゲイラ※12も落ちぶれたもんだ。」
ロムも腕を組む。独房の中に、横になったフェレンギがいた。
ゲイラ:「従兄弟のクワーク。」
クワーク:「お前、タロス6※13 で逮捕されたんだってな。放浪罪で。」
「何もかもお前のせいだ。」 起きあがるゲイラ。「そうさ、俺はお前と商売をするまでは…武器商人で儲かっていたんだ。お前が台無しにした。クワーク、いつかここから出られたら…この落とし前はきちんとつけてもらうからな。」
近づくクワーク。「フォースフィールド解除。」 ゲイラの服をつかんだ。「落とし前の代わりに、やってもらうことがある。」
「どういうことなんだよう。」
ロム:「兄貴が罰金を支払った。あんたは自由の身だ。」
「お前、俺に何をさせようってんだい。」
クワーク:「儲けさせてやる。」
微笑むゲイラ。「話を聞かせてくれ。」
拘留室を出て行く 3人。ロムとクワークは手を広げた。これで 5人。
DS9。
説明するノーグ。「カウンターには、ドミニオンの捕虜収容センターの概略図が出たパッドが用意されている。各自よく見て頭に入れるように。」
4人はゆっくりとパッドを手にした。
逆さまになっていたゲイラのパッドを直すノーグ。
レック:「だがこれが正確なものだとどうして言えるんだ。」
ノーグ:「サー。」
「かしこまって『サー』なんて付けなくていいよ。レックと呼んでくれ。」
「いや、あんたが俺をサー付けで呼ぶのさ。」
「馬鹿馬鹿しい。」
「『馬鹿馬鹿しいです、サー』だろ?」
レックを抑えるクワーク。「レック、待てよ! つまらない言い合いはよせ。我々はチームなんだ。」
ロム:「チームです、サー。」
「お前は引っ込んでろ。話を聞いてくれ。」
ノーグ:「僕はもう降りる。」
「今更そりゃないだろ。この計画はお遊びじゃないんだぞ。」
ゲイラ:「それより、その捕虜収容所まではどうやって行くんだ。計画はあるんだろうな。」
ロム:「船さ。」
「どこに船があるんだよ。」
クワーク:「手に入れる。」
レック:「船もないのか。」
「手に入れると言っただろ。」
ノーグ:「どうやって。」
「見つけ出す。」
レック:「どこで。」
「わからんよ! これは挑戦の一つだ…」
突然、クワークの店に手を叩く音が響いた。フェレンギ人がやってくる。
ロム:「整理屋のブラント※14!」
ブラント:「元整理屋のブラントだ。お前の兄貴のせいで、俺はフェレンギ会計監査局から締め出された。」 笑い、集まったフェレンギたちについて話していく。「ガキに、間抜け、前科もん、それに…サイコ野郎か? よくもこれだけ面白いメンバーを揃えたな。」
クワーク:「何の用だ、ブラント。」
「俺も参加するんだよう。お前のおふくろを救出するつもりさ。」
「何だと。」
ロム:「何でマミーのこと知ってるんだ。」
ブラント:「俺は何でも知ってる。」
クワーク:「ああ…俺のおふくろを助けることができれば、前の職に戻れるってか?」
「出発はいつだ?」
「どこにも行かない。お前とはな。」
ロム:「それだけは全員の一致した意見だ。」
レック:「整理屋を好く奴などいない。」
ノーグ:「元整理屋でも、同じだね。」
クワーク:「残念だが、そういうわけだ。」
ゲイラ:「それに、報酬の延べ棒 20本のこともあるからな。」
ノーグ:「6人より 5人の方がいいに決まってる。」
ブラント:「わかった。それじゃおとなしく船に戻って、帰るとするか。」
ドアへ向かおうとするブラント。その横の柱に、飛んできたナイフが突き刺さった。「あらら。」
レックが投げた物だった。「今船って言ったか?」
「ああ…そうだよ。…何か?」
ロムは微笑んだ。「メンバーは 6人だ。」
うなずくクワーク。
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※9: Nog (エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9第131話 "You Are Cordially Invited" 「花嫁の試練」以来の登場。声:落合弘治
※10: Leck (ハミルトン・キャンプ Hamilton Camp VOY第97話 "Extreme Risk" 「心は闘いに傷ついて」のヴレルク指揮官 (Controller Vrelk) 役) フェレンギ人。DS9第118話 "Ferengi Love Songs" 「愛の値段」以来の登場。声は樫井笙人さんから秋本羊介さんに変更
※11: eliminator
※12: Gaila (Josh Pais) フェレンギ人事業家で、クワークの従兄弟。DS9第116話 "Business as Usual" 「武器を売る者」以来の登場。声:益富信孝 (継続)
※13: Thalos VI TNG第36話 "The Dauphin" 「運命の少女サリア」でタロス7号星 (Thalos VII) が言及
※14: Brunt (ジェフリー・コムズ Jeffrey Combs ウェイユン役と同じ人が演じています) フェレンギ会計監査局の元役人。DS9第118話 "Ferengi Love Songs" 「愛の値段」以来の登場。声は以前の田原アルノさん (現在のロム役) から変更され、小島敏彦さん (現在のドクター・マッコイ役)
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